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平成27年2月26日判決言渡同日原本領収裁判所書記官
平成26年(行ケ)第10217号審決取消請求事件
口頭弁論終結日平成27年2月5日
判決
原告株式会社青木商店
訴訟代理人弁護士笠間善裕
同稲葉裕之
訴訟代理人弁理士水野博文
被告株式会社ヴェルジェ
訴訟代理人弁護士村田真一
同飯田研吾
訴訟代理人弁理士八本佳子
主文
1原告の請求を棄却する。
2訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由
第1請求
特許庁が無効2013-890093号事件について平成26年8月6日に
した審決を取り消す。
第2事案の概要
1特許庁における手続の経緯等
原告は,別紙1商標目録記載の構成から成り,指定商品及び指定役務を下
記のとおりとする商標登録第5614032号商標(平成25年5月14日
出願,同年8月14日登録査定,同年9月6日設定登録。以下「本件商標」
という。甲1)の商標権者である。

第31類「野菜,果実」
第32類「清涼飲料,果実飲料,飲料用野菜ジュース,乳清飲料」
第35類「菓子及びパンの小売又は卸売の業務において行われる顧客に対す
る便益の提供,清涼飲料及び果実飲料の小売又は卸売の業務におい
て行われる顧客に対する便益の提供,加工食料品の小売又は卸売の
業務において行われる顧客に対する便益の提供,野菜及び果実の小
売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,飲食
料品の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提
供,茶・コーヒー及びココアの小売又は卸売の業務において行われ
る顧客に対する便益の提供」
第43類「菓子及び果実を主とする飲食物の提供,その他の飲食物の提供」
被告は,平成25年12月26日,本件商標についての商標登録(以下「本
件商標登録」という。)を無効にすることを求めて商標登録無効審判を請求
した。
特許庁は,上記請求について,無効2013-890093号事件として
審理を行い,平成26年8月6日,「登録第5614032号の登録を無効
とする。」との審決(以下「本件審決」という。)をし,同月18日,その
謄本が原告に送達された。
原告は,平成26年9月17日,本件審決の取消しを求める本件訴訟を提
起した。
2本件審決の理由の要旨
本件審決の理由は,別紙審判書(写し)記載のとおりである。要するに,本
件商標は,被告の登録商標である別紙2引用商標目録記載1ないし7の各商標
(以下,それぞれ「引用商標1」ないし「引用商標7」といい,これらを併せ
て「引用商標」という。)と類似する商標であって,引用商標に係る指定商品
又は指定役務と同一又は類似の商品又は役務について使用をするものであるか
ら,登録査定時において,商標法4条1項11号に該当する商標であったもの
であり,本件商標登録は同号に違反してされたものであるから,同法46条1
項1号により,本件商標登録を無効とする,というものである。
3取消事由
本件商標の商標法4条1項11号該当性の判断の誤り
第3当事者の主張
〔原告の主張〕
1審決の判断内容
本件審決は,本件商標と引用商標との類否について,おおむね以下のとおり,
判断した。
本件商標の文字部分の構成中の「Verger」の欧文字が「果樹園」を
意味するフランス語の男性名詞,その前に冠する「Le」の欧文字が男性名
詞単数の前に付けられるフランス語の定冠詞であり,「ル・ヴェルジェ」の
片仮名は,「LeVerger」の欧文字の読みを特定したものと認識さ
れるものである。
本件商標の指定商品及び指定役務を取り扱う分野では,英語とともにフラ
ンス語から成る商標も使用される頻度が比較的高いから,本件商標における
「LeVerger」の文字部分は,これに接する需要者に,その構成中
の「Le」がフランス語の定冠詞を表したものと認識されるとみるのが相当
である。そして,一般には,定冠詞には特別に注意を払わない場合も少なく
なく,商品又は役務の識別の点からみても,定冠詞を除外して,これに続く
名詞に強く注意を引き付けられる場合がむしろ多いといえる。
そうすると,本件商標に接する需要者は,その構成文字中の「Le」の文
字部分に続く,「Verger」の文字部分を本件商標における要部である
と認識し,当該文字部分から生ずる「ヴェルジェ」の称呼をもって,商品及
び役務の取引に当たる場合が多いとみるのが相当である。
したがって,本件商標は,その構成中の文字部分全体より「ルヴェルジェ」
との称呼が生じるとともに,商品及び役務の出所識別標識として強く支配的
な印象を与える「Verger」の文字部分に相応して,単に「ヴェルジェ」
との称呼が生じ,観念が生じる場合は「果樹園」との観念が生じ得るもので
ある。
引用商標
引用商標は,その構成中の「Verger」の文字部分が,最も大きく表
記され,見る者の注意を強く引くといえ,その下部に横書きされた「ヴェル
ジェ」の文字部分は,「Verger」の文字部分の読みを特定したものと
理解されるものである。これに対し,引用商標1ないし5の「おいしさ36
5日」との文字部分,並びに引用商標6及び7の「畑からあなたへ」との
文字部分は,いずれもキャッチフレーズ的な表記と理解されるものであるか
ら,商品及び役務の自他識別機能を有しないか,有するとしても極めて弱い
ものといえる。
そうすると,引用商標に接する需要者は,その構成中の「Verger」
の文字部分に着目して,商品及び役務の取引に当たる場合が多いとみるのが
相当であるから,引用商標からは「ヴェルジェ」との称呼を生じ,観念が生
じる場合は「果樹園」との観念が生じ得るものである。
以上によれば,本件商標と引用商標は,外観において類似するものとはい
えないとしても,その要部として商品及び役務の自他識別機能を有する「V
erger」の文字部分は,同一の綴り字より成るものであり,「ヴェルジェ」
との称呼及び「果樹園」との観念を共通にする類似の商標というべきである。
2しかしながら,本件商標と引用商標とは,以下のとおり類似しないものであ
るから,本件審決における両商標の類否判断は誤りである。
外観が相違すること
ア本件商標の外観
本件商標の文字部分の「LeVerger」は,あたかも毛筆で描
いたように流れるような細字の筆記体で表記され,かつその文字辺には
細太の抑揚が付けられており,全体として流麗感のある外観となってい
る。そして,これにより,取り扱う商品の上品さと高級感が醸し出され
て,需要者に強い印象を与えるものとなっている。
このような外観において,「Le」と「Verger」とを2語の単
語として認識した場合は,両単語とも語頭は大文字とされ,かつ同じ大
きさの同一書体の文字で表記されているため,単語間に若干の空間が
あっても,両単語は,全体として連続性と一体感のある結合商標として
認識されるものである。
また,本件商標の文字部分は,語頭の「L」と「Verger」の「V」
に至る筆記線の流れの間に小文字表記の「e」を浮かせて挟むように配
置したものと認識され得るものである。このように認識された場合は,
見る者に対し,文字列の連続性と一体感を,より強く与えるといえる。
本件商標の背景(文字以外の部分)は,矩形状(横長長方形)に区画
した領域全体をオレンジ系の彩色で塗り潰すとともに,その中央部に白
抜きした真円を配置して成るものである。その構図は,人の意識に強く
作用するものとなっている。
欧文字「LeV
erger」を同色のオレンジ色で表記して配している。
これにより,本件商標は,文字部分がより鮮明に浮き立たされ,文字
部分と背景とが一体感のあるものとなっており,これに接した者は,文
字部分と背景とを全体としてまとまりのある一体の結合商標(模様)と
して認識する。
商標の類否判断に当たっては,図形や絵図と結合した商標の外観から
醸し出されるイメージが,商品及び役務の自他識別性に及ぼす影響につ
いても考慮すべきである。
イ引用商標の外観
引用商標1ないし5は,文字部分の全体を水平方向を長径とする細い
線で描かれた楕円形で囲む構成となっており,引用商標6及び7は,こ
の楕円形の内側にこれと相似形の楕円形を配し,内側の楕円形の内部を
文字部分を残して緑色に塗り潰して彩色した構成となっている。
そして,文字部分は,語頭が大文字で,それ以外の文字は小文字のゴ
シック体で表記され,「V」の文字の上方開口部には,●印(引用商標
1ないし5は,比較的径の小さい黒色,引用商標6及び7は,比較的径
の大きな赤色となっている。)を浮かせるように配している。
以上のとおり,引用商標は,その輪郭が楕円形を基調とした構成となっ
ており,本件商標がその輪郭を水平方向長辺の矩形状としているのとは
明らかに異なる。
さらに,引用商標6及び7は,黒文字,白文字,赤丸,及び緑色楕円
形と4種の色彩(無彩色を含む)を用いて構成しており,本件商標が単
一色であるのとは印象が明らかに異なる。
引用商標は,書体はもちろん大きさも異なり,かつ文字列の外観にも
共通性のない,欧文文字列,片仮名文字列及びひらがな文字列を3段に
配し,このような煩雑で,まとまりのない文字列を一括りのものとする
ために,細線で描かれた楕円形で囲ったにすぎないものである。
ウ以上のとおり,本件商標と引用商標とは,外観において明確に相違して
いるから,時と場所を違えて行う離隔観察においても,十分に識別が可能
である。
称呼及び観念が共通しないこと
ア本件商標の称呼及び観念
本件審決は,本件商標における「LeVerger」の文字部分は,
これに接する需要者に,その構成中の「Le」がフランス語の定冠詞を
表したものと認識されるとみるのが相当であり,本件商標に接する需要
者は,その構成文字中の「Le」の文字部分に続く,「Verger」
の文字部分を本件商標における要部であると認識し,当該文字部分から
生ずる「ヴェルジェ」の称呼をもって,商品及び役務の取引に当たる場
合が多いとみるべきである旨判断した。
しかしながら,「Le/ル」はフランス語の定冠詞であるが,我が国
におけるフランス語の普及度が低いことからすれば,英語の「THE」
と同じように扱うことはできない。本件商標に接する需要者において,
「Le/ル」がフランス語の定冠詞であると,無理なく速やかに認識で
きるとする根拠はない。
我が国において,「Le/ル」がフランス語の定冠詞であると一般に
認識されているとはいえないから,「Le」と「Verger」との間
には印象又は認識に軽重の差はなく,本件商標の文字部分は,一連一体
の語句としてのみ認識されるとみるべきである。
一般にフランス語の単語を称呼する場合は,その発音に慣れていない
ため,英語読み,又はローマ字読みをするが,本件商標は,片仮名文字
「ル・ヴェルジェ」を併記しているため,需要者はこれを読みと認識す
る。
そして,一般に,欧文字と仮名文字とを併記した構成の商標において,
その仮名文字部分が欧文字部分の称呼を特定すべき役割を果たすものと
無理なく認識できるときは,仮名文字部分から生じる称呼が,その欧文
字部分から生じる自然の称呼とみるべきである。
また,我が国においてフランス語が英語ほど普及していないという現
状からすれば,需要者において,「LeVerger」の表記と片仮
名併記を見て,無理なく「果樹園」を意味するフランス語であると認識
するとはいえず,特定の観念を生じないというべきである。
以上によれば,本件商標は,特定の意味合いを有しない,一種の造語
として認識されるものであり,その結果,「ルヴェルジェ」とよどみな
く一気一連の称呼のみが生じるものである。
イ引用商標の称呼及び観念
引用商標の文字部分のうち「Verger」からは「ヴェルジェ」のみ
の称呼が無理なく生じる。
そして,引用商標についても,本件商標と同様に,需要者において,「V
erger」を「果樹園」を意味するフランス語であると認識するとはい
えず,特定の観念を生じるとはいえない。
ウ以上のとおり,本件商標からは「ルヴェルジェ」の称呼が,引用商標か
らは「ヴェルジェ」の称呼がそれぞれ生じるが,本件商標は4音文字,引
用商標は3音文字から構成されているため,これを称呼した場合には,語
頭音が強く印象に残るものである。そして,両商標は語頭音が明らかに相
違するため,十分に聞き分けることができるものである。
また,本件商標,引用商標ともに特定の観念を生じないものである。
したがって,本件商標と引用商標とは,称呼において相違し,観念にお
いて共通しないものである。
誤認混同を生じるおそれがないこと
ア原告の主力商品であるタルトは,食材の選択やその加工工程において,
いわゆる「こだわり」をもって製造された商品であるため,需要者として
は,ある特定の趣向と注意力と選別眼を持った消費者を想定すべきである。
本件商標と引用商標の両商標が使用された場合に,商品や役務の出所に
誤認混同を生じるおそれがあるか否かを判断するについては,本件商標の
需要者がかかる属性を有することも考慮すべきである。
イまた,インターネットを用いたタウンページ,全国の通販商品,及び飲
食店についてウェブサイトを検索すると,フランス語の定冠詞「Le」や
「ル」の文字を除けば,同一又は類似の名称となる店名が多数存在してい
ることが解る(甲47,48)。
このことから,商圏が重なる地域においても「ル・○●●○」と「○●
●○」とが検索され,それらが誤認混同を生じることなく併存しているも
のと推測することができる。
このような実情に照らせば,需要者は,「ル」をフランス語の定冠詞と
して認識することなく単に語頭についた音列の一部の音を表す文字として
認識し,その後に続く語句と一体として一連に称呼して記憶し,商取引に
おいても,需要者のかかる認識を商品及び役務の識別手段としているもの
と解される。
ウ以上の点からすれば,本件商標と引用商標とは,誤認混同を生じるおそ
れのないものであるといえる。
まとめ
以上によれば,本件商標と引用商標とは,外観及び称呼において相違し,
観念においても共通せず,両商標が同一又は類似の商品又は役務に使用され
る場合に,商品又は役務の出所につき誤認混同を生じるおそれのないもので
あるから,本件商標は引用商標と類似する商標ではない。
したがって,本件商標は,引用商標と類似する商標であって,商標法4条
1項11号に該当するとした本件審決の判断には誤りがあり,この違法は本
件審決の結論に影響を及ぼすものであるから,本件審決は取り消されるべき
である。
〔被告の主張〕
1本件商標は,引用商標と類似する商標であって,商標法4条1項11号に該
当するとした本件審決の判断には,以下のとおり誤りはない。
2外観について
ア本件商標は,「Le」と「Verger」の文字の間に1字程度(原
告はこれを若干と表現するが,いずれにせよ間隔があることは争いがな
い。)の間隔を有しており,視覚上分離して把握されるものであり,片
仮名文字についても「ル」と「ヴェルジェ」の間に「・(黒点)」を介
して表されているので,欧文字と同様に,「ル」と「ヴェルジェ」は視
覚上分離して把握される。
したがって,本件商標は,各構成部分がそれを分離して観察すること
が取引上不自然であると思われるほど不可分的に結合しているものと認
められない商標であり,その構成部分の一部である「Verger/ヴェ
ルジェ」によって簡略に称呼,観念され得るものであるから,「Ver
ger」の文字部分を本件商標の要部と捉えて類否判断を行うべきであ
る。
原告は,「Le」と「Verger」を一体と捉える理由として,両
語とも語頭を大文字で表した同じ大きさの同じ文字書体であることを挙
げるが,かかる特徴は,むしろ「Le」と「Verger」を別々に捉
える理由になるものである。
また,原告は,語頭の「L」と「Verger」の「V」に至る筆記
線の流れの間に小文字表記の「e」を浮かせて挟むように配置したもの
と認識することができるから,見る者に対し,文字列の連続性と一体感
をより強く与える効果がある旨主張するが,独自の見解にすぎない。
イ原告は,本件商標においては,見る者が,文字と背景とが一体化したも
のとして認識し,その状態のまま模様としても認識が行われるものである
旨主張する。
しかしながら,本件商標は,「Verger」の文字部分こそが,需要
者に対し,商品及び役務の出所識別標識として強く支配的な印象を与えて
いるのであり,文字と背景とを一体化した全体の外観のイメージが,商標
の商品及び役務の自他識別性に影響するという原告の主張は失当である。
本件商標の外観(矩形状に区画した領域全体をオレンジ系の彩色で塗り
潰すとともにその中央部を白抜きにした真円を配置して成る構成)は,極
めて簡単かつありふれた構成であって,それ自体,商品及び役務の自他識
別力を欠くことは明らかである。
したがって,かかる外観要素が本件商標と引用商標との類否判断におい
て重要視されることはないし,これを文字部分と一体不可分に捉えるべき
理由もない。
称呼及び観念について
ア原告は,「Le/ル」はフランス語の定冠詞であるが,我が国における
フランス語の普及度が低いことからすれば,需要者において,「Le/ル」
がフランス語の定冠詞であると,無理なく速やかに認識できるとはいえな
い旨主張する。
しかしながら,甲46ないし48では,菓子・パン・ケーキの販売店や
フランス料理を主としたレストランなどの店名において,「ル」ないし「L
e」が多数用いられ,その後に「・」(中黒),スペース,もしくは「-」
(ハイフン)を有していることが示されている。こうした現状に照らして
も,需要者は,「ル」ないし「Le」がフランス語の定冠詞であると容易
に理解し得る。
仮に,定冠詞とまで認識しないとしても,少なくとも,「ル」ないし「L
e」には出所識別としての意味はなく,その後に続く「Verger」の
部分に着目して出所を認識するといえる。
したがって,本件商標の要部は,「Verger」の文字部分であり,
この部分から「ヴェルジェ」との称呼も自然に生じる。
イ原告は,我が国においてフランス語が英語ほど普及していないという現
状からすれば,需要者は,「LeVerger」の表記から「果樹園」
との観念を想起するとはいえず,一種の造語として認識するに止まる旨主
張する。
しかし,英語との比較において我が国においてフランス語が普及してい
ないといっても,フランス語の普及度が絶対的に低いことにはならない。
また,需要者において,たとえ「Verger」が果樹園を意味するフ
ランス語であるとまで認識することができないとしても,日本中にフラン
ス語の店名があふれており,多くのフランス語の冒頭に「Le」や「ル」
が表記され,その後に「・」(黒点),スペース,もしくは「-」(ハイ
フン)を有していることに照らせば(甲46ないし48),「Le」や「ル」
が冠詞に相当するものであることや少なくとも特別な意味があるわけでは
ないことを認識することは容易なことである。
ウ原告は,「LeVerger」の文字部分が一種の造語として,「ル
ヴェルジェ」と一気一連の称呼のみが生じる旨主張する。
しかしながら,本件商標は,「Le」と「Verger」の文字の間に
1字程度の間隔を有しているため,視覚上分離して把握されるものであり,
片仮名文字についても「ル」と「ヴェルジェ」の間に「・(黒点)」を介
して表記されているので,欧文字と同様に,「ル」と「ヴェルジェ」は視
覚上分離して把握される。
したがって,一体不可分の造語であるなどとはいえず,本件商標が一連
一体の語句として認識されるとの原告の上記主張は失当であって,本件商
標からは,「ルヴェルジェ」の称呼のみならず,「ヴェルジェ」との称呼
も生じる。
エ以上によれば,本件商標と引用商標とは,外観において差異があるとし
ても,その要部として商品及び役務の自他識別機能を有するのは,本件商
標と引用商標ともに「Verger」の文字部分であり,かかる文字部分
は,同一の綴り字から成り,「ヴェルジェ」の称呼及び「果樹園」の観念
を共通にする。
誤認混同のおそれについて
ア原告は,その主力商品であるタルトは,食材の選択やその加工工程にお
いて,いわゆる「こだわり」をもって製造された商品であるため,需要者
としては,ある特定の趣向と注意力と選別眼を持った消費者を想定すべき
である旨主張する。
しかしながら,そもそも,広範な商品・役務を指定商品ないし指定役務
とする本件商標の識別において,販売対象とする需要者として,ある特定
の趣向と注意力と選別眼を持った消費者を想定することにいかなる意味が
あるのか不明である。
また,タルトという商品自体,一般家庭でも調理されるありふれた料理
であり,これが特別な商品であるともいえない。
仮に,原告の主張に従い,原告の販売対象とする需要者として,ある特
定の趣向と注意力と選別眼を持った消費者を想定するのであればなおさら,
このような需要者が本件商標に接すれば,一般の者に比べ,より容易に「L
eVerger」の「Le」がフランス語の定冠詞であると認識し得る
ものと考えられる。
イ原告は,商圏が重なる地域においても「ル・○●●○」と「○●●○」
とが検索され,それらが誤認混同を生じることなく併存している実情に照
らせば,需要者は,「ル」をフランス語の定冠詞として認識することなく
単に語頭についた音列の一部の音を表す文字として認識し,その後に続く
語句と一体として一連に称呼して記憶し,商取引においても,需要者のか
かる認識を商品及び役務の識別手段としているものと解される旨主張する。
しかしながら,商圏が重なる地域において併存しているからといって,
それが混同を生じていないと評価することには何の根拠もない。
また,需要者が,「ル」をフランス語の定冠詞として認識することなく,
単に語頭についた音列の一部の音を表す文字として認識し,あるいは,そ
の後に続く語句と一体として一連に称呼して記憶しているといった原告の
主張も,何ら根拠のないものである。
むしろ,簡易迅速をたっとぶ商取引においては,「LeVerger」
及び「ル・ヴェルジェ」から成る本件商標に接した需要者は,特別の意味
のない「Le」ないし「ル」を除き,より簡略な「Verger」ないし
「ヴェルジェ」と認識すると考えるのが合理的である。
ウ以上によれば,本件商標と引用商標は,同一又は類似の商品又は役務に
使用される場合に,商品又は役務の出所について誤認混同を生じるおそれ
がある。
まとめ
本件商標と引用商標とは,その称呼及び観念を共通にし,両商標が同一又
は類似の商品又は役務に使用される場合に,商品又は役務の出所につき誤認
混同を生じるおそれがあるといえるから,本件商標は引用商標と類似する商
標である。
したがって,本件審決における判断に誤りはなく,原告の主張する取消事
由は理由がない。
第4当裁判所の判断
当裁判所は,本件商標は,引用商標と類似する商標であり,商標法4条1項
11号に該当する商標であるから,本件商標登録を無効とするとした本件審決
に取り消されるべき違法はないと判断する。その理由は次のとおりである。
1商標の類否判断について
商標法4条1項11号に係る商標の類否は,同一又は類似の商品又は役務に
使用された商標が,その外観,観念,称呼等によって取引者,需用者に与える
印象,記憶,連想等を総合して,その商品又は役務に係る取引の実情を踏まえ
つつ全体的に考察すべきであり,しかも,その商品又は役務の取引の実情を明
らかにし得る限り,その具体的な取引の実情に基づいて判断すべきものである
(最高裁昭和43年2月27日第三小法廷判決・民集22巻2号399頁参照)。
そして,文字や図形等の複数の構成部分を組み合わせた結合商標については,
各構成部分がそれを分離して観察することが取引上不自然であると思われるほ
ど不可分的に結合しているものと認められない場合,取引の実際においては,
必ずしもその構成部分全体によって称呼,観念されず,一部の構成部分のみに
よって称呼,観念されることも少なくないといえるから,結合商標の構成部分
の一部が取引者,需要者に対し商品又は役務の出所識別標識として強く支配的
な印象を与えるものと認められる場合,それ以外の部分から出所識別標識とし
ての称呼,観念が生じないと認められる場合などは,当該構成部分を要部とし
て抽出し,この部分のみを他人の商標と比較して商標の類否を判断することが
できるというべきである(最高裁昭和38年12月5日第一小法廷判決・民集
17巻12号1621頁,最高裁平成5年9月10日第二小法廷判決・民集4
7巻7号5009頁,最高裁平成20年9月8日第二小法廷判決・裁判集民事
228号561頁参照)。
上記の観点から,本件商標と引用商標の類否について検討する。
2本件商標について
「Verger」の文字部分の要部抽出の可否について
ア本件商標は,別紙1商標目録記載のとおりの外観であって,①オレンジ
色の横長長方形の中央部分に,該長方形の長辺の約半分の直径の白色の真
円を配し,②該白色の真円内の中央部分に,「LeVerger」の欧
文字を,オレンジ色の筆記体で,ほぼ該真円の直径と同じ幅の横書きにし,
③該白色の真円内で,かつ該欧文字中の「ger」の文字の上部に,「ル・
ヴェルジェ」の片仮名を,該欧文字に比して相当小さいオレンジ色の文字
で横書きにして成るものである。
本件商標の構成態様に鑑みると,本件商標の各構成部分(上記①ないし
③の構成部分)は,それぞれこれを分離して観察することが取引上不自然
であると思われるほど不可分的に結合しているものとまではいえない。
本件商標の構成部分のうち文字部分は,「LeVerger」の欧文
字部分と「ル・ヴェルジェ」の片仮名部分とから成るが,「LeVer
ger」の欧文字が白色の真円内の中央部分に,真円の直径とほぼ同じ幅
で表されているのに対し,「ル・ヴェルジェ」の片仮名は,該欧文字のう
ち「ger」の文字,すなわち,末尾3字の小文字の上部に,該小文字に
比して相当小さな文字で表されていることなど,「LeVerger」
の欧文字部分と「ル・ヴェルジェ」の片仮名部分の文字の大きさやその配
置に照らし,「LeVerger」の欧文字部分は,その外観上,見る
者の注意を最も強く引く部分であると認められる。他方で,「ル・ヴェル
ジェ」の片仮名部分は,「LeVerger」の欧文字部分の読みがな
を示したものと認められるものであり,その外観上,見る者の注意を引く
部分であるとは認められない。
そして,「LeVerger」の欧文字部分は,「L」と「V」の文
字は筆記体の大文字で表されているのに対し,それ以外の文字は小文字の
筆記体で表されていること,小文字の「e」と大文字の「V」との間には
やや間隔が空いていることに照らし,視覚上,「Le」と「Verger」
との二語から成るものと看取され,しかも,「Le」は,フランス語では
定冠詞であって,それ自体に格別の意味がないものであるから,取引者,
需要者は,欧文字部分のうち「Verger」の文字部分を出所を示す識
別標識として顕著な部分と認識し,これから生ずる称呼をもって取引に当
たる場合も少なくないものと推認し得る。
これに対し,本件商標の構成部分のうち上記①の図形部分は,オレンジ
色の横長長方形の中央部分に,該長方形の長辺の約半分の直径の白色の真
円を配したというものであり,格別特徴のある図形ではないから,取引者,
需要者に対して商品又は役務の出所を示す識別標識として機能する部分で
あるとは認められない。
イ以上によれば,取引者,需要者は,本件商標を常に一体的に認識するだ
けでなく,外観上,見る者の注意を最も強く引く部分であり,かつ,より
強い出所識別力を有する「Verger」の文字部分をもって,商品又は
役務の出所を示す識別標識としてとらえる場合も少なくないものと認めら
れるから,「Verger」の文字部分が,取引者,需要者に対し商品又
は役務の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものと認められる。
したがって,「Verger」の文字部分を本件商標の要部として抽出
し,本件商標と引用商標との類否を判断することができるというべきであ
る。
称呼及び観念について
ア本件商標を全体的に観察した場合,「ル・ヴェルジェ」の片仮名部分は,
「LeVerger」に近接して表されていることから,該欧文字部分
の読みを表したものと理解するのが通常であるといえるので,「LeV
erger」の文字部分から「ルヴェルジェ」の称呼が生じる。また,上
記片仮名部分は,のとおり,その文字の大きさや配置に照らし,
本件商標の外観上,見る者の注意を引く部分であるとは認められないから,
「LeVerger」の文字部分からは「ルベルジェ」,「ルバージャー」
との称呼も生じる。なお,本件商標の図形部分からは称呼や観念が生じる
とは認められない。
次に,本件商標においては,イのとおり,「Verger」の文
字部分が要部であるといえるから,該文字部分から,「ヴェルジェ」,「ベ
ルジェ」,「バージャー」との称呼が生じる。
イ「LeVerger」の文字部分のうち,「Le」はフランス語では
定冠詞であって,「Verger」は,フランス語では「果樹園」を意味
する名詞であるが(白水社「仏和大辞典」参照),「Verger」との
フランス語が,我が国において一般的に知られた語であるとはいえないか
ら,本件商標からは,特段の観念は生じない。
原告の主張について
ア原告は,本件商標は,文字部分と背景(図形部分)とが一体感のあるも
のとなっており,これに接した者は,文字部分と背景(図形部分)とを全
体としてまとまりのある一体の結合商標(模様)として認識する旨主張す
る。
しかしながら,前記ア記載の本件商標の構成態様からみると,図形部
分も格別特徴のある図形ではないことに照らせば,文字部分と図形部分の
各構成部分がそれを分離して観察することが取引上不自然であると思われ
るほど不可分的に結合しているものとまではいえない。
したがって,原告の上記主張は理由がない。
イ原告は,本件商標に接した者が,「LeVerger」の文字部分を,
全体として連続性と一体性のある結合商標として認識する旨主張する。
しかしながら,「LeVerger」の欧文字部分は,「L」と「V」
の文字は筆記体の大文字で表されているのに対し,それ以外の文字は小文
字の筆記体で表されていること,小文字の「e」と大文字の「V」との間
にはやや間隔が空いていることに照らし,視覚上,「Le」と「Verg
er」との二語から成るものと看取される。
また,「Le」は,フランス語では定冠詞であって,それ自体に格別の
意味がないものであるから,取引者,需要者は,欧文字部分のうち「Ve
rger」の文字部分を出所を示す識別標識として顕著な部分と認識し,
これから生ずる称呼をもって取引に当たる場合も少なくないものと推認し
得る。
したがって,「LeVerger」の文字部分を構成する「Le」と
「Verger」の各構成部分がそれを分離して観察することが取引上不
自然であると思われるほど不可分的に結合しているものとまではいえない。
なお,原告は,我が国において「Le」がフランス語の定冠詞であると
一般に認識されているとはいえないから,「Le」と「Verger」と
の間には印象又は認識に軽重の差はなく,「LeVerger」の文字
部分は,一連一体の語句としてのみ認識される旨主張する。
しかしながら,証拠(甲46ないし48,甲55ないし66)によれば,
我が国において,フランス語を用いた名称の店,「Le」や「ル」を冠し
た名称の店が一般的に存在していることが認められる。このことからして
も,仮に,取引者,需要者において,「Le」がフランス語では定冠詞で
あることを明確に認識しなかったとしても,少なくとも,「LeVer
ger」との欧文字は,一語から成るものではなく,「Le」と,これに
続く「Verger」との二語から成るものであること,「Le」は,こ
れに続く「Verger」に冠された文字であって,格別の意味を有しな
い語であることは容易に理解し得るものといえる。
したがって,原告の上記主張も理由がない。
ウ原告は,本件商標に接した者は,「ル・ヴェルジェ」の片仮名部分は「L
eVerger」の読みを表したものであると理解するから,本件商標
からは「ルヴェルジェ」の一気一連の称呼のみが生じる旨主張する。
本件商標を全体的に観察した場合,「ル・ヴェルジェ」の片仮名部分は,
「LeVerger」に近接して表されていることから,該欧文字部分
の読みを表したものと理解するのが通常であるといえるが,そもそも「ル・
ヴェルジェ」と「ル」と「ヴェルジェ」との間に「・(中黒点)」を付し
ているから,「ル」と「ヴェルジェ」との間に一呼吸置く称呼も生じ得る
と考えられ,一気一連の称呼のみが生じるとは認め難い。
また,「LeVerger」の欧文字が白色の真円内の中央部分に,
真円の直径とほぼ同じ幅で表されているのに対し,「ル・ヴェルジェ」の
片仮名は,該欧文字のうち「ger」の文字,すなわち,末尾3字の小文
字の上部に,該小文字に比して相当小さな文字で表されているから,見る
者において,本件商標を注意深く観察しないときは,「ル・ヴェルジェ」
の片仮名部分を看取しないか,あるいは,看取してもその文字列を明確に
認識しない場合もあるものと推認される。
したがって,本件商標において,「ル・ヴェルジェ」の片仮名が配され
ていることは,「LeVerger」の欧文字部分のうち,「Verg
er」の文字部分が要部であると捉えることの妨げとはならず,この部分
からは「ヴェルジェ」等の称呼が生じる。
よって,原告の上記主張は理由がない。
3引用商標及び取引の実情について
引用商標1ないし5について
ア外観について
引用商標1ないし5は,別紙2引用商標目録記載1ないし5のとおりの
外観であって,①横長楕円形状の輪郭線を配し,②該楕円形状の輪郭線内
上部側に,「Verger」の欧文字をブロック体で横書きにし,該欧文
字の「V」の文字の開口部上部中央には,該文字を構成する線の幅と略同
幅を直径とする黒丸を配し,③該楕円形状の輪郭線内の下部側に,「ヴェ
ルジェ」の片仮名を該欧文字よりやや小さな文字で横書きし,④該楕円形
状の輪郭線内で,かつ該片仮名文字の下部に,「おいしさ365日」との
文字列を該片仮名文字より小さな文字で横書きした構成より成る。
イ称呼及び観念について
引用商標1ないし5の前記アの構成態様に鑑みると,引用商標1ない
し5の各構成部分(前記アの①ないし④の構成部分)はそれぞれこれを
分離して観察することが取引上不自然であると思われるほど不可分的に
結合しているものとまではいえない。
そして,引用商標1ないし5の構成部分のうち,上記①の図形部分は,
横長楕円形状の輪郭線であり,格別特徴のある図形ではないから,取引
者,需要者に対して商品又は役務の出所を示す識別標識として機能する
部分であるとは認められない。
引用商標1ないし5の構成部分のうち文字部分は,「Verger」
の欧文字部分,「ヴェルジェ」の片仮名部分,「おいしさ365日」と
の文字列から成るが,「Verger」の欧文字が最上段に,かつ最も
大きな文字で表されていること,「ヴェルジェ」の片仮名部分は,「V
erger」の文字部分の読みを表したものと理解するのが通常である
といえること,「おいしさ365日」との文字列は,「おいしさ(美味
しい食品)を365日(1年中)顧客に届ける」といった意味合いの商
品又は役務の内容を説明する部分にすぎないと解されることに照らすと,
「Verger」の欧文字部分が,外観上,見る者の注意を最も強く引
く部分であり,取引者,需要者に対し商品又は役務の出所識別標識とし
て強く支配的な印象を与える部分であると認められる。
したがって,「Verger」の文字部分を引用商標1ないし5の要
部として抽出し,本件商標と引用商標との類否を判断することができる
というべきである。
引用商標1ないし5を全体的に観察した場合,前記のとおり「ヴェル
ジェ」の片仮名部分は,「Verger」の読みを表したものと理解す
るのが通常であるといえるから,「Verger」の文字部分から「ヴェ
ルジェ」の称呼が生じる。これに対し,引用商標1ないし5の図形部分
からは称呼や観念が生じるとは認められないし,「Verger」の「V」
の文字の開口部上部中央には黒丸が配されているが,当該部分から称呼
や観念が生じるとも認められない。また,「おいしさ365日」との文
字列は,前記のとおり,商品又は役務の内容を説明する部分にすぎない
と解されるから,これが出所識別機能を有する部分であるとは認められ
ず,該文字列から識別機能を有する称呼や観念が生じるとは認められな
い。
引用商標1ないし5においては,「Verger」の文字部分が要部
であるといえるが,該文字部分からは,「ヴェルジェ」との称呼が生じ
る。
「Verger」とのフランス語が,我が国において一般的に知られ
た語であるとはいえないから,引用商標1ないし5からは,特段の観念
は生じない。
引用商標6及び7について
ア外観について
引用商標6及び7は,別紙2引用商標目録記載6及び7のとおりの外観
であって,①横長楕円形状の輪郭線及び該輪郭線内にこれと略相似形の緑
色の横長楕円形を配し,②該緑色の楕円形内の中央部分に,「Verge
r」の欧文字を白色のブロック体で横書きにし,該欧文字の「V」の文字
の開口部上部中央には,該文字を構成する線の幅の略2倍の幅を直径とす
る赤丸を配し,③該緑色の楕円形内で,かつ該欧文字中の「erge」の
文字の上部に,「畑からあなたへ」との文字列を該欧文字に比して相当
小さい青色の文字で横書きし,④該緑色の楕円形内で,かつ「Verge
r」の欧文字中の「erge」の文字の下部に,「ヴェルジェ」の片仮名
を該欧文字に比して小さい青色の文字で横書きした構成より成る。
イ称呼及び観念について
引用商標6及び7の前記アの構成態様に鑑みると,引用商標6及び7
の各構成部分(前記アの①ないし④の構成部分)がそれを分離して観察
することが取引上不自然であると思われるほど不可分的に結合している
ものとまではいえない。
そして,引用商標6及び7の構成部分のうち,上記①の図形部分は,
横長楕円形状の輪郭線及び該輪郭線内にこれと略相似形の緑色の横長楕
円形を配したというものであって,格別特徴のある図形ではないから,
取引者,需要者に対して商品又は役務の出所を示す識別標識として機能
する部分であるとは認められない。
引用商標6及び7の構成部分のうち文字部分は,「Verger」の
欧文字部分,「ヴェルジェ」の片仮名部分,「畑からあなたへ」との
文字列から成るが,「Verger」の欧文字が中央部分に,白色,か
つ最も大きな文字で表されていること,「ヴェルジェ」の片仮名部分は,
「Verger」の文字部分の読みを表したものと理解するのが通常で
あるといえること,「畑からあなたへ」との文字列は,「畑で収穫し
た新鮮な食品を顧客に届ける」といった意味合いの商品又は役務の内容
を説明する部分にすぎないと解されることに照らすと,「Verger」
の欧文字部分が,外観上,見る者の注意を最も強く引く部分であり,取
引者,需要者に対し商品又は役務の出所識別標識として強く支配的な印
象を与える部分であると認められる。
したがって,「Verger」の文字部分を引用商標6及び7の要部
として抽出し,本件商標と引用商標との類否を判断することができると
いうべきである。
引用商標6及び7を全体的に観察した場合,前記のとおり「ヴェル
ジェ」の片仮名部分は,「Verger」の読みを表したものと理解す
るのが通常であるといえるから,「Verger」の文字部分から「ヴェ
ルジェ」の称呼が生じる。これに対し,引用商標6及び7の図形部分か
らは称呼や観念が生じるとは認められないし,「Verger」の「V」
の文字の開口部上部中央には赤丸が配されているが,当該部分から称呼
や観念が生じるとも認められない。また,「畑からあなたへ」との文
字列は,前記のとおり,商品又は役務の内容を説明する部分にすぎない
と解されるから,これが出所識別機能を有する部分であるとは認められ
ず,該文字列から識別機能を有する称呼や観念が生じるとは認められな
い。
引用商標6及び7においては,「Verger」の文字部分が要部で
あるといえるが,該文字部分からは,「ヴェルジェ」との称呼が生じる。
「Verger」とのフランス語が,我が国において一般的に知られ
た語であるとはいえないから,引用商標6及び7からは,特段の観念は
生じない。
取引の実情について
証拠(甲2,3,11,17,26,甲31の1ないし6,32,33,
35,67から69,71,73から75)及び弁論の全趣旨によれば,原
告は,バナナの加工卸売業を営む個人商店に始まり,その後,青果の小売業
を営むとともに,平成16年以降,フルーツタルトの販売店を「ル・ヴェル
ジェ」として展開していること(なお,原告は現在,青果小売業からは撤退
している。),原告は,現在,「ル・ヴェルジェ」をカフェを併設した店舗
とテイクアウト専門の店舗の形態で,福島県,宮城県,群馬県及び東京都内
に出店して多店舗展開していること,原告が「ル・ヴェルジェ」で販売する
タルトは,1ピース(1/10カット)当たり500円から600円程度の
価格帯のものが多いこと,被告は,青果店に始まり,現在は,「ファーマー
ズマーケットヴェルジェ」として,野菜や果物等の青果を含む食料品のスー
パーマーケットを,東京都,千葉県,群馬県,埼玉県,神奈川県内に出店し
て多店舗展開していること,また,千葉県内に「ファーマーズカフェヴェ
ルジェ」の名称の店舗を出店していることが認められる。
4本件商標と引用商標との類否について
称呼
のとおり,「Verger」の文字部分
が要部であるといえるから,該文字部分から,「ヴェルジェ」との称呼が生
じる。
及び同
したがって,本件商標と引用商標は,「ヴェルジェ」との称呼において同
一である。
外観及び観念について
アアのとおりのものであり,引用商標の外観
標の外観は相違する。
しかしながアのとおり,おおむね,オレンジ
色の横長長方形の中央部分に,該長方形の長辺の約半分の直径の白色の真
円を配し,該白色の真円内に,「LeVerger」の欧文字及び「ル・
ヴェルジェ」の片仮名を表して成るものであるが,図形部分は,格別特徴
のある図形ではないから,取引者,需要者に対し,付加的,補充的な印象
を与えるものにすぎず,当該部分が出所識別力を有するとは解されない。
おおむね,
横長楕円形状の輪郭線内に,「Verger」の欧文字(該欧文字の「V」
の文字の開口部上部中央の黒丸),「ヴェルジェ」の片仮名,「おいしさ
365日」との文字列を順に三段に配して成るものであるが,(「V」の
文字の開口部上部中央の黒丸を含め)図形部分は,格別特徴のある図形で
はないから,取引者,需要者に対し,付加的,補充的な印象を与えるもの
にすぎず,当該部分が出所識別力を有するとは解されないし,「おいしさ
365日」との文字列も,商品又は役務の内容を説明する部分にすぎず,
これが出所識別機能を有する部分であるとは認められない。
また,引用商標6及び7は,前記3
形状の輪郭線及びこれと略相似形の緑色の横長楕円形を配し,該緑色の楕
円形内に,「畑からあなたへ」との文字列,「Verger」の欧文字
(該欧文字の「V」の文字の開口部上部中央の赤丸),「ヴェルジェ」の
片仮名を順に三段に配して成るものであるが,(「V」の文字の開口部上
部中央の赤丸を含め)図形部分は,格別特徴のある図形ではないから,取
引者,需要者に対し,付加的,補充的な印象を与えるものにすぎず,当該
部分が出所識別力を有するとは解されないし,「畑からあなたへ」との
文字列も,商品又は役務の内容を説明する部分にすぎず,これが出所識別
機能を有する部分であるとは認められない。
したがって,本件商標と引用商標とは,特徴的な外観上の相違があると
はいえないというべきである。
イ本件商標も,引用商標も「Verger」とのフランス語をその構成に
含むが,「Verger」との語が我が国において一般的に知られた語で
あるとはいえないから,本件商標からも,引用商標からも特段の観念が生
じないことは,前記のとおりである。
したがって,本件商標と引用商標とは,観念上の相違があるとはいえな
い。
以上によれば,本件商標と引用商標は,称呼が同一であり,外観上の相違
は特徴的なものとはいえず,観念上の相違があるとはいえず,
の取引の実情を踏まえつつ全体的に考察すると,同一又は類似の商品又は役
務に用いられた場合には,商品又は役務の出所につき誤認混同を生じるおそ
れがある類似の商標であると認められる。
これと同旨の本件審決の判断に誤りはないというべきである。
原告の主張について
ア原告は,本件商標は,「LeVerger」の文字部分の描画や構成
文字の配置,文字部分以外の背景を構成する図形の形状や色彩などの点で,
引用商標における外観構成とは明確に相違しているから,時と場所を違え
て行う離隔観察においても,十分に識別が可能であり,本件商標と引用商
標とは,同一又は類似の商品又は役務に用いられた場合に,商品又は役務
の出所につき誤認混同を生じさせるおそれがある類似の商標であるとはい
えない旨主張する。
しかしながら,本件商標における「LeVerger」の欧文字は,
引用商標における欧文字とは異なり筆記体で表されているが,それ以上に
欧文字の描画や構成文字の配置の仕方に格別の特徴があるとは認められず,
また,図形部分も,格別特徴のある図形ではないから,取引者,需要者に
対し,付加的,補充的な印象を与えるものにすぎず,当該部分が出所識別
力を有するとは解されない。
これに対し,引用商標においても,その図形部分及び文字列(引用商標
1ないし5の「おいしさ365日」の文字列や引用商標6及び7の「畑か
らあなたへ」との文字列)が,出所識別力を有する部分であるとは認め
られない。
したがって,本件商標と引用商標との外観上の相違が,両商標の類似性
を否定するに十分なものであるとは認められない。
原告の上記主張は理由がない。
イ原告は,その主力商品であるタルトの需要者としては,ある特定の趣向
と注意力と選別眼を持った消費者を想定すべきであり,このような需要者
であれば,本件商標が引用商標と同一又は類似の商品又は役務に用いられ
たとしても,商品又は役務の出所につき誤認混同を生じさせるおそれはな
い旨主張する。
しかしながら,タルトは洋菓子の一種として一般的なものであるといえ,
その需要者として,一般の消費者とは異なる者を想定すべきであるとは直
ちにはいえない。また,本件商標の指定商品及び指定役務は,前記第2の
に限らず,野菜,果実,清涼
飲料といった商品,これらの小売又は卸売の業務において行われる顧客へ
の便益の提供,飲食物の提供等の種々の商品及び役務を対象とするもので
あるから,本件商標と引用商標との類否判断に当たって想定すべき需要者
として,「タルト」に特化した趣向を有する消費者を想定すべきであると
はいえない。
さらに,原告は,ウェブサイト検索によると,フランス語の定冠詞「L
e」や「ル」の文字を除けば,同一又は類似の名称となる店名が多数存在
し,誤認混同を生じることなく併存していることから,需要者は,「Le」
や「ル」を単に語頭についた音列の一部の音を表す文字として認識する旨
主張する。
しかしながら,このようなウェブサイト検索の結果のみから,本件商標
と引用商標との類否判断における取引の実情を的確に把握することは困難
であり,また,誤認混同の有無を把握することもできない。さらに,フラ
ンス語の定冠詞「Le」や「ル」の文字を除けば,同一又は類似の名称と
なる店名が多数存在しているとしても,このことが,需要者において「L
e」や「ル」を語頭についた音列の一部の音を表す文字として認識するか
否かとは直ちに結びつくものでもない。
原告が指摘する上記の点はいずれも,本件商標と引用商標が,同一又は
類似の商品又は役務に用いられた場合に,商品又は役務の出所につき誤認
混同を生じるおそれがあるとの認定を左右するに足りないというべきであ
る。
5結論
以上によれば,原告主張の取消事由は理由がなく,本件審判にこれを取り消
すべき違法は認められない。
したがって,原告の請求は理由がないから,これを棄却することとして,主
文のとおり判決する。
知的財産高等裁判所第4部
裁判長裁判官富田善範
裁判官大鷹一郎
裁判官柵木澄子
(別紙1)
商標目録
(登録商標)
(別紙2)
引用商標目録
1引用商標1(甲4)
登録番号商標登録第4536273号
登録商標
出願日平成13年2月16日
登録日平成14年1月18日
更新登録日平成23年7月26日
商品及び役務の区分並びに指定商品又は指定役務
第31類「野菜,果実」
第35類「フランチャイジーに対する経営指導又は助言,市場調査」
商標権者被告
2引用商標2(甲5)
登録番号商標登録第4854813号
登録商標引用商標1と同じ
出願日平成16年7月14日
登録日平成17年4月8日
商品及び役務の区分並びに指定商品又は指定役務
第29類「野菜の漬物,果実の漬物,その他の加工野菜及び加工果実,野菜
を主材とする惣菜,野菜を使用してなるカレー・シチュー」
商標権者被告
3引用商標3(甲6)
登録番号商標登録第4827182号
登録商標引用商標1と同じ
出願日平成16年8月2日
登録日平成16年12月17日
商品及び役務の区分並びに指定商品又は指定役務
第32類「清涼飲料,果実飲料,乳清飲料」
商標権者被告
4引用商標4(甲7)
登録番号商標登録第4908189号
登録商標引用商標1と同じ
出願日平成16年7月20日
登録日平成17年11月11日
商品及び役務の区分並びに指定商品又は指定役務
第30類「タルトその他の菓子及びパン」
商標権者被告
5引用商標5(甲8)
登録番号商標登録第5202443号
登録商標引用商標1と同じ
出願日平成19年12月5日
登録日平成21年2月6日
商品及び役務の区分並びに指定商品又は指定役務
第35類「茶・コーヒー及びココアの小売又は卸売の業務において行われる
顧客に対する便益の提供,菓子及びパンの小売又は卸売の業務にお
いて行われる顧客に対する便益の提供,調味料・香辛料及び食用油
脂の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,
食肉の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提
供,卵の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の
提供,食用水産物の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対
する便益の提供,野菜及び果実の小売又は卸売の業務において行わ
れる顧客に対する便益の提供,加工食料品の小売又は卸売の業務に
おいて行われる顧客に対する便益の提供」
商標権者被告
6引用商標6(甲9)
登録番号商標登録第5554107号
登録商標
出願日平成24年7月10日
登録日平成25年2月1日
商品及び役務の区分並びに指定商品又は指定役務
第30類「茶,コーヒー及びココア,フルーツゼリー,フルーツパフェ,菓
子及びパン,サンドイッチ,肉まんじゅう,ハンバーガー,ピザ,
ホットドッグ,ミートパイ,調味料,切りもち,穀物の加工品,ぎょ
うざ,しゅうまい,べんとう,米」
第35類「茶・コーヒー及びココアの小売又は卸売の業務において行われる
顧客に対する便益の提供,清涼飲料・果実飲料・乳清飲料の小売ま
たは卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,菓子及
びパンの小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の
提供,調味料・香辛料及び食用油脂の小売又は卸売の業務において
行われる顧客に対する便益の提供,牛乳及びその他の乳製品の小売
又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,食肉の
小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,卵
の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,
食用水産物の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便
益の提供,野菜及び果実の小売又は卸売の業務において行われる顧
客に対する便益の提供,加工食料品の小売又は卸売の業務において
行われる顧客に対する便益の提供,米穀類の小売又は卸売の業務に
おいて行われる顧客に対する便益の提供」
商標権者被告
7引用商標7(甲10)
登録番号商標登録第5591216号
登録商標引用商標6と同じ
出願日平成25年3月27日
登録日平成25年6月14日
商品及び役務の区分並びに指定商品又は指定役務
第43類「飲食物の提供」
商標権者被告

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