弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件上告を棄却する。
     上告費用は上告人の負担とする。
         理    由
 上告理由は末尾に添えた書面に記載した通りであつて、これに対する当裁判所の
判断は次の通りである。
 上告理由第一点について。
 論旨は、上告人は本件家屋の全部明渡を求めたのであつて、その一部明渡を求め
たのではなく、もし右請求の全部が認容されないのなら、むしろ、その全部が棄却
されることを希望したのに、原判決が一部明渡を認容する判決をしたのは、上告人
の「申立テサル事項ニ付判決ヲ為シ」た違法があるというにある。
 しかしながら、訴を提起する原告としては、請求の全部が認容されないで、その
一部が認容される場合には認容される部分について一部勝訴の判決を求める意思が
あるのが通常である。それ故、原告の請求が可分である場合に、裁判所がその一部
は理由があり他の一部は理由がないと認めたときは、その理由ある部分につき請求
を認容し、その理由なき部分につき請求を棄却するのである。たゞ、原告がその理
由ある部分のみならば請求認容の判決を求めないことが明らかな場合は請求全部を
棄却する外ないのである。本件において、上告人は本件家屋のうち原判決が明渡を
命じた南側一戸の部分だけでも明渡を求める意思であつたことは、弁論の全趣旨殊
に昭和二二年一月一日及び同二三年二月一八日の各口頭弁論期日において陳述され
た準備書面に照せば明らかである。されば、原審はこの点について特に上告人に対
し釋明を求める必要はなかつたわけであつて、もし上告人において本件家屋の一部
明渡だけでは請求認容の判決を求めない意思であつたならば、上告人みずから進ん
で前記準備書面の趣旨を訂正すべきであつたのでめる。それ故、原審には所論のよ
うな違法はなく論旨は理由がない。
 同第二点について。
 論旨は、原判決は上告人の主張した「被上告人は本件家屋を上告人の承諾なく訴
外Dに轉貸した」との事実を排斥する説明において前後に矛盾がある。その趣旨と
するところが、もし被上告人とDとの間に使用貸借の成立した事実を認定しながら、
これは使用貸借契約に当らないというのであれば法律の解釋を誤つたか理由に食い
ちがいがあるし、又使用貸借は民法第六一二条にいわゆる轉貸の中に含まれないと
の趣旨とすれば法律の解釋を誤つた違法があるというにある。
 しかしながら、原判決は、被上告人とDとの間に本件家屋につき使用貸借に当る
事実のあつたことを認定したものではない。原判決は「Dは昭和二〇年九月頃より
別府市内でE食堂なるものを経營して居たが、かねて控訴人(被上告人)の妻と縁
故があり昭和二一年九月頃右食堂の營業を控訴人(被上告人)に譲渡した関係上そ
の頃から控訴人(被上告人)は本件家屋の南側一戸の内二階八疊の室をDに無償で
貸与し同居させた、けれども、その南側一戸の内階下の玄関その他の部屋は控訴人
(被上告人)方の物置として依然控訴人(被上告人)方で使用していたこと、一右
Dは別世帯を立てて暮していたが右のような「事情の下に好意的に無償で南側二階
八疊に置いて貰つたと云うだけであつて決して控訴人(被上告人)との間の契約関
係に基く獨立の占有者と見るべきものではなかつた」と説明しているのである。す
なわち、原判決は、被上告人においてDに対して無償で前記八疊に起居することを
好意的に事実上許したのにすぎないものであつて、それは当事者間に法的拘束を生
ぜしめる趣旨の法律上の契約関係に基くものではないものと認定したのである。そ
れ故、原判決には所論のように矛盾あるものでもなく、又所論のような違法もない
のであるから論旨は理由がない。
 よつて、本件上告を理由のないものと認め民訴法第四〇一条に従い棄却すべきも
のとし、訴訟費用の負担につき同法第九五条第八九条を適用し主文の通り判決する。
 以上は、当小法廷裁判官員全員の一致した意見である。
     最高裁判所第三小法廷
         裁判長裁判官    長 谷 川   太 一 郎
            裁判官    井   上       登
            裁判官    島           保
            裁判官    河   村   又   介
            裁判官    穂   積   重   遠

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