弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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       主   文
本件抗告を棄却する。
       理   由
一、抗告代理人は、「原決定を取り消す。抗告人を処分しない。」との決定を求
め、その抗告の理由は、次のとおりである。
(一) 憲法上及び法律上の判断の回避について
 飛行訓練の危険性は、抗告人提出の資料に照らして明白であり、原決定もまたこ
れを認めるところである。抗告人は、かゝる生命の危険を伴う訓練の実施を過料の
制裁をもつて強制することが、憲法の条規に違反するものであり、また、間接強制
につき従来確立されている判例、学説の立場にも反することとなる旨を主張してい
るのである。しかるに、原決定は、抗告人の右主張について何ら判断するところが
ない。本件の如く、訓練わけても生命の危険を伴う訓練を救済命令ないし緊急命令
をもつて命じた事例は、未だ存在せず、本件が最初のケースであるから、裁判所と
しては当然抗告人の右のような憲法上、法律上の疑問に対して明確に答える職責が
あつたはずである。
(二) 訓練実施の可能性の認定について
1 抗告会社の訓練担当の教官全員がa、b両名の飛行訓練の実施に生命の危険を
感じ、その担当を忌避している。従つて抗告会社としてはこれらの教官に対し業務
命令を発して右両名の訓練を命ずることができないことは、事柄の性質上当然至極
といわなければならない。
2 原決定は、「aおよびbの本件懲戒解雇は違法な争議行為をなしたことを理由
とするものであつて同人らの副操縦士としての技倆ないし適格性の欠如を理由とす
るものでないところ、当裁判所は右解雇を不当労働行為と認めて発せられた前記都
労委の救済命令を一応是認して本件緊急命令を発したものである以上、被審人主張
の如き事由をもつて訓練実施不履行の正当な理由とはなし難い」と説示しており、
右説示は、問題の把握において根本的な誤りを犯しているものである。抗告人は、
本件において懲戒解雇の理由の存否を問題にしているものではない。現在の状況を
前提として訓練実施の不可能なことを主張しているのである。例えば、交通事故を
起して刑事裁判中であるため情緒の安定を期し難い者に対して、抗告人としては到
底危険な飛行訓練を実施することはできない。同様の理由によりa、b両名に対し
て現在飛行訓練を実施しうる状況にないことを主張しているのである。もし原決定
のような理由をもつてすれば、仮りにa、b両名が精神に異常を来したような場合
にも、それが本件解雇の理由とは関係がないとて、抗告人は訓練の実施を強制され
ることとなろう。その不当なことは、いわずして明らかである。
3 原決定は、「右両名が現にその解雇をめぐつて被審人と訴訟において係争中で
あるとの一事をもつてしては、両名の精神状態が訓練に支障を来たす程不安定なも
のであるとは断じ難い。」と説示する。しかしながら、本件係争は、抗告会社にお
ける乗務員の姿勢及び労働組合による争議の在り方についての根本的問題、即ち、
外人セーフテイ・キヤプテン導入による機長訓練の促進及び飛行技術上無用となつ
たカイロ、カラチ間の航空士乗務廃止の是非並びに飛行便の出発予定時刻直前に抜
き打ちの指名ストを敢行して旅客を混乱に陥らせること及び出発前準備作業を終了
した乗員を指名ストに入れてその作業を無駄にさせることの是非が争点となつてい
るのである。しかして、現在抗告会社の操縦教官は、いずれも本件争議に関して
a、bらと意見を異にし、同人らがその幹部である日本航空乗員組合を脱退して、
日本航空運航乗員組合を結成し、本件争議に関しては一貫して会社の立場を支持し
ているのである。従つて教官とa、bとの間に見解の対立があり、緊急な相互連繋
とこれを支えるに足る精神的共同を容易に確保し難いことは、明らかである。そも
そも飛行訓練に際しての緊密な連繋は、意識的な精神的緊張のみによつて確保され
るものではなく、教官と訓練生との間に無意識的に醸成される連帯意識によつて始
めて確保されうるものであり、それが訓練に際して一瞬の判断と動作に決定的な影
響を及ぼすことになるのである。なお、a、bらにより企画実行された本件争議の
目的の一に前記外人セーフテイ・キヤプテンないし外人乗員の導入に対する反対が
あり、外人教官も右両名を快く思わないことは明白であるから、外人教官をして右
両名の訓練を担当させることも適当でない。
(三) 訓練内容の不特定性について
 原決定は、「aおよびbについても、教官による技能低下の程度の審査を経たう
え、その技能の程度に相応した訓練時間および内容が自ら確定されるべき筋合のも
のであるから、右訓練内容が不特定であるとはいえない。」と説示するが、訓練の
如きは、訓練生の能力、熱意、態度等によりその効果が大きく左右され、やつてみ
なければ果してどれだけの成果が挙がるものか分らないのである。当初の技能低下
の程度の審査で訓練時間及び内容が自ら確定するとする原決定の判断は、全く失当
というほかはない。そもそも本件争議の原因となつた外人セーフテイ・キヤプテン
の導入の必要性が生じたのは、副操縦士に対するCVー八八〇型機機長への昇格訓
練が所期の成果をあげなかつたからであり、又本件緊急命令による訓練の対象とな
つた四名のうち航空士c及び航空機関士dについては、抗告会社においてシラバス
を作成しそれに従つた訓練を終了したのであるが、両名とも単独で乗務する自信が
ないというので、このたび再びこれにつき訓練を実施することとなつた。右のよう
な点に想到するとき、本件緊急命令の要求する訓練の内容が不特定であり、到底過
料の制裁による強制に親しまないことが明白であると考える。
二、よつて右抗告の理由について判断する。
(一) 「訓練実施の可能性の認定について」の主張について
 本件記録によれば、飛行訓練は、各種の非常緊急事態を想定してこれに対処する
技術を習得させることを目的として実施されるものであつて、危険を伴い、従つて
訓練生の情緒安定と、教官、訓練生相互間の連繋とこれを支えるに足る精神的共同
の確保を必要とすること、抗告会社の訓練教官は、すべてa、bらに対する懲戒解
雇の原因となつた本件争議に関して同人らと意見を異にして、日本航空乗員組合を
脱退して、日本航空運航乗員組合を結成したものであつて、前記両名との間に会社
の運航方針等に関して見解の対立があり、右両名の飛行訓練の担当を忌避する旨の
意思表示をしており、外人教官も同じく忌避の意向を有していること並びに右両名
と抗告会社との間に同人ら懲戒解雇の効力をめぐつて訴訟が係属していることが認
められる。しかしながら右a、bの両名が同人らに対する懲戒解雇の効力をめぐつ
て抗告会社と係争中であるとの一事をもつてしては、右訴訟における主たる争点が
抗告会社の主張するとおりであるとしても、このことをもつて右両名が飛行訓練生
として要求される情緒の安定を欠いているものと認めることはできない。次に抗告
会社の教官全員が本件争議に関してa、bらと意見を異にし、別個の労働組合を結
成し、会社に全面的に協力している点よりして互いに快く思つていないことは推認
するに難くなく、このことが飛行訓練において要求される教官と訓練生との間の相
互連繋並びにそれを支える信頼関係の確保に支障を及ぼすおそれなしとしないこと
もまた推測できなくはなく、抗告会社の教官がこぞつてa、b両名の訓練担当を忌
避しているのもこの点を危惧しているためであることは、容易に認めることができ
る。しかしながら、抗告会社としては、自社の教官にa、b両名の飛行訓練を担当
させることが安全性確保の見地から困難であると認めるときは、右訓練を他の航空
会社等に委託する等本件緊急命令を実施する方法は残されているのであつて、抗告
会社の主張する安全性確保の見地からするも本件緊急命令を実施することは不可能
とはいいえない。しかるに本件記録にあらわれた全資料をもつてするも抗告会社に
おいてかゝる努力をしたことは認めることはできない。本件緊急命令について不服
を有するとしても法定の手続によりその取消、変更の申立て(労働組合法第二七条
第八項)、あるいは救済命令の効力停止の申立て(行政事件訴訟法第二五条)によ
り救済を求めるは格別、緊急命令の効力の存続する以上は、受訴裁判所が救済命令
の適法性と緊急命令の必要性があると判断してなした緊急命令を遵守すべく出来る
限りの努力をすべきであり、従つて抗告会社主張の如き事由をもつてしては、飛行
訓練不履行の正当事由とはなしえないものと考える。よつて原決定には、抗告会社
の主張する如き憲法の条規に違反する瑕疵があるものということはできない。
(二) 「訓練内容の不特定性について」の主張について
 本件緊急命令において抗告会社に対し、a、bらの技能を回復させるために必要
な訓練を行うべき旨を命じている趣旨は、抗告会社に対して右両名が四年余のブラ
ンクによつて低下した技能を回復し、抗告会社において乗務させるのが適当と認め
る技能水準に達せしめる程度の訓練の実施を命じているものと解すべきところ、本
件記録(資料九、同一四)によれば、操縦訓練については、訓練生の機種資格の有
無、飛行経験及び技倆の程度等により多少異るものの標準的な訓練時間とその内容
が定められていることが認められるから、これに基づきa、b両名についても現在
の技能程度より判断してこれを副操縦士として乗務させるに適当な技能を回復させ
るに通常要する訓練時間及びその内容は、その能力、熱意等により多少の個人差は
あるとはいえ、自ら確定しうるものというべきであるから、この点に関する抗告会
社の主張も理由がない。
三、その他本件記録を精査するも、原決定にはこれを取り消すべき違法又は不当の
点は見当らないから、原決定は相当であり、本件抗告は、理由がないから、これを
棄却すべきものとして、主文のとおり決定する。
(裁判官 石田哲一 小林定人 関口文吉)

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