弁護士法人ITJ法律事務所

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平成26年(あ)第959号
住居侵入,強盗殺人,銃砲刀剣類所持等取締法違反被告事件
平成28年3月8日第三小法廷判決
主文
本件上告を棄却する。
理由
弁護人山本彰宏,同山田恵太の上告趣意のうち,死刑制度に関して憲法31条,
36条違反をいう点は,死刑制度が憲法のこれらの規定に違反しないことは当裁判
所の判例(最高裁昭和22年(れ)第119号同23年3月12日大法廷判決・刑
集2巻3号191頁,最高裁昭和26年(れ)第2518号同30年4月6日大法
廷判決・刑集9巻4号663頁,最高裁昭和32年(あ)第2247号同36年7
月19日大法廷判決・刑集15巻7号1106頁)とするところであるから,理由
がなく,その余は,憲法違反をいう点を含め,実質は単なる法令違反,事実誤認,
量刑不当の主張であって,刑訴法405条の上告理由に当たらない。
なお,所論に鑑み記録を調査しても,刑訴法411条を適用すべきものとは認め
られない。
付言すると,本件は,職に就くことなく,家賃滞納のため借家を明け渡さざるを
得なくなり,妻と車上生活を送っていた被告人が,就職して勤務先から住宅購入資
金が借りられることになったなどと妻に嘘を重ねた結果,多額の金員を手に入れる
必要に迫られた挙げ句,民家に押し入って金品を強奪しようと計画するとともに,
家人に騒がれたときには殺害もやむを得ないなどと考え,あらかじめペティナイフ
等を準備した上,早朝,福島県内の民家に侵入し,財布を窃取した後,起床してき
た夫婦(夫Aは当時55歳,妻Bは当時56歳)の頸部,頭部等を同ナイフで多数
回突き刺すなどして殺害し,金品を強奪した,という被殺者2名の強盗殺人等の事
案である。
甚だ浅慮かつ身勝手に近隣の民家を襲って強盗殺人に及んだ動機に酌むべき点は
ない。被告人は,起床してきたAと対峙し,ひるまない同人に当初こそ未必的であ
ったものの,その後は強固な殺意をもってペティナイフで頸部,頭部等を攻撃し続
け,重傷を負ってふらついている同人のうなじを更に突き刺し,とどめを刺した。
なおも金員を強奪するため,Bに対し,側頭部を同ナイフで突き刺すなどしてキャ
ッシュカード等の暗証番号を聞き出し,同女が救急車を呼ぶよう再三懇願するのも
無視し,頸部を突き刺している。いずれの被害者に対しても,めった刺しにして,
その場で殺害しており,犯行態様は非情かつ残酷である。
そうすると,被告人の刑事責任は,極めて重大であるといわざるを得ず,被告人
が遺族らに謝罪し,反省の態度を示していること,前科がないことなど,被告人の
ために酌むべき事情を十分考慮しても,その刑事責任は極めて重大であり,原判決
が維持した第1審判決の死刑の科刑は,当裁判所もこれを是認せざるを得ない。
よって,刑訴法414条,396条,181条1項ただし書により,裁判官全員
一致の意見で,主文のとおり判決する。
検察官河瀬由美子公判出席
(裁判長裁判官木内道祥裁判官岡部喜代子裁判官大谷剛彦裁判官
大橋正春裁判官山崎敏充)

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