弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件上告を棄却する。
     上告費用は上告人の負担とする。
         理    由
 上告人の上告理由第一点について
 記録によれば、原審の訴訟手続に所論の違法は認められず、論旨は採用すること
ができない。
 同第二点及び第三点について
 原審の認定した事実の要旨は、(1) 被上告会社取締役会は、昭和四四年七月二
五日被上告会社の退任取締役及び監査役に贈呈する退職慰労金の算定に関し、本件
内規を承認した、(2) 本件内規によると、退職慰労金は、在職中の最高年間報酬
に任期又び功労金を加算して支給するための「功績度率」を乗じて算出することに
なつているところ、そのうち「功績度率」は最高一・三であるが、いわゆる役付で
ない取締役については、「功績度率」による加算をしないことが従来から慣例とし
て確立していた、(3) 被上告会社の取締役会議事録には、本件内規を承認した旨
の記載のみがあつて、本件内規の内容は記載されていないが、株主は、被上告会社
の本店及び各支店に備え置かれてあつた右議事録によつて本件内規の存在を知るこ
とができ、また、被上告会社は、株主の請求があれば、本件内規及び従来の慣例の
内容を説明することとしていた、(4) 昭和五二年六月二九日の被上告会社株主総
会において、退任取締役であるD及びE(いずれもいわゆる役付でない取締役であ
つた。)に対し退職慰労金を贈呈すること、その金額については、従来の基準に従
い、諸般の事情を勘案の上相当額の範囲内とし、具体的金額、贈呈の時期及び方法
の決定は取締役会に一任する旨の決議がなされ、同日開かれた被上告会社取締役会
において、右金額、贈呈の時期及び方法の決定を取締役会長及び取締役社長に一任
する旨の決議がなされた、(5) 取締役会長及び取締役社長は、右決議に基づき、
本件内規及び従来の慣例に従い功労金の加算をしないで右両取締役に対する退職慰
労金額を決定して贈呈し、その後に開かれた取締役会において、右金額、贈呈の時
期及び方法について報告したが、その際の取締役会議事録には、右金額は記載され
なかつた、というのであり、右事実認定は、原判決挙示の証拠関係に照らして、肯
認することができる。右事実関係のもとにおいては、右退職慰労金の贈呈に関する
株主総会の決議は商法二六九条の規定に違反するものではなく、また右取締役会の
決議も商法二六九条及び株主総会の決議の趣旨に反するものではなく、いずれも無
効であるとはいえないとした原審の判断は、正当として是認することができ、その
過程に所論の違法はない。右違法のあることを前提とする所論違憲の主張は失当で
ある。論旨は、独自の見解に立つて原判決を論難するものであつて、採用すること
ができない。
 よつて、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員一致の意見で、主
文のとおり判決する。
     最高裁判所第三小法廷
         裁判長裁判官    横   井   大   三
            裁判官    伊   藤   正   己
            裁判官    木 戸 口   久   治
            裁判官    安   岡   滿   彦

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