弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     原判決を破棄する。
     本件を大阪高等裁判所に差し戻す。
         理    由
 弁護人中谷鉄也の上告趣意は単なる法令違反の主張であつて、刑訴四〇五条の上
告理由に当らない。しかし職権をもつて所論本件控訴申立書の適否の点につき調査
するに、原判決説示のごとく、本件記録編綴の控訴申立書はA(同人は被告人Bの
長男であることが記録上認められる)の作成名義であるが、右申立書においては、
被告人を表示するにあたり、真実の被告人のBであるにかかわらず「被告人A」と
記載されており、またAの名下の押印は原審弁護人選任届等の被告人Bの名下の押
印と同一であると認められ、更に記録によれば、被告人Bは自ら原審弁護人を選任
し、自ら原審公判廷に出頭しているのであつて、被告人に控訴審の審理を受ける意
思があることを推測し得る。これらの事実を併せ考えれば、右申立書に「A」とあ
るのは「B」の誤記であつて右申立書は被告人Bの提出したものであるかも知れな
い。しかるに、原審はこの点につき審理することなく、右申立書がA名義であるの
一事をもつて、直ちに本件控訴申立を不適法として控訴棄却の判決をしたことは、
審理不尽の違法があり、刑訴四一一条一号に当るものといわなければならない。
 よつて、刑訴四一一条、四一三条により、裁判官全員一致の意見で主文のとおり
判決する。
 本件公判には検察官福原忠男が出席した。
  昭和二七年一二月二五日
     最高裁判所第一小法廷
         裁判長裁判官    入   江   俊   郎
            裁判官    真   野       毅
            裁判官    斎   藤   悠   輔
            裁判官    岩   松   三   郎

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