弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件各上告を棄却する。
         理    由
 被告人Aの弁護人樋口文男の上告趣意および被告人Bの弁護人開原真弓の上告趣
意は、いずれも量刑不当の主張であつて、上告適法の理由にあたらない。
 なお、職権によつて調査すると、原判決は、昭和四三年七月一日に、被告人Aに
対する第一審判決を、量刑が不当であるとして破棄自判するにあたり、「原判決(
第一審判決)の認定した事実にその挙示する法条を適用して主文のとおり判決する。」
として、同被告人を懲役八月、懲役一年および懲役四月に処しているのである。そ
こで、このように三個の懲役刑を科した理由を第一審判決に照らしてみると、原判
決は、本件犯罪が行なわれた昭和四一年四月二二日ごろから同年一一月下旬ごろま
での間の同年七月八日および同年一一月一九日に確定した各罰金五〇〇〇円の裁判
を、刑法四五条後段の確定裁判にあたるとしたものと認められる。
 ところが、右刑法四五条は、昭和四三年六月一〇日に施行された刑法の一部を改
正する法律(同年法律第六一号)によつて改正され、同条後段の確定裁判は、禁錮
以上の刑に処するものに限られたのである。しかも、その附則二項によると、右改
正後の同条の適用結果が、改正前の同条の適用結果よりも被告人に不利益になる場
合のほかは、右改正法の施行前に罰金以下の刑に処する裁判が確定した場合におけ
る数罪についても、改正後の同条が適用されることになつているのである。そして、
本件は、右の不利益になる場合ではないから、本件については、改正後の同条が適
用されることになつたわけである。そうすると、同条後段の確定裁判のない同被告
人については、本件のすべての犯罪を一個の併合罪として、一個の懲役刑によつて
処断すべきものであつたといわなければならない。
 以上のようなわけで、原判決には、改正前の刑法四五条を適用し改正後の同条を
適用しなかつた法令違反があり、右法令違反は判決に影響を及ぼすものというべき
である。しかし、三個の懲役刑が科せられた場合でも、その合計した刑期が一個の
懲役刑によつて科せられる刑期と同じであるときは、三個の懲役刑が科せられたこ
と自体をもつて法律上不利益であるとはいえないうえに、本件犯行の態様、回数、
被害金額、前科および共犯者である被告人Bに対する刑との均衡など諸般の事情を
総合してみると、被告人Aを合計懲役二年に処したのは相当であるから、原判決は、
これを破棄しなくても著しく正義に反するものとは認められない。
 よつて、刑訴法四一四条、三八六条一項三号により、裁判官全員一致の意見で、
主文のとおり決定する。
  昭和四三年一一月二六日
     最高裁判所第三小法廷
         裁判長裁判官    飯   村   義   美
            裁判官    田   中   二   郎
            裁判官    下   村   三   郎
            裁判官    松   本   正   雄

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