弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件上告を棄却する。
     上告費用は上告人らの負担とする。
         理    由
 上告代理人高野国雄、同入江五郎、同大島治一郎及び同下坂浩介の上告理由並び
に上告人らの上告理由について
 一 原審の適法に確定したところによれば、本件の事実関係はおおむね次のとお
りである。
 1 参加人は、D火力発電所建設工事の一環として、本件公有水面を埋め立てて
取水口外郭施設用地を造成することを計画し、本件公有水面を含む水面において漁
業権を有するE漁業協同組合(以下「E漁協」という。)に対し、本件公有水面を
右漁業権に係る漁場の区域から除外することを要請した。
 2 E漁協は、右要請を受け、水産業協同組合法四八条一項及び五〇条の規定に
基づき、昭和四七年五月三一日の総会において、議決権を有する全組合員一四六名
の無記名投票の結果、賛成一〇三票、反対四三票をもつて、本件公有水面を右漁業
権に係る漁場の区域から除外する旨の漁業権の変更を議決し、漁業法二二条一項の
規定に基づき、昭和四八年六月二五日、右漁業権の変更につき被上告人の免許を受
けた。右漁業権は同年八月三一日をもつて存続期間の満了により消滅し、E漁協は
同年九月一日新たな漁業権の免許を受けたが、本件公有水面は新たな漁業権に係る
漁場の区域からも除外されている。
 3 参加人は、昭和四七年八月一四日、被上告人に対し、本件公有水面の埋立て
の免許(以下「本件埋立免許」という。)を出願した。被上告人は、参加人に対し、
昭和四八年法律第八四号による改正前の公有水面埋立法(以下「旧埋立法」という。)
二条の規定に基づき、昭和四八年六月二五日、本件埋立免許を行うとともに、同法
二二条の規定に基づき、昭和五〇年一二月一八日、本件公有水面の埋立工事の竣功
認可(以下「本件竣功認可」という。)を行つた。
 4 上告人A1は、E漁協の組合員として、その漁業権の内容たる漁業を営む権
利を有する者である。上告人A2は、F漁業協同組合(以下「F漁協」という。)
の組合員として、その漁業権の内容たる漁業を営む権利を有する者であるところ、
F漁協の漁業権は、E漁協の漁業権の存する水面の北西側に連接し、かつ、本件公
有水面に近接する水面に存する。
 二 上告人らは、本件埋立免許及び本件竣功認可の取消しを請求して本件訴えを
提起しているところ、行政処分の取消訴訟は、その取消判決の効力によつて処分の
法的効果を遡及的に失わしめ、処分の法的効果として個人に生じている権利利益の
侵害状態を解消させ、右権利利益の回復を図ることをその目的とするものであり、
行政事件訴訟法九条が処分の取消しを求めるについての法律上の利益といつている
のも、このような権利利益の回復を指すものである。したがつて、処分の法的効果
として自己の権利利益を侵害され又は必然的に侵害されるおそれのある者に限つて、
行政処分の取消訴訟の原告適格を有するものというべきであるが、処分の法律上の
影響を受ける権利利益は、処分がその本来的効果として制限を加える権利利益に限
られるものではなく、行政法規が個人の権利利益を保護することを目的として行政
権の行使に制約を課していることにより保障されている権利利益もこれに当たり、
右の制約に違反して処分が行われ行政法規による権利利益の保護を無視されたとす
る者も、当該処分の取消しを訴求することができると解すべきである。そして、右
にいう行政法規による行政権の行使の制約とは、明文の規定による制約に限られる
ものではなく、直接明文の規定はなくとも、法律の合理的解釈により当然に導かれ
る制約を含むものである。
 三 これを本件についてみるに、旧埋立法に基づく公有水面の埋立免許は、一定
の公有水面の埋立てを排他的に行つて土地を造成すべき権利を付与する処分であり、
埋立工事の竣功認可は、埋立免許を受けた者に認可の日をもつて埋立地の所有権を
取得させる処分であるから、当該公有水面に関し権利利益を有する者は、右の埋立
免許及び竣功認可により当該権利利益を直接奪われる関係にあり、その取消しを訴
求することができる。しかしながら、原審の認定した前記事実関係に照らせば、上
告人らは、本件公有水面に関し権利利益を有する者とはいえないのである。この点
に関し、論旨は、漁業権変更の議決については、漁業法八条三項及び五項の規定に
より、特定区画漁業又は第一種共同漁業を営む者で地元地区又は関係地区の区域内
に住所を有するものの三分の二以上の書面による事前の同意を必要とするところ、
E漁協の前記漁業権変更の議決は右同意を欠き無効であるから、E漁協は本件公有
水面において依然漁業権を有し、したがつて上告人A1も本件公有水面において漁
業を営む権利を有するというが、漁業権の変更につき漁業法八条三項及び五項の規
定の適用はなく、また、これを類推適用すべきものともいうことができないから、
E漁協の前記漁業権変更の議決を無効とすることはできない。さらに、論旨は、上
告人A2の所属するF漁協は、本件公有水面に近接する水面において漁業権を有し
ているから、本件公有水面から引水をなしこれに排水をなす者又はこれに準ずる者
であるというが、近接する水面において漁業権を有しているからといつて本件公有
水面に関し引水又は排水の権利利益を有するとは到底いうことができない。
  そうすると、上告人らは、本件公有水面の周辺の水面において漁業を営む権利
を有するにすぎない者というべきであるが、本件埋立免許及び本件竣功認可が右の
権利に対し直接の法律上の影響を与えるものでないことは明らかである。そして、
旧埋立法には、当該公有水面の周辺の水面において漁業を営む者の権利を保護する
ことを目的として埋立免許権又は竣功認可権の行使に制約を課している明文の規定
はなく、また、同法の解釈からかかる制約を導くことも困難である。
 四 以上のとおりであるから、上告人らは、本件埋立免許又は本件竣功認可の法
的効果として自己の権利利益を侵害され又は必然的に侵害されるおそれのある者と
いうことができず、その取消しを訴求する原告適格を有していないといわざるをえ
ない。これと同旨の見解のもとに、上告人らの原告適格を否定し、本件訴えを不適
法とした原審の判断は、正当として是認することができる。原判決に所論の違法は
なく、論旨はいずれも採用することができない。
 よつて、行政事件訴訟法七条、民訴法四〇一条、九五条、八九条、九三条に従い、
裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。
     最高裁判所第三小法廷
         裁判長裁判官    木 戸 口   久   治
            裁判官    伊   藤   正   己
            裁判官    安   岡   滿   彦
            裁判官    長   島       敦

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