弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件請求を棄却する。
         理    由
 上告棄却の確定判決に対する再審の請求は、刑訴四三六条一項に定める事由の場
合だけに許される。しかるに申立人は第一審判決が証拠とした鑑定が虚偽であるこ
との確定判決を得ることができないので、その事実を証明して本件再審の請求に及
んだというのである。しかし、再審の請求は本来事実認定の誤の救済であるから、
原則として事実の認定をした裁判所になさるべきものである。従つて、上告棄却の
判決に対して例外的に再審の請求が許されるのは右刑訴四三六条により上告審の関
与裁判官に職務上の犯罪があつたときの外はその上告棄却の判決を言い渡すについ
て特に証拠とした資料即ち自ら事実の取調を行つて集取した証拠又は上告棄却判決
が判断の資料として特に掲げた証拠について同四三五条一、二号の事由が存在しな
ければならないと解すべきである。しかるに、所論の鑑定書は原上告棄却の判決が
右の何れの意味でも判断の資料としたものではないこと記録上明らかであるから、
本件請求は右四三六条一項、四三五条一、二号、四三七条の場合に該らない。され
ば、所論の事由に基く再審請求は、所論鑑定書を証拠として事実の認定をした裁判
所に請求をするのは格別、本件請求を当裁判所にすることは許されないものといわ
なければならない。よつて同四四七条一項により、裁判官全員一致の意見で主文の
とおり決定する。
  昭和三〇年六月三〇日
     最高裁判所第一小法廷
         裁判長裁判官    入   江   俊   郎
            裁判官    真   野       毅
            裁判官    斎   藤   悠   輔
            裁判官    岩   松   三   郎

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