弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件上告を棄却する。
     上告費用は上告人の負担とする。
         理    由
 上告理由について。
 一、夫婦離婚等の場合において、不法に子を拘束する夫婦の一方に対して、法律
上子の監護権を有する他の一方から、人身保護法にもとづいて、これが救済を請求
し得ることは、所論のとおりである。原判決もこれを否定しているものではない。
 二、原判決は、請求者Aとその妻である拘束者B1間の離婚はまだできていない、
従つて、B1は親権者母として被拘束者D及びEの二子に対して法律上、監護の権
利、義務を有することを認めた。(請求者の主張するような、AとB1間に、二人
の子供は、Aのみの親権監護の下におくという趣旨の合意が成立した事実は認めら
れないとし、従つて、B1には二子に対する監護權はないのであるという請求者の
主張を排斥した)しかしながら、原判決は、B1の右二子に対する拘束は同人か右
二子に対して法律上監護權をもつているというだけの理由で正当であると判断した
のではなく、拘束者B1、同B2の両名は被拘束者等に衣食も十分與えず、榮養失
調状態に放置して顧みないという請求者主張の事実は認められない、B1は二子を
養育する決意を有することが認められるし、未だ生後一年にも満たない乳児E、及
び満二年にも足りない幼児Dは、これを母である拘束者B1に監護させるのが適当
であつて、同人等を今直に父親である請求者の許に引渡すのは幼少な被拘束者等の
幸福でないという判断の下に、本件B1等の拘束は親権者として法律上正当な監護
權にもとづくのみならず、その実質的にも何ら、不当でないとして本件請求を棄却
したものであることは、原判文上、きわめて明らかである。すなわち、原判決は論
旨のいうように、たゞ人身保護法第二条の「法律上正当な手續によらないで」とい
う意義を、B1にも子に対する監護權があるという論旨のいわゆる「形式的」にの
み判断して、本件はこれに当らぬとしたのではなく、論旨のいわゆる「その拘束が、
その時の状態において、実質的に不当であるか否か」を考量した上で、本件の拘束
は実質的にも不当にあらず、従つて、同法第二条の場合に該当しないものとして、
本件請求を排斥したのである。この点に関する所論は原判決の趣旨を正解しないで、
原判決を非難するものというの外なく、その理由がない。
 三、離婚等の場合において、だれが子の監護養育の任にあたるか、その他これに
必要な事項は、夫婦間の協議で定めるべきであり、若し、その協議の調わないとき
は、家庭裁判所において、これを定めるのであつて、本件においても、若し離婚の
場合とならば、子供の監護養育についての恒久的の措置はそのときに決定せられる
のであるが、今日、それらの未解決の状態において、人身保護請求事件の過程にあ
つては、一応、子の所在を原判決のごとて母B1の膝下におくことをもつて子の幸
福を図る所以であると認めたことは適当の措置であるといわなければならない。請
求者は、B1等は暴力をもつて、長男Dを奪ったものであるから不法であると主張
する、暴力をもつて奪った事実かあるかどうかは原審の確定していないところであ
るが、かりに、暴力を以て子を奪つたとして、その暴力行為の社会悪として憎むべ
きは勿論であり、その暴力行為が刑罰法規にふれるかぎりは、処罰制裁を受けるべ
きは当然であつて、若し現在においてもその拘束が暴力をもつて行われているとか、
或はその暴力奪取の結果が現在の拘束にも何らかの影響を與えているという場合な
らば、もとより、速かにその暴力を排除して被拘束者を自由の天地に解放するとい
うことは人身保護法の使命とするところであるけれども、かりに暴力で奪つたとい
う事実があつたとしても、今日母の膝下に平穏に養育せられている状態が原審の認
定したごとく子供のために、むしろ、幸福であるとしたならば、その暴力行為に対
する刑事上の問題はともあれ、人身保護法の適用の問題としてはことさらに、現在
の状態をもつて、不法の拘束なりとし子供を母のもとから取上げて、強いて父のと
ころへ返さなければならないということはない。いづれ恒久的にどちらに養育され
るかはやがて当事者間の協議若しくは家庭裁判所の審判又は調停等によつて、決定
されるのであるが、それ迄の措置としては、とにかく、まだ三才若しくは当才の乳
幼児のことであるから、これを母のもとにおくことを相当と考えた原審の判断は、
まことに情理をそなえたものといわなければならない。
 四、所論甲疏第一、二号証、同第四、五号証、及び証人Fの証言についても、原
判決は右疏明方法を以ては、請求者主張の事実を疏明するに足りないとする趣旨で
あることは、原判文上看取せられるところであるから、その点について、原判決に、
判断の遺脱ありとする論旨は、また、採用することはできない。その余の論旨は、
要するに、原審の専權に属る疏明方法の取捨、判断及び事実の認定を非難するもの
であつて、上告適法の理由とならない。
 よつて、本件上告は理由のないものと認め、民事訴訟法第三九六条第三八四条第
九五条第八九条を適用して主文のとおり判決する。
 右は、全裁判官の一致した意見である。
     最高裁判所第二小法廷
         裁判長裁判官    霜   山   精   一
            裁判官    塚   崎   直   義
            裁判官    栗   山       茂
            裁判官    藤   田   八   郎

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