弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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主文
1本件抗告を棄却する。
2抗告費用は抗告人の負担とする。
理由
(以下,略語,略称等は,原決定のそれに従う)。
1審理の経過等
(1)相手方(基本事件原告,原審申立人)は,平成21年6月1日,処分行政
庁に対し,生活保護の開始を申請(本件申請)したところ,処分行政庁から,同月
22日付けで本件申請を却下する旨の処分(本件却下処分)を受けた。
相手方は,審査請求に対する裁決を経た上で,抗告人(基本事件被告,原審相手
方)を被告として,本件却下処分を取り消すとともに,処分行政庁が相手方に対し
て生活保護を開始して生活扶助等を支給することの義務付けを求める訴え(基本事
件)を提起し,上記義務付けの訴えを本案として,生活保護を開始して生活扶助等
を支給することの仮の義務付けを求める申立て(原審事件)をした。
(2)原決定は,相手方の困窮状態にかんがみ,本件申立てには,償うことので
きない損害を避けるための緊急の必要性があり,かつ,本案について理由があると
みえるとして,抗告人に対し,処分行政庁において生活保護を仮に開始し,保護の
程度につき疎明のされた限度で生活扶助等を行うよう命ずる旨の決定をした。
,,,(3)抗告人は原決定中相手方の申立てが一部認められた部分を不服として
本件抗告を提起した。
抗告人の主張は,別紙「抗告理由書(写し,別紙「訂正申立書(写し)及び」)」
別紙「補充書面(写し)に記載のとおりであり,これに対する相手方の主張は,」
別紙「反論書(写し)に記載のとおりである。」
2当裁判所の判断
(1)当裁判所も,相手方が,生活保護の開始決定がされないことにより,健康
で文化的な最低限度の生活水準の維持も危ぶまれるほどの困窮状態にあったのに,
処分行政庁が本件却下処分をしたことには,裁量権の逸脱があったものと一応認め
られ,かつ,上記のような困窮状態にかんがみれば,本件申立てには,償うことの
できない損害を避けるための緊急の必要性があるものと判断する。
その理由は,原決定に記載のとおりであるから,これを引用する。
(2)抗告人は,相手方が亡父の遺産(不動産)を取得する権利があると主張す
る。
しかし,上記不動産は,既に他人名義となっているのであるから(疎乙4ないし
7(枝番を含む,そもそも相手方が取得し得るものか否かが明らかではない。。))
仮にその点を措くとしても,不動産の現金化には一定の期間を要するのが通例であ
るから,抗告人の上記主張を前提としても,上記の緊急の必要性が否定されること
になるものではない。
また,抗告人は,相手方が年金担保貸付けを利用したり借金等をしていたのに,
その事実を秘匿していたことを指摘する。
確かに,相手方は,金銭管理等が適切さを欠く上,生活保護を申請する者として
誠実さを欠くと指摘されてもやむを得ない面もないではないが,相手方の上記困窮
状態にかんがみれば,上記の裁量権の逸脱が直ちに否定されるものではない。
3結論
以上のとおりであるから,本件申立ては,原決定の範囲で生活保護を仮に開始す
ることを命ずる限度で理由がある。
よって,これと同旨の原決定は相当であり,本件抗告は理由がないから棄却する
こととし,主文のとおり決定する。
平成22年3月19日
福岡高等裁判所那覇支部民事部
裁判長裁判官河邉義典
裁判官森鍵一
威裁判官山崎

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