弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


戻る

         主    文
     一 本件控訴を棄却する。
     二 控訴費用は控訴人の負担とする。
         事    実
 第一 当事者の求めた裁判
 一 控訴人
 1 原判決中、控訴人敗訴部分を取り消す。
 2 被控訴人らの予備的請求を棄却する。
 3 訴訟費用は、第一、二審とも被控訴人らの負担とする。
 二 被控訴人ら
 主文同旨
 第二 当事者の主張
 次に付加、訂正する外は、原判決事実摘示と同一であるから、これを引用する。
 (原判決の訂正)
 原判決三枚目表七行目から同八行目にかけての「訴外A」を「訴外B」と改め、
以下、原判決事実摘示中の「訴外A」とあるのを、いずれも「訴外B」と改める。
 同三枚目裏八行目の「確認」の次に「及び右通行地役権の設定登記手続」を加え
る。
 同四枚目表四行目の「二一〇条一項」の次に「ないしは同二一三条二項」を加え
る。
 同四枚目裏二行目の「当時」の次に「本件二土地から」を加える。
 (当審における控訴人の主張)
 一 訴外Cから訴外Bへの本件二土地の譲渡は、贈与であり、実質上の遺産分割
(共有物分割)ではない。このことは、訴外Bは本件二土地の元の所有者である亡
D及び亡Eに対しては何らの相続権がないこと、被控訴人らが訴外Cに対し本件二
土地の所有権移転登記を求めた訴訟において所有権取得原因を贈与と主張している
ことからも明らかである。
 したがって、本件では、民法二一三条二項の適用を受け、同二一〇条一項の要件
を備えたとしても、被控訴人らは訴外Cの所有地である本件三土地のみを通行し得
るものであって、控訴人に対し囲繞地通行権を主張できない。
 二 本件二土地は、里道に接しており、袋地には該当しない。
 三 仮に、本件二土地が袋地に該当するとしても、囲繞地のため損害が最も少な
きものを選ぶ(民法二一一条一項)という観点から判断するならば、本件三土地の
里道と隣接した場所に、里道幅をも考慮に入れて通行場所を設定すべきである。 
四 本件囲繞地通行権の範囲を決するうえで、本件一土地と本件二土地の境界を確
定する必要があり、右両土地の境界が確定されていない以上、本件訴えは不適法で
ある。
 但し、本件係争地が、本件一土地の範囲内にあることは認める。
 (右主張に対し被控訴人らの反論)
 本件囲繞地通行権の範囲を特定するために、本件一土地と本件二土地の境界が特
定されることは、その論理的前提にはならない。
 第三 証拠関係(省略)
         理    由
 一 原審は、被控訴人らの本訴請求について、主位的請求(通行地役権確認及び
同地役権設定登記手続請求)を棄却し、予備的請求(囲繞地通行権確認請求)を認
容しているのであるが、この場合、控訴審の審判の範囲は不服申立の限度に限られ
るから、当審では、主位的請求に対する原審の判断の当否は審判の対象とならず、
予備的請求に対する原審の判断の当否のみ審判の対象となるものと解される。
 そこで、検討するに、当裁判所も、被控訴人らの本訴請求のうちの予備的請求に
ついては理由があると判断するが、その理由は、次に付加、訂正、削除する外は、
原判決の理由説示(原判決九枚目表五行目から同一五枚目表一〇行目まで)と同一
であるから、これを引用する。
 原判決九枚目表八行目から同九行目にかけての「第一の三で認定したとおりであ
る」を「原判決の理由の第一の三(原判決七枚目表五行目から同八枚目表九行目ま
で)記載のとおりであるから、これを引用する(但し、同七枚目表六行目の「一、
二」の次に「第一〇号証の一、二、乙第二、第三号証」を加え、同七行目の「原告
F」から同九行目の「甲」まで及び同九行目の「被告本人尋問の結果」から同一〇
行目の「第三号証、」までを、いずれも削除し、同七枚目表末行から同裏一行目に
かけての「本件一ないし三の各土地は、」の次に「地続きとなった一団の土地であ
るが、」を、同八枚目表八行目の「許諾したこと、」の次に「訴外Bは、昭和五九
年二月八日死亡し、被控訴人らが相続により本件二土地の所有権者となったこ
と、」を、それぞれ加える。)。
 同九枚目表一〇行目冒頭から同一〇枚目裏二行目末尾までを、次のとおり改め
る。
 「二 そこで、被控訴人らが本件係争地につき民法二一〇条一項ないしは同二一
三条二項に基づく囲繞地通行権を有するか否かについて、判断する。
 <要旨第一>民法二一三条は、共有地の分割または土地の譲渡という任意行為によ
り袋地が生じた場合においては、その関係当事者間では袋地の発生は当
然予期すべきであり、この場合は、土地の分割または譲渡と関係のない周囲の第三
者の土地には迷惑をかけないで関係者の内部問題として処理するのが当然であると
の理由から、囲繞地通行権は当該分割または譲渡の対象となった元の土地について
のみ発生し、かつ、償金の支払を要しないことを明らかにした規定であると解され
る。
 右規定の趣旨に鑑みると、民法二一三条二項は、土地の所有者がその土地の一部
を譲渡し残余部分をなお保留する場合に生ずる袋地についてのみ適用ありと解すべ
きではなく、土地の所有者が一筆の土地を分筆のうえ、同時にその全部を数人に譲
渡し、これによって袋地を生じた場合においても、袋地の取得者は、右分筆前一筆
であった残余の土地について囲繞地通行権を有するものと解すべきであり(最高裁
判所第三小法廷昭和三七年一〇月三〇日判決・民集一六巻一〇号二一八二頁参
照)、右の理は、単に一筆の土地の譲渡に限らず、同一人の所有に属する数筆の土
地についても、当該土地が地続きで一団の土地となっている限りは、別異に解する
理由はないから、残余の土地について囲繞地通行権が発生するものと解される。 
これを本件についてみるに、前認定のとおり、本件一ないし三の土地は、地続きと
なった一団の土地であり、訴外Cが家督相続により右各土地の所有者となっていた
ところ、同時に、本件一土地は控訴人に、本件二土地は被控訴人らの被相続人の訴
外Bに、それぞれ譲渡されたものであるから、その結果、本件二の土地が袋地にな
ったと認められる場合は、本件二の土地の所有者(共有者)である被控訴人らは、
民法二一三条二項に基づき、残余地である本件一または本件三の土地について囲繞
地通行権を<要旨第二>有するというべきである。控訴人は、右残余地は、譲渡人で
ある訴外Cの所有する本件三土地のみを指す旨主張するが、前記全部同
時譲渡の場合に照らして考えると、右残余地とは、譲渡人の所有する土地に限られ
るものではなく、袋地となった土地を除く残余地全体を指すものと解するのが相当
である。」
 同一一枚目表一行目の「東側隅」を「北東隅」と、同末行の「通ぜらる」を「通
ぜざる」と、それぞれ改める。
 同一一枚目裏七行目の「第一の三で」を「さきに」と改める。
 同一二枚目表七行目の「土地部分」を「本件係争地」と改める。
 同一二枚目裏三行目の「ところで、」から同七行目末尾までを、次のとおり改め
る。
 「ところで、囲繞地通行権の範囲、すなわち、囲繞地通行権による通行の場所と
方法は、通行権を有する者のために必要にして囲繞地のために最も損害の少ないも
のを選ぶべきである(民法二一一条一項)が、その判断基準としては、袋地と囲繞
地の地形、位置状況に加え、袋地が生じるに至った経緯、従前の通路及び通行状
況、その他諸般の事情を考慮したうえ、社会通念に照らし、具体的な事例に応じて
決定すべきである。そして、袋地が生じるに至る過程において、袋地と囲繞地の各
所有者間に、囲繞地通行権に関しての協議や合意がなされている場合は、その経過
や内容が右囲繞地通行権の範囲の決定に当たり斟酌されるべきは当然である。
 これを、本件二土地について、以下、検討する。」
 同一三枚目表七行目の「本件係争地」の次に「とほぼ一致する土地部分」を加
え、同八行目の「受忍」を「承諾」と改め、同行の「(な」から同一三枚目裏三行
目の「考える。)」までを削除する。
 同一四枚目表六行目の「さらに、」から同一〇行目末尾までを削除する。
 同一五枚目表四行目の「二・五メートル」の前に「幅員を」を加える。
 同一五枚目表五行目の次に、改行して次のとおり加える。
 「なお、控訴人は、本件囲繞地通行権の範囲を決するうえで、本件一土地と本件
二土地の境界を確定する必要があり、右両土地の境界が確定されていない以上、本
件訴えは不適法である旨主張するが、控訴人において、本件係争地が、本件一土地
の範囲内にあることは認めているところであって、右主張は失当である。」
 同一五枚目表六行目の「してみると、」から同八行目末尾までを次のとおり改め
る。
 「以上を総合すると、本件二土地の所有者(共有者)である被控訴人らは、控訴
人の所有する本件一土地のうち幅員二・五メートルの本件係争地の土地部分につい
て、民法二一三条二項に基づく囲繞地通行権を有するものと認めるのが相当であ
る。」
 同一五枚目表一〇行目の「あらそっている」を「争っている」と改める。
 二 以上の次第で、被控訴人らの本訴請求のうちの予備的請求は理由があるから
認容すべきであり、これと結論を同じくする原判決は結局正当というべきである。
 よって、本件控訴は理由がないからこれを棄却することとし、控訴費用の負担に
ついて民事訴訟法九五条、八九条を適用して、主文のとおり判決する。
 (裁判長裁判官 山田忠治 裁判官 佐藤武彦 裁判官 難波孝一)

戻る



採用情報


弁護士 求人 採用
弁護士募集(経験者 司法修習生)
激動の時代に
今後の弁護士業界はどうなっていくのでしょうか。 もはや、東京では弁護士が過剰であり、すでに仕事がない弁護士が多数います。
ベテランで優秀な弁護士も、営業が苦手な先生は食べていけない、そういう時代が既に到来しています。
「コツコツ真面目に仕事をすれば、お客が来る。」といった考え方は残念ながら通用しません。
仕事がない弁護士は無力です。
弁護士は仕事がなければ経験もできず、能力も発揮できないからです。
ではどうしたらよいのでしょうか。
答えは、弁護士業もサービス業であるという原点に立ち返ることです。
我々は、クライアントの信頼に応えることが最重要と考え、そのために努力していきたいと思います。 弁護士数の増加、市民のニーズの多様化に応えるべく、従来の法律事務所と違ったアプローチを模索しております。
今まで培ったノウハウを共有し、さらなる発展をともに目指したいと思います。
興味がおありの弁護士の方、司法修習生の方、お気軽にご連絡下さい。 事務所を見学頂き、ゆっくりお話ししましょう。

応募資格
司法修習生
すでに経験を有する弁護士
なお、地方での勤務を希望する先生も歓迎します。
また、勤務弁護士ではなく、経費共同も可能です。

学歴、年齢、性別、成績等で評価はしません。
従いまして、司法試験での成績、司法研修所での成績等の書類は不要です。

詳細は、面談の上、決定させてください。

独立支援
独立を考えている弁護士を支援します。
条件は以下のとおりです。
お気軽にお問い合わせ下さい。
◎1年目の経費無料(場所代、コピー代、ファックス代等)
◎秘書等の支援可能
◎事務所の名称は自由に選択可能
◎業務に関する質問等可能
◎事務所事件の共同受任可

応募方法
メールまたはお電話でご連絡ください。
残り応募人数(2019年5月1日現在)
採用は2名
独立支援は3名

連絡先
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所 採用担当宛
email:[email protected]

71期修習生 72期修習生 求人
修習生の事務所訪問歓迎しております。

ITJではアルバイトを募集しております。
職種 事務職
時給 当社規定による
勤務地 〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
その他 明るく楽しい職場です。
シフトは週40時間以上
ロースクール生歓迎
経験不問です。

応募方法
写真付きの履歴書を以下の住所までお送り下さい。
履歴書の返送はいたしませんのであしからずご了承下さい。
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所
[email protected]
採用担当宛