弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件各上告を棄却する。
         理    由
 弁護人山根二郎、同石川博光、同古瀬駿介、同葉山岳夫、同富永赳夫、同栗山和
也、同山崎素男、同兼田俊男の上告趣意第一は、原判決のどの部分がいかなる理由
で憲法のいずれの条項に違反するかの具体的指摘を欠く違憲主張であり、同第二の
一は、原判決の認定と異なる事実関係を前提とする憲法三七条、三一条違反の主張
及び単なる法令違反、事実誤認の主張であり、同第二の二は、控訴趣意として適法
な主張がなく原審の判断を経ていない事項に関する憲法三七条、三一条違反の主張
及び単なる法令違反、事実誤認の主張であり、同第三は、弁論の分離併合は受訴裁
判所の裁量に属するものであつて、第一審における本件併合審理の範囲、程度は相
当であるとした原判断に誤りは認められないから、この点で前提を欠く憲法三七条、
三一条違反の主張及び単なる法令違反、事実誤認、量刑不当の主張であり、同第四
は、原判決の判断の一部について憲法三二条、三七条、八二条違反があるとするの
みでなんら具体的理由を付さない主張であつて、いずれも刑訴法四〇五条の上告理
由にあたらない。
 なお、所論は、本件の審判につき司法行政の支配介入があつたとして縷々述べる
ところがあるが、職権により調査するに、その指摘にかかる最高裁判所長官の談話
は、記者会見における個人的な所感の表明にすぎず、東京地方裁判所長のとつた措
置は、本件第一審の審理における法廷の異常な様相にかんがみ、担当弁護人等の言
動について、各所属弁護士会に対し善処方を要望し、又は懲戒を請求するためのも
のであり、また、最高裁判所事務総長が日本弁護士連合会会長宛に所論各文書を送
付したのは、同連合会から弁護人等の法廷における態度等を調査する目的で資料要
求がなされたのに応じ、東京地方裁判所から徴した報告書を取次いだだけのことで
あつて、いずれも具体的事件の審判とは無関係のものであり、司法行政上の監督権
の行使でもないのである。また、所論指摘の裁定合議委員会は、古く昭和二十七年
以来、東京地方裁判所裁判官会議の決議によつて、裁定合議事件の公正な事務分配
を期するために設置されて現在に至つているものであるところ、裁判所における事
務分配は、当該裁判所の固有の行政事務に属するものであつて、同委員会がその責
務を果すうえには、所論の併合案の作成及びそれに必要な事前の調査は、同委員会
の当然の職務とするところである。したがつて、所長代行裁判官が構成員の一人と
してこれに参画したこともまた、当然の職務の執行であり、いささかも異とするに
足りない。以上の諸事実その他所論にいう事実をもつて、裁判に対する司法行政の
支配介入であるという所論は、独自の見解にたつて原判決を論難するものであり、
まつたくいわれがない。また、所論が予断排除原則違反である旨非難する点につい
ては、もともと、司法行政事務がほかならぬ裁判官会議の議によつて行われること
とされている法制のもとでは、裁判官において事務分配その他の司法行政の運営上
必要な関係資料を入手すべきことは当然予想されているのであるから、それによつ
て、係属中の事件につきその審判にあたる裁判官がたまたまなんらかの知識を得る
こととなつても、なんら事件に関していわゆる予断を抱いたこととなるものではな
く、この理は本件の場合にも同様であり、所論非難はまつたく理由がない。
 よつて、刑訴法四一四条、三八六条一項三号により、裁判官全員一致の意見で、
主文のとおり決定する。
  昭和四九年七月一八日
     最高裁判所第一小法廷
         裁判長裁判官    岸   上   康   夫
            裁判官    大   隅   健 一 郎
            裁判官    藤   林   益   三
            裁判官    下   田   武   三
            裁判官    岸       盛   一

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