弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件上告を棄却する。
     当審における訴訟費用は被告人の負担とする。
         理    由
 被告人の上告趣意について。
 所論は量刑不当の主張であるから適法な上告理由とならない。
 弁護人尾沢俊蔵の上告趣意について。
 所論は畢竟弁護人が控訴趣意書を作成する時間的余裕なく弁護人選任の翌日の公
判一回だけで判決を言渡したのは憲法三七条一項に違反するというのであるけれど
も同条項の「公平なる裁判所の裁判」というのは、偏頗や不公平のおそれのない組
織と構成をもつた裁判所による裁判を意味するものであるから(昭和二二年(れ)
第四八号、同二三年五月二六日大法廷判決集二巻五号参照)所論違憲の主張は理由
がない。
 尚記録によれば、原審は昭和二九年八月二五日被告人に対し、弁護人選任に関す
る通知書及び控訴趣意書提出最終日を同年九月二七日と指定した通知書を送達した
ところ、被告人は同年同月二十四日附で自ら控訴趣意書を作成して期限内に提出し
他方弁護人を自ら選任するか否かについては回答せず、右控訴趣意書提出期限経過
後である同年一〇月四日に至り弁護人を私選すべき旨回答しながら、第一回公判期
日(同年一二月一一日)に至るも弁護人を選任せず、同期日は被告人が弁護人選任
のため延期の申請をなしたため、延期され、第二回公判期日(同年同月二五日)に
は被告人出頭せず、弁護人も未だ選任されておらないため同期日も変更され、第三
回公判期日(同三〇年一月二五日)も職権変更となり、同年同月二七日に至り被告
人より改めて家庭の都合により弁護人を私選しないから国選弁護人を選任されたい
旨請求があつたので原審は同年二月二日弁護士Aを国選弁護人に選任し、同人の期
日請書を得た上、その翌日第四回公判期日を開き、同弁護人は異義なくこれに立会
い、被告人作成の控訴趣意書に基き弁論をなしその日結審となつたものでめること
が明らかである。従つて被告人が控訴趣音書提出期間内に国選弁護人をして控訴趣
意書を作成提出させることができるような時期に弁護人の選任を請求したにもかか
わらず裁判所が故なくその選任を遅滞し控訴趣意書提出期間後にこれを選任し、為
に弁護人をして控訴趣意書を提出せしめる機会を失わしめたものではなく、被告人
がその責に帰すべき事由により控訴趣意書提出期間内に控訴趣意書を提出できるよ
うな適当な時期に弁護人選任の請求をしなかつた場合であるから所論の如く原審に
おける弁護人選任の時期が遅れたとしても原審の弁護人選任の手続は違法でない(
昭和二五年(あ)第二一五三号、同二八年四月一日大法廷判決集七巻四号参照)又
記録を調べても刑訴四一一条を適用すべきものとは認められない。
よつて同四〇八条、一八一条により裁判官全員一致の意見で主文のとおり判決する。
  昭和三〇年七月一日
     最高裁判所第二小法廷
         裁判長裁判官    栗   山       茂
            裁判官    小   谷   勝   重
            裁判官    藤   田   八   郎
            裁判官    谷   村   唯 一 郎
            裁判官    池   田       克

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