弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件上告を棄却する。
     上告費用は上告人の負担とする。
         理    由
 上告代理人小野瀬源次の上告理由第一点ないし第三点について。
 原審は、本件係争地は沢堀をもつて一六六三番と隣接し、金井蛇川用水をもつて
一六六八番(公図上一六七八番)と隣接し、公図上一六六〇番の一の北部のくびれ
たところより北方部分にほぼ該当し、一六六〇番の一の一部をなすものであると認
定したのであり、右認定は挙示の証拠に照らし是認できる。しかして、原審が本件
係争地をもつて一六六〇番の一の一部分であるとし、所属地番につき被上告人の主
張と異なる認定をしたからといつて、なんら所論の違法はなく、その他原審がした
証拠の判断ならびに事実の認定の過程に所論の違法があるものとは認められない(
所論引用の判例は、いずれも事案を異にし、本件に適切でない)。所論は採用でき
ない。
 同第四点について。
 原判決挙示の証拠によれば、所論摘録の事実認定は是認できる。所論は該証拠に
よつては原判決のごとき認定をしえないというが、畢竟原審の認定と相容れない事
実を援用し、原審が適法にした証拠の判断および事実の認定を攻撃するにすぎない。
なお、原判決は、上告人がDから買い受けた一六六〇番の一は原判決添付図面(イ)
(ロ)線に該当する線をもつてその北側境界線とする旨の上告人の主張を排斥する
理由として、前示認定事実を判示したものであり、当事者の主張しない事実に基づ
き判決した違法あるものではない(所論引用の判例はいずれも事案を異にし本件に
適切でない)。所論は採用できない。
 同第五、九、一〇点について。
 原判決挙示の証拠によれば、被上告人が判示日時にEと婿養子縁組をして以来本
件係争地を所有の意思をもつて平穏かつ公然と占有してきた旨の認定は是認できる。
所論は種々論述するが、原審の認定と相容れない事実または原審の認定しない事実
ないし事情関係を援用し、事案に対する独自の見方に立つて、原審が自由な裁量の
範囲内においてした証拠の取捨判断を非難する以上に出ないものであり、採用でき
ない(所論引用の判例は事案を異にし本件に適切でない)。
 同第六点について。
 原審が確定したところによれば、上告人が一六六〇番の一としてDから買い受け
たのは原判決添付図面のAC線の南側の畑および原野であり、本件係争地は含まれ
ていなかつたのであり、他方、被上告人が時効によつて所有権を取得したのは本件
係争地にほかならないというのである。右事実関係のもとにおいては上告人は被上
告人の時効による所有権取得登記の欠缺を主張するにつき正当な利益あるものとい
えないから、被上告人は登記なくして右係争地の所有権したがつてその地上の立木
の所有権を上告人に対抗しうる旨の原審の判断は正当として是認できる。所論は採
用できない(所論引用の判例は本件に適切でない)。
 同第七点について。
 原審が確定したところによれば、上告人はDから前示AC線の南側の畑および原
野を一六六〇番の一の土地として買い受けたものであり、本件係争地は売買の目的
物に包含されていなかつたが、右売買にあたり、上告人もDも現地に赴くことなく
隣地との境界も確かめなかつたというのであり、かかる事実関係のもとにおいて上
告人が本件係争地上の立木を伐採したことは過失によるものとした原審の判断は正
当である。所論は、一六六〇番の一の北側境界が(イ)(ロ)線であるとの前提に
立ち、原審の認定しない事実に依拠して原審の判断を攻撃するものであつて、採用
するに由ない。
 同第八点について。
 原審の証拠関係に照らすと、証人Fの証言を排斥した判断に所論の違法は認めら
れない(なお同証人の原審における供述を精査しても、所論の箇所に所論樹令の杉
が生立していた事実の供述は見出せない)。所論は採用できない。
 よつて、民訴四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のと
おり判決する。
     最高裁判所第二小法廷
         裁判長裁判官    池   田       克
            裁判官    河   村   大   助
            裁判官    奥   野   健   一
            裁判官    山   田   作 之 助
            裁判官    草   鹿   浅 之 介

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