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平成八年(ワ)第一二一〇九号 特許権等侵害行為差止等請求事件
        判      決
       原       告   船井電機株式会社
     右代表者代表取締役   【A】
     右訴訟代理人弁護士   石   川        正
     同           上   田    裕   康
     同           平   野    惠   稔
     同           田   中    信   隆
     同           畑        郁   夫
          右補佐人弁理士   【B】
       被       告   エムケー精工株式会社
右代表者代表取締役   【C】
右訴訟代理人弁護士   柏   木        薫
同           松   浦    康   治
右補佐人弁理士   【D】
同           【E】
        主      文
一 被告は、別紙物件目録1、同目録2-(1)、同目録2-(2)、同目録3
-(1)、同目録4ないし6、同目録7-(1)及び同目録8記載の製パン器を、日本国
内で販売するために製造し、輸入し、日本国内向けに販売してはならない。
二 被告は、別紙物件目録2-(1)、同目録4ないし6、同目録7-(1)及び同
目録8記載の製パン器及び半製品を廃棄せよ。
三被告は、原告に対し、金六六三五万五二七一円及び内金七七一万二二八四
円に対しては平成八年一二月六日から、内金一八二一万八〇七一円に対しては平成
九年三月三一日から、内金一二七六万七七六三円に対しては平成一〇年三月三一日
から、内金一四五三万三九七六円に対しては平成一一年三月三一日から、内金一三
一二万三一七七円に対しては平成一二年三月三一日から、各支払済みまで年五分の
割合による金員を支払え。
四 原告のその余の請求を棄却する。
五 訴訟費用はこれを二分し、その一を原告の負担とし、その余を被告の負担
とする。
六 この判決は、三項に限り仮に執行することができる。
事実及び理由
 事実及び理由は、別紙事実及び理由記載のとおりである。
(口頭弁論終結日 平成一二年七月一七日)
大阪地方裁判所第二一民事部
            裁判長裁判官   小   松    一   雄
               裁判官   高   松    宏   之
               裁判官   安   永    武   央
 
別紙
事実及び理由
第1 請求
1 被告は、別紙物件目録1ないし8及び同目録A記載の製パン器を製造し、販
売し、輸入してはならない。
2 被告は、前項記載の各製パン器及びその半製品を廃棄せよ。
3 被告は、原告に対し、金2億2800万円及びこれに対する平成8年12月
6日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
第2 事案の概要
 本件は、原告が、自己の有する特許権及び実用新案権に基づき、別紙物件目
録1ないし8及び同目録A記載の製パン器(以下、各目録の表題部の記載に従い
「イ号物件」などといい、各権利の侵害性が問われる物件をまとめて「権利1の対
象被告物件」などということがある。)を製造、販売している被告に対し、同物件
の製造、販売の差止め等と損害賠償(実施料相当額)を求めている事案である。
 以下、各権利ごとに事案の概要、争点に関する当事者の主張、及び争点に対
する判断を示すこととする(ただし、損害額に関しては、各権利すべてに関して最
後にまとめて、争点に対する当事者の主張と裁判所の判断を示す)。
第3 権利1に係る請求について
【争いのない事実等】
1 原告は、次の特許権(以下「権利1」という。)を有している。
発明の名称 製パン器
出 願 日 昭和62年2月20日(特願平6-37967号)
分割の表示 特願昭62-38812号の分割
公 告 日 平成7年9月20日(特公平7-85730号)
登 録 日 平成9年9月5日
特許番号  特許第2131932号
2 権利1の特許出願の願書に添付された明細書(以下「権利1明細書」とい
う。)の特許請求の範囲は次のとおりである(以下、請求項1に係る発明を「発明
1(1)」といい、請求項2に係る発明を「発明1(2)」という。)。
(1) 請求項1
 材料容器内にイースト、各種材料及び水を入れ、混ねつ及び発酵等の工程
を自動化した製パン器において、前記材料容器をイースト、各種材料及び水のすべ
てを収納する一つだけとし、材料容器内に入れた材料の温度を検出する手段を備え
ず、前記工程の開始時刻をタイマーで制御できるようにしたことを特徴とする製パ
ン器。
(2) 請求項2
 底部に混ねつ用回転羽根が取り付けられ、パンの材料、イースト菌、水を
入れる単一のパン容器と、該パン容器を加熱するヒータを備えたオーブンと、上記
混ねつ用回転羽根を駆動するモータとを具備して、混ねつ、発酵、焼き上げの製パ
ン工程を行う製パン器において、タイマーを具備し、材料容器内に入れたパンの材
料の温度を検出する手段を具備せず、タイマーによって設定された製パン工程の開
始まで、イースト菌または水を上記パン容器から隔離して保管する手段を具備しな
いことを特徴とする製パン器。
3 原告は、イ号物件、ロ(1)号物件、ハ(1)号物件、ニ号物件、ホ号物件、ヘ号
物件、ト(1)号物件、チ号物件は、発明1(1)及び同(2)の技術的範囲に属すると主張
する。
【争点】
1 権利1の対象被告物件は、発明1(1)及び同(2)の技術的範囲に属するか。
2 権利1に基づく請求は権利濫用か。
【争点に関する当事者の主張】
1 争点1について
(原告の主張)
(1) 権利1の対象被告物件は、発明1(1)及び同(2)の構成をすべて具備するも
のである。
(2) 被告は、権利1の特許出願に対する異議申立てに対する原告の主張を理由
に、権利1の対象被告物件が、発明1の技術的範囲に属することを争っているが、
被告は、異議申立てに対する原告の主張を誤解している。
 また、権利1は物の特許であるから、被告による製造販売時点において、
権利1の対象被告物件が、発明1の技術的範囲に属する物である以上、その後、使
用者がどのように材料を入れるかによって、侵害性が否定されるものではない。
(3) 被告は、権利1の対象被告物件に水を量る計量カップが付属していること
を理由に、同物件が、発明1(1)及び同(2)の技術的範囲に属することを争っている
が、水を量る計量カップは、「材料容器」又は「パン容器」に該当しないから、被
告の主張は失当である。
(被告の主張)
(1) 権利1の特許出願に対する異議申立てに対して、原告が、実願昭62-6
607号実用新案登録出願に係る考案(実開昭63-114256号)との比較に
関して、主張した内容からすれば、小麦粉の山の頂部の凹部をイースト菌容器と
し、一時的材料容器を製パンの都度作成するものは、発明1(1)及び同(2)の技術的
範囲に属さないというべきである。
 しかるに、権利1の対象被告物件では、タイマー使用時におけるイースト
菌の保管は、パンケースにまず水を入れた後、小麦粉等のイースト菌以外の材料を
入れ、この材料の中央に小さな窪みを設け、イースト菌をこの窪みに入れ、タイマ
ーでセットした混練開始時間までの間、この状態が保持されるのであるから、発明
1(1)及び同(2)の技術的範囲に属さない。
(2) 権利1の対象被告物件には、水を量る計量カップが付属しているから、発
明1(1)の「前記材料容器をイースト、各種材料及び水のすべてを収納する一つだけ
とし」との構成、及び、発明1(2)の「パンの材料、イースト菌、水を入れる単一の
パン容器」との構成を具備しない。
2 争点2(権利濫用)について
(被告の主張)
 権利1の特許登録には、以下に述べるように、明白な無効理由があり、権利
1に基づく請求は権利濫用である。
(1) 特許法第36条4項違反
 権利1の発明は、水、イースト菌及びパン材料の特別な配置方法なくして
は成り立たない技術である。それにもかかわらず、特許請求の範囲にはこれが記載
されていないのであるから、権利1の発明は、特許法36条4項の要件を満たさ
ず、無効であることが明白である。
(2) 特許法29条の2違反
 原告は、出願公告後に平成8年8月19日付手続補正によって、権利1の
出願公告時の明細書に記載された特許請求の範囲請求項1及び2に、それぞれ、
「材料容器内に入れた材料の温度を検出する手段を備えず」という構成を追加し
た。
 しかし、この「材料容器内に入れた材料の温度を検出する手段を備えず」
という構成は、権利1の発明が解決しようとする課題や発明の効果とは全く関係の
ない構成であり、出願時の明細書や図面において何ら示唆されていない技術事項を
追加するものであるから、補正の要件を欠くものである。したがって、権利1は、
出願公告後の補正がされなかった特許出願について特許がされたものとみなされ、
権利1の明細書は上記補正のないものとなる。
 そうすると、権利1は、請求項1及び2のいずれの発明も、権利1の拡大
先願に該当する実願昭61-121727号実用新案登録出願(考案の名称「自動
製パン機」。以下「権利1先願」という。)の明細書に記載された考案と同一の発
明であるから、特許法29条の2に違反し、無効であることが明白である。
(3) 特許法29条1項3号違反
 発明1(1)及び同(2)は、いずれも、権利1の特許出願当時公知であった、
特開昭62-5314号公開特許公報に従来技術として開示されている技術及び特
開昭56-3028号公開特許公報に開示された技術と同一の構成を有するから、
特許法29条1項3号に違反し、無効であることが明白である。
(原告の主張)
(1) 特許法36条4項違反について
 権利1は既に専門的知識経験を有する特許庁の審判官によって、特許査定
されたものであり、以後の無効審判の手続の中でも、特許庁が、権利1を特許法3
6条4項の要件を満たさないことを理由として無効であると判断したことは一度も
ないのであるから、明白な無効理由があるということはできない。
(2) 特許法29条の2違反について
 材料容器内に入れた材料の温度を検出する手段を備えていないことは、権
利1の出願公告時の明細書に間接的に記載されており、権利1の効果である製パン
器の構造を複雑なものにしないということと密接な関わりを持っているものである
から、出願公告後の補正は、何ら特許請求の範囲を変更したものではない。
 したがって、権利1の特許請求の範囲は、出願公告後の補正に基づくもの
であり、そうである以上、権利1の特許登録は、特許法29条の2に違反するもの
ではない。
(3) 特許法29条1項3号違反について
 (1)と同旨。
【争点に対する判断】
1 争点2(権利濫用)について
(1) 特許の無効審決が確定する以前であっても、特許権侵害訴訟を審理する裁
判所は、特許登録に無効理由が存在することが明らかであるか否かについて判断す
ることができると解すべきであり、審理の結果、当該特許登録に無効理由が存在す
ることが明らかであるときは、その特許権に基づく差止め、損害賠償等の請求は、
特段の事情がない限り、権利の濫用に当たり許されないと解するのが相当である
(最高裁判所第3小法廷平成12年4月11日判決・民集54巻4号1368
頁)。
(2) 旧特許法36条4項違反について
ア 権利1の特許出願時に施行されていた昭和62年法律第27号による改
正前の特許法(以下「旧特許法」という。昭和62年法律第27号附則3条1項参
照。)36条4項本文は、「第2項第4号の特許請求の範囲には、発明の詳細な説
明に記載した発明の構成に欠くことができない事項のみを記載しなければならな
い。」と定めていた。そして、同号違反は、同法123条1項3号により無効理由
とされていた。
イ 権利1明細書(甲1)によれば、権利1に係る発明は、いずれも、従
来、タイマー機構を具備する製パン器においては、イースト菌が混ねつの開始前に
水と作用して発酵力を喪失することを防止するために、水タンクを設けるかイース
ト菌収納箱を設けてイースト菌及びパン材料から水を隔離しておき、製パン工程の
開始後にそれらを加え合わせる動作を行っていたため、製パン器の構造が複雑とな
り、その制御回路も複雑になって故障の原因が増加し、また、コストアップになる
等の不都合な点があったので、そのような問題点を解決することを目的とし、「こ
の発明の製パン器によると、小麦粉を主成分とするパンの材料およびイースト菌を
容器に入れ、水を注入しておいても攪拌や混ねつしない限り、イースト菌が混ねつ
の前に水と作用して発酵したりしないので、水タンクまたはイースト菌収納箱を別
に設けて混ねつ開始時に操作する必要がないので、製パン器の構成が簡単になっ
て、故障の原因を減らすことができる。そしてパン容器内のパンの材料の温度を検
出する手段を有しておらず、この点でも構成が簡単となり、それにより故障を低減
できる。更にこれらにより装置を廉価にすることができる。」(権利1明細書の発
明の効果欄)との効果を奏する発明であると認められる。
 したがって、権利1に係る発明が、上記従来技術の問題点を解決し、上
記の効果を奏する発明といえるためには、当然、イースト菌が混ねつの開始前に水
と作用して発酵力を喪失することを防止するための構成が、特許請求の範囲に記載
されていなければならないと解される。
 そして、このための構成について、権利1明細書の発明の詳細な説明に
おいては、①イースト菌、パン材料、温水の順に、これらをパン容器に投入するこ
と、②温水、パン材料、イースト菌の順に、これらをパン容器に投入すること、又
は③イースト菌とパン材料を混合したもの、温水の順に、これらをパン容器に投入
することにより、イースト菌が混ねつの開始前に水と作用して発酵力を喪失するこ
とを防止することが記載されていると認められる。
 しかしながら、権利1の特許請求の範囲請求項1及び2には、単にパン
材料、イースト菌及び水を一つのパン容器に入れるということが記載されているに
すぎず、上記のような、イースト菌が混ねつの開始前に水と作用して発酵力を喪失
してしまうことを防止する手段は、何ら記載されていない。
 そうすると、権利1の特許請求の範囲の記載は、請求項1及び2のいず
れも、発明の構成に欠くことができない事項のみを記載しているとは認められず、
旧特許法36条4項に違反するものといわざるを得ない。
ウ なお、今後、原告が、特許法126条に基づき、特許請求の範囲に上記
のような手段を追加訂正して、旧特許法36条4項違反を回避しようとすることも
考えられる。
 しかし、上記のようなパン材料等の投入順序という方法は、権利1に係
る発明が対象とする製パン器の使用者による具体的使用方法を示すものにすぎない
から、そのような記載を発明の構成に追加しても、製パン器という物の構成の特定
に何ら関係するものではない。したがって、そのような訂正は、同法126条1項
に定めるいずれの訂正事由にも該当せず、許されないものと解される。
 また、仮に、同法126条1項に定めるいずれかの訂正事由に該当する
としても、同条3項は、「第1項の明細書又は図面の訂正は、実質上特許請求の範
囲を拡張し、又は変更するものであってはならない。」と定めているところ、製パ
ン器自体を発明の対象とする権利の構成に、上記のようなパン材料等の投入順序と
いう方法を追加することは、特許請求の範囲の記載に発明の対象を追加することに
なり、実質上特許請求の範囲を変更するものであり、そのような訂正は許されない
ものと解される。
エ 以上より、旧特許法123条1項3号、36条4項2号により、権利1
の特許登録には、発明1(1)及び同(2)のいずれについても、明白な無効理由がある
と認められる。
(3) 旧特許法29条の2違反について
ア 旧特許法29条の2第1項本文は、特許出願に係る発明が当該特許出願
の日前の他の特許出願又は実用新案登録出願であって当該特許出願後に出願公告又
は出願公開がされたものの願書に最初に添附した明細書又は図面に記載された発明
又は考案(その発明又は考案をした者が、当該特許出願に係る発明の発明者と同一
の者である場合におけるその発明又は考案を除く。)と同一であるときは、その発
明については、前条第1項の規定にかかわらず、特許を受けることができない旨定
めている。
イ 権利1の出願日は、昭和62年2月20日であると
ころ、証拠(乙16)によれば、権利1の出願日前に実用新案登録出願され、権利
1の出願後に出願公開されたものとして、権利1先願が存在することが認められる
(なお、発明1(1)(2)の発明者と権利1先願の考案の考案者とが同一人であるとは
認められない。)。
 そして、同証拠によれば、権利1先願の願書に最初に添付した明細書又
は図面(以下「権利1先願明細書」という。)には、次の記載があることが認めら
れる。
(ア) 実用新案登録請求の範囲
 パン材料を収容する材料容器と、該材料容器を収容する装置本体内に
配設され前記材料容器を加熱するヒータと、前記容器内に配設されパン材料をミキ
シングする回転羽根と、該回転羽根を駆動する駆動手段とを備えてなる自動製パン
機において、前記容器内のパン材料の温度を検出する材料温度センサーと、ミキシ
ングを開始させる材料基準温度を設定する材料基準温度設定手段と、前記材料温度
センサーにより検出される材料温度と前記材料基準温度とを比較し、材料温度が材
料基準温度以上であるとき前記駆動手段を始動させる信号を出力する第1比較器
と、前記材料容器を収容する装置本体内の温度を検出する庫内温度センサーと、庫
内基準温度を設定する庫内基準温度設定手段と、前記庫内温度センサーにより検出
される庫内温度と前記庫内基準温度とを比較し、庫内温度が庫内基準温度以下であ
るときのみ前記ヒータをオンさせる信号を出力する第2比較器とを備えた制御装置
を有することを特徴とする自動製パン機。
(イ) 産業上の利用分野
 本考案は、パン材料のミキシングから焼き上げまでの一連の工程を自
動的に行う自動製パン機に関する。
(ウ) 従来の技術
 ミキシング開始時のパン材料および水の温度は外気温度に左右され、
しかも、イースト菌は一旦低温の水に接触すると活性が弱まって発酵工程で十分に
膨らまなくなり、逆に50℃以上の高温に曝されると死滅するという問題がある。
 従って、四季を通じて味の良いパンを製造するためには水温等の温度
管理が必要となり、特に、製パン機をタイマー動作させた場合には、外気温度によ
って水及びパン材料の温度が変動することから、温度管理が不可欠なものとなる。
 このため、例えば、実開昭60-111678号公報にて、材料容器
内のパン材料を所定の低い温度まで冷却すると共に、水槽内の水を所定の低い温度
に冷却し、冷やしたパン材料に冷却した水を注入することによってミキシング開始
時の材料温度を低くし、四季を通じてミキシング時間の均一化を図り、味の良いパ
ンを作ることができるようにした自動製パン機が提案されている。
(エ) 考案が解決しようとする問題点
a しかしながら、前記自動製パン機は、…夏季においては十分な効果
をもたらすが、…冬季においては、ミキシング開始時にイースト菌が冷水に接触す
る恐れがある。
b しかも、パン材料を収納する容器や水槽を冷却するための補助容器
が必要となるため、構造が複雑になるという問題があった。
c 従って、本考案は、外気温度の低い冬季にタイマー動作させる場合
であってもイースト菌が冷水に接触することが無く、四季を通じて味の良いパンを
作ることができる構造の簡単な自動製パン機を得ることを目的とする。
(オ) 作用
a 本考案に係る自動製パン機は、パン材料及び水を材料容器に入れ、
その材料をミキシングした後、発酵させ、次いで焼成する工程を自動的に行うもの
であるが、準備段階では、まず、最初にイースト菌を材料容器に入れ、次いで該イ
ースト菌を覆うように小麦粉その他の材料を入れ、最後に水を入れてイースト菌と
水とが他のパン材料で隔離させれるようにセットする。このようにセットすると、
タイマーを使用する場合のように長時間放置しておいても水とイースト菌が触れる
ことがなく、従って、冬季にイースト菌が冷水と接触して活性を失ったり、あるい
は夏季に適温の水と接触し発酵を開始して過発酵となったりすることが無く、おい
しいパンづくりが可能となる。
b 前記のようにセットした後、自動製パン機を作動させると、通常、
庫内温度センサーにより検出される庫内温度が庫内基準温度より低いため、第2比
較器からの信号によりヒータへ通電が開始され、材料容器内の材料が加熱される。
この予熱工程では、庫内温度が庫内基準温度に達すると、ヒータがオフされ、庫内
温度が庫内基準温度以上に上昇するのが防止され、また、ヒータ7をオフさせた
後、庫内温度が所定温度まで低下すると再びヒータへの通電が開始されるという動
作が繰り返される。
 材料容器が加熱されると、該材料容器内のパン材料の温度が徐々に
昇温し、材料温度センサーにより検出される材料温度が材料基準温度に達すると、
第1比較器からの出力信号により駆動手段が始動し、ミキシングが開始される。こ
れにより小麦粉等がイースト菌及び水と混合されるが、パン材料の総てが所定温度
にまで昇温されているため、ミキシング時にイースト菌が冷水に接触するのが防止
される。
(カ) 実施例
 ミキシング開始後の動作について簡単に説明すると…ミキシング開始
後、所定時間、例えば15分経過すると、…発酵工程に進み、所定時間、例えば2
0分発酵が行われる。次いで…焼成が行われる。
(キ) 考案の効果
a 本考案によれば、パン材料が冷たい場合、ミキシング開始前に材料
が予熱され、その温度が一定温度に達した後にのみミキシングが開始されるため、
冬季においてもミキシング時にイースト菌が冷水に接することがなく、従ってミキ
シング後の発酵工程での十分な発酵が保証され味の良いパンを作ることができる。
b また、水を入れておくための水槽やパン材料及び水を冷却するため
の補助容器を必要としないため、製パン機の構造を簡略化できる。
(ク) 第1図からは、材料容器3を加熱する庫内ヒータ7を備えた調理用
チャンバ16と、容器の底部に取り付けられた回転羽根5及び回転羽根を駆動する
ミキシング用モータ6が把握できる。
ウ そこで、前記イ(ア)に記載した権利1先願明細書の実用新案登録請求の
範囲記載に係る考案(以下「先願考案1」という。)と発明1(1)及び同(2)との同
一性についてみると、先願考案1においては材料温度センサー、材料基準温度設定
手段、第1比較器、庫内温度センサー、庫内基準温度設定手段及び第2比較器を具
備することが要件とされているのに対し、発明1(1)及び同(2)においてはそれらが
要件とされていないから、両者が発明として同一でないことは明らかである。
 また、実質的にみても、先願考案1は、自動製パン機におい
て、冷たい水とイースト菌が混ざることにより、発酵が十分行われないことを防ぐ
ために、庫内温度センサーで製パン機内の温度を検出し、その温度が設定温度より
も低い場合には、ヒーターで材料容器内を温めるとともに、材料温度センサーで材
料容器内のパン材料の温度を検出し、その温度が設定温度よりも高い場合に、材料
容器内に配設されパン材料をミキシングする回転羽根を駆動させるようにしたもの
であり、回転羽根の駆動開始時における材料容器内の温度管理を主たる目的とし、
その解決手段を開示した考案であるのに対し、発明1(1)及び(2)は、タイマー待機
中にイースト菌が水と作用して発酵することを防止することを目的とする発明であ
って、両者はその技術思想を異にするものであると認められる。
エ しかしながら、旧特許法29条の2は、当該発明が、先願の特許出願又
は実用新案登録出願に係る明細書中の特許(実用新案登録)請求の範囲に記載され
た発明又は考案と同一である場合のほか、先願の明細書中のそれら以外の部分や図
面に記載されているにとどまる発明又は考案と同一である場合にも適用される。そ
して、後者の場合に、どのような発明(考案)が独立のまとまりある発明(考案)
として先願の明細書及び図面中に記載されているかは、それらの記載に接する当業
者の観点から実質的に検討すべきである。
 そこでこの観点から検討するに、まず、前記のとおり、先願考案1は
回転羽根の駆動開始時における材料容器内の温度管理を主たる目的として
いるものと認められるところ、前記イ(オ)aにおいては、そのような温度管理を行
う前提として、材料容器へのパン材料、水及びイースト菌を入れる順序を特定する
ことによって、ミキシング開始までの間にイースト菌が水と作用して活性を失った
り、過発酵となることを防止することが示されており、これは、先願考案1が主た
る目的とする温度管理とは別個の技術的意義を有するまとまりある考案として把握
し得るものである。
 そして、このようなパン材料等の入れ方を行うためには、上記イ(オ)a
の記載からすれば、パン材料、水及びイースト菌を一つの材料容器に入れることは
自明であり、このことから、従来技術の問題点として前記イ(エ)bの記載にあるよ
うな、補助容器が必要になるために製パン器の構造が複雑になるという問題点が解
決され、前記イ(キ)bの記載にあるように、水を入れておくための水槽が不要にな
って製パン器の構造を簡略化できるとの効果を奏することも容易に理解し得るとこ
ろである。
 さらに、権利1先願は、ミキシングから焼成までの工程を自動化し、か
つその開始時刻をタイマーで制御できるようにした製パン器を前提とし、それに伴
う問題点を解決しようとしたものであることは、前記イ(イ)、(ウ)、(エ)の各記載
から明らかである。
 また、前記イ(ク)の記載からすれば、そのような製パン器の一例とし
て、底部にミキシング用回転羽根が取り付けられ、パン容器を加熱するヒータを備
えた調理用チャンバと混ねつ用回転羽根を駆動するモータを具備するものがあると
理解し得るものである。
 以上の検討からすれば、権利1先願明細書には、次の考案(以下「先願
考案2」という。)が記載されていると認められる。
「 材料容器内にイースト、各種材料及び水を入れ、
ミキシング及び発酵等の工程を自動化した製パン器において、前記材料
容器をイースト、各種材料及び水の全てを収納する一つだけとし、前記工程の開始
時刻をタイマーで制御できるようにしたことを特徴とする製パン器。」
 また、同様に、権利1先願明細書には、次の考案(以下「先願考案3」
という。)が記載されていると認められる。
「 底部に回転羽根が取り付けられ、パンの材料、イースト菌、水を入れ
る単一の材料容器と、該材料容器を加熱するヒータを備えた調理用チャンバと、上
記回転羽根を駆動するミキシングモータとを具備して、ミキシング、発酵、焼成の
製パン工程を行う製パン器において、タイマーを具備し、タイマーによって設定さ
れた製パン工程の開始まで、イースト菌又は水を上記パン容器から隔離して保管す
る手段を具備しないことを特徴とする製パン器。」
 もっとも、このように先願考案2及び3を抽出するに当たっては、材料
容器内に入れたパンの材料の温度を検出する手段(材料温度センサー)を具備した
ものを抽出すべきであるとの指摘も考えられる。しかし、前記イ(オ)bの記載から
すると、権利1先願明細書における材料温度センサーは、混ねつ開始までの温度管
理のために設けられているものと認められるのに対し、先願考案2及び3の技術的
意義は、先に述べたとおり、タイマーを具備した自動製パン器において、単一の容
器材料にパン材料、水及びイースト菌を特定の順序で入れることによって、装置構
造を簡単にしつつ、混ねつ開始時までイースト菌が水と作用することを防止すると
いう点にあると認められるから、先願考案2及び3を抽出・把握するに当たって、
「材料容器内に入れた材料の温度を検出する手段」を構成要素に入れることは相当
でないというべきである。 
オ 以上の検討を前提に、発明1(1)と先願考案2、発明1(2)と先願考案3
とを比較すると、用語の違いを除けば、発明1(1)及び同(2)には、「材料容器内に
入れた材料の温度を検出する手段を備えず」という要件があるが、先願考案2及び
3にはそのような要件が積極的に記載されていない点で、一応相違するものと認め
られる。
 しかし、先に述べた先願考案2及び3の技術的意義からすれば、先願考
案2及び3は、「材料容器内に入れた材料の温度を検出する手段」を具備するか否
かは問わない考案とみるのが相当である。
 したがって、発明1(1)及び同(2)には「材料容器内に入れた材料の温度
を検出する手段を備えず」という要件があることを加味しても、発明1(1)は先願考
案2に、発明1(2)は先願考案3に、それぞれ包含されているとみるべきである。
 これに対しては、特に発明1(1)及び同(2)のような限定をすれば、材料
温度検出手段を設けないことから構造が簡単になるとして、その独自の技術的意義
を指摘する見解も考えられる。しかし、そのような効果は自明の効果であり、それ
は材料温度検出手段を備えないものも包含する先願考案2及び3が既に予定すると
ころであるということができ、他に上記限定により特段の効果が生じているとみる
ことはできないから、上記限定は格別の技術的意義を有するものではないというべ
きである。
 そうすると、発明1(1)と先願考案2及び発明1(2)と先願考案3とは、
出願公告後の平成8年8月19日付手続補正による補正が適法であるとの前提に立
っても、実質的に同一の発明ないし考案といわざるを得ない。
カ 以上より、旧特許法123条1項1号、29条の2により、権利1の特
許登録には、発明1(1)及び同(2)のいずれについても、明白な無効理由があると認
められる。
(4) よって、原告の権利1に基づく請求は、いずれも権利濫用であって、理由
がない。
第4 権利2に係る請求について
【争いのない事実等】
1 原告は次の特許権(以下「権利2」という。)を有している。
発明の名称 製パン方法
出 願 日 昭和62年2月20日(特願昭62-38812号)
公 告 日 平成7年7月12日(特公平7-63429号)
登 録 日 平成9年12月19日
特許番号  特許第2133975号
2 権利2の特許出願の願書に添付された明細書(以下「権利2明細書」とい
う。)の特許請求の範囲は次のとおりである(以下この特許発明を「発明2」とい
う。)。
 イースト菌と水との接触を避ける様に、水と、小麦粉、油脂などのパン材料
と、イースト菌とをパン容器内にこの順に入れ、そのまま放置し、その後、タイマ
ーにより混捏、発酵、焼き上げなどの製パン工程に移行することを特徴とする製パ
ン方法。
3 原告は、イ号物件、ロ(1)号物件、ハ(1)号物件、ニ号物件、ホ号物件、ヘ号
物件、ト(1)号物件、チ号物件は、発明2の実施にのみ使用する物であると主張す
る。
4 被告は、権利2の対象被告物件を、①日本国内で販売しているのみならず、
②日本国内で製造の上、アメリカ合衆国(以下「米国」という。)所在の者に販
売・輸出しており、また、③中華人民共和国(以下「中国」という。)所在の者か
ら購入し、日本を経由することなく、直接米国所在の者に販売している。
【争点】
1 権利2の対象被告物件は、発明2の実施にのみ使用する物か(間接侵害
性)。
2 被告が、権利2の対象被告物件のうち米国への販売に係る物を製造、販売す
る行為は、権利2を侵害するか(外国譲渡)。
3 被告が、権利2の対象被告物件を中国で購入し、直接米国へ販売すること
は、権利2を侵害するか(日本不介在譲渡)。
【争点に関する当事者の主張】
1 争点1(間接侵害性)について
(原告の主張)
(1) 権利2の対象被告物件は、いずれも、パンケース8内にイースト、各種材
料及び水を入れ、これらに対する混練及び発酵等の工程を自動化してあり、パンケ
ース8をイースト、各種材料及び水のすべてを収納する一つだけとし、前記工程の
開始時刻をタイマーで制御できるようにしてある製パン器である。そして、同物件
の取扱説明書の指示から明らかなように、同物件をタイマー制御により使用する場
合、使用者は、①水、②小麦粉、油脂等のパン材料、③イースト菌を、この順序で
パン容器内に入れるから、同物件は、発明2の実施にのみ使用される製パン器であ
る。
(2) タイマー付きの製パン器として、社会通念上、商業的ないしは実用的であ
ると認められる用途は、タイマーを使用した製パンのみである。
(3) ある消費者が権利2の対象被告物件を購入し、1回あるいは数回の使用
で、発明2の方法を実施しない(タイマーを使わない)ことがあったとしても、権
利2の対象被告物件に他の用途があることにはならない。権利2の対象被告物件の
使用者が、一度の使用においてタイマーを使わないことがあるとしても、その使用
者が一度もタイマー機能を使わないということはありえない。なぜなら、もし使用
者がタイマー付製パン器固有の機能・特徴に着目せず、タイマーを使う気がないの
であれば、タイマーなしの製パン器を買うのであり、タイマー機能の付加価値分を
支払ってまで権利2の対象被告物件を買うことはないからである。
(4) 被告が権利2の対象被告物件の他の用途であると主張するタイマーを使用
しない使用方法は、発明2の技術的思想の中心であり発明2の重要な構成部分であ
るタイマー部分が使用されない(遊んでしまう)極めて変則的な使用方法である。
このような使用方法では他の用途があるとはいうことはできない。
(5) タイマー付製パン器はタイマーのない製パン器の上位機種であり、権利2
の対象被告物件において、タイマーを使用しない使用方法は、タイマーを使った使
用方法の一部、又は、技術的、質的に下位の使用方法である。
(6) 発明2は、タイマーを用いる製パン方法であるから、間接侵害品たる
べき製パン器はタイマー付きのものとなるが、タイマー付きの製パン器であっても
物理的にタイマーを用いないで製パンを行うことは常に可能であるから、もしこの
点を捉えて「のみ」の要件を欠くというのであれば、およそ権利2を侵害する行為
といえるものはなくなり、権利2は特許として成立はしていても実際には何ら保護
を与えられることがないという不当な結論に至ることになる。一方、被告として
は、タイマーを外しさえすれば、間接侵害となることはなくなるから、権利2の対
象被告物件が「のみ」の要件を充足すると考えても、何ら不当な結果を招くもので
はない。
(被告の主張)
(1) 権利2は、タイマー制御を前提とした製パン方法に関する発明であるが、
権利2の対象被告物件において、タイマー制御は一つの機能にすぎず、同物件は、
①タイマー制御することなく直ちに製パンすることや、②クロワッサン等の生地の
みの作成にも使用することができ、そのことは同物件の取扱説明書にも記載されて
いる。
 したがって、権利2の対象被告物件は、発明2の実施にのみ使用される物
ではない。
(2) 原告の主張について
 権利2の対象被告物件の上記①、②の使用方法は、商業的実用的な用途で
あり、特に①は、同物件の基本的な使用形態である。他方、同物件のタイマー制御
による製パン方法は、付随的使用形態にすぎない。
 したがって、原告の主張(2)ないし(5)は、いずれも失当である。
2 争点2(外国譲渡)について
(原告の主張)
 間接侵害は、本来の特許権の効力から付加されて与えられた効力であり、直
接侵害を前提としていない。
 また、被告は、日本から米国市場へ向けて販売するという原告の経済的効用
を奪っているのであるから、原告の独占は補償されるべきである。
 したがって、被告が権利2の対象被告物件を、米国所在の者に販売している
行為も、権利2を侵害するものとみなされる。
(被告の主張)
 権利2の対象被告物件が、米国に販売される場合、この方法が実施されるの
は日本ではなく米国であり、直接侵害を構成しないから、直接侵害を前提とする間
接侵害も構成しない。
3 争点3(日本不介在譲渡)について
(原告の主張)
 特許権侵害の非難を受けるのは、人であり、物ではないから、侵害者が日本
の裁判所の管轄に属する以上は、特許法の適用を制限する必要はない。
 特許法は、国内の特許権者による実施(生産からのその後の流通に至るすべ
ての経済的効用)を特許権者に帰属させて、その引き換えに発明を公開している。
したがって、そのような特許権者の経済的独占に影響を及ぼすものは、すべて「実
施」としなければならない。近時、生産拠点が、徐々に海外へシフトする動きが出
ていること、日本の製造業では主力が海外市場というものが多くあることを考慮す
れば、海外で生産された物を海外に販売する行為を、「実施」でないとすれば、日
本における特許権の価値が大きく減殺されてしまい、日本の特許権者が本来得るべ
き経済的効用の独占を奪い、特許権者に不当に不利益を課すことになる。
 したがって、被告が、権利2の対象被告物件を、中国所在の者から購入し、
日本を経由することなく、直接米国所在の者に販売している行為についても、権利
2を侵害するとみなすべきである。
(被告の主張)
 特許権の属地主義からすれば、対象物件が日本の領土内に存在しない限り、
我国の特許権を侵害するものではないというべきである。
 したがって、特許法第2条3項の「実施」についても、対象たる物が日本の
領土内に存在すること(あるいは、対象たる方法が日本の領土内で使用されるこ
と)を前提とするものである。
 したがって、権利2の対象被告物件を、中国所在の者から購入し、日本を経
由することなく、直接米国所在の者に販売する行為は、日本の特許権の侵害が問題
となることはないというべきである。
【争点に対する判断】
1 争点1(間接侵害性)について
(1) 被告は、権利2の対象被告物件には、タイマーを使用しない使用方法や、
生地作りのみに使用する用途があるから、発明2の実施にのみ使用されるものでは
ないと主張するので、以下この点について検討する。
 本来特許権は、業として特許発明の実施をすることを専有する権利であり
(特許法68条)、方法の発明においては、当該方法を使用することによって初め
て当該発明の価値が発現するものであるから、方法の発明において本来特許権侵害
とされるべきものは、当該方法を使用して当該特許発明を実施する行為(特許法2
条3項2号)であるのが原則である。
 しかしながら、方法の発明の実施を特許権者が捕捉することは困難である
ことが多いことから、単に方法の発明の実施行為のみを規制の対象とするのでは、
特許権の効力の実効性を確保するのに十分とはいえない。そしてこの場合、方法の
発明の実施に当たっては何らかの物を用いることが通常であることから、方法の発
明の実施に用いられる物の製造、販売等を規制することとすれば、特許権の効力の
実効性を確保するために寄与するところが大きいと考えられる。
 しかし他方、方法の発明の実施に用いられる物は多種多様であり、それら
の生産、販売等を一律に規制の対象としたのでは、本来特許権の効力が及ばないは
ずの、当該発明方法以外の方法の実施をも規制することにつながり、特許権の効力
が不当に拡張されることになるおそれもある。
 特許法101条2号が、特許権を侵害するものとみなす行為の範囲を、そ
の発明の実施「にのみ」使用する物を生産、譲渡等する行為のみに限定したのは、
以上のような考慮に基づくものであって、そのような性質を有する物であれば、そ
れが生産、譲渡等される場合には侵害行為(実施行為)を誘発する蓋然性が極めて
高いことから、その生産、譲渡等を規制しても特許権の効力の不当な拡張とならな
いとの趣旨に出るものであると解される。そして、このような観点から考えれば、
その発明の実施「にのみ」使用する物とは、当該物に経済的、商業的又は実用的な
他の用途がないことが必要であると解するのが相当である。なぜなら、業として製
造、譲渡等される物が当該発明の侵害行為(実施行為)を誘発する蓋然性が極めて
高いといえるか否かは、その物の経済的、商業的又は実用的な用途の有無という観
点から判断すべきものだからである。
(2) そこで以下、権利2の対象被告物件が発明2の実施にのみ使用する物とい
えるか否かを検討する。
ア 権利2の対象被告物件は、別紙物件目録1、2-(1)、3-(1)、4ない
し7-(1)及び8の各三1及び4記載のとおり、パンケース8内にイースト、各種材
料及び水を入れて使用する物であり、これらに対する混練(混ねつ)、発酵及び焼
成の工程が自動化されており、ケーシング1内にタイマー機能を有するマイクロコ
ンピュータを備え、これにより混練、発酵及び焼成の工程の時間制御が行われる製
パン器である。
 そして、証拠(甲18、21ないし24[枝番のすべてを含む])によ
れば、権利2の対象被告物件の取扱説明書においては、機種ごとに若干表現は異な
るものの、各物件で山形パン(食パン)の焼成まで行う場合には、発明2と同じ
く、イースト菌と水との接触を避けるように、水と、小麦粉、油脂などのパン材料
と、イースト菌とをパン容器内にこの順序に入れる方法のみが記載されていると認
められるから、山形パンを焼く場合に関する限り、権利2の被告対象物件を使用す
る一般消費者がそれ以外の順序でパン材料を投入することは、それら被告対象物件
の実用的用途としては予定されていないと認められる。したがって、権利2の対象
被告物件を使って山形パンを焼く場合において、さらにタイマー機能も使用する場
合には、発明2を実施することになり、その他の経済的、商業的又は実用的用途は
ないものというべきである。 
 なお、証拠(乙37、38)と弁論の全趣旨によれば、被告は、最近、
2種類の製パン器(トータス株式会社にOEM供給していると思われるTYP80
0-10という型番とリーガルジャパン株式会社にOEM供給していると思われる
K6745という型番のもの)の取扱説明書において、上記方法のうちパンケース
8内に水と、小麦粉、油脂などのパン材料と、イースト菌を投入する順番を、①小
麦粉、油脂などのパン材料、②水、③イースト菌とする(ただし、パン材料を容器
の中央又は片側に寄せて、その余の部分に水を入れ、パン材料の上部にくぼみを作
ってそこへイースト菌を入れることにより、イースト菌と水が接触しないようにし
ている。)ように記載していることが認められる。しかしながら、仮に、上記2種
類の製パン器が、権利2の実施にのみ使用する物と評価できないとしても、上記2
種類の製品の型番は別紙物件目録に記載されている権利2の対象被告物件の各型番
とは異なるものであるから、上記製パン器が、権利2の対象被告物件に該当するの
かどうかを認めるに足る証拠はない。したがって、乙37、38によって前記認定
が左右されるものではない。
イ もっとも、証拠(甲18、21ないし24[枝番のすべてを含む])に
よれば、権利2の対象被告物件は、①タイマー機能を用いないで山形パンを焼く方
法や、②焼成機能を用いないでパン生地のみを作る方法(焼成は別のオーブンで行
う)に使用することもできるものと認められる。そして、これらの方法で各被告物
件を使用する場合には、①ではタイマーを使用しておらず、②では焼き上げを自動
で行っていないから、発明2の方法を実施するものとはいえない。
 しかしながら、特許法101条2号の「その発明の実施にのみ使用する
物」という要件は、前記のとおり、特許権の効力の不当な拡張とならない範囲でそ
の効力の実効性を確保するという観点から、特許権侵害とする対象を、それが生
産、譲渡される場合には当該特許発明の侵害行為(実施行為)を誘発する蓋然性が
極めて高い物の生産、譲渡等に限定して拡張する趣旨に基づくものである。この趣
旨からすれば、ある物が、当該特許発明を実施する機能と実施しない機能の複数の
機能を切り替えて使用することが可能な構造になっており、当該発明を実施しない
使用方法自体が存する場合であっても、当該特許発明を実施しない機能のみを使用
し続けながら、当該特許発明を実施する機能は全く使用しないという使用形態が、
当該物件の経済的、商業的又は実用的な使用形態として認められない限り、当該物
件を製造、販売等することによって侵害行為(実施行為)が誘発される蓋然性が極
めて高いことに変わりはないというべきであるから、なお「その発明の実施にのみ
使用する物」に当たると解するのが相当である。
 しかるところ、これまで述べたとおり、権利2の対象被告物件の使用方
法には、①山形パンを焼くものと、②生地づくりまでを行うものがあり、①にはタ
イマーを使用する方法と使用しない方法があり、使用者はいずれかの使用方法をそ
の都度適宜選択して使用することができるものである。そして、証拠(甲18、2
1ないし24[枝番のすべてを含む])によれば、被告は、権利2の対象被告物件
において、タイマー機能及び焼成機能を重要な機能の一つと位置づけていると認め
られ、また、使用者たる一般消費者から見ても、製パン器という物の性質上、タイ
マー機能や焼成機能がある製パン器を、タイマー機能がない製パン器や焼成機能の
ない製パン器(生地作り専用の機器)と比較した場合、それらの機能の存在が需要
者の商品選択上の重要な考慮要素となり、顧客吸引力の重要な源となっていること
は容易に想像がつくことである。
 そうすると、そのようなタイマー機能及び焼成機能が付加されている権
利2の対象被告物件をわざわざ購入した使用者が、同物件を、タイマー機能を用い
ない使用や焼成機能を用いない使用方法にのみ用い続けることは、実用的な使用方
法であるとはいえず、その使用者がタイマー機能を使用して山形パンを焼成する機
能を利用することにより、発明2を実施する高度の蓋然性が存在するものと認めら
れる。
 したがって、権利2の対象被告物件に発明2との関係で経済的、商業的
又は実用的な他の用途はないというべきであり、同物件は、権利2の実施にのみ使
用する物であると認められる。
2 争点2(外国譲渡)について
(1) 被告は、権利2の対象被告物件のうち外国に販売されるものについては、
発明2の実施にのみ使用する物に当たらないと主張する。この被告の主張は、特許
法101条2号の「その発明の実施にのみ使用する物」との要件における「実施」
は、日本国内におけるものに限られるとの趣旨であると解される。
 先に述べたとおり、特許法101条2号の「その発明の実施にのみ使用す
る物」という要件は、前記のとおり、特許権の効力の不当な拡張とならない範囲で
その実効性を確保するという観点から、特許権侵害とする対象を、それが生産、譲
渡等される場合には当該特許発明の侵害行為(実施行為)を誘発する蓋然性が極め
て高い物の生産、譲渡等に限定して拡張する趣旨に基づくものである。そうする
と、「その発明の実施にのみ使用する物」という要件が予定する「実施」がどのよ
うなものでなければならないかを検討するに当たっては、当該特許発明の直接侵害
行為(実施行為)を規制することとは別に、間接侵害行為をどの程度まで規制する
ことが、特許権の効力の不当な拡張とならない範囲で特許権の効力の実効性を確保
するものといえるかという観点を抜きにしては考えられないものというべきであ
る。
 しかるところ、本来、日本国外において、日本で特許を受けている発明の
技術的範囲に属する方法を使用してその価値を利用しても、日本の特許権を侵害す
ることにはならない。それは、日本における特許権が、日本の主権の及ぶ日本国内
においてのみ効力を有するにすぎないことに伴う内在的な制約によるものであり、
このような見地から、特許法2条3項にいう「実施」は、日本国内におけるものの
みを意味すると解すべきである。そうすると、外国で使用される物についてまで
「その発明の実施にのみ使用する物」であるとして特許権の効力を拡張する場合に
は、日本の特許権者が、本来当該特許権によっておよそ享受し得ないはずの、外国
での実施による市場機会の獲得という利益まで享受し得ることになり、不当に当該
特許権の効力を拡張することになるというべきである。
 この点について原告は、外国において使用される物であっても、日本から
米国市場に向けて販売するという原告の経済的効用を奪っていると主張するが、米
国で発明2を実施することにより得られる市場機会は、日本の特許権者たる原告に
はそもそもおよそ保障されていないのであるから、日本から米国市場に向けて販売
するという原告の経済的効用も、日本の特許権によって保護されるべきものではな
いというべきである。
 したがって、「その発明の実施にのみ使用する物」における「実施」は、
日本国内におけるものに限られると解するのが相当であり、このように解すること
は、前記のような特許法2条3項における「実施」の意義にも整合するものという
べきである。
(2) 被告は、権利2の対象被告物件を、①日本国内で販売しているのみなら
ず、②日本国内で製造の上、米国所在の者に販売・輸出しており、また、③中国所
在の者から購入し、日本を経由することなく、直接米国所在の者に販売している
が、②及び③は、いずれも、権利2の効力が及ばない米国で発明2の実施が行われ
ることになるので、特許法101条2号の間接侵害を構成しないというべきであ
る。
 なお付言するに、被告が製造、販売する権利2の対象被告物件の中には、
日本国内で販売され、使用されるものも存在するが、製パン器という商品の性質か
らすると、それらの被告物件は主に一般家庭において使用され、その実施行為は特
許法68条の「業として」の実施に該当しないものであるから、直接侵害行為を構
成することがない。しかし、同法が特許権の効力の及ぶ範囲を「業として」行うも
のに限定したのは、個人的家庭的な実施にすぎないものにまで特許権の効力を及ぼ
すことは、産業の発達に寄与することという特許法の目的からして不必要に強力な
規制であって、社会の実情に照らしてゆきすぎであるという政策的な理由に基づく
ものであるにすぎず、一般家庭において特許発明が実施されることに伴う市場機会
をおよそ特許権者が享受すべきではないという趣旨に出るものではないと解され
る。そうすると、一般家庭において使用される物の製造、譲渡等(もちろんこれは
業として行われるものである)に対して特許権の効力を及ぼすことは、特許権の効
力の不当な拡張であるとはいえず、かえって、上記のような政策的考慮によって特
許権の効力を制限した反面として、特許権の効力の実効性を確保するために強く求
められるものともいえる。したがって、「その発明の実施にのみ使用する物」にお
ける「実施」は、一般家庭におけるものも含まれると解するのが相当であり、この
ように解することは、特許法2条3項の「実施」自体の意義には一般家庭における
ものも含まれると解されること(一般家庭における方法の発明の使用が特許権の効
力に含まれないのは、「実施」に当たらないからではなく「業として」に当たらな
いからである。)とも整合する。よって、権利2の対象被告製品のうち、日本国内
で販売されるものの製造、販売は、特許法101条2号によって侵害とみなされ
る。
第5 権利4及び権利5に係る請求について
【争いのない事実等】
1 原告は次の特許権(以下「権利4」という。)を有している。
発明の名称 製パン器の加熱制御装置
出 願 日 昭和62年2月13日(特願平5-54759号)
分割の表示 特願昭62-31977号の分割
公 告 日 平成7年1月18日(特公平7-2144号)
登 録 日 平成8年12月20日
特許番号  特許第2119707号
2 権利4の特許出願の願書に添付された明細書(以下「権利4明細書」とい
う。)の特許請求の範囲は次のとおりである(以下この特許発明を「発明4」とい
う。)。
 パン材料を投入して混練及び発酵及び焼成を行う焼成ケースを備えると共
に、前記焼成ケースをオーブンに内設させる装置において、前記オーブン内部がイ
ースト菌死滅温度よりも低い所定の設定温度以上であることを検出する手段を備
え、製パン動作開始前において前記手段が前記設定温度に応答するとき警報を行う
手段を設けると共に、製パン動作開始後において前記検出手段が前記設定温度に応
答するとき警報を行う手段を設けたことを特徴とする製パン器の加熱制御装置。
3 発明4は、次のとおり分説するのが相当である。
A パン材料を投入して混練及び発酵及び焼成を行う焼成ケースを備えると共
に、前記焼成ケースをオーブンに内設させる装置において、
B 前記オーブン内部がイースト菌死滅温度よりも低い所定の設定温度以上で
あることを検出する手段を備え、
C 製パン動作開始前において前記手段が前記設定温度に応答するとき警報を
行う手段を設けると共に、
D 製パン動作開始後において前記検出手段が前記設定温度に応答するとき警
報を行う手段を設けたことを特徴とする
E 製パン器の加熱制御装置
4原告は次の特許権(以下「権利5」という。)を有している。
発明の名称 製パン器の加熱制御装置
出 願 日 昭和62年2月13日(特願平62-31977号)
公 告 日 平成4年4月2日(特公平4-20337号)
登 録 日 平成5年12月27日
特許番号  特許第1812695号
5 権利5の特許出願の願書に添付された明細書(以下「権利5明細書」とい
う。)の特許請求の範囲の記載は次のとおりである(以下この特許発明を「発明
5」という。)。
 パン材料を投入して混練及び発酵及び焼成を行う焼成ケースを備えると共
に、前記焼成ケースをオーブンに内設させる装置において、前記オーブン内部がイ
ースト菌死滅温度以下の設定温度であるか否かを検出する手段を設け、製パン動作
開始前において前記手段が前記設定温度に応答する時製パン動作を開始させない手
段を設けると共に、製パン動作開始後において前記検出手段が前記設定温度に応答
する時製パン動作を中止させる手段を設けたことを特徴とする製パン器の加熱制御
装置。
6 発明5は次のとおり分説するのが相当である。
A パン材料を投入して混練及び発酵及び焼成を行う焼成ケースを備えると共
に、前記焼成ケースをオーブンに内設させる装置において、
B 前記オーブン内部がイースト菌死滅温度以下の設定温度であるか否かを検
出する手段を設け、
C 製パン動作開始前において前記手段が前記設定温度に応答する時製パン動
作を開始させない手段を設けると共に、
D 製パン動作開始後において前記検出手段が前記設定温度に応答する時製パ
ン動作を中止させる手段を設けたことを特徴とする
E 製パン器の加熱制御装置。
7 原告は、イ号ないしチ号物件は、いずれも、発明4の技術的範囲に属する加
熱制御装置を具備する製パン器であり、また、イ号物件、ロ(1)号物件、ロ(2)号物
件は、発明5の技術的範囲に属する加熱制御装置を具備する製パン器であると主張
する。
8 権利4の対象被告物件が、発明4の構成要件A及びEを具備すること、権利
5の対象被告物件が、発明5の構成要件A及びEを充足することは、当事者間に争
いがない。
【争点】
1 構成要件B充足性
権利4の対象被告物件は、発明4の構成要件Bを充足し、権利5の対象被告
物件は、発明5の構成要件Bを充足するか。
2 構成要件C及びD充足性
 権利4の対象被告物件は、発明4の構成要件C及びDを充足し、権利5の対
象被告物件は、発明5の構成要件C及びDを充足するか。
【争点に関する当事者の主張】
1 争点1(構成要件B充足性)について
(原告の主張)
(1) 発明4の構成要件Bの「イースト菌死滅温度よりも低い所定の設定温度」
及び発明5の構成要件Bの「イースト菌死滅温度以下の設定温度」とは、「イース
ト菌死滅温度」が約60度であることから、「約60度よりも低い所定の設定温
度」又は「約60度以下の設定温度」を指すことは、文理上明らかである。そして
「約60度よりも低い」又は「約60度以下」との文言は、その上限のみを画して
おり、その下限についてはまったく言及していないから、「設定温度」は、幅のあ
る温度範囲から設定することができる。
(2) 被告は、「イースト菌死滅温度よりも低い所定の設定温度」又は「イース
ト菌死滅温度以下の設定温度」が40度以下だと製パン器としての機能に支障がで
るから、それは40度以下ではあり得ないはずであると主張するが、権利4及び5
の対象被告物件は、40度以下に設定温度を設定しており、それにもかかわらず、
製パン器としての機能に支障が生じていない以上、被告の主張は失当である。
(3) 権利4の対象被告物件は、別紙物件目録1ないし8の各三5記載のとおり
の構成を具備しているから、発明4の構成要件Bを充足する。
 権利5の対象被告製品は、別紙物件目録1ないし2-(2)の各三6記載のと
おりの構成を具備しているから、発明5の構成要件Bを充足する。
(被告の主張)
(1)ア 発明4の構成要件Bの「イースト菌死滅温度よりも低い所定の設定温
度」及び発明5の構成要件Bの「イースト菌死滅温度以下の設定温度」とは、イー
スト菌死滅温度である60度に近い温度(常識的には、55度前後、もしくは、5
0度から59度程度)と解されるべきである。
 なぜなら、権利4明細書及び権利5明細書の記載によれば、発明4及び
5は、いずれも、「タイマなどの予約操作により最低温度を保持する場合、オーブ
ン内部温度が過大となってイースト菌が死滅する可能性があると共に、高温状態の
オーブンにイースト菌を入れて死滅させる可能性がある」という従来技術の問題点
を解決するものであるからである。
 また、発明4の出願公告時における特許請求の範囲の記載のうち構成要
件Bに相当する個所は、「イースト菌死滅温度として設定された設定温度」と記載
されていたのであるから、出願公告後の補正により「イースト菌死滅温度よりも低
い所定の設定温度」と補正されたことを理由に、権利範囲を拡大することは許され
ない。
イ 仮に、「イースト菌死滅温度よりも低い所定の設定温度」及び「イース
ト菌死滅温度以下の設定温度」がイースト菌死滅温度である60度に近い温度であ
ると解されないとしても、その温度は、40度以下ではあり得ないはずである。な
ぜなら、イースト菌の発酵温度である30度ないし40度を検出したときに警報を
行い又は製パン動作を中止するとすれば、正常な製パン工程中でも警報がなされ、
製パン動作が中止されてしまうからである。
(2) 権利4の対象被告物件においては、イースト菌の死滅防止ではなくイース
ト菌の過発酵の防止のため、スタートキーを押した時点において温度センサが38
度以上を検出する構成を具備しているのであるから、発明4の構成要件Bを充足し
ない。
 権利5の対象被告物件においても、同様に、発明5の構成要件Bを充足し
ない。
2 争点2(構成要件C及びD該当性)について
(原告の主張)
(1)ア 発明4の構成要件C及びD、即ち「製パン動作開始前において前記手段
が前記設定温度に応答するとき警報を行う手段を設けると共に、製パン動作開始後
において前記検出手段が前記設定温度に応答するとき警報を行う手段を設けたこと
を特徴とする」のうち、「製パン動作開始」とは、製パン器が動作を始めること、
すなわち、撹拌を開始することを意味する(別紙図2参照)。このことは、発明5
の構成要件C及びD、即ち「製パン動作開始前において前記手段が前記設定温度に
応答する時製パン動作を開始させない手段を設けると共に、製パン動作開始後にお
いて前記検出手段が前記設定温度に応答する時製パン動作を中止させる手段を設け
たことを特徴とする」のうち、「製パン動作開始」の意味についても同じである。
イ 被告は、発明4及び発明5の「製パン動作開始」を、製パン工程(製パ
ン予約中の予熱工程は製パン工程に含まれる)を開始することであると主張する。
 しかし、被告の立論は、権利4明細書及び権利5明細書に記載された解
決すべき課題のうち、連続してパン焼き器を使用する場合に、高温状態のオーブン
にイースト菌を入れて死滅させるという問題を重視し、予熱段階においてオーブン
内部温度が自然に上昇し、過大となってイースト菌が死滅する可能性があるという
問題を全く無視している。なお、原告のように「製パン動作開始」を解釈しても、
高温状態のオーブンにイースト菌を容れて死滅させる可能性があるという課題は、
製パン動作開始後において所定の設定温度を検出したとき警報を行い又は製パン動
作を中止させることにより解決される。
 また、被告の解釈は、権利4明細書及び権利5明細書の実施例中の「製
パン予約操作後で製パン動作前において」という自分にとって都合の悪い記載を誤
記と主張する、極めて偏った解釈である。
 さらに、被告は、権利4明細書及び権利5明細書に「製パン動作前」に
製パン動作の中止をする旨の記載があることをその根拠とするが、原告の解釈によ
っても「製パン動作前」にはタイマー予約を設定しているので、将来の製パン動作
(撹拌)を中止することはできるのである。
(2) 発明4及び5の構成要件C及びDの「前記設定温度」とは、「イースト菌
死滅温度よりも低い所定の設定温度」ということになり、前記1(原告の主張)(1)
のとおり、幅のある温度を示しているのであるから、構成要件CとDの設定温度
は、各々、一定の幅の中の任意の値をとり得ることとなる。これは、イースト菌に
必要な温度の管理機能を全うするためには、種々の値を選択でき、当該製パン器の
特性と設計思想に合わせて違いを持たせることを意味し、発明4及び発明5の目的
及び作用効果からしても、当然のことである。
(3) 発明4の構成要件Dの「前記検出手段が前記設定温度に応答するとき警報
を行う」とは、前記検出手段が前記設定温度に応答する場合に警報を行うことを意
味するのであって、前記検出手段が前記設定温度に応答した時点で警報を行うこと
に限定されるものではない。なぜなら、警報があっても、ユーザーが絶えず警報の
有無を注視しているわけではないことから、製パン工程は継続するのであり、
警報はその製パン工程において温度管理が不適切であったことを知らせることでも
十分であり、ユーザーは、でき上がったパンの焼き上がりが悪い場合に、警報が出
ているかどうかを確認し、焼き上がりが悪い場合に温度管理が不適切であったため
であるかどうかを確認することができれば、十分にその目的を達成するからであ
る。
(4) 権利4の対象被告物件は、別紙物件目録1ないし8の三5記載のとおりの
構成を具備しているから、発明4の構成要件C及びDを充足する。
権利5の対象被告製品は、別紙物件目録1ないし2-(2)の各三6記載のと
おりの構成を具備するから、発明5の構成要件C及びDを充足する。
(被告の主張)
(1)ア 発明4の構成要件C及びDの「製パン動作開始前において前記手段が前
記設定温度に応答するとき警報を行う手段を設けると共に、製パン動作開始後にお
いて前記検出手段が前記設定温度に応答するとき警報を行う手段を設けた」との構
成、及び発明5の構成要件C及びDの「製パン動作開始前において前記手段が前記
設定温度に応答する時製パン動作を開始させない手段を設けると共に、製パン動作
開始後において前記検出手段が前記設定温度に応答するとき製パン動作を中止させ
る手段を設けた」との構成の、製パン動作の開始前か後かは、次の理由により、製
パン予約中の予熱工程を含む製パン工程開始の前か後を意味する(別紙図1参
照)。
(ア) 発明4及び5は、従来技術では、タイマなどの予約操作により最低
温度を保持する場合に、オーブン内部温度が過大となってイースト菌が死滅するこ
とや、高温状態のオーブンにイースト菌を入れて死滅させるという問題があったこ
とを解決すべき課題とするものである。
 また、発明4及び5の作用、効果は、製パン予約操作後及び製パン終
了後の温度監視を適正に行い得るという点にある。
 したがって、発明4及び5は、①製パン予約操作後のイースト菌の死
滅防止、及び②製パン終了後の(即ち、次の製パン開始前の)高温状態のオーブン
にイースト菌を入れて死滅させることを防止することに対応して発明が構成されて
いるというべきであるから、①が「製パン動作開始後」であり、②が「製パン動作
開始前」を意味することになる。ただし、製パンを行う場合に予約操作を行わず、
いきなり混練(攪拌)の工程を開始する場合もあるので、「製パン動作開始後」と
は、予約中の予熱工程を含む製パン工程開始後を意味することになる。
(イ) また、権利4明細書及び権利5明細書における実施例の記載におい
ても、「製パン予約操作後で製パン動作前において前記サーモスタットからの温度
過大出力に基づいてエラー表示などの警報と製パン動作の中止を行わせる一方、製
パン終了後において前記サーモスタットからの温度過大出力に基づいてエラー表示
などの警報を行い、連続して製パンを行うとき、焼成ケース内部が冷却した後でパ
ン材料及びベーキングパウダ(イースト菌)を入れ、高温によるイースト菌の死滅
を防止すべく構成している」ものが開示されている。
 なお、右実施例の「製パン予約操作後で製パン動作前において」との
記載部分における「製パン動作前」は、予約操作後の予熱工程について述べている
とすれば「混練開始前」の意味において使用されているのであり、製パン工程全体
について述べているのであれば「製パン終了前」の誤記であると考えられる。しか
し、いずれにしろ、これに続く「エラー表示などの警報と製パン動作の中止を行わ
せる」との記載から判断すれば、「予約操作後の予熱工程」が「製パン動作開始
後」に含まれると解さざるを得ないのである(開始していないのに中止するという
ことはあり得ない)。
(ウ) さらに、一般的な語義としても、製パンの工程は、別紙図1に記載
したように、予熱、混練(攪拌)、発酵、焼成の各過程よりなり、この製パン工程
中の製パン器の動作はすべて「製パン動作」である。
イ 原告は、「製パン動作開始」とは、製パン器が動作を始めること、すな
わち、撹拌を開始することを意味すると主張する。
 原告は、製パン終了後で製パン予約操作までの間は、製パン動作開始後
に含まれると主張するが、そのような解釈は、混練及び発酵(成形発酵である焙炉
を含む)までと、製パン動作終了後とに分裂した二つの期間が製パン動作開始後に
含まれることになる上、権利4明細書及び権利5明細書の記載とも整合しない。
ウ 権利4の対象被告物件は、スタートキーを押した時点において38度以
上であるか否かを検出するが、スタートキーを押した時点は、製パン動作開始の前
でもなく後でもないから、製パン動作開始前(製パン終了後で予熱工程を含む製パ
ン工程開始前)において、温度センサは作動していない。また、1回目の製パン終
了後2回目の製パン開始前においても、温度センサが作動する構成ではない。
 したがって、権利4の対象被告製品は、発明4の構成要件Cを充足しな
い。
 また、権利5の対象被告製品も、同様に、発明5の構成要件Cを充足し
ない。
(2) 発明4の構成要件C及びDの「前記設定温度」は、構成要件Bの「前記オ
ーブン内部がイースト菌死滅温度よりも低い所定の設定温度」であり、発明5の構
成要件C及びDの「前記設定温度」は、構成要件Bの「前記オーブン内部がイース
ト菌死滅温度以下の設定温度」であるから、その文言上、一義的に設定された同一
の温度を意味することは明らかであり、権利4明細書及び権利5明細書において
も、異なる設定温度を設けることを示唆する記載は一切ない。
 権利4の対象被告物件においては、別紙物件目録1ないし8の各三5記載
のとおり、「製パン動作開始前」と「製パン動作開始後」とで検出する温度が異な
るから、発明4の構成要件C及びDを充足しない
 また、権利5の対象被告物件も、同様に、発明5の構成要件C及びDを充
足しない。
(3)ア 発明4の構成要件Dの構成は、「前記検出手段が前記設定温度に応答す
るとき警報を行う」ものであるところ、「応答するとき」とは、検出手段が所定の
設定温度を検出した時点でなければならない。
 なぜなら、所定の設定温度を検出後製パン動作を継続したまま警報を行
わず、製パン動作終了後に警報を行うものであるとすれば、イースト菌が死滅した
まま製パン動作が継続されることになり、製パン動作開始の前後にわたって継続的
に温度監視をし、イースト菌が死滅するのを防止するという発明4の目的が達せら
れないからである。
 また、警報とは、「危険がおこりそうな時、それを一般の人に注意して
警戒させるための知らせ」(岩波国語辞典)とあるように、危険の切迫に対して前
もって知らせるものである。
イ 権利4の対象被告製品のうち、ハ(1)号物件ないしチ号物件については、
動作開始後に温度センサが60度以上を検出した場合には、製パン完了時にエラー
表示を行う構成であるから、発明4の構成要件Dを充足しない。
【争点に対する判断】
1 争点2(構成要件C及びD充足性)について
(1) 発明4及び発明5の構成要件C「製パン動作開始前」及び構成要件D「製
パン動作開始後」の意味について検討するに、「製パン動作開始」が具体的な製パ
ン工程のうちどの段階を指しているのかは、特許請求の範囲の記載からは一義的に
明確ではない。
 そこで、明細書の特許請求の範囲以外の部分の記載を検討するに、権利4
明細書及び権利5明細書には次のとおりの記載がある(甲4の1と2、甲5の1と
2)。
(2) 権利4明細書の記載
ア 発明が解決しようとする課題【0003】
 前記従来技術は、タイマなどの予約操作により最低温度を保持する場
合、オーブン内部温度が過大となってイースト菌が死滅する可能性があると共に、
高温状態のオーブンにイースト菌を入れて死滅させる可能性があり、安全性及び取
扱い操作性を容易に向上させ得ない等の問題があった。
イ 課題を解決するための手段【0004】
 製パン予約操作後並びに製パン終了後の温度監視を適正に行い得、従来
の装置に比べて安全性並びに取扱い操作性などを容易に向上させ得、イースト菌に
必要な温度管理機能の向上などを容易に図り得るものである。
ウ 実施例【0010】
 オーブンを構成する焼がま本体(2)内部がイースト菌死滅温度(約6
0℃)以下であるか否かを検出する手段である前記サーモスタット(36)を設
け、製パン予約操作後で製パン動作前において前記サーモスタット(36)からの
温度過大出力に基づいてエラー表示などの警報と製パン動作の中止を行わせる一
方、製パン終了後において前記サーモスタット(36)からの温度過大出力に基づ
いてエラー表示などの警報を行い、連続して製パンを行うとき、焼成ケース(1
6)内部が冷却した後でパン材料及びベーキングパウダ(イースト菌)を入れ、高
温によるイースト菌の死滅を防止すべく構成している。
エ 実施例【0016】
 またパン焼上り時間から製パンに必要な時間を逆算して約4時間前に製
パン動作が開始されるもので、メインモータ(24)により羽根(19)を回転さ
せて焼成ケース(16)内のパン材料を混練すると共に、送風フアン(31)及び
フアンヒータ(32)により温風又は冷風を焼成ケース(16)内に送り、図6の
如く生地センサ(28)出力に基づいて前記ケース(16)内の温度をt2度に維
持し、m1時間の第1撹拌及びm2時間の休み及びM1時間の第二撹拌を行わせ
る。
オ 実施例【0017】
 予熱から焙炉に至る工程において、図8の如くサーモスタット(36)
出力に基づいてt4度以下であることを確認し、イースト菌が死滅する60度以上
に温度が上昇したとき、エラー表示の警報を行うと共に、製パン動作を中止させ
る。
カ 実施例【0018】
 パンを焼上げると共に、フアンモータ(30)を作動させてM6時間の
冷却を行い、パンの製作を完了するもので、前記サーモスタット(36)の検出に
よりt4度以下に温度が下るまでエラー表示の警報を行い、製パン動作を再開させ
るときにイースト菌が死滅するのを防止している。
キ 発明の効果【0023】
 以上実施例から明らかなように本発明は、パン材料を投入して混練及び
発酵及び焼成を行う焼成ケース(16)を備えると共に、前記焼成ケース(16)
をオーブン(2)に内設させる装置において、前記オーブン(2)内部がイースト
菌死滅温度よりも低い所定の設定温度以上であることを検出する手段を備え、製パ
ン動作開始前において前記手段が前記設定温度に応答するとき警報を行う手段を設
けると共に、製パン動作開始後において前記検出手段が前記設定温度に応答すると
き警報を行う手段を設けたもので、製パン予約操作後並びに製パン終了後の温度監
視を適正に行うことができ、従来の装置に比べて安全性並びに取扱い操作性などを
容易に向上させることができ、イースト菌に必要な温度管理機能の向上などを容易
に図ることができる等の実用的な効果を奏するものである。
(3) 権利5明細書の記載
ア 発明が解決しようとする問題点
 前記(2)アと同じ記載。
イ 作用
 製パン予約操作後並びに製パン後の温度監視を適正に行い得、従来に比
べて安全性並びに取扱い操作性などを容易に向上させ得、イースト菌に必要な温度
管理機能の向上などを容易に図り得るものである。
ウ 実施例
 前記(2)ウと同じ記載
エ 実施例
 前記(2)エと同じ記載。
オ 実施例
 前記(2)オと同じ記載。
カ 実施例
 前記(2)カと同じ記載。
キ 発明の効果
 以上実施例から明らかなように本発明は、パン材料を投入して混練及び
発酵及び焼成を行う焼成ケース(16)を備えると共に、前記焼成ケース(16)
をオーブン(2)に内設させる装置において、前記オーブン(2)内部がイースト
菌死滅温度以下の設定温度であるか否かを検出する手段を設け、製パン動作開始前
において前記手段が前記設定温度に応答する時製パン動作を開始させない手段を設
けると共に、製パン動作開始後において前記検出手段が前記設定温度に応答する時
製パン動作を中止させる手段を設けたものである。
 そして製パン予約操作後並びに製パン後の温度監視を適正に行うことが
でき、従来に比べて安全性並びに取扱い操作性などを容易に向上させることがで
き、イースト菌に必要な温度管理機構の向上などを容易に図ることができる等の実
用的な効果を奏するものである。
(4) 上記(2)(3)記載のように、権利4明細書と権利5明細書は、発明が解決し
ようとする課題、課題を解決するための手段ないし作用、発明の効果、実施例等に
おいて、ほとんど同一の記載内容となっており、権利5の特許出願が権利4の特許
出願から分割出願されたものであることを考え併せれば、共通して特許請求の範囲
の構成要素となっている構成要件Cの「製パン動作開始前」と構成要件Dの「製パ
ン動作開始後」とは、同じ意味に理解するのが相当である。
 発明4及び5の課題は、①タイマなどの予約操作により最低温度を保持す
る場合、オーブン内部温度が過大となってイースト菌が死滅すること、及び②高温
状態のオーブンにイースト菌を入れて死滅させることを防止するため、製パン予約
操作後及び製パン終了後の温度監視を適正に行い、従来の装置に比べて安全性及び
取扱い操作性などを容易に向上させ、イースト菌に必要な温度管理機能の向上など
を容易に図ることにあると認められる(前記(2)及び(3)の各ア、イ及びキ)。
 また、発明4及び5の効果は、上記①及び②を防止するため、製パン予約
操作後及び製パン終了後の温度監視を適正に行うことができ、従来の装置に比べて
安全性並びに取扱い操作性などを容易に向上させることができ、イースト菌に必要
な温度管理機能の向上などを容易に図ることができるなどの実用的な効果を奏する
ことであると認められる。なお、権利4明細書及び権利5明細書の各効果欄には、
発明4及び5の効果として、「上記①及び②を防止するため」という記載はないも
のの(前記(2)及び(3)のキ)、各明細書の全体を通じて読めば、各効果欄に「製パ
ン予約操作後並びに製パン終了後の温度監視を適正に行い」、「イースト菌に必要
な温度管理機能の向上などを容易に図ることができる」とあるのは、上記①及び②
のようなイースト菌の死滅を防止するための適正な温度監視と温度管理機能の向上
を意味すると理解するのが相当である。
 発明4及び5が、上記課題を解決するために発明された解決手段であり、
上記効果を奏していることに照らせば、発明4の「製パン動作開始前…警報を行う
手段」(以下「開始前警報手段」という。)及び「製パン動作開始後…警報を行う
手段」(以下「開始後警報手段」という。)、並びに発明5の「製パン動作開始前
…製パン動作を開始させない手段」(以下「製パン動作不開始手段」という。)及
び「製パン動作開始後…製パン動作を中止させる手段」(以下「製パン動作中止手
段」という。)は、①いずれかが、タイマなどの予約操作により最低温度を保持す
る場合、オーブン内部温度が過大となってイースト菌が死滅することを防止するた
めの手段であり、②他方が、高温状態のオーブンにイースト菌を入れて死滅させる
ことを防止するための手段であると解するのが相当である。
 そして、発明5においては、製パン動作開始後は「製パン動作中止手段」
が作用することを念頭に、前記(3)イ、ウ、オ、カ及びキの記載を参照すると、①発
明4の「開始後警報手段」と、発明5の「製パン動作中止手段」が、タイマなどの
予約操作により最低温度を保持する場合、オーブン内部温度が過大となってイース
ト菌が死滅することを防止するための手段であり、②発明4の「開始前警報手段」
と発明5の「製パン動作不開始手段」が、高温状態のオーブンにイースト菌を入れ
て死滅させることを防止するための手段であると解される。
 そうすると、別紙図1記載のとおり、「製パン動作開始前」とは、パンの
製作を完了した後次の予熱工程の開始までの期間を指し、「製パン動作開始後」と
は、予熱工程の開始から焙炉の終了までを意味し、「製パン動作開始」とは、タイ
マを用いる場合には予熱工程の開始を、タイマを用いない場合には混ねつ工程の開
始を意味すると解するのが相当である。
(5) 原告は、「製パン動作開始」とは、撹拌を開始することを意味し、製パン
動作開始前と開始後とは、別紙図2のような関係になると主張する。
 確かに、前記(2)及び(3)のウ「製パン予約操作後で製パン動作前」との記
載やエの「製パン動作」の記載は、原告の主張に沿う記載であるということもでき
る。
 しかし、まず、権利4明細書及び権利5明細書の実施例の記載についてみ
ると、製パン動作を中止させることが妥当するのは、前記(2)及び(3)のウでは「製
パン予約操作後で製パン動作前」であるのに対し、同オでは「予熱から焙炉に至る
工程」とされており、「製パン動作前」と「焙炉」を同義に理解することはおよそ
不可能であるから、「製パン動作」という語の使用について、明細書の記載は混乱
しているといわざるを得ない。
 また、原告の主張のように解すると、発明4及び5の解決課題及び効果で
ある①タイマなどの予約操作により最低温度を保持する場合、オーブン内部温度が
過大となってイースト菌が死滅することを防止するのは、「開始前警報手段」、
「製パン動作不開始手段」と「開始後警報手段」、「製パン動作中止手段」で解決
し、②高温状態のオーブンにイースト菌を入れて死滅させることを防止するのは、
「開始後警報手段」、「製パン動作中止手段」で解決することになり、発明4及び
5が解決しようとした課題及び効果と発明4及び5の構成との対応関係が不自然と
なるばかりでなく、上記②の課題が生じるのは、パン製作完了後次の製パン動作開
始までの間であるから、その間、特にパン製作完了後予熱工程開始までの間に、
「製パン動作中止手段」が作用するというのは、理解し難い事態である。
 さらに、発明4及び5は、いずれも上記①及び②の課題を共に解決する作
用効果を有するものであるが、原告主張のように解するならば、例えば予熱から混
練までの間の「製パン動作開始前」と、混練から焙炉までの間の「製パン動作開始
後」に設定温度の検出を行う場合でも本件発明の構成要件を充足することになる
が、その場合には②の課題は何ら解決されないままであるから不合理である。
 したがって、原告の上記主張は採用することができない。
(6) 次に、権利4の対象被告物件が、発明4の構成要件Cを充足しているかに
ついて検討する。
 権利4の対象被告物件は、いずれも、オーブンケース3内の側面に取り付
けられた温度センサが接続されているマイクロコンピュータの制御により、スター
トキー操作時点において温度センサが38度以上を検出した場合には表示パネルに
E:01が表示するか、Knead/Riseランプを点滅、その他ランプを点灯
する構成となっている。
 上記物件は、スタートキーの操作により、タイマを使用する場合には予熱
工程が、タイマを使用しない場合には混練工程が開始する(以下まとめて「予熱工
程等」という。)から、スタートキー操作時点において検出される温度は、予熱工
程等の開始直前の温度を検出していることになる。したがって、この構成が、構成
要件Cに該当するかどうかを検討する必要がある。
 ところで、構成要件Cは、高温状態のオーブンにイースト菌を入れて死滅
させることを防止するため、「警報を行う手段」を設けているのであるから、当該
警報手段は、製パン器の使用者が、高温状態のオーブンにイースト菌を入れること
を避けることができるような時期に作動するものでなければならないと解される。
このことは、前記(2)ウ及びカの記載からも明らかである。
 しかしながら、先に見たとおり、権利4の対象被告物件は、スタートキー
操作時点において温度センサが38度以上を検出した場合に何らかの表示等をして
いるのであり、この時点において既に同物件の使用者は、イースト菌をパンケース
内に投入してしまっている。そうすると、その表示等を、構成要件Cの「警報」と
みることはできないというべきである。
 確かに、権利4の対象被告物件においては、温度センサが検出する温度は
38度以上であるから、スタートキー操作時点における表示等でもイースト菌が死
滅していないこともあろう。しかし、同物件においては、使用者がイースト菌を入
れるとき、オーブン内部の温度がイースト菌の死滅温度である60度を超えている
場合でも、同物件の使用者がパンケース内にイースト菌を投入することを避けるこ
とはできないのである。
 したがって、権利4の対象被告物件は、発明4の構成要件Cを充足しない
というべきである。
(7) 次に、権利5の対象被告物件が、発明5の構成要件Cを充足しているかに
ついて検討する。
 権利5の対象被告物件は、いずれも、オーブンケース3内の側面に取り付
けられた温度センサが接続されているマイクロコンピュータの制御により、スター
トキー操作時点において温度センサが38度以上を検出した場合には製パン動作を
開始させない。
 ところで、発明5の構成要件Cは、高温状態のオーブンにイースト菌を入
れて死滅させるという解決課題を解決するために設けられている構成であるから、
「製パン動作不開始手段」は、製パン器の使用者が、高温状態のオーブンにイース
ト菌を入れてしまうことを避けることができるような手段でなければならないと解
される。
 もっとも、発明5における「製パン動作を開始させない」という文言から
は、「製パン動作を中止する」がそうであるように、コンピュータ制御等の強制的
手段によって製パン動作を開始させないことを意味すると通常は理解されるので、
このような見方からすれば、発明5の「製パン動作を開始させない手段」とは、発
明4の「警報を行う手段」とは異なり、高温状態のパン容器内にイースト菌を入れ
て死滅させることを防止するという解決課題とは関係がなく、前記のような解釈を
採用することは不合理であるとも考えられる。
 しかしながら、発明5明細書の発明の詳細な説明欄をみると、発明5の解
決課題として記載されているのは、タイマなどの予約操作により最低温度を保持す
る場合、オーブン内部温度が過大となってイースト菌が死滅することを防止するこ
と以外には、高温状態のオーブンにイースト菌を入れて死滅させることを防止する
ことのみであり、また、実施例の記載を見ても、これらの解決課題に対応する記載
があるにとどまる(前記(2)及び(3)のウ及びオ)。したがって、発明5の「製パン
動作を開始させない手段」は、高温状態のパン容器内にイースト菌を入れて死滅さ
せることを防止するという効果を奏するものであると解する以外にはないというべ
きである。そして、実施例の記載においてそのような手段として開示されているの
がエラー表示などの警報を行うことのみであること(前記(2)及び(3)のウ及びオ)
からすると、発明5の「製パン動作を開始させない手段」は、必ずしもコンピュー
タ制御等の強制的手段によって製パン動作を開始させないことに限定されるもので
はなく、警報等の、使用者をして製パン動作を開始させないようにする手段も包含
するものと解するほかはないというべきである。
 しかるところ、権利5の対象被告物件は、先に見たとおり、スタートキー
操作時点において温度センサが38度以上を検出した場合に製パン動作(予熱工
程)を開始させないのであり、この時点において既に同物件の使用者は、イースト
菌をパンケース内に投入してしまっている。そうすると、同物件において、予熱工
程を開始させない手段は、発明5の構成要件Cの「製パン動作不開始手段」とみる
ことはできないというべきである。
2 以上より、イ号ないしチ号物件が、発明4の技術的範囲に属するとは認めら
れず、また、イ号物件、ロ(1)号物件、ロ(2)号物件が、発明5の技術的範囲に属す
るとも認められない。
第6 権利6に係る請求について
【争いのない事実等】
1 原告は、次の特許権(以下「権利6」という。)を有している。
発明の名称 製パン器に於けるこね用羽根の制御方法
出 願 日 昭和61年12月12日(特願昭61-297351号)
公 告 日 平成7年8月30日(特公平7-79772号)
登 録 日 平成9年7月25日
特許番号  特許第2131036号
2 権利6の特許出願の願書に添付された明細書(以下「権利6明細書」とい
う。)の特許請求の範囲は次のとおりである(以下この特許発明を「発明6」とい
う。)。
 予めパンケース内に入れられた水及びパン材料を、こね用羽根の回転力によ
り混ねつする製パン工程に於いて、こね開始時こね用羽根の回転力による粉体飛散
が落ち着くまでの一定時間こね用羽根を間欠的に回転させた後、こね用羽根を連続
して回転させることを特徴とする製パン器に於けるこね用羽根の制御方法。
3 原告は、イ号物件ないしト(2)号物件は、発明6の実施にのみ使用する物であ
ると主張する。
4 被告は、権利6の対象被告物件を、①日本国内で製造の上、日本国内で販売
しているのみならず、②日本国内で製造の上、米国所在の者に販売・輸出してお
り、また、③中国所在の者から購入し、日本を経由することなく、直接米国所在の
者に販売している。
【争点】
1 権利6の対象被告物件は、こね開始時こね用羽根の回転力による粉体飛散が
落ち着くまでの一定時間こね用羽根を間欠的に回転させているか(間欠的回転)。
2 被告が、中国で購入した権利6の対象被告物件を、直接米国へ販売する行為
は、権利6を侵害するか(日本不介在譲渡)。
【争点に関する当事者の主張】
1 争点1(間欠的回転)について
(原告の主張)
(1) 発明6は、モーターへの間欠パルス通電、すなわち、通電のオン・オフを
繰り返すという方法を用いることで、変速機等を使用したモーターの速度変速の方
法により生じる不都合を解消するとともに、パンケースの外への粉体の飛散防止を
実現している(権利6明細書の作用欄参照)。
 発明6は、かかる動作におけるこね用羽根の回転を「間欠的に回転」と形
容しているのであるから、それは、モーターへの間欠パルス通電によりモーターの
作動を間欠的に行い、もってこね用羽根自体の回転速度を、加速減速させることを
意味する。
(2) 被告は、こね用羽根が完全に停止しなければ、「間欠的」とはいえないと
主張するが、発明6は、粉体飛散防止という発明6の目的を達成するため、こね用
羽根をどのように作動させるかを開示した技術であり、こね用羽根が完全に停止し
なくともその目的は達成されるから、製パン器のモーターの作動の結果こね用羽根
が停止しているかどうかは「間欠的」であるかどうかと関係はない。
(3) 権利6の対象被告物件は、いずれも、スタートキーの操作により直ちに、
あるいはタイマー設定時にはスタートキー操作後設定で定まる時間の経過時に(タ
イマー付きでないロ(2)号、ハ(2)号、ト(2)号を除く)、パンケース8に入れられて
いるイースト、各種材料及び水を、混練羽根16の回転力により混練する製パン工
程を開始する製パン器である。
 そして、権利6の対象被告物件は、別紙物件目録1ないし7の各三7記載
のとおりの構成を具備するから、同物件は、いずれも、発明6の実施にのみ使用さ
れる物である。
(被告の主張)
(1) 発明6の「こね用羽根を間欠的に回転させ」とは、次の理由により、こね
用羽根が粉体を飛び散らせるような速度による回転と停止とを繰り返すことを意味
すると解すべきである。
ア 発明6は、権利6明細書の記載によれば、混ねつに際し粉体が飛散しな
いようにするためにこね用羽根の速度を減速して行うための種々の不都合に対し、
こね用羽根の速度を変えずに、その回転を間欠的にすることによって粉体の飛散を
なくすようにして、種々の不都合を解決したものである。
イ 権利6明細書の作用欄には、こね用羽根が回転と停止・休止を繰り返す
ことが記載されている。
ウ 発明6の出願日前に出願され、発明6の出願後に公開実用新案公報が発
行されている実願昭61-170103号に係る実用新案登録出願(以下「権利6
先願」という。)の出願当初の明細書に記載された考案は、発明6の技術的範囲を
解釈する際にも斟酌すべきである。
 上記明細書には、小麦粉、水等のパン材料を作る材料を収納する容器
と、この容器内で回転して前記材料をこね合わせる撹拌翼と、この撹拌翼を回転さ
せる電動機とを備えた調理器において、撹拌初期の一定時間、約0.2秒オン、約
1.0秒オフのタイミングで電動機が断続的に運転され、撹拌翼を低速回転させる
ことを特徴とした調理器が記載されている。
 したがって、発明6の技術的範囲から、モータへの断続通電によりこね
用羽根を低速回転させるものは除外すべきである。
(2) イ号、ロ(1)、ロ(2)号物件について
 上記各物件の混練羽根は、混練開始から90秒間は、約0.2秒間回転し
約2秒間停止するという構成である。そして、このような構成によって混練開始当
初(粉体が水と混ざるまでの間)の粉体の飛散を防止するという効果を有する。
 しかしながら、混練開始から90秒間における右混練羽根の回転は、回転
と停止とを交互に繰り返すので、間欠的であるとしても、上記各物件は、この間欠
的な回転をモータに対する通電のオン・オフにより実現しており、この構成は、権
利6先願の明細書に記載された2番目の実施例と全く同一の構成である。
 したがって、上記物件の混練当初の混練羽根の回転が仮に間欠的であると
しても、それらは、発明6の実施にのみ使用される物ではないというべきである。
(3) その他の権利6の対象被告物件について
 上記各物件においては、モータへの通電が極く短時間のオン・オフの繰り
返しであるため、モータの駆動軸及びこれに結合された混練羽根は慣性で連続的に
回転し続け、間欠的な回転を行うことはない。
 したがって、上記物件は、いずれも発明6の実施にのみ使用される物では
ない。
2 争点2(日本不介在譲渡)について
(原告の主張)
 被告が、権利6の対象被告物件を、中国所在の者から購入し、日本を経由す
ることなく、直接米国所在の者に販売している行為が、権利6を侵害しているとみ
なされることについては、権利2に関して主張したのと同様である。
(被告の主張)
 被告が、権利6の対象被告物件を、中国所在の者から購入し、日本を経由す
ることなく、直接米国所在の者に販売している行為が、権利6を侵害しているとみ
なされないことについては、権利2に関して主張したのと同様である。
【争点に対する判断】
1 争点1(間欠的回転)について
(1) 発明6の「こね開始時こね用羽根の回転力による粉体飛散が落ち着くまで
の一定時間こね用羽根を間欠的に回転させ」という要件のうち、「間欠的に回転」
が、具体的に何を意味するのかは、特許請求の範囲の記載からは一義的に明確では
ない。
 権利6明細書(甲6)の作用欄には、「羽根を瞬時回転し粉体がケース外
に飛び出る前に停止する様にすると粉体はやや静止の状態に戻る。斯くして粉体が
落ち着くまで休止させてから再び羽根を瞬時回転、休止をする動作を数十回繰り返
しすると粉体はパンケース外に飛び散ること無く、水と良く融合して糊状化す
る。」と記載されているので、この記載からすると、「間欠的に回転」に該当する
ためには、こね用羽根自体が間欠的に回転しなければならないようにも解し得る。
 他方、同明細書の発明が解決しようとする問題点、効果欄の記載からする
と、発明6の目的は、混ねつ当初に粉体が飛散するのを防止するために、回転羽根
の駆動用モーターの回転数を減速して混ねつ速度を遅くする従来技術よりも、寿
命、騒音、価格の点で改善しようとするものであることが認められる。また、同明
細書の作用欄及び実施例欄の記載によれば、その改善手段として、間欠パルス通電
によってこね用羽根を回転させることにより、粉体をパンケース外に飛散させずに
混ねつさせることができるようにしたことが認められるから、「間欠的に回転」に
該当するためには、こね用羽根の原動力であるモーターを間欠パルス通電によって
作動させれば足りるようにも解し得る。
 したがって、権利6明細書の記載からも、「間欠的に回転」を一義的に理
解することは困難である。
(2) しかしながら、証拠(乙8)によれば、発明6の出願日前に実用新案登録
出願され、発明6の出願後に出願公開されたものとして、権利6先願が存在するこ
とが認められる。
 そして、同証拠によれば、権利6先願の願書に最初に添付した明細書又は
図面には、次の記載があることが認められる。
ア 実用新案登録請求の範囲第1項
 小麦粉、水等のパンを作る材料を収納する容器9と、この容器9内で回
転して前記材料をこね合わせる撹拌翼8と、この撹拌翼8を回転させる電動機4と
を備えた調理器において、攪拌初期の一定時間前記撹拌翼8を低速回転させること
を特徴とした調理器。
イ 実用新案登録請求の範囲第3項
 前記撹拌翼8を低速回転させるための電動機4の断続運転機能を有する
制御回路基盤3を有してなる実用新案登録請求の範囲第1項記載の調理器。
ウ 産業上の利用分野
 本考案は、攪拌により小麦粉、水等のパンの材料を練りあげる家庭用の
調理器に関するものである。
エ 従来の技術
 従来、この種の調理器は容器にパンの材料を入れてから電動機を全速回
転させるため、材料が分離している攪拌初期においては材料が攪拌翼ではね飛ばさ
れるようなものであった。
オ 考案が解決しようとする問題点
 かかる構成のものにあっては撹拌翼ではね飛ばされた材料が容器の内壁
に付着し、特に撹拌翼から遠い部分の内壁に付着した材料は練れないまま最後まで
残ってしまうという問題があった。
カ 問題点を解決するための手段
 本考案は上記問題点を解決するためになされたものであり、攪拌初期の
材料が分離している状態の一定時間は攪拌翼を低速回転させるようにしたものであ
る。
キ 作用
 このようにすることにより材料の撹拌初期の一定時間は、撹拌翼が低速
回転しているので分離している材料は飛散することなく均一に混ざり合うようにな
り、一定時間経過後は撹拌翼を全速回転させて材料を練りあげる。
ク 実施例
 動作の状態を第5図により説明すると、まず、スイッチ23を押してス
イッチ入力を“H”にすると撹拌工程が開始される。ゼロクロス検出回路14から
の出力パルスをマイコン21でカウントし、第5図に示す如きタイミングでトラン
ジスタ24のON/OFFを制御する。
 これによると最初のT3時間はT1時間ON、T2時間OFFのインタ
ーバルでトランジスタ24のON、OFFによって電動機4の断続運転によりマイ
コン21を介して低速回転でゆるやかな撹拌を行ない、時間T3経過後時間T4ま
ではマイコン21を介して電動機4の全速回転で従来通りの撹拌を行なう。
 断続運転のタイミングは、T1=約0.2秒、T2=約0.1秒程度で
ある。
(3) 以上の権利6先願の願書に最初に添付した明細書又は図面の記載からする
と、そこには、次の構成の考案(以下「権利6先願考案」)が記載されているもの
と認められる。
「 予め容器内に入れられた水及びパン材料を、撹拌翼の回転力によりこね
合わせる工程に於いて、回転開始時撹拌翼の回転力による粉体飛散が落ち着くまで
の一定時間、電動機を断続運転させることにより撹拌翼を低速回転させた後、電動
機を連続運転させることにより撹拌翼を全速回転させることを特徴とする調理器に
於ける撹拌翼の制御方法。」
 権利6先願考案と発明6とを比較すると、用語の違いを除けば、①権利6
先願考案が調理器におけるこね用羽根の制御方法であるのに対し、発明6が製パン
器におけるこね用羽根の制御方法であること、②権利6先願考案が回転開始時こね
用羽根の回転力による粉体飛散が落ち着くまでの一定時間、電動機を断続運転させ
ることによりこね用羽根を低速回転させているのに対し、発明6がこね開始時こね
用羽根の回転力による粉体飛散が落ち着くまでの一定時間こね用羽根を間欠的に回
転させている点で相違するものと一応認められる。
 しかしながら、上記①については、権利6先願考案がパン材料と水とが入
れられることを前提とした調理器であり、発明6の記載自体は製パン器となってい
るものの、パン材料と水を混ねつした後の、発酵、焼成等は発明の内容とは無関係
であることからすると、両者の違いは実質的な違いをもたらさないというべきであ
る。
 そうすると、上記②の相違点が実質的な違いをもたらさない場合には、発
明6は権利6先願考案と実質的に同一の発明ということとなり、権利6の特許出願
時に施行されていた旧特許法123条1項1号、29条の2によって、その特許登
録に無効理由が存在することとなってしまう。
 したがって、発明6の技術的範囲を解釈するに当たっては、上記②の相違
点が実質的な違いをもたらすように解釈する必要があるというべきである。
(4) 以上のことからすると、発明6の「間欠的に回転」とは、こね用羽根自体
が間欠的に回転動作をするものと解すべきであり、そのように解することによっ
て、権利6先願考案との抵触を免れることとなる。
(5) イ号、ロ(1)号、ロ(2)号物件について
ア 証拠(甲25の1と2)によれば、権利6の対象被告物件のうち、イ
号、ロ(1)号、ロ(2)号物件のこね用羽根は、こね開始から約90秒間、それ自体が
間欠的に回転動作していることが認められ、こね開始から約90秒経過後は連続回
転しているものの、その時点でこね用羽根の回転力による粉体飛散は落ち着いてい
るものと認められる。なお、イ号、ロ(1)号、ロ(2)号のこね用羽根自体が間欠的に
回転するか否かは、パンケース内に入れられたパン材料、イースト菌、水の混合物
の粘度にも左右されると考えられるが、製パンに適した粘度は一定のものと考えら
れるから、通常の使用方法において、イ号、ロ(1)号、ロ(2)号物件のこね用羽根
は、こね開始時こね用羽根の回転力による粉体飛散が落ち着くまでの一定時間、そ
れ自体が間欠的に回転するものと認められる。
 したがって、イ号、ロ(1)号、ロ(2)号物件におけるこね用羽根の制御方
法は、発明6の「こね開始時こね用羽根の回転力による粉体飛散が落ち着くまでの
一定時間こね用羽根を間欠的に回転させ」という要件を充足していると認められ
る。
 よって、イ号、ロ(1)号、ロ(2)号物件は、発明6の実施にのみ使用する
物であると認められる。
イ 被告は、イ号、ロ(1)号、ロ(2)号物件は、権利6先願の明細書に記載さ
れた2番目の実施例と全く同一の構成であるから、同物件は発明6の実施にのみ使
用する物ではないと主張する。
 しかし、こね開始時こね用羽根の回転力による粉体飛散が落ち着くまで
の一定時間、こね用羽根をどのように制御しているかという点において、イ号、
ロ(1)号、ロ(2)号物件は、モータ回路のスイッチを0.2秒間接続、2秒間切断と
いうタイミングで繰返してオン・オフしているのに対し、権利6先願の明細書に記
載された2番目の実施例は、トランジスタ24を0.2秒間接続、1秒間切断とい
うタイミングで繰返してオン・オフしている点で異なる上、イ号、ロ(1)号、ロ(2)
号物件は、そのような時間によるオン・オフの繰り返しにより、こね用羽根自体が
間欠的に回転するのに対し、権利6先願の明細書に記載された2番目の実施例にお
いて、こね用羽根自体が間欠的に回転しているか否かは不明である。
 したがって、被告の上記主張は採用することができない。
(6) その他の権利6の対象被告物件について
ア 本件証拠によっても、その他の権利6の対象被告物件において、「こね
開始時こね用羽根の回転力による粉体飛散が落ち着くまでの一定時間こね用羽根を
間欠的に回転させ」という要件を充足しているとは認められない。
イ 証拠(甲25の3ないし5)によれば、二号、ヘ号、ト(1)号物件は、
こね開始時から約5秒間、低速回転し、その後、約85秒間こね用羽根が脈動的に
回転していることが認められる。
 そして、発明6において、こね用羽根が間欠的に回転するのは、こね開
始時からでなければならないことは、特許請求の範囲の記載からして明らかであ
る。また、発明6において、こね用羽根が間欠的に回転するのが、こね開始時から
でなければならないことは、発明6が、混ねつ当初、こね用羽根の通常の速度によ
って、水と分離している小麦粉等の粉体がパンケースの外に飛散してしまうことを
防止することを目的の1つとして、「こね開始時こね用羽根の回転力による粉体飛
散が落ち着くまでの一定時間こね用羽根を間欠的に回転させ」という手段を具備し
ていることからしても、明らかである(甲6の2欄13行~3欄32行)。
 そうすると、二号、ヘ号、ト(1)号物件は、少なくとも、こね開始時から
約5秒間、こね用羽根が間欠的に回転していないのであるから、同物件が、「こね
開始時こね用羽根の回転力による粉体飛散が落ち着くまでの一定時間こね用羽根を
間欠的に回転させ」という要件を充足しているとは認められない。
ウ そして、別紙物件目録4、6、7-(1)の各三、7によれば、上記物件
が、少なくとも、こね開始時から約5秒間、こね用羽根が間欠的に回転しないの
は、それらの物件においては、混練動作開始時に、モータ4の回転について、マイ
クロコンピュータが、モータ回路のスイッチを、電源周波数の16サイクルを1ブ
ロックとし、この16サイクル中複数サイクル間接続、それより長いサイクル間切
断というタイミングで繰り返して開閉(オン・オフ)するという制御を行っている
からと認められるところ、ハ(1)号、ハ(2)号、ホ号及びト(2)号物件においても、別
紙物件目録3-(1)、3-(2)、5及び7-(2)の各三、7記載のとおり、上記制御を
行っている。
 そうすると、ハ(1)号、ハ(2)号、ホ号及びト(2)号物件においても、少な
くとも、こね開始時から約5秒間、こね用羽根は間欠的に回転していないものと推
認されるから、同物件も、「こね開始時こね用羽根の回転力による粉体飛散が落ち
着くまでの一定時間こね用羽根を間欠的に回転させ」という要件を充足していると
は認められない。
エ したがって、イ号、ロ(1)号、ロ(2)号物件以外の権利6の対象被告物件
は、いずれも発明6の実施にのみ使用する物であるとは認められない。
2 争点2(日本不介在譲渡)に関して
 権利6は、「製パン器に於けるこね用羽根の制御方法」という方法の特許で
あり、被告がイ号、ロ(1)号及びロ(2)号物件を製造、販売する行為が、権利6の間
接侵害となるかどうかが問題となるのであるから、前記第4【争点に対する判断】
2記載のとおり、被告が同物件を米国所在の者に販売する行為は、権利6の間接侵
害を構成しないというべきである。
 なお、争いのない事実等記載のとおり、被告は、イ号、ロ(1)号及びロ(2)号
物件を日本国内で製造の上、米国所在の者に販売・輸出もしているが、この行為も
同様に、権利6の間接侵害を構成しないというべきである。
第7 権利7に係る請求について
【争いのない事実等】
1 原告は次の実用新案権(以下「権利7」という。)を有している。
考案の名称 製パン機におけるこね容器の取手構造
出 願 日 平成3年3月4日(実願平3-10986号)
公 告 日 平成8年1月24日(実公平8-1710号)
登 録 日 平成9年11月28日
登録番号  第2149189号
2 権利7の実用新案登録出願の願書に添付した明細書(以下「権利7明細書」
という。)記載の実用新案登録請求の範囲は次のとおりである(以下この考案を
「考案7」という。)。
 製パン機本体に対してバヨネット結合で取外し自在に結合されるこね容器に
おいて、その上端フランジ部の一部を略山形に切起こして空所を形成し、該切起こ
し部は所定幅に成形すると共に、前記空所に取手の両端を挿通係合させたことを特
徴とする製パン機におけるこね容器の取手構造。
3 被告は、遅くとも平成8年1月24日から同年5月31日までに、考案7の
技術的範囲に属する製パン機におけるこね容器の取手構造を具備したA号物件を販
売した(弁論の全趣旨)。
【争点】
 権利7に基づく請求は権利濫用か。
【争点に関する当事者の主張】
(被告の主張)
 原告は、権利7の実用新案出願公告後である平成8年12月3日、実用新案
登録請求の範囲を補正し(以下「本件補正」という。)、「バヨネット結合で結合
させる」という構成と、「こね容器の上端フランジ部の切り起こし部を所定幅に成
形する」という構成を追加した。
 しかし、上記構成の追加によって、補正後の考案は単に製造の手間や部品コ
ストの削減を図るのみならず、取手をもってこね容器(パン容器)を回転させるこ
とにより製パン機本体への着脱が可能になるという目的(及び作用効果)が追加さ
れているから、この補正は、考案を実質的に変更するものであり、出願公告後の補
正として許される限度を超えたものである。
 そうすると、本件補正は不適法であり、権利7の実用新案登録請求の範囲
は、出願公告時のものとなる。
 しかるに、この出願公告時の実用新案登録請求の範囲の内容は、出願前公知
の考案から極めて容易に考案できるものであり、進歩性を欠如する考案である。
 したがって、権利7の実用新案登録は無効であることが明白であるから、権
利7に基づく請求は権利濫用である。
(原告の主張)
 争う。
【争点に対する判断】
1 被告の主張は、権利7の実用新案登録請求の範囲が、出願公告時のものとな
ることを前提に、進歩性を欠如すると主張するが、進歩性を欠如するとする理由が
抽象的であり、権利7の実用新案登録出願時における公知の考案等を具体的に提示
しないから、被告の主張を認めることはできない。
2(1) なお、被告は、本件補正は権利7の出願公告時における権利7明細書に記
載された考案を実質的に変更するものであり、要旨変更に該当すると主張するの
で、一応その点についても検討する。
(2) 証拠(甲7)によれば、権利7の出願公告時の実用新案登録請求の範囲
は、次のとおりであったことが認められる。
「 製パン機本体に対して取外し自在になったこね容器において、その上端
フランジ部の一部を略山形に切起こして空所を形成すると共に、該空所に取手の両
端を挿通係合させたことを特徴とする製パン機におけるこね容器の取手構造。」
 したがって、権利7の実用新案登録請求の範囲は、本件補正により、「バ
ヨネット結合で…結合される」という構成と、「該切起こし部は所定幅に成形す
る」という構成が追加されている。
 また、証拠(甲7、17)によれば、本件補正により、権利7明細書の
「実施例」欄には、「また、切起こし部15の幅は、取手17を持ってこね容器1
1を回転し、製パン機本体とのバヨネット結合を嵌めたり、外したりしたときで
も、加わる力によって破損することがないように、所定の幅に設定する。」との記
載が追加され、「考案の効果」欄には、「また、ユーザは、取手を持ってこね容器
を回転する操作により、こね容器の製パン機本体への着脱を行うことができる。」
という記載が追加されていることが認められる。
(3) ところで、権利7の出願公告時における権利7明細書の実施例欄には、次
の記載があったことが認められる。
ア こね容器の本体11は図1に示したように、上部の開口縁をフランジ部
12に形成したアルミ製円筒であり、この本体11の下面に前記収納室9内への取
付け用係止部13がリベット固定してある。この係止部13は収納室9側の取付部
(図示せず)にバヨネット結合する(【0008】)。
イ そして、上記フランジ部12を含み、係止部13を除いた本体の略円筒
形状はプレス成型により一体成型されるが、フランジ部12の一部には次に詳述す
る略山形の切起こし部15が形成され、この切起こし部15によって形成される空
所16に逆U字ワイヤー状の取手17が取付けられるようになっている。
 すなわち、環状フランジ部12のうちの幅広部12a(この実施例では
約10ミリ)に、その幅のほぼ半分を占める程度の間隔(約5ミリ)で2本の平行
な切込み18が形成され、この切込み18間を下方よりプレスして山形に隆起させ
てある(【0009】、【0010】)。
ウ 取手17はそのL字状屈曲部17aが上記空所16にちょうど進入しう
る程度の太さのばね鋼材からなり、適度な弾性と剛性を有する。
 適度な剛性とは、この取手17を立てた図1示の状態で取手17を手で
把持して、こね容器6を時計まわり、反時計まわりのいずれかへ回転させれば、前
記係止部13が収納室9内の係止部にバヨネット嵌合しうる、あるいはその嵌合が
外れうる程度の剛性である。つまり、こね容器6の着脱を行うために、この取手1
7を持って力を加えた程度では容易に塑性変形しない程度の弾性と剛性を有するば
ね鋼材である(【0011】、【0012】)。
エ こね容器本体11に取付けられた取手17はそのばね性によって、L字
状屈曲部17aの空所16内への突入が外れることがなく、前述の通り前記収納室
9に入れた状態で使用者が取手17をひねってこね容器6の製パン機本体7への係
合を係脱することができる(【0017】)。
(4) 前記(3)の実施例の記載からすると、権利7の出願公告時における権利7
明細書にも、「製パン器本体に対してバヨネット結合で取外し自在に結合されるこ
ね容器」及び「該切起こし部は所定幅に成形する」ことが記載されていることが認
められ、本件補正による実用新案登録請求の範囲の訂正は、公告時におけるそれを
減縮するものであると認められる。
 そして、本件補正により「考案の効果」欄に追加された「ユーザは、取手
を持ってこね容器を回転する操作により、こね容器の製パン機本体への着脱を行う
ことができる。」という記載も、前記(3)ウ、エに記載されている上、その構成上自
明の効果であると認められる。
 なお、本件補正により実施例欄に追加された「また、切起こし部15の幅
は、取手17を持ってこね容器11を回転し、製パン機本体とのバヨネット結合を
嵌めたり、外したりしたときでも、加わる力によって破損することがないように、
所定の幅に設定する。」との記載については、出願公告時の権利7明細書には明示
的に記載されていないが、切り起こし部15が所定幅に形成されることについて
は、前記(3)イに記載されているところであり、その場合、通常の使用状況下で切起
こし部15が破損することがない程度の所定の幅を設けることは、自明のことであ
る。
(5) したがって、被告の「本件補正は権利7の出願公告時における権利7明細
書に記載された考案を実質的に変更するものであり、要旨変更に該当する」との主
張は採用することができない。
第9 損害額について
【当事者の主張】
(原告の主張)
1(1) 権利1ないし権利7のうち、最も早く損害賠償請求権が発生するのは、平
成4年4月2日に出願公告された権利5であるが、被告は、その翌日以降、各権利
の対象被告物件を製造、販売することにより、各権利の仮保護の権利又は各権利を
侵害した。
(2) 実施料相当額を求めるに当たって、当該物件の総売上高に対し乗ずべき実
施料率は、①権利1を侵害する物については5%、②権利2を侵害する物について
は5%、③権利4又は権利5のいずれか一方を侵害する物については1.5%、双
方を侵害する物については2%、④権利6を侵害する物については2%、⑤権利7
を侵害する物については1%とすべきである。ただし、複数の権利を侵害する物件
につき、実施料率が5%を超える場合でも、当業界の慣行を考慮して5%を上限と
する。
(3) 被告が、平成4年4月3日以降、イ号ないしチ号及びA号物件を製造販売
して得た売上額は、合計100億2948万140円であるところ、それに各権利
の仮保護の権利の発生時期と、各権利の実施料率を勘案すると、実施料相当額は、
2億2926万6505円となる。
2 侵害論に関する裁判所の判断を前提とした損害額について
(1) 被告は、権利2の仮保護の開始の日(平成7年7月12日)より後である
平成7年8月1日以降、権利2の対象被告物件を国内で製造、販売することによ
り、権利2の仮保護の権利又は権利2を侵害した。
 また、被告は、権利6の仮保護の開始の日(平成7年8月30日)より後
である平成7年9月1日以降、権利6の対象被告物件を国内で販売することによ
り、権利6の仮保護の権利又は権利6を侵害した。
 右物件中の被告による国内販売の数量及び当時の販売単価は、別表1記載
のとおりである(なお、表中該当期間に国内販売のなかった物件については記載さ
れていない)。
 被告によるこれらの販売に対する実施料相当額(売上高の5パーセント)
は、1億6194万8523円である。
(2) 被告は、権利7の仮保護の開始の日(平成8年1月24日)より後である
平成8年2月1日以降、A号物件を製造、販売することにより、権利7の仮保護の
権利又は権利7を侵害した。
 被告による上記物件の販売台数及び当時の販売単価は、別表2記載のとお
りである。
 被告によるこれらの販売に対する実施料相当額(販売額の1パーセント)
は、516万0025円である。
(被告の主張)
1 別表1のうち、「物件」、「機種コード」、「製品コード」、「単価」、
「数量」及び「販売額」欄の記載並びに別表2のうち、「物件」、「機種コー
ド」、「製品コード」、「単価」、「販売台数」、「販売金額」欄の記載は認め
る。
2 権利2の実施料率について
 権利2の出願公告時における特許請求の範囲は、投入の順序は要件ではな
く、水とイーストの間に、水との接触を避けるようにパン材料を介在させることが
要件であったが、異議申立に対応するため、特許請求の範囲を補正し、水、パン材
料、イーストという順序に投入することを要件としたのである。したがって、右以
外の順序で投入する方法は、権利2の範囲に属さないことは明らかである。
 そうすると、水、パン材料、イーストという投入順序さえ避ければ、あるい
は、この投入順序はいくつかの投入順序のうちの一つの例示にすぎないものとして
おけば、権利2は極めて容易に回避することができるのである。なお、被告が、権
利2の対象被告物件の取扱説明書において、水、パン材料、イーストという投入順
序を記載したのは、水を先に投入する方が、パン材料を先に投入するよりも、パン
材料(特に小麦粉)がパン容器に残りにくい(特にパン容器の隅の小麦粉は、先に
水を入れた方が、先に小麦粉を入れた場合よりも、攪拌後に残る度合いが少ない)
という権利2とは異なる作用効果を目的としたものである。
 そして、権利2の対象被告物件における基本的な使用形態はタイマーを用い
ず直ちに製パンを行うものであることや、権利2は無効となる可能性があることを
考慮すれば、権利2の価値は極めて低く、その実施料率は低率に抑えられるべきで
ある。
3 権利6の実施料率について
 権利6は、①製パン器の本質的部分ではなく、混練羽根の混練開始当初の回
転制御という極めて限定された部分に関する権利にすぎないこと、②イ号、ロ(1)号
及びロ(2)号物件における混練羽根の間欠回転は、先願考案の発明を実施した結果と
して間欠回転が実現しているにすぎないこと、③権利6は無効となる可能性がある
ことを考慮すれば、権利6の価値は極めて低く、その実施料率は低率に抑えられる
べきである。
4 権利7の実施料相当額について
 権利7の実施料相当額は、権利7を回避するために要する費用を上回ること
は常識上あり得ないというべきところ、被告が権利7を回避するために要した変更
費用は、パン容器1個当たり10円未満である。
 そして、権利7は無効となる可能性があることを考慮すれば、権利7の実施
料相当額は、製品1個当たり10円未満とみるのが相当である。
【争点に対する判断】
1 これまで判示したことから明らかなように、被告が、権利2の出願公告日で
ある平成7年7月12日以降、権利2の対象被告物件(イ号、ロ(1)号、ハ(1)号、
ニないしト(1)号及びチ号物件)を、日本国内で販売したことは、権利2の仮保護の
権利を侵害し(ただし、権利2の登録日である平成9年12月19日以降は権利2
を侵害)、権利6の出願公告日である平成7年8月30日以降、権利6の対象被告
物件のうちイ号、ロ(1)号、ロ(2)号物件を、日本国内で販売したことは、権利6の
仮保護の権利を侵害し(ただし、権利6の登録日である平成9年7月25日以降は
権利6を侵害)、権利7の出願公告日である平成8年1月24日以降、A号物件を
販売したことは、権利7の仮保護の権利を侵害したこととなる(ただし、権利7の
登録日である平成9年11月28日以降は権利7を侵害)。
2 被告の各物件の売上
 被告が、上記各権利を侵害することになる期間(ただし、原告は平成12年
3月31日までの侵害に係る損害賠償を請求している。)、上記各物件の販売数額
が、別表1の「数量」及び「販売額」欄の記載並びに別表2の「販売台数」欄及び
「販売金額」欄記載のとおりであることについては、当事者間に争いがない。
 ところで、弁論の全趣旨によれば、別表2のA号物件の販売台数及び販売金
額には、被告が韓国で生産されたA号物件を、日本を経由することなく、アメリカ
所在の者に販売した販売台数及び販売金額が含まれていると認められる(別表2の
機種コード欄「HB-710R」、*2参照。)。そして、原告は、このような販
売についても、登録実用新案の「実施」としての「譲渡」に当たるから、実用新案
権侵害を構成すると主張する趣旨であると解される。
 しかしながら、登録実用新案の「実施」である「譲渡」といえるためには、
当該譲渡の対象物が日本国内に存在していなければならないと解するのが相当であ
る。なぜなら、登録実用新案は、物品の形状、構造又は組合せに係る、自然法則を
利用した技術的思想の創作であるから、その技術的思想は、すべからく具体的に存
在する物品として具現するものであるところ、日本の実用新案権は日本国内におい
てしか効力を有さないから、当該物品が日本国外に存在する場合は、そこに具現さ
れた技術思想に対しては、日本の実用新案権の支配力は及ばないからである。ま
た、実用新案法2条3項は、「実施」を「考案に係る物品」を譲渡すること等と定
義しているが、日本の実用新案権の効力が日本国内にしか及ばない以上、実用新案
登録を受けている「考案に係る物品」も日本国内に存在するものに限られると解す
べきだからである。
 したがって、権利7を侵害したA号物件の販売台数及び販売金額は、別表2
記載のA号物件の販売台数及び販売金額から、被告が韓国で生産されたA号物件
を、日本を経由することなく、アメリカ所在の者に販売したA号物件の販売台数及
び販売金額を控除すべきである。
 以上より、被告は、①平成7年8月1日から平成12年3月31日まで、権
利2の対象被告物件を販売したことにより、合計32億3897万0450円の売
上を得、②平成7年9月1日から平成12年3月31日まで、権利6の対象被告物
件を販売したことにより、合計1億0782万円の売上を得、③平成8年2月1日
から同年5月31日までA号物件を販売したことにより、4億9766万2472
円の売上を得たと認められる。
3 売上に乗ずべき実施料率について
(1) 発明2について
 発明2は、タイマー制御による製パン工程における、水、パン材料、イー
スト菌の投入方法に関する発明であるところ、①発明2により、タイマー制御の場
合でも、水、パン材料、イースト菌を1つの容器に投入しておくことができること
になるので、実用的な発明ということができるが、②発明2の投入順序以外の投入
順序によっても、タイマー制御の場合でも、水、パン材料、イースト菌を1つの容
器に投入しておくことはでき、現にそのような技術も存在すること(乙16)、③
ただし、発明2の方法は、混練により小麦粉が容器の縁に残るということが少ない
という、他の方法よりも優れた点があること(権利2明細書に記載はないが、被告
が自認するところである。)、その他本件で現れた一切の事情を斟酌すれば、権利
2の対象被告物件の売上高に乗ずべき発明2の実施料率は、2パーセントとみるの
が相当である。
(2) 発明6について
発明6は、こね開始からの初期段階におけるこね用羽根の制御方法に関す
る発明であるが、発明6が奏する効果は、権利6先願考案でも達成できており、発
明6は、権利6先願考案と同程度の実用的価値を有する技術を提供したにすぎない
ものと考えられること、その他本件で現れた一切の事情を斟酌すれば、権利6の対
象被告物件の売上高に乗ずべき発明6の実施料率は、1パーセントとみるのが相当
である。
(3) 考案7について
 考案7は、パン容器の取手の構造に関する実用新案であるから、製パン器
全体に対する寄与率は、10パーセントとみるのが相当であること、その他、本件
で現れた一切の事情を斟酌すれば、A号物件の売上高に乗ずべき考案7の実施料率
は、0.1パーセントとみるのが相当である。
(4) なお、損害額算定の基礎となる、権利2の対象被告物件、権利6の対象被
告物件及びA号物件の各売上高には、部分的に同一時期の同一物件の売上が重複し
て計上されているが、本件の場合、発明2、6及び考案7は、互いに目的・手段・
効果が異なるものであることから、複数の権利を侵害する物件の売上高に乗ずべき
実施料率は、各発明又は考案の実施料率を合計して得られる率とみるのが相当であ
る。
4 損害額のまとめ
(1) 以上より、被告が権利2を侵害したことにより原告に対して支払うべき実
施料相当額は、6477万9409円となり、権利6を侵害したことにより原告に
対して支払うべき実施料相当額は、107万8200円となり、権利7を侵害した
ことにより支払うべき実施料相当額は、49万7662円となり、その合計は、6
635万5271円となる。
 なお、原告は、付帯請求として、本件訴状送達の日の翌日である平成8年
12月6日からの民法所定の遅延損害金の支払を求めているが、発明2及び6の実
施料相当額の算定根拠となった売上高には、同日を超える期間の売上高も含まれて
いる。そして、発明2及び6に関する各年度毎の実施料相当額は、別表3記載のと
おりである。
 したがって、原告の付帯請求は、上記実施料相当合計額のうち771万2
284円(別表3の①と考案7の実施料相当額の合計)については平成8年12月
6日から、1821万8071円(別表3の②)については平成9年3月31日か
ら、1276万7763円(別表3の③)については平成10年3月31日から、
1453万3976円(別表3の④)については平成11年3月31日から、13
12万3177円(別表3の⑤)については平成12年3月31日から、それぞれ
支払済みまで年5分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があること
になる(本件証拠によっても、平成8年4月1日から平成9年3月31日までの売
上のうち、いくらが平成8年12月6日までの売上か不明であるため、その期間の
売上に基づく実施料相当額(別表3の②)の遅延損害金の始期は、平成9年3月3
1日とする。)。
第10 まとめ
 被告が、権利2の対象被告物件(イ号、ロ(1)号、ハ(1)号、ニないしト(1)号
及びチ号物件)及び権利6の対象被告物件(イ号、ロ(1)号及びロ(2)号物件)を日
本国内で販売するために製造し、又は日本国内向けに販売すること、日本国内で販
売するために輸入することは、権利2又は権利6を侵害する。
 なお、被告が、現に、上記侵害を構成する物を、現に外国から輸入している
ということを認めるに足る証拠はないが、弁論の全趣旨によれば、被告は、自社ブ
ランドの製パン器を中国や韓国で生産させていることが認められるから、今後、上
記侵害を構成する物を輸入するおそれはあるというべきである。
 また、別表1のとおり、損害賠償の対象期間中、一部の物件(イ号、ロ(2)号
及びハ(1)号物件)は、日本国内向けに販売されていないが、弁論の全趣旨によれ
ば、被告は、当該物件を、海外で販売していると認められるから、なお、日本国内
で販売するために製造し、日本国内向けに販売するおそれはあるというべきであ
る。ただし、廃棄請求は、現に、日本国内で販売するために製造し、又は日本国内
向けに販売しているロ(1)号、ニ号、ホ号、へ号、ト(1)号、チ号物件に限るのが相
当である。
 他方、原告は、A号物件の製造、販売、輸入の差止めを求めているが、弁論
の全趣旨によれば、被告は、平成8年5月9日以降、A号物件を生産しておらず、
現在その在庫もないと認められるから、同物件の製造、販売等の差止請求の必要性
はないというべきである。
 以上より、原告の本件差止請求のうち、イ号ないしハ(1)号、ニないしト(1)
号及びチ号物件の、①日本国内で販売するための製造、②日本国内で販売するため
の輸入、③日本国内向けの販売の差止めを求める請求は理由があり、その余は理由
がないことになる。
 また、原告の本件廃棄請求のうち、日本国内で販売するために製造された
ロ(1)号、ニないしト(1)号及びチ号物件の廃棄請求は理由があり、その余は理由が
ないことになる。
 そして、原告の本件損害賠償請求については、前述のとおりである。
 よって、主文のとおり判決する(主文一、二項については仮執行宣言を付さ
ないこととする。)。
物 件 目 録 1 (イ号物件)
 被告製造販売に係るHB10シリーズ(HB‐12WR、HB‐12WM、HB
‐12WT、HB‐10W、HB‐10P)の製パン器
一 図面の説明
 第1図は、上記製パン器の一部を破断して示す正面図である。
 第2図は、上記製パン器の平面図である。
二 符号の説明
1 ケーシング
3オーブンケース
4モータ
6操作パネル
8パンケース
11 ヒータ
13回転軸
16混練羽根
三 構成の説明
1 パンケース8内にイースト、各種材料及び水を入れて使用する物であり、こ
れらに対する混練(混ねつ)発酵及び焼成の工程が自動化されており、
2 ケーシング1内にはモータ4によって回転駆動される縦姿勢の回転軸13が備
えられており、右回転軸の上端には、混練羽根16が着脱自在に取り付けられてお
り、
3 ケーシング1表面に設けられた操作パネル6は、製パン時間等を表示する表
示パネルと、予約タイマー設定用のタイマーキーと、製パン動作開始を指示するス
タートキーとを備え、
4 パンケース8はイースト、各種材料及び水の全てを収納し、その状態でパン
材料の混練、発酵及び焼成が行われ、
  また、ケーシング1内にタイマー機能を有するマイクロコンピュータを備
え、これにより混練、発酵および焼成の工程の時間制御が行われ、
5 オーブンケース3の側面に取り付けられた温度センサが接続されているマイ
クロコンピュータの制御により、スタートキー操作時点において温度センサが摂氏
38度以上を検出した場合には表示パネルにE:01を表示し、また、動作開始後
に温度センサが摂氏60度以上を検出した場合には表示パネルにE:08を表示
し、
6 オーブンケース3の側面に取り付けられた温度センサが接続されているマイ
クロコンピュータの制御により、スタートキー操作時点において温度センサが摂氏
38度以上を検出した場合には製パン動作を開始させず、また、動作開始後に温度
センサが摂氏60度以上を検出した場合には製パン動作を中止し、
7 スタートキーの操作により直ちに、あるいはタイマー設定時にはスタートキ
ー操作後、設定で定まる時間の経過時に、パンケース8に入れられているイース
ト、各種材料及び水を、混練羽根16の回転力により混練する製パン工程を開始す
る。この混練動作開始時には、モータ4の回転について、マイクロコンピュータ
は、モータ回路のスイッチを、0.2秒間接続、2秒間切断というタイミングで繰
り返して開閉(オン・オフ)するという制御を行うが、この制御は90秒間継続
し、90秒経過後は常に接続状態とする。

物 件 目 録 2-(1) (ロ(1)号物件)
 被告製造販売に係るHB200シリーズのうちタイマー付き(HB‐215、H
B‐217T、HBC‐210C、HBC‐216R、HBC‐212R、HBB
‐215H、HBT‐210、HBT‐215)の製パン器
一 図面の説明
 第1図は、上記製パン器の一部を破断して示す正面図である。
第2図は、上記製パン器の平面図である。
第3図は、上記製パン器の斜視図である。
二符号の説明
1ケーシング
3オーブンケース
4モータ
6操作パネル
8パンケース
11 ヒータ
13回転軸
16混練羽根
三 構成の説明
1 パンケース8内にイースト、各種材料及び水を入れて使用する物であり、こ
れらに対する混練(混ねつ)発酵及び焼成の工程が自動化されており、
2 ケーシング1内にはモータ4によって回転駆動される縦姿勢の回転軸13が備
えられており、右回転軸の上端には、混練羽根16が着脱自在に取り付けられてお
り、
3 ケーシング1表面に設けられた操作パネル6は、製パン時間等を表示する表
示パネルと、予約タイマー設定用のタイマーキーと、製パン動作開始を指示するス
タートキーとを備え、
4 パンケース8はイースト、各種材料及び水の全てを収納し、その状態でパン
材料の混練、発酵及び焼成が行われ、
  また、ケーシング1内にタイマー機能を有するマイクロコンピュータを備
え、これにより混練、発酵および焼成の工程の時間制御が行われ、
5 オーブンケース3の側面に取り付けられた温度センサが接続されているマイ
クロコンピュータの制御により、スタートキー操作時点において温度センサが摂氏
38度以上を検出した場合には表示パネルにE:01を表示し、また、動作開始後
に温度センサが摂氏60度以上を検出した場合には表示パネルにE:08を表示
し、
6 オーブンケース3の側面に取り付けられた温度センサが接続されているマイ
クロコンピュータの制御により、スタートキー操作時点において温度センサが摂氏
38度以上を検出した場合には製パン動作を開始させず、また、動作開始後に温度
センサが摂氏60度以上を検出した場合には製パン動作を中止し、
7 スタートキーの操作により直ちに、あるいはタイマー設定時にはスタートキ
ー操作後、設定で定まる時間の経過時に、パンケース8に入れられているイース
ト、各種材料及び水を、混練羽根16の回転力により混練する製パン工程を開始す
る。この混練動作開始時には、モータ4の回転について、マイクロコンピュータ
は、モータ回路のスイッチを、0.2秒間接続、2秒間切断というタイミングで繰
り返して開閉(オン・オフ)するという制御を行うが、この制御は90秒間継続
し、90秒経過後は常に接続状態とする。

物 件 目 録 2-(2) (ロ(2)号物件)
 被告製造販売に係るHB200シリーズのうちタイマー付きでない(HB‐21
1、HB‐211R)の製パン器
一 図面の説明
 第1図は、上記製パン器の一部を破断して示す正面図である。
第2図は、上記製パン器の平面図である。
第3図は、上記製パン器の斜視図である。
二符号の説明
1ケーシング
3オーブンケース
4モータ
6操作パネル
8パンケース
11 ヒータ
13回転軸
16混練羽根
三 構成の説明
1 パンケース8内にイースト、各種材料及び水を入れて使用する物であり、こ
れらに対する混練(混ねつ)発酵及び焼成の工程が自動化されており、
2 ケーシング1内にはモータ4によって回転駆動される縦姿勢の回転軸13が備
えられており、右回転軸の上端には、混練羽根16が着脱自在に取り付けられてお
り、
3 ケーシング1表面に設けられた操作パネル6は、製パン時間等を表示する表
示パネルと、製パン動作開始を指示するスタートキーとを備え、
4 パンケース8はイースト、各種材料及び水の全てを収納し、その状態でパン
材料の混練、発酵及び焼成が行われ、
5 オーブンケース3の側面に取り付けられた温度センサが接続されているマイ
クロコンピュータの制御により、スタートキー操作時点において温度センサが摂氏
38度以上を検出した場合には、Knead/Riseランプを点滅、その他ラン
プを点灯し、また、動作開始後に温度センサが摂氏60度以上を検出した場合に
は、Bakeランプを点滅、その他ランプを点灯し、
6 オーブンケース3の側面に取り付けられた温度センサが接続されているマイ
クロコンピュータの制御により、スタートキー操作時点において温度センサが摂氏
38度以上を検出した場合には製パン動作を開始させず、また、動作開始後に温度
センサが摂氏60度以上を検出した場合には製パン動作を中止し、
7 スタートキーの操作により直ちに、パンケース8に入れられているイース
ト、各種材料及び水を、混練羽根16の回転力により混練する製パン工程を開始す
る。この混練動作開始時には、モータ4の回転について、マイクロコンピュータ
は、モータ回路のスイッチを、0.2秒間接続、2秒間切断というタイミングで繰
り返して開閉(オン・オフ)するという制御を行うが、この制御は90秒間継続
し、90秒経過後は常に接続状態とする。

物 件 目 録 3-(1) (ハ(1)号物件)
 被告製造販売に係るHB300シリーズのタイマー付き(HB‐315、HBC
310C、HBC315C)の製パン器
一 図面の説明
 第1図は、上記製パン器の一部を破断して示す正面図である。
第2図は、上記製パン器の平面図である。
第3図は、上記製パン器の斜視図である。
二符号の説明
1ケーシング
3オーブンケース
4モータ
6操作パネル
8パンケース
11 ヒータ
13回転軸
16混練羽根
三 構成の説明
1 パンケース8内にイースト、各種材料及び水を入れて使用する物であり、こ
れらに対する混練(混ねつ)発酵及び焼成の工程が自動化されており、
2 ケーシング1内にはモータ4によって回転駆動される縦姿勢の回転軸13が備
えられており、右回転軸の上端には、混練羽根16が着脱自在に取り付けられてお
り、
3 ケーシング1表面に設けられた操作パネル6は、製パン時間等を表示する表
示パネルと、予約タイマー設定用のタイマーキーと、製パン動作開始を指示するス
タートキーとを備え、
4 パンケース8はイースト、各種材料及び水の全てを収納し、その状態でパン
材料の混練、発酵及び焼成が行われ、
  また、ケーシング1内にタイマー機能を有するマイクロコンピュータを備
え、これにより混練、発酵および焼成の工程の時間制御が行われ、
5 オーブンケース3の側面に取り付けられた温度センサが接続されているマイ
クロコンピュータの制御により、スタートキー操作時点において温度センサが摂氏
38度以上を検出した場合には表示パネルにE:01を表示し、また、動作開始後
に温度センサが摂氏60度以上を検出した場合には表示パネルにH:H0を表示
し、
7 スタートキーの操作により直ちに、あるいはタイマー設定時にはスタートキ
ー操作後、設定で定まる時間の経過時に、パンケース8に入れられているイース
ト、各種材料及び水を、混練羽根16の回転力により混練する製パン工程を開始す
る。この混練動作開始時には、モータ4の回転について、マイクロコンピュータ
は、モータ回路のスイッチを、電源周波数の16サイクルを1ブロックとし、この
16サイクル中複数サイクル間接続、それより長いサイクル間切断というタイミン
グで繰り返して開閉(オン・オフ)するという制御を行うが、この制御は75秒間
継続し、75秒経過後は速度を5秒周期で高低に変化させてモータ4を20周期間
連続回転する。

物 件 目 録 3-(2) (ハ(2)号物件)
 被告製造販売に係るHB300シリーズのタイマーなし(HB‐311、HBC
311C)の製パン器
一 図面の説明
 第1図は、上記製パン器の一部を破断して示す正面図である。
第2図は、上記製パン器の平面図である。
第3図は、上記製パン器の斜視図である。
二符号の説明
1ケーシング
3オーブンケース
4モータ
6操作パネル
8パンケース
11 ヒータ
13回転軸
16混練羽根
三 構成の説明
1 パンケース8内にイースト、各種材料及び水を入れて使用する物であり、こ
れらに対する混練(混ねつ)発酵及び焼成の工程が自動化されており、
2 ケーシング1内にはモータ4によって回転駆動される縦姿勢の回転軸13が備
えられており、右回転軸の上端には、混練羽根16が着脱自在に取り付けられてお
り、
3 ケーシング1表面に設けられた操作パネル6は、製パン時間等を表示する表
示パネルと、製パン動作開始を指示するスタートキーとを備え、
4 パンケース8はイースト、各種材料及び水の全てを収納し、その状態でパン
材料の混練、発酵及び焼成が行われ、
5 オーブンケース3の側面に取り付けられた温度センサが接続されているマイ
クロコンピュータの制御により、スタートキー操作時点において温度センサが摂氏
38度以上を検出した場合には、Knead/Riseランプを点滅、その他ラン
プを点灯し、また、動作開始後に温度センサが摂氏60度以上を検出した場合に
は、製パン完了時に、Bakeランプを点滅、その他ランプを点灯し、
7 スタートキーの操作により直ちに、パンケース8に入れられているイース
ト、各種材料及び水を、混練羽根16の回転力により混練する製パン工程を開始す
る。この混練動作開始時には、モータ4の回転について、マイクロコンピュータ
は、モータ回路のスイッチを、電源周波数の16サイクルを1ブロックとし、この
16サイクル中複数サイクル間接続、それより長いサイクル間切断というタイミン
グで繰り返して開閉(オン・オフ)するという制御を行うが、この制御は75秒間
継続し、75秒経過後は速度を5秒周期で高低に変化させてモータ4を20周期間
連続回転する。

物 件 目 録 4 (二号物件)
 被告製造に係るHB400シリーズ(HB‐401P、HB‐416P、HB‐
415、HB‐420K、HB‐420T、HBC‐420C、HB‐417P、
HB‐402P、HB‐427P、HBD410、HBD416、HBS401、
HBS403)の製パン器
一 図面の説明
第1図は、上記製パン器の一部を破断して示す正面図である。
第2図は、上記製パン器の平面図であり、(a)は上面にのぞき窓を有するも
の、(b)はのぞき窓を有しないもの(HB‐401P、HBS401のみ)を示
す。
第3図は、上記製パン器(窓付きのもの)の斜視図である。
二 符号の説明
1 ケーシング
3オーブンケース
4モータ
6操作パネル
8パンケース
11 ヒータ
13回転軸
16混練羽根
三 構成の説明
1 パンケース8内にイースト、各種材料及び水を入れて使用する物であり、こ
れらに対する混練(混ねつ)発酵及び焼成の工程が自動化されており、
2 ケーシング1内にはモータ4によって回転駆動される縦姿勢の回転軸13が備
えられており、右回転軸の上端には、混練羽根16が着脱自在に取り付けられてお
り、
3 ケーシング1表面に設けられた操作パネル6は、製パン時間等を表示する表
示パネルと、予約タイマー設定用のタイマーキーと、製パン動作開始を指示するス
タートキーとを備え、
4 パンケース8はイースト、各種材料及び水の全てを収納し、その状態でパン
材料の混練、発酵及び焼成が行われ、
  また、ケーシング1内にタイマー機能を有するマイクロコンピュータを備
え、これにより混練、発酵および焼成の工程の時間制御が行われ、
5 オーブンケース3の側面に取り付けられた温度センサが接続されているマイク
ロコンピュータの制御により、スタートキー操作時点において温度センサが摂氏3
8度以上を検出した場合には表示パネルにE:01を表示し、また、動作開始後に
温度センサが摂氏60度以上を検出した場合には表示パネルにH:H0を表示し、
7 スタートキーの操作により直ちに、あるいはタイマー設定時にはスタートキー
操作後、設定で定まる時間の経過時に、パンケース8に入れられているイースト、
各種材料及び水を、混練羽根16の回転力により混練する製パン工程を開始する。こ
の混練動作開始時には、モータ4の回転について、マイクロコンピュータは、モー
タ回路のスイッチを、電源周波数の16サイクルを1ブロックとし、この16サイ
クル中複数サイクル間接続、それより長いサイクル間切断というタイミングで繰り
返して開閉(オン・オフ)するという制御を行うが、この制御は75秒もしくは9
0秒間継続し、75秒もしくは90秒経過後は速度を5秒周期で高低に変化させて
モータ4を20周期間連続回転する(ただし、HBD410、HBD416、HB
S401及びHBS403においては、75秒もしくは90秒経過後は常に接続状
態とする。)。

物 件 目 録 5 (ホ号物件)
 被告製造販売に係るHB500シリーズ(HB‐520、HB‐515、HB‐
515P、HB‐520P、HBC520C、HB‐515W、HB‐525P)
の製パン器
一 図面の説明
 第1図は、上記製パン器の一部を破断して示す正面図である。
第2図は、上記製パン器の平面図である。
第3図は、上記製パン器の斜視図である。
二符号の説明
1ケーシング
3オーブンケース
4モータ
6操作パネル
8パンケース
11 ヒータ
13回転軸
16混練羽根
三 構成の説明
1 パンケース8内にイースト、各種材料及び水を入れて使用する物であり、こ
れらに対する混練(混ねつ)発酵及び焼成の工程が自動化されており、
2 ケーシング1内にはモータ4によって回転駆動される縦姿勢の回転軸13が備
えられており、右回転軸の上端には、混練羽根16が着脱自在に取り付けられてお
り、
3 ケーシング1表面に設けられた操作パネル6は、製パン時間等を表示する表
示パネルと、予約タイマー設定用のタイマーキーと、製パン動作開始を指示するス
タートキーとを備え、
4 パンケース8はイースト、各種材料及び水の全てを収納し、その状態でパン
材料の混練、発酵及び焼成が行われ、
  また、ケーシング1内にタイマー機能を有するマイクロコンピュータを備
え、これにより混練、発酵および焼成の工程の時間制御が行われ、
5 オーブンケース3の側面に取り付けられた温度センサが接続されているマイ
クロコンピュータの制御により、スタートキー操作時点において温度センサが摂氏
38度以上を検出した場合には表示パネルにE:01を表示し、また、動作開始後
に温度センサが摂氏60度以上を検出した場合には表示パネルにH:H0を表示
し、
7 スタートキーの操作により直ちに、あるいはタイマー設定時にはスタートキ
ー操作後、設定で定まる時間の経過時に、パンケース8に入れられているイース
ト、各種材料及び水を、混練羽根16の回転力により混練する製パン工程を開始す
る。この混練動作開始時には、モータ4の回転について、マイクロコンピュータ
は、モータ回路のスイッチを、電源周波数の16サイクルを1ブロックとし、この
16サイクル中複数サイクル間接続、それより長いサイクル間切断というタイミン
グで繰り返して開閉(オン・オフ)するという制御を行うが、この制御は75秒間
継続し、75秒経過後は速度を5秒周期で高低に変化させてモータ4を20周期間
連続回転する。

物 件 目 録 6 (ヘ号物件)
 被告製造販売に係るHB700シリーズ(HBD710、HBD715、HBD
715M、HB-317S、HB-327S)の製パン器
一 図面の説明
 第1図は、上記製パン器の一部を破断して示す正面図である。
第2図は、上記製パン器の平面図である。
第3図は、上記製パン器の斜視図である。
二符号の説明
1ケーシング
3オーブンケース
4モータ
6操作パネル
8パンケース
11 ヒータ
13回転軸
16混練羽根
三 構成の説明
1 パンケース8内にイースト、各種材料及び水を入れて使用する物であり、こ
れらに対する混練(混ねつ)発酵及び焼成の工程が自動化されており、
2 ケーシング1内にはモータ4によって回転駆動される縦姿勢の回転軸13が備
えられており、右回転軸の上端には、混練羽根16が着脱自在に取り付けられてお
り、
3 ケーシング1表面に設けられた操作パネル6は、製パン時間等を表示する表
示パネルと、予約タイマー設定用のタイマーキーと、製パン動作開始を指示するス
タートキーとを備え、
4 パンケース8はイースト、各種材料及び水の全てを収納し、その状態でパン
材料の混練、発酵及び焼成が行われ、
  また、ケーシング1内にタイマー機能を有するマイクロコンピュータを備
え、これにより混練、発酵および焼成の工程の時間制御が行われ、
5 オーブンケース3の側面に取り付けられた温度センサが接続されているマイ
クロコンピュータの制御により、スタートキー操作時点において温度センサが摂氏
38度以上を検出した場合には表示パネルにE:01を表示し、また、動作開始後
に温度センサが摂氏60度以上を検出した場合には表示パネルにH:H0を表示
し、
7 スタートキーの操作により直ちに、あるいはタイマー設定時にはスタートキ
ー操作後、設定で定まる時間の経過時に、パンケース8に入れられているイース
ト、各種材料及び水を、混練羽根16の回転力により混練する製パン工程を開始す
る。この混練動作開始時には、モータ4の回転について、マイクロコンピュータ
は、モータ回路のスイッチを、電源周波数の16サイクルを1ブロックとし、この
16サイクル中複数サイクル間接続、それより長いサイクル間切断というタイミン
グで繰り返して開閉(オン・オフ)するという制御を行うが、この制御は90秒間
継続し、90秒経過後は常に接続状態とする。

物 件 目 録 7-(1) (ト(1)号物件)
 被告製造販売に係るHB800シリーズのタイマー付き(HB-716R、HB
C716R、HB-715R、HBC715R、HBR716R、HBH810、
HBH815)の製パン器
一 図面の説明
 第1図は、上記製パン器の一部を破断して示す正面図である。
第2図は、上記製パン器の平面図である。
第3図は、上記製パン器の斜視図である。
二符号の説明
1ケーシング
3オーブンケース
4モータ
6操作パネル
8パンケース
11 ヒータ
13回転軸
16混練羽根
三 構成の説明
1 パンケース8内にイースト、各種材料及び水を入れて使用する物であり、こ
れらに対する混練(混ねつ)発酵及び焼成の工程が自動化されており、
2 ケーシング1内にはモータ4によって回転駆動される縦姿勢の回転軸13が備
えられており、右回転軸の上端には、混練羽根16が着脱自在に取り付けられてお
り、
3 ケーシング1表面に設けられた操作パネル6は、製パン時間等を表示する表
示パネルと、予約タイマー設定用のタイマーキーと、製パン動作開始を指示するス
タートキーとを備え、
4 パンケース8はイースト、各種材料及び水の全てを収納し、その状態でパン
材料の混練、発酵及び焼成が行われ、
  また、ケーシング1内にタイマー機能を有するマイクロコンピュータを備
え、これにより混練、発酵および焼成の工程の時間制御が行われ、
5 オーブンケース3の側面に取り付けられた温度センサが接続されているマイ
クロコンピュータの制御により、スタートキー操作時点において温度センサが摂氏
38度以上を検出した場合には表示パネルにE:01を表示し、また、動作開始後
に温度センサが摂氏60度以上を検出した場合には表示パネルにH:H0を表示
し、
7 スタートキーの操作により直ちに、あるいはタイマー設定時にはスタートキ
ー操作後、設定で定まる時間の経過時に、パンケース8に入れられているイース
ト、各種材料及び水を、混練羽根16の回転力により混練する製パン工程を開始す
る。この混練動作開始時には、モータ4の回転について、マイクロコンピュータ
は、モータ回路のスイッチを、電源周波数の16サイクルを1ブロックとし、この
16サイクル中複数サイクル間接続、それより長いサイクル間切断というタイミン
グで繰り返して開閉(オン・オフ)するという制御を行うが、この制御は90秒間
継続し、90秒経過後は常に接続状態とする。

物 件 目 録 7-(2) (ト(2)号物件)
 被告製造販売に係るHB800シリーズのタイマーなし(HB-711R)の製
パン器
一 図面の説明
 第1図は、上記製パン器の一部を破断して示す正面図である。
第2図は、上記製パン器の平面図である。
第3図は、上記製パン器の斜視図である。
二符号の説明
1ケーシング
3オーブンケース
4モータ
6操作パネル
8パンケース
11 ヒータ
13回転軸
16混練羽根
三 構成の説明
1 パンケース8内にイースト、各種材料及び水を入れて使用する物であり、こ
れらに対する混練(混ねつ)発酵及び焼成の工程が自動化されており、
2 ケーシング1内にはモータ4によって回転駆動される縦姿勢の回転軸13が備
えられており、右回転軸の上端には、混練羽根16が着脱自在に取り付けられてお
り、
3 ケーシング1表面に設けられた操作パネル6は、製パン時間等を表示する表
示パネルと、製パン動作開始を指示するスタートキーとを備え、
4 パンケース8はイースト、各種材料及び水の全てを収納し、その状態でパン
材料の混練、発酵及び焼成が行われ、
5 オーブンケース3の側面に取り付けられた温度センサが接続されているマイ
クロコンピュータの制御により、スタートキー操作時点において温度センサが摂氏
38度以上を検出した場合には、Knead/Riseランプを点滅、その他ラン
プを点灯し、また、動作開始後に温度センサが摂氏60度以上を検出した場合に
は、製パン完了時に、Bakeランプを点滅、その他ランプを点灯し、
7 スタートキーの操作により直ちに、パンケース8に入れられているイース
ト、各種材料及び水を、混練羽根16の回転力により混練する製パン工程を開始す
る。この混練動作開始時には、モータ4の回転について、マイクロコンピュータ
は、モータ回路のスイッチを、電源周波数の16サイクルを1ブロックとし、この
16サイクル中複数サイクル間接続、それより長いサイクル間切断というタイミン
グで繰り返して開閉(オン・オフ)するという制御を行うが、この制御は90秒間
継続し、90秒経過後は常に接続状態とする。

物 件 目 録 8 (チ号物件)
 被告製造販売に係るHB900シリーズ(HBH915、HBI915)の製パ
ン器
一 図面の説明
 第1図は、上記製パン器の一部を破断して示す正面図である。
第2図は、上記製パン器の平面図である。
第3図は、上記製パン器の斜視図である。
二符号の説明
1ケーシング
3オーブンケース
4モータ
6操作パネル
8パンケース
11 ヒータ
13回転軸
16混練羽根
三 構成の説明
1 パンケース8内にイースト、各種材料及び水を入れて使用する物であり、こ
れらに対する混練(混ねつ)発酵及び焼成の工程が自動化されており、
2 ケーシング1内にはモータ4によって回転駆動される縦姿勢の回転軸13が備
えられており、右回転軸の上端には、混練羽根16が着脱自在に取り付けられてお
り、
3 ケーシング1表面に設けられた操作パネル6は、製パン時間等を表示する表
示パネルと、予約タイマー設定用のタイマーキーと、製パン動作開始を指示するス
タートキーとを備え、
4 パンケース8はイースト、各種材料及び水の全てを収納し、その状態でパン
材料の混練、発酵及び焼成が行われ、
  また、ケーシング1内にタイマー機能を有するマイクロコンピュータを備
え、これにより混練、発酵および焼成の工程の時間制御が行われ、
5 オーブンケース3の側面に取り付けられた温度センサが接続されているマイ
クロコンピュータの制御により、スタートキー操作時点において温度センサが摂氏
38度以上を検出した場合には表示パネルにE:01を表示し、また、動作開始後
に温度センサが摂氏60度以上を検出した場合には表示パネルにH:H0を表示
し、
7 スタートキーの操作により直ちに、あるいはタイマー設定時にはスタートキ
ー操作後、設定で定まる時間の経過時に、パンケース8に入れられているイース
ト、各種材料及び水を、混練羽根16の回転力により混練する製パン工程を開始す
る。この混練動作開始時には、モータ4の回転について、マイクロコンピュータ
は、モータ回路のスイッチを、電源周波数の16サイクルを1ブロックとし、この
16サイクル中複数サイクル間接続、それより長いサイクル間切断というタイミン
グで140秒間、140秒経過後は8サイクル間接続、8サイクル間切断というタ
イミングで10秒間、150秒経過後は複数サイクル間接続、それより長いサイク
ル間切断というタイミングで20秒間と複数サイクル間接続、それより短いサイク
ル間切断というタイミングで10秒間を10回繰り返して300秒間、それぞれ開
閉するという制御を行う。

物 件 目 録 A (A号物件)
 被告製造販売に係る以下の特徴を備えた製パン器
一 図面の説明
  第1図は、こね容器と製パン器の斜視図である。
第2図は、上記製パン器の平面図である。
第3図は、こね容器の取手の取付部の拡大斜視図である。
二 符号の説明
 1 ケーシング
 3 オーブンケース
 8 パンケース
 15 取手
三 構造の説明
 1 パンケース8内にイースト、各種材料及び水を入れて使用する物であり、こ
れらに対する混練(混ねつ)発酵及び焼成の工程が自動化されており、
2 ケーシング1内にはモータ4によって回転駆動される縦姿勢の回転軸13が備
えられており、右回転軸の上端には、混練羽根16が着脱自在に取り付けられてお
り、
3 ケーシング1に対して、バヨネット結合で取り外し自在に結合されるパンケ
ース8の上端開口部にはフランジ部が形成してあり、フランジ部の中心対称の2位
置には平行な2条の切れ込みを入れてその中間の部分を上方に向けて山形に曲成し
て、切起こし部を形成してあり、両切起こし部の下側に、金属条材からなり、略U
字状をなし、両端部が外側に屈曲されてなる取手15の前記両端部のそれぞれを挿通
係合させてなる取手構造を備えている。

図1図2
別表1別表2別表3

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採用情報


弁護士 求人 採用
弁護士募集(経験者 司法修習生)
激動の時代に
今後の弁護士業界はどうなっていくのでしょうか。 もはや、東京では弁護士が過剰であり、すでに仕事がない弁護士が多数います。
ベテランで優秀な弁護士も、営業が苦手な先生は食べていけない、そういう時代が既に到来しています。
「コツコツ真面目に仕事をすれば、お客が来る。」といった考え方は残念ながら通用しません。
仕事がない弁護士は無力です。
弁護士は仕事がなければ経験もできず、能力も発揮できないからです。
ではどうしたらよいのでしょうか。
答えは、弁護士業もサービス業であるという原点に立ち返ることです。
我々は、クライアントの信頼に応えることが最重要と考え、そのために努力していきたいと思います。 弁護士数の増加、市民のニーズの多様化に応えるべく、従来の法律事務所と違ったアプローチを模索しております。
今まで培ったノウハウを共有し、さらなる発展をともに目指したいと思います。
興味がおありの弁護士の方、司法修習生の方、お気軽にご連絡下さい。 事務所を見学頂き、ゆっくりお話ししましょう。

応募資格
司法修習生
すでに経験を有する弁護士
なお、地方での勤務を希望する先生も歓迎します。
また、勤務弁護士ではなく、経費共同も可能です。

学歴、年齢、性別、成績等で評価はしません。
従いまして、司法試験での成績、司法研修所での成績等の書類は不要です。

詳細は、面談の上、決定させてください。

独立支援
独立を考えている弁護士を支援します。
条件は以下のとおりです。
お気軽にお問い合わせ下さい。
◎1年目の経費無料(場所代、コピー代、ファックス代等)
◎秘書等の支援可能
◎事務所の名称は自由に選択可能
◎業務に関する質問等可能
◎事務所事件の共同受任可

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メールまたはお電話でご連絡ください。
残り応募人数(2019年5月1日現在)
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