弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件上告を棄却する。
     上告費用は上告人らの負担とする。
         理    由
 上告代理人波多野義熊の上告理由第一点について。
 所論は、被上告人は原審において上告人A1に対しては選択的に本件土地の明渡
を求めているにすぎず、又上告人A2株式会社(以下単に上告人A2と略す。)に
対しては右土地の明渡を求めていないにも拘らず、原判決は被上告人の右両請求を
認容して民訴一八六条に違反した違法がある旨主張するものである。しかし本件記
録に徴するに、原審第二回口頭弁論期日において、双方代理人は原判決(第一審判
決)事実摘示のとおり第一審口頭弁論の結果を陳述しており、その原判決事実摘示
欄には被上告人(原告)は上告人(被告)A1および同A2に対しても、本件土地
の明渡を求める旨の記載があるので、被上告人は原審において右の如く請求を拡張
したものと解されるところ、控訴審における請求の拡張は請求の基礎に変更がない
場合は勿論、たとえ請求の基礎に変更があつても、相手方が異議なく応訴した場合
は、許されるべきであり(最高裁判所昭和二八年(オ)第六三二号、同二九年六月
八日第三小法廷判決、民集八巻六号一〇三七頁参照)、また右請求の拡張について
の書面の提出または送達の欠缺は責問権の喪失によつて治癒されるものと解すべき
ものであつて(最高裁判所昭和二七年(オ)第二八号、同三一年六月一九日第三小
法廷判決、民集一〇巻六号六六五頁参照)、本件記録によれば、上告人らは右両点
について異議なく応訴していることが認められるから、この点について所論の違法
は存しない。原判決には所論の違法はなく、論旨は採るを得ない。
 同第二点について。
 所論は、原判決が上告人(控訴人)A1および同A2について、同人らの土地、
建物に対する占有関係がそれぞれ被上告人(被控訴人)主張のとおりであることは
当事者間に争いがない旨判示したことに対し、右は当事者間に争いある事実を争い
なきものと認定した違法があると非難するものである。しかし上告人らが第一審に
おいて陳述した答弁書によれば、上告人A1は本件土地上において上告人A3の製
材事業を代行しているものであり又上告人A2も同様である旨の記載があり、右記
載と原審第七回口頭弁論調書の記載とを綜合して考察すれば、上告人A1、同A2
は上告人A3の占有代理人として被上告人主張の本件土地、建物を占有しているこ
とは、これを争う趣旨でないことと解せられないことはない。従つて原審が前述の
如く判示したことに何ら所論の違法は存せず、論旨は採るを得ない。
 よつて民訴四〇一条、九五条、八九条、九三条に従い、裁判官全員の一致で主文
のとおり判決する。
     最高裁判所第二小法廷
         裁判長裁判官    奥   野   健   一
            裁判官    山   田   作 之 助
            裁判官    城   戸   芳   彦
            裁判官    石   田   和   外

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