弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


戻る

○ 主文
本件控訴を棄却する。
控訴費用は控訴人の負担とする。
○ 事実
第一 申立て
一 控訴人
原判決を取り消す。
被控訴人が昭和五三年一二月一九日補助参加人に対してなした農地法二〇条一項に
よる許可申請のあつた農地の賃貸借の解除についでの許可処分は、これを取消す。
訴訟費用は、第一、二審とも被控訴人の負担とする。
二 被控訴人及び補助参加人
主文同旨
第二 主張及び証拠
次のとおり付加するほか、原判決の事実摘示のとおりであるから、これを引用す
る。
一 控訴人
1 原判決二六枚目表一一行目考慮すると」の次に「結果的にみれば原告が直接A
の意思を確認しておれば爾後の紛争が生じなかつたであろうと言うことはできて
も、直接確認しなかつたという過失をもつて」を加える。
2 同二六枚目裏一行目の次に「農地法二〇条二項一号は、賃借人の非難すべき行
為を問題にしており、本来過失は問題外の筈である。」を加える。
3 同二七枚目表六行目の次に行を変えて「ホ Aは当時本件農地の値段を一〇〇
〇万円程度と考えていたようであるが、これが客観的な相場と言う訳ではなく、本
件農地には賃借権がついており、その価値を考えると到底Aの考えているような値
段にならない。」を加える。
4 同二八枚目裏九行目の「もとでは、」の次に「たとえ転作が別件訴訟提起後で
あつたとしても、それをもつて賃貸借契約解除の理由とするのは余りにも酷である
し、」を、同一〇行目の「ものを、」の次に「別件訴訟で敗訴判決が確定し」を、
それぞれ加える。
5 同二九枚目表四行目の「ではなく、」の次に「別件訴訟提起前」を加える。
甲一三七号証(写)を提出。
丙一号証の成立を認める。
二 被控訴人
1 原判決一三枚目裏一〇行目の次に「なお、原告の右行為は単なる過失による
『信義に反する行為』ではなく、Bの代理権に疑念を有しながら、容易に確認でき
たAの意思をことさら確認することなく、Bを代理人として本件売買契約を締結
し、Aの本件農地の所有権と賃貸人としての地位を失わせようとしたもので、より
積極的な『信義に反する行為』である。」を加える。
同一九枚目表一〇行目の「解除」を削る。
2 甲一三七号証の原本の存在とその成立は不知。
三 補助参加人
丙一号証を提出。
甲一三七号証の原本の存在とその成立は不知。
○ 理由
一 当裁判所も、本件請求は理由がなく棄却すべきものと考える。その理由は、次
のとおり付加・訂正するほか、原判決の理由説示のとおりであるから、これを引用
する。
1 原判決三三枚目表三行目の[(七)」を「(六)」に改める。
同一一行目の「八号証」の次に「三〇号証」を加える。
2 同三三枚目裏二行目の「その一部」の次に「一二六号証、一二八、一二九号
証、一三一号証、一三四号証、乙六、七号証、丙第一号証」を加える。
同三行目の「四四」を「四五」に改める。
同四行目の「一〇四号証」の次に「乙五号証(一部)」を、同九行目の「四九号
証」の次に「官署作成部分の成立に争いがなく、その余の部分の成立は前掲乙五号
証によつて認められる乙三号証、証人Cの証言(一部)及び弁論の全趣旨」を、そ
れぞれ加える。
3 同三七枚目表九行目の「弁護士」から一〇行目までを次のとおり改める。「同
年六月初旬ころ原告に電話で、D夫婦が本件不動産を勝手に売つてしまつたことを
承認できないから訴訟をするつもりである旨伝え、同年七月初ころD夫婦を大阪地
方検察庁に告訴した。その後同年八月大阪弁護士会法律扶助協会の扶助決定を受
け、末永善久弁護士に本件不動産についての原告との紛争処理を委任した。
7 末永弁護士は同年九月ころから一一月まで原告と交渉したが、Aの納得する解
決が得られなかつたため、同年一二月一一日原告らに対し本件売買契約の無効を理
由として本件不動産の所有権移転登記等の抹消登記手続を求める別件訴訟を和歌山
地方裁判所妙寺支部に提起した。その間、原告は大阪地方検察庁で前記告訴事件に
ついて事情を聴取されたことがあつた。
8 原告は本件農地をAの先代Eから賃借して以来約四〇年にわたり水田として利
用してきたが、同年一一月一〇日頃本件農地に八朔を植え付け、昭和四六年四月一
九日かつらぎ町農業委員会へ米生産調整奨励補助金の交付申請をした。
9 別件訴訟について、昭和四八年二月五日和歌山地方裁判所妙寺支部でA勝訴の
判決が言渡され、その判決は昭和五〇年一月二八日大阪高等裁判所でも維持され、
同年一〇月一四日最高裁判所も原告の上告を棄却する判決を言渡し、A勝訴の判決
が確定した。Aは昭和五一年一〇月三〇日本件農地を見に行つたところ、八朔畑に
なつていることを知り、直ちに原告方を訪れ原告に口頭で水田を八朔畑に変えたこ
とに抗議し、更に昭和五二年一月二一日付書留内容証明郵便により、原告が本件農
地の利用に関し背信的行為を重ねてきたため信頼関係が完全に失われ賃貸借契約を
将来にわたつて継続することは耐えられないことを理由として、本件農地を明渡し
てほしい旨要求する書面を送付し、そのころその書面は原告に到達した。しかし、
原告はAの右抗議・要求を無視し、八朔畑への転換について承認を求めたり、水田
に復旧する旨の意思表示をしないまま、従来通り本件農地を八朔畑として使用し
た。
10 Aは前記認定のとおり従来から病弱で医療扶助等により治療を受けており、
働くことができず、昭和四五年七月から昭和五一年五月まで生活保護を受け、その
後は本件建物による月五万円程度の家賃収入しか収入がなく、扶助を受くべき身寄
もない。Aは右家賃収入だけでは生活が困難なので、本件農地を宅地に転用し、こ
れを担保にして借入金により自己の住居や貸家を建て、その家賃収入によつて将来
の生活を維持したいと考えている。なお、本件農地には現在大阪弁護士会が立て替
えた別件訴訟の訴訟費用等について大阪弁護士会に代つて末永弁護士を債権者とす
る抵当権設定登記がなされている。一方、原告は明治三九年生まれで、長女C夫婦
と共に本件農地以外に三六五四平方メートルの自作地と一二五九平方メートルの小
作地を耕作するかたわら、Cの夫Fがブロツク工として働いており、本件農地を耕
作しなくても、兼業農家として十分生計をたてることが可能である。また、本件農
地は農業振興地域の整備に関する法律八条二項一号に規定する農用地区域外にあ
る。」以上のとおり改める。
4 同三七枚目裏一行目の「一〇七号証」の次に「乙五号証」を、同「記載」の次
に「及び証人Cの証言」を、同三行目の「一〇九号証」の次に「一二六号証、一二
八、一二九号証、一三一号証、乙三号証」を、それぞれ加える。
5 同三八枚目表八行目の次に行を変え次のとおり加える。
「また、Aが本件売買契約についてD夫婦を大阪地方検察庁に告訴し、末永弁護士
に依頼して原告と交渉を開始し、原告も大阪地方検察庁から事情を聴取され、Aが
本件売買契約を認めず本件農地等の所有権の回復を求めていることを知りながら、
約四〇年にわたり水田として使用してきた本件農地を八朔畑に転換し、更に別件訴
訟で原告敗訴の判決が確定した後にAから八朔畑転換について抗議を受け、原告の
背信的行為により本件農地の賃貸借契約を継続することは耐えられないことを理由
とする本件農地明渡要求書面を受け取りながら、原告はAの右抗議・要求を無視し
何らの措置をとらず放置したもので、この原告の八朔畑転換についての一連の行為
も右信義に反する行為に当たるというべきである。
のみならず、仮に原告の前記認定の行為が農地法二〇条二項一号の信義に反する行
為に当たらないとしても、原告の右行為、前記10で認定したAと原告双方の事
情、その他前記認定の一切の事情を考慮すると、本件においては、同項五号の正当
の事由がある場合に当たるとみることができる。」
二 してみると、原判決は相当であり、本件控訴は理由がないので棄却することと
し、訴詮費用について民訴法九五条、八九条を適用して、主文のとおり判決する。
(裁判官 栗山 忍 矢代利則 河田 貢)

戻る



採用情報


弁護士 求人 採用
弁護士募集(経験者 司法修習生)
激動の時代に
今後の弁護士業界はどうなっていくのでしょうか。 もはや、東京では弁護士が過剰であり、すでに仕事がない弁護士が多数います。
ベテランで優秀な弁護士も、営業が苦手な先生は食べていけない、そういう時代が既に到来しています。
「コツコツ真面目に仕事をすれば、お客が来る。」といった考え方は残念ながら通用しません。
仕事がない弁護士は無力です。
弁護士は仕事がなければ経験もできず、能力も発揮できないからです。
ではどうしたらよいのでしょうか。
答えは、弁護士業もサービス業であるという原点に立ち返ることです。
我々は、クライアントの信頼に応えることが最重要と考え、そのために努力していきたいと思います。 弁護士数の増加、市民のニーズの多様化に応えるべく、従来の法律事務所と違ったアプローチを模索しております。
今まで培ったノウハウを共有し、さらなる発展をともに目指したいと思います。
興味がおありの弁護士の方、司法修習生の方、お気軽にご連絡下さい。 事務所を見学頂き、ゆっくりお話ししましょう。

応募資格
司法修習生
すでに経験を有する弁護士
なお、地方での勤務を希望する先生も歓迎します。
また、勤務弁護士ではなく、経費共同も可能です。

学歴、年齢、性別、成績等で評価はしません。
従いまして、司法試験での成績、司法研修所での成績等の書類は不要です。

詳細は、面談の上、決定させてください。

独立支援
独立を考えている弁護士を支援します。
条件は以下のとおりです。
お気軽にお問い合わせ下さい。
◎1年目の経費無料(場所代、コピー代、ファックス代等)
◎秘書等の支援可能
◎事務所の名称は自由に選択可能
◎業務に関する質問等可能
◎事務所事件の共同受任可

応募方法
メールまたはお電話でご連絡ください。
残り応募人数(2019年5月1日現在)
採用は2名
独立支援は3名

連絡先
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所 採用担当宛
email:[email protected]

71期修習生 72期修習生 求人
修習生の事務所訪問歓迎しております。

ITJではアルバイトを募集しております。
職種 事務職
時給 当社規定による
勤務地 〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
その他 明るく楽しい職場です。
シフトは週40時間以上
ロースクール生歓迎
経験不問です。

応募方法
写真付きの履歴書を以下の住所までお送り下さい。
履歴書の返送はいたしませんのであしからずご了承下さい。
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所
[email protected]
採用担当宛