弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     原判決を破棄する。
     判示窃盗の事実につき、被告人を懲役六月に処する。
     右事実につき、当審における訴訟費用は、全部被告人の負担とする。
     判示賍物牙保の事実につき、被告人の刑を免除する。
         理    由
 本件控訴の趣意は、弁護人奈賀隆雄作成名義の控訴趣意書記載のとおり、量刑不
当の主張であるから、ここにこれを引用する。
 よつて先ず、所論に対する判断をなすに先だち、職権を以て、原判決における事
実認定と法令適用の当否を検討するに、原判決は罪となるべき事実として、「被告
人は昭和三六年七月二一日頃、富山市a町b番地被告人方居宅において、A及びB
両名から、賍物である情を知りながら、目練メタル五九個位、マンガン合金四個
位、マンガン合金製品五個位、時価合計一六八、〇〇〇円相当を、翌七月二二日
頃、金沢市c町d番地屑鉄商Cに三二、五〇〇円位にて売却する周旋をして、賍物
の牙保をなしたものである」旨(公訴事実と全く同一)判示し、次で右犯行が累犯
となる前科として、「なお被告人は、昭和三一年三月二〇日富山簡易裁判所におい
て、窃盗等により懲役一年六月、罰金一万円(同三三年一二月一〇日刑終了)、同
三二年七月一一日富山地方裁判所高岡支部において、窃盗等により懲役一年六月
(同三五年六月一〇日刑終了)に各処せられ、いずれもその執行を終つたものであ
る」旨判示し、更に法律の適用として、「刑法第二五六条第二項、罰金等臨時措置
法第二条第三条、刑法第四八条第一項第五六条第一項第五九条第五七条第一八条」
を掲げたうえ、主文において、「被告人を懲役一〇月及ひ罰金一万円に処する。右
罰金を完納することができない場合には、金四〇〇円を一日に換算した期間、被告
人を労役場に留置する」旨宣言しているのである。而して前記罪となるべき事実の
原判示は、文意いささか不明瞭の廉があるけれども、結局「被告人は昭和三六年七
月二一日頃富山市の自宅において、A及ひBから原判示物品が賍物であることを聴
取し、その情を知りながら、その翌日頃金沢市のC方において、右物品を同人に売
却する周旋を<要旨第一・二>して、賍物を牙保した」趣旨に理解することができ
る。とつてなお原判決挙示の証拠(そのうち、Bの司法警察員に対
する供述調書とあるのは、その謄本の誤記と認める)と当審において新に取り調べ
た各証拠とを綜合すれば、原判示物品は前記AとBとの両名が共謀して他から窃取
して来た賍物であること(なおその一部につき、被告人も右窃取に加担しているこ
とは、後述のとおり)、被告人に右賍品の売却依頼をしたのは、右Bではなく、右
Aがこれをなしたものであること(特に被告人の司法警察員に対する昭和三六年九
月六日附供述調書参照)、右Aは被告人の実弟(実父母を共通する年少の男子)で
あり、本件牙保当時被告人と同居していたものであること(特に右供述調書、Bの
司法警察員に対する供述調書謄本原審第二回公判調書中、証人Dの供述記載、当審
第四回公判における証人Dの供述、被告人の戸籍謄本参照)、被告人と右Aとは、
本件牙保当時以降、我国の国籍を有せず、大韓民国(以下単に韓国と称する)の国
籍を有しているものであること(特に右戸籍謄本参照)が、いずれも明瞭である。
而して更に被告人と右Aとの間に刑法第二五七条第一項所定の親族関係があるか否
かを検討するに、右の親族に当るか否かは、我民法第七二五条によつて決すべきで
なく、法例第二二条の趣旨に従い、被告人の本国法により決すべきものと解するを
相当とするところ、韓国においては大韓民国民法(一九五八年二月二二日法律第
四、七一七号。一九六〇年一月一日施行)第七六七条第七六八条第七七〇条第七七
七条により、親族の範囲を定められ、これによれば被告人とAとは、二親等の父系
及ひ母系の血族として、親族であることが明らかである(最高裁判所事務総局刑事
局長の外国人相互間における親族関係の有無について(回答)と題する書面裁判所
書記官Eの電話聴取書、法務省刑事局長発法務専用電報と題する書面、裁判長名義
の最高裁判所事務総局刑事局長宛及び法務省刑事局長宛の外国人相互間における親
族関係の有無についてと題する各書面謄本、被告人の戸籍謄本参照)から、原判決
が賍物犯人と認定する被告人については、その窃盗の本犯であるAは刑法第二五七
条第一項に所謂同居の親族に該当するものと言わなければならない。然らば本件被
告人に対しては同条により、賍物罪の刑を免除すべきに拘らず、右の親族同居の関
係を看過するとともに、刑の言渡をした原判決は、判決に影響を及ぼすことが明ら
かな事実誤認と法令適用の誤とを犯したものであり、到底破棄を免れない。結局本
件控訴は理由がある。
 よつて量刑不当の論旨に対する判断を省略して、刑事訴訟法第三九一条第一項第
三八二条第三八〇条に則り、原判決を破棄したうえ、同法第四〇〇条但書に従い、
当裁判所において更に判決をする。
 (罪となるべき事実)
 被告人は
 第一、 実弟A及びBと共謀のうえ、昭和三六年七月二一日午前二時頃、富山市
ef番地FことG方工場において、同人保管にかかる、H株式会社所有の約一〇〇
瓩の純銅製品クランプコンタクトシユウ一個(時価約五万円相当)を塀外に持ち出
して窃取し(予備的訴因)
 第二、 同日頃同居の親族である前記Aから、同人が前記Bとともに、Fから窃
取して来た目練メタル五十数個、マンガン合金四個位、同製品三個位(以上時価合
証約九万円相当)の売却方を頼まれて承諾し、これが賍物であることの情を知りな
がら、右Aのため、翌二二日頃金沢市c町d番地屑鉄商C方において、同人に対
し、これ等物品を、前記第一の物品と一括して、代金合計三二、五〇〇円位にて売
却して引き渡し、以て賍物を牙保し(予備的訴因)
 たものである。
 (証拠の標目)省略
 (法令の適用)
 被告人の判示所為中、第一の窃盗の点は刑法第二三五条第六〇条に、第二の賍物
牙保の点は同法第二五六条第二項罰金等臨時措置法第三条第一項第二条第一項に各
該当するところ、右窃盗の点については、前記前科があるから、刑法第五六条第一
項第五七条を適用して、再犯の加重をなし、その刑期範囲内において被告人を懲役
六月に処し、当審における訴訟費用は、刑事訴訟法第一八一条第一項本文に従い、
全部これを、右窃盗の事実につき、被告人の負担となし、前記賍物牙保の点につい
ては、同居の親族間においてなされた犯行であろから、刑法第二五七条第一項によ
り、その刑を免除する。
 よつて主文のとおり判決する。
 (裁判長判事 山田義盛 判事 堀端弘士 判事 松田四郎)

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