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平成27年2月26日判決言渡同日原本領収裁判所書記官
平成26年(ネ)第10114号特許権侵害差止等請求控訴事件
(原審・東京地方裁判所平成25年(ワ)第23584号)
口頭弁論終結日平成27年2月5日
判決
控訴人X
訴訟代理人弁護士吉澤尚
訴訟代理人弁理士仲野均
同川井隆
被控訴人株式会社スタートトゥデイ
訴訟代理人弁護士松本直樹
補佐人弁理士佐野弘
同石井明夫
主文
1本件控訴を棄却する。
2控訴費用は控訴人の負担とする。
事実及び理由
第1控訴の趣旨
1原判決を取り消す。
2被控訴人は,控訴人に対し,1億円及びこれに対する平成25年9月22日
から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
第2事案の概要
本件は,発明の名称を「ネット広告システム」とする特許権(特許番号第5
177727号。以下「本件特許権」といい,この特許を「本件特許」という。)
の特許権者である控訴人が,被控訴人がその運営する「ZOZOTOWN」,
「ZOZOVILLA」又は「ZOZOOUTLET」の名称のインターネッ
トショッピングサイト(以下,これらを併せて「被告ウェブサイト」という。)
に係るシステムを使用する行為は本件特許権の侵害又は間接侵害(特許法10
1条1号,2号)に該当する旨主張して,被控訴人に対し,本件特許権侵害の
不法行為に基づく損害賠償4億2680万円の一部請求として1億円及び遅延
損害金の支払を求めた事案である。
原判決は,被控訴人が被告ウェブサイトに係るシステムを使用する行為は本
件特許権を侵害するものとは認められず,また,本件特許権の間接侵害の成立
も認められないとして,控訴人の請求を棄却した。
控訴人は,原判決を不服として控訴を提起した。
1前提事実(証拠の摘示のない事実は,争いのない事実又は弁論の全趣旨によ
り認められる事実である。)
控訴人の特許権
ア控訴人は,本件特許権(出願日平成12年12月20日,設定登録日平
成25年1月18日,請求項の数1)の特許権者である。
イ本件特許に係る特許請求の範囲の請求項1の記載は,次のとおりである
(以下,請求項1に係る発明を「本件発明」という。)。
【請求項1】
インターネットに接続可能な端末であるクライアントと,
前記クライアントからの要求により該当する商品の広告をネット上で紹
介提供する多数の参加企業のホームページが保管された複数のバナーサー
バーと,
前記バナーサーバーが提供する各前記企業の広告画像情報を予め分類仕
分けして保管記憶した商品マスタを備えた店舗サーバーとからなる連携シ
ステムにおいて,
前記店舗サーバーは,
前記クライアントからのアクセスに基づき予めバナー情報マスタに記録
保存された前記バナーサーバーのアイコンを含む当該店舗サーバーのホー
ムページを当該クライアントのディスプレイ上に表示すると共に,
表示された前記ホームページにおいて所定のバナーサーバーのアイコン
が前記クライアントによってクリックされると前記クライアントのディス
プレイ上に当該クライアントがクリックしたバナーサーバーから提供され
た前記広告画像情報を主表示すると共に,各前記企業のカテゴリーとそれ
に属するアイテムを体系的に記録した前記商品マスタから当該広告画像情
報を表示した同一画面上に関連商品の他のバナーサーバーの広告画像情報
の一覧表リストを副表示して両者を併記し,
前記副表示されたバナーサーバーのアイコンが前記クライアントによっ
てクリックされると,当該クリックされたアイコンのバナーサーバーから
提供された前記広告画像情報を主表示し,且つ同一画面上に関連商品の他
のバナーサーバーの広告画像情報の一覧表リストを副表示することによ
り,
該当する広告以外に他の店舗の商品リストを次々と閲覧可能にすること
を特徴とするネット広告システム。
ウ本件発明を構成要件に分説すると,次のとおりである(以下,各構成要
件を「構成要件A」,「構成要件B」などという。)。
Aインターネットに接続可能な端末であるクライアントと,
B前記クライアントからの要求により該当する商品の広告をネット上で
紹介提供する多数の参加企業のホームページが保管された複数のバナー
サーバーと,
C前記バナーサーバーが提供する各前記企業の広告画像情報を予め分類
仕分けして保管記憶した商品マスタを備えた店舗サーバーとからなる連
携システムにおいて,
D前記店舗サーバーは,前記クライアントからのアクセスに基づき予め
バナー情報マスタに記録保存された前記バナーサーバーのアイコンを含
む当該店舗サーバーのホームページを当該クライアントのディスプレイ
上に表示すると共に,
E表示された前記ホームページにおいて所定のバナーサーバーのアイコ
ンが前記クライアントによってクリックされると前記クライアントのデ
ィスプレイ上に当該クライアントがクリックしたバナーサーバーから提
供された前記広告画像情報を主表示すると共に,
F各前記企業のカテゴリーとそれに属するアイテムを体系的に記録した
前記商品マスタから当該広告画像情報を表示した同一画面上に関連商品
の他のバナーサーバーの広告画像情報の一覧表リストを副表示して両者
を併記し,
G前記副表示されたバナーサーバーのアイコンが前記クライアントによ
ってクリックされると,当該クリックされたアイコンのバナーサーバー
から提供された前記広告画像情報を主表示し,且つ
H同一画面上に関連商品の他のバナーサーバーの広告画像情報の一覧表
リストを副表示することにより,
I該当する広告以外に他の店舗の商品リストを次々と閲覧可能にするこ
とを特徴とするネット広告システム。
被控訴人の行為
被控訴人は,平成16年11月に「ZOZOTOWN」との名称のインタ
ーネットショッピングサイトを,平成22年1月に「ZOZOVILLA」
との名称のインターネットショッピングサイトを,同年11月に「ZOZO
OUTLET」との名称のインターネットショッピングサイトをそれぞれ開
設し,運営している(以下,被控訴人が,これらのインターネットショッピ
ングサイト(被告ウェブサイト)に使用しているシステムを「被告システム」
という。)(乙1,2)。
2争点
被告システムの本件発明の技術的範囲の属否(争点1)


間接侵害の成否(争点2)
特許法104条の3第1項に基づく本件特許権の権利行使制限の成否(争
点3)
控訴人の損害額(争点4)
第3争点に関する当事者の主張
1被告システムの本件発明の技術的範囲の属否(争点1)について
(控訴人の主張)
ア被告システムについて
被告システムは,乙2(被告システムの概略図)に示すように,被控
訴人が運営する「データセンター」に配置された,利用者からの要求を
受け付け,必要なデータをデータベースより取得し,結果を返す「WE
Bサーバー群」と,検索用データベースとメイン系データベースに分類
できる「データベースサーバ群」とを含むサーバー装置,インターネッ
トによってデータセンターに接続されるシステムの管理のために被控訴
人従業員が使用する端末(以下「被告管理端末」という。)及び商品の
購入等のために顧客が使用する顧客管理に係る端末(以下「顧客端末」
という。)から構成されている。
被告システムのメイン系データベースには,ECサイトシステム用と
バックヤードシステム用のデータベースが存在している。
被告システムは,被告ウェブサイトに一覧表示される各「ショップ」
(甲22の図6,7参照)に対し,ショップの商品の情報を登録するた
めのバックヤードシステム(URLはhttps://backoffice-srv.zozo.jp)を
提供し,このバックヤードシステムから,ショップがその商品の商品画
像をアップロードさせる機能を実装している。このバックヤードシステ
ムでは,ショップが,アップロードした商品についての商品情報を被告
システムに登録できるようになっている。
各ショップが商品を被告システムを通して販売しようとする場合にお
ける商品の販売登録の処理手順及び商品画像の取扱いは,以下のとおり
である(甲17ないし21)。
①ショップの担当者は,ショップの端末に表示された「https://back
office-srv.zozo.jp/」のURLで特定されるサイトのログイン画面で,
ユーザー名(ショップ別のアクセスID)及びパスワードを入力し,
被告ウェブサイトにアクセスする。
被告ウェブサイトによりアクセスが承認されると,ショップの端末
に商品登録画面が表示される。
②ショップの担当者は,商品登録画面から,ショップ名,カテゴリー,
タグブランド,商品名,主性別等の商品情報を被告システムに登録す
る。ここで登録するカテゴリー,タイプ,素材などは,被控訴人が予
め分類仕分けした要素の中から,ショップ側においてプルダウンメニ
ュー方式で選択することにより,登録が行われる。この商品登録を行
うと,個別の商品番号が採番され,それに紐付けされた自社商品番号
をショップ側で入力する。
③ショップは,商品登録をした商品(現物)を被控訴人の指定場所(
通常は被控訴人保有の倉庫)へ搬入する。
被控訴人の指定場所へ搬入された商品について,被控訴人が写真撮
影を行い,その商品画像を被告システムにアップロードする。そのア
ップロードの際,撮影された商品画像は,被告システムのサーバー(
「https//img4.zozo.jp/」。以下「img4」という。)に保存される。
「img4」に保存された商品画像と商品情報は,被告システム内で紐
付けされて保存されている。
ショップの担当者は,被控訴人から写真撮影が完了した旨の連絡を
受けると,被告システムで商品画像の確認及び商品販売の了承を行う。
また,ショップ側で商品登録をした商品の写真撮影を行う場合もあ
り,この場合にも,撮影された写真(商品画像)は,「https://back
office-srv.zozo.jp/」のURLで特定されるサイトの入力画面から被告
システムにアップロードされ,「img4」に保存される。
④「img4」に保存された商品画像は,被告システムのサーバー(「ht
tp//img5.zozo.jp/」。以下「img5」という。)に提供され,各種の
画像サイズに加工されて「img5」に保存される。
この「img5」に保存された商品画像は,顧客が被告ウェブサイトに
アクセスした際に顧客端末に表示される。
以上によれば,被告システムは,次のとおりの構成を有する(以下,
各構成を「構成a」,「構成b」などという。)。
aクライアントとサーバーとで構成されるクライアントサーバモデル
を利用したシステム1において(別紙1の図1参照),
b上記サーバーは,クライアントからの要求に基づいて,商品情報画
像のアイコン2を含む画面3をクライアントの画面上に表示し(別紙
1の図2参照),
c上記サーバーは,上記アイコン2がユーザーによってクリックされ
ると,クライアントの画面上に,当該ユーザーがクリックしたアイコ
ン2に対応する商品情報画像4を主表示した画面5を表示し(別紙1
の図3参照),
d同時に,上記サーバーは,上記商品情報画像4が主表示された画面
5と同一画面上に,上記商品情報画像4の商品に関連する,複数の商
品の商品情報画像のアイコン6のリスト7を副表示し(別紙1の図3
参照),
e上記サーバーは,上記副表示されたアイコン6がユーザーによって
クリックされると,クライアントの画面上に,当該ユーザーがクリッ
クしたアイコン6に対応する商品情報画像8を主表示する画面9を表
示し(別紙1の図4参照),
f同時に,上記サーバーは,上記商品情報画像8が主表示された画面
9と同一画面上に,上記商品情報画像8の商品に関連する,複数の商
品の商品情報画像のアイコンのリスト10を副表示する(別紙1の図
4参照)。
g上記構成により,ユーザーは,主表示される商品情報画像以外の商
品情報画像を次々と閲覧可能となる。
イ構成要件Aについて
構成要件Aの「インターネットに接続可能な端末であるクライアント」
にいう「クライアント」は,構成要件Aの文言上,インターネットに接
続可能な端末であることが明確に定義されている。
しかるところ,被告システムは,別紙1の図1に示すように,クライ
アントとサーバーとで構成されるクライアントサーバモデルを利用した
システム1である(構成a)。
そして,乙2(被告システムの概略図)によれば,被告システムは,
少なくとも,インターネットに接続可能な端末(乙2に「弊社オフィス」
と表記された端末)である被告管理端末を備えている。
したがって,被告管理端末は,構成要件Aの「クライアント」に相当
するから,被告システムは,構成要件Aを充足する。
仮に構成要件Aの「クライアント」は本件発明のネット広告システム
のユーザーの端末を意味するとしても,複数の主体が実施に関与するシ
ステムの発明の構成要件充足性の判断においては,行為者として予定さ
れている者が特許請求の範囲に記載された各行為を行ったか否かを判断
すれば足り,一つの主体が全構成要件該当行為を行ったか否かは問題に
ならず,誰が当該システムを支配管理しているかを基準に判断すべきで
ある。
しかるところ,被告システムは参加企業の商品を購入しようとするユ
ーザーの端末である顧客端末からアクセスされることを前提としている
こと,被控訴人が被告システムを実質的に支配管理していることからす
ると,被控訴人は,顧客端末からの被告システムへのアクセス行為を利
用し,被告システムを広告システムとして使用しているものといえる。
したがって,被告システムは,構成要件Aを充足する。
ウ構成要件Bについて
構成要件Bの「前記クライアントからの要求により該当する商品の広
告をネット上で紹介提供する多数の参加企業のホームページが保管され
た複数のバナーサーバー」にいう「バナーサーバー」は,構成要件Bの
文言上,「多数の参加企業のホームページ」が保管されるものであるこ
とが明確に定義されている。「バナーサーバー」の「バナー」の用語の
部分に特段の意味はなく,「バナーサーバー」は,単に「サーバー」と
読み替えることができる。
ここに「サーバー」とは,物理的に機器が存在するものではなく,イ
ンターネットやLANなどのネットワークを通じて受けた要求に応じて
何らかのサービスを返す役割を持ったシステムをいう(甲25,26)。
次に,「多数の参加企業のホームページ」にいう「参加企業」とは,
販売される商品を提供する企業のことである。そして,請求項1におい
ては,「参加企業のホームページ」に関し,参加企業の商品を紹介する
ページであることの限定はあるが,「参加企業のホームページ」の作成
者や管理者等についての限定はないから,「参加企業のホームページ」
とは,「参加企業の商品を紹介するためのページ」をいうものと解すべ
きである。この「参加企業のホームページ」は,「保管」される対象デ
ータとしてのホームページであり,参加企業の写真(商品画像),テキ
ストデータ(商品情報)等の各種要素の集合体を意味する。
しかるところ,被告システムを使用する被告ウェブサイトでは,別紙
1の図2のとおり,被控訴人以外の多数の企業の商品が販売されている。
被告ウェブサイトで「ショップ」と表示されているこれらの企業は,被
告ウェブサイトで販売される商品を提供する企業であるから,「参加企
業」に該当する。
ステムでは,各ショップから登録された商品情報と「img4」に保存され
た商品画像が紐付けされて保存されている。これらの商品情報,商品画
像等は,「参加企業のホームページ」に該当し,これらを保存(保管)
し,それに各種処理が施されて「img5」に提供する,「img4」を含むサ
ーバーが「バナーサーバー」に該当する。
被告システムには,ショップごとにID及びパスワードが付けられて
いるほか,システムは二重化され,負担分散のためロードバランサーが
装備されていることなどから,「複数のバナーサーバー」が存在する。
また,被告ウェブサイトで商品情報画像のアイコン2(別紙1の図2)
がユーザーによってクリックされると,関連商品が表示されるリンク先
のページ(別紙1の図3(a)の画面5,甲11の1ないし10の上段
の図等)は,参加企業の商品を紹介するためのウェブページであるから,
「参加企業のホームページ」に該当する。
被告ウェブサイトの上記ページは,被告システムにより提供されるか
ら,被告システムは,上記ページを保管する機能を有するサーバーであ
る「バナーサーバー」を備えている。
以上によれば,被告システムは,「前記クライアントからの要求によ
り該当する商品の広告をネット上で紹介提供する多数の参加企業のホー
ムページが保管された複数のバナーサーバー」を備えているといえるか
ら,構成要件Bを充足する。
被控訴人は,これに対し,被告ウェブサイトにおける参加企業の商品
を紹介するためのページの作成者又は責任帰属主体は被控訴人であるこ
となどから,被告ウェブサイトで商品情報画像のアイコン2(別紙1の
図2)がユーザーによってクリックされると,関連商品が表示されるリ
ンク先のページは,構成要件Bの「参加企業のホームページ」に該当し
ない旨主張する。
企業のホームページ」の作成者や管理者等についての限定はないから,
被控訴人の上記主張は,その前提において理由がない。
また,仮に被控訴人が被告ウェブサイトにおける参加企業の商品を紹
介するためのページを作成したものであったとしても,甲12の1ない
し3に示すように,被告ウェブサイトにおける参加企業の商品を紹介す
るためのページは,参加企業によって監督又は監修されており,被控訴
人は,単に参加企業の商品を紹介するためのページの作成を委託されて
いるにすぎないから,被告ウェブサイトにおける参加企業の商品を紹介
するためのページは,「参加企業のホームページ」にほかならない。
さらに,被告ウェブサイトにおける各ショップの商品の販売は,受託
販売であり,ショップが自ら在庫を管理(一番売れている商品の情報提
供,返品業務)し,再入荷リクエスト,機会損失データ,デフォルトカ
ラーの在庫分データ等を支配・管理できる仕組みとなっていること(甲
27の1,2,28),ショップ側でショップコンセプトを自由にアレ
ンジできること(甲29)からすると,ショップが自らそのブランドを
コントロールしているホームページを被告システムに提供しているとい
えるから,ショップは「参加企業」に該当する。そして,現在のホーム
ページの作成技術の一般的なものによれば,個別のページでまとまった
データが一か所に保管されるのではなく,テキストデータや商品画像,
商品情報等のデータが別々に保管され,ソフトウェア技術でこれらのデ
ータを結びつけて作成するのが通常であるから,ホームページのデータ
の要素となるデータが保管されている場合も,構成要件Bの「ホームペ
ージ」に該当するものといえる。
したがって,被控訴人の上記主張は,これらの点からも理由がない。
エ構成要件Cについて
構成要件Cの「前記バナーサーバーが提供する各前記企業の広告画像
情報を予め分類仕分けして保管記憶した商品マスタを備えた店舗サーバ
ーとからなる連携システム」にいう「広告画像情報」は,商品の広告画
像又はその情報(商品のカテゴリー名,カテゴリコード,それに属する
アイテム名,アイテムコード等)を意味する。
「商品マスタ」は,バナーサーバーが提供する各前記企業の広告画像
情報を予め分類仕分けして保管記憶する機能を有するマスタ(構成要件
C)であって,かつ,企業のカテゴリーとそれに属するアイテムを体系
的に記録する機能を有するマスタ(構成要件F)である。本件特許出願
の願書に添付した明細書(以下,図面を含めて「本件明細書」という。
甲2)の段落【0009】によれば,商品マスタは,企業についてのカ
テゴリー名とカテゴリコード,及びそれに属するアイテム名とアイテム
コードが体系的に記録されたマスタとし,広告画像情報を体系的に記録
する役割を有するものとすることができる。
「店舗サーバー」は,広告画像情報を体系的に記録する役割を有する
「商品マスタ」を備える機能(構成要件C),「バナー情報マスタ」を
備える機能(構成要件D)及びクライアントのディスプレイ上に画面表
示を提供する機能(構成要件DないしI)を有するサーバーである。
れる「img4」に保存された商品画像は,「img5」のサーバーに提供され,
各種の画像サイズに加工されて「img5」に保存される。このことは,「i
mg5」は,「img4」から提供された商品画像を予め分類仕分けして保管記
憶していることを意味するから(甲20),「商品マスタ」を備えてい
るサーバーであるといえる。
この「img5」に保存された商品画像は,顧客が被告ウェブサイトにア
クセスした際に顧客端末に表示される。この商品画像は,構成要件Cの
「広告画像情報」に該当する。
そうすると,「img5」は,「img4」から提供された商品画像を予め分
類仕分けして保管記憶する「商品マスタ」を備えた「店舗サーバー」に
該当する。
そして,被告システムを機能的に捉えると,クライアントと,バナー
サーバーと店舗サーバーが連携しているから,被告システムは,「連携
システム」に該当する。
以上によれば,被告システムは,構成要件Cを充足する。
オ構成要件DないしIについて
構成要件Dによれば,「バナー情報マスタ」は,バナーサーバーのア
イコンを記録保存する機能を有するマスタである。「バナーサーバーの
アイコン」とは,バナーサーバーから提供された広告画像情報へリンク
されたボタンを意味する。バナー情報マスタは,各アイテムごとにアイ
テム名やアイテムコード等が記載されたマスタとすることができる(本
件明細書の段落【0009】)。
被告システムにおいては,クライアントが被告ウェブサイトにアクセ
スすると,別紙1の図2に示すように,商品情報画像のアイコン2を含
む画面3をクライアントの画面上に表示する(構成b)。この商品情報
画像のアイコン2は,クリックすると対応する商品情報画像にリンクす
るから(構成c),「バナーサーバーのアイコン」に該当し,画面3は,
「店舗サーバーのホームページ」に該当する。
そして,「img5」において,この「バナーサーバーのアイコン」が統
一的に保管(画質(「125×150ピクセル」)及び拡張子(「125.
jpg」)が共通)されていることから(甲21,22,24等),アイコ
ンを記録保存する「バナー情報マスタ」が存在し,「img5」は,「店舗
サーバー」に該当する。
以上によれば,被告システムは,構成要件Dを充足する。
被告システムにおいては,別紙1の図3に示すように,ユーザーによ
ってアイコン2がクリックされると,クライアントの画面上に,ユーザ
ーがクリックしたアイコン2に対応する商品情報画像4を主表示した画
面5を表示し(構成c),商品情報画像4が主表示された画面5と同一
画面上に,商品情報画像4の商品に関連する,複数の商品の商品情報画
像のアイコン6のリスト7を副表示する(構成d)。
同様に,被告システムにおいては,甲22の図2の「125×150
ピクセル」の商品画像2が,顧客のディスプレイ上でクリックされると,
そのディスプレイ上に商品画像2に対応する商品画像4(甲22の図3)
が主表示され,その主表示された画面と同一画面に「ZOZOTOWNで販売中
のトップス」として,関連商品の他のバナーサーバーの広告画像情報の
一覧表リスト7(甲22の図3)が副表示される。
したがって,被告システムは,構成要件E及びFを充足する。
被告システムにおいては,別紙1の図4に示すように,副表示された
アイコン6がユーザーによってクリックされると,クライアントの画面
上に,当該ユーザーがクリックしたアイコン6に対応する商品情報画像
8を主表示する画面9を表示し(構成e),商品情報画像8が主表示さ
れた画面9と同一画面上に,商品情報画像8の商品に関連する,複数の
商品の商品情報画像のアイコンのリスト10を副表示する(構成f)。
同様に,被告システムにおいては,甲22の図3に一覧表リスト7と
して副表示されている商品画像6が顧客によってクリックされると,顧
客のディスプレイ上にクリックされた商品画像6と対応する商品画像8
が主表示され,その主表示された画面と同一画面に「ZOZOTOWNで販売中
のトップス」として,6種の商品画像11が一覧表リスト10(甲22
の図4)として副表示される。
したがって,被告システムは,構成要件G及びHを充足する。
主表示される商品情報画像以外の商品情報画像を次々と閲覧可能となる
(構成g)。
同様に,被告システムにおいては,甲22の図4に一覧表リスト10
として副表示されている商品画像11が顧客によってクリックされる
と,顧客のディスプレイ上にクリックされた商品画像11と対応する商
品画像13が主表示され,その主表示された画面と同一画面に「ZOZOTO
WNで販売中のトップス」として,6種の商品画像14が一覧表リスト1
5(甲22の図5)として副表示される。
このように,被告システムでは,主表示された商品画像以外に他の店
舗の商品リストを次々と閲覧可能にすることができ,また,インターネ
ットを介して商品の広告を提供しているので,ネット広告システムに該
当する。
したがって,被告システムは,構成要件Iを充足する。
カ小括
以上によれば,被告システムは,本件発明の構成要件を全て充足するか
ら,その技術的範囲に属する。
(被控訴人の主張)
ア被告システムについて
被告システムは,乙2(被告システムの概略図)に示すように,被控
訴人が運営する「データセンター」に配置された「WEBサーバー群」
と,検索用データベースとメイン系データベースに分類できる「データ
ベースサーバ群」とを含むサーバー装置から構成されていることは認め
るが,顧客管理端末は,被告システムに含まれない。
被告システムにおいては,控訴人が「商品の販売登録の処理手順及
び商品画像の取扱い」として述べるような,納入業者が被告ウェブサ
イトの商品の在庫状況を更新する仕組みとなっているが,その在庫情
報に基づいて被控訴人の自社のページが作成され,被控訴人自身が納
入業者から納入された商品を販売している。
したがって,被告システムにおいては,納入業者のページが作成さ
れることはない。
なお,控訴人が「商品の販売登録の処理手順及び商品画像の取扱い」
において述べる「https//img4.zozo.jp/」(「img4」)のアドレスの
ページは,乙21に示すように,キャッシュであり,写真データの継
続的な蓄積を行っておらず,写真を長期的に保存するサーバーは別に
存在する。
bまた,被告ウェブサイトには,一つの納入業者による商品を「ショ
ップ」としてまとめて表示しているが,「ショップ」は販売商品の単
なるまとまりにすぎず,「ショップ」なる独立した主体が存在するも
のではない。納入業者は,被控訴人と取引をしているだけであって,
被告ウェブサイトに「ショップ」として「出店」し,商品を販売して
いるわけではない。
控訴人が主張する被告システムの各構成は否認する。もっとも,被告
ウェブサイトにアクセスしたユーザーの端末の画面上に,別紙1の図2
ないし4に示すような画面が表示され,その画面の遷移があることは認
める。
イ構成要件Aについて
「クライアント」は,本件発明が「ネット広告システム」であることか
らすれば,ネット広告システムの受け手であるユーザーが使用するインタ
ーネットに接続可能な端末を意味するから,被告管理端末は「クライアン
ト」に当たらない。
また,顧客端末の主体は一般ユーザーであり,被控訴人は一般ユーザー
の端末を含むシステムを支配管理するものではないから,顧客端末も「ク
ライアント」に当たらない。
したがって,被告システムは,構成要件Aを充足しない。
ウ構成要件Bについて
請求項1には,「バナーサーバー」の明確な定義はない。本件明細書
にも,「バナーサーバー」の語義の明記はないが,段落【0002】の
記載からすると,「バナーサーバー」は,「バナー広告」をするための
サーバーといえる。「バナー広告」は,一般に,バナー,すなわち横断
幕のような形状を典型とした,広告主のページへ誘導するようなリンク
を付したウェブページに掲載される広告を意味する。
また,本件明細書の段落【0003】及び【0005】の記載によれ
ば,本件発明は,バナーサーバーに保管された「参加企業のページ」を
主表示しながらも,「店舗サーバー」により他のバナーサーバーに保管
された「参加企業のページ」の「リンク」を一覧表リストの形で副表示
することにより,「参加企業のページ」である,バナーサーバーのペー
ジ内容を数多く閲覧させることを目的とするものといえる。
さらに,本件特許の出願過程において提出された控訴人作成の平成2
2年6月17日付け意見書(乙13の5)には,
「このように,本願発明によれば,ワンクリック当たりの単価を下げる
のみならず自社の広告をユーザが目にする機会も増加すると共に,ある
商品に興味をもったユーザを当該店舗サーバーから各企業のホームペー
ジ,すなわち,各バナーサーバーが提供するホームページへ効果的に誘
導することが可能となります。
かかる点については引用文献1及び2の何れにも全く記載されていな
いばかりかその示唆もありません。
従って,本願補正後の請求項1に係る発明は引用文献1及び2に基づ
いで当業者が容易に発明できたものではなく,特許法第29条第2項の
規定は適用されないものと思料致します。」との記載がある。
以上によれば,本件発明の特徴は,「参加企業のホームページ」には
それぞれ自社のページへのリンクだけが設けられているのが普通である
という事情があることを前提として,本件発明では,自社のページを主
表示するとともに,そこに副表示として他社のページへのリンクも設け
るという点にあるといえる。
したがって,構成要件Bの「参加企業のホームページ」にいう「参加
企業」は,そのホームページの責任帰属主体を意味するものであり,「
参加企業のホームページ」は,各参加企業が責任帰属主体であるところ
のホームページを意味するものと解すべきである。
これに対し,被告ウェブサイトでは,他社のブランド品などの商品を
販売しているが,いずれの商品も,被控訴人自身が売主となり,在庫管
理も行っており,被告ウェブサイトで表示されるページは,リンク先の
ページも含めて,被控訴人が管理する自社のページだけであるから,被
告ウェブサイトには,「参加企業のページ」は存在しない。
そして,被告ウェブサイトで商品情報画像のアイコン2(別紙1の図
2)がユーザーによってクリックされると,関連商品が表示されるリン
ク先のページは,被控訴人の自社のページであるから,「参加企業のペ
ージ」に該当しないし,被控訴人以外の広告主のページへ誘導するバナ
ー広告も存在しない。
このように被告システムが,ユーザーの端末に表示する被告ウェブサ
イトの画面は,リンク先を含めて,いずれも被控訴人が商品を販売する
自社のページであり,被告システムには,「参加企業」及び「参加企業
のホームページ」は存在しないから,「参加企業のホームページを保管
する複数のバナーサーバー」も存在しない。
したがって,被告システムは,構成要件Bを充足しない。
サイトの商品の在庫状況を更新する仕組みとなっているが,その在庫情
報に基づいて被控訴人の自社のページが作成され,被控訴人自身が納入
業者から納入された商品を販売しているのであるから,納入業者のペー
ジが作成されることはなく,納入業者は,「参加企業」には該当しない
し,被告システムには,「参加企業のホームページ」も存在しない。な
お,被控訴人の被告ウェブサイトにおける商品の販売態様は,受託販売
であるが,被控訴人自身がユーザーに商品を販売していることに変わり
はない。
また,被告ウェブサイトで表示される「ショップ」は販売商品の単な
るまとまりにすぎず,「ショップ」なる独立した主体が存在するもので
もない。
エ構成要件Cについて
前記ウのとおり,被告システムには,参加企業のホームページを保管す
る複数の「バナーサーバー」が存在しないから,「バナーサーバー」が提
供する各前記企業の広告画像情報を予め分類仕分けして保管記憶した商品
マスタを備えた「店舗サーバー」も存在しない。
被告システムでは,商品の在庫管理を行っているが,その対象は,「バ
ナーサーバー」が提供する各前記企業の広告画像情報ではない。
したがって,被告システムは,構成要件Cを充足しない。
オ構成要件Dについて
前記ウのとおり,被告システムには,参加企業のホームページを保管す
る複数の「バナーサーバー」が存在しないから,被控訴人システムが「バ
ナーサーバーのアイコン」を表示することもない。
被告システムは,ユーザーの端末のディスプレイ上に別紙1の図2に「
2」で示された商品画像を表示するが,この商品画像は,被控訴人が自社
の別ページで販売する商品の商品画像であり,これが「アイコン」である
としても,「バナーサーバーのアイコン」に該当しない。この「アイコン」
をクリックした際のリンク先は,被控訴人の自社のページである。被告ウ
ェブサイトに掲載している商品画像には,他社から提供を受けたものがあ
るが,そのことは,被控訴人の自社のページであることを否定するもので
はない。
また,前記エのとおり,被告システムには「店舗サーバー」が存在しな
いから,被告システムにおいて,「店舗サーバー」が「店舗サーバーのホ
ームページ」をクライアントのディスプレイ上に表示することはない。
したがって,被告システムは,構成要件Dを充足しない。
カ構成要件Eについて
前記ウのとおり,被告システムには,「バナーサーバー」が存在せず,
被控訴人システムが「バナーサーバーのアイコン」を表示することもない
から,「クライアントがクリックしたバナーサーバーから提供された広告
画像情報」を「主表示」することもない。
したがって,被告システムは,構成要件Eを充足しない。
キ構成要件Fについて
前記ウのとおり,被告システムには,「参加企業」及び「バナーサーバ
ー」が存在しないから,「各前記企業」及び「他のバナーサーバーの広告
画像情報の一覧表リスト」を「副表示」することもない。
したがって,被告システムは,構成要件Fを充足しない。
ク構成要件Gについて
前記ウのとおり,被告システムには,「バナーサーバー」が存在せず,
被控訴人システムが「バナーサーバーのアイコン」を表示することもない
から,「副表示されたバナーサーバーのアイコン」がクリックされると,
同一画面上に「当該クリックされたアイコンのバナーサーバーから提供さ
れた前記広告画像情報」を「主表示」することもない。
したがって,被告システムは,構成要件Gを充足しない。
ケ構成要件Hについて
前記ウのとおり,被告システムには,「参加企業」及び「バナーサーバ
ー」が存在しないから,「他のバナーサーバーの広告画像情報の一覧表リ
スト」を「副表示」することもない。
したがって,被告システムは,構成要件Hを充足しない。
コ構成要件Iについて
前記ウのとおり,被告システムには,「参加企業」が存在せず,また,
被告システムが,ユーザーの端末に表示する被告ウェブサイトの画面は,
リンク先を含めて,いずれも被控訴人が商品を販売する自社のページであ
るから,被告システムは,「他の店舗」の「商品リスト」を次々と閲覧可
能にするものではない。
したがって,被告システムは,構成要件Iを充足しない。
サ小括
以上のとおり,被告システムは,構成要件を全て充足しないから,本件
発明の技術的範囲に属さない。
(控訴人の主張)
仮に本件発明の構成要件Aの「クライアント」をユーザーの端末という意
に解し,被告システムは,被告管理端末を備えているが,ユーザーの端末で
ある「クライアント」を備えていない点で本件発明と相違するとしても,被
告システムは,均等の成立要件(第1要件ないし第3要件)を満たしている
から,本件発明と均等なものとして,本件発明の技術的範囲に属する。
ア相違部分が本質的部分でないこと(第1要件)
本件発明の構成要件BないしIは,本件発明の作用効果を奏するための
構成部分であり,この構成部分が本件発明の本質的部分である。
したがって,本件発明の構成要件Aの「クライアント」,すなわちユー
ザーの端末を被告管理端末に置き換えたとしても,本件発明の技術的思想
は変わらないから,被告管理端末とユーザの端末である「クライアント」
との相違部分は本件発明の本質的部分ではない。
イ作用効果の同一性(置換可能性)(第2要件)
本件発明の目的は,ワンクリック単価の低い広告システムを提供するこ
とにある。
本件発明の構成要件Aの「クライアント」,すなわちユーザーの端末を
を被告管理端末に置き換えたとしても,本件発明の上記目的を達成するこ
とができるから,被告システムは,本件発明と同一の作用効果を奏する。
ウ置換容易性(第3要件)
当業者は,被告システムの製造等の時点において,本件発明の構成要件
Aの「クライアント」,すなわちユーザーの端末を被告管理端末に置き換
えることに容易に想到することができたものである。
エ小括
以上のとおり,被告システムは,均等の成立要件(第1要件ないし第3
要件)を満たしているから,本件発明と均等なものとして,その技術的範
囲に属する。
(被控訴人の主張)
控訴人の主張は争う。本件発明の構成要件Aの「クライアント」を被告管
理端末に置き換えると,広告としての意味をなさず,広告システムとしての
作用効果を奏さない。
2間接侵害の成否(争点2)について
(控訴人の主張)
仮に本件発明の構成要件Aの「クライアント」をユーザーの端末という意
に解し,被告システムがユーザーの端末を備えていない場合であっても,「
ユーザーの端末と,このユーザーの端末からアクセスされる被告システムと
で構成される」広告システムは,本件発明の構成要件を全て充足する。
そして,被告システムはユーザーの端末がアクセスすることにより,ユー
ザーの端末と連携して本件発明の構成要件を全て充足する上記広告システム
が完成するのであるから,ユーザーの端末が被告システムにアクセスするこ
とは,本件発明の広告システムの生産に当たるというべきである。
このように被告システムは,ユーザーの端末と接続されることをもって初
めて機能するものであるから,本件発明の広告システムの生産のほかに,経
済的,商業的ないし実用的等に使用する可能性がない。
したがって,被告システムは本件発明の広告システムの生産にのみ用いら
れる物であり,被控訴人は,その生産等を行っているといえるから,被控訴
人の上記生産等の行為について,本件特許権の間接侵害(特許法101条1
号)が成立する。
また,本件明細書によれば,本件発明は,ワンクリック単価の低い広告シ
ステムを提供するという課題を該当する広告以外に他の店舗の商品リストを
次々と閲覧可能にすることにより解決したものである。
「ユーザー端末と,このユーザー端末からアクセスされる被告システムと
で構成される」広告システムは,本件発明による上記課題を解決するもので
あるが,被告システムは,上記課題の解決に不可欠なものに該当する。
そして,被控訴人は,少なくとも控訴人の警告書を受け取った平成25年
9月の時点において,本件特許権の存在を知りながら,本件発明の広告シス
テムの生産に用いる物であって,本件発明による上記課題の解決に不可欠な
ものの生産等を行っているといえるから,被控訴人の上記生産等の行為につ
いて,本件特許権の間接侵害(特許法101条2号)が成立する。
(被控訴人の主張)
控訴人の主張は争う。被告システムは,本件発明の「物の生産に用いる物」
に該当しない。
3本件特許権の権利行使制限の成否(争点3)について
被控訴人は,本件特許には無効理由があり,特許無効審判により無効とされ
るべきものであるから,特許法104条の3第1項の規定により,被控訴人は,
控訴人に対し,本件発明に係る本件特許権を行使することができない旨主張す
る。
被控訴人主張の無効理由及びこれに対する控訴人の主張は,次のとおり訂正
するほか,原判決9頁12行目から11頁2行目まで及び同11頁14行目か
ら12頁15行目までに記載のとおりであるから,これを引用する。
原判決9頁12行目の「1号」を「3号」と,同頁16行目の「日本国内
において公然知られた発明」を「頒布された刊行物に記載された発明」とそ
れぞれ改める。
原判決9頁23行目,10頁9行目,14行目の各「「商品マスタ」」の
前に「本件発明の特許請求の範囲(請求項1)の」をそれぞれ加える。
原判決10頁22行目の「a」を削除し,同行目の「「商品マスタ」」の
前に「本件発明の特許請求の範囲(請求項1)の」を加える。
原判決11頁2行目末尾に「したがって,本件特許は実施可能要件,サポ
ート要件及び明確性要件に違反する旨の被控訴人の主張は理由がない。」を
加える。
原判決11頁14行目の「柱書」を「柱書き」と,同頁17行目の「本件
補正は,出願当時」を「控訴人が平成22年6月17日付けでした手続補正
(以下「本件補正」という。)は,本件特許出願当時」とそれぞれ改める。
原判決12頁3行目及び12行目の各「願書に添付した」を「願書に最初
に添付した」と,同12頁6行目から7行目にかけて,15行目の各「1項」
を「1項柱書き」とそれぞれ改める。
4控訴人の損害額(争点4)について
(控訴人の主張)
被控訴人は,被控訴人が製造した被告システムを使用した被告ウェブサイト
の運営により,平成25年1月から3月までの間に売上高99億8500万円,
同年4月から6月までの間に売上高85億3600万円の合計185億210
0万円の売上げを得た。
本件特許権が同年1月18日に設定登録されたことを考慮すると,被控訴人
が本件発明の実施に対して受けるべき実施料相当額の損害額(特許法102条
3項)は,上記売上高85億3600万円に実施料率5%を乗じた4億268
0万円を下らない。
したがって,控訴人は,被控訴人に対し,本件特許権侵害の不法行為に基づ
く損害賠償として上記損害額4億2680万円の一部である1億円及びこれに
対する不法行為の後である同年9月22日(訴状送達の日の翌日)から支払済
みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める。
(被控訴人の主張)
控訴人の主張は争う。
第4当裁判所の判断
1被告システムの本件発明の技術的範囲の属否(争点1)について
本件明細書の記載事項等について
ア本件特許に係る特許請求の範囲の請求項1の記載は,前記第2の1の前
提事実のとおりである。
イ本件明細書(甲2)の「発明の詳細な説明」には,次のような記載があ
る(下記記載中に引用する図面については別紙明細書図面を参照)。
「【発明の属する技術分野】
この発明は,インターネットによって商品の購入をするクライアントに
対する広告リストを提供するネット広告システムに関する。」(段落【
0001】)
「【従来の技術】
広告媒体として昨今はインターネットを利用するクライアントが多くな
ってきており,そのために広告を提供するサーバーが増えている。その
一つとして一般的にバナーサーバーによる商品広告が知られている。こ
のバナー広告は,サイトへの導入ポイントとしての機能を持ち,情報量
が少ない。しかし,低価格でディスプレイ上に掲載可能にしてクリック
保証がされているが,ワンクリック単価(ユーザーの導入)が高価であ
った。
また,ターゲットを限定できるメールマガジンにあっては,ディスプレ
イ上に掲載できる情報量の制限があり,ワンクリック単価がやはり高価
であった。」(段落【0002】)
「【発明が解決しようとする課題】
この発明は,ワンクリック単価の低い広告システムを提供するものであ
る。
また,この発明の課題は,クライアントの購買力を高め,一回のクリッ
クによって数多くのバナーサーバーの商品広告をクライアントが閲覧可
能にする広告システムを提供することである。」(段落【0003】)
「【課題を解決するための手段】
この発明は,前記課題を達成するために以下の構成からなる。インタ
ーネットに接続可能な端末であるクライアントと,前記クライアントか
らの要求により該当する商品の広告をネット上で紹介提供する多数の参
加企業のホームページが保管された複数のバナーサーバーと,前記バナ
ーサーバーが提供する各前記企業の広告画像情報を予め分類仕分けして
保管記憶した商品マスタを備えた店舗サーバーとからなる連携システム
において,前記店舗サーバーは,前記クライアントからのアクセスに基
づき予めバナー情報マスタに記録保存された前記バナーサーバーのアイ
コンを含む当該店舗サーバーのホームページを当該クライアントのディ
スプレイ上に表示すると共に,表示された前記ホームページにおいて所
定のバナーサーバーのアイコンが前記クライアントによってクリックさ
れると前記クライアントのディスプレイ上に当該クライアントがクリッ
クしたバナーサーバーから提供された前記広告画像情報を主表示すると
ともに,各前記企業のカテゴリーとそれに属するアイテムを体系的に記
録した前記商品マスタから当該広告画像情報を表示した同一画面上に関
連商品の他のバナーサーバーの広告画像情報の一覧表リストを副表示し
て両者を併記することにより,該当する広告以外に他の店舗の商品リス
トも閲覧可能にすることを特徴とする。」(段落【0004】)
「この発明のネット広告システムは,クライアントの一回のアクセス
により一個のバナーサーバーの企業の商品広告を閲覧するのみではな
く,他の関連商品または他のバナーサーバーから提供される企業の商品
広告を副表示により閲覧することができ,クライアントの希望商品の選
択の幅が増えるとともに,サイト側の閲覧回数も増加し,クライアント
のワンクリックによる閲覧が保証され,ワンクリック単価が安くなる。」
(段落【0005】)
「この発明のネット広告システムは,一回の広告表示に際して副表示
によって関連商品の購買確率の高い商品広告の一覧を表示することがで
きるので広告効果が一段と高くなる。」(段落【0006】)
「【発明の実施の形態】
以下この発明のネット広告システムを図面に示す実施の形態において説
明する。
図1はこの発明のネット広告システムの1実施の形態の概要を示す図で
ある。図2はこの発明の実施の形態の概略説明図である。図3はこの発
明のネット広告システムと従来の広告システムとの比較グラフである。」
(段落【0007】)
「この発明のネット広告システムを図面に基づいて説明する。
需要者である複数のクライアント3,3・・の端末が主サーバー5を介
して接続可能な店舗サーバー1(ターミナル)には複数のバナーサーバ
ー2,2・・が連結してある。このバナーサーバー2,2・・には多数
の参加企業が格納登録され,それぞれの参加企業のホームページが保管
されている。各バナーサーバー2は通常はクライアント3の希望する商
品のクリックにより該当商品の企業のホームページまたは商品広告をデ
ィスプレイに送信して提供する。」(段落【0008】)
「他方,前記店舗サーバー1はバナー情報マスタ6,商品マスタ7,
同時購入確率ファイル8,クライアント履歴ファイル9等が記憶保管し
てあり,常時新しい情報を保管管理し,分類仕分けしてある。このバナ
ー情報マスタ6は各アイテム毎にアイテム名やアイテムコード等が記載
されたマスタであり,商品マスタ7は店舗が運営している各企業のすべ
ての企業についてのカテゴリー名とカテゴリコード,及びそれに属する
アイテム名とアイテムコードが体系的に記載されたマスタである。」(
段落【0009】)
「同時購買確率ファイル8はクライアント3が選択した各アイテム毎
に同時に購買されるアイテムが含まれるカテゴリーの確率が示されるフ
ァイルである。
クライアント履歴ファイル9はクライアント3毎のクライアント3が購
入した履歴(購買日,端末のアドレスNo,アイテムコード)が保管記
憶されたファイルである。
このような連携システムにおいてクライアント3の端末と店舗サーバー
1とはインターネット4網によって連結してあり,クライアント3は主
サーバー5を介在してもよい。」(段落【0010】)
「この発明のネット広告システムについて説明する。
まず,クライアント3は前記バナーサーバー2をクリックすることなく,
店舗サーバー1のアイコンをクリックすると,店舗サーバー1のホーム
ページが表れ,このホームページからクライアント3の希望するバナー
サーバー2の企業のアイコンをクリックする。該当するA社の広告がク
ライアント3のディスプレイ上に画像表示される。」(段落【0011
】)
「このクライアント3のディスプレイ上には図2で示されるようにA
社の広告を主表示するとともにこのディスプレイ上には他のバナーサー
バー2の企業リストが併記され,副表示される。
従って,クライアント3がA社の商品が希望に合わない時に副表示され
ている他のバナーサーバー2の企業をアイコンでクリックすることによ
りそのホームページを閲覧することができる。」(段落【0012】)
「このように次々に関連商品の企業のホームページを簡易に選択する
ことができるからクライアント3の一回のクリックにより,多数の企業
リストを閲覧が可能となるのでクライアント3の希望する商品の購買す
る確率を高めることができる。」(段落【0013】)
「この発明は,クライアントの一回のクリックにより多数の企業のホ
ームページを閲覧するから図3に示されるようにクリック回数が少なく
情報量が多くなりワンクリック単価が低くなる。」(段落【0014】)
「【発明の効果】
この発明のネット広告システムは,店舗サーバーのコンピュータによる
情報の保管管理によりクライアントの要望に応じた適確な商品を提供す
ることができるとともにクッリク単価が廉価となる。」(段落【001
5】)
ウ前記ア及びイによれば,本件明細書(甲2)には,本件発明に関し,次
の点が開示されていることが認められる。
従来から,インターネットを利用するクライアントに対する広告とし
て,バナーサーバーによる商品広告(バナー広告)が一般的に知られて
いる。このバナー広告は,サイトへの導入ポイントとしての機能を持ち,
低価格でディスプレイ上に掲載可能にし,クリック保証がされているが,
ワンクリック単価(ユーザーの導入)が高価であった(段落【0002
】)。
本件発明は,クライアントの購買力を高め,1回のクリックによって
数多くのバナーサーバーによる商品広告(バナー広告)をクライアント
が閲覧可能にする広告システムを提供することを課題とし,上記課題を
解決するための手段として,構成要件AないしIの構成を採用した(段
落【0003】,【0004】)。
本件発明は,上記構成を採用したことにより,クライアントの1回の
アクセスにより1個のバナーサーバーの企業の商品広告を閲覧するのみ
ではなく,他の関連商品又は他のバナーサーバーから提供される企業の
商品広告を副表示により閲覧することができるので,クライアントの希
望商品の選択の幅が増えるとともに,サイト側の閲覧回数も増加し,ク
ライアントのワンクリックによる閲覧が保証され,ワンクリック単価が
安くなり,また,一回の広告表示に際して副表示によって関連商品の購
買確率の高い商品広告の一覧を表示することができるので広告効果が一
段と高くなることから(段落【0005】,【0006】),「店舗サ
ーバーのコンピュータによる情報の保管管理によりクライアントの要望
に応じた適確な商品を提供することができるとともに,クリック単価が
廉価となる」(段落【0015】)という効果を奏する。
被告システムの構成について
前記第2の1の前提事実と証拠(甲7,17ないし22,乙1,2)及び
弁論の全趣旨によれば,①被告ウェブサイトは,被控訴人が多数のファッシ
ョンブランドの商品を販売するインターネットショッピングサイトであり,
被控訴人は,ブランド各社から納入を受けた商品を被告ウェブサイトにアク
セスしたユーザーに対し,被控訴人の名義で販売していること,②被告ウェ
ブサイトに使用している被告システムは,被控訴人が運営する「データセン
ター」に配置された「WEBサーバー群」と,検索用データベースとメイン
系データベースに分類できる「データベースサーバ群」とを含むサーバー装
置を備えていること,③被告システムは,別紙1の図1ないし4に示すよう
に,被告ウェブサイトにアクセスしたユーザーの端末のディスプレイ上に,
商品情報画像のアイコン2を含む画面3を表示し(別紙1の図2参照),ユ
ーザーによってアイコン2がクリックされると,当該クリックされたアイコ
ン2に対応する商品情報画像4を主表示した画面5を表示し(別紙1の図3
参照),同時に,商品情報画像4が主表示された画面5と同一画面上に,商
品情報画像4の商品に関連する,複数の商品の商品情報画像のアイコン6の
リスト7を副表示し(別紙1の図3参照),さらに,副表示されたアイコン
6がユーザーによってクリックされると,当該クリックされたアイコン6に
対応する商品情報画像8を主表示する画面9を表示し(別紙1の図4参照),
同時に,商品情報画像8が主表示された画面9と同一画面上に,商品情報画
像8の商品に関連する,複数の商品の商品情報画像のアイコンのリスト10
を副表示し(別紙1の図4参照),このように主表示された商品情報画像の
画面と同一画面上に副表示されたアイコンのクリックを繰り返すことによ
り,主表示された商品情報画像以外の商品情報画像を次々と閲覧可能となる
ことが認められる。
について
本件事案の内容に鑑み,まず,被告システムの構成要件Bの充足性につい
て判断する。
控訴人は,①構成要件Bの「参加企業のホームページ」は,参加企業の商
品を紹介するためのホームページをいい,請求項1には,「参加企業のホー
ムページ」の作成者や管理者等について限定する記載はないから,参加企業
の商品を紹介するためのホームページであれば,参加企業が管理又は運営す
るホームページでなくとも,「参加企業のホームページ」に当たると解すべ
きである,②被告システムを使用する被告ウェブサイトでは,被控訴人以外
の多数の企業の商品が販売されており,被告ウェブサイトで「ショップ」と
表示されている被控訴人以外の多数の企業は,「参加企業」に該当するとこ
ろ,被告システムに存在するバックヤードシステムでは,各ショップから登
録された商品情報と「img4」に保存された商品画像が紐付けされて保存され
ており,これらの商品情報,商品画像等は,「参加企業のホームページ」に
該当し,これらを保存(保管)する,「img4」を含むサーバーが「バナーサ
ーバー」に該当する,③また,被告ウェブサイトで商品情報画像のアイコン
2(別紙1の図2)がユーザーによってクリックされると,関連商品が表示
されるリンク先のページ(別紙1の図3(a)の画面5等)は,参加企業の
商品を紹介するためのウェブページであるから,「参加企業のホームページ」
に該当し,上記ページは,被告システムにより提供されるから,被告システ
ムは,上記ページを保管する機能を有するサーバーである「バナーサーバー」
を備えているとして,被告システムは,構成要件Bを充足する旨主張するの
で,以下において判断する。
ア「参加企業のホームページ」の意義について
本件発明の特許請求の範囲(請求項1)の記載によれば,本件発明の
ネット広告システムは,「インターネットに接続可能な端末であるクラ
イアント」(構成要件A)と,「前記クライアントからの要求により該
当する商品の広告をネット上で紹介提供する多数の参加企業のホームペ
ージが保管された複数のバナーサーバー」(構成要件B)と,「前記バ
ナーサーバーが提供する各前記企業の広告画像情報を予め分類仕分けし
て保管記憶した商品マスタを備えた店舗サーバー」(構成要件C)とを
備えるものである。
しかるところ,「商品の広告をネット上で紹介提供する多数の参加企
業のホームページ」(構成要件B)との文言によれば,「参加企業のホ
ームページ」は,「商品の広告」をネット上で「紹介提供」するもので
あること,広告の対象となる「商品」は参加企業の商品であり,「商品
の広告」をネット上で「紹介提供」する主体は参加企業であることを理
解することができる。
また,「ホームページ」とは,通常,「Webサイト」(ウェブサイ
ト)と呼ばれるインターネット上のひとまとまりの「Webページ」(
ウェブページ)又は「Webサイト」のトップページ(入口)に配置さ
れた「Webページ」を意味する。
そして,「Webサイト」は,それを運営又は管理する者が存在する
ことを前提とすることからすると,構成要件Bの「参加企業のホームペ
ージ」の文言は,参加企業が運営又は管理する「Webサイト」又はそ
のトップページとしてのホームページを意味するものと解するのが自然
である。
次に,本件明細書には,「参加企業のホームページ」に関し,段落【
0008】に「このバナーサーバー2,2・・には多数の参加企業が格
納登録され,それぞれの参加企業のホームページが保管されている。各
バナーサーバー2は通常はクライアント3の希望する商品のクリックに
より該当商品の企業のホームページまたは商品広告をディスプレイに送
信して提供する。」,段落【0012】に「従って,クライアント3が
A社の商品が希望に合わない時に副表示されている他のバナーサーバー
2の企業をアイコンでクリックすることによりそのホームページを閲覧
することができる。」,段落【0013】に「このように次々に関連商
品の企業のホームページを簡易に選択することができるからクライアン
ト3の一回のクリックにより,多数の企業リストを閲覧が可能となるの
でクライアント3の希望する商品の購買する確率を高めることができ
る。」,段落【0014】に「この発明は,クライアントの一回のクリ
ックにより多数の企業のホームページを閲覧するから図3に示されるよ
うにクリック回数が少なく情報量が多くなりワンクリック単価が低くな
る。」との記載があるが,「参加企業のホームページ」について特段の
定義をした記載はない。
のバナーサーバーによる商品広告(バナー広告)は,「サイトへの導入
ポイントとしての機能」を持つが,ワンクリック単価(ユーザーの導入)
が高価であるという問題点があるとの認識の下に,クライアントの購買
力を高め,一回のクリックによって数多くのバナーサーバーによる商品
広告(バナー広告)をクライアントが閲覧可能にする広告システムを提
供することを課題とし,その課題を解決するための手段として構成要件
AないしIの構成を採用したことが開示されている。
加えて,「バナー広告」とは,通常,インターネット広告の一種であ
り,「Webサイト」に広告画像(バナー)を貼り付け,その広告画像
をクリックすると,広告主の「Webサイト」にリンクする手法を意味
することからすると,本件明細書の段落【0012】の「副表示されて
いる他のバナーサーバー2の企業をアイコンでクリックすることにより
そのホームページを閲覧することができる。」,段落【0013】の「
このように次々に関連商品の企業のホームページを簡易に選択すること
ができる」,段落【0014】の「クライアントの一回のクリックによ
り多数の企業のホームページを閲覧するから…」との記載中の「企業の
ホームページ」は,アイコンのクリックによりリンクするリンク先の「
企業」が運営又は管理する「Webサイト」又はそのトップページとし
てのホームページを意味するものと理解することができる。
以上のような,請求項1の文言及び本件明細書の記載事項等に鑑みる
と,構成要件Bの「参加企業のホームページ」とは,「商品の広告をネ
ット上で紹介提供」する参加企業が運営又は管理する「Webサイト」
又はそのトップページとしてのホームページを意味するものと解され
る。
控訴人は,これに対し,①構成要件Bの「参加企業のホームページ」
は,参加企業の商品を紹介するためのホームページをいい,請求項1に
は,「参加企業のホームページ」の作成者や管理者等について限定する
記載はないから,参加企業の商品を紹介するためのホームページであれ
ば,参加企業が管理又は運営するホームページでなくとも,「参加企業
のホームページ」に当たる,②「参加企業のホームページ」は,「保管」
される対象データとしてのホームページであり,参加企業の写真(商品
画像),テキストデータ(商品情報)等の各種要素の集合体を意味し,
ホームページのデータの要素となるデータが保管されている場合も,「
参加企業のホームページ」にいう「ホームページ」に該当するなどと主
張する。
しかしながら,請求項1に「参加企業のホームページ」の作成者や管
理者等について限定する明示の記載がないからといってそのことのみか
ら,「参加企業のホームページ」は,参加企業の商品を紹介するための
ホームページであると解することはできないし,ホームページのデータ
の要素となるデータが保管されている場合も,「参加企業のホームペー
ジ」にいう「ホームページ」に該当すると解することもできない。控訴
人は,他に,上記①及び②のように解釈すべき特許請求の範囲の記載又
は本件明細書の記載に基づく根拠を示していない。
事項等に鑑みると,構成要件Bの「参加企業のホームページ」とは,「
商品の広告をネット上で紹介提供」する参加企業が運営又は管理する「
Webサイト」又はそのトップページとしてのホームページを意味する
ものと解されるものであり,請求項1に「参加企業のホームページ」の
作成者や管理者等について限定する明示の記載がないことは,このよう
に解釈することの妨げとなるものではない。
したがって,控訴人の上記主張は,採用することができない。
イ被告システムの構成要件Bの充足性について
被告ウェブサイトは,
被控訴人が多数のファッションブランドの商品を販売するインターネッ
トショッピングサイトであり,被控訴人は,ブランド各社から納入を受
けた商品を被告ウェブサイトにアクセスしたユーザーに対し,被控訴人
の名義で販売しており,被告ウェブサイトで商品情報画像のアイコン2
(別紙1の図2)がユーザーによってクリックされると,関連商品が表
示されるリンク先のページ(別紙1の図3及び図4)は,被控訴人の自
社のページであること,被告ウェブサイトで表示される他のページも,
いずれも被控訴人の自社のページであり,被告ウェブサイトには,被控
訴人以外の他の企業が管理するホームページに誘導するバナー広告が存
在しないことが認められる。
したがって,被告ウェブサイトを使用する被告システムには,「商品
の広告をネット上で紹介提供」する参加企業が運営又は管理する「We
bサイト」又はそのトップページとしてのホームページである「参加企
業のホームページ」が存在するものと認めることはできず,ひいては,
被告システムにおいて,「参加企業のホームページ」を保管する「バナ
ーサーバー」が存在するものと認めることはできない。
控訴人は,これに対し,①被告システムを使用する被告ウェブサイト
では,被控訴人以外の多数の企業の商品が販売されており,被告ウェブ
サイトで「ショップ」と表示されている被控訴人以外の多数の企業は,
「参加企業」に該当するところ,被告システムに存在するバックヤード
システムでは,各ショップから登録された商品情報と「img4」に保存さ
れた商品画像が紐付けされて保存されており,これらの商品情報,商品
画像等は,「参加企業のホームページ」に該当し,これらを保存(保管)
し,それに各種処理が施されて「img5」に提供する,「img4」を含むサ
ーバーが「バナーサーバー」に該当する,②被告ウェブサイトにおける
各ショップの商品の販売は,受託販売であり,ショップが自ら在庫の管
理(一番売れている商品の情報提供,返品業務)を行い,再入荷リクエ
スト,機会損失データ,デフォルトカラーの在庫分データ等を支配・管
理できる仕組みとなっていること,ショップ側でショップコンセプトを
自由にアレンジできること,ショップが自らそのブランドをコントロー
ルしているホームページを被告システムに提供しているといえるから,
ショップは「参加企業」に該当するなどと主張する。
しかしながら,事実に照らすと,被告ウェブサイトでは,
商品の納入先のブランド各社を「ショップ」と表示しているが,被告ウ
ェブサイトでは,被控訴人がブランド各社から仕入れたの商品を自社の
名義で販売しているものであって,ブランド各社がユーザーに対し商品
を販売しているものではないから,「ショップ」なる独立の販売主体が
存在するものではない。被控訴人の被告ウェブサイトにおける商品の販
売形態が「受託販売」であることは,被控訴人も認めるところであるが,
受託販売であっても,被控訴人が自社の名義でユーザーに商品の販売を
している事実に変わりはない。
したがって,「ショップ」が構成要件Bの「参加企業」に該当するも
のと認めることはできない。
また,証拠(甲17ないし21)及び弁論の全趣旨によれば,①被告
ウェブサイトで「ショップ」と表示されたブランド各社の担当者は,当
該担当者の端末に表示された「https://backoffice-srv.zozo.jp/」のU
RLで特定されるサイトのログイン画面にショップ別のアクセスID及び
パスワードを入力し,被告ウェブサイトにアクセスし,上記端末に表示
された商品登録画面から商品情報を被告システムに登録し,この登録が
行われると,個別の商品番号が採番され,それに紐付けされた自社商品
番号を上記担当者が入力すること,②上記ブランド各社が被控訴人に搬
入する上記登録商品について,被控訴人又は上記ブランド各社が写真撮
影を行い,撮影した商品画像を被告システムにアップロードし,その商
品画像は被告システムのサーバーに保存されること,③上記サーバーに
保存された商品画像は,各種の画像サイズに加工されて,被告システム
の別のサーバーに保存され,この別のサーバーに保存された商品画像は,
顧客が被告ウェブサイトにアクセスした際に顧客端末に表示されること
が認められる。
上記認定事実によれば,被告ウェブサイトで「ショップ」と表示され
たブランド各社は,被控訴人に納入した商品の商品情報及び商品画像を
被告システムに登録することに関与しているものといえるが,被告シス
テムのサーバーに登録された上記商品情報及び商品画像は,ブランド各
社が運営又は管理する「Webサイト」に当たらず,その「Webサイ
ト」のトップページにも当たらないから,「参加企業のホームページ」
に該当しない。
また,ブランド各社が被告システムで販売される商品の在庫管理に関
与しているとしても,被告システムにおいてブランド各社が運営又は管
理する「Webサイト」又はそのトップページとしてのホームページが
存在するものと認めることもできない。
したがって,控訴人の上記主張は,その前提を欠くものであって,理
由がない。
次に,控訴人は,被告ウェブサイトで商品情報画像のアイコン2(別
紙1の図2)がユーザーによってクリックされると,関連商品が表示さ
れるリンク先のページ(別紙1の図3(a)等)は,参加企業の商品を
紹介するためのウェブページであるから,「参加企業のホームページ」
に該当し,上記ページは,被告システムにより提供されるから,被告シ
ステムは,上記ページを保管する機能を有するサーバーである「バナー
サーバー」を備えている旨主張する。
報画像のアイコン2(別紙1の図2)がユーザーによってクリックされ
ると,関連商品が表示されるリンク先のページ(別紙1の図3及び図4)
は,いずれも被控訴人の自社のページであって,被控訴人以外の他の企
業が運営又は管理する「Webサイト」又はそのトップページに当たら
ないから,「参加企業のホームページ」に該当しない。
したがって,控訴人の上記主張は,その前提を欠くものであって,理
由がない。
以上によれば,被告システムは構成要件Bを充足するとの控訴人の主
張は,理由がない。
ウ構成要件CないしIの充足性について
前記イのとおり,被告システムには,「参加企業」,「参加企業のホー
ムページ」及び「バナーサーバー」(構成要件B)が存在しないから,「
バナーサーバー」が提供する各前記企業の広告画像情報を予め分類仕分け
して保管記憶した商品マスタを備えた「店舗サーバー」(構成要件C)も
存在しない。
このように被告システムには,「バナーサーバー」及び「店舗サーバー」
が存在しないから,被告システムは,構成要件CないしIをいずれも充足
しない。
エ小括
以上によれば,被告システムは,構成要件BないしIをいずれも充足し
ない。
控訴人は,仮に本件発明の構成要件Aの「クライアント」をユーザーの端
末という意に解し,被告システムは,被告管理端末を備えているが,ユーザ
ーの端末である「クライアント」を備えていない点で本件発明と相違すると
しても,被告システムは,均等の成立要件(第1要件ないし第3要件)を満
たしているから,本件発明と均等なものとして,本件発明の技術的範囲に属
する旨主張する。
いしIを充足せず,これらを充足しない点において本件発明と相違するが,
控訴人の上記均等の主張は,構成要件BないしIに係る相違部分について言
及するものではないから,その主張自体理由がない。
まとめ
以上のとおり,被告システムは,構成要件BないしIをいずれも充足せず,
また,控訴人主張の均等侵害は成立しない。
したがって,被告システムは,その余の点について判断するまでもなく,
本件発明の技術的範囲に属さない。
2間接侵害の成否(争点2)について
控訴人は,①仮に本件発明の構成要件Aの「クライアント」をユーザーの端
末という意に解し,被告システムがユーザーの端末を備えていない場合であっ
ても,「ユーザーの端末と,このユーザーの端末からアクセスされる被告シス
テムとで構成される」広告システムは,本件発明の構成要件を全て充足する,
②被告システムはユーザーの端末がアクセスすることにより,ユーザーの端末
と連携して上記広告システムが完成するのであるから,ユーザーの端末が被告
システムにアクセスすることは,本件発明の広告システムの生産に当たる,③
被告システムは,本件発明の広告システムの生産にのみ用いられる物,又は本
件発明の広告システムの生産に用いられる物であって,本件発明による課題の
解決に不可欠なものに該当するとして,被控訴人の上記生産等の行為について,
本件特許権の間接侵害(特許法101条1号,2号)が成立する旨主張する。
いしIを充足しないから,上記①の「ユーザーの端末と,このユーザーの端末
からアクセスされる被告システムとで構成される」広告システムは,本件発明
の構成要件を全て充足するものとはいえない。
したがって,控訴人の上記主張は,その前提を欠くものであって,理由がな
い。
3結論
以上の次第であるから,その余の点について判断するまでもなく,控訴人の
請求は理由がない。
したがって,控訴人の請求を棄却した原判決は結論において相当であり,本
件控訴は理由がないからこれを棄却することとし,主文のとおり判決する。
知的財産高等裁判所第4部
裁判長裁判官富田善範
裁判官大鷹一郎
裁判官田中芳樹
(別紙1)
(別紙)明細書図面
【図1】
【図2】
【図3】

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