弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


戻る

令和2年10月20日判決言渡同日原本領収裁判所書記官
平成29年(ワ)第2890号国家賠償請求事件
口頭弁論終結日令和2年8月26日
判決
主文5
1被告は,原告に対し,110万円及びこれに対する平成28年10月19
日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
2被告は,防衛研究所の公式ホームページ(http://www.nids.mod.go.jp)か
らリンクの貼られている平成28年10月19日付け「防衛研究所職員によ
る研究活動の不正行為について」と題する記事(http://www.nids.mod.go.jp10
/research/official_announcement.pdf)を削除せよ。
3原告のその余の請求をいずれも棄却する。
4訴訟費用は,これを30分し,その29を原告の負担とし,その余を被告
の負担とする。
5この判決は,第1項に限り,仮に執行することができる。15
事実及び理由
第1請求
1被告は,原告に対し,2200万円及びこれに対する平成28年10月19日
から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
2被告は,原告に対し,1100万円及びこれに対する平成29年3月15日か20
ら支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
3被告は,防衛研究所の公式ホームページ(http://www.nids.mod.go.jp)からリ
ンクの貼られている平成28年10月19日付け「防衛研究所職員による研究活
動の不正行為について」と題する記事(http://www.nids.mod.go.jp
/research/official_announcement.pdf)を削除せよ。25
4被告は,別紙1の「謝罪文」を別紙2の条件で防衛研究所の公式ホームページ
(http://www.nids.mod.go.jp)に掲載せよ。
第2事案の概要
本件は,防衛省防衛研究所において研究に従事する職員である原告が,防衛研
究所長が防衛研究所の公式ホームページにおいて原告が研究活動に係る不正行
為を行った旨を公表したことにより,原告の名誉が毀損されたと主張して,被告5
に対し,国家賠償法1条1項に基づき,2200万円及びこれに対する不法行為
(公表)の日である平成28年10月19日から支払済みまで民法(平成29年
法律第44号による改正前のもの。以下この判決において同じ。)所定の年5分
の割合による遅延損害金の支払を求め,また,防衛研究所長が,前記公表及び前
記不正行為を理由に訓戒処分をしたことにより,原告は抑うつ状態となって休職10
したと主張して,被告に対し,国家賠償法1条1項に基づき,1100万円及び
これに対する不法行為(訓戒処分)の日である平成29年3月15日から支払済
みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求めるとともに,人格
権による妨害排除請求権に基づき,前記公表に係る記事の削除を求め,さらに,
名誉回復措置請求権に基づき,別紙「謝罪文」記載の謝罪広告の掲載を求める事15
案である。
1前提事実(争いのない事実並びに掲記の証拠及び弁論の全趣旨により容易に認
められる事実)
当事者等
ア原告は,防衛研究所の政策研究部の社会・経済研究室において研究に従事20
する事務官である。
原告は,軍事組織と社会変化,非伝統的安全保障,社会諸問題の安全保障
化及びグローバル公共性と軍隊の非伝統的活動等を主な研究テーマとして
いる(甲40,99)。
イ防衛研究所は,防衛省設置法4条1項33号及びその委任命令である防衛25
省組織令52条1項,同条5項の規定により防衛省本省におかれた文教研修
施設であって,自衛隊の管理及び運営に関する基本的な調査研究等を行って
おり,その長は,防衛研究所長である(防衛大学校,防衛医科大学校,防衛
研究所及び防衛監察本部組織規則17条の2第1項,甲99,乙5,6)。
防衛研究所には,所長(教官),副所長(自衛官),研究幹事(教官)の
序列があり,その下に,企画部,政策研究部,理論研究部,地域研究部,教5
育部,戦史研究センター,特別研究官(国際交流・図書担当),特別研究官
(政策シミュレーション担当)が設置されている(乙7)。
ウAは,防衛研究所の地域研究部のアジア・アフリカ研究室長である(甲4,
5)。
エBは,防衛研究所の地域研究部の米欧ロシア研究室の所員(三等空佐)で10
ある(甲4,5)。
オCは,防衛研究所の地域研究部の北東アジア研究室の主任研究官である
(甲5)。
防衛研究所における調査研究
ア防衛研究所は,防衛研究所の調査研究に関する達(以下「調査研究に関す15
る達」という。乙69)に基づき,特別研究,所指定研究,基礎研究等の調査
研究を毎年度の計画に従い実施している。このうち,特別研究とは,内部部
局の要請を受け,防衛政策の立案及び遂行に寄与することを目的に実施する
調査研究をいう(調査研究に関する達2条1号)。
イ調査研究に関する達は,防衛研究所の調査研究(特別研究を含む)の成果20
等について,次のとおり定めている(乙69)。
(調査研究の成果報告)
12条1項各調査研究項目の担当者は,調査研究が完了したときは,所長に
対し文書により速やかに成果報告を行わなければならない。
2項前項の報告は,調査研究実施報告書(別紙様式第2)の案及び調25
査研究成果報告書を添付して行うものとする。
(実施の報告)
13条委員会(裁判所注:防衛研究所の所長,副所長,研究幹事,各部
の部長等により構成される調査研究委員会をいう。)は,調査研
究実施報告書を,原則として実施する年度の3月末日までに作成
する。委員会が認めた調査研究実施報告書は,DII通信網クロ5
ーズ系加入システム(裁判所注:防衛省が設置する機関が閲覧す
ることができるイントラネットをいう。以下「本件システム」と
いう。)に掲載する。
(研究成果発表会の実施)
14条調査研究の成果の一端を内部部局及び各幕等の関係者に紹介す10
ることにより,関係者の業務遂行上の参考にするとともに,防衛
研究所に対する理解を促進することを目的として,必要に応じ,
研究成果発表会を実施する。
(研究成果の公表)
15条調査研究成果報告のうち,調査研究の完了後半年を経過しても関15
連する相応の学術的な部外発表が存在せず,かつ,発表の予定の
ないものであって,委員会が相当と認めるものは,ホームページ
への掲載その他の軽易な手段により公表する。
ウ防衛研究所は,平成24年度及び平成25年度に,内部部局である人事教
育局人材育成課の要請に基づき,特別研究「諸外国における女性軍人の今後20
の展望」(以下「平成24年度特別研究」「平成25年度特別研究」という。)
を実施し,平成24年度特別研究成果報告書「諸外国における女性軍人の今
後の展望」(以下「平成24年度特研報告書」という。また,特別研究の成
果報告書を単に「特研報告書」という。)及び平成25年度特別研究成果報
告書「諸外国における女性軍人の今後の展望」(以下「平成25年度特研報25
告書」という。)を作成した。
また,防衛研究所は,平成27年度に,人事教育局人材育成課,人事計画・
補任課及び国際協力課の要請に基づき,特別研究「諸外国における女性軍人
の人事管理等」(以下「平成27年度特別研究」という。)を実施し,平成
27年度特別研究成果報告書「諸外国における女性軍人の人事管理等」(以
下「平成27年度特研報告書」という。)を作成した。(甲1~3,乙1,5
2)
エ平成24年度特別研究の担当者は,A(主査),B及び原告,平成25年
度特別研究の担当者は,A(主査),C,B及び原告,平成27年度特別研
究の担当者は,原告のみであった(甲4~6)。なお,各特研報告書を実際
に誰が執筆したかについては争いがある。10
オ平成27年度特研報告書は,平成28年1月4日,所長に対し成果報告(所
長決裁)が完了し,同月13日,要請元である内部部局に対して平成27年
度特研報告書のデータが提供された(調査研究に関する達12条,甲34,
乙19,乙88)。
カ特研報告書は,修文等を経て防衛研究所が発行する「防衛研究所紀要」に15
掲載されることがあり,その場合には外部へ公表されることとなるが(乙7
3~76〔枝番を含む。〕),それまでは「部内限り」との取扱いがされ,
本件システムにより防衛省内において閲覧できるにとどまる。
防衛研究所における研究活動に係る不正行為に関する内部規則
防衛研究所は,防衛研究所に勤務する職員の研究活動に係る不正行為を防止20
し,不正行為が行われた場合やそのおそれがある場合に厳正かつ適切に対応す
るため(1条),平成26年6月,防衛研究所における研究活動に係る不正行
為の防止等に関する達(以下「本件達」という。甲7,乙8)を定めた。
本件達には,次のような規定がある。
(定義)25
2条2号「研究活動に係る不正行為」とは,発表された研究成果の中の捏造,
改ざん又は盗用をいう。ただし,故意によるものでないことが根拠
をもって明らかにされた場合は,不正行為にはあたらない。
一「捏造」存在しないデータ又は研究結果等を作成することをいう。
二「改ざん」既存のデータ又は研究結果等を真正でないものに加工
することをいう。5
三「盗用」他の研究者等の既に発表した発想,分析・解析方法,デ
ータ,研究結果又は用語を適切な表示をせずに使用することをいう。
(職員の責務)
3条1項職員は,高い倫理性を保持し,研究活動に係る不正行為を行っては
ならない。10
(調査結果の報告)
15条調査委員会は,調査委員会設置後,(省略)当該調査の結果をま
とめ,所長に報告する。(以下省略)
(調査結果の公表等)
19条1項所長は,第15条(省略)の調査委員会の調査結果(省略)とし15
て,研究活動に係る不正行為が行われた旨の報告を受けた場合は,
次の事項を公表する。
1号研究活動に係る不正行為に関与した職員の所属及び氏名
2号研究活動に係る不正行為の内容(以下省略)
平成27年度特研報告書の一部に平成25年度特研報告書からの引用であ20
ることの表示がないこと
原告が執筆した平成27年度特研報告書には,平成25年度特研報告書の第
1章,第3章,第6章及び結論と同一の記載があり(平成27年度特研報告書
の序論に1箇所・計15行,第2章に9箇所・計205行,第3章に22箇所・
計150行〔脚注含む〕,結論に6箇所・計82行であり,合計38箇所・計25
452行〔脚注含む〕。以下,平成27年度特研報告書と平成25年度特研報
告書の同一記載箇所を「本件引用箇所」という。),平成25年度特研報告書
からの引用であることは表示されていない(甲2,3,29,乙2,原告18
~20頁)。
平成27年度特研報告書に係る調査
ア防衛研究所は,平成28年2月5日,原告が執筆した平成27年度特研報5
告書に,平成25年度特研報告書の他の研究者が執筆した箇所について,適
切な表示がなく使用されていること(盗用)が疑われる旨の通報を受理した。
イ防衛研究所は,上記通報内容について予備調査担当部長を指名し,同担当
部長が予備調査(以下「本件予備調査」という。)を行い,通報の対象者で
ある原告に対する聴取等を行った。10
予備調査担当部長は,平成28年3月9日,研究幹事に対して,本件予備
調査の結果,前記通報どおり,平成27年度特研報告書の本件引用箇所につ
いて平成25年度特研報告書からの盗用の可能性がある旨の予備調査結果
を報告した(乙12)。
ウ防衛研究所は,平成28年3月14日,本件予備調査の結果に基づき,調15
査委員会を設置した。同委員会は,本調査として,平成28年4月25日以
降,政策研究部長,C,A,B及び原告への聴取をそれぞれ行い,同年7月
11日,前記予備調査結果のとおり,原告が故意に盗用を行ったと認定し,
その旨の調査報告書を作成した(甲34,乙14~19)。
エ原告は,平成28年9月11日付けで,防衛研究所に対し,前記認定につ20
いて不服申立書を提出したが,調査委員会は,同年10月18日付けで,再
調査を実施する必要はないと判断した旨を原告に通知した(甲39)。
防衛研究所長の原告による「研究活動に係る不正行為」の公表
防衛研究所長は,本件達19条1項に基づき,平成28年10月19日,防
衛研究所の公式ホームページ(http://www.nids.mod.go.jp)において,原告が25
執筆した平成27年度特研報告書には,平成25年度特研報告書の他の研究者
が執筆した箇所(第1章,第3章,第6章及び結論)からの盗用が認められる
旨公表した(以下「本件公表」という。甲40,41)。
防衛研究所長の原告に対する訓戒
防衛研究所長は,訓戒等に関する訓令2条1項に基づき,平成29年3月1
5日,原告に対し,平成27年度特研報告書において盗用を行ったことが「研5
究活動に係る不正行為」(本件達3条1項)として規律違反に当たることを理由
とする訓戒処分をした(以下「本件訓戒」という。甲60,61)。
なお,原告は,平成29年,東京地方裁判所において,被告に対し,本件訓
戒について,処分の取消しの訴え(行政事件訴訟法3条2項)を提起したが,
同裁判所は,平成30年8月,本件訓戒の処分性を否定し,訴えを却下する判10
決をした(平成29年(行ウ)第424号,甲99)。
2争点
本件公表及び本件訓戒の違法性(争点1)
原告の損害及び因果関係(争点2)
削除請求の可否(争点3)15
謝罪広告の要否(争点4)
3争点に関する当事者の主張
争点1(本件公表及び本件訓戒の違法性)について
(原告の主張)
原告が,平成27年度特研報告書の本件引用箇所について,平成25年度特20
研報告書からの引用であることを表示していない行為(以下「本件行為」とい
う。)は,以下のとおり,「研究活動に係る不正行為」(本件達3条1項,2条
2号)に当たらないにもかかわらず,防衛研究所長は,原告に対し,本件行為が
「研究活動に係る不正行為」に当たることを理由に本件公表及び本件訓戒を行
ったことから,本件公表及び本件訓戒には職務上の注意義務違反があり,国家25
賠償法上違法である。
ア平成27年度特研報告書は「発表された研究成果」(本件達2条2号柱書)
に当たらないこと
「発表された研究成果」(本件達2条2号柱書)とは,第三者に向けて公表
(「発行」又は「公衆への提示」)された研究成果を意味するから,平成2
7年度特研報告書は,「発表された研究成果」(本件達2条2号柱書)に当た5
らない。理由は次のとおりである。
特研報告書は,特別研究の要請をした内部部局に提出する内部資料であ
り,対外的に公表することが予定されていない防衛省の内部文書である。
このことは,①特研報告書は,内部部局との調整の上,研究計画班長,
担当部長,研究調査官,企画調整課長,企画部長,研究幹事,副所長及び10
所長(最終決裁権者)が順に決裁・修正指示をして完成し,内部部局に提
出されるものであること,②特研報告書は,防衛省の職員のみが閲覧する
ことができる本件システム(調査研究に関する達13条)に掲載され,「部
内限り」(防衛省限り)の取扱いがされていること,③防衛研究所に所属
する研究者(平成20年12月20日時点で71名)は,いずれもその実15
績・業績として特研報告書を対外的に公表していないことから,明らかで
ある。
「盗用」が「研究活動に係る不正行為」の一類型として,悪質性が顕著
かつ明白な「捏造」及び「改ざん」と並列されていることなどを踏まえれ
ば,本件達の解釈に当たっては文理解釈が優先されるべきであり,「発表」20
の本来的な語義を重視すべきであるところ,発表(世の中へおもてむきに
知らせること。大勢の人々に示すこと)と公表(おもてむきにすること。
世間に発表すること)は,おおむね同義であり,少なくとも第三者に知ら
せることを意味するものである。
被告が本件達の制定のよりどころとした旨主張している文科省の「研究25
活動における不正行為への対応等に関するガイドライン」(以下,単に「ガ
イドライン」という。)では,研究活動における不正行為は,投稿論文な
どの発表された研究成果に関する行為に限るものとされ,公表されていな
いものは対象外であると解釈されている。
盗用が研究活動に係る不正行為の一つとして掲げられているのは,著作
権侵害を防止する趣旨が含まれており,本件達における「発表された研究5
成果」を上記のとおり解することは,著作権法4条(著作物の公表)の解
釈と整合する。
被告は,特研報告書について「発表された」とは防衛研究所長に報告さ
れたことをいう旨主張するが,防衛研究所長への報告は決裁権者への提出
にすぎない上,そのような解釈は「よりどころ」とした文科省のガイドラ10
インに反するから,被告の主張は認められない。
イ平成25年度特研報告書は「既に発表した研究結果」(本件達2条2号三)
に当たらないこと
「既に発表した研究結果」(本件達2条2号三)とは,前記アの「発表され
た研究成果」(本件達2条2号柱書)と同様に,第三者に向けて公表(「発行」15
又は「公衆への提示」)された研究成果を意味するから,平成25年度特研
報告書は,前記アに記載したのと同様の理由により,「既に発表した研究結
果」(本件達2条2号三)に当たらない。
このことは,予備調査において,Aが,特研報告書を引用する際に引用で
あることを表示するか否かはあくまで倫理の問題であると認識している旨20
を述べていたこと,Bが,同じく,特研報告書を引用する際に引用であるこ
とを表示しなくとも規則違反に当たらない旨述べていたことからも明らか
である。
ウ本件行為は「盗用」(本件達2条2号柱書,同号三)に当たらないこと
本件行為は,「他の研究者等の既に発表した…研究結果…を適切な表示を25
せずに使用する」ものではなく,「盗用」(本件達2条2号柱書,同号三)
には当たらない。理由は次のとおりである。
平成25年度特研報告書の本件引用箇所は原告が単独で執筆したこと
原告は,A及びBに対し,平成25年度特研報告書の本件引用箇所であ
るA担当部分(第1章,第3章)及びB担当部分(第6章)に関する原稿
を紙に印刷した上で提供し,両名はこれを引き写して報告書を作成したか5
ら,平成25年度特研報告書の本件引用箇所は,原告が単独で執筆したも
のであり,「他の研究者等の既に発表した…研究結果」(本件達2条2号
三)には当たらない。
平成25年度特研報告書は共同研究の成果物であること
仮に平成25年度特研報告書の本件引用箇所を原告が単独で執筆した10
ことが認められないとしても,本件引用箇所を含む平成25年度特研報告
書は,各担当者が独立して執筆したものではなく,担当者全員が共同して
議論や資料のやり取りを経て,担当者全員で確認作業を行い,最終的に主
査であるAが取りまとめて完成させたものであり,共同研究の成果物であ
るから,平成27年度特研報告書の本件引用箇所が平成25年度特研報告15
書の引用であることを表示しなくても,「他の研究者等の研究結果を適切
な表示をせずに使用する」(本件達2条2号三)には当たらない。
平成27年度特別研究は平成25年度特別研究と連続性のある研究で
あること
平成27年度特別研究は,平成24年度特別研究及び平成25年度特別20
研究と基本的な問題意識が共通であり,平成25年度特研報告書の内容を
発展させるための連続性のある研究として位置づけられ,平成25年度特
研報告書を引用することは当然の前提となっていて,引用であることを表
示することは期待・予定されていないから,平成27年度特研報告書の本
件引用箇所が平成25年度特研報告書の引用であることを表示しなくて25
も,「適切な表示をせずに使用する」(本件達2条2号三)には当たらな
い。
エ本件行為について原告に故意がないこと(本件達2条2号柱書ただし書)
仮に本件行為が「発表された研究成果の…盗用」(本件達2条2号柱書本
文)に当たるとしても,原告は,本件行為当時,①平成27年度特研報告書
が「発表された研究成果」(本件達2条2号柱書)に当たること,②平成255
年度特研報告書が「他の研究者等の既に発表した研究結果」(本件達2条2
号三)に当たること,③平成27年度特研報告書の本件引用箇所が平成25
年度特研報告書からの引用であることを表示しなければ「適切な表示をせず
に使用する」(本件達2条2号三)に当たることを認識していなかった。
このことは,原告が,平成28年2月に盗用に関する通報があった旨の伝10
達を受けた際,前記①②について認識がなかった旨の回答をしていること,
平成27年度特研報告書と平成25年度特研報告書を見比べれば,前者が後
者を引用していることは明らかであり,常識的に考えれば,あえて引用であ
ることを表示しないで「盗用」に当たる行為をする動機は見当たらないこと
から明らかである。15
そして,以下のような事情を考慮すれば,原告が上記のような認識を有し
ていたことには合理的な理由があり,原告には,本件行為についての故意が
なかったというべきであるから,本件行為は本件達の定める不正行為に当た
らない(本件達2条2号柱書ただし書)。
防衛研究所における特別研究ないし特研報告書の位置付けが明確では20
なく,防衛研究所は,執筆者に対し,引用に関する明確な指示をしていな
かった。防衛研究所が,予備調査及び調査委員会の調査の過程において,
特研報告書の執筆者及び責任者等に対し,特研報告書を引用する際に引
用であることを表示する必要があるか否かについて聴き取りをしている
ことも,防衛研究所がこの点について確定的な意見を有していなかった25
ことを示すものである。
A及びBも,原告と同様に,特研報告書を引用する際に引用であること
を表示する必要はないと認識しており,Aは,原告に対し,特研報告書を
引用する際に引用であることを表示する必要はないと指導していた。
(被告の主張)
否認ないし争う。5
ア本件公表及び本件訓戒の国家賠償法の適用上の違法性について
本件公表について,以下のイないしエのとおり,原告の本件行為が本件
達2条2号三に定める「盗用」として同柱書に定める「研究活動に係る不
正行為」(以下「盗用による不正行為」という。)に当たることは明らか
であり,盗用による不正行為の重大性に加えて,原告は,防衛研究所の調10
査及び本件訴訟において,A及びBが担当した平成25年度特研報告書の
第3章及び第6章を自ら執筆したと主張しており,A及びBの名誉を毀損
する原告の行為は悪質であること,仮に本件公表をしなかった場合,A及
びBの執筆部分について,原告が執筆していたという虚偽の事実が広まり,
ひいては広く社会にかかる虚偽の事実がまん延することにもなりかねな15
いことから,厳格な対応が必要であり,本件達に従い,本件公表を行うこ
とは適切である。
また,本件公表は,盗用による不正行為を公表することにより,防衛研
究所の研究活動等において盗用による不正行為が一般的に抑止され,研究
倫理及び秩序等が損なわれることを防止できること,本件達に従って本件20
公表を行わず,それが後に発覚した場合,防衛研究所が組織的に不祥事を
隠ぺいしたなどの批判を免れず,学会における防衛研究所の評価や将来に
おける他機関との交流及び優れた研究者の確保等に悪影響を与え,ひいて
は広く国民にとっての損失であること,不正行為を防衛研究所内部に留め
ずに公表することは研究機関として健全性を保つために優先されるべき25
事項であるから,本件公表は,原告の名誉の毀損を上回る公表の必要性が
認められる。
したがって,本件公表について防衛研究所長に職務上の注意義務違反は
なく,本件公表には,国家賠償法1条1項の適用上の違法性はない。
本件訓戒について,以下のイないしエのとおり,防衛研究所長は,原告
の本件行為が盗用による不正行為に当たり,研究活動における不正行為と5
して重大な職業倫理違反行為であることや原告の職務経歴等を考慮して,
訓戒等に関する訓令2条1項に基づき,本件訓戒を行ったものである。
したがって,防衛研究所長に職務上の注意義務違反はなく,本件訓戒に
は,国家賠償法1条1項の適用上の違法性はない。
イ「発表された研究成果」(本件達2条2号柱書)の意義について10
「発表された」(本件達2条2号柱書)とは,特研報告書が,防衛省外へ対
外的に公表されたことを意味するものではなく,防衛研究所長に報告された
時点(調査研究に関する達12条1項)を意味するから,平成27年度特研
報告書は,「発表された研究成果」(本件達2条2号柱書)に当たる。その理
由は次のとおりである。15
特研報告書は,以下のとおり,原告が主張するような政策ペーパーない
し内部文書ではなく,論文であり,学術研究であることから,脚注等を含
めて個人の研究成果である論文としての様式,すなわち引用する場合には
引用であることを表示することが求められている。したがって,特研報告
書は,本件達が規定する「研究成果」(本件達2条2号柱書)ないし「研究20
結果」(本件達2条2号三)に当たる。
①特別研究は,内部部局の要請を受け,防衛政策の立案及び遂行に寄与
することを目的として実施されるものであり,政策決定を支援するシン
クタンクとしての防衛研究所の位置付けに照らして,重要な研究活動で
ある。25
②特研報告書においては,研究成果の評価において,結論を導くための
手続が結論以上に重視され,利用した材料である一次資料や二次的な文
献等の取捨選択や論理付けの過程を脚注等で示すことが求められてい
る。
③平成27年度特研報告書の執筆要領である「調査研究成果報告書の様
式について(平成27年11月20日)」において,脚注のスタイルは5
防衛研究所紀要に準ずるものとされているところ,防衛研究所紀要は,
国際安全保障学会の学会機関誌である国際安全保障に準じた様式で脚
注を付すことを求めている。
④原告自身,調査研究成果報告書において,平成27年度特研報告書を
学会雑誌等で発表することを予定している旨報告している。10
⑤本件達の制定過程では,特研報告書に本件達が適用されることを当然
の前提としており,これを明らかにするために,本件達の文言の修正を
行っている。
特研報告書は,防衛研究所長に報告した段階で,防衛省内部のイントラ
ネットを通じて,同システムにアクセス可能な多数の防衛省職員及び防衛15
省内の他の研究所である防衛大学校,陸上自衛隊教育訓練研究本部,海上
自衛隊・航空自衛隊幹部学校において閲覧されるから,科学コミュニティ
ーに対して公開されたと評価できる。
仮に「発表された研究成果」(本件達2条2号柱書)というためには特研
報告書が防衛省外へ対外的に公表されることを要すると考える場合,防衛20
研究所の主たる研究活動である戦史研究の成果報告書(特研報告書を含
む。)の多くについて,防衛省内で他の研究者の実績を盗用しても何らの
問題が生じないことになり,防衛研究所内の研究活動に著しい支障が生じ,
本件達を制定した目的が達成できないことになる。
本件達の制定過程において,「発表された」との文言が加えられた趣旨25
は,研究成果の作成過程における行為を対象としないためであり,特研報
告書が防衛研究所長に報告された段階における盗用を本件達の適用対象
外としたものではない。
ウ本件行為が「盗用」(本件達2条2号柱書,同号三)に当たること
原告の本件行為は,次のとおり,平成25年度特研報告書におけるA及び
Bの研究結果を適切な表示をせずに引用したもので,「盗用」(本件達2条5
2号柱書,同号三)に当たる。
平成25年度特研報告書の第3章及び第6章は,それぞれA及びBが執
筆したものであり,このことは,Aが職場で使用する業務用パソコン等か
ら発見された原稿データの存在,Bが執筆した部分の原稿データの存在,
原告が執筆した部分との資料の引用方法の相違等から明らかである。10
平成25年度特研報告書は,各担当者が,章ごとに分けて個別に担当し
て執筆したもので,それぞれの担当部分について全員で議論をしたことは
なく,Aも,主査として,内容上の重複の整理,章ごとの整合性,表記の
統一という観点から一定の依頼を各担当者に行ったことはあるものの,内
容上の修正を求めることは控えていた。したがって,平成25年度特研報15
告書は,共同研究の成果物とはいえず,引用をする場合には「適切な表示」
(本件達2条2号三)が必要である。
平成27度特研報告書は,平成25年度特研報告書と連続性のあるもの
ではなく,本件引用箇所を引用する場合には「適切な表示」が必要である。
理由は次のとおりである。20
①平成27年度特研報告書において,平成25年度特研報告書を踏まえ
た研究であることの記載はない。
②平成25年度特研報告書の要請元は人材育成課であったが,平成27
年度特研報告書の要請元は,人事計画・補任課及び国際協力課が加わっ
ており,一定の関連があるとしても,平成27年度特研報告書と平成225
5年度特研報告書は連続もしくは同一の研究ではない。
③過去の特研報告書を引用する場合には,先行研究の成果の利用部分と
新たな研究成果を区別して明示する必要があるから,自ら執筆した箇所
及び他の研究者が執筆した箇所について,適切な表示なく引用すること
は許されない。
エ本件行為について原告に故意があること5
本件達2条2号柱書ただし書は,研究過程,特に論文執筆中の過程におい
て,十分文章が練られていないため,適切に脚注が付されていなかったり,
他者の文章が自己の文章であるかのような誤解を与える記述になっていた
りする場合など,不注意に由来する技術的なミスを念頭に置いたものであり,
本件達に違反するとの認識を欠いていた場合にこれを許容する趣旨ではな10
い。
原告は,博士号を取得しており,論文作成に関する基本的知識は備わって
いたところ,平成27年度特研報告書の本件引用箇所について平成25年度
特研報告書からの引用であることを表示していないこと自体は認めており,
故意を認定し得ることは明らかである。原告自身,予備調査において,「特15
研ということもあり,引用が甘かったかもしれない」と述べており,故意を
自認していた。
Aは,原告に対し,特研報告書を引用する際に引用であることを表示する
必要はないと指導したことはない。
争点2(原告の損害及び因果関係)について20
(原告の主張)
ア本件公表により,原告は,名誉及び信用を毀損され,抑うつ状態となり,
防衛大学校の科学研究費プロジェクト計画書審査及び平成28年11月の
防衛研究所外の研究者で構成される研究会への参加を見送られ,防衛大学校
の学会誌である日本防衛学会から依頼された女性軍人に関する論文投稿を25
断念するなど,研究活動が十分に行えなくなるという精神的苦痛を被った。
これを慰謝するための慰謝料は2000万円を下らず,弁護士費用を加える
と,合計2200万円の損害を被った。
イ本件公表とこれに続く本件訓戒により,原告は,抑うつ状態となり,休職
を余儀なくされた。これに伴う休業損害は1000万円であり,弁護士費用
を加えると,合計1100万円の損害を被った。5
(被告の主張)
否認ないし争う。
争点3(削除請求の可否)について
(原告の主張)
本件公表は,本件行為が盗用による不正行為に当たらないにもかかわらず,10
防衛研究所の公式ホームページにおいて,原告が盗用による不正行為を行った
という虚偽の内容を公表するものであり,原告の名誉を毀損するから,本件公
表に係る記事は削除されるべきである。
(被告の主張)
否認ないし争う。15
争点4(謝罪広告の要否)について
(原告の主張)
本件公表は,原告の研究者としての立場に深刻な影響を与えるものであり,
防衛研究所が,正式に内外へ謝罪しない限り,原告の名誉毀損状態は回復され
ないから,謝罪広告が認められるべきである。20
(被告の主張)
否認ないし争う。
第3当裁判所の判断
1認定事実
本件達2条2号が規定する「研究活動に係る不正行為」が制定された経緯25
ア防衛研究所においては,当時の社会情勢や防衛研究所の研究機関としての
基盤強化等を背景として,平成26年頃から,研究活動における不正行為を
防止するため,文部科学省のガイドラインをよりどころとして,研究倫理に
関する規則である本件達を制定する作業が行われた。
イ防衛研究所の企画部企画調整課は,平成26年5月26日,本件達の原案
(以下「本件達原案」という。)について,各部の部長及び図書館長宛に意5
見照会文書を送付して意見照会を行った(以下「本件意見照会」という。乙
95~98)。本件達原案は,「研究活動に係る不正行為」(本件達2条2
号)について,次のとおり規定していた(以下「旧定義」という。乙96)。
(定義)
2条4号「研究活動に係る不正行為」とは,研究成果における捏造,改ざん10
及び盗用をいう。
一「捏造」存在しないデータ又は研究結果等を作成すること。
二「改ざん」資料又は過程等を変更する操作を行い,データ又は研
究結果等を真正でないものに加工すること。
三「盗用」他の研究者の発想,分析の解析方法等,データ等,研究15
結果等論文等又は用語を当該研究者等の了解を得ず,又は適切な表
示をせずに使用すること。
ウ本件意見照会に対し,照会対象者から要旨次のような質問・意見が寄せら
れた(乙97,98)。
対象となる研究活動に係る意見20
対象となる研究活動の定義を追加すべきであり,具体的には,①部外へ
の発表・公表を伴うもの,②基礎研究・所指定研究・特別研究,③研修員
が研修中に作成する研究論文,のいずれかの要素が含まれる研究とすべき
である。
ガイドラインに準拠し,発表された研究成果が対象となり,未発表のも25
のは含まれないことを明示すべきである。また,作成途中段階における不
適切な箇所まで対象に含まれないようにするため,飽くまで対象となるの
は公表されたものに限ると明示すべきである。
特定の媒体が対象となるか否かの質問及び意見
本件達の対象に「東アジア戦略概観」及び「ブリーフィングメモ」等の
媒体が含まれるのか,含まれる場合,前記媒体には脚注が付いていないた5
めに部外からの通報を惹起する可能性がある。
年次研究として提出された原稿等に係る意見
本件達の対象に①内局に回すような形で既に固まった概観等の原稿,②
防衛研究所紀要への掲載はされなかったものの,年次研究として提出され
た原稿が含まれることを明示すべきである。10
故意によらないものの除外に係る意見
ガイドラインに準拠し,故意によるものでないことが根拠をもって明ら
かにされたものは含まない旨の条項を追加するべきである。
「盗用」の定義に係る意見
①引用元は,単なるアイデアではなく,世上で認識されたものに限定す15
べきであり,②枝葉末節ではなく,主要な部分の引用に限定すべきであり,
③すでに出版やウェブサイト等で研究者が公開したものであれば,当該研
究者の了解を得る必要はなく,多量になる場合を除き,適切な表示を行っ
た上での引用は原則自由であるので,旧定義に変更を加えるべきである。
エ防衛研究所の企画部企画調整課は,前記意見照会の結果を踏まえ,平成220
6年6月5日,本件達原案を,次のとおり変更した(乙97)。また,前記
ウ記載の各意見のうち,については,刊行された時点で対象になる旨,
については,①は対象とならないが,②は所長に対して成果報告(決裁の合
議)を行う時点で対象となる旨回答した。
「本達の対象となる研究25
2条2号「研究活動に係る不正行為」とは,発表された研究成果の中に
捏造,改ざん又は盗用が含まれるものをいう。
本達における研究活動に係る不正行為の定義
2条2号「研究活動に係る不正行為」とは,発表された研究成果の中に
捏造,改ざん又は盗用が含まれるものをいう。
一「捏造」存在しないデータ又は研究結果等を作成することを5
いう。
二「改ざん」存在するデータ又は研究結果等を真正でないもの
に加工することをいう。
三「盗用」他の研究者等の既に研究成果として発表した発想,
分析・解析方法,データ,研究結果又は用語を適切な表示をせ10
ずに使用することをいう。」
オ本件達の制定に当たってよりどころとされた文部科学省のガイドライン
に関し,同省が公表しているQ&Aによれば,同ガイドラインでは,不正行
為の対象は投稿論文などの発表された研究成果に関する行為に限られ,論文
を投稿したものの出版社によって掲載を拒否された研究成果など,公表され15
ていないものについては対象外となる旨説明されている(甲102,乙29)。
カ防衛研究所は,平成26年6月20日,最終的に,前提事実のとおり本
件達を制定した。
平成24年度特研報告書の作成経過等
ア平成24年度特別研究及び平成25年度特別研究は,2年に及ぶ特別研究20
であり,平成24年度特別研究は,平成24年4月から平成25年3月まで,
「諸外国における女性軍人の今後の展望」に関する分野の研究の概観と論点
の絞り込みを行い,平成25年度特別研究は,平成25年4月から同年12
月まで,上記分野について国別に事例研究を行う計画であった(甲4,5,
A3~4頁)。25
イAは,平成24年4月24日,原告及びBに対し,平成24年度特研報告
書の作成に向けての今後の予定などについて,当面の作業として,文献の収
集とリスト作りを原告及びA,女性の登用に関する年表をBが担当すること
とし,月2回を目標として,文献の読み合わせ勉強会を行うことを指示した
(乙42,A4~5頁)。
ウA,原告及びBは,平成24年5月以降,共同で,海外の文献の読み合わ5
せ勉強会を複数回開催したほか,勉強会や女性自衛官との意見交換会,国内
外の研究者を招いての研究会等を実施した(乙62,A5頁)。
エ平成24年度特研報告書の題目は,「諸外国における女性軍人の今後の展
望」であり,第1部「概観」,第2部「女性軍人の役割拡大の理論的根拠-
軍事組織と社会変化」及び「資料」で構成されている(甲1,乙1)。10
オ平成24年度特研報告書は,Aが第1部の要旨を作成してそのデータを原
告に送付し,原告が,続けて前記データに第2部の要旨を加筆し,最終的に,
Aが第1部,原告が第2部を執筆して完成させた(甲67の2,乙40の1,
2,乙62添付資料12,14,乙90,91,A6~7頁)。もっとも,
平成24年度特研報告書においては,第1部及び第2部の担当者は明示され15
ていない(甲1,乙1)。
平成25年度特研報告書の作成経過等
ア平成25年度特研報告書の題目は,平成24年度特研報告書と同様に,「諸
外国における女性軍人の今後の展望」である(甲2,乙2)。
イ平成25年度特研報告書は,第1章「軍隊における女性の参画」,第2章20
「アメリカ-軍隊内機会均等の浸透と軍事作戦上の変化との兼ね合い」,第
3章「イギリス-女性の参画と作戦効率」,第4章「ドイツ-軍隊の任務の
変化及び兵員不足を補完する女性軍人」,第5章「スウェーデン-軍隊にお
ける制度的ジェンダー統合とその運用上の抑制」,第6章「オーストラリア
-ダイバーシティ国家オーストラリアの取り組み」,第7章「韓国-態勢維25
持の要件としての女性軍人」及び「結論」で構成されている(甲2,乙2)。
ウ平成25年度特研報告書4頁の脚注では,「第一章,第三章および結論は
A,第二章,第四章,第五章はD(原告),第六章はB,第七章はCが担当
した。」との記載がある(乙2)。
エ平成25年度特研報告書は,Aが第1章,第3章及び結論を,原告が第2
章,第4章及び第5章を,Bが第6章を,Cが第7章を執筆し,それぞれの5
原稿をAがとりまとめて各担当者に確認し,完成させた。平成25年度特研
報告書は,本件システムに掲載された(乙19)。
平成27年度特研報告書の作成経過等
ア平成27年度特別研究の題目は,「諸外国における女性軍人の人事管理等」
であり,平成27年4月から同年12月まで,平成24年度特別研究及び平10
成25年度特別研究の「諸外国の女性軍人の登用」の成果を踏まえ,女性軍
人の登用をさらに具体的に推進するに際して,国際社会での動向を踏まえた
上で,とり得べき制度の検討などを行う計画であった(甲6)。
イ平成27年度特研報告書は,第1章「アメリカ」,第2章「イギリス」,
第3章「オーストラリア」,第4章「NATO」及び「結論」で構成されて15
いる(甲3,乙9)。
ウ防衛研究所は,平成27年度特研報告書を含む平成27年度調査研究成果
報告書の提出について,①研究実施期間が平成27年12月までの特別研究
は,同月末までに所長決裁完了後,平成28年1月に本件システムに掲示す
ること,②前記①以外の特別研究,所指定研究及び基礎研究は,平成28年20
3月末までに所長決裁完了後,同年4月に本件システムに掲示すること,を
通知した(甲93)。
また,防衛研究所は,平成27年11月20日,調査研究成果報告書の様
式について,規格を指定し,脚注のスタイルは「防衛研究所紀要」に準拠す
ることを要請した(甲93)。「防衛研究所紀要」の執筆要領は,国家安全25
保障学会の学会機関紙の執筆要領に準拠することとされているところ,国家
安全保障学会の執筆要領は,引用の表示の例などを定めている(甲97の1,
97の2)。
エ原告は,平成27年11月30日までに平成27年度特研報告書を執筆,
完成させ,平成28年1月4日所長決裁が完了した。平成27年度特研報告
書は,同月13日,要請元の内部部局である人事計画・補任課に,同月265
日に同じく人材育成課に提供された(前提事実エ,甲6,乙19,35,
88)。平成27年度特研報告書のデータは,防衛研究所のサーバの共有フ
ォルダ(端末共有データフォルダ)に保存された(乙19,100)。
オ原告は,平成27年度特研報告書の本件引用箇所について,平成25年度
特研報告書からの引用であることは表示していないが(前提事実⑷),他方10
で,本件引用箇所以外の文献の引用箇所については,引用であることを表示
している(甲3,乙9)。
カ原告が執筆した平成27年度特研報告書を除く他の平成27年度の特別
研究に係る実施報告書及び成果報告書は,本件システムに掲載されたが,原
告が執筆した平成27年度特研報告書は,本件システムに一度も掲載されて15
いない(乙70,弁論の全趣旨)。
キ本件公表までに,原告が執筆した部分を含む平成27年度特研報告書の冊
子合計46部は,内部部局の各部の部長等の一部の者に配布された(乙10
1,乙102の1,2)。
原告に係る通報,調査委員会の設置及び予備調査20
ア防衛研究所の研究幹事(E)は,平成28年2月10日,原告に対し,原
告が執筆した平成27年度特研報告書について,平成25年度特研報告書か
らの不適切な使用があるのではないかとの本件達6条に基づく通報がされ
た旨告知し,本件達に従い,責任者として,前記通報に係る事実が「研究活
動に係る不正行為」に該当するか否かを調査する旨伝えた(甲8,101)。25
その際,原告は,研究幹事に対し,特別研究は防衛研究所内部の研究であ
ること,特研報告書は政策に資するペーパーであり学術論文ではないこと,
みなさんがやったことを建設的に発展させるスタンスでやったつもりだっ
たが,ちょっとやり方がまずかったかもしれないことなどの説明をした(甲
8,101)。
イ原告は,平成28年2月22日,防衛研究所長(F),研究幹事及び企画5
部長(G)に対し,予備調査に協力することを約束し,予備調査に原告の代
理人として弁護士の関与を求めた(甲8)。
ウAは,平成28年2月19日,予備調査の聴取において,①平成25年度
特研報告書について,「章別の担当は明示(4頁)されているが,分担執筆
か合作(最終的に皆で議論の上作成)か?」との質問に対し,「執筆に当た10
って,事前に概念整理を行ったが,各章・結論の執筆は合作ではなく個別に
担当した。」と回答し,②特研報告書の取扱いについて,「部内の報告書と
いう性格上,無断で引用は可能か?」との質問に対し,「特研は案件によっ
て,研究か調査かという位置づけが異なるのではないか。学術的かどうかに
関わらず,研究者倫理として無断引用は不可能。」と回答した(乙12添付15
資料2)。
エBは,平成28年2月22日,予備調査の聴取において,①平成25年度
特研報告書について,「章別の担当は明示(4頁)されているが,分担執筆
か合作(最終的に皆で議論の上作成)か?」との質問に対し,「章別に分担
執筆した上で,担当者で集まって議論し,最終的に主査が編集し提出してい20
る。従って,章別に執筆した部分については共有物という認識である。」と
回答し,②特研報告書の取扱いについて,「部内の報告書という性格上,無
断で引用は可能か?」との質問に対し,「部内発表の論文等であれば,引用
についてかなり気を使う必要があるが,部内報告書であれば他に転用されな
く且つ上記回答の共有物という認識なので形式的には引用可能と考える」と25
回答した(乙12添付資料2)。
オ原告は,平成28年2月29日,防衛研究所の地域研究部長北東アジア研
究室長研究調整官(H)に対し,原告が平成28年度特研報告書の担当者か
ら外されているとして,本件達8条に従い,前記通報による不利益取扱いの
是正を求めた(甲9)。
カ防衛研究所の企画部企画調整課長(I)は,平成28年3月3日,原告に5
対し,予備調査において,弁護士の関与を認めない旨通知した(甲10,1
1)。
キ防衛研究所の予備調査担当部長(J)は,平成28年3月7日,原告が執
筆した平成27年度特研報告書における平成25年度特研報告書からの盗
用の可能性の有無を調査するための予備調査として,原告に対し,①平成210
5年度特別研究は分担執筆か合作か,②特別研究の性質をどのように認識し
ているか,③共同研究の場合,執筆者の一員であれば無断引用は可能か,④
平成27年度特別研究において平成25年度特別研究の共同研究者若しく
は上司に相談をしたか,⑤平成25年度特別研究と平成27年度特別研究は
どのような関係にあるか,⑥平成27年度特研報告書において平成25年度15
特研報告書を引用することにつき共同研究者から許諾を得たかの各点につ
いて,同月9日までに回答するように求めた(甲12)。
ク原告は,平成28年3月9日,防衛研究所の予備調査担当部長に対し,要
旨次のとおり回答した(甲13)。
平成25年度特研報告書は,章別の担当者を分けているが,実際には原20
告が章の区分を超えて論述した部分も他人の執筆部分とされているもの
があり,分担執筆とも合作とも評価しえない。
特別研究は,防衛研究所の所員としての職務の一部を占める研究による
成果物であり,著作権は国に帰属し,所員には帰属しない(著作権法15
条1項参照)。25
したがって,一般的に特研報告書からの引用は,引用前の意味や位置づ
けに特段の改変がない限りは,自分の論述か他人の論述かにかかわらず自
由に引用しても問題がない(著作権法32条2項)。
防衛研究所では,学会報告や学術誌に特別研究の成果を引用する場合,
特別研究を元にしているなどと脚注に記さなければならない,という指導
はなく,かえって,特別研究を他の著作物にて引用する場合は適宜アレン5
ジして使用するようにと指導されることがあった。
原告は,特別研究に取り掛かる際に,幹部研究者から,「自分が執筆し
た特別研究から引用する場合には,特別研究成果報告書の完成前は認めな
いが,完成後であれば引用については明示しないでアレンジして使うよう
に」と指導されることがあった。10
防衛研究所の所員の間では,所員による特別研究成果報告書からの引用
は,報告,発表,引用の時期については留意することを前提に,比較的自
由に行えると認識されていた。
原告は,前記指導に加えて,防衛研究所の所員としての研究業務である
成果物に関する著作権は国に帰属すると理解しているため,防衛研究所の15
所員であればその成果物からの引用は無断引用には該当しないと考えて
いる。
防衛研究所の特研報告書からの引用は,共同研究か単独研究かにかかわ
らず,無断引用にはならないと認識している。
原告は,上司(部長など)に,事前に平成27年度の特別研究の内容と20
進め方などについて十分に相談し,平成25年度の特別研究の共同研究者
に対しても,平成27年度の特別研究の進め方などについて十分に相談し
た。
平成27年度特研報告書は,平成25年度の特別研究での共同研究の体
験を踏まえて執筆した。25
原告は平成27年度特研報告書の執筆において,平成25年度特別研究
の共同研究者から引用に関して許諾は得ていない。
ケ防衛研究所の予備調査担当部長は,平成28年3月9日,予備調査の結果,
①原告が執筆した平成27年度特研報告書には,Aが執筆した平成25年度
特研報告書の要旨,第1章,第3章及び結論と引用・類似表現があり,引用
の表示及び許諾がないこと,原告が執筆した平成25年度特研報告書の第25
章と引用・類似表現があり,引用の表示がないこと,Bが執筆した平成25
年度特研報告書の第6章と引用・類似表現があり,引用の表示がなく,許諾
は不明確であること,②原告は特研報告書の著作権が国に帰属しており,自
由に引用することができるから,無断引用(盗用)には当たらないと主張す
るが,一般的に,研究者は論文において国に著作権が帰属する他者の著作物10
を引用する際にも,盗用との指摘を受けることがないよう出典を明示してい
ること,を理由に,原告が盗用を行った可能性があると判断した(乙12)。
コ防衛研究所は,平成28年3月11日,本件達11条1項及び同条2項に
基づき,本調査を実施する旨決定し,同日,原告に対し,通知した(甲14
~16)。15
サ原告は,平成28年3月14日,防衛研究所の研究幹事及び予備調査担当
部長に対し,予備調査の結果及び本調査を実施する理由などが開示されてい
ないこと,並びに,本件達13条2項に基づく,本調査及び調査委員会に対
する異議申立権が実質的に保障されていない旨の抗議をした(甲17)。
シ防衛研究所は,平成28年3月14日,本件達12条1項に基づき,本調20
査のための調査委員会を設置し,同日,原告に対し,本件達14条4項に基
づく本調査における原告の弁明の機会において,弁護士の関与を認めない旨
通知した。
防衛研究所は,同月15日,原告に対し,調査委員会の委員を開示した上
で,本件達13条1項に基づき,調査委員会が設置された旨,原告には本件25
達13条2項に基づき,異議申立権が保障されている旨を通知した(甲18
~20,乙13)。
ス原告は,平成28年3月18日,防衛研究所長及び研究幹事に対し,防衛
省政務官兼内閣府大臣政務官であるKが,同月17日,原告に対し,「盗用
を認めなさい。そうすれば穏当にすむように計らう。」「本調査で不正が認
められたら,自分の考えでは,防衛研究所を退職せざるをえない。」「自主5
的に研究所を異動すれば,防衛研究所に異動する前に属していた防衛省内の
組織へ戻れるようにしてやる。」などと発言したことについて,事実誤認を
前提にした不当な要求であり,かつ,本調査を妨害する重大かつ不正な恫喝
行為及び違法な圧力(ハラスメント)であるとして,抗議をした(甲22)。
セ原告は,平成28年3月22日,防衛研究所の研究幹事に対し,①平成210
7年度特研報告書において平成25年度特研報告書からの引用の表示がな
いことは,著作権法上問題がなく,盗用には当たらないこと,②原告は,平
成25年度特研報告書のAが担当する大部分について,代わりに作成したこ
と,③原告は,平成25年度特研報告書の著作者であること,④原告以外に
も,防衛研究所の研究員は,特研報告書において,他の研究員が作成した特15
研報告書の論文を引用の表示なく利用していること等を指摘し,調査委員会
の設置の撤回,調査委員会の委員の人選について異議を申し立てた(以下「本
件異議申立て」という。甲21)。
ソ防衛研究所の企画部企画調整課長は,平成28年3月23日,原告に対し,
政務官であるKから原告に電話があったことについては,防衛研究所として20
関与していない旨回答した(甲23)。
タ防衛研究所の研究幹事は,平成28年4月7日,原告に対し,本件異議申
立てについて,調査委員会の委員の人選について外部有識者の数を変更する
こととし,その余を却下した(以下「本件異議申立審査結果」という。甲2
4)。原告は,平成28年4月18日,本件異議申立審査結果に対し,本件25
達13条2項に基づき異議を申し立てたが,防衛研究所は,同月21日,同
申立を棄却した(甲25,26)。
本調査
ア防衛研究所は,平成28年4月頃,原告に対し,本調査における聴取事項
として,要旨次のとおり質問事項を送付した(以下「本件質問」という。甲
27)。5
原告は,平成25年度特研報告書の執筆者が誰であるかにかかわらず,
特研報告書は国に著作権が帰属するという理解に基づき,平成27年度特
研報告書において,平成25年度特研報告書の一部を引用の表示なく使用
したという認識であるか(以下「質問1」という。)。
原告は,予備調査において,平成25年度特研報告書に関し,Aの論考10
の大部分について代わりに作成している旨述べているが,具体的にどの部
分であるか(以下「質問2」という。)。
質問2に関し,どのような経緯で原告がAの代わりに作成することにな
ったのか(以下「質問3」という。)。
平成25年度特研報告書のB及びCが担当する章について,原告が代わ15
りに作成した部分はあるか(以下「質問4」という。)。
質問2~4を証明できる証拠を提出せよ。
イ原告は,平成28年5月9日,防衛研究所の研究幹事に対し,本件質問を
回答する前提として,予備調査の結果を明らかにする必要がある旨回答した
(甲28)。20
ウ防衛研究所は,平成28年5月12日,原告に対し,平成27年度特研報
告書と平成25年度特研報告書について,同一又は類似していると考えられ
る箇所を色付けした対照表を送付し,平成28年5月18日までに本件質問
に対して回答するよう求めた(甲29)。
エ原告は,平成28年5月18日,防衛研究所の研究幹事に対し,本件質問25
に対する回答を要旨次のとおり回答した(甲30)。
質問1への回答
特研報告書の著作権は国にあると認識している。
しかしながら,上記にかかわらず,原告は,平成25年度特研報告書を
自ら作成しており,平成27年度特研報告書において,平成25年度特研
報告書からの引用であることを表示する必要はない。5
質問2への回答
原告は,平成25年度特研報告書のA担当部分を全部書いた。
質問3への回答
Aは,企画調整課研究調整官としての研究行政と研究とを兼務して,過
大な精神的負担を有していたことから,Aは,当時,平成24年度特研報10
告書及び平成25年度特研報告書を執筆できる状況ではなかった。
原告は,Aの代わりに,自分の論文として,公刊資料・学術書等を分析
して執筆した。原告は,Aから資料や下書きの提供は受けておらず,相談
等もしていない。
また,平成25年度特研報告書及び平成27年度特研報告書は,原告が15
執筆した平成24年度特研報告書が母体となっている。この関係性を明ら
かにするため,平成25年度特研報告書と平成27年度特研報告書におい
て平成24年度特研報告書を参照ないし引用している箇所の対照表を別
途作成して提出する。
質問4への回答20
B及びCが担当する章のうち,原告がどこを代わりに書いたのか明示し
てもらいたい。その上で,質問4へ回答する。
証拠提出の依頼について
職場のパソコンでは,外付けハードディスク等によってデータを保存す
ることは禁じられており,パソコンの容量には限界があることから,平成25
25年度特研報告書で新たに加筆した資料データ及びメールは保管して
いない。
紙による文書の保管は,前所長から「捨てるように」との方針に従って
おり,保管していない。
オ原告は,平成28年6月30日,防衛研究所の研究幹事に対し,平成24
年度特研報告書,平成25年度特研報告書及び平成27年度特研報告書の対5
照表を添付の上,要旨次のとおり回答した(甲32,33)。
平成24年度特研報告書について
原告は,要旨部分,第1部及び第2部を全部執筆した。
平成25年度特研報告書について
第1章(総論)には,平成24年度特研報告書の要旨及び第1部と同一10
の記述がある。第3章(イギリス)は,当時,Aが体調不良であったこと
から,原告が執筆した。第6章(オーストラリア)は,当時,Bが体調不
良であったことから,原告が執筆した。
平成25年度特研報告書は,原告が執筆した平成24年度特研報告書の
考え方を前提に事例を加筆したものであるから,原告が執筆したものであ15
る。
平成27年度特研報告書について
要旨は,平成25年度特研報告書と同様に,平成24年度特研報告書の
第1部と第2部で論じた内容や事例を加筆している。
平成27年度特研報告書の第2章(イギリス)及び第3章(オーストラ20
リア)には,平成25年度特研報告書の第3章(イギリス)及び第6章(オ
ーストラリア)と同一の内容及び新たに執筆した部分がある。
まとめ
平成24年度特研報告書,平成25年度特研報告書及び平成27年度特
研報告書は,テーマが共通する一連の報告書であり,平成27年度特研報25
告書は,原告が執筆した平成25年度特研報告書を引用したにすぎないか
ら,「他の研究者等の既に発表した」「研究成果」の使用(本件達2条2
号三)には当たらない。
調査委員会の判断
調査委員会は,平成28年4月から同年7月まで,5回の調査委員会を開催
し,同月11日,原告の本件行為について,次のとおり,判断の理由を挙げて,5
本件行為が「盗用」による「研究活動に係る不正行為」に該当すると判断した
(甲34,乙19)。
ア平成27年度特研報告書の本件引用箇所について,平成25年度特研報告
書からの引用を示す表示はない。
イ平成25年度特研報告書は,第2章(アメリカ)は原告の分担執筆であり,10
第1章,第3章及び結論はAの分担執筆,第6章はBの分担執筆である。
ウ平成25年度特研報告書の分担執筆者である原告以外の3名(A,B,C)
に聴取したところ,それぞれ自ら執筆したと証言し,それを支持する証拠が
提出されている。
エ調査委員会は,前記アないしウを踏まえ,平成25年度特研報告書のA及15
びBが分担執筆した箇所について,原告が平成27年度特研報告書において
盗用を行い,それが故意に行われたと判断した。
オ原告は平成25年度特研報告書を全て執筆したと主張するが,これを裏付
ける証拠は提出されておらず,むしろ,平成25年度特研報告書(4頁)に
担当者が明記されている。20
不服申立て,本件公表及び本件訓戒
ア原告は,平成28年9月12日付けで,防衛研究所に対し,不服申立書を
提出したが,調査委員会は,同年10月18日付けで,再調査を実施する必
要はないと判断し,原告に通知した(前提事実⑸エ)。
イ防衛研究所長は,平成28年10月19日,本件公表を行い,平成27年25
度特研報告書を削除した(前提事実⑹,甲40,41)。
ウ防衛研究所は,平成29年3月15日,原告に対し,本件訓戒を行った(前
提事実⑺,甲60,61)。
2争点1(本件公表及び本件訓戒の違法性)について
国家賠償法1条1項は、国又は公共団体の公権力の行使に当たる公務員が、
個別の国民に対して負担する職務上の法的義務に違背して当該国民に損害を5
加えたときに、国又は公共団体がこれを賠償する責めに任ずることを規定する
ものである(最高裁判所昭和60年11月21日・民集39巻7号1512頁)。
本件行為が,「研究活動に係る不正行為」に該当するには,①平成27年度
特研報告書が「発表された研究成果」(本件達2条2号柱書)に当たること,②
本件行為が「盗用」(本件達2条2号三)に当たること,③原告が上記①,②に10
ついて「故意によるものでないことが根拠をもって明らか」ではないこと(本
件達2条2号柱書ただし書)の要件を充足する必要があるため,以下検討する。
上記①について
ア上記①について,「発表された研究成果」(本件達2条2号柱書)の意義を
解釈する際には,規定の文言,本件達が制定された目的,経緯及び本件達に15
関連する規定などを考慮するべきである。
イ本件達は,防衛研究所が実施する研究活動における不正行為を防止するた
め,文部科学省のガイドラインをよりどころとして制定されたものであると
ころ,ガイドラインは,研究活動のうち,対外的に公表された研究成果にお
ける不正を対象としている。これは,研究活動が当該研究者のみが認識し得20
る範囲にとどまっている限り,不正が研究活動に対する信頼を失わせる危険
があるとはいえず,当該研究成果が公表され,他の研究者等の目に触れる状
態に至って初めて,研究活動に対する信頼を失わせる危険が生じることによ
るものと解される。ガイドラインが,不正行為と認定された行為を公表すべ
きものとしているのも,その表れであると考えられる。25
本件達が,ガイドラインをよりどころとして制定され,不正行為に対して
は,内部的な懲戒処分の対象とするのみならず,これを対外的に公表すべき
ものとしていることに照らせば,本件達2条2号柱書の規定も,上記ガイド
ラインと基本的に同様の趣旨に出たものと解される。したがって,研究成果
が「発表された」といえるためには,少なくとも,当該研究者の研究成果が,
他の研究者において広く閲覧可能な状態になったことが必要であると解す5
べきである。もっとも,本件達は,不正行為を,研究成果が防衛省ないし防
衛研究所の外部へ発表された場合に限定していないことからすれば,防衛省
ないし防衛研究所の内外にかかわらず,研究成果が他の研究者が広く閲覧可
能な状態になり,不正行為がいわゆる科学コミュニティーにおける研究活動
に対する信頼を失わせるに至ったものと評価し得る状況になることで足り10
ると解すべきである。
この見地からみると,特別研究は,内部部局の要請を受け,防衛政策の立
案及び遂行に寄与することを目的に実施される調査研究であり,研究者が調
査研究を完了したときは,防衛研究所長に対して速やかに文書による成果報
告をする義務があるとされていること(調査研究に関する達12条1項,同15
条2項)からすれば,特別研究は,第一次的には,防衛省内の政策立案のた
めに職務上作成される内部資料であり,防衛研究所長に対する報告も,職務
上の成果を上司に提出・報告するという性質を有するものであると解される。
そして,調査研究に関する達が,調査研究の成果の発表の手段として,本件
システムへの掲載(13条),研究成果発表会の実施(14条),ホームペ20
ージの掲載その他の軽易な手段による公表(15条)を規定していること(前
提事実),原告が執筆した平成27年度特研報告書を除く他の平成27年
度の特別研究に係る実施報告書及び成果報告書が本件システムに掲載され
ていること(認定事実⑷カ)に照らすと,「発表された」とは,「研究成果」
が,他の研究者に対して研究成果発表会で報告されるか,本件システムに掲25
載されるなどして,他の多数の研究者が批判・吟味の対象として「研究成果」
の内容を認識することができる状態になることをいうと解するのが相当で
ある。
この点,被告は,「発表された研究成果」とは,所長に対して成果報告(決
裁の合議)がされた研究成果をいうと主張する。そして,防衛研究所の企画
部企画調整課が,本件達の制定過程における意見照会において,防衛研究所5
紀要への掲載はされなかったが,年次研究として提出された原稿が「研究活
動に係る不正行為」の対象となるかという質問に対し,所長に対して成果報
告(決裁の合議)を行う時点で対象となると回答したことは,前記認定のと
おりである(認定事実エ)。しかしながら,本件達の規定が,「防衛研究
所長に対して成果報告(決裁の合議)を行った研究成果」などと修正される10
ことはなく,最終的に「発表された研究成果」と規定していること,「発表
された」と「防衛研究所長に報告した」との間には意味として大きな乖離が
あること,防衛研究所長に対する報告は,職務上の成果を上司に提出・報告
する行為にすぎず,これにより研究成果が他の研究者が閲覧可能となるもの
ではないこと,調査研究の成果が防衛研究所長に報告された時点で本件達の15
対象となることにつき,防衛研究所内の職員に周知されたことを認めるに足
りる証拠がないことを考慮すると,前記回答は,あくまで本件達の制定過程
における中間的な検討結果にとどまるというべきであり,前記説示を覆すも
のではない。
ウこれを本件について見ると,前提事実オのとおり,平成27年度特研報20
告書は,平成28年1月,防衛研究所所長に成果報告され,要請元の内部部
局に対してデータが提供されたが,平成27年度特研報告書が研究成果発表
会で報告された事実及び本件システムに掲載された事実はなかったという
のであり,他の多数の研究者が批判・吟味の対象として「研究成果」の内容
を認識することができる状態になったということはできないから,平成2725
年度特研報告書は,「発表された研究成果」(本件達2条2号柱書)に当たる
ということはできない。
なお,内部部局に平成27年度特研報告書のデータが提供されたこと
()は,防衛省における政策立案のために作成された資料の提
供という性質を有するものにすぎないと考えられること,平成27年度特
研報告書のデータが防衛研究所のサーバの共有フォルダ(端末共有データフ5
ォルダ)に保存されたこと(認定事実⑷エ)は,データの管理のために共有
フォルダに保存されていたものにすぎず,研究者がその内容を閲覧すること
を直接の目的とするものではないことに加え,実際に他の多数の研究者が閲
覧することができた事実を認めるに足りる的確な証拠はないこと,本件公
表までに原告が執筆した部分を含む平成27年度特研報告書の冊子合計410
6部が内部部局の各部の部長等の一部の者に配布されていたこと(認定事実
⑷キ)は,内部資料の回覧ないし提供にとどまり,他の多数の研究者が批判・
吟味の対象としてその内容を認識することができたとまではいえないと考
えられることからすると,いずれも上記認定を左右するものとはいえない。
上記②について15
ア本件達2条2号三は,「盗用」について,他の研究者等の既に発表した研
究結果を適切な表示をせずに使用することと定義しているところ,既に発表
した研究結果(本件達2条2号三)の「研究結果」とは,上記①の「研究成果」
(本件達2条2号柱書)と同義であると解され,前記で説示したのと同様に,
「発表した」とは,研究成果が,他の研究者に対して研究成果発表会で報告20
されるか,本件システムに掲載されるなどして,他の多数の研究者が批判・
吟味の対象として「研究成果」の内容を認識することができる状態になるこ
とをいうと解すべきである。
これを本件について見ると,前記認定のとおり,平成25年度特研報告書
は本件システムに掲載された事実を認めることができるから,本件達2条225
号三にいう「既に発表した研究結果」に当たるものと認められる。
イもっとも,本件達2条2号三の「盗用」に当たるというためには,「他の
研究者等の」研究結果を適切な表示をせずに使用することが必要であるとこ
ろ(本件達2条2号三),平成25年度特別研究は,原告を含む防衛研究所
の職員4名の共同研究であるから,原告が平成25年度特研報告書を引用す
ることは,「他の研究者等の」研究結果の使用に当たらないと解する余地が5
ある。
この点,前記認定によれば,平成25年度特別研究は,平成24年度から
2年間にわたり行われた調査研究であり,平成24年度特別研究は,海外の
研究者の文献を輪読したり,講師を招いて共同討議を行うなど,共同研究の
色彩の強いものであったこと,他方で,平成25年度特研報告書は,平成210
4年度特別研究の成果を踏まえ,4名の研究者が,女性軍人の登用をめぐる
各国の実情を,担当を決めて分担,研究・執筆して完成させたものであるこ
とが認められる。そして,各人の担当部分は,平成25年度特研報告書にお
いて明示されている。
そうすると,平成25年度特研報告書は,共同研究の成果ではあるものの,15
原告以外の担当者が執筆した部分は,「他の研究者等の」研究結果に当たる
というべきである。
ウ原告は,平成25年度特研報告書のA担当部分及びB担当部分は,実際に
は原告が執筆したと主張する。
しかしながら,これを認めるに足りる客観的証拠は一切存在せず,かえっ20
て,Aが,平成25年12月8日,原告に対し,「今はイギリスの事例に取
り組んでいます」とのメールを送信したこと(乙23),Aが執筆した平成
25年度特研報告書の第3章のデータが残っていること(乙21,24,2
5〔いずれも枝番を含む。〕,A12~14頁),原告が,平成25年10
月31日,執筆した平成25年度特研報告書の第2章,第4章及び第5章を25
Aにメールで送付した事実が認められること(乙62添付資料17,乙92,
93,A10~11頁),Bが,平成25年度特研報告書の第6章について,
原案を執筆し,平成25年7月から同年12月までの間,Aから少なくとも
5回の指導を受けてその都度修正を行い,同月9日,Aに対し,原稿をメー
ルで送付した事実が認められること(乙4,乙44~49〔枝番のあるもの
は枝番を含む。〕,乙62添付資料21~25,B6~10,20頁,A15
1頁),他方で,原告がAやBに対しその担当分の原稿を交付したことを認
めるに足りる客観的な証拠は存在しないこと等を総合すると,平成25年度
特研報告書のA担当部分及びB担当部分は,それぞれA及びBが執筆したも
のと認められる。
したがって,原告の主張は採用することができない。10
上記③について
ア上記③について,本件達2条2号柱書ただし書は,研究成果に係る不正行
為が故意によるものでないことが根拠をもって明らかにされた場合には,不
正行為に当たらないと規定している。
これは,過失によって不正行為であるかのような外観が惹起された場合に15
まで,公表という制裁を伴う不正行為を認定することは研究者にとって酷で
あることから,対象となる不正行為を故意によるものに限る趣旨であると考
えられるが,よりどころとされたガイドラインが,故意のみならず,研究者
としてわきまえるべき基本的な注意義務を著しく怠ったことによる不正行
為についても対象としていること(乙29)に照らせば,故意があるという20
ためには,原則として,不正行為を構成する客観的な事実の認識があること
で足りるというべきである。そして,不正行為を構成する客観的な事実の認
識はあったが,独自の見解によって当該事実が本件達にいう不正行為である
ことの認識を欠いていたにすぎない場合は,故意がないということはできな
いのであって,不正行為であることの認識を欠いていたことが,相応の合理25
的な根拠に基づく場合に限り,故意が否定されると解するのが相当である。
本件達が,故意がないことが「根拠をもって明らかにされた」場合という要
件を規定しているのも,このような趣旨を含むものと解される。
イ以上の見地から検討すると,原告は,平成25年度特研報告書におけるA
及びBの担当部分につき,適切な表示をすることなく引用する旨の認識を有
していたことは明らかである。もっとも,前記認定事実によれば,原告は,5
特研報告書は防衛研究所紀要に掲載されるなどして対外的に公表されるま
では防衛省の内部資料であり,他の特研報告書の内容を引用する場合に表示
をしなくとも,本件達にいう「盗用」には当たらないとの認識を有していた
ことが認められるところ,特研報告書が,第一次的には,内部部局における
政策立案の参考とするために作成される内部資料としての性格を有してい10
ることは前記判示のとおりであり,実際にも,本件達の制定過程において,
東アジア戦略概観及びブリーフィングメモについては,公刊されたときに本
件達の対象となるとの見解が示されていたことも考慮すると,上記のような
原告の見解も,必ずしも独自の見解にすぎないということはできない。そし
て,本件達の制定過程において,企画部企画調整課が,特別研究については,15
所長に成果報告がされたときに対象となる旨の見解を示していたことは認
められるものの,防衛省内において,最終的に本件達の解釈について周知が
図られたことを認めるに足りる証拠はない。かえって,前記認定のとおり,
Aが,予備調査において特研報告書が本件達の対象となるかどうかについて
明確な回答を行っておらず,Bは,むしろ対象にはならないことを前提とす20
る回答を行っていることや,Bが,本件訴訟の証人尋問において,本件達が
制定されたこと自体知っていたかという質問に対しあいまいな証言に終始
していることに鑑みれば,そのような周知は行われなかった可能性が高く,
特研報告書がどの段階で本件達の対象となるかについて,必ずしも防衛研究
所内において共通認識が形成されていなかったことがうかがわれる。さらに,25
平成25年度特研報告書は,原告を含む4名の研究者による共同研究である
ところ,このような共同研究による特別研究における他の研究者の担当部分
を引用する際の規律についても,防衛研究所内において共通認識が形成され
ていたことをうかがわせる証拠はない。
以上の諸点を考慮すれば,原告が,防衛研究所紀要に掲載される前の特研
報告書については,引用する際に必ずしも表示をしなくとも本件達にいう5
「盗用」には当たらないと考えていたことについては,相応の合理的な根拠
に基づくというべきであるから,原告の本件行為は,故意によるものではな
いと認められる。
国家賠償法上の違法性について
以上のとおり,原告の本件行為について,①平成27年度特研報告書が「発10
表された研究成果」(本件達2条2号柱書)に当たらないこと,②原告の本件行
為が「故意によるものでないことが根拠をもって明らか」であることが認めら
れる。
そして,上記①(発表された研究成果に当たるか否か)については,本件達
の制定の経緯や,その文言からすれば,少なくとも,研究成果が科学コミュニ15
ティーに対して公開される必要があることは容易に認識可能であるところ,平
成27年度特研報告書は,所長に対する成果報告及び内部部局に対する提供が
されたのみで,本件システムに掲載されることはなかったというのであるから,
未だ「発表された」状況に至っていないことは容易に認識可能であったという
ことができる。また,上記②(原告の故意)について,前記の説示のとおり,20
原告が,予備調査及び本調査において,防衛研究所に対し,平成27年度特研
報告書において平成25年度特研報告書から引用する際に引用であることを
表示する必要はないと認識していた旨述べていたこと,予備調査において,平
成25年度特研報告書の主査を務めていたA及び平成25年度特研報告書の
執筆者であるBが,特研報告書からの引用について本件達が適用されるか否か25
について必ずしも明確に認識していなかったことが明らかになっていたこと
からすると,防衛研究所(調査委員会)は,原告が,平成27年度特研報告書
に平成25年度特研報告書を引用する際に,引用の表示が必要であることを十
分認識しておらず,このことについて相応の合理的な根拠がある可能性を把握
していたというべきである。
それにもかかわらず,予備調査及び本調査から判断に至る経緯をみても(認5
定事実~),防衛研究所(調査委員会)は,本件達に言う「発表された研
究成果」の意義及び原告の本件行為に係る故意の有無について,具体的に検討
した形跡がなく,これらの点の検討を怠ったと評価せざるを得ない。なお,原
告は,特に本調査での弁明においては,主として平成25年度特研報告書のA
及びB担当部分を原告が執筆したことを主張していたことが認められ,調査委10
員会においても,専らこの点についての調査・判断に重点をおいて審理を進め
たことがうかがわれるが,原告が,少なくとも予備調査においては,特研報告
書からの引用が盗用に当たらないことも主張していたのであるから,この点は
前記判断を左右するものとはいえない。
以上によれば,防衛研究所長が,本件行為が「盗用」による「研究活動に係15
る不正行為」に該当することを理由に,原告に対し本件公表及び本件訓戒を行
ったことは,職務上の注意義務に違反し,国家賠償法上違法である。
3争点2(原告の損害及び因果関係)について
前記2で説示したとおり,本件公表は国家賠償法上違法であり,本件公表に
より,インターネット上で原告の名誉が棄損され,研究活動に支障が生じる可20
能性があることなどを考慮すれば,本件公表による原告の精神的損害を慰謝す
るための慰謝料は100万円が相当であると認められ,弁護士費用を加えると,
合計110万円が原告の損害と認定するのが相当である。
前記2で説示したとおり,本件公表及び本件訓戒は国家賠償法上違法である
が,原告の抑うつ状態による休職が,本件公表及び本件訓戒を原因とするもの25
であることを認めるに足りる的確な証拠はないから,休業損害は認められない。
4争点3(削除請求の可否)について
防衛研究所の公式ホームページに本件公表に係る記事が掲載され続ける限り,
原告は研究者としての活動を行うことに重大な支障が生じ,原告に対する無形の
損害が生じるから,これによる原告の権利の侵害を防止するため,本件公表に係
る記事の削除を命ずることが相当である。5
5争点4(謝罪広告の要否)について
防衛研究所による本件公表によって原告に生じた損害を回復するためには,金
銭賠償及び本件公表に係る記事の削除で足り,謝罪広告の掲載を命ずる必要があ
るとまでは認められない。
第4結論10
以上によれば,原告の金銭請求については,被告に対し,110万円及びこれ
に対する平成28年10月19日から支払済みまで年5分の割合による金員の
支払を求める限度で理由があるから認容し,その余を棄却することとし,原告の
本件公表に係る記事の削除請求は認容し,謝罪広告掲載請求は棄却することとし
て,主文のとおり判決する。なお,被告が求める仮執行免脱宣言については,相15
当でないからこれを付さないこととする。
東京地方裁判所民事第25部
裁判長裁判官谷口安史20
裁判官杉森洋平
裁判官白井宏和

戻る



採用情報


弁護士 求人 採用
弁護士募集(経験者 司法修習生)
激動の時代に
今後の弁護士業界はどうなっていくのでしょうか。 もはや、東京では弁護士が過剰であり、すでに仕事がない弁護士が多数います。
ベテランで優秀な弁護士も、営業が苦手な先生は食べていけない、そういう時代が既に到来しています。
「コツコツ真面目に仕事をすれば、お客が来る。」といった考え方は残念ながら通用しません。
仕事がない弁護士は無力です。
弁護士は仕事がなければ経験もできず、能力も発揮できないからです。
ではどうしたらよいのでしょうか。
答えは、弁護士業もサービス業であるという原点に立ち返ることです。
我々は、クライアントの信頼に応えることが最重要と考え、そのために努力していきたいと思います。 弁護士数の増加、市民のニーズの多様化に応えるべく、従来の法律事務所と違ったアプローチを模索しております。
今まで培ったノウハウを共有し、さらなる発展をともに目指したいと思います。
興味がおありの弁護士の方、司法修習生の方、お気軽にご連絡下さい。 事務所を見学頂き、ゆっくりお話ししましょう。

応募資格
司法修習生
すでに経験を有する弁護士
なお、地方での勤務を希望する先生も歓迎します。
また、勤務弁護士ではなく、経費共同も可能です。

学歴、年齢、性別、成績等で評価はしません。
従いまして、司法試験での成績、司法研修所での成績等の書類は不要です。

詳細は、面談の上、決定させてください。

独立支援
独立を考えている弁護士を支援します。
条件は以下のとおりです。
お気軽にお問い合わせ下さい。
◎1年目の経費無料(場所代、コピー代、ファックス代等)
◎秘書等の支援可能
◎事務所の名称は自由に選択可能
◎業務に関する質問等可能
◎事務所事件の共同受任可

応募方法
メールまたはお電話でご連絡ください。
残り応募人数(2019年5月1日現在)
採用は2名
独立支援は3名

連絡先
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所 採用担当宛
email:[email protected]

71期修習生 72期修習生 求人
修習生の事務所訪問歓迎しております。

ITJではアルバイトを募集しております。
職種 事務職
時給 当社規定による
勤務地 〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
その他 明るく楽しい職場です。
シフトは週40時間以上
ロースクール生歓迎
経験不問です。

応募方法
写真付きの履歴書を以下の住所までお送り下さい。
履歴書の返送はいたしませんのであしからずご了承下さい。
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所
[email protected]
採用担当宛