弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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主文
1本件控訴及び本件附帯控訴をいずれも棄却する。
2控訴費用は控訴人の負担とし,附帯控訴費用は被控訴人の負担とする。
事実及び理由
第1当事者の求めた裁判
1控訴の趣旨
(1)原判決中,控訴人の敗訴部分を取り消す。
(2)上記取消部分に係る被控訴人の請求を棄却する。
2附帯控訴の趣旨
原判決を次のとおり変更する。
控訴人はa組合以下本件組合というに対し2億5441万円,(「」。),
及びこれに対する平成7年2月7日から支払済みまで年5分の割合による金員
を支払え。
第2事案の概要
1事案の要旨
本件は,新潟市(旧新潟県豊栄市)の住民である被控訴人が,地方公共団体
(旧新潟県豊栄市)の一部事務組合である本件組合が控訴人との間で締結した
ごみ処理施設増設工事請負契約は,控訴人を含む入札参加業者らが談合した結
果,入札は不調に終わり,最低入札金額を提示した控訴人との間の随意契約に
より締結されたものであり,本件組合は,これにより談合がなければ形成され
たであろう適正価格と契約代金額との差額相当額の損害を被ったから,控訴人
に対し不法行為に基づく損害賠償請求権を有しているにもかかわらず,その行
使を違法に怠っていると主張して,平成14年法律第4号による改正前の地方
(「」。),自治法以下単に地方自治法という242条の2第1項4号に基づき
本件組合に代位して,控訴人に対し,損害賠償として2億5441万円及び遅
延損害金を本件組合に支払うよう求めた住民訴訟の事案である。
原審は,被控訴人の請求を4892万5000円及び遅延損害金の支払を求
める限度で認容したところ,控訴人が請求全部の棄却を求めて控訴を提起し,
被控訴人も請求全部の認容を求めて附帯控訴を提起した。
2当事者の主張等
前提事実,争点及びこれに関する当事者の主張は,次のとおり原判決を補正
するほかは,原判決の「事実及び理由」中の「第2事案の概要」の2ないし
4に記載のとおりであるから,これを引用する。
(1)10頁14行目の次に,改行して次のとおり加える。
「担当審判官は,平成18年3月28日付けで,本件5社に対し,遅くと
も平成6年4月以降行っていた地方公共団体が指名競争入札,一般競争入札
又は指名見積り合わせの方法により発注する全連続燃焼式及び准連続燃焼式
ストーカ炉の新設,更新及び増設工事について,受注予定者を決定し,受注
予定者が受注できるようにしていた行為を,平成10年9月17日以降行っ
ていないことを確認しなければならないことなどを命ずる審決案(第二次審
決案)を作成し,本件5社に送達した。これに対し,本件5社は,異議を申
,,,,,し立て公正取引委員会は平成18年6月27日本件5社は共同して
地方公共団体発注の全連続燃焼式及び准連続燃焼式ストーカ炉の新設,更新
及び増設工事について,受注予定者を決定し,受注予定者が受注できるよう
にすることにより,公共の利益に反して,上記工事の取引分野における競争
を実質的に制限していたものであって,これは独占禁止法2条6項に規定す
る不当な取引制限に該当し,同法3条の規定に違反するものであるとして,
第二次審決案の主文と同様の主文の審決をした(甲ア64の1及び2」。)
(2)14頁12行目の「明らかにしていない」の次に「控訴人は,控訴審に。
(,,),おいて積算根拠を説明するとして証拠乙404243を提出したが
これらの証拠の信憑性は定かではない上,原価の積算根拠については何ら明
らかにされていないから,これをもって談合を否定する根拠とすることはで
きない」を加える。。
(3)15頁6行目から9行目を削除する。
(4)15頁23行目末尾になお本件指名競争入札における控訴人の各入札「,
額の積算根拠等は次のとおりである。すなわち,まず最初に,原価の積算を
,,,行った結果原価が24億1200万円と算出されたためこの原価に対し
目標利益率を10パーセントとして計算した26億8000万円で入札する
こととし,入札担当者は,最大で利益率5パーセント程度,金額にして1億
3000万円まで減額してよいとの社内決裁を得て入札に臨んだが,1億3
000万円減額した25億5000万円で入札した3回目の入札も不調に終
わり,最低金額で入札した控訴人の担当者だけが入札会場に残って,本件組
合と随意契約交渉に移ることとなり,担当者は入札会場から退席することを
一切許されず,上司等と打ち合わせをすることも許されないまま,本件組合
の主導により24億7000万円で契約したものである(乙40,42,4
3」を加える。)。
第3当裁判所の判断
当裁判所も,被控訴人の請求は,原判決が認容した限度で理由があるが,そ
の余は理由がないと判断する。その理由は,次のとおり原判決を補正するほか
は,原判決の「事実及び理由」中の「第3当裁判所の判断」1ないし3に説
示するとおりであるから,これを引用する。
133頁2行目の次に,改行して次のとおり加える。
「なお,控訴人は,bにはごみ焼却炉のような高額の案件についての決定権限
はないから,この点からも,bが独断で受注調整をしたなどということはあり
えないと主張するしかしbは前記本件会合の内容原判決23頁末行。,,「」(
から24頁20行目)記載の本件5社間の合意に基づいて,その範囲で受注調
整を行っていたのであり,bは,本件b供述において,どの工事の受注を希望
するかについて,bが独断で決定していたとは供述していないから,控訴人の
上記主張は採用することができない」を加える。。
233頁20行目の次に,改行して次のとおり加える。
「(ウ)調書を閲読していない旨の主張について
控訴人は,本件b供述に係る調書は,bに閲読をさせずに署名指印させた
もので,bの供述内容を正確に記載したものではないと主張し,bは,否認
に転じた後は,本件b供述に関し,審査官に話した内容や審査官から読み聞
かされた内容については記憶がない,供述調書の内容を良く理解しないまま
署名指印したなどと供述する(甲サ166,168ないし170,175,
182ないし189乙30しかし本件b供述に係る調書はbが審,)。,,,
査官から内容について読み聞かされた後,署名指印したものであって,閲読
をしていないからといって,そのことだけから調書に信用性がないとはいえ
ない上,勤務先会社が談合をしたとの嫌疑をかけられて,公正取引委員会か
ら立入検査が実施された当日に,審査官から受けた事情聴取の内容について
記憶がないなどということはおよそ考えられず,bは,上記のとおり取調後
に上司や弁護士に取調内容を報告していることに照らしても,bの上記供述
は信用することができない。したがって,控訴人の上記主張は採用すること
ができない。
(エ)他の関係者の反対趣旨の供述の存在ついて
控訴人は,本件b供述は,bを除く本件会合の出席者とされる者全員及び
その他の関係者並びにc及びdが,受注調整(談合)の事実を明確に否定し
ている事実(甲サ33,104,105及び139,乙14,15,16の
1・2,17の1・2,24,25)に反すると主張する。しかし,これら
の証拠は,前記引用に係る原判決の「事実及び理由」中の「第3当裁判所
の判断」1(1)の冒頭に掲記の各証拠並びに同(2)のア及びイに記載の各証拠
に照らして信用することができないから,これをもって本件b供述の信用性
を否定し,前記認定を覆すことはできない」。
334頁23行目から24行目にかけての「口頭弁論終結に至るまで全く明ら
かにしていないこと」を「原審口頭弁論終結に至るまで全く明らかにせず,当
審において,積算根拠を説明するとして提出した証拠(乙40,42,43)
は,社内の決裁過程について説明をするにとどまり,各入札金額の積算根拠及
びその合理性を認めるに足りるものではないこと」に改める。
437頁7行目の次に,改行して次のとおり加える。
「被控訴人は,公正取引委員会は,そのホームページで公表している改正独占
禁止法のQ&Aにおいて,過去の違反事例について実証的に不当利得を推計し
たところ,平均16.5パーセント程度,約9割の事件で8パーセント以上の
不当利得が存在するという結果が得られたとしている(甲ア57)ところ,本
件における落札率は,予定価格の約99.6パーセントと極めて高い割合であ
り,本件談合による損害額が,前記推計平均値16.5パーセントを大きく下
回るものと認めるべき事情は存しないから,本件において本件組合が被った損
害額は本件契約金額の10パーセントを超えると主張する。しかし,上記推計
値は,工事の種類・規模・内容,契約時期,契約金額等の異なる違反事例を単
純に平均した結果であり,各事例の不当利得推計の具体的な根拠等は明らかで
はなく,上記推計値を根拠に,本件組合が被った損害の額が10パーセントを
超えると推認することはできない」。
538頁5行目の次に,改行して次のとおり加える。
「控訴人は,地方自治法242条の2第1項の「怠る事実」が認められるか
否かの判断の基準時は,遅くとも,同法242条1項の住民監査請求に対する
判断がされた時であるとし,その理由として,住民監査請求に対する判断が下
された時点で考慮されていなかった事由により「怠る事実」が存在すると判断
されるとすると,実質的にみて,監査委員による監査が行われていなかったに
等しく,地方自治法の趣旨に反することになると主張する。しかしながら,同
法242条の2の住民訴訟は,住民監査請求に対する監査委員の判断の当否を
審査・判断するものではないから,住民監査請求に対する判断がされた時を基
「」,,準時として怠る事実の存否を判断しなければならないものではなくまた
同法242条の2は,普通地方公共団体の住民は,住民監査請求をした場合に
おいて,これに対する監査委員の監査の結果等に不服があるとき等に同法24
2条の2第1項所定の住民訴訟を提起することができることを規定するにとど
まり,その監査の結果が通知された後に「怠る事実」の存否の判断を基礎づけ
る事情に変更が生じたときには再度の住民監査請求を経なければならないとす
る趣旨はうかがうことができないから,控訴人の上記主張は採用することがで
きない。
また,控訴人は,現時点における違反行為の存否や違反行為者の故意・過失
等の明白性,違反行為の立証のために独自に有する資料の有無,民法709条
に基づく損害賠償請求権と独占禁止法25条に基づく損害賠償請求権との立証
,,責任の軽重敗訴のリスク及び諸費用の負担等の諸要素を総合的に考慮すれば
公正取引委員会の審決の確定を待って独占禁止法25条に基づく損害賠償請求
権を行使するという本件組合管理者の判断は,合理的裁量の範囲内にあり,公
正取引委員会の審決の確定を待たずに,民法709条に基づく損害賠償請求権
の行使を義務づけることは,地方公共団体の第一次的判断権を侵害する結果と
なると主張する。しかしながら,民法709条に基づく損害賠償請求権と独占
禁止法25条に基づく損害賠償請求権のいずれを行使するかについて,地方公
共団体の長に第一次的判断権があるとの法令上の根拠はないから,控訴人の上
記主張は前提を欠くものであり,採用することができない」。
第4結論
以上によれば,被控訴人の請求は原判決が認容した限度で理由があるからそ
の限度で認容し,その余の請求は理由がないから棄却すべきであり,これと同
旨の原判決は相当であって,控訴人の本件控訴及び被控訴人の附帯控訴はいず
れも理由がないから,これを棄却することとする。
東京高等裁判所第12民事部
裁判長裁判官柳田幸三
裁判官田中治
裁判官白石史子

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