弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件上告を棄却する。
     上告費用は上告人の負担とする。
         理    由
 上告人の上告理由第一点について。
 所論は、本件請負契約が合意解除されたとの上告人の主張に関する原判決の事実
摘示は上告人の主張を誤解したものであるというが、一審および原審における当事
者双方の弁論の経過に照せば、原判決の所論事実摘示は正当であつて、なんら違法
の点はみとめられない。また、原判決の事実摘示には、被上告人が上告人からの本
件請負契約解除を承諾した旨の主張の記載のあることが明らかであるが、右判示の
趣旨は、被上告人の承諾により本件請負契約解除の効力を生じたものというのでは
なくて、上告人から民法六四一条に基づいてなした解除につき被上告人において異
議を述べなかつたことを付加的に記載したに過ぎないことが窺われる。所論は結局、
原判決を正解しなかつたことによるものであるから、採用できない。
 同第二点および同第三点について。
 所論は、昭和二九年二月一八日頃上告人について福岡法務局吉井支局に転任の発
令があつたことは当事者間に争がないとの原判決の判示は当事者の主張に基づかな
いものであるというが、一審および原審における当事者双方の弁論の経過に徴すれ
ば、右判示事実につき当事者間に争のないことが明らかであり、その主張が仮りに
真実と若干相違するところがあるとしても、これを当事者間に争のない事実として
確定することは、弁論主義に服する限度においてなんら違法ではない。
 また所論は、原判決には本件請負契約締結準備のための現場調査費用を上告人に
負担させた違法があるというが、所論調査費用は本件請負契約成立後に支出された
ことが原判決により認定されているのであつて、その挙示の証拠によれば右認定は
首肯するに足りるから、論旨は結局、前提を誤つた事実認定の非難に帰する。
 さらに所論は、被上告人が本件請負契約が解除になつたため木材を他に処分した
ことによる損害賠償を求めたのに対して、原審が右木材の墨付もしくは加工による
値下りのため被つた損害の賠償を認容したのは違法であるというが、被上告人の右
請求は、被上告人が木材を墨付もしくは加工したことにより値下りを来したために
被つた損害の賠償を求める趣旨をも含むのであることが窺われるから、この点に関
する論旨も結局、原判決を誤解したことによるものというべきである。
 その他所論は、独自の見解に立脚し、或は原審の認定しない事実に基づいて、原
審の事実認定、証拠の取捨判断を非難するに過ぎないから、採用できない。
 同第四点について。
 所論は、被上告人が本件請負契約における当初の見積より高価な木材を買い入れ
或は高額の人夫賃を支払つていることが証拠上明らかであり、従つて被上告人が請
負代金額の一割の利益をあげ得ないことが明らかであるのに、原審が、その事実を
顧慮することなく、被上告人が右一割の利益を得べかりしものとして、その賠償を
上告人に命じたのは、常識を無視し、被上告人の矛盾した主張を容認したものであ
るという。しかし、所論のような事実は原審の認定しないところであるのみならず、
被上告人が所論のように一部資材買入代金もしくは人夫賃として予定より高額の支
出をした事実があつたとしても、このことから直ちに請負工事全体として右一割の
利益を得られなくなるものということはできない。所論は結局、独自の見解に立脚
し、或は原審の認定しない事実に基づいて、原審の事実認定、証拠の取捨判断を非
難するに帰するから、採用できない。
 同五点について。
 所論は、本件請負契約における小屋掛トタンおよび釘代ならびに枠板工作費の支
出を被上告人の被つた損害として上告人にその賠償を命じた原判決には、上告人に
負担させ得ない費用の負担をさせた違法があるという。しかし原判決の確定した事
実によれば、被上告人の所論支出につき判示金額の限度において上告人に対してそ
の賠償を命じた原審の判断は、首肯するに足りる。所論は、独自の見解に立脚し、
或は原審の認定しない事実に基づいて、原審の適法になした事実認定ないし判断を
非難するに帰するから、採用できない。
 同第六点について
 所論は、原判決が本件請負要約解除による損害賠償債権額から上告人の被上告人
に対して支払つた本件請負代金内金一〇万円を控除してその残額のみについて被上
告人の請求を認容したのは違法であるというが、右は結局、上告人の不利益に帰す
る主張であるから、上告適法の理由となすを得ない。
 同第七点について。
 所論は、原判決には本件損害賠償額の算定につき損益相殺の原理を適用していな
い違法があるというが、右は結局、独自の見解に立脚し、原審で主張しない事実或
は原審の認定しない事実に基づいて、本件損害賠償額の算定に関する原判決の事実
認定ないし判断を非難するに帰するから、採用できない。
 よつて、民訴四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のと
おり判決する。
     最高裁判所第二小法廷
            裁判官    奥   野   健   一
            裁判官    山   田   作 之 助
            裁判官    草   鹿   浅 之 介
 裁判長裁判官池田克は退官につき署名押印することができない。
            裁判官    奥   野   健   一

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