弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     原判決中被告人Aに対する部分を破棄する。
     原判決の判示第九の(ロ)の罪につき被告人Aを免訴する。
     被告人Aを懲役五月及び罰金一千円に処する。
     右罰金を完納することができないときは金二百円を一日に換算した期間
同被告人を労役場に留置する。
     被告人B、同C、同Dの各上告を棄却する。
         理    由
 被告人B、同Cの弁護人加藤博隆の上告趣意第一点について。
 しかし、住居侵入罪と強盗罪とは、その被害法益と構成要件とを異にする各別独
立の犯罪行為であるから、人の家宅に侵入して強盗を行う場合においても、その侵
入行為そのものが強盗罪を構成する手段その他の要素に属するものではない。され
ば、強盗の方法たる家宅侵入は強盗に吸収包含されるものとして原判決の擬律錯誤
を主張する所論は是認し難い。
 同第二点について。
 原判決挙示の証拠によれば、原判示第二(イ)の横領の事実認定を肯認すること
ができる。所論は、原判決の採用しない証拠に基き原判決が適法になした事実の認
定を非難するに帰し、採用できない。
 同第三点について。
 原判決は、挙示の証拠に基き、原判示第二(ロ)の恐喝の事実を認定したもので
あつて、その判示によれば、恐喝罪を構成すること多言を要しない。そして、金員
を出したものが二人連であり、受取つた被告人が一人であるからといつて、恐喝罪
を否定する理由がなく、また、持金の中から四十円を相手に返還している点は、原
判決の認定しないところであるばかりでなく、仮りにかかる事実があつたとしても
判示恐喝罪を認めることが常識上できないものでもない。されば、本論旨も採用で
きない。
 同第四点について。
 しかし、原判決の第五の判示、就中被告人Cが被害者の身体検査をして脅迫畏怖
させた点等から見ると、原判決の判示には恐喝罪の判示として不備又は齟齬を認め
ることはできない。所論は、原判決の認定しない事実に基き原判決の認定を非難す
るに帰し、これまた採用し難い。
 被告人Dの弁護人渋谷正俊の上告趣意第一点について。
 しかし、原判決原本の判示第八の判示によれば、賍物牙保の判示として欠くとこ
ろあるを認めることはできない。所論は、原判決の謄本の誤記等を捉えて原判示を
非難するに帰し、採用できない。
 同第二点について。
 しかし、原判決のように罰金二千円不完納の場合の労役場留置期間の割合を一日
金二五円と定めたからといつて、憲法一四条に違反するといえないこと当裁判所大
法廷の判例(判例集三巻一〇号一六四六頁以下参照)の趣旨とするところであるか
ら、所論は採用し難い。
 被告人Aの弁護人梅山実明、同沢登定雄の各上告趣意について。
 所論は、いずれも原判決の量刑を非難するに帰し、上告適法の理由と認め難い。
 しかし、職権を以て調査すると被告人Aに対する原判示第九の併合罪中同(ロ)
の物価統制令三三条、三条違反の罪は原判決があつた後昭和二七年政令一一七号大
赦令により大赦があつたので、旧刑訴四三四条二項、四三九条、四一五条、四四七
条、四四八条、四五五条、三六三条三号に則り、主文一、二項のとおう破棄免訴し
同(イ)の罪につき更に判決すべきものと認める。
 よつて、原判決の確定した右(イ)の所為につき法令を適用すると同被告人の該
所為は、刑法二五六条二項に該当するから、同条項所定の刑期、金額の範囲内で同
被告人を主文三項の刑に処し右罰金を完納することができないときは刑法一八条に
従い主文四項のとおり労役場に留置すべきものとする。
 また、爾余の被告人については前記のごとくいずれも上告理由なきを以て旧刑訴
四四六条に従い、裁判官全員一致の意見で主文のとおり判決する。
 検察官 長部謹吾関与
  昭和二七年一二月一一日
     最高裁判所第一小法廷
         裁判長裁判官    岩   松   三   郎
            裁判官    真   野       毅
            裁判官    斎   藤   悠   輔
 裁判官 沢田竹治郎退官につき署名押印ができない。
         裁判長裁判官    岩   松   三   郎

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