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裁判例


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主文
1平成23年(行ツ)第263号上告人らの上告を棄
却する。
2原判決のうち平成23年(行ヒ)第294号被上告
人X4以外の同号被上告人らの戒告処分の取消請求
に係る部分を破棄する。
3前項の部分につき,平成23年(行ヒ)第294号
被上告人X4以外の同号被上告人らの控訴を棄却す
る。
4平成23年(行ヒ)第294号上告人のその余の上
告を棄却する。
5第1項の部分に関する上告費用は,平成23年(行
ツ)第263号上告人らの負担とし,第2項及び第
3項の部分に関する控訴費用及び上告費用は,平成
23年(行ヒ)第294号被上告人X4以外の同号
被上告人らの負担とし,前項の部分に関する上告費
用は,同号上告人の負担とする。
理由
第1本件の事実関係等の概要
1本件は,東京都立高等学校又は東京都立養護学校の教職員であった平成23
年(行ツ)第263号上告人及び同年(行ヒ)第294号被上告人(以下,双方を
兼ねる者を含め,「第1審原告」ともいう。)らが,各所属校の卒業式,入学式又
は記念式典において国歌斉唱の際に国旗に向かって起立して斉唱すること(以下
「起立斉唱行為」ともいう。)又は国歌のピアノ伴奏を行うこと(以下「伴奏行
為」ともいう。)を命ずる旨の各校長の職務命令に従わなかったところ,東京都教
育委員会(以下「都教委」という。)からそれぞれ懲戒処分(1名は減給処分,そ
の余は戒告処分)を受けたため,上記職務命令は違憲,違法であり上記各処分は違
法であるなどとして,平成23年(行ツ)第263号被上告人・同年(行ヒ)第2
94号上告人(以下「第1審被告」ともいう。)に対し,上記各処分の取消し及び
国家賠償法1条1項に基づく損害賠償(ただし,第1審原告X2は上記損害賠償の
み)を求めている事案である。
2原審の適法に確定した事実関係等の概要は,次のとおりである。
(1)学校教育法(平成19年法律第96号による改正前のもの)43条及び学
校教育法施行規則(平成19年文部科学省令第40号による改正前のもの)57条
の2の規定に基づく高等学校学習指導要領(平成11年文部省告示第58号。平成
21年文部科学省告示第38号による特例の適用前のもの。以下同じ。)は,第4
章第2C(1)において,「教科」とともに教育課程を構成する「特別活動」の「学
校行事」のうち「儀式的行事」の内容について,「学校生活に有意義な変化や折り
目を付け,厳粛で清新な気分を味わい,新しい生活の展開への動機付けとなるよう
な活動を行うこと。」と定め,同章第3の3において,「特別活動」の「指導計画
の作成と内容の取扱い」について,「入学式や卒業式などにおいては,その意義を
踏まえ,国旗を掲揚するとともに,国歌を斉唱するよう指導するものとする。」と
定めている。また,学校教育法(平成18年法律第80号による改正前のもの)7
3条及び学校教育法施行規則(平成19年文部科学省令第5号による改正前のも
の)73条の10の規定に基づく「盲学校,聾学校及び養護学校高等部学習指導要
領」(平成11年文部省告示第62号。平成19年文部科学省告示第46号による
改正前のもの。以下,高等学校学習指導要領と併せて「学習指導要領」という。)
は,第4章において,「特別活動の目標,内容及び指導計画の作成と内容の取扱い
については,高等学校学習指導要領第4章に示すものに準ずる」と定めている。
(2)都教委の教育長は,平成15年10月23日付けで,東京都立高等学校及
び東京都立養護学校等の各校長宛てに,「入学式,卒業式等における国旗掲揚及び
国歌斉唱の実施について(通達)」(以下「本件通達」という。)を発した。その
内容は,上記各校長に対し,①学習指導要領に基づき,入学式,卒業式等を適正
に実施すること,②入学式,卒業式等の実施に当たっては,式典会場の舞台壇上
正面に国旗を掲揚し,教職員は式典会場の指定された席で国旗に向かって起立して
国歌を斉唱し,その斉唱はピアノ伴奏等により行うなど,所定の実施指針のとおり
行うものとすること,③教職員がこれらの内容に沿った校長の職務命令に従わな
い場合は服務上の責任を問われることを教職員に周知すること等を通達するもので
あった。
(3)ア平成15年10月頃ないし同16年5月頃の当時,第1審原告らは,そ
れぞれ,第1審判決別紙処分一覧表「所属校」欄記載の東京都立高等学校又は東京
都立養護学校に勤務する教職員であった。
本件通達が発出された後,第1審原告らの所属校の各校長は,平成15年11月
8日から同16年4月9日までに各所属校において行われた平成15年度の卒業
式,平成16年度の入学式又は平成15年度の記念式典(創立周年記念式典等)に
先立ち,音楽科の教員であった第1審原告X5及び同X6に対しては国歌斉唱の際
に伴奏行為を命ずる旨の職務命令を,その余の第1審原告らに対しては国歌斉唱の
際に起立斉唱行為を命ずる旨の職務命令をそれぞれ発した(以下,これらの職務命
令を併せて「本件職務命令」という。)。
イ第1審原告らは,上記の卒業式や入学式等の式典において,本件職務命令に
従わず,第1審原告X5及び同X6は国歌斉唱時に伴奏行為を行わず(以下「伴奏
拒否」という。),第1審原告X7,同X8及び同X9は式場に入場せず,第1審
原告X10は卒業式に出席せず,第1審原告X11は国歌斉唱の途中で着席し,第1
審原告X12及び同X13は国歌斉唱の際に式場から退席し,第1審原告X14は一
度起立したがすぐに着席してその後起立せず,第1審原告X4を含むその余の第1
審原告らは国歌斉唱の際に起立しなかった(以下,伴奏拒否以外のこれらの行為を
「不起立行為」といい,伴奏拒否と併せて「不起立行為等」という。)。
ウ都教委は,平成16年2月17日,同年3月30日,同月31日,同年4月
6日及び同年5月25日,第1審原告X4を除くその余の第1審原告らに対し,各
所属校の平成15年度の卒業式若しくは平成16年度の入学式又は平成15年度の
記念式典における不起立行為等(第1審原告X5及び同X6については伴奏拒否,
その余の第1審原告らについては不起立行為)はそれぞれ地方公務員法32条及び
33条に違反するとして,戒告処分をした。これらの第1審原告らには,過去に同
種の行為による懲戒処分等の処分歴はなかった。
エまた,都教委は,平成16年4月6日,第1審原告X4に対し,その所属す
る養護学校の平成15年度の卒業式における不起立行為は地方公務員法32条及び
33条に違反するとして,給与1月の月額10分の1を減ずる減給処分をした。同
第1審原告について戒告処分ではなく減給処分がされたのは,平成14年4月9日
に行われた平成14年度入学式の際の服装及びその後の事実確認に関する校長の職
務命令に従わなかったことが地方公務員法32条及び33条に違反するとして同年
11月6日に戒告処分を受けていたことを踏まえ,過去に非違行為を行い懲戒処分
を受けたにもかかわらず再び同様の非違行為を行った場合には量定を加重するとい
う処分量定の方針によるものであった。
(4)第1審原告らが本件職務命令に従わなかったのは,第1審原告らの歴史観
ないし世界観等において,「君が代」や「日の丸」が過去の我が国において果たし
た役割が否定的評価の対象となることなどから,起立斉唱行為や伴奏行為をするこ
とは自らの歴史観ないし世界観等に反するもので,これをすることはできないと考
えたことによるものであった。
(5)なお,東京都立学校の教職員については,学校職員の給与に関する条例
(昭和31年東京都条例第68号)の委任を受けた学校職員の勤勉手当に関する規
則(昭和54年東京都教育委員会規則第16号。平成18年東京都教育委員会規則
第3号による改正前のもの)4条により,戒告処分は勤勉手当の減額事由とされ,
支給期間において戒告処分を受けた教職員は,当該支給期間(半年間)における所
定の支給割合による支給額から10%の割合で勤勉手当を減額されるものとされて
いた。
3原審は,本件職務命令は憲法19条等の憲法の規定に違反するものではなく
違法であるとはいえないとした上で,第1審原告らが都教委からそれぞれ受けた戒
告処分及び減給処分は懲戒権者としての裁量権の範囲を逸脱し又はこれを濫用する
ものとして違法であるとして,第1審原告X2以外の第1審原告らの上記各処分の
取消請求をいずれも認容すべきものとし,同第1審原告らが上記各処分を受けたこ
とにより被った精神的損害はこれらが取り消されることをもって慰謝されるなどと
して,第1審原告らの損害賠償請求をいずれも棄却すべきものとした。
第2平成23年(行ツ)第263号上告代理人尾山宏ほかの上告理由について
1上告理由のうち職務命令の憲法19条違反(同条違反に係る理由の不備・食
違いを含む。)をいう部分について
原審の適法に確定した事実関係等の下において,本件職務命令が憲法19条に違
反するものでないことは,当裁判所大法廷判決(最高裁昭和28年(オ)第124
1号同31年7月4日大法廷判決・民集10巻7号785頁,最高裁昭和44年
(あ)第1501号同49年11月6日大法廷判決・刑集28巻9号393頁,最
高裁昭和43年(あ)第1614号同51年5月21日大法廷判決・刑集30巻5
号615頁,最高裁昭和44年(あ)第1275号同51年5月21日大法廷判決
・刑集30巻5号1178頁)の趣旨に徴して明らかというべきである(起立斉唱
行為に係る職務命令につき,最高裁平成22年(オ)第951号同23年6月6日
第一小法廷判決・民集65巻4号1855頁,最高裁平成22年(行ツ)第54号
同23年5月30日第二小法廷判決・民集65巻4号1780頁,最高裁平成22
年(行ツ)第314号同23年6月14日第三小法廷判決・民集65巻4号214
8頁,最高裁平成22年(行ツ)第372号同23年6月21日第三小法廷判決・
裁判集民事237号53頁参照。伴奏行為に係る職務命令につき,最高裁平成16
年(行ツ)第328号同19年2月27日第三小法廷判決・民集61巻1号291
頁参照)。所論の点に関する原審の判断は是認することができ,原判決に所論の違
法はない。論旨は採用することができない。
2その余の上告理由について
論旨は,違憲をいうが,その実質は単なる法令違反をいうもの又はその前提を欠
くものであって,民訴法312条1項及び2項に規定する事由のいずれにも該当し
ない。
第3平成23年(行ヒ)第294号上告代理人石津廣司ほかの上告受理申立て
理由について
1(1)公務員に対する懲戒処分について,懲戒権者は,懲戒事由に該当すると
認められる行為の原因,動機,性質,態様,結果,影響等のほか,当該公務員の上
記行為の前後における態度,懲戒処分等の処分歴,選択する処分が他の公務員及び
社会に与える影響等,諸般の事情を考慮して,懲戒処分をすべきかどうか,また,
懲戒処分をする場合にいかなる処分を選択すべきかを決定する裁量権を有してお
り,その判断は,それが社会観念上著しく妥当を欠いて裁量権の範囲を逸脱し,又
はこれを濫用したと認められる場合に,違法となるものと解される(最高裁昭和4
7年(行ツ)第52号同52年12月20日第三小法廷判決・民集31巻7号11
01頁,最高裁昭和59年(行ツ)第46号平成2年1月18日第一小法廷判決・
民集44巻1号1頁参照)。
(2)ア本件において,上記(1)の諸事情についてみるに,不起立行為等の性質,
態様は,全校の生徒等の出席する重要な学校行事である卒業式等の式典において行
われた教職員による職務命令違反であり,当該行為は,その結果,影響として,学
校の儀式的行事としての式典の秩序や雰囲気を一定程度損なう作用をもたらすもの
であって,それにより式典に参列する生徒への影響も伴うことは否定し難い。
イ他方,不起立行為等の動機,原因は,当該教職員の歴史観ないし世界観等に
由来する「君が代」や「日の丸」に対する否定的評価等のゆえに,本件職務命令に
より求められる行為と自らの歴史観ないし世界観等に由来する外部的行動とが相違
することであり,個人の歴史観ないし世界観等に起因するものである。また,不起
立行為等の性質,態様は,上記アのような面がある一方で,積極的な妨害等の作為
ではなく,物理的に式次第の遂行を妨げるものではない。そして,不起立行為等の
結果,影響も,上記アのような面がある一方で,当該行為のこのような性質,態様
に鑑み,当該式典の進行に具体的にどの程度の支障や混乱をもたらしたかは客観的
な評価の困難な事柄であるといえる(原審によれば,本件では,具体的に卒業式等
が混乱したという事実は主張立証されていないとされている。)。
2(1)本件職務命令は,前記第2の1のとおり憲法19条に違反するものでは
なく,学校教育の目標や卒業式等の儀式的行事の意義,在り方等を定めた関係法令
等の諸規定の趣旨に沿って,地方公務員の地位の性質及びその職務の公共性を踏ま
え,生徒等への配慮を含め,教育上の行事にふさわしい秩序の確保とともに式典の
円滑な進行を図るものであって(前掲最高裁平成23年6月6日第一小法廷判決等
参照),このような観点から,その遵守を確保する必要性があるものということが
できる。このことに加え,前記1(2)アにおいてみた事情によれば,本件職務命令
の違反に対し,教職員の規律違反の責任を確認してその将来を戒める処分である戒
告処分をすることは,学校の規律や秩序の保持等の見地からその相当性が基礎付け
られるものであって,法律上,処分それ自体によって教職員の法的地位に直接の職
務上ないし給与上の不利益を及ぼすものではないことも併せ考慮すると,将来の昇
給等への影響や前記第1の2(5)の本件における条例及び規則による勤勉手当への
影響を勘案しても,過去の同種の行為による懲戒処分等の処分歴の有無等にかかわ
らず,基本的に懲戒権者の裁量権の範囲内に属する事柄ということができると解さ
れる。前記1(2)イにおいてみた事情に関しては,不起立行為等に対する懲戒にお
いて戒告を超えてより重い減給以上の処分を選択することについて,本件事案の性
質等を踏まえた慎重な考慮を必要とする事情であるとはいえるものの,このことを
勘案しても,本件職務命令の違反に対し懲戒処分の中で最も軽い戒告処分をするこ
とが裁量権の範囲の逸脱又はその濫用に当たるとは解し難い。また,本件職務命令
の違反に対し1回目の違反であることに鑑みて訓告や指導等にとどめることなく戒
告処分をすることに関しては,これを裁量権の範囲内における当不当の問題として
論ずる余地はあり得るとしても,その一事をもって直ちに裁量権の範囲の逸脱又は
その濫用として違法の問題を生ずるとまではいい難い。なお,原審は,本件職務命
令の合憲性を否定する有力な見解があったことを指摘するが,その合憲性について
は前記第2のとおりであって,その他原審の指摘する事情はいずれも上記の判断を
左右するものとはいえない。
(2)以上によれば,本件職務命令の違反を理由として,第1審原告らのうち過
去に同種の行為による懲戒処分等の処分歴のない者に対し戒告処分をした都教委の
判断は,社会観念上著しく妥当を欠くものとはいえず,上記戒告処分は懲戒権者と
しての裁量権の範囲を超え又はこれを濫用したものとして違法であるとはいえない
と解するのが相当である。
3(1)他方,前示のように,前記1(2)イにおいてみた事情によれば,不起立行
為等に対する懲戒において戒告を超えてより重い減給以上の処分を選択することに
ついては,本件事案の性質等を踏まえた慎重な考慮が必要となるものといえる。そ
して,減給処分は,処分それ自体によって教職員の法的地位に一定の期間における
本給の一部の不支給という直接の給与上の不利益が及び,将来の昇給等にも相応の
影響が及ぶ上,本件通達を踏まえて毎年度2回以上の卒業式や入学式等の式典のた
びに懲戒処分が累積して加重されると短期間で反復継続的に不利益が拡大していく
こと等を勘案すると,上記のような考慮の下で不起立行為等に対する懲戒において
戒告を超えて減給の処分を選択することが許容されるのは,過去の非違行為による
懲戒処分等の処分歴や不起立行為等の前後における態度等(以下,併せて「過去の
処分歴等」という。)に鑑み,学校の規律や秩序の保持等の必要性と処分による不
利益の内容との権衡の観点から当該処分を選択することの相当性を基礎付ける具体
的な事情が認められる場合であることを要すると解すべきである。したがって,不
起立行為等に対する懲戒において減給処分を選択することについて,上記の相当性
を基礎付ける具体的な事情が認められるためには,例えば過去の1回の卒業式等に
おける不起立行為等による懲戒処分の処分歴がある場合に,これのみをもって直ち
にその相当性を基礎付けるには足りず,上記の場合に比べて過去の処分歴に係る非
違行為がその内容や頻度等において規律や秩序を害する程度の相応に大きいもので
あるなど,過去の処分歴等が減給処分による不利益の内容との権衡を勘案してもな
お規律や秩序の保持等の必要性の高さを十分に基礎付けるものであることを要する
というべきである。
(2)これを本件についてみるに,前記第1の2(3)エのとおり,第1審原告X4
については,都教委において,過去の懲戒処分の対象とされた非違行為と同様の非
違行為を再び行った場合には量定を加重するという処分量定の方針に従い,過去に
同様の非違行為による戒告処分を受けているとして,量定を加重して減給処分がさ
れたものである。しかし,過去の懲戒処分の対象は,約2年前に入学式の際の服装
及びその後の事実確認に関する校長の職務命令に違反した行為であって積極的に式
典の進行を妨害する行為ではなく,当該1回のみに限られており,本件の不起立行
為の前後における態度において特に処分の加重を根拠付けるべき事情もうかがわれ
ないこと等に鑑みると,同第1審原告については,上記(1)において説示したとこ
ろに照らし,学校の規律や秩序の保持等の必要性と処分による不利益の内容との権
衡の観点から,なお減給処分を選択することの相当性を基礎付ける具体的な事情が
あったとまでは認め難いというべきである。そうすると,上記のように過去に入学
式の際の服装等に係る職務命令違反による戒告1回の処分歴があることのみを理由
に同第1審原告に対する懲戒処分として減給処分を選択した都教委の判断は,減給
の期間の長短及び割合の多寡にかかわらず,処分の選択が重きに失するものとして
社会観念上著しく妥当を欠き,上記減給処分は懲戒権者としての裁量権の範囲を超
えるものとして違法の評価を免れないと解するのが相当である。
4(1)以上によれば,第1審原告X4及び同X2以外の第1審原告らの戒告処分
の取消請求を認容すべきものとした原審の判断には,判決に影響を及ぼすことが明
らかな法令の違反がある。この点に関する論旨は理由があり,原判決のうち上記請
求に係る部分は破棄を免れない。
(2)他方,以上によれば,第1審原告X4の減給処分が違法であるとして同第
1審原告の同処分の取消請求を認容すべきものとした原審の判断は,是認すること
ができ,原判決のうち上記請求に係る部分に所論の違法はない。この点に関する論
旨は採用することができない。
第4結論
以上のとおりであるから,平成23年(行ツ)第263号上告人らの上告を棄却
するとともに,原判決のうち平成23年(行ヒ)第294号被上告人X4以外の同
号被上告人らの戒告処分の取消請求に係る部分を破棄し,同部分につき同被上告人
らの控訴を棄却することとし,同号上告人のその余の上告を棄却することとする。
よって,裁判官宮川光治の反対意見があるほか,裁判官全員一致の意見で,主文
のとおり判決する。なお,裁判官櫻井龍子,同金築誠志の各補足意見がある。
裁判官櫻井龍子の補足意見は,次のとおりである。
1事案の性格に鑑み,若干の補足意見を述べておきたい。
公務員の懲戒処分制度は,国民全体の奉仕者として公共の利益のために勤務する
ことをその本質的な内容とする勤務関係の見地において,公務員としてふさわしく
ない非行がある場合に,その責任を確認し,公務員関係の秩序を維持するために課
される制裁である(多数意見の引用するいわゆる神戸税関事件に係る最高裁昭和5
2年12月20日第三小法廷判決参照)。一方,懲戒処分は,職員にとってその身
分や勤務条件に重大な不利益をもたらすものであるため,懲戒の事由,手続等があ
らかじめ法定,周知されているべきであるのみならず,公正原則,平等取扱い原
則,比例原則などの公務員の服務に関する諸原則を踏まえ,個々の事案に即して謙
抑的に行使されるべきものである。神戸税関事件に係る上記最高裁判決の判示は,
このような公務員の懲戒制度の基本的枠組みを踏まえた上で,当該行政組織の秩序
の維持,職員の服務に第一次的な責任を有する懲戒権者の裁量を尊重するという,
司法判断の基本的スタンスを画したものといえる。したがって,同判決も述べるよ
うに,当該懲戒処分が社会観念上著しく妥当を欠き,当該懲戒権者がその裁量権を
適切に行使しているとはいえない事案については,司法がこれに制約を加えること
が必要となるものである。
そこで,多数意見は,本件の懲戒処分のうち,戒告処分については適法と認めら
れるが,過去の処分歴等を理由に量定を加重される処分(以下「加重処分」とい
う。)については,過去の処分歴等が減給などの加重処分による不利益の内容との
権衡を勘案してもなお規律や秩序の保持等の必要性の高さを十分に基礎付けるもの
であることを要するとして,過去の1回の不起立行為と同様の行為による処分歴の
みを理由とする加重処分として課された減給処分を裁量権の範囲を超えるものと判
断したものである。
2(1)公務員の懲戒制度における処分の加重については,制度的に加重の在り
方を定める法令上の根拠はないため,過去の処分歴等を個別事案の情状として考慮
するのみとする考えも見られるところであり,加重処分そのものが裁量の範囲内と
いえるためには,懲戒の対象行為の態様や影響と加重処分による不利益の内容との
権衡,公務秩序維持のための必要性などについて,上記に述べた懲戒処分制度の基
本的枠組みを踏まえ,より慎重な判断が要求されるといわなければならない。
東京都(東京都教育委員会)における懲戒処分の処分量定については,入学式や
卒業式等での国歌斉唱時における不起立(ピアノ伴奏の拒否を含む。本意見におい
て以下同じ。)という職務命令違反の行為に対し,1回目は戒告処分とし,2回目
以降からは加重処分を行うこととし,2回目で減給1か月,3回目で減給6か月,
4回目以降は停職処分にする方針が採られていることがうかがわれる。
(2)これらの懲戒処分のうち最も軽い戒告処分と,その上の減給処分の差は大
きく,更にその上の停職処分との間には大きな差がある。戒告処分は,職員の規律
違反の責任を確認してその将来を戒める処分であって,勤勉手当の減額という条例
上の不利益や将来の昇給等への間接的な影響はあるものの,法律上は直接的な給与
上ないし職務上の不利益を含む処分ではないのに対し,減給処分は,法律上の不利
益として給与そのものが直接的に減額されるのみならず,その結果が期末手当,退
職金,年金等にも影響するなど給与上の多大な不利益を伴う処分である。さらに,
停職処分は,法律上の不利益として停職中の給与が全額支給されないことによる大
きな給与上の不利益に加え,教師の場合は停職期間中教壇に立てないことについて
の本人の職務上の不利益も大きく(生徒への教育上の影響なども無視できな
い。),極めて厳しい重大な処分であることが明らかである。したがって,東京都
における上記(1)のような一律の加重処分の定め方,実際の機械的な適用は,その
こと自体が問題であるといわなければならず,また,懲戒の対象行為との関係にお
ける相当性が問題である。
本件の不起立行為は,既に多数意見の中で説示しているように,それぞれの行為
者の歴史観等に起因してやむを得ず行うものであり,その結果式典の進行が遅れる
などの支障を生じさせる態様でもなく,また行為者も式典の妨害を目的にして行う
ものではない。不起立の時間も短く,保護者の一部に違和感,不快感を持つものが
いるとしても,その後の教育活動,学校の秩序維持等に大きく影響しているという
事実が認められているわけではない。
このような行為が繰り返し行われた場合に加重処分をすることは,それが相当性
を欠くものでなければ許容されるものではあるものの,上記のように多大な給与上
ないし職務上の不利益や影響をもたらす減給ないし停職の処分を前記(1)のように
一律に機械的に加重処分として課すことは,行為と不利益との権衡を欠き,社会観
念上妥当とはいい難いものというべきである。
3さらに,本件が,さきに当小法廷が判示した起立斉唱に係る職務命令の合憲
判断に関する判決(多数意見の引用する平成23年6月6日判決)に関係するもの
であるので,以下の点を付言しておきたい。
さきの上記判決において,多数意見は上記職務命令の合憲性を是認しつつ,思想
及び良心の自由についての間接的な制約となる面があることを認めたものであり,
そのことは,上記職務命令に従って起立斉唱することに自らの歴史観,世界観等と
の間で強い葛藤を感じる職員が存在することを踏まえたものといえ,処分対象者の
多くは,そのような葛藤の結果,自らの信じるところに従い不起立行為を選択した
ものであろう。式典のたびに不起立を繰り返すということは,その都度,葛藤を経
て,自らの信条と尊厳を守るためにやむを得ず不起立を繰り返すことを選択したも
のと見ることができる。前記2(1)の状況の下で,毎年必ず挙行される入学式,卒
業式等において不起立を行えば,次第に処分が加重され,2,3年もしないうちに
戒告から減給,そして停職という形で不利益の程度が増していくことになるが,こ
れらの職員の中には,自らの信条に忠実であればあるほど心理的に追い込まれ,上
記の不利益の増大を受忍するか,自らの信条を捨てるかの選択を迫られる状態に置
かれる者がいることを容易に推測できる。不起立行為それ自体が,これまで見たと
おり,学校内の秩序を大きく乱すものとはいえないことに鑑みると,このように過
酷な結果を職員個人にもたらす前記2(1)のような懲戒処分の加重量定は,法が予
定している懲戒制度の運用の許容範囲に入るとは到底考えられず,法の許容する懲
戒権の範囲を逸脱するものといわざるを得ない。
4最後に,本件の紛争の特性に鑑みて付言するに,今後いたずらに不起立と懲
戒処分の繰り返しが行われていく事態が教育の現場の在り方として容認されるもの
ではないことを強調しておかなければならない。教育の現場においてこのような紛
争が繰り返される状態を一日も早く解消し,これまでにも増して自由で闊達な教育
が実施されていくことが切に望まれるところであり,全ての関係者によってそのた
めの具体的な方策と努力が真摯かつ速やかに尽くされていく必要があるものという
べきである。
裁判官金築誠志の補足意見は,次のとおりである。
本件職務命令が憲法19条に違反しないとする多数意見に賛成する立場からこれ
に付加する私の意見は,多数意見の引用する最高裁平成23年6月6日第一小法廷
判決において私の補足意見として述べたとおりである。
裁判官宮川光治の反対意見は,次のとおりである。
多数意見は,本件職務命令は憲法19条(思想及び良心の自由)に違反せず,ま
た,第1審原告X4を除くその余の第1審原告らに対し戒告処分をした都教委の判
断は懲戒権者としての裁量権の範囲にあるとするが,私は,そのいずれについても
同意できない。なお,第1審原告X4に対する減給処分を裁量権の範囲を超えるも
のとした結論には同意できるが,理由を異にする。
第1本件職務命令の憲法適合性について
1原審は,第1審原告らがそれぞれ所属校の各校長から受けた本件職務命令に
従わなかったのは,「君が代」や「日の丸」が過去の我が国において果たした役割
に関わる第1審原告らの歴史観ないし世界観及び教育上の信念に基づくものである
という事実を,適法に確定している。そのように真摯なものである場合は,その行
為は第1審原告らの思想及び良心の核心の表出であるか少なくともこれと密接に関
連しているとみることができる。したがって,その行為は第1審原告らの精神的自
由に関わるものとして,憲法上保護されなければならない。第1審原告らとの関係
では,本件職務命令はいわゆる厳格な基準による憲法審査の対象となり,その結
果,憲法19条に違反する可能性がある。このことは,多数意見が引用する最高裁
平成23年6月6日第一小法廷判決における私の反対意見で述べたとおりである。
なお,そこでは,国旗及び国歌に関する法律と学習指導要領が教職員に起立斉唱行
為等を職務命令として強制することの根拠となるものではないこと,本件通達は,
式典の円滑な進行を図るという価値中立的な意図で発せられたものではなく,その
意図は,前記歴史観等を有する教職員を念頭に置き,その歴史観等に対する強い否
定的評価を背景に,不利益処分をもってその歴史観等に反する行為を強制すること
にあるとみることができ,職務命令はこうした本件通達に基づいている旨を指摘し
た。本件では,さらに多数意見が指摘する「地方公務員の地位の性質及びその職務
の公共性」について,私の意見を付加しておくこととする。
2第1審原告らは,地方公務員ではあるが,教育公務員であり,一般行政とは
異なり,教育の目標に照らし,特別の自由が保障されている。すなわち,教育は,
その目的を実現するため,学問の自由を尊重しつつ,幅広い知識と教養を身に付け
ること,真理を求める態度を養うこと,個人の価値を尊重して,その能力を伸ば
し,創造性を培い,自主及び自律の精神を養うこと等の目標を達成するよう行われ
るものであり(教育基本法2条),教育をつかさどる教員には,こうした目標を達
成するために,教育の専門性を懸けた責任があるとともに,教育の自由が保障され
ているというべきである。もっとも,普通教育においては完全な教育の自由を認め
ることはできないが,公権力によって特別の意見のみを教授することを強制される
ことがあってはならないのであり,他方,教授の具体的内容及び方法についてある
程度自由な裁量が認められることについては自明のことであると思われる(最高裁
昭和43年(あ)第1614号同51年5月21日大法廷判決・刑集30巻5号6
15頁参照)。上記のような目標を有する教育に携わる教員には,幅広い知識と教
養,真理を求め,個人の価値を尊重する姿勢,創造性を希求する自律的精神の持ち
主であること等が求められるのであり,上記のような教育の目標を考慮すると,教
員における精神の自由は,取り分けて尊重されなければならないと考える。
個々の教員は,教科教育として生徒に対し国旗及び国歌について教育するという
場合,教師としての専門的裁量の下で職務を適正に遂行しなければならない。した
がって,「日の丸」や「君が代」の歴史や過去に果たした役割について,自由な創
意と工夫により教授することができるが,その内容はできるだけ中立的に行うべき
である。そして,式典において,教育の一環として,国旗掲揚,国歌斉唱が準備さ
れ,遂行される場合に,これを妨害する行為を行うことは許されない。しかし,そ
こまでであって,それ以上に生徒に対し直接に教育するという場を離れた場面にお
いては,自らの思想及び良心の核心に反する行為を求められることはないというべ
きである。音楽専科の教員についても,同様である。
このように,私は,第1審原告らは,地方公務員であっても,教育をつかさどる
教員であるからこそ,一般行政に携わる者とは異なって,自由が保障されなければ
ならない側面があると考えるのである。
3以上のとおり,第1審原告らの上告理由のうち本件職務命令が憲法19条違
反をいう部分は理由がある。
第2懲戒処分の裁量審査について
1多数意見は,本件職務命令の違反を理由として,過去に同種の行為による懲
戒処分等の処分歴のない第1審原告らに対してなされた戒告処分(以下「本件戒告
処分」という。)は,懲戒権者としての裁量権の範囲を超え又はこれを濫用したも
のとはいえないという。そこで,私も,本件職務命令の憲法適合性に関する判断を
留保し,また,本件戒告処分自体も憲法19条に違反する可能性があるが,その判
断を留保し,その上で,本件の懲戒処分に係る裁量審査に関し,私の反対意見を述
べる。以下,2において考慮すべき諸事情のうち第1審原告らの行為の原因,動機
及び行為の態様と法益の侵害の程度について述べ,3において本件では戒告処分は
実質的にみると重い不利益処分であることを指摘し,4において他の非違行為に対
する処分及び他地域の処分例と比較すると不公正であることを述べる。
2第1審原告らの不起立行為等は,「日の丸」や「君が代」は軍国主義や戦前
の天皇制絶対主義のシンボルであり平和主義や国民主権とは相容れないと考える歴
史観ないし世界観,及び人権の尊重や自主的に思考することの大切さを強調する教
育実践を続けてきた教育者としての教育上の信念に起因するものであり,その動機
は真摯であり,いわゆる非行・非違行為とは次元を異にする。また,他の職務命令
違反と比較しても,違法性は顕著に希薄である。
第1審原告らが抱いている歴史観等は,ひとり第1審原告ら独自のものではな
く,我が国社会において,人々の間に一定の広がりを有し,共感が存在している。
また,原審も指摘しているが,憲法学などの学説及び日本弁護士連合会等の法律家
団体においては,式典において「君が代」を起立して斉唱すること及びピアノ伴奏
をすることを職務命令により強制することは憲法19条等に違反するという見解が
大多数を占めていると思われる。確かに,この点に関して最高裁は異なる判断を示
したが,こうした議論状況は一朝には変化しないであろう。
第1審原告らの不起立行為等は消極的不作為にすぎないのであって,式典を妨害
する等の積極的行為を含まず,したがって,式典の円滑な遂行に物理的支障をいさ
さかも生じさせていない。法益の侵害はほとんどない。
3第1審原告らは,最初の不起立行為等で本件戒告処分を受けたのであるが,
その処分が第1審原告らに与える不利益については過小評価されるべきではないと
思われる。確かに,戒告処分は法の定める懲戒処分の中では最も軽いが,処分を受
けると,履歴に残り,多数意見も認めるとおり勤勉手当は当該支給期間(半年間)
において10%の割合で減額され,昇給が少なくとも3か月延伸される可能性があ
り,その延伸によりひいては,退職金や年金支給額への影響もあり得る。そして,
東京都の教職員は定年退職後に再雇用を希望するとほぼ例外なく再雇用されている
が,戒告処分を受けるとその機会を事実上失い,合格通知を受けていた者も合格は
取り消されるのが通例であることがうかがわれる。
都教委は,不起立行為等をした教職員に対し,おおむね1回目は戒告処分,2回
目は1か月間月額給与10分の1を減ずる減給処分,3回目は6か月間月額給与1
0分の1を減ずる減給処分,4回目は停職1か月の停職処分等という基準で懲戒処
分を行っていることがうかがわれる。毎年度2回以上の卒業式や入学式等の式典の
たびに懲戒処分が累積加重されるのであるから,短期間で反復継続的に不利益が拡
大していくのである。戒告処分がひとたびなされると,こうした累積処分が機械的
にスタートする。
以上のとおり,実質的にみると,本件では,戒告処分は,相当に重い不利益処分
であるというべきである。
4教職員の主な非行に対する標準的な処分量定(東京都教育長決定)に列挙さ
れている非行の大半は,刑事罰の対象となる行為や性的非行であり,量定上それら
に関しても戒告処分にとどまる例が少なくないと思われる。原審は,体罰,交通事
故,セクハラ,会計事故等の服務事故について都教委の行った処分等の実績をみる
と,平成16年から18年度において,懲戒処分を受けた者が205人(うち戒告
が74人)であるのに対し,文書訓告又は口頭注意といった事実上の措置を受けた
者が397人,指導等を受けた者が279人となっており,服務事故(非違行為)
と認められた者のうち懲戒処分を受けたのは4分の1にも満たないとし,これによ
れば,戒告処分であっても,一般的には,非違行為の中でもかなり情状の悪い場合
にのみ行われるものということができるとしている。
さらに,不起立行為等に関する懲戒処分の状況を全国的にみると,懲戒処分まで
行っている地域は少なく,例えば神奈川県や千葉県では,不起立行為等があって
も,またそれが繰り返されていても,懲戒処分はされていないことがうかがわれ
る。
このように比較すると,本件戒告処分は過剰に過ぎ,比例原則に反するというべ
きである。
5以上を総合すると,多数意見がいう不起立行為等の性質,態様,影響を前提
としても,不起立行為等という職務命令違反行為に対しては,口頭又は文書による
注意や訓告により責任を問い戒めることが適切であり,これらにとどめることなく
たとえ戒告処分であっても懲戒処分を科すことは,重きに過ぎ,社会通念上著しく
妥当性を欠き,裁量権の範囲を逸脱し,又はこれを濫用するものであって,是認す
ることはできない。この点に関する原審の判断は相当である。
第1審原告X4については,多数意見は減給処分の取消請求を認容した原審の判
断を是認することができるとしており,結論において同じとなるが,上記のとお
り,私の意見は理由を異にする。なお,多数意見は,過去の処分歴に係る非違行為
がその内容や頻度等において規律や秩序を害する程度の相応に大きいものであるな
どの場合は,減給処分が裁量の範囲にあるものとされる可能性を容認していると思
われる。そうであるとすると,前述のとおり式典は毎年度2回以上あり,不起立行
為等を理由とする戒告処分は短期間に累積されていくのであるから,ある段階では
減給処分がなされる可能性がある。多数意見は,起立斉唱行為に係る職務命令は思
想及び良心の自由についての間接的な制約となる面があることを認めていることに
鑑みると,ただ単に不起立行為等が累積したにすぎない場合に減給処分が裁量の範
囲にあるものとされる可能性を容認することは,相当でないと思われる。
(裁判長裁判官金築誠志裁判官宮川光治裁判官櫻井龍子裁判官
横田尤孝裁判官白木勇)

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