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令和2年10月14日判決言渡同日原本領収裁判所書記官
令和元年(ワ)第26106号損害賠償請求事件
口頭弁論終結日令和2年8月21日
判決
原告X
同訴訟代理人弁護士本田知之
大熊一毅
荻野貴史
被告Y
同訴訟代理人弁護士山本隆司
主文
1原告の請求をいずれも棄却する。
2訴訟費用は原告の負担とする。15
事実及び理由
第1請求
1被告は,原告に対し,1892万円及びこれに対する令和元年5月1日から支
払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
2被告は,別紙1作品目録「うるせぇトリ」欄記載の各画像を使用した商品を作20
成,販売してはならない。
3被告は,前項記載の各画像の電子データを廃棄せよ。
4被告は,第2項記載の各画像を使用した商品を廃棄せよ。
5訴訟費用は被告の負担とする。
6仮執行宣言25
第2事案の概要
1本件は,原告が,被告に対し,被告が制作したキャラクターの画像を用いた「L
INE」のスタンプやグッズを販売する行為が,原告の制作した漫画に係る原告
の著作権(複製権・翻案権,公衆送信権及び譲渡権)並びに著作者人格権(氏名
表示権及び同一性保持権)を侵害するなどと主張して,著作権法112条1項に
基づき,別紙1作品目録の「うるせぇトリ」欄記載の画像を使用した上記スタン5
プ等の商品の作成,販売の差止めを,同条2項に基づき,上記画像及び商品の廃
棄を求めるとともに,民法709条,著作権法114条2項に基づき,損害賠償
として1892万円及びこれに対する不法行為の日である令和元年5月6日か
ら支払済みまで民法(平成29年法律第44条による改正前)所定の年5分の割
合による遅延損害金の支払を求める事案である。10
2前提事実(当事者間に争いのない事実又は文中掲記した証拠及び弁論の全趣旨
により認定することができる事実)
(1)原告は,平成16年11月から株式会社リクルートホールディングスの発行
する雑誌「FromA」(以下「本件雑誌」という。)に連載された漫画「M
r.BEAK」(以下「原告漫画」という。)の作者である。15
原告漫画には,その作品名と同名のキャラクター(以下「原告キャラクター」
という。)が登場するところ,原告漫画が本件雑誌に初めて掲載された際の原
告キャラクター(以下「原著作物」という。)は,別紙2として添付する甲1
の左上のコマ等に記載のものである。
原告は,その後,別紙1作品目録の「Mr.BEAK」欄記載の各イラスト20
(以下,同目録の「No」欄記載の番号又は同欄記載の各イラスト左上に付さ
れた番号に従い「原告作品1」又は「原告作品1-1」などといい,原著作物
と併せて「原告作品」という。)のうち,原告作品4を除く各作品を,別紙3
公表日等一覧表の「公表日」欄記載の年月日に公表した。(甲1,2,5~7。
ただし,原告作品5-2の公表日は不明。なお,原告作品1-2,4,9~125
1,15-2及び17については,これらが公表された作品であるか否かにつ
き争いがあるところ,このうち,甲15-2については,後記判示のとおり,
公表したものと認められる。また,原告作品4については公表した証拠がなく,
原告作品1-2,9-1,9-2,10,11及び17については,後記判示
のとおり,その全体ではなく一部を公表しているものと認められる。)。
(2)被告は,mame&coのペンネームで「うるせぇトリ」と題するキャラク5
ター(以下「被告キャラクター」という。)を用いた別紙1作品目録の「うる
せぇトリ」欄記載の各イラスト(以下,同目録「No」欄記載の番号又は同欄
記載の各イラスト左上に付された番号に従い「被告作品1」又は「被告作品1
-1」などといい,併せて「被告作品」という。)の作者である。
被告は,LINE株式会社が運営するSNSプラットフォーム「LINE」10
において,被告作品を「クリエイターズスタンプ」として販売するほか,被告
作品を使用した様々なグッズを販売している。
3争点
(1)被告作品が原告作品の複製又は翻案に当たるか(争点1)
(2)原告の損害額(争点2)15
第3争点に関する当事者の主張
1争点1(被告作品が原告作品の複製又は翻案に当たるか)について
(原告の主張)
被告作品は,原告作品に依拠して作成されたものであり,その表現上の特徴部
分に原告作品との同一性が認められ,原告作品の表現上の本質的特徴を感得する20
ことができるから,原告作品の複製又は翻案に当たる。
(1)原告作品に共通する表現上の特徴
原著作物が具備し,これを含む原告作品に共通する表現上の特徴は,①頭部
に髪を描かずに頭部を半楕円形で描いている点,②目部分を描くに当たり白目
部分を捨象して黒点のみで描いている点,③くちばしは厚く描きつつ,くちば25
しと肌の色を明確に区別できるように描いている点,④顔部分と下半身部分と
を明確に区別をせずに描写している点,⑤胴体部分に比して極端に手足を短く
表現している点(以下,それぞれを符号に従い「特徴①」などという。)にあ
り,特徴①~⑤を組み合わせて選択した点に創作性がある。
(2)被告作品と原告作品の同一性
ア被告作品も特徴①~⑤を全て具備しており,この点で原告作品と同一性を5
有する。
仮に,この点に係る被告の主張を踏まえても,以下のとおり,原告作品の
表現上の本質的特徴を被告作品から感得できるから,原告作品と被告作品に
は表現上の同一性が認められる。
(ア)原告作品の頭部の特徴を,ほとんど平らで扁平な半楕円形で描いている10
ことにあると捉えたとしても,被告作品も頭部をほとんど平らで扁平な半
楕円形で描いていると評価できるから,表現上の同一性が認められる。
(イ)原告作品と被告作品の両目の離れ方は異なるが,原告作品を特徴付けて
いるのは,白目部分を捨象して黒点のみで描いた点にあるから,両目の離
れ方は,非本質部分である。15
(ウ)原告作品と被告作品とで,顔全体に占めるくちばしの大きさに差異はあ
るが,両者は特徴③が共通することに加え,顔中央部分に楕円形上にくち
ばしを描いている点で共通している。
(エ)原告作品と被告作品は,胴体部分に比して手足が極端に短く描かれてい
る点(特徴⑤)で共通しており,手足の長さの差異は,原告作品と被告作20
品に触れる者の印象を左右する程のものではない。
イそれぞれの被告作品を原告作品と対比すると,前記ア記載の同一性に加え,
別紙5主張対比表の「原告の主張」欄に記載のとおり,表現上の同一性が認
められる。
なお,原告作品1-2,9-1,9-2,10,11及び17が公表され25
たものと認められない場合には,これらの代わりに別紙4の1~6に記載の
ものを原告作品として主張する。
(3)被告作品の依拠性
原告作品は本件雑誌に掲載され,本件雑誌はコンビニエンスストアや書店で
広く販売されていたから,被告が原告作品に接する機会はあった。そして,被
告作品と原告作品には,偶然の一致とは考えられない同一性が認められるから,5
被告作品は,原告作品に依拠して作成されたものである。
(4)したがって,被告作品は,原告作品の複製又は翻案に当たる。
よって,被告が被告作品を用いたクリエイターズスタンプや様々なグッズを
販売する行為は,原告の著作権(複製権・翻案権,公衆送信権及び譲渡権)並
びに著作者人格権(氏名表示権及び同一性保持権)を侵害する。10
(被告の主張)
被告が原告作品に接したことはなく,また,原告作品と被告作品に共通する部
分があるとしても,アイデアや創作性がない部分が共通するにすぎず,被告作品
から原告作品の表現上の本質的特徴を感得することはできないから,被告作品は,
原告作品の複製にも翻案にも当たらない。15
(1)原告作品に共通する表現上の特徴について
原告作品において,その頭部を特徴付けているのは,頭髪がないことと,頭
頂部がジンベイザメのように,ほとんど平らで扁平なことにあり,目を特徴付
けているのは,両目が顔幅に対して端から15%という極端に左右に離れた位
置にある点である。20
また,そもそも原告キャラクターは宇宙人であって鳥をモチーフにしたもの
ではないところ,口を特徴付けているのは,それをくちばしというかは別にし
ても,口がほとんど顔の幅一杯に広がり,唇が厚く同じ厚さで広がっているこ
と(いわゆる「たらこ口」)にあり,手足は長くはないが極端に短いわけでは
なく,足が少し短いにとどまる(別紙2(甲1)左列4コマ目のイラストでは,25
手は人並みに体長の33%の長さがあり,足は体長の19%の長さがある。)。
そうすると,原告作品に共通する表現上の特徴は,①’頭部に髪を描かずに
頭部を頭頂部がほとんど平らで扁平な半楕円形で描いている点,②’目部分を
黒点のみで描き,両目を顔の両極端に配している点,③’口を厚くほとんど顔
の幅一杯まで描くとともに,口と肌の色を明確に区別できるように描いている
点,④’顔部分と下半身部分とを明確に区別をせずに描写している点(特徴④5
と同じ),⑤’胴体部分に比して足を少し短く表現している点(以下,それぞ
れを符号に従い「特徴①’」などという。)の組合せにあるというべきである。
(2)被告作品と原告作品の同一性について
ア原告作品に共通する特徴を被告作品と対比すると,被告作品は,以下のと
おり,原告作品の表現上の特徴①’~⑤’の表現の組合せを欠いている結果,10
原告作品とは一見して全く別物の印象を与えており,原告作品と被告作品と
の間に,表現上の特徴における同一性は存在しない。また,原告作品と被告
作品の共通部分は,ありふれた表現にすぎない。
(ア)特徴①’については,被告作品は,頭部に髪を描かない点で原告作品と
共通するが,別紙6「対比キャラクター」を見れば明らかなとおり,原告15
作品のように擬人化されたキャラクターのイラストにおいては,頭部に髪
を描かないのはありふれた表現である。
一方,原告作品は,頭頂部がほとんど平らで扁平な半楕円形であるのに
対し,被告作品では,頭部がきれいな半円形で描かれている点で異なる。
(イ)特徴②’については,被告作品は,目部分を黒点のみで描く点では共通20
するが,これは,別紙6のとおり,擬人化されたキャラクターにおいては
ありふれた表現であり,原告の個性的な表現ではない。
一方,原告作品は,両目を顔の両極端に配しているのに対し,被告作品
は,両目を顔のずっと内側に配している点で異なる。
(ウ)特徴③’については,被告作品は,口と肌の色を明確に区別できるよう25
に描かれた点では原告作品と共通するが,別紙6のとおり,口をたらこ口
に描くことや口と肌の色を明確に区別できるように描くことは,ありふれ
た表現である。
一方,原告作品は,口を厚くほとんど顔の幅一杯まで描くのに対し,被
告作品は,まさに「くちばし」状に端を薄く中央が厚い形で描いている点
で異なる。5
(エ)特徴④については,原告作品と被告作品は共通するが,これも,別紙6
のとおり,擬人化されたキャラクターにおいてはありふれた表現である。
(オ)特徴⑤’については,被告作品は,足を短く描いている点では原告作品
と共通するが,これも,別紙6のとおり,擬人化されたキャラクターにお
いてはありふれた表現である。10
一方,原告作品は足を少し短く描いているのに対し,被告作品は,例え
ば被告作品3において,手が体長の9%,足が体長の6%の長さであるな
ど,手足をほとんど点のように極端に短く描く点で異なる。
(カ)以上のとおり,原告作品と被告作品の共通部分は,別紙6「対比キャラ
クター」を見れば明らかなとおり,ありふれた表現であり,特徴①’~⑤’15
の組合せの見地からみても,原告作品は,目が黒目のみで描かれている点
(特徴②’)及び口がたらこ口である点を除けば,漫画「銀魂」に登場す
る「宇宙生物エリザベス」(以下「エリザベス」という。)と同一の表現
上の特徴を有する。
エリザベス原告作品(原著作物)
また,原告が原告作品の本質的特徴と主張する点はアイデアにすぎず,
しかも,人が日常生活においてするありふれた表情やポーズにすぎないの
で,このような表情やポーズをしている点で共通するとしても,表現にお
ける同一性を基礎付けるものではない。
イそもそも,原告作品1-2,4,9-1,9-2,10,11,15-25
及び17は,公表されたものとは認められないが,それぞれの被告作品を原
告作品と対比すると,別紙5主張対比表の「被告の主張」欄に記載のとおり,
表現上の同一性は認められない。
(3)依拠性について
本件雑誌は求人誌であって,求職中の者しか手に取らず,被告がこれに接し10
たことはない。擬人化されたキャラクターは,人のする様々な表情や状況等に
取材して作成されるのであるから,ともに擬人化されたキャラクターを描く原
告作品及び被告作品の構図や表情,状況等が類似するのは当然であり,被告が
原告作品を模倣したことを意味しない。
(4)したがって,被告作品は,原告作品の複製にも翻案にも当たらない。15
2争点2(原告の損害額)
(原告の主張)
原告は,被告の侵害行為により,以下のとおり,合計1892万円の損害を受
けた。
(1)著作権侵害に基づく損害額1620万円20
被告は,現在までの間に,少なくとも,被告作品を用いたクリエイターズス
タンプを静止画27セット,動画9セット販売しており,その推定ダウンロー
ド数は1セット当たり1万回を下らない。同クリエイターズスタンプのダウン
ロード価格は,1セット当たり静止画が120円,動画が240円であり,そ
の利益率は約30%と考えられる。25
したがって,被告は,同クリエイターズスタンプの販売により,少なくとも
1620万円の利益を得ているから,著作権法114条2項により推定される
損害の額は同額となる。
(算式)
(120円×27セット+240円×9セット)×10,000セット×30%=16,200,000円
(2)著作者人格権侵害に基づく損害額100万円5
(3)弁護士費用172万円
(被告の主張)
争う。
第4当裁判所の判断
1争点1(被告作品が原告作品の複製又は翻案に当たるか)について10
(1)複製とは,印刷,写真,複写,録音,録画その他の方法により有形的に再製
することをいい(著作権法2条1項15号参照),既存の著作物に依拠し,こ
れと同一のものを作成し,又は,具体的表現に修正,増減,変更等を加えても,
新たに思想又は感情を創作的に表現することなく,その表現上の本質的な特徴
の同一性を維持し,これに接する者が既存の著作物の表現上の本質的な特徴を15
直接感得することのできるものを作成する行為をいうと解される。
また,翻案(著作権法27条)とは,既存の著作物に依拠し,かつ,その表
現上の本質的な特徴の同一性を維持しつつ,具体的表現に修正,増減,変更等
を加えて,新たに思想又は感情を創作的に表現することにより,これに接する
者が既存の著作物の表現上の本質的な特徴を直接感得することのできる別の20
著作物を創作する行為をいう(最高裁平成11年(受)第922号同13年6
月28日第一小法廷判決・民集55巻4号837頁参照)。
そして,著作権法は,思想又は感情の創作的な表現を保護するものであるか
ら(同法2条1項1号参照),既存の著作物に依拠して作成又は創作された著
作物が,思想,感情若しくはアイデア,事実若しくは事件など表現それ自体で25
ない部分又は表現上の創作性がない部分において,既存の著作物と同一性を有
するにすぎない場合には,複製にも翻案にも当たらないというべきである。
そこで,これらを踏まえて,被告作品が原告作品の複製ないし翻案に当たる
か否かについて,以下検討する。
(2)原告作品全体の創作性及び被告作品全体との対比について
ア証拠(甲1,2,5~7)によれば,原告の原著作物(別紙2)に描かれ5
た原告キャラクターは,頭部は髪がなく半楕円形であり,目は小さい黒点で
顔の外側に広く離して配され,上下に分かれたくちばし部分はいずれも厚く
オレンジ色であり,上下のくちばしから構成される口は横に大きく広がり,
体は黄色く,顔部分と下半身部分との明確な区別はなく寸胴であり,手足は
先細の棒状であるとの特徴を有しており,原告作品においては,原告キャラ10
クターのこれらの特徴の全部又は一部が表現されているものと認められる。
イ証拠(乙1)及び別紙6「対比キャラクター」を含む弁論の全趣旨によれ
ば,原告作品に描かれた原告キャラクターの上記特徴のうち,キャラクター
の髪を描かず,頭部を半楕円形で描く点は同別紙の「エリザベス」及び「タ
キシードサム」と,目を小さい黒点のみで描く点は同別紙の「タキシードサ15
ム」,「アフロ犬」,「ハローキティ」,「にゃんにゃんにゃんこ」及び「ラ
イトン」と,口唇部分を全体的に厚く,口を横に大きく描く点は同別紙の「お
ばけのQ太郎」と,顔部分と下半身部分とを明確に区別をせずに寸胴に描き,
手足は手首・足首を描かずに先細の棒状に描く点は同別紙の「おばけのQ太
郎」及び「エリザベス」(ただし,いずれも手の部分)と共通し,いずれも,20
擬人化したキャラクターの漫画・イラスト等においては,ありふれた表現で
あると認められる。
ウそうすると,原告作品は,上記の特徴を組み合わせて表現した点にその創
作性があるものと認められるものの,原告作品に描かれているような単純化
されたキャラクターが,人が日常的にする表情をし,又はポーズをとる様子25
を描く場合,その表現の幅が限定されることからすると,原告作品が著作物
として保護される範囲も,このような原告作品の内容・性質等に照らし,狭
い範囲にとどまるものというべきである。
(3)被告作品が原告作品の複製又は翻案に当たるか否かについて
上記(2)を踏まえ,被告作品が原告作品の複製又は翻案に当たるか否かにつ
いて,作品ごとに以下検討する。5
ア被告作品1について
(ア)被告作品1-1について
a原告作品1-1と被告作品1-1との対比
原告作品1-1と被告作品1-1とを対比すると,両作品は,ほぼ正
面を向いて立つキャラクターにつき,目を黒点のみで描いている点,く10
ちばしと肌の色を明確に区別できるように描いている点,顔部分と下半
身部分とを明確に区別せずに描いている点,胴体部分に比して手足を短
く描いている点のほか,黒色パーマ様の髪が描かれている点において共
通するが,黒色パーマ様の髪型を描くこと自体はアイデアにすぎない上,
その余の共通点は,いずれも擬人化されたキャラクターにおいてはあり15
ふれた表現であると認められる。
他方,両作品については,原告作品1-1では,キャラクターの体色
が黄色で,両目が小さめの黒点のみで顔の外側付近に広く離して描かれ,
上下のくちばしはオレンジ色で,たらこのように厚く描かれているのに
対し,被告作品1-1では,キャラクターの体色は白色で,両目がより20
顔の中心に近い位置に,多少大きめの黒点で描かれ,上下のくちばしは
黄色で原告キャラクターに比べると厚みが薄く,横幅も狭く描かれてい
るなどの相違点がある(以下,これを「作品に共通する相違点」という。)。
加えて,原告作品1-1では,キャラクターが,いわゆるおばさんパ
ーマ状の髪型(毛量は体の約5分の1程度で,への字型の形状をし,眉25
毛も見えている。)をして,口を開け,左手を上下に大きく振りながら,
表情豊かに相手に話しかけているかのような様子が表現されているの
に対し,被告作品1-1では,いわゆるアフロヘアー風のこんもりとし
た髪がキャラクターの体全体の半分程度を占めるなど,その髪型が強調
され,キャラクターの表情や手足の描写にはさしたる特徴がないなどの
相違点があり,その具体的な表現は大きく異なっている。5
以上のとおり,両作品は,アイデア又はありふれた表現において共通
するにすぎず,具体的な表現においても上記のとおりの相違点があるこ
とにも照らすと,被告作品1-1から原告作品1-1の本質的特徴を感
得することはできないというべきである。
したがって,被告作品1-1は,原告作品1-1の複製にも翻案にも10
当たらない。
b原告作品1-2と被告作品1-1との対比
原告作品1-2については,イラスト全体が公表されたと認めるに足
りる証拠はなく,公表されたのはその一部が吹き出しや他のキャラクタ
ーで隠された別紙4の1(甲5・2枚目)記載のもの(以下「原告作品15
1-2’」という。)と認められる(甲7)。
原告作品1-2’は,両足と左手が描かれていない点,振っているの
が右手である点,右目から涙を流している点において原告作品1-1と
異なるのみであり,上記aと同様の理由から,被告作品1-1は,原告
作品1-2’の複製にも翻案にも当たらないというべきである。20
(イ)被告作品1-2について
被告作品1-2は,そのキャラクターの両手を上方に上げている点で被
告作品1-1と異なるのみであり,上記(ア)と同様の理由から,被告作品
1-2は,原告作品1-1・2’の複製にも翻案にも当たらないというべ
きである。25
(ウ)原告の主張について
原告は,本来髪が生えていないキャラクターにアフロヘアー(こんもり
ヘアー)を描いている点に原告作品1の本質的特徴があり,この点で被告
作品1-1・2と同一であると主張する。
しかし,本来髪が生えていないキャラクターにアフロヘアー又はパーマ
状の髪を描くことはアイデアにすぎない上,両作品には具体的な表現とし5
ても上記のとおりの相違点があることに照らすと,被告作品1-1・2が
原告作品1の複製ないし翻案であるということはできない。
イ被告作品2について
(ア)被告作品2-1について
a原告作品2-1と被告作品2-1との対比10
原告作品2-1と被告作品2-1とを対比すると,両作品は,頭部が
半楕円形で髪がない点,目を黒点のみで描いている点,くちばしと肌の
色を明確に区別できるように描いている点,顔部分と下半身部分とを明
確に区別をせずに描いている点,胴体部分に比して手を短く描いている
点のほか,サツマイモを食べている点において共通するが,キャラクタ15
ーがサツマイモを食べている様子を描くこと自体はアイデアにすぎな
い上,その余の共通点は,いずれも擬人化されたキャラクターにおいて
はありふれた表現であると認められる。
他方,両作品には,作品に共通する相違点があるほか,原告作品2-
1では,キャラクターが赤い座布団状の敷物に座りながら,サツマイモ20
を半分口にくわえたままの状態で左を向き,両手には本を持っている様
子が表現されているのに対し,被告作品2-1では,上半身のみ描かれ
たキャラクターが,サツマイモを右手に持ち,口の周りにその食べ滓を
付けたまま,上下のくちばしを大きく開けて,威嚇するかのように「う
るせぇ!!芋ぶつけんぞ」と叫んでいる様子が表現されているなどの相25
違点があり,その具体的な表現は大きく異なっている。
以上のとおり,両作品は,アイデア又はありふれた表現において共通
するにすぎず,具体的な表現においても上記のとおりの相違点があるこ
とにも照らすと,被告作品2-1から原告作品2-1の本質的特徴を感
得することはできないというべきである。
したがって,被告作品2-1は,原告作品2-1の複製にも翻案にも5
当たらない。
b原告作品2-2と被告作品2-1との対比
原告作品2-2と被告作品2-1とを対比すると,両作品は,前記a
と同様の点に加え,口の周りにサツマイモの食べ滓を付けている点にお
いて共通するが,キャラクターがサツマイモを食べている様子及びその10
食べ滓を口の周りに付けている様子を描くこと自体はアイデアにすぎ
ない上,その余の共通点は,いずれも擬人化されたキャラクターにおい
てはありふれた表現であると認められる。
他方,両作品には,作品に共通する相違点のほか,原告作品2-2で
は,左頬を膨らませたキャラクターが赤い座布団状の敷物に座りながら,15
半分食べたサツマイモを左手で抱きかかえ,右手で本のようなものを持
って相手に示している様子が表現されているのに対し,被告作品2-1
では,上記のとおり,上半身のみ描かれたキャラクターが,サツマイモ
を右手に持ち,口の周りにその食べ滓を複数付けたまま,上下のくちば
しを大きく開けて,威嚇するかのように「うるせぇ!!芋ぶつけんぞ」20
と叫んでいる様子が表現されているなどの相違点があり,その具体的な
表現は大きく異なっている。
以上のとおり,両作品は,アイデア又はありふれた表現において共通
するにすぎず,具体的な表現においても上記のとおりの相違点があるこ
とにも照らすと,被告作品2-1から原告作品2-2の本質的特徴を感25
得することはできないというべきである。
したがって,被告作品2-1は,原告作品2-2の複製にも翻案にも
当たらない。
(イ)被告作品2-2について
a原告作品2-1と被告作品2-2との対比
原告作品2-1と被告作品2-2とを対比すると,両作品は,前記(ア)5
aと同様の点において共通するが,キャラクターがサツマイモを食べて
いる様子を描くこと自体はアイデアにすぎない上,その余の共通点は,
いずれも擬人化されたキャラクターにおいてはありふれた表現である
と認められる。
他方,両作品には,作品に共通する相違点のほか,原告作品2-1で10
は,上記のとおり,キャラクターが赤い座布団状の敷物に座りながら,
サツマイモを半分口にくわえたままの状態で左を向き,両手には本を持
っている様子が表現されているのに対し,被告作品2-2では,上半身
のみ描かれたキャラクターが,サツマイモを両手に持ち,右手に持った
サツマイモを夢中になって食べている様子が「ハムハムハムハム」15
という擬音とともに表現されているなどの相違点があり,その具体的な
表現は大きく異なっている。
以上のとおり,両作品は,アイデア又はありふれた表現において共通
するにすぎず,具体的な表現においても上記のとおりの相違点があるこ
とにも照らすと,被告作品2-2から原告作品2-1の本質的特徴を感20
得することはできないというべきである。
したがって,被告作品2-2は,原告作品2-1の複製にも翻案にも
当たらない。
b原告作品2-2と被告作品2-2との対比
原告作品2-2と被告作品2-2とを対比すると,両作品は,前記(ア)25
aと同様の点で共通するが,キャラクターがサツマイモを食べている様
子を描くこと自体はアイデアにすぎない上,その余の共通点は,いずれ
も擬人化されたキャラクターにおいてはありふれた表現であると認め
られる。
他方,両作品には,作品に共通する相違点のほか,原告作品2-2で
は,左頬を膨らませたキャラクターが赤い座布団状の敷物に座りながら,5
半分食べたサツマイモを左手で抱きかかえ,右手で本のようなものを持
って相手に示している様子が表現されているのに対し,被告作品2-2
では,上半身のみ描かれたキャラクターが,サツマイモを両手に持ち,
右手に持ったサツマイモを夢中になって食べている様子が「ハムハム
ハムハム」という擬音とともに表現されているなどの相違点があり,10
その具体的な表現は大きく異なっている。
以上のとおり,両作品は,アイデア又はありふれた表現において共通
するにすぎず,具体的な表現においても上記のとおりの相違点があるこ
とにも照らすと,被告作品2-2から原告作品2-2の本質的特徴を感
得することはできないというべきである。15
したがって,被告作品2-2は,原告作品2-2の複製にも翻案にも
当たらない。
(ウ)原告の主張について
原告は,原告作品2-1・2と被告作品2-1・2は,無数にある食べ
物の中からあえてサツマイモを選択し,キャラクターがこれを食べている20
様子を描いたという表現上の本質的部分が一致していると主張するが,キ
ャラクターがサツマイモを食べる様子を描くというのはアイデアにすぎ
ない。
また,原告は,原告作品2-1・2と被告作品2-1・2では,上部の
欠けたサツマイモを手に持ちつつ,左頬をやや膨らませることにより口に25
含んでいることを表現している点や,口の周りにサツマイモの食べ滓が付
いている点において,その表現が共通するなどと主張するが,サツマイモ
を食べている様子を描くに当たり,対象となる食べ物の一部が欠け,頬が
食べ物で膨らみ,又は食べ滓が頬に付いている様子を描くことは,漫画や
イラストではありふれたことである。
加えて,両作品の具体的な表現は,前記判示のとおり,キャラクターが5
サツマイモを保持する部分,サツマイモの数,キャラクターが本を持って
いるかどうか,キャラクターの姿勢及び表情,食べ滓が付いている位置な
どにおいて大きく異なっていることに照らすと,被告作品2-1・2が原
告作品2―1・2の複製又は翻案に当たるということはできないというべ
きである。10
ウ被告作品3について
(ア)原告作品3-1と被告作品3との対比
原告作品3-1(原告作品2-1と同じ。)と被告作品3を対比すると,
両作品は,頭部が半楕円形で髪がない点,目を黒点のみで描いている点,
くちばしと肌の色を明確に区別できるように描いている点,顔部分と下半15
身部分とを明確に区別をせずに描いている点,胴体部分に比して手を短く
描いている点のほか,サツマイモを食べている点において共通するが,キ
ャラクターがサツマイモを食べている様子を描くこと自体はアイデアに
すぎない上,その余の共通点は,いずれも擬人化されたキャラクターにお
いてはありふれた表現であると認められる。20
他方,両作品には,作品に共通する相違点のほか,原告作品3-1では,
キャラクターが赤い座布団状の敷物に座りながら,サツマイモを半分口に
くわえたままの状態で左を向き,両手には本を持っている様子が表現され
ているのに対し,被告作品3では,立った姿勢で正面を向いたキャラクタ
ーが,左頬を膨らませ,「お疲れ様芋くう?」と言いながら,左手に持25
った食べかけのサツマイモを相手に差し出している様子が表現されてい
るなどの相違点があり,その具体的な表現は大きく異なっている。
以上のとおり,両作品は,アイデア又はありふれた表現において共通す
るにすぎず,具体的な表現においても上記のとおりの相違点があることに
も照らすと,被告作品3から原告作品3-1の本質的特徴を感得すること
はできないというべきである。5
したがって,被告作品3は,原告作品3-1の複製にも翻案にも当たら
ない。
(イ)原告作品3-2と被告作品3との対比
原告作品3-2と被告作品3とを対比すると,両作品は,頭部が半楕円
形で髪がない点,目を黒点のみで描いている点,くちばしと肌の色を明確10
に区別できるように描いている点,顔部分と下半身部分とを明確に区別を
せずに描いている点,胴体部分に比して手を短く描いている点のほか,頬
を膨らませて物を食べている様子を描いている点において共通するが,こ
れらの共通点は,いずれも擬人化されたキャラクターにおいてはありふれ
た表現であると認められる。15
他方,両作品には,作品に共通する相違点のほか,原告作品3-2では,
上半身のみを描かれたキャラクターが,左手で料理の入った赤い皿を抱え,
右手にフォーク様の物の先を口の中に入れ,両頬を膨らませながら料理を
食べている様子が表現され,体全体の横幅も広く描いているのに対し,被
告作品3では,上記のとおり,立った姿勢で全身を描かれたキャラクター20
が,左頬を膨らませ,「お疲れ様芋くう?」と言いながら,左手に持っ
た食べかけのサツマイモを相手に差し出している様子が表現されている
などの相違点があり,その具体的な表現は大きく異なっている。
以上のとおり,両作品は,アイデア又はありふれた表現において共通す
るにすぎず,具体的な表現においても上記のとおりの相違点があることに25
も照らすと,被告作品3から原告作品3-2の本質的特徴を感得すること
はできないというべきである。
したがって,被告作品3は,原告作品3-2の複製にも翻案にも当たら
ない。
(ウ)原告の主張について
原告は,原告作品3-1につき,無数にある食べ物の中であえてサツマ5
イモを選択している点に本質的特徴があり,これと被告作品3が一致する
と主張するが,これは両作品がアイデアにおいて共通するにすぎない。
また,原告は,被告作品3-2と被告作品3の左頬がいずれも曲線で膨
らむように描かれており,その曲線の角度もほぼ同一である点,左頬の膨
らんだ部分に食べ滓を2個付している点,食べ滓の大きさも同一である点10
で共通すると主張するが,物を食べている様子を描くに当たり,頬が食べ
物で膨らみ又は頬に食べ滓が付いた様子を描くことは,漫画やイラストで
はありふれたことである。
加えて,原告作品3-1・2と被告作品3の具体的な表現は,前記判示
のとおり,原告作品3-1については,キャラクターがサツマイモを保持15
する部分,キャラクターが本を持っているかどうか,キャラクターの姿勢
及び表情等において,また,原告作品3-2については,キャラクターが
保持している食べ物,フォーク様の物や皿の有無,キャラクターの体型,
姿勢,表情等において,それぞれ大きく異なっていることに照らすと,被
告作品3が原告作品3-1・2の複製又は翻案に当たるということはでき20
ないというべきである。
エ被告作品4について
原告作品4が公表されたことを認めるに足りる証拠はないが,念のために
以下検討する。
(ア)被告作品4-1について25
原告作品4と被告作品4-1とを対比すると,両作品は,くちばしと肌
の色を明確に区別できるように描いている点,胴体部分に比して手足を短
く描いている点,キャラクターが横向きである点のほか,頭髪がいわゆる
リーゼントヘアーである点において共通するが,いわゆるリーゼントヘア
ーの頭髪を描くこと自体はアイデアにすぎない上,その余の共通点は,い
ずれも擬人化されたキャラクターにおいてはありふれた表現であると認5
められる。
他方,両作品には,作品に共通する相違点のほか,原告作品4では,茶
色の髪をしたキャラクターが赤い上着とズボンを着用し,黄色い椅子に座
って,口を開けて楽しそうに笑いながら,机上に置かれたパソコン用の機
器の画面を見ている様子が表現されているのに対し,被告作品4-1では,10
黒色の髪をした着衣のないキャラクターが,床に座ってタバコを手に持ち,
「フー」という擬音とともに,ため息をつくような表情をしながら口をす
ぼめて煙様のものを吐き出している様子が表現されているなどの相違点
があり,その具体的な表現は大きく異なっている。
以上のとおり,両作品は,アイデア又はありふれた表現において共通す15
るにすぎず,具体的な表現においても上記のとおりの相違点があることに
も照らすと,被告作品4-1から原告作品4の本質的特徴を感得すること
はできないというべきである。
したがって,被告作品4-1は,原告作品4の複製にも翻案にも当たら
ない。20
(イ)被告作品4-2について
原告作品4と被告作品4-2とを対比すると,両作品は,くちばしと肌
の色を明確に区別できるように描いている点,キャラクターが横向きであ
る点のほか,頭髪がいわゆるリーゼントヘアーである点において共通する
が,いわゆるリーゼントヘアーの頭髪を描くこと自体はアイデアにすぎな25
い上,その余の共通点は,いずれも擬人化されたキャラクターにおいては
ありふれた表現であると認められる。
他方,両作品には,作品に共通する相違点のほか,原告作品4では,上
記のとおり,茶色の髪をしたキャラクターが赤い上着とズボンを着用し,
黄色い椅子に座って,口を開けて楽しそうに笑いながら,机上に置かれた
パソコン用の機器の画面を見ている様子が表現されているのに対し,被告5
作品4-2では,顔のみがアップで強調されたキャラクターが,怒りの表
情を浮かべ,目を大きく見開きながら,口を大きく開けて「あ″あ″ん!?」
と大声で叫んでいる様子が表現されているなどの相違点があり,その具体
的な表現は大きく異なっている。
以上のとおり,両作品は,アイデア又はありふれた表現において共通す10
るにすぎず,具体的な表現においても上記のとおりの相違点があることに
も照らすと,被告作品4-2から原告作品4の本質的特徴を感得すること
はできないというべきである。
したがって,被告作品4-2は,原告作品4の複製にも翻案にも当たら
ない。15
(ウ)原告の主張について
原告は,原告作品4は,本来髪が生えていないキャラクターにリーゼン
トヘアーという一般的でない髪型を描いている点に本質的特徴があり,こ
の点で被告作品4-1・2と同一であるほか,原告作品4と被告作品4-
1・2は,リーゼントヘアーを強調するためにキャラクターを横(左側)20
から描写した点などにおいて具体的表現が一致しているなどと主張する。
しかし,キャラクターの髪型をリーゼントヘアーにし,横(左側)から
描写することはアイデアにすぎず,両作品のその余の共通点はありふれて
いる上,両作品には具体的な表現としても上記のとおりの相違点があるこ
とにも照らすと,被告作品4-1・2が原告作品4の複製又は翻案に当た25
るということはできない。
オ被告作品5について
(ア)原告作品5-1と被告作品5との対比
原告作品5-1と被告作品5とを対比すると,両作品は,頭部が半楕円
形で髪がない点,目を黒点のみで描いている点,くちばしと肌の色を明確
に区別できるように描いている点,顔部分と下半身部分とを明確に区別を5
せずに描いている点,胴体部分に比して手を短く描いている点のほか,頭
上に小さなキャラクターがしがみつくように描かれている点において共
通するが,キャラクターの頭上に更に小さなキャラクターを配置すること
自体はアイデアにすぎない上,その余の共通点は,いずれも擬人化された
キャラクターにおいてはありふれた表現であると認められる。10
他方,両作品には,作品に共通する相違点のほか,原告作品5-1では,
両手を上げ,口を大きく開けて笑顔を見せている原告キャラクターの頭上
に,原告キャラクターとは全く異なる,体がピンク色で,白丸と黒点から
成る大きな目をした,3本の長いまつ毛があるキャラクターが両手でしが
みつくようにして乗っている様子が表現されているのに対し,被告作品515
では,口は閉じたままで右手を上げて振っている被告キャラクターの頭上
に,被告キャラクターよりも小型で外観がよく似た,両頬がピンクに染ま
ったキャラクターが口を開けて笑顔で左手を振っている様子が表現され
ているなどの相違点があり,その具体的な表現は大きく異なっている。
以上のとおり,両作品は,アイデア又はありふれた表現において共通す20
るにすぎず,具体的な表現においても上記のとおりの相違点があることに
も照らすと,被告作品5から原告作品5-1の本質的特徴を感得すること
はできないというべきである。
したがって,被告作品5は,原告作品5-1の複製にも翻案にも当たら
ない。25
(イ)原告作品5-2と被告作品5との対比
原告作品5-2は,原告キャラクターが原告作品5-1に比べると縦長
に描かれており,左手を上げて振り,口もやや縦長に開いている点,及び
その頭上のキャラクターが原告キャラクターの背中側に落ちそうになっ
ており,原告作品5-1に比べると顔が上方に向いている点において,原
告作品5-1と異なるのみであり,上記(ア)と同様の理由から,被告作品5
5は,原告作品5-2の複製にも翻案にも当たらないというべきである。
カ被告作品6について
(ア)原告作品6-1と被告作品6との対比
原告作品6-1と被告作品6とを対比すると,両作品は,頭部が半楕円
形で髪がない点,目を黒点のみで描いている点,くちばしと肌の色を明確10
に区別できるように描いている点,顔部分と下半身部分とを明確に区別を
せずに描いている点,胴体部分に比して手を短く描いている点のほか,腕
を組んでいる点において共通するが,腕を組むというポーズを描くこと自
体は,別紙6「対比キャラクター」のエリザベスにも見られるようにあり
ふれている上,その余の共通点も,いずれも擬人化されたキャラクターに15
おいてはありふれた表現であると認められる。
他方,両作品には,作品に共通する相違点のほか,原告作品6-1では,
キャラクターの足を除いた部分が,頭から下半身に向けて細くすぼまるよ
うに描かれており,上のくちばしがへの字状,下のくちばしが円弧状に描
かれ,くちばしのすぐ下で腕を組んでいる様子が表現されているのに対し,20
被告作品6では,両足で立つキャラクターの全身が,頭から下半身に向け
てわずかに幅が狭くなるように描かれており,右目を左目の斜め上方で顔
の縦方向の中心線から遠くに配し,黄色い上下のくちばしの形状はほぼ同
じで,くちばしからやや離れた下方で腕を組んでいる様子が表現されてい
るなどの相違点があり,その具体的な表現は異なっている。25
以上のとおり,両作品の共通点はありふれており,取り分け,擬人化さ
れたキャラクターが腕を組むというごくありふれたポーズを描く場合に
はその表現の選択の幅は狭くならざるを得ない上,両作品には具体的な表
現としても上記のとおりの相違点があることにも照らすと,被告作品6か
ら原告作品6-1の本質的特徴を感得することはできないというべきで
ある。5
したがって,被告作品6は,原告作品6-1の複製にも翻案にも当たら
ない。
(イ)原告作品6-2と被告作品6との対比
原告作品6-2はキャラクターの体の向きが異なる点において原告作
品6-1と異なるのみであり,上記(ア)と同様の理由から,被告作品6は,10
原告作品6-2の複製にも翻案にも当たらないというべきである。
(ウ)原告の主張について
原告は,腕の極端に短いキャラクターに腕を組ませること自体が原告作
品6の表現上の本質的特徴に当たり,この点のみならず,下くちばしのや
や下辺りで腕を巻き付けるように組んでいる点や,肩部分を描かず胴体の15
中心部分から突如腕が現れているかのように描いた点が被告作品6と一
致すると主張する。
しかし,腕の極端に短いキャラクターが腕を組んだ様子を描くこと自体
はアイデアにすぎない上,腕を組む場所やその具体的な態様などの表現の
選択の幅はキャラクターの腕の長さの設定等により自ずと制約されるの20
で,原告作品6-1・2と被告作品6において,くちばしのやや下で腕を
巻き付けるように組んでいる点や,肩部分を描かず胴体の中心部分から突
如腕が現れているかのように描いた点が共通するとしても,そのことをも
って,被告作品6が原告作品6-1・2の複製又は翻案に当たるというこ
とはできない。25
キ被告作品7について
(ア)原告作品7と被告作品7との対比
原告作品7と被告作品7とを対比すると,両作品は,頭部が半楕円形で
髪がない点,目を黒点のみで描いている点,くちばしと肌の色を明確に区
別できるように描いている点,顔部分と下半身部分とを明確に区別をせず
に描いている点,胴体部分に比して手足を短く描いている点のほか,お辞5
儀をした姿勢をしている点において共通するが,お辞儀をする様子を描く
こと自体はありふれている上,その余の共通点も,いずれも擬人化された
キャラクターにおいてはありふれた表現であると認められる。
他方,両作品には,作品に共通する相違点のほか,原告作品7では,原
告キャラクターのみがお辞儀をしている様子が表現されているのに対し,10
被告作品7では,お辞儀をして頭を下げた状態と上げた状態が対比的かつ
動的に描かれた大きなキャラクターと,大きいキャラクターに比べると角
度の浅いお辞儀をしている小さなキャラクターが並んで描かれているな
どの相違点があり,その具体的な表現は大きく異なっている。
以上のとおり,両作品は,アイデア又はありふれた表現において共通す15
るにすぎず,具体的な表現においても上記のとおりの相違点があることに
も照らすと,被告作品7から原告作品7の本質的特徴を感得することはで
きないというべきである。
したがって,被告作品7は,原告作品7の複製にも翻案にも当たらない。
(イ)原告の主張について20
原告は,原告作品7と被告作品7は,頭部を広く描きつつ,キャラクタ
ーの表情がわかるように上のくちばしを描き,手を前方に揃えてお辞儀し
ていることを描くために手の部分が顔の下から少しだけ見えているとい
う点で共通すると主張する。
しかし,お辞儀をするという日常的にごくありふれたポーズを描く場合25
にはその表現の選択の幅は狭くならざるを得ない上,両作品には具体的な
表現としても上記のとおりの相違点があることにも照らすと,両作品が上
記の点で共通するとしても,そのことをもって,被告作品7が原告作品7
の複製や翻案に当たるということはできない。
ク被告作品8について
(ア)原告作品8と被告作品8との対比5
原告作品8と被告作品8とを対比すると,両作品は,頭部が半楕円形で
ある点,目を黒点のみで描いている点,くちばしと肌の色を明確に区別で
きるように描いている点,顔部分と下半身部分とを明確に区別をせずに描
いている点,胴体部分に比して手足を短く描いている点のほか,白いワイ
シャツに赤いネクタイを締め,グレーのズボンを履いている点において共10
通するが,これらの共通点は,いずれも擬人化されたキャラクターにおい
てはありふれた表現であると認められる。
他方,両作品には,作品に共通する相違点のほか,原告作品8では,茶
色い頭髪をしたキャラクターが,右手を真上に上げ,左手を横に伸ばし,
両足を横に水平に伸ばすようにして笑顔で跳び上がっている様子が表現15
されているのに対し,被告作品8では,頭髪のないキャラクターが,白い
ワイシャツの上にグレーの上着を着て,両目から滝状の涙を流しながら,
「社畜バンザイ」と叫びながら万歳をしている様子が表現されているなど
の相違点があり,その具体的な表現は大きく異なっている。
以上のとおり,両作品は,アイデア又はありふれた表現において共通す20
るにすぎず,具体的な表現においても上記のとおりの相違点があることに
も照らすと,被告作品8から原告作品8の本質的特徴を感得することはで
きないというべきである。
したがって,被告作品8は,原告作品8の複製にも翻案にも当たらない。
(イ)原告の主張について25
原告は,原告作品8と被告作品8は,いずれも,多様な選択肢がある中
で,グレーのスーツを選択した上で,ワイシャツの色は白色とし,ネクタ
イの色にはサラリーマンのネクタイとして主流とはいえない赤色を選択
するなど,服装における創作的な表現において共通していると主張する。
しかし,これらの着衣等の色や組合せはありふれたものであり,両作品
の具体的な表現としても上記のとおりの相違点があることに照らすと,被5
告作品8が原告作品8の複製や翻案に当たるということはできない。
ケ被告作品9について
(ア)原告作品9-1と被告作品9との対比
原告作品9-1のイラスト全体が公表されたことを認めるに足りる証
拠はなく,公表されたのはその一部が文字枠に隠された別紙4の2(甲5・10
10枚目)記載のもの(以下「原告作品9-1’」という。)と認められ
る(甲7)。
そこで,原告作品9-1’と被告作品9とを対比すると,両作品は,頭
部が半楕円形で髪がない点,目を黒点のみで描いている点,くちばしと肌
の色を明確に区別できるように描いている点,顔部分と下半身部分とを明15
確に区別をせずに描いている点,胴体部分に比して手足を短く描いている
点のほか,腕を組んでいる点において共通するが,腕を組むというポーズ
を描くこと自体は,別紙6「対比キャラクター」のエリザベスにも見られ
るようにありふれている上,その余の共通点も,いずれも擬人化されたキ
ャラクターにおいてはありふれた表現であると認められる。20
他方,両作品には,作品に共通する相違点のほか,原告作品9-1’で
は,頭から下半身に向けて細くすぼまるような体型をしたキャラクターが,
たらこのような厚く大きいくちばしを上と下とで少しずらすようにして,
斜め上方を見上げながら,考え込むような表情で腕組みをする様子が表現
されているのに対し,被告作品9では,頭から下半身にかけてほぼ同じ幅25
の体型をしたキャラクターが,くちばしをとがらせて,不満そうな表情を
しながら「つかえねぇケッ」と言って口から何かを吐き出している様子
が表現されているなどの相違点があり,その具体的な表現は大きく異なっ
ている。
以上のとおり,両作品の共通点はありふれており,取り分け,腕を組む
という日常的にごくありふれたポーズを描く場合にはその表現の選択の5
幅は狭くならざるを得ない上,両作品には具体的な表現としても上記のと
おりの相違点があることにも照らすと,被告作品9から原告作品9-1’
の本質的特徴を感得することはできないというべきである。
したがって,被告作品9は,原告作品9-1’の複製にも翻案にも当た
らない。10
(イ)原告作品9-2と被告作品9との対比
原告作品9-2のイラスト全体が公表されたことを認めるに足りる証
拠はなく,公表されたのはその一部が隠された別紙4の3(甲5・11枚
目)記載のもの(以下「原告作品9-2’」という。)と認められる(甲
7)。15
原告作品9-2’は,キャラクターの足部が描かれていない点,左斜め
上ではなく左横方向を向いている点,上下のくちばしにずれがない点にお
いて原告作品9-1’と異なるのみであり,上記(ア)と同様の理由から,被
告作品9は,原告作品9-2’の複製にも翻案にも当たらないというべき
である。20
(ウ)原告は,原告作品9はキャラクターから見てやや左斜めを向いているよ
うに描くとともに,下くちばしのやや下辺りで巻き付けるように腕を組ん
で描き,キャラクターが何かを考えている様子を表現した点に特徴があり,
被告作品9もこれらと同一の特徴を有していると主張する。
しかし,キャラクターが左斜めを向いて腕を組んだ様子を描くというの25
はアイデアにすぎないし,腕を組むポーズの選択の幅は狭く,原告作品9
-1’・2’と被告作品9の具体的な表現は前記(ア),(イ)のとおり異なっ
ているのであるから,被告作品9が原告作品9-1’・2’の複製又は翻
案に当たるということはできない。
コ被告作品10について
(ア)原告作品10と被告作品10との対比5
原告作品10のイラスト全体が公表されたことを認めるに足りる証拠
はなく,公表されたのはその一部が他のキャラクターにより隠された別紙
4の4(甲5・12枚目)記載のもの(以下「原告作品10’」という。)
と認められる(甲7)。
そこで,原告作品10’と被告作品10とを対比すると,両作品は,頭10
部が半楕円形で髪がない点,目を黒点のみで描いている点,くちばしと肌
の色を明確に区別できるように描いている点,顔部分と下半身部分とを明
確に区別をせずに描いている点,胴体部分に比して手足を短く描いている
点のほか,右手を挙げている様子が描かれている点において共通するが,
これらの共通点は,いずれも擬人化されたキャラクターにおいてはありふ15
れた表現であると認められる。
他方,両作品には,作品に共通する相違点のほか,原告作品10’では,
口を大きく開け,右手を根元付近から曲げて真上に挙げ,左手は体側に沿
って下ろしている様子が表現されているのに対し,被告作品10では,キ
ャラクターが,「ほ~い」と言いながら,口を8の字型にしてすぼめるよ20
うに小さく開け,右手を真っ直ぐ右上に挙げて振り,左手は体から離しつ
つ下方に伸ばしている様子が表現されているなどの相違点があり,その具
体的な表現は異なっている。
以上のとおり,両作品の共通点はありふれており,取り分け,擬人化さ
れたキャラクターが片手を上げるというごくありふれたポーズを描く場25
合にはその表現の選択の幅は狭くならざるを得ない上,両作品には具体的
な表現としても上記のとおりの相違点があることにも照らすと,被告作品
10から原告作品10’の本質的特徴を感得することはできないというべ
きである。
したがって,被告作品10は,原告作品10’の複製にも翻案にも当た
らない。5
(イ)原告の主張について
原告は,原告作品10’は,口をやや縦長に開け,左手を下ろしつつ右
手を上に上げ,キャラクターが何かを訴えかけるようにした点に表現上の
特徴があり,被告作品10も同一の特徴を有すると主張する。
しかし,上記のとおり,擬人化されたキャラクターが口を開け,片手を10
上げるというポーズをとることはごくありふれており,その表現の選択の
幅は狭くならざるを得ない上,両作品は,アイデア又はありふれた表現に
おいて共通するにすぎず,具体的な表現においても上記のとおりの相違点
があることにも照らすと,両作品が上記の点で共通するとしても,そのこ
とをもって,被告作品10が原告作品10’の複製や翻案に当たるという15
ことはできない。
サ被告作品11について
(ア)原告作品11と被告作品11との対比
原告作品11のイラスト全体が公表されたことを認めるに足りる証拠
はなく,公表されたのはその一部が他のキャラクターにより隠された別紙20
4の5(甲5・13枚目)記載のもの(以下「原告作品11’」という。)
と認められる(甲7)。
そこで,原告作品11’と被告作品11とを対比すると,両作品は,頭
部が半楕円形で髪がない点,目を黒点のみで描いている点,くちばしと肌
の色を明確に区別できるように描いている点,顔部分と下半身部分とを明25
確に区別をせずに描いている点,胴体部分に比して手足を短く描いている
点のほか,両腕を上方に上げている点において共通するが,これらの共通
点は,いずれも擬人化されたキャラクターにおいてはありふれた表現であ
ると認められる。
他方,両作品については,原告作品11’では,キャラクターが,首を
ややかしげ,両腕を頭の後ろに組み,オレンジ色の厚いくちばしから成る5
口を丸く尖らせるようにして突き出している様子が表現されているのに
対し,被告作品11では,キャラクターは,「それはたぶん妖怪のしわざ」
とのセリフに比べると小さく描かれ,両腕を上方に上げているものの頭の
後ろで組んでいるかどうかは明確でなく,口も閉じている様子が表現され
ているなどの相違点があり,その具体的な表現は異なっている。10
以上のとおり,両作品の共通点はありふれており,取り分け,擬人化さ
れたキャラクターが両手を上げるというごくありふれたポーズを描く場
合にはよく似た表現にならざるを得ない上,両作品には具体的な表現とし
ても上記のとおりの相違点があることにも照らすと,被告作品11から原
告作品11’の本質的特徴を感得することはできないというべきである。15
したがって,被告作品11は,原告作品11’の複製にも翻案にも当た
らない。
(イ)原告の主張について
原告は,原告作品11’は,極端に短く描いた腕を肩から上げつつ,頭
部に腕を密着させ,両腕を頭部後方に持っていっているかのように表現し20
た点に特徴を有し,この点において被告作品11と共通すると主張する。
しかし,上記のとおり,被告作品11のキャラクターが腕を頭の後ろで
組んでいるかどうかは明らかではなく,仮に,原告の主張するとおり,同
キャラクターが頭の後ろで腕を組んでいるとしても,かかるポーズを描く
ことはごくありふれたものであり,その表現の選択の幅はキャラクターの25
腕の長さの設定等により自ずと制約されることを考慮すると,両作品が上
記の点で共通するとしても,そのことをもって,被告作品11が原告作品
11’の複製又は翻案に当たるということはできない。
シ被告作品12について
(ア)原告作品12と被告作品12との対比
原告作品12と被告作品12とを対比すると,両作品は,頭部が半楕円5
形で髪がない点,目を黒点のみで描いている点,くちばしと肌の色を明確
に区別できるように描いている点,顔部分と下半身部分とを明確に区別を
せずに描いている点,胴体部分に比して手足を短く描いている点のほか,
跳ねるように両腕及び片足を上げている点において共通するが,これらの
共通点は,いずれも擬人化されたキャラクターにおいてはありふれた表現10
であると認められる。
他方,両作品については,原告作品12では,緑色のショルダーバッグ
をたすきのように斜め下に掛けた1体の笑顔のキャラクターが,両腕を上
げ,左足を膝から折り曲げるようにして前方に上げている様子がキャラク
ターの下の赤い影様とともに表現されているのに対し,被告作品12では,15
3体のキャラクターが,星様の模様を背景として,いずれも,楽しげに飛
び跳ねるかのように,両腕を上げ,右足を前方に上げている様子が表現さ
れ,キャラクターの上部には横書きで「ぱーりーぴーぽー」との文字が書
かれているなどの相違点があり,その具体的な表現は大きく異なっている。
以上のとおり,両作品は,アイデア又はありふれた表現において共通す20
るにすぎず,具体的な表現においても上記のとおりの相違点があることに
も照らすと,被告作品12から原告作品12の本質的特徴を感得すること
はできないというべきである。
したがって,被告作品12は,原告作品12の複製にも翻案にも当たら
ない。25
(イ)原告の主張について
原告は,原告作品12が,両腕を上げる様子を曲線で描きつつ,片足を
上げてキャラクターの躍動感を表現した点に本質的特徴があり,被告作品
12もこの特徴を有していると主張する。
しかし,躍動感を表現するために両腕及び片足を上げるというのはあり
ふれたポーズである上,両作品の具体的な表現には上記のとおりの相違点5
があることに照らすと,被告作品12が原告作品12の複製又は翻案に当
たるということはできない。
ス被告作品13について
(ア)原告作品13-1と被告作品13との対比
原告作品13-1と被告作品13とを対比すると,両作品は,頭部が半10
楕円形で髪がない点,目を黒点のみで描いている点,くちばしと肌の色を
明確に区別できるように描いている点,顔部分と下半身部分とを明確に区
別をせずに描いている点,胴体部分に比して手を短く描いている点のほか,
くちばしの下に蝶ネクタイを着用している点において共通するが,蝶ネク
タイを着用させること自体は,別紙6「対比キャラクター」のタキシード15
サムにも見られるようにありふれている上,その余の共通点も,いずれも
擬人化されたキャラクターにおいてはありふれた表現であると認められ
る。
他方,両作品には,作品に共通する相違点のほか,原告作品13-1で
は,頭から足に向けて細くすぼまるような体型をし,体色が黄色のキャラ20
クターが,結び目のない黒色の蝶ネクタイを着け,両手を体側に沿って下
ろして直立している様子が表現されているのに対し,被告作品13では,
上半身のみが描かれた,体色が白色のキャラクターが結び目のある赤色の
蝶ネクタイを着け,「アグリー」というセリフとともに右手を上げ,左手
は体側に沿って下ろしている様子が表現されているなどの相違点があり,25
その具体的な表現は異なっている。
以上のとおり,蝶ネクタイを着けた様子を描くことはアイデアにすぎな
い上,両作品のその余の共通点はありふれており,両作品には具体的な表
現としても上記のとおりの相違点があることにも照らすと,被告作品13
から原告作品13-1の本質的特徴を感得することはできないというべ
きである。5
したがって,被告作品13は,原告作品13-1の複製にも翻案にも当
たらない。
(イ)原告作品13-2と被告作品13との対比
上記(ア)で説示したとおり,被告作品13は,原告作品13-1の複製
にも翻案にも当たらないというべきところ,原告作品13-2は,キャラ10
クターが斜め左を向いて口を大きく開け,左手を斜め上方に伸ばして相手
に呼びかけるような表情をしているなどの点において,原告作品13-1
よりも更に被告作品13との表現上の差異が大きく,同被告作品から原告
作品13-2の本質的特徴を感得することはできない。
したがって,被告作品13は,原告作品13-2の複製にも翻案にも当15
たらない。
(ウ)原告の主張について
原告は,原告作品13の1・2はキャラクターの口の下方部分に蝶ネク
タイを着けているように描いた点に特徴を有し,被告作品13も同一の特
徴を有すると主張する。20
しかし,擬人化されたキャラクターが蝶ネクタイを着けることはアイデ
アにすぎず,両作品には具体的な表現としても上記のとおりの相違点があ
ることにも照らすと,被告作品13が原告作品13-1・2の複製又は翻
案に当たるということはできない。
セ被告作品14について25
(ア)原告作品14と被告作品14との対比
原告作品14と被告作品14とを対比すると,両作品は,頭部が半楕円
形で髪がない点,後方から顔面付近のみを描いている点,目玉が飛び出し
ている点,くちばしと肌の色を明確に区別できるように描いている点,口
を大きく開けている点で共通するが,目が飛び出て口を大きく開けた様子
を描くことは,漫画・イラストなどにおいては,驚いていることを示す表5
現方法としてごくありふれたものであり,その余の共通点も,いずれも擬
人化されたキャラクターにおいてはありふれた表現であると認められる。
他方,両作品には,作品に共通する相違点のほか,原告作品14では,
キャラクターが驚いた表情が,王冠状の効果線とこめかみ付近の1粒の汗
によりシンプルに表現されているのに対し,被告作品14では,「えっ!?」10
というセリフ,白目に描かれた複数の線,背景の放射状の集中線,右顔面
に付された5粒の汗などにより,驚いた表情がより強調されて表現されて
いるなどの相違点があり,その具体的な表現は異なっている。
以上のとおり,口が大きく開き,目玉が飛び出した様子を描くことは,
擬人化されたキャラクターが驚いていることを示す表現方法としてはあ15
りふれたものであり,取り分け,両作品のように顔面の表情のみを描く場
合には全身を描く場合に比べて,その表現の幅は更に狭くならざるを得な
い上,上記のとおり,両作品は具体的な表現においても相違することに照
らすと,被告作品14から原告作品14の本質的特徴を感得することはで
きないというべきである。20
したがって,被告作品14は,原告作品14の複製にも翻案にも当たら
ない。
(イ)原告の主張について
原告は,原告作品14が,頭部の斜め後方からキャラクターを描き,口
を大きく開けている様子を表現するため,くちばし部分を上下にやや離し,25
目が前方に飛び出している様子を描くために白目部分を半円で描き,その
先端に黒点を少しだけ描くことにより,キャラクターが驚いている様子を
表現している点で,被告作品14と同一であると主張する。
しかし,上記のとおり,原告が指摘する点は,漫画・イラストにおける
キャラクターが驚いた様子の表現としてありふれたものであり,両作品に
は具体的な表現としても上記のとおりの相違点があることにも照らすと,5
被告作品14が原告作品14の複製又は翻案に当たるということはでき
ない。
ソ被告作品15について
(ア)原告作品15-1と被告作品15との対比
原告作品15-1と被告作品15とを対比すると,両作品は,頭部が半10
楕円形で髪がない点,目を黒点のみで描いている点,くちばしと肌の色を
明確に区別できるように描いている点,顔部分と下半身部分とを明確に区
別をせずに描いている点,胴体部分に比して手足を短く描いている点のほ
か,キャラクターがアザラシのような格好で足をすぼめて横たわっている
点において共通するが,これらの共通点は,いずれも擬人化されたキャラ15
クターにおいてはありふれた表現であると認められる。
他方,両作品には,作品に共通する相違点のほか,原告作品15-1で
は,キャラクターが左半身を下にして青色の毛布様の敷物の上に横たわり,
右手を真下に垂れ下げ,左手を体側に沿って横たえている様子が表現され
ているのに対し,被告作品15では,空腹のため,キャラクターの両頬が20
こけ,胴部にはしわが浮き出たような線が描かれ,両手を腹部付近に当て
ている様子が,「はらへった」という文字とともに表現されているなどの
相違点があり,その具体的な表現は大きく異なっている。
以上のとおり,両作品は,アイデア又はありふれた表現において共通す
るにすぎず,具体的な表現においても上記のとおりの相違点があることに25
も照らすと,被告作品15から原告作品15-1の本質的特徴を感得する
ことはできないというべきである。
したがって,被告作品15は,原告作品15-1の複製にも翻案にも当
たらない。
(イ)原告作品15-2と被告作品15との対比
証拠(甲5・18枚目)及び弁論の全趣旨によれば,原告作品15-25
のイラストは公表されたものと認められるところ,同作品は,両手を床に
沿って体の上方に伸ばしている点,右半身を下にして左側を頭にしている
点,毛布状の敷物がない点のみにおいて原告作品15-1と異なるにすぎ
ないので,上記(ア)と同様の理由から,被告作品15は,原告作品15-2
の複製にも翻案にも当たらないというべきである。10
(ウ)原告の主張について
原告は,原告作品15-1・2が,キャラクターを横に寝かせて足部分
を揃え,全体としてキャラクターが丸みを帯びるように,いわばアザラシ
型に描き,脱力感を表現したところに特徴を有し,被告作品15も同一の
特徴を有すると主張する。15
しかし,足をすぼめて横たわる姿を描くことにより空腹感や脱力感を表
現することはありふれており,両作品には具体的な表現としても上記のと
おりの相違点があることにも照らすと,両作品が上記の点で共通するとし
ても,そのことをもって,被告作品15が原告作品15-1・2の複製又
は翻案に当たるということはできない。20
タ被告作品16について
(ア)原告作品16と被告作品16との対比
原告作品16と被告作品16とを対比すると,両作品は,頭部が半楕円
形で髪がない点,目を黒点のみで描いている点,くちばしと肌の色を明確
に区別できるように描いている点,顔部分と下半身部分とを明確に区別を25
せずに描いている点,胴体部分に比して手を短く描いている点のほか,暑
さに耐えかねてキャラクターが右半身を下にして床に横たわっている点
において共通するが,暑さにばてている様子を表現する際に床に横たわる
姿を描くことはありふれている上,その余の共通点も,いずれも擬人化さ
れたキャラクターにおいてはありふれた表現であると認められる。
他方,両作品には,作品に共通する相違点のほか,原告作品16では,5
キャラクターがばてたような表情で,口を開けたまま横たわり,両手を床
に沿って体の上方に伸ばし,左頬付近に汗が2粒描かれている様子が表現
されているのに対し,被告作品16では,キャラクターが床に手足を投げ
出すようにして横たわり,床についている右頬が床にとけて流れ出すよう
に変形し,口の半分が右頬に隠れて見えなくなっている様子が表現されて10
いるなどの相違点があり,その具体的な表現は大きく異なっている。
以上のとおり,両作品は,アイデア又はありふれた表現において共通す
るにすぎず,具体的な表現においても上記のとおりの相違点があることに
も照らすと,被告作品16から原告作品16の本質的特徴を感得すること
はできないというべきである。15
したがって,被告作品16は,原告作品16の複製にも翻案にも当たら
ない。
(イ)原告の主張について
原告は,原告作品16は,上下のくちばしを少し離して描き,口を開け
ていることを表現した上で,頭部から胴体へつながる線を曲線としてくび20
れを表現することによりキャラクターの柔らかさや脱力感を表現した点
や,キャラクターの口を半開きで描くとともにキャラクターの左側を下に
して横に寝そべるように描くことにより,暑さに耐えかねる様子を表現し
ている点などにおいて,被告作品16と共通する特徴を有すると主張する。
しかし,上記のとおり,擬人化されたキャラクターが暑さに耐えかねて25
いることを表現するため,口を少し開けたまま床に横たわる姿を描くこと
は,ごくありふれた表現であり,両作品には具体的な表現としても上記の
とおりの相違点があることにも照らすと,両作品が上記の点で共通すると
しても,そのことをもって,被告作品16が原告作品16の複製又は翻案
に当たるということはできない。
チ被告作品17について5
(ア)原告作品17と被告作品17との対比
原告作品17のイラストの全体が公表されたことを認めるに足りる証
拠はなく,公表されたのは,床に敷かれたカーペットの右側部分が他のキ
ャラクターにより隠された点で異なる別紙4の6(甲5・20枚目)記載
のもの(以下「原告作品17’」という。)と認められる。10
そこで,原告作品17’と被告作品17を対比すると,両作品は,頭部
が半楕円形で髪がない点,目を黒点のみで描いている点,くちばしと肌の
色を明確に区別できるように描いている点,顔部分と下半身部分とを明確
に区別をせずに描いている点,胴体部分に比して手足を短く描いている点
のほか,両手を上げて床にうつぶせに横たわっている点において共通する15
が,これらの共通点は,いずれも擬人化されたキャラクターにおいてはあ
りふれた表現であると認められる。
他方,両作品には,作品に共通する相違点のほか,原告作品17’では,
黄色の体色のキャラクターが,目を閉じ,顔を左に向けてオレンジ色の大
きなカーペットにうつ伏せに横たわり,赤色の波線が効果線として上方に20
記載されていることも相まって,暖かさに幸せを感じている様子が表現さ
れているのに対し,被告作品17では,キャラクターが,床に顎を乗せて
前方を見るような姿勢で横たわり,「つらたん」とのセリフも相まって,
辛さに耐え忍ぶ様子が表現されているなどの相違点があり,その具体的な
表現は大きく異なっている。25
以上のとおり,両作品は,アイデア又はありふれた表現において共通す
るにすぎず,具体的な表現においても上記のとおりの相違点があることに
も照らすと,被告作品17から原告作品17’の本質的特徴を感得するこ
とはできないというべきである。
したがって,被告作品17は,原告作品17’の複製にも翻案にも当た
らない。5
(イ)原告の主張について
原告は,キャラクターを横に寝そべらせた上で,手を頭部の付近へ持っ
てくるように描くとともに,キャラクターの腰から下半身にかけてでん部
を表現するように描かれた曲線により,地面にはいつくばっている様子を
表現している点に原告作品17’の本質的特徴があり,被告作品17も同10
一の特徴を有すると主張する。
しかし,両手を上げてうつ伏せに横たわることは,日常においてよく見
られるありふれたポーズであり,そのような姿を描く場合,その表現の選
択の幅は狭くならざるを得ない上,両作品には具体的な表現としても上記
のとおりの相違点があることにも照らすと,両作品が上記の点で共通する15
としても,そのことをもって,被告作品17が原告作品17’の複製又は
翻案に当たるということはできない。
ツ被告作品18について
(ア)原告作品18と被告作品18との対比
原告作品18と被告作品18とを対比すると,両作品は,頭部が半楕円20
形で髪がない点,目を黒点のみで描いている点,くちばしと肌の色を明確
に区別できるように描いている点,顔部分と下半身部分とを明確に区別を
せずに描いている点,胴体部分に比して手足を短く描いている点のほか,
両掌を上に向けて肘から上を上げている様子を描いている点において共
通するが,これらの共通点は,いずれも擬人化されたキャラクターにおい25
てはありふれた表現であると認められる。
他方,両作品には,作品に共通する相違点のほか,原告作品18では,
キャラクターがやや上方を向き,両掌を上にして両腕を上げ,口を開けて
いる様子が表現されているのに対し,被告作品18では,キャラクターが,
「やれやれ」というセリフとともに,口を閉じ,あきれたような表情をし
ながら,両掌を上にして肘から腕を曲げ,腕を上下に動かしている様子が5
表現されているなどの相違点があり,その具体的な表現は異なっている。
以上のとおり,両作品は,アイデア又はありふれた表現において共通す
るにすぎず,具体的な表現においても上記のとおりの相違点があることに
も照らすと,被告作品18から原告作品18の本質的特徴を感得すること
はできないというべきである。10
したがって,被告作品18は,原告作品18の複製にも翻案にも当たら
ない。
(イ)原告の主張について
原告は,原告作品18の本質的特徴は,腕を上に上げつつ,腕の先を更
に曲げている点にあり,被告作品18も同一の特徴を有すると主張する。15
しかし,腕を上に上げつつ,腕の先を更に曲げることは,日常において
よく見られるありふれたポーズであり,そのような姿を描く場合,その表
現の選択の幅は狭くならざるを得ない上,両作品には具体的な表現として
も上記のとおりの相違点があることにも照らすと,両作品が上記の点で共
通するとしても,そのことをもって,被告作品18が原告作品18の複製20
又は翻案に当たるということはできない。
テ被告作品19について
(ア)原告作品19と被告作品19との対比
原告作品19と被告作品19とを対比すると,両作品は,頭部が半楕円
形で髪がない点,目を黒点のみで描いている点,くちばしと肌の色を明確25
に区別できるように描いている点,顔部分と下半身部分とを明確に区別を
せずに描いている点,胴体部分に比して手を短く描いている点のほか,口
を開けている点を描いている点において共通するが,これらの共通点は,
いずれも擬人化されたキャラクターにおいてはありふれた表現であると
認められる。
他方,両作品については,原告作品19では,頭部から下半身に向けて5
体全体がすぼまるような体型のキャラタクターが,口を大きく開け,両手
を体側に沿って下ろしている様子が表現されているのに対し,被告作品1
9では,両足を開いて直立するキャラクターが「ほぇー」と言いながら,
口を開け,両手を広げている様子が表現されているなどの相違点があり,
その具体的な表現は異なっている。10
以上のとおり,両作品は,アイデア又はありふれた表現において共通す
るにすぎず,具体的な表現においても上記のとおりの相違点があることに
も照らすと,被告作品19から原告作品19の本質的特徴を感得すること
はできないというべきである。
したがって,被告作品19は,原告作品19の複製にも翻案にも当たら15
ない。
(イ)原告の主張について
原告は,上下のくちばしを離して描き,口を縦に開けている様子を表現
している点に原告作品19の特徴があり,被告作品19も同一の特徴を有
すると主張する。20
しかし,口を縦に開けていることは,日常においてよく見られるありふ
れた表情ないし動作であり,そのような姿を描く場合,その表現の選択の
幅は狭くならざるを得ない上,両作品には具体的な表現としても上記のと
おりの相違点があることにも照らすと,両作品が上記の点で共通するとし
ても,そのことをもって,被告作品19が原告作品19の複製又は翻案に25
当たるということはできない。
ト被告作品20について
(ア)原告作品20-1と被告作品20との対比
原告作品20-1と被告作品20とを対比すると,両作品は,目を黒点
のみで描いている点,くちばしと肌の色を明確に区別できるように描いて
いる点,顔部分と下半身部分とを明確に区別をせずに描いている点,胴体5
部分に比して手足を短く描いている点のほか,キャラクターが角をはやし
た牛の着ぐるみを着ている姿を描いている点において共通するが,牛の着
ぐるみを着ている姿を描くこと自体はアイデアにすぎない上,その余の共
通点は,いずれも擬人化されたキャラクターにおいてはありふれた表現で
あると認められる。10
他方,両作品には,作品に共通する相違点のほか,原告作品20-1で
は,牛の着ぐるみを着て,口を開いて笑顔のキャラクターが正面を向いて
2本足で立ち,両手を腹部付近に揃えて置いている様子が表現されている
のに対し,被告作品20では,牛の着ぐるみを着たキャラクターが,サツ
マイモを食べながら右半身を下にして横たわり,「ブッ」という音ととも15
に放屁している様子が表現されているなどの相違点があり,牛の着ぐるみ
についても,その体表の模様,角の形状,尻尾の有無などにおいて異なり,
その具体的な表現は大きく異なっている。
以上のとおり,両作品の共通点はアイデアないしありふれた表現部分に
限られている上,両作品には具体的な表現としても上記のとおりの相違点20
があることにも照らすと,被告作品20から原告作品20-1の本質的特
徴を感得することはできないというべきである。
したがって,被告作品20は,原告作品20-1の複製にも翻案にも当
たらない。
(イ)原告作品20-2と被告作品20との対比25
原告作品20-2は,キャラクターの上半身のみが描かれている点,左
手を軽く上げている点,やや左方向を向いている点において原告作品20
-1と異なるのみであり,上記(ア)と同様の理由から,被告作品20は,原
告作品20-2の複製にも翻案にも当たらないというべきである。
(ウ)原告の主張
原告は,無数に存在する着ぐるみのうち,黄色い角がある牛の着ぐるみ5
を着せた点に原告作品20の本質的特徴があり,被告作品20も同一の特
徴を有すると主張する。
しかし,キャラクターに牛の着ぐるみを着せるというのはアイデアであ
り,その角を黄色にするというのもありふれた表現にすぎない上,両作品
には具体的な表現としても上記のとおりの相違点があることにも照らす10
と,被告作品20が原告作品20-1・2の複製又は翻案に当たるという
ことはできない。
ナ被告作品21について
(ア)原告作品21-1と被告作品21との対比
原告作品21-1と被告作品21とを対比すると,両作品は,頭部が半15
楕円形で髪がない点,目を黒点のみで描いている点,くちばしと肌の色を
明確に区別できるように描いている点,顔部分と下半身部分とを明確に区
別をせずに描いている点,胴体部分に比して手を短く描いている点のほか,
片方の耳を極端に大きく描いている点において共通するが,聞き耳を立て
る様子を表すために片方の耳を極端に大きく描くこと自体はアイデアに20
すぎない上,その余の共通点は,いずれも擬人化されたキャラクターにお
いてはありふれた表現であると認められる。
他方,両作品には,作品に共通する相違点のほか,原告作品21-1で
は,顔面部を強調して描かれたキャラクターが,口を大きく開け,黄色で
顔部分よりやや小さい程度の大きさに誇張された吸盤状の耳で何かを聞25
いている様子が表現されているのに対し,被告作品21では,全身を描か
れたキャラクターが,口を閉じ,人間の耳に色や形状が酷似した,全身と
同じくらいの大きさの巨大な耳を,短い左手で支えるようにして持ってい
る様子が表現されているなどの相違点があり,その具体的な表現は大きく
異なっている。
以上のとおり,聞き耳を立てる様子を表すために片方の耳を極端に大き5
く描くこと自体はアイデアにすぎず,両作品のその余の共通点はありふれ
ている上,両作品には具体的な表現としても上記のとおりの相違点がある
ことにも照らすと,被告作品21から原告作品21-1の本質的特徴を感
得することはできないというべきである。
したがって,被告作品21は,原告作品21-1の複製にも翻案にも当10
たらない。
(イ)原告作品21-2と被告作品21との対比
原告作品21-2と被告作品21を対比すると,両作品は,前記(ア)と
同様の共通点を有する一方,原告作品21-2では,上半身を描かれたキ
ャラクターの全身が赤く染まり,顔と同程度の大きさで吸盤状の左耳が横15
に伸びている様子が表現されているのに対し,被告作品21では,上記の
とおり,全身を描かれたキャラクターが,人間の耳に色や形状が酷似した,
全身と同じくらいの大きさの巨大な耳を,短い左手で支えるようにして持
っている様子が表現されているなどの相違点があり,その具体的な表現は
大きく異なっている。20
以上のとおり,聞き耳を立てる様子を表すために片方の耳を極端に大き
く描くこと自体はアイデアにすぎず,両作品のその余の共通点はありふれ
ている上,両作品には具体的な表現としても上記のとおりの相違点がある
ことにも照らすと,被告作品21から原告作品21-2の本質的特徴を感
得することはできないというべきである。25
したがって,被告作品21は,原告作品21-2の複製にも翻案にも当
たらない。
(ウ)原告作品21-3と被告作品21との対比
原告作品21-3は,キャラクターが机上に座る姿を後ろから描いたも
のであり,同キャラクターは体を右に傾け,体と同程度の大きさに誇張さ
れた黄色い吸盤状の耳が左上方に伸びるように描かれていて,目や口は描5
かれていない。他方,被告作品21の表現上の特徴は,上記(ア)及び(イ)の
とおりであり,両作品の具体的な表現が大きく異なり,被告作品21から
原告作品21-3の本質的特徴を感得することができないことは明らか
である。
したがって,被告作品21は,原告作品21-3の複製にも翻案にも当10
たらない。
(エ)原告の主張について
原告は,左耳を極端に大きく描き,キャラクターが何かに聞き耳を立て
ている様子を表現した点に原告作品21-1~3の本質的特徴があり,被
告作品21も同一の特徴を有すると主張する。15
しかし,聞き耳を立てる様子を描写するために片方の耳を大きく描くこ
とはアイデアにすぎない上,両作品には具体的な表現としても上記のとお
りの相違点があることにも照らすと,被告作品21が原告作品21―1~
3の複製又は翻案に当たるということはできない。
ニ被告作品22について20
(ア)原告作品22と被告作品22との対比
原告作品22と被告作品22とを対比すると,両作品は,頭部が半楕円
形で髪がない点,目を黒点のみで描いている点,くちばしと肌の色を明確
に区別できるように描いている点,顔部分と下半身部分とを明確に区別を
せずに描いている点,胴体部分に比して手を短く描いている点のほか,手25
に持ったがま口財布を開けて下を向けて振り,財布の中身が空である様子
を描いている点において共通するが,口の開いた財布を下に向けて振り,
財布の中身が空である様子を表現すること自体はアイデアにすぎない上,
その余の共通点は,いずれも擬人化されたキャラクターにおいてはありふ
れた表現であると認められる。
他方,両作品には,作品に共通する相違点のほか,原告作品22では,5
頭から下半身に向けて細くすぼまるような体型に描かれたキャラクター
が下を向き,左目から涙を流して悲しげな表情をしながら,中身が空の青
いがま口財布を振っている様子が表現されているのに対し,被告作品22
では,両足を開いて立ったキャラクターが,さしたる表情をみせることな
く,中身が空の赤いがま口財布を振っている様子が表現されているなどの10
相違点があり,その具体的な表現は異なっている。
以上のとおり,口の開いた財布を下に向けて振り,財布の中身が空であ
る様子を表現すること自体はアイデアにすぎず,両作品のその余の共通点
はありふれている上,両作品には具体的な表現としても上記のとおりの相
違点があることにも照らすと,被告作品22から原告作品22の本質的特15
徴を感得することはできないというべきである。
したがって,被告作品22は,原告作品22の複製にも翻案にも当たら
ない。
(イ)原告の主張について
原告は,腕の先に手部分を明確に表現せず,その腕の先にがま口財布が20
くっついているかのように描きつつ,同財布のがま口部分を開放した上で
下方に向けている様子を描くとともに,同財布の下方部分に更にいくつか
の点を描くことにより,財布の中身がないことを表現した点に原告作品2
2の本質的特徴があり,被告作品22は同一の特徴を有すると主張する。
しかし,上記のとおり,口の開いた財布を下に向けて振り,財布の中身25
が空である様子を表現すること自体はアイデアにすぎず,また,漫画やイ
ラストにおいて,先細の棒状の手を持つキャラクターが物を持つ場合に棒
状の手の先に物がくっつくように描いたり,がま口財布を下に向けてその
下に点をいくつか描いて財布が空であることを表したりするのは,ごくあ
りふれた表現であるというべきである。加えて,両作品には具体的な表現
としても上記のとおりの相違点があることにも照らすと,被告作品22が5
原告作品22の複製又は翻案に当たるということはできない。
(4)以上のとおり,被告作品が原告作品の複製又は翻案に当たるとは認められな
いから,その余の点につき判断するまでもなく,原告の請求はすべて理由がな
い。
2結論10
よって,原告の請求をいずれも棄却することとして,主文のとおり判決する。
東京地方裁判所民事第40部
裁判長裁判官
佐藤達文
裁判官
三井大有
裁判官
齊藤敦

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弁護士 求人 採用
弁護士募集(経験者 司法修習生)
激動の時代に
今後の弁護士業界はどうなっていくのでしょうか。 もはや、東京では弁護士が過剰であり、すでに仕事がない弁護士が多数います。
ベテランで優秀な弁護士も、営業が苦手な先生は食べていけない、そういう時代が既に到来しています。
「コツコツ真面目に仕事をすれば、お客が来る。」といった考え方は残念ながら通用しません。
仕事がない弁護士は無力です。
弁護士は仕事がなければ経験もできず、能力も発揮できないからです。
ではどうしたらよいのでしょうか。
答えは、弁護士業もサービス業であるという原点に立ち返ることです。
我々は、クライアントの信頼に応えることが最重要と考え、そのために努力していきたいと思います。 弁護士数の増加、市民のニーズの多様化に応えるべく、従来の法律事務所と違ったアプローチを模索しております。
今まで培ったノウハウを共有し、さらなる発展をともに目指したいと思います。
興味がおありの弁護士の方、司法修習生の方、お気軽にご連絡下さい。 事務所を見学頂き、ゆっくりお話ししましょう。

応募資格
司法修習生
すでに経験を有する弁護士
なお、地方での勤務を希望する先生も歓迎します。
また、勤務弁護士ではなく、経費共同も可能です。

学歴、年齢、性別、成績等で評価はしません。
従いまして、司法試験での成績、司法研修所での成績等の書類は不要です。

詳細は、面談の上、決定させてください。

独立支援
独立を考えている弁護士を支援します。
条件は以下のとおりです。
お気軽にお問い合わせ下さい。
◎1年目の経費無料(場所代、コピー代、ファックス代等)
◎秘書等の支援可能
◎事務所の名称は自由に選択可能
◎業務に関する質問等可能
◎事務所事件の共同受任可

応募方法
メールまたはお電話でご連絡ください。
残り応募人数(2019年5月1日現在)
採用は2名
独立支援は3名

連絡先
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所 採用担当宛
email:[email protected]

71期修習生 72期修習生 求人
修習生の事務所訪問歓迎しております。

ITJではアルバイトを募集しております。
職種 事務職
時給 当社規定による
勤務地 〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
その他 明るく楽しい職場です。
シフトは週40時間以上
ロースクール生歓迎
経験不問です。

応募方法
写真付きの履歴書を以下の住所までお送り下さい。
履歴書の返送はいたしませんのであしからずご了承下さい。
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所
[email protected]
採用担当宛