弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件上訴権回復の請求はこれを却下する。
         理    由
 本件請求の要旨は
 請求人は昭和二十六年五月三十日大阪高等裁判所において麻薬取締法違反被告事
件につき有罪の判決言渡を受けたのであるが、同年六月十日病気のため起居不能と
なり同月十五日に至り漸く回復した関係上、同月十三日迄の上告申立期間内に上告
の申立ができなかつたから上訴権の回復を求めるというのである。
 <要旨>しかし右のような判決に対する上訴は、上告状を大阪高等裁判所に提出し
てなすべきものであるが、右上告状は本来きわめて簡単なものであり、しか
も必ずしも自書することは必要ではないし、また判決を受けた者自身裁判所に出頭
して提出することを要せず郵便または使者に託して提出することを妨げない。のみ
ならずすでに有罪判決を受けて不服がある以上請求人としては、発病したと称する
同年六月十日迄には、不時の故障がある場合等をも考慮して上告申立書の作成等に
ついて相当準備ができていなければならない筈であり、そうだとすればたとえ自己
は発病しても適法に上告をなし得るわけであるから、右遅延は、以上準備を怠つて
いたからであるといわれても致し方ない筋合であり、従つて同月十三日迄に上告状
の提出ができなかつたというのは結局刑事訴訟法第三百六十二条にいわゆる自己の
責に帰すべき事由によるものといわざるを得ない。
 よつて本件上訴権回復請求を理由ないものと認め主文のとおり決定する。
 (裁判長判事 荻野益三郎 判事 佐藤重臣 判事 梶田幸治)

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