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平成16年6月24日 金沢地方裁判所
平成16年(わ)第55号 保護責任者遺棄致死被告事件
主       文
被告人を懲役4年に処する。
未決勾留日数中60日をその刑に算入する。
理       由
(犯罪事実)
 被告人は,石川県加賀市a町b番地被告人方において,自力で起きあがることができ
ず,自力による食物摂取及び排泄処理ができない老年者かつ病者である実母A(当時8
7歳)と2人で居住し,同女を保護すべき責任を有するものであるが,平成16年1月30
日午前11時ころ,同市福祉保健課職員から上記Aの入院準備資金としての援護費3万
円の給付を受けたことを奇貨として,同県金沢市内でパチンコ遊興にふけることを企図
し,同女の看護等生存に必要な措置を講ずることなく,同女を上記被告人方に置き去り
にして遺棄し,よって,同年2月2日ころ,上記被告人方において,同女を栄養不良及び
寒冷のため凍死させるに至らしめたものである。
(量刑の事情)
1 本件は,自力で起きあがることができず,食物摂取及び排泄処理もできなくなった実
母と二人で居住していた被告人が,パチンコにふけるため,同女を自宅に置き去りに
して遺棄し,栄養不良及び寒冷のため凍死させたという保護責任者遺棄致死の事案
である。
2 被告人は,平成9年に妻と離婚し,それ以降,実母である被害者と二人暮らしをして
きたが,漁協の仕事をアルバイト的にしたほかは定職に就かず,収入もほとんどなか
ったため,父親の遺族年金や被害者の国民年金,さらには消費者金融業者らから借
金して生活しつつ,趣味のパチンコにふけって数日間家を空けることを頻繁に繰り返
していた。そして,平成15年12月中旬ころには,上記年金のほとんどをパチンコに費
消し,食料品の購入資金に困窮して被害者に十分な栄養を摂取させることもできない
状況になっていた。平成16年1月20日ころになって,加賀市福祉保健課職員の対応
により,被害者の病院への入院が決まったが,被告人は,同月30日,上記職員から
被害者の入院準備資金としての援護費3万円の給付を受けたことを奇貨として,金沢
市内でパチンコにふけろうと思い立ち,被害者が栄養不良で衰弱していたことを十分
に認識しながら,被害者を置き去りにして遺棄したものである。
3 パチンコにふけるため,被害者を遺棄したという自己中心的かつ身勝手な動機に酌
量の余地は全くない。寒冷な時期である1月末に栄養不良状態の被害者を自宅に置
き去りにすれば,その生命に危険が生じることは十分に予想されるのに,食料を被害
者の手の届くところに置いたり,暖をとるための措置を講ずるなどの被害者の生存に
必要な最低限の看護措置を講ずることなく,被害者を遺棄したのであり,その犯行態
様は極めて悪質である。被害者は死亡しており,結果は誠に重大である。実の息子
から遺棄され,酷寒の屋内で一人寂しく息絶えるに至った被害者の心情は察するに
余りある。
4 以上によれば,被告人の刑事責任は重い。
5 そうすると,被告人が本件犯行を反省していること,被害者との二人暮らしになって
以降,十分とはいえないもののこれまで一人で被害者の身の回りの世話をしてきたこ
と,社会復帰後は被害者の供養をしたい旨述べていること,前科・前歴がないこと,そ
の他弁護人が主張する被告人のために酌むべき一切の事情を考慮してもなお,刑の
執行を猶予することは相当でないと思料し,主文のとおり量刑した。
(検察官 磯村建,弁護人 木梨松嗣)
(求 刑 懲役5年)
平成16年6月24日
金沢地方裁判所第三部
裁判長裁判官   伊東一廣
裁判官   田中智子
裁判官和田将紀

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