弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     原判決を破棄し、第一審判決を取り消す。
     京都地方裁判所が同庁昭和五二年(ケ)第一一二号不動産競売事件につ
いて作成した配当表のうち被上告人に対し二〇三万六九四三円を配当するとある部
分を取り消し、右金員を剰余金として上告人に対し交付すると変更する。
     訴訟の総費用は被上告人の負担とする。
         理    由
上告代理人松本正一の上告理由について
 一 原審が適法に確定した事実関係は、次のとおりである。
 1 上告人は、訴外Dに対し昭和五〇年四月一八日一五〇〇万円を利息月三分、
弁済期約三か月後の約定で貸し付け、そのころ、同人の子である訴外Eから右貸金
債権を担保するためその所有に係る本件土地を譲渡担保として譲り受けた。Dは右
弁済期に弁済をしなかつたが、上告人は、Eに対し本件土地について右の譲渡担保
に基づく所有権移転登記を経由することを猶予していた。
 2 Dは、昭和五一年九月ころ、上告人に対する右貸金債務を弁済しないまま、
Eとともに行方不明となつた。そこで、上告人は、同月三〇日、D及びEから予め
交付を受けていた本件土地の権利証、委任状、印鑑証明書等を使用して、上告人の
妻である訴外F名義で本件土地について右の譲渡担保を原因とする所有権移転登記
を経由した。
 3 本件土地の抵当権者である訴外Gの申立(京都地方裁判所昭和五二年(ケ)
第一一二号不動産競売事件)により、京都地方裁判所は、昭和五二年六月一四日本
件土地について不動産競売開始決定をし、そのころ本件土地について任意競売申立
の登記が経由された。
 4 このため、上告人は、本件土地を売却しようと考え、訴外Hに対し売却方を
依頼し、その便宜のため、同年一一月七日同人に対し所有権移転登記を経由したが、
同人が本件土地の売却に成功しなかつたため、同年一二月二一日同人から真正な登
記名義の回復を原因とする所有権移転登記を受けた。
 5 被上告人は、Dに対し昭和五一年八月中旬ころ四三〇万円を手形貸付の方法
で利息月五分の約定で貸し付け、右貸金債権を担保するため、Eの所有に係る本件
土地につき根抵当権の設定を受けることになつたが、その名義については、被上告
人が代表取締役をしている会社の従業員で右融資手続を担当していた訴外Iの名義
を便宜上使用することにして、同人名義をもつて同年九月六日本件土地について極
度額を六〇〇万円、債権の範囲を手形債権及び小切手債権、債務者をDとする根抵
当権設定登記を経由した。
 6 被上告人は、自己名義で根抵当権付き債権者として配当を受けるため、Iと
の間で、昭和五二年七月一日付をもつて、Dに対するI名義の根抵当権付き債権を
Iから被上告人に対し譲り渡す旨の契約書を作成したが、根抵当権設定登記につい
ては、本件土地の所有名義がEからF、Hを経て上告人に移転されていたため、元
本確定の登記に至らず、その移転登記を経由することができなかつた。
 7 そこで、被上告人は、昭和五四年三月一三日京都地方裁判所に対し右の経緯
等を記載した「上申書(債権の届出)」と題する書面を右の契約書を添付のうえ提
出し、その実質関係を証明して自己が根抵当権付き債権者であるとして、これを申
し出た。
 8 京都地方裁判所は、昭和五四年一二月一二日の本件配当期日において、本件
土地の競売代金一〇一〇万円及び利息等一五万六一五八円の合計一〇二五万六一五
八円につき次の配当表を作成した。
 (一) Gに対し
  共 益 費      二一万九二一五円
  抵当権付き債権   五〇〇万円
  右の損害金     三〇〇万円
 (二) 被上告人に対し
  根抵当権付き債権  二〇三万六九四三円
 9 上告人は、右の配当期日において、右の配当表に異議を申し立てたが、異議
は完結しなかつた。
 そこで、上告人は、被上告人に対し本訴を提起し、被上告人が仮にEに対する根
抵当権付き債権者であつたとしても、被上告人はその旨の登記を経由していないか
ら、本件土地について所有権を取得しその旨の登記を有する上告人に対し、右の根
抵当権をもつて対抗することができないことなどを主張したうえ、右の配当表のう
ち被上告人に二〇三万六九四三円を配当するとある部分を取り消し、右金員を所有
者に対する剰余金として上告人に交付することに変更する旨の判決を求めた。
 以上の事実関係のもとで、原審は、被上告人が本件土地についてI名義ながらも
実質上根抵当権付き債権を有していることが証明される以上、被上告人は、競売法
二七条四項四号にいう「不動産上ノ権利者トシテ其権利ヲ証明シタル者」に該当し、
上告人に対する関係でも根抵当権付き債権者であることを主張することができると
解し、上告人の本件請求を全部棄却すべきものとし、これと同旨の第一審判決は正
当であるとして控訴棄却の判決をした。
 二 しかしながら、不動産競売事件の配当における債権の順位・優劣、剰余金あ
る場合におけるその交付を受けるべき所有者等の問題は、差押えの効力に関する点
を除き、民法、商法その他の実体法によつて決せられるべきものであるところ、原
審の確定したところによると、被上告人は本件土地につき根抵当権の設定を受けた
者であり、他方上告人はその設定者から本件土地の所有権を譲り受けた者であると
いうのであるから、被上告人と上告人とは同一不動産につき相容れない物権を有す
る関係に立つものというべきであり、したがつて、被上告人が上告人に対し本件土
地について第三者の申立に係る競売事件の配当においてその有する根抵当権を主張
して配当を受けるためには、右の根抵当権について有効な登記を経由していること
を要するものというべきである。しかるに、被上告人が本件土地について経由して
いると主張する根抵当権設定登記は、訴外Iの名義であり、これをその実体上の権
利関係に基づいて被上告人自身の登記と同視することができるとすることは、登記
の有する公示方法としての性質に反し、許されないものというべく、そもそも、右
のような他人名義の登記は、特段の事情のない限り、登記に符合する実体上の権利
を欠くものとして無効な登記でもあるのであるから、被上告人は、右のような他人
名義の登記を有するからといつて、上告人に対しその有する根抵当権をもつて対抗
することはできないものといわざるをえない。したがつて、被上告人が実質上の根
抵当権付き債権者であることを証明したことによつて本件土地の競売代金から配当
を受けることができるものとした原審の判断は、法令の解釈適用を誤つたものであ
り、右の違法は判決に影響を及ぼすことが明らかであつて、これと同旨に帰する論
旨は理由があり、原判決は破棄を免れない。そして、原審の適法に確定した前記事
実関係のもとにおいては、右説示に徴し、上告人の本件請求は全部理由があるもの
というべきであるから、上告人の本件請求を棄却した第一審判決を取り消し、本件
請求を全部認容すべきである。
 三 よつて、民訴法四〇八条一号、三九六条、三八六条、九六条、八九条に従い、
裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。
     最高裁判所第一小法廷
         裁判長裁判官    谷   口   正   孝
            裁判官    和   田   誠   一
            裁判官    角   田   禮 次 郎
            裁判官    矢   口   洪   一

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