弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件上告を棄却する。
     上告費用は上告人の負担とする。
         理    由
 上告代理人高田英明の上告理由第一点、第二点について。
 所論は、いずれも、原判決が適法に確定した事実と相容れない主張を前提とする
か、もしくは独自の法律的見解に立脚して、事実審の専権に属する証拠の取捨判断
または事実認定を非難するに帰し、論旨援用の判例も本件に適切ではない。論旨は
採用するを得ない。
 同第三点一、第四点三について。
 所論公証人法二六条違反の点は、上告人において原審で主張しないことであるの
みならず、本件公正証書に基づく消費貸借の遅延損害金を一箇月六歩の割合とする
所論約定は、旧利息制限法五条により裁判所において相当の減額をなしうるとして
も、そのことによつて本件公正証書の他の部分の効力に消長をきたすものというこ
とはできないし(最高裁昭和三元年(オ)第六四三号、同三二年一二月一〇日第三
小法廷判決、民集一一巻二一一七頁参照)、また、右損害金の約定がただちに公序
良俗に反するとはいえないことは勿論、かりに、他の事情から右約定が公序良俗に
違反するとしても、本件の基本たる消費貸借自体、したがつてまた本件公正証書の
その他の部分の効力には影響を及ぼすものではない(最高裁昭和二六年(オ)第八
六二号、同二七年三月六日第一小法廷判決、民集六巻三二〇頁、同昭和二六年(オ)
第九〇六号、同二八年一二月一八日第二小法廷判決、民集七巻一四七〇頁、同昭和
二八年(オ)第六九一号、同二九年一一月五日第二小法廷判決、民集八巻二〇一四
頁、同昭和二六年(オ)第五七六号、同三二年九月五日第一小法廷判決、民集一一
巻一四七九頁参照)。
 されば、論旨は採用できない。
 同第三点二について。
 原判決の確定した事実によると、本件公正証書には上告人が担保物件として本件
土地および建物を供した旨の記載があるのに、右公正証書作成を嘱託した委任状に
は担保物件として建物一筆と記載してあるにすぎないけれども、上告人は本件土地
および建物を担保に供してその旨公正証書の作成を嘱託し、したがつてDは本件公
正証書記載どおりの作成を嘱託する代理権を有していたのに、その代理権を証する
委任状の担保物件欄に建物一筆とのみ記入して土地の記載を脱落したものであるこ
とが明らかであるというのであるから、このような事実関係のもとにおいては、右
のような瑕疵は未だ本件公正証書の無効をきたす重大なものとは解されないとした
原審の判断は正当である。論旨は理由がない。
 同第三点三および第四点四(イ)について。
 所論は、原審で上告人の主張しない事実を主張するものであるから、適法の上告
理由と認めることはできない。
 (なお、同第三点四は、上記第三点一ないし三の判断によつて尽されているから、
とくに判断を要しない。)
 同第四点一、二、四(ロ)について。
 所論信義誠実の原則違反、権利の濫用の事実は、上告人において原審でなんら主
張していないことであるのみならず、原審認定の事実関係においては、所論の違法
は認めることはできない。なお、論旨は、本件競売の請求においても、被上告人は
過当な損害金の請求をしているというが、これを認めるべき資料はない。論旨は、
いずれも理由がない。
 同第五点、第六点について。
 上告人の所論主張を時機に後れた攻撃防禦方法で著しく訴訟の完結を遅延させる
ものであるから却下すべきものとした原判示判断は、記録上認められる訴訟の経過
程度に徴すれば、正当として是認すべきである。その他の所論原判示ならびに原審
の措置についても、論旨主張のような違法の点はない(所論憲法三二条違反の主張
も、名を違憲にかりるものにすぎない。)。論旨は、いずれも、採用するを得ない。
 よつて、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文の
とおり判決する。
     最高裁判所第二小法廷
         裁判長裁判官    奥   野   健   一
            裁判官    山   田   作 之 助
            裁判官    草   鹿   浅 之 介
            裁判官    城   戸   芳   彦
            裁判官    石   田   和   外

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