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平成26年1月27日判決言渡
平成25年(行ケ)第10113号審決取消請求事件
口頭弁論終結日平成25年11月14日
判決
原告シイエスティー-コンピュー
タシミュレーションテク
ノロジーアクチエンゲゼ
ルシャフト
訴訟代理人弁理士長門侃二
鳥羽みさを
津末恵子
被告特許庁長官
指定代理人大森健司
渡邉健司
堀内仁子
主文
原告の請求を棄却する。
訴訟費用は原告の負担とする。
この判決に対する上告及び上告受理申立てのための付加期間を30日と
定める。
事実及び理由
第1原告の求めた判決
特許庁が不服2011-650228号事件について平成24年12月12日に
した審決を取り消す。
第2事案の概要
本件は,商標登録の拒絶査定不服審判請求を不成立とした審決の取消訴訟である。
争点は,引用商標との類否(商標法4条1項11号)である。
1特許庁における手続の経緯
原告は,「CST」の欧文字を書して成り,第9類「ソフトウェア」を指定商品
(2010年(平成22年)6月24日付け手続補正書(乙1)により,第9類「コ
ンピュータソフトウェア」に補正された。)とする本願商標について,2009年
(平成21年)7月20日,国際商標登録出願(国際登録番号第1011909号,
パリ条約による優先権主張・2009年4月20日ドイツ連邦共和国)をしたが,
特許庁から2011年(平成23年)8月25日付けで拒絶査定を受けたので,同
年12月13日,これに対する不服の審判(不服2011-650228号)を請
求した。
特許庁は,平成24年12月12日,「本件審判の請求は,成り立たない。」(出
訴期間90日附加)との審決をし,その謄本は同月25日,原告に送達された。
2審決の理由の要点
審決の理由の要点は,本願商標と下記引用商標は類似の商標であって,指定商品
も類似であるから商標法4条1項11号に該当する,というものである。
【引用商標】(登録第5414524号)
・指定商品
第9類
「測定機械器具,電気磁気測定器,電線及びケーブル,電気通信機械器具,イン
ターネットを介してダウンロードされるコンピュータソフトウエア,インターネ
ットを通じてダウンロード可能な音声及び映像,その他の電子応用機械器具及び
その部品,映写フィルム,スライドフィルム,スライドフィルム用マウント,イ
ンターネットを利用して受信し及び保存することができる画像ファイル,録画済
みビデオディスク及びビデオテープ,電子出版物」
・出願平成20年11月29日
・登録平成23年5月27日
・商標権者株式会社共和電業
第3原告主張の審決取消事由
1本願商標について
原告の業務の範囲は,数値解析技術の開発特許普及に関わる電子計算機用の「コ
ンピュータソフトウエア」と,極めて特定された専門的な分野であり,本願商標は,
その特定分野を表す自社名称を象徴する「CST」(「ComputerSimulation
Technology」の語頭のイニシャル)から成る(甲1の1)。
原告の商品は,世界30を超える国と地域で販売されており,日本においても,
販売代理店である株式会社エーイーティー(以下「エーイーティー」という。)を
介して販売されている(甲2)。原告のウェブサイト(甲3)では,その製品と特
色についての情報等がネット上で発信されており,このような専門分野で使用され
るコンピュータソフトウエアの販売については,同様の専門的な販売代理店が担当
し,購入に当たっては,その機能や内容を確認の上購入するのが通常であり,単に
商標のみによって選択されるものではない。したがって,原告の商標は,「コンピ
ュータソフトウエア」の分野で需要者・取引者にある程度認識された商標である。
2引用商標について
(1)引用商標権者の「CST方式」についての認識
引用商標「CST方式」は,その審査手続で引用商標権の所有者(以下「引用商
標権者」という。)が主張したように,「CapacitanceSelfTracing方式」の略語
であり,測定器に使用される技術の名称として採用されたもので,一体としてのみ
その意味を伝えることが可能な名前であり,分離観察すべき契機がない。審決は,
引用商標の構成中の「方式」の語を,一般的にコンピュータソフトウエアとの関連
でその使用例を示して,その識別力について判断しているが,問題となっているの
は引用商標なのであるから,まずは,引用商標の中の「方式」がどのように使用さ
れているかを検証すべきであり,そうすれば,引用商標権者が理解しているように,
「CST」と「CST方式」とは非類似とされるべきことは理解される。
また,引用商標権者は,本願商標を自己の名義として登録し原告に再度譲渡する
ことで,両商標が並存することに同意していることから見ても,本願商標と引用商
標とは十分に識別可能な非類似の商標である。
(2)「方式」を含む商標の特徴と登録例
審決は,引用商標が英文字と漢字という異なる種類の文字を組み合わせて成るこ
とから,視覚上分離されるとしているが,全体で5文字と比較的短い商標は,一見
すれば全体として把握されるのが自然で,それを文字の種類が異なるからといって,
需要者がわざわざ分離して把握しなければならない理由はない。
また,「方式」という言葉を含む商標は数多く登録されており,その指定商品・
役務は広く多種多様に亘っている(甲6の1~10)。このように,「方式」とい
う言葉は,単独ではほとんど商標としての機能を発揮することはないものの,「○
○方式」というような形で商標の中に採用されることにより,組み合わされた言葉
と相まって,全体の意味を伝えることで,商標としての機能を果たしているもので
あり,これを分離することは,全体としての意味を伝えるべく採用された商標を恣
意的に切り刻むもので,指定商品の内容にかかわらず,商標の類否判断において採
られるべき方法ではない。
したがって,引用商標は,常に一体的に把握されるべき商標で,英文字と漢字の
部分を分離して把握する合理的理由はない。
3本願商標と引用商標との類否について
(1)称呼
本願商標「CST」は,出願人の名称後半部「ComputerSimulationTechnology」
の頭文字を組み合わせた造語であり,これから「シーエスティー」の称呼が生じる。
これに対して,引用商標からは,その全体から「シーエスティーホウシキ」の称
呼が生じる。
本願商標の称呼「シーエスティー」が,長音を含めて7音であるのに対して,引
用商標の称呼「シーエスティーホウシキ」は10音で,長さが異なり,明らかに非
類似である。
(2)外観
本願商標は,デザインされた英文字「CST」から成るのに対して,引用商標は,
英文字と漢字を組み合わせた「CST方式」で,異種の文字の組合せに特色があり,
両商標は異なる外観的印象を与える。
(3)観念
本願商標は,原告の名称の一部であり,その製品分野を表す「ComputerSimulation
Technology」の頭字語であり,コンピュータソフトウエアの分野では,原告の名称
の一部としてよく知られており,原告を思い起こさせる。
これに対して,引用商標も,長年引用商標権者によって使用され,「方式」を含
む商標として,測定機械を思い起こさせる。
したがって,両商標は,観念的にも異なる要素の存在により識別可能である。
(4)総合的判断
本願商標は,専門的な「コンピュータソフトウエア」を指定商品とし,これは需
要者がじっくり自分の求める商品をその機能を中心に検討し選択する部類の商品
で,「簡易・迅速」とは無縁の領域である。
引用商標は,交流方式の計測器という特定の商品に使用する技術を表すために考
え出された名称であり,その使用態様は,技術名称としての表示であり,「計測器」
以外の使用は予定されていない(甲8)。
引用商標とは,称呼,外観,観念等を総合的に判断すれば,互いに識別可能な非
類似の商標である。
4まとめ
上記のとおり,本願商標と引用商標とは,本願商標の特定された指定商品等を総
合的に判断すれば識別可能であり,本願商標は,商標法4条1項11号に該当しな
い。
なお,原告は,引用商標権者である株式会社共和電業との間で,本願商標を相手
方に譲渡することにより本願商標の名義を変更することで拒絶理由を解消する方法
について,審決送達後から交渉中である。名義変更手続の完了により,拒絶理由は
解消される。
第4被告の反論
1本願商標及び引用商標の構成等
(1)本願商標
本願商標は,「CST」の文字を横書きして成るものと容易に看取し得るもので
あって,特異なデザインが施された特殊な態様とはいい難く,「CST」の文字は,
特定の意味を有する語として英和辞典などのなじみのある外国語辞典や一般の辞書
等に掲載されておらず,親しまれた意味を有する成語ということもできない。
そして,原告は,その指定商品との関係において,原告の名称の一部としてよく
知られており,原告を思い起こさせると主張するが,その証左として提出する甲2
(枝番号を含む。)からは,エーイーティーが原告の商品を紹介していることは認
められるが,我が国において,本願商標が,原告を思い起こさせる程度に広く知ら
れていると認めることはできない。
したがって,本願商標は,原告が主張するような,「原告を思い起こさせる」と
いうべき特段の事情はなく,また,その指定商品との関係においても,特定の意味
を有するものとして親しまれた語であるということもできないから,その構成文字
に相応して,「シーエスティー」の称呼を生じ,特定の観念を生じない。
(2)引用商標
引用商標の構成は,前半の「CST」の文字部分が欧文字で表され,また,後半
の「方式」の文字部分が漢字で表されていることから,これに接する需要者に,一
体不可分のものとしてのみ把握されるというよりは,「CST」と「方式」との二
語からなるものとして視覚上分離して看取される場合がある。
そして,引用商標構成中,前半の「CST」の文字は,特定の意味を有する語と
して英和辞典などのなじみのある外国語辞典や一般の辞書等に掲載されていないも
のであり,親しまれた意味を有する成語ということもできないものであるのに対し,
後半の「方式」の文字は,「決まった形式・やり方」(乙3)を意味するものとし
て一般的に親しまれ,使用されている(乙4~8)。
また,「決まった形式・やり方」の意味で使用されている「方式」の語が省略さ
れても,同義の語として使用されている(乙9~13)。
以上の実情からすると,引用商標構成中の「方式」の文字は,一般的に使用され
ている語であり,かつ,単に商品の「決まった形式」程度の意味を表示した部分と
理解されて省略される場合のあるものであって,自他商品の識別標識としての機能
がないか,極めて弱い部分であるから,引用商標は,その前半と後半の構成におい
て文字種が異なることとも相まって,「CST」の文字部分が,独立して自他商品
の識別標識としての機能を果たし得るものである。
そして,「CST」の文字は,引用商標の指定商品中の「インターネットを介し
てダウンロードされるコンピュータソフトウエア,その他の電子応用機械器具及び
その部品」との関係においても,一般に特定の意味を有する親しまれた語であると
いうことはできないものであるから,特定の観念を生ずることのないものである。
そうすると,引用商標をその指定商品中の「インターネットを介してダウンロー
ドされるコンピュータソフトウエア,その他の電子応用機械器具及びその部品」に
使用するときは,常にその構成全体をもって取引に資されるとは限らず,「CST」
の文字部分のみでも取引に資される蓋然性は極めて高く,「方式」の文字を捨象し,
それを除いた「CST」の文字部分に着目し,取引に当たる場合も少なくない。
したがって,引用商標は,その構成文字全体に相応して「シーエスティーホウシ
キ」の称呼を生じるほか,「CST」の文字部分から「シーエスティー」の称呼を
も生じるものであり,構成中の「CST」の文字は,上記のとおり,特定の意味を
有しないことから,その構成全体としても,また,その要部である「CST」の文
字部分からも,特定の観念を生じない。
2本願商標と引用商標の類否
(1)本願商標の指定商品と引用商標の指定商品との関係
本願商標の指定商品「コンピュータソフトウエア」は,引用商標の指定商品中の
「インターネットを介してダウンロードされるコンピュータソフトウエア,その他
の電子応用機械器具及びその部品」に含まれる。
(2)本願商標と引用商標の類否判断
ア引用商標について
引用商標「CST方式」は,上記のとおり,「CST」の文字と「方式」の文字
とから成る結合商標であって,その指定商品中の「インターネットを介してダウン
ロードされるコンピュータソフトウエア,その他の電子応用機械器具及びその部品」
との関係において,その構成中の「方式」の文字部分は,自他商品の識別標識とし
ての機能を有しないか,極めて弱い部分であるから,引用商標において,識別標識
としての機能を果たすのは,前半の「CST」の文字部分である。
そうすると,引用商標は,簡易,迅速をたっとぶ取引の実際において,「CST」
と「方式」の文字部分が,取引上不自然であると思われるほど不可分一体的に結合
しているものということもできないものであるから,本願商標と引用商標の類否を
判断するに当たり,引用商標構成中,「CST」の文字部分を抽出し,この部分を
本願商標と比較して商標そのものの類否を判断することは許される。
イ外観,称呼及び観念の対比
本願商標と引用商標の各構成は,上記のとおりであるから,両者は,「方式」の
文字の有無において相違するものの,その要部である「CST」の文字部分の綴り
が同じであるから,外観上の近似性を有する。
また,称呼については,本願商標は「シーエスティー」の称呼を生じるものであ
り,一方,引用商標は,「シーエスティーホウシキ」の称呼のほかに,「シーエス
ティー」の称呼をも生じるものであるから,両者は,「シーエスティー」の称呼を
共通にする。
さらに,観念については,本願商標及び引用商標は,ともに,特定の観念を生じ
ない。
ウ本願商標の類否判断の基準
本願商標の指定商品「コンピュータソフトウエア」と引用商標の指定商品中の「イ
ンターネットを介してダウンロードされるコンピュータソフトウエア,その他の電
子応用機械器具及びその部品」が抵触する商品であり,これらは,いずれも,ある
程度専門的な知識を要する分野のものであるとしても,現在のコンピュータ等の普
及度をみれば,その需要者には,一般の消費者が含まれるといえる。
そうすると,その需要者である,一般の消費者においては,商品の購入に際し,
商標などについて常に注意深く確認するとは限らないことは,経験則に照らして明
らかである。
したがって,簡易,迅速をたっとぶ商取引の実際にあっては,「方式」の文字部
分を捨象して「CST」の文字部分のみをもって,取引される場合のある商標とい
うべきである。
エまとめ
以上のとおり,本願商標と引用商標とは,観念において,両者を区別することは
できないものの,本願商標と引用商標の要部「CST」の構成文字が同一であるか
ら,その構成全体としても,外観において近似した印象を与えるものであって,「シ
ーエスティー」の称呼を共通にする類似の商標というべきである。
したがって,本願商標と引用商標とは,同一又は類似の商品に使用された場合に
は,商品の出所について誤認混同を生ずるおそれがある類似の商標というべきであ
る。
そして,本願商標の指定商品は,引用商標の指定商品中の「インターネットを介
してダウンロードされるコンピュータソフトウエア,その他の電子応用機械器具及
びその部品」に含まれる。
したがって,本願商標は,商標法4条1項11号に該当する。
3結語
以上のとおりであるから,審決の認定,判断に誤りはなく,原告主張の取消事由
に理由はない。
なお,原告は,本願商標が引用商標権者への名義変更により,拒絶の理由が解消
される途上にある旨述べる。しかし,引用商標の商標権者による,引用商標の使用
の蓋然性が否定できないものであり,引用商標が本願商標の査定時又は審決時にお
いて,現に有効に存続していた(乙2)以上,本願商標の商標法4条1項11号該
当性を否定することはできない。仮に,今後,本願の国際商標登録出願人について,
名義の変更がなされたとしても,権利の承継は,その旨の届出がなされることによ
り効力が生じるものであり,その権利承継の効力が審決時ないし出願時まで遡及す
るものではないから,既に行われた行政処分である審決の当否を左右するというこ
とはできない。
第5当裁判所の判断
1本願商標について
本願商標は,「CST」の欧文字を横書きして成り,「シーエスティー」の称呼
が生じるが,欧文字の単なる組合せであって,特定の語義を有しない造語と認めら
れ,特定の観念を生じない。
原告は,「CST」は「ComputerSimulationTechnology」の語頭のイニシャル
の組合せであり,コンピュータソフトウエアの分野では,原告の名称の一部として
よく知られており,原告を思い起こさせると主張する。
しかし,本願商標の指定商品である「コンピュータソフトウェア」は,後記3の
とおり,大衆化し一般化した商品分野であって,その取引者・需要者は,専門的な
業者のみに限定されるものではないから,コンピュータソフトウエアを取引する一
般の取引者・需要者が,「CST」の欧文字から直ちに「ComputerSimulation
Technology」を想起するとは認められない。また,甲2の1~3によれば,エーイ
ーティーがホームページにおいて原告の各種商品を紹介していることは認められる
が,これらの証拠によって我が国において本願商標が原告を思い起こさせる程度に
広く知られているとは到底認めることができず,他に本願商標が,コンピュータソ
フトウエアの取引者・需要者に広く認識されていると認めるに足りる証拠もないか
ら,原告の主張には理由がない。
2引用商標について
引用商標は,「CST方式」の文字を横書きして成るところ,構成中「CST」
と「方式」の文字とは,書体が相違し,視覚上分離して看取し得るものであること,
構成前半の「CST」の欧文字が上記のとおり特定の観念を生じないのに対し,構
成後半の「方式」の文字は,「一定の形式または手続」(広辞苑第6版),「〔何
かをする上での〕決まった形式・やり方」(乙3)を意味する日常語で,何人も容
易に意味を理解でき,コンピュータ関連分野では他の語と組み合わせた複合語が多
く用いられ,複合語を形成した場合に「方式」の文字を省略してもよい場合もある
こと(乙4~13)からすると,構成前半の「CST」の欧文字部分が出所識別標
識として強く支配的な印象を与えるのに対し,構成後半の「方式」の文字部分は,
自他商品の識別標識としての機能を果たさないか,又はその機能が極めて弱く,引
用商標の取引者・需要者は,構成前半の「CST」の欧文字部分に着目し,当該文
字部分をもって取引する場合も少なくないものということができる。したがって,
引用商標は,「CST」の欧文字部分をもって要部と認めるのが相当である。
そうすると,引用商標は,その全体から「シーエスティーホウシキ」の称呼を生
じるほか,「CST」の欧文字部分から「シーエスティー」の称呼をも生じるとい
うことができる。
原告は,引用商標を分離観察すべき契機がないと主張するが,本願商標において
「CST」の欧文字部分が出所識別標識として強く支配的な印象を与えることは上
記のとおりであるから,原告の主張には理由がない。
3対比
本願商標の指定商品である「コンピュータソフトウエア」は,引用商標の指定商
品中の「インターネットを介してダウンロードされるコンピュータソフトウエア,
その他の電子応用機械器具及びその部品」に含まれる。
本願商標と引用商標とは,引用商標の要部である「CST」の欧文字部分におい
て,外観上類似するとともに,「シーエスティー」の称呼を共通にし,「CST」
の欧文字が特定の観念を生じないことから,観念において比較できないものである。
したがって,本願商標と引用商標とは,類似する。
原告は,本願商標の指定商品である「コンピュータソフトウエア」は専門的な商
品で,需要者がじっくり自分の求める商品をその機能を中心に検討し選択する部類
のもので「簡易・迅速」とは無縁の領域であると主張する。
しかし,専門的な業務用ソフトウェアについてはそのような商品的性格も認めら
れるものの,コンピュータの普及に伴い,コンピュータソフトウエアもまた大衆化
し,量販店の店頭での大量販売や,インターネットを介してのダウンロード販売な
ど,様々な流通形態で活発に取引されている実情にあることは,一般人が日常的に
経験し知るところであるから,コンピュータソフトウエアが簡易迅速な取引とは無
縁の領域にある商品ということはできず,原告の主張には理由がない。
また,原告は,引用商標権者の商品カタログ(甲8)の記載を根拠に,引用商標
の使用態様は,技術名称としての表示であり「計測器」以外の使用は予定されてい
ないと主張するところ,仮に現段階においてそのような事実が認められるとしても,
登録商標は指定商品の全域について使用し得るものであり,引用商標権者が現在使
用していない指定商品について,将来も使用されないと認定することは困難である
から,原告の主張には理由がない。
なお,原告は,本願商標を引用商標権者に譲渡することにより本願商標の名義が
変更され,登録拒絶理由は解消される途上にあると主張する。
しかし,審決がなされた時点では,本願商標と引用商標が同一人に帰属するもの
ではなく,前記のとおり登録拒絶理由が認められる以上,審決に誤りがあったとは
いえないのであるから,原告の主張は審決の取消事由とはならない。
したがって,原告の主張は失当である。
第6結論
以上によれば,原告の請求には理由がないから,これを棄却することとして,主
文のとおり判決する。
知的財産高等裁判所第2部
裁判長裁判官
清水節
裁判官
池下朗
裁判官
新谷貴昭

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