弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     原判決中上告人敗訴の部分を破棄し、本件を広島高等裁判所松江支部に
差し戻す。
         理    由
 上告指定代理人西本寿喜名義の上告理由について。
 刑訴二〇八条二項は、裁判官は、やむを得ない事由があると認めるときは、検察
官の請求により、通算一〇日を超えない範囲内で被疑者の勾留期間を延長すること
ができる旨規定する。右の「やむを得ない事由があると認めるとき」とは、事件の
複雑困難(被疑者もしくは被疑事実多数のほか、計算複雑、被疑者関係人らの供述
又はその他の証拠のくいちがいが少からず、あるいは取調を必要と見込まれる関係
人、証拠物等多数の場合等)、あるいは証拠蒐集の遅延若しくは困難(重要と思料
される参考人の病気、旅行、所在不明もしくは鑑定等に多くの日時を要すること)
等により勾留期間を延長して更に取調をするのでなければ起訴もしくは不起訴の決
定をすることが困難な場合をいうものと解するのが相当である(なお、この「やむ
を得ない事由」の存否の判断には当該事件と牽連ある他の事件との関係も相当な限
度で考慮にいれることを妨げるものではない)。そして勾留期間延長の請求をする
検察官又は請求を受けた裁判官が勾留期間の延長を相当とするには、すでに得られ
た諸資料のほかに更に検察官において証拠の蒐集取調をするのでなければみだりに
起訴もしくは不起訴の決定をなしえないとの判断に立脚しなければならないところ、
この判断は一の法律上の価値判断に帰する。かかる価値判断の過誤については、そ
の過誤であることが明白である場合、換言すれば、通常の検察官又は裁判官であれ
ば当時の状況下において当該被疑事件又は勾留期間延長請求事件の取調ないし決定
判断に当つては何人も当時の勾留延長請求の資料に基づいては勾留延長の請求又は
これを認容する裁判をしなかつたであろうと考えられる場合に限り国家賠償法一条
一項にいう過失を認めることができるものと解するのを相当とする。
 本件についてこれをみるに、この点に関する原判決の判示は、要するに次のとお
りである。「被上告人に対する所論勾留延長につき、(一)本件勾留の基礎となつ
た被疑事実は「控訴人(被上告人)が昭和二八年四月上旬頃同月二五日施行の参議
院議員通常選挙にあたり鳥取県より立候補したEに当選させる目的で判示F方で同
人に対し右候補者のために投票取纒めの選挙運動を依頼し投票買収並びにその報酬
として現金数万円を供与した」との単純な一個の事実であり、重要参考人と認めら
れる者は右F及び控訴人に対し右金員を交付したと推定されるGの二名に過ぎず、
しかも右両名は控訴人と同じ頃鳥取市内において勾留せられていたことが明白であ
る。(二)当時鳥取地方検察庁には一〇〇名前後の公職選挙法違反事件が送致され、
本件被疑事件の及川主任検事において当時かなり多忙であつたことを推認するに難
くないけれども、この事実の故に前記の如き単純な事案につき更に捜査をする必要
があつたものとも認められず、実際においても五月二五日勾留期間の延長より六月
二日釈放に至るまでの間に検察官山崎貞一の控訴人に対する取調があつたほか他に
捜査が行われた形跡を認めることはできない。(三)主として控訴人の取調に当つ
たI巡査及び及川検事において控訴人の自白内容の真実性につき疑念を懐いていた
ことを認め得るに拘らず、同巡査及び同検察官において控訴人の弁解及び不在証明
となるべき資料の取調の申出を十分に聴取して勾留期間内にその十分な取調をした
形跡を窺うことはできない。以上は挙示の証拠により認定しうるが、右事実によれ
ば結局その必要がないのに勾留期間の延長を請求した点及び右請求を容れて右期間
を延長した点において判示検察官及び判示鳥取地方裁判所裁判官に過失があつたも
のである。」というのである。
 しかしながら、(一)被上告人は、昭和二八年五月一三日巡査部長J及び巡査K
の取調に対し被疑事実を否認したが、同月一五日に至り巡査Iに対し、Fに交付し
た買収費は衆議院議員Lのためのものであるという点を除き被疑事実一切につき詳
細な自白をし、翌一六日検事及川直年に対し右同様の自白をしたことは、原審の確
定した事実であるが、原審に現われた甲三ないし六号証、同八、一〇号証、乙八、
一〇、一一、一三号証(いずれも本件勾留延長請求の資料)によれば、被上告人は、
捜査官に対し或は自白し、或は衆議院議員候補者Lのためその選挙運動の参謀であ
るGから前記二万円を受けとつてこれをFに交付したと述べ、或は被疑事実を全面
的に否認したりして、その供述は変転を重ねにわかに真相を把握し難いことが窺え
なくない。(二)また、鳥取地区警察署司法警察員が同月一三日午后五時頃同署捜
査室において被上告人の容貌をFに見せ(いわゆる面通し、面割り)たところ、同
人は十中八、九被上告人が前記被疑事件のO某に相違ない旨供述したこと、及川検
事は鳥取地方裁判所裁判官に対し被上告人の勾留延長請求書を提出するにあたり原
判示の一件捜査記録を資料として添付したことは、いずれも原審の確定した事実で
ある。(三)そして、原審に現われた乙五号証(Mの供述調書)及び証人Nの証言
によれば、本件被疑行為当時被上告人の住居地である鳥取県気高郡a村大字bには、
被上告人と同姓のM、O、P、Qの四名が居住し、そのうち本件の真犯人であるこ
とがその後判明したOは被上告人の勾留中所在不明であつたことが窺えないことは
ない。
 以上の事実関係からすれば、被上告人の供述は変転してその真相を把握し難いた
め、取調に当つた判示検察官としては、重要参考人の一人と目される前記Oの所在
を確かめた上、被上告人の勾留中にこれを取調べることが起訴、不起訴の決定上必
要であると考える余地があつたということができ、右検察官においてかく考えたと
すればたとえ勾留期間延長後において取調が右判示の程度にしか行われなかつたと
しても、勾留期間延長請求そのものは失当ということはできない。右裁判官につい
ても、同様の理由によつて、本件勾留延長請求を認容したことに過失があつたとは
いい難い。
 そうすると、原審が右の点を看過して、単に事案が単純な一個の事実であること
その他初に示した(一)ないし(三)の点のみから新たな証拠資料は考えられない
とし、本件勾留期間延長請求について捜査に名を藉る勾留期間延長の必要があつた
とは認められないとの理由で本件勾留延長請求について判示検察官の請求及び判示
裁判官の右請求認容の裁判について判示検察官及び裁判官の各過失をたやすく認め
たのは、審理不尽ないし理由不備のそしりがあり論旨は理由あり、原判決中上告人
敗訴の部分は破棄を免れない。それゆえ、さらに審理を尽すため、本件を原裁判所
に差し戻すべきものである。
 よつて民訴四〇七条一項に従い、裁判官全員の一致で主文のとおり判決する。
     最高裁判所第三小法廷
         裁判長裁判官    河   村   又   介
            裁判官    垂   水   克   己
            裁判官    石   坂   修   一
            裁判官    五 鬼 上   堅   磐
            裁判官    横   田   正   俊

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