弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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主文
被告人を懲役7年に処する。
未決勾留日数中120日をその刑に算入する。
理由
(罪となるべき事実)
 被告人は,所持金に窮した末,Aと共謀の上,駅構内の事務室等から金員を強取
しようと企て,平成13年5月1日午前零時27分ころ,東京都八王子市内のB駅
構内において,構内シャッターを閉めていた同駅駅員C(当時39歳)に対し,ま
ず,Aにおいて,上記Cの頭部を小石を詰めたパイプ(長さ約49センチメート
ル,重量約326グラム)で数回殴打し,続いて,被告人において,柳刃包丁(刃
体の長さ約21センチメートル)で上記Cの右背部を1回突き刺すなどして,その
反抗を抑圧した上,現金を強取しようとしたが,同人が助けを求めて騒ぐなどした
ため,逃走せざるを得なくなり,その目的を遂げなかったものの,その際,同人に
対し,全治まで56日間を要する胸部刺創等の傷害を負わせたものである。
(量刑の事情)
 本件は,帰国費用等に窮した被告人が,中国人共犯者とともに,終電車も終わっ
た駅構内において,勤務中の駅員を襲撃して,事務室等から金員を奪取しようとし
たが,未遂に終わったものの,判示の傷害を負わせたという強盗傷人の事案である
が,被告人は遊興に熱中して,多額の金員を費消したため,帰国費用の捻出にも支
障を来すようになったというのであるから,身勝手極まりない犯行の動機というほ
かはなく,酌量の余地に欠ける上,犯行の態様を検討してみても,事前に犯行場所
を下見し,綿密な犯行計画を立て,凶器や緊縛用の粘着テープ等を準備した上,人
気のないことを確認し,警備体制の隙を狙って,一気に本件犯行に及んでおり,用
意周到な計画的犯行であるとともに,石を詰めたパイプでいきなり激しく攻撃し,
被害者の抵抗に遭うや,身体の枢要部を鋭利な刃物で一気に突き刺すなど危険で悪
質な犯行というべきである。また,その結果,被害者は肝臓に達する深さ約14セ
ンチメートルという生命に関わる創傷を負わされており,厳重処罰を求めるその心
情は十分に考慮する必要性があり,しかも,依然として被害弁償等をなし得ない状
況にあり,この種事犯に関しては社会的影響も考慮せざるを得ないこと等を併せる
と,その刑責は重いというべきである。
 しかしながら,金員の強奪自体は未遂に終わっていること,被告人が包丁で攻撃
したのには,予想外の出来事が連続的に発生したため,これに触発されたという偶
発的側面が否定できないこと,被告人は,犯行後に自ら警察署に出頭しているほ
か,反省の態度がうかがわれること,若年であって,今後の更生が期待できるこ
と,弁護人を通じて5万円の贖罪寄付をしていること,その他,この種事犯に対す
る量刑の一般的実情を併せ考慮すると,被告人を主文掲記の実刑に処するのが相当
である。
平成13年12月18日
 東京地方裁判所八王子支部刑事第2部
裁判長裁判官  大  渕  敏  和
   裁判官  片  山  隆  夫
   裁判官  山田裕文

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