弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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       主   文
一 債権者と債務者間の東京地方裁判所平成二年ヨ第二五五〇号著作権仮処分事件
について、当裁判所が平成三年九月二四日にした仮処分決定を、別紙(1)のとお
り、変更する。
二 訴訟費用は債務者の負担とする。
       事   実
第一 債務者の申立ての趣旨
一 債権者と債務者間の東京地方裁判所平成二年(ヨ)第二五五〇号著作権仮処分
事件について、当裁判所が平成三年九月二四日にした仮処分決定を取り消す。
二 債権者の本件仮処分申立てを却下する。
三 訴訟費用は債権者の負担とする。
第二 事案の概要
一 本件は、米国において英語の日刊新聞「THE WALL STREET J
OURNAL」(債権者新聞)を発行する債権者が、日本において「全記事抄訳サ
ービス」と称して、右新聞の記事を抄訳した文書(債務者文書)を作成・頒布する
債務者に対し、債務者文書の作成・頒布は債権者の右新聞について有する編集著作
権を侵害するものであるとして、その作成・頒布の差止めの仮処分を申し立てたと
ころ、これを認容する仮処分決定(本件仮処分命令)がなされたため、その取消し
等を求めた仮処分異議事件である。
二 債権者の主張
1 債権者がこれまで発行してきた債権者新聞、及び将来発行する債権者新聞は、
いずれも編集著作物である。
(一) 債権者の発行する債権者新聞は、特定の日付けの紙面全体が、素材の選択
及び配列に創作性のある編集著作物である。
 債権者新聞は、世界中で生起するさまざまな出来事(素材)の中から、経済ニュ
ースを中心に、報道する価値の認め得るものが選択され、更に内容及び重要度の分
析に基づき、速報性の高い経済ニュース、速報性の低い経済ニュース、特集記事、
国際ニュース、政治ニュース、レジャー関連記事、社説、投資情報、相場表などの
カテゴリーに分類され、その分類に従って、紙面に割り付けがなされるから、特定
の日付けの新聞紙面全体として編集著作物に該当することが明らかである。
(二) 将来発行される債権者新聞も、編集著作物となるものである。
 債権者は、一八八九年以来、組織を整備拡充し、世界的規模でニュースソースを
収集し、これを的確に伝達できるための体制を構築しつつ、継続して債権者新聞を
発行してきたのであり、将来もこれを継続するものである。したがって、債権者新
聞が、将来においても反復継続して発行される蓋然性は極めて高い。そして、債権
者が、これまで確立してきた記事の収集、選択及び配列の手法に依拠し、債権者新
聞を発行する限り、素材の選択及び配列に創作性のない紙面ができることなどあり
えないから、将来発行される債権者新聞も全体について編集著作物性を当然有する
ものである。
(三) 右のとおり、債権者がこれまで発行してきた債権者新聞、また将来発行す
るであろう債権者新聞は、いずれも編集著作物に該当するものである。
2 これまで発行してきた、また将来発行するであろう債権者新聞の編集著作権
は、債権者の発意に基づき、その従業員が職務上作成し、債権者の名義のもとに公
表するものであるから、債権者に帰属するものである。
3 債務者は、債権者が編集著作権を有する債権者新聞を勝手に翻案し、その編集
著作権を侵害している。
(一) 債務者は、特定の日付けの債権者新聞のほとんど全ての文章記事につい
て、その一部又は全部を翻訳し、また要約し、これを債権者新聞の紙面における記
事の割付順序とほとんど一致するように配列し、当該日付けの記事が一覧すること
ができる債務者文書を作成している。
(二) かかる債務者の行為は、債権者新聞の文章記事を利用して文書を作成して
いる点において債権者新聞における素材の選択の創作性を利用するものであり、ま
た債権者新聞の記事の分類に従って記事の分類のための表題まで付して配列してい
る点において債権者新聞における素材の配列の創作性を利用するものであるから、
編集著作権の侵害に該当することは明らかである。
(三) かかる債務者の著作権侵害行為は将来も継続して行われる蓋然性が極めて
高い。債務者は、これまで四年以上にわたって、全ての発行日の債権者新聞につい
て、その素材の選択及び配列の創作性を利用する行為を反復継続してきており、今
後も継続する意向を表明しているから、債権者が将来発行するであろう債権者新聞
についても同様に編集著作権侵害行為をする蓋然性が極めて高いというべきであ
る。
4 保全の必要性
(一) 債務者の前記侵害行為は、債権者の従業員である記者及び編集担当者の汗
の結晶として集大成された編集著作物である新聞の価値を、翻訳家を雇って抄訳等
をさせ、これをワードプロセッサーで打ち込んでファクシミリで送付するという極
めて安易な方法によるものであり、かかる行為が放置されるならば、新聞業界全体
に大きな影響を与えることになる。
(二) 債務者は、債権者からの昭和六三年四月頃からの再三の中止の申入れにも
かかわらず、侵害行為を止めない。
(三) また将来発行されるであろう債権者新聞についても債務者により同様の侵
害行為がなされる蓋然性は極めて高く、この侵害行為に対する差止めが認められな
いと債権者は既に発行された分についてのみ日々差止請求訴訟を提起せざるを得な
いという不合理な事態に陥るから、将来成立する高度の蓋然性を有する著作権に基
づいて、これに対する将来の侵害行為の差止めが認められる必要がある。
三 債務者の主張
1(一) 憲法二一条の表現の自由は、今日においては、単に情報の発信の自由で
あるだけでなく、情報の受け手の知る権利をも保障するものであり、特に時事に関
する情報の流通は民主制にとって不可欠である。情報の自由な流通に関する制約の
一つとして著作権制度があり、著作者に対し創作への報償として一定の権利を付与
するが、情報の過度の独占は文化の発展を阻害するものであるから、著作権法の目
的は、創作への報償と情報の自由流通の間に適切なバランスを取ることにある。
(二) 事実の伝達にすぎない雑報及び時事の報道は言語の著作物に該当しない旨
を規定した著作権法一〇条二項は、情報ことに時事に関する情報は民主制の基盤と
して最も重要なものであるから、このような憲法の表現の自由に由来する重大な要
請のために著作権は一定程度道を譲るべきことを宣言した規定と解すべきである。
(三) ECのデータベースの保護に関する指令案によると、要旨や要約であって
も、原著作物自体を代替しなければ、許諾なしで、データベースに編入しうること
を認めており、この考え方は、電子的手段によらない編集物についても当然適用で
きるものである。すなわち、電子的編集物は非電子的編集物に比べ記憶容量が大き
く、利用も迅速、容易、広範であり、素材の提供者に対する影響も格段に大きいの
であるから、このような電子的編集物への編入が許容される以上、原著作物自体を
代替しないという条件を満たす限り、電子的編集物より弱い編集物である非電子的
編集物への編入は勿論解釈として許容されるのである。そして、このデータベース
又は非電子的編集物に編入される著作物は、個別の著作物に限られず、編集著作物
も含まれるのであり、またこの編入される編集著作物の素材が要旨で代替しえない
以上、編集著作物自体も代替しえないと考えるべきである。編集著作物が代替され
るのは、素材が代替される場合だけである。
 本件において、債権者新聞の各記事に対応する債務者文書の各記述は最小限の要
旨であり、これにより債権者新聞の個々の記事についても、全体についても代替し
うるものでないから、これらを非電子的編集物である債務者文書に編入することは
当然許容されるものである。
(四) 編集著作物は、与えられた素材を選択・配列するという、それ自体では創
作性の発揮しにくい行為を根拠とするから、その保護も弱くならざるをえない。
 本件において、一日分の新聞の編集著作権を考えるについては、個々の記事を既
存の所与の素材として考えなければならないし、素材の選択・配列行為があっただ
けでは足りず、これに創作性がなければならないものである。素材の選択・配列行
為は、元来従属的で創作性を発揮しにくいものであるから、安易に著作物性が認め
られてはならないし、仮に編集著作物性が認められる場合であっても強い保護を認
めるべきではない。そして、新聞においては、素材の特性から、事実自体の独占に
つながらないように格別の配慮が必要である。
(五) 編集著作権は特定レベルの素材を前提に、その選択・配列の創作性によっ
てかろうじて成立する微妙な権利である。素材の表現が異なれば、素材に依存する
編集著作物の表現も異ならざるを得ない。素材の表現レベルを無視し抽象的な選
択・配列だけを取り上げて、編集著作物の表現を問擬することは誤りである。
 本件においては、言語表現としての素材のレベルは全く異なっており、債権者新
聞の各記事とこれに対応する債務者文書における文章とは、複製や翻案という著作
権侵害関係に立たない。このような場合には、編集物全体としての表現も全く異な
るものであるから、編集著作権の侵害関係には立たないというべきである。
(六) 債権者は、将来にわたり発行される債権者新聞についての編集著作権に基
づく差止めを求めている。これは人間精神の所産である著作物を現に生み出したこ
とにより、これに対する報償として与えられる著作権を、未だ生み出されていない
段階で認めるものであり、著作権法の基本を覆すものである。著作物の存在しな
い、その内容さえわからない段階で著作物としての保護が与えられる等、著作権法
上考えられないことである。小説のような著作物の内容が作者の頭の中にあるだけ
では保護の対象とならないことはいうまでもないが、まして本件の場合には、将来
の新聞の紙面がどのようなものになるかは誰にも、将来発行しようとする者にも、
分からないのであり、いわば作者の頭の中にすら著作物の内容が存在しないのであ
るから、将来発行される債権者新聞についての編集著作権に基づく差止請求は全く
理由がないというべきである。
(七) 債務者は、予備的に、次のとおり、債務者文書が公正利用として許容され
る旨を主張する。
 著作権法は、一条において、著作権法の目的につき「これらの文化的所産の公正
な利用に留意しつつ」と規定し、また三〇条以下において、教育目的その他異なる
文化、社会的な価値がある場合に、一定の条件下で定型的に著作権が制限されるこ
とを規定しているので、これらの規定を合わせ考えれば、我が国においても公正利
用の法理が認められるべきである。
 本件において、具体的に分析検討すると、次のとおりであるから、債務者文書
は、少なくとも公正利用として許容される。
(1) 本件での使用目的は、日本人読者が債権者の報道するニュースへのアクセ
スを可能にするため、要旨又はそれ以下の情報を記載することにあるから、商業性
はあるけれども、公共的意義もあるのである。
(2) 債権者新聞は、ニュース報道を主目的とした新聞であるから、民主社会に
いては、公共的使命を帯びたものであり、情報の自由流通という重大な要請を有し
ている。
(3) 債権者新聞と債務者文書を比較すると、債務者文書は債権者新聞の僅か
一・二パーセントしか使用しておらず、量的に僅少である。
(4) 債権者新聞は、日本人読者にとっては、よほどの語学力と時間がなければ
読みこなすことは不可能といってよいが、債務者文書により、債権者新聞の記事の
検索が短時間で可能となり、これがより身近なものとなるから、購入者はむしろ増
えると考えられ、市場へのマイナス影響はない。
2 本件仮処分命令について
(一) 本件仮処分命令は、債権者の著作物の特定として、何年も続く新聞を指す
のか、一日分の新聞を指すのか、一個の記事についての著作物を指すのか、それら
の編集著作物を指すのか不明であって、著作物の特定として極めて不十分である。
著作権は著作物毎に成立する権利であり、また個々の記事についての著作物とこれ
らを要素とする編集著作物とは別個であるから、これらの特定が十分になされなけ
ればならないのである。
(二) 本件仮処分命令は、作成頒布の差止めの対象の文書として「別紙著作物目
録の一の発行日に発行されたものの記事の全部を翻訳し、又は各記事の要約を翻訳
したものとして」と表現しているが、この末尾の「ものとして」の言葉は全く意味
不明である。本来、作成・頒布の差止めの対象物になるかどうかは客観的に判断さ
れるべきものであり、「全文訳」又は「要約の翻訳」に当たるかどうかは、「全文
訳として」又は「要約の翻訳として」表示しているかどうかとは全く関係がない事
柄である。また、「として」の表現が販売方法を指すとすれば、著作権法に規定さ
れていない法理を用いていることになり、審理の対象を逸脱しているものである。
(三) 本件仮処分命令は、作成頒布の差止めの対象の文書の特定として「一項目
当たり一行ないし三行程度の日本語の記事」と表現しているが、この程度の要旨が
著作権を侵害するとするものであれば、従来の学説及び社会慣行に明らかに反して
いる。仮に、実際は要旨の翻訳であっても「要約の翻訳として一ないし三行程度の
日本語の記事」にすることがいけないという趣旨であれば、債務者は債務者文書を
要約の翻訳として提供しているものではなく、要旨として提供しているものであ
る。
 なお、要約が一ないし三行になってしまうのであれば、原文自体の著作物性が否
定される。
(四) 本件仮処分命令の「・・・の記事を掲載し、これを・・・その他の項目に
分類して配列した文書」という表現も、一ないし三行の記事を掲載すること自体が
差し止められているのか、分類・配列したものが対象とされているのか明らかでな
く、意味不明である。
(五) 本件仮処分命令には何ら理由が付されていない。本件については債務者が
正面から争っているにもかかわらず、理由が付されていないため、前記のような主
文のあいまいさとあいまって、説得力を欠くだけでなく、裁判の公正さも担保され
ない。
(六) 本件仮処分命令が出された背景には、債務者が他人の労働の成果にフリー
ライドしているとの考え方が潜んでいるものと思われる。しかし、債権者は、英語
の新聞を発行していただけであり、日本語版を出すとか、日本語の索引を作成する
等の便宜を一切提供していないため、多くの日本人にとって債権者の情報の伝達が
閉ざされていたところ、債務者は、債権者の提供する情報に対するアクセスを与え
たにすぎないものであり、これだけでは債権者の情報は伝達されないし、また債権
者の債権者新聞が売れなくなるわけでもない。著作権法が時事報道について特別の
規定を設けている意義や法解釈として「要旨」記載が許容されている意義が考慮さ
れなければならない。
3 本件仮処分命令が出されるまでの手続が著しく公正を欠くものである。すなわ
ち、本件は、二年近くの間、審尋期日が重ねられ、最終の審尋期日では、双方の主
張が尽きたことが確認されたうえ、「次回期日は追って指定する。口頭弁論を開く
可能性もある。」とされたものである。ところが、その後債権者は、三回にわたり
主張を追加し、二回にわたり「申請の趣旨」を変更したにもかかわらず、裁判所
は、債務者に何らの反論をさせずに、最終の申請の趣旨の変更から一週間もたたな
いうちに本件仮処分命令を出したものであって、このような手続は、著しく公正を
欠き、裁判所に対する信頼を損ねるものである。
4 以上のとおりであるから、本件仮処分命令は取り消されるとともに、本件仮処
分命令申立ては却下されるべきである。
       理   由
1 疎甲第一ないし第一四号証、第二〇ないし第二八号証、第三〇、第三三、第四
七、第四八号証並びに弁論の全趣旨によると、次の事実が認められる。
(一) 債権者は、米国ニューヨーク州に本社を有し、ビジネス専門紙や二〇紙を
超える地方新聞を発行し、また各種メディアを使用した情報の提供サービス等を行
っている会社であって、一九八七年度には、年間売上高一三億ドル、従業員数九〇
〇〇名に及び、またフォーチュン誌の選ぶ五〇〇社ランキング中の二六四位にラン
クされている。
(二) 債権者の発行する債権者新聞は、一八八九年に創刊されて以来継続して発
行され、一日の発行部数が二〇〇万部を超える米国最大の日刊紙であって、債権者
は、債権者新聞を発行するため、六〇〇名を超える記者及び編集者を取材活動等に
従事させている。
 債権者は、従来から、スポーツ記事や犯罪記事のような一般社会記事を掲載しな
い、情報の背後にある数字や事実を分析し解説することを重視する、できるだけ多
くの情報を提供するため写真を使用しない、大字化はしない等の一定の編集方針を
堅持し、この編集方針の下に経済記事を中心とした債権者新聞を発行し、多くの国
で頒布している。
(三) 債権者の従業員である記者は、電話及び面接取材、記者会見、資料調査等
によって情報を収集したうえ、原稿を作成し、担当局長や地方支局長による見直
し、添削等のチェックを経て、この原稿を債権者のニューヨークのウォール・スト
リート・ジャーナル・ニュース局に送付する。
同局では、記者発送コードに従い、国内ニュース、第一面、第二部第一面、海外、
金融、収益又は社説等の部署に分けられ、債権者の従業員である各部署のニュース
編集者は送られてきた原稿の採否を決定するとともに、正確性、明確性及び体裁の
チェックをし、時には原稿を書き直すこともある。
(四) 一日分の債権者新聞は、A2判数十頁で構成され、その中には数百に及ぶ
記事、社説、株式相場や先物取引相場等の各種相場表、広告等が掲載され、その中
では、原稿に基づいた報道記事、社説が主要な部分を占めている。例えば、債権者
新聞の一九八九年九月二八日版(疎甲第八号証)は、A1ないしA26頁、B1な
いしB8頁、C1ないしC28頁の合計六二頁で構成され、その中には、一五〇以
上の記事・解説が掲載されている。
 債権者新聞の第一頁の第二、第三段には「What’s News ―」と題
し、その日の主要ニュースが、「Business and Finance」欄
と「World-Wide」欄に分かれて、大半は五行程度に要約されて掲載され
ている。
(五) 債務者は、昭和六一年九月一日から、「アメリカを読む研究会」との名称
で、債権者新聞が発行される毎に、直ちに債権者新聞の記事を抄訳した後記のよう
な債務者文書を作成し、月額三万円及び通信費の会費、又は一〇〇字当たり一〇〇
〇円の料金と通信実費などの費用で、これを郵便又はファクシミリで右研究会の会
員に送付している。その会員数は、昭和六三年一一月八日現在で二〇名以上に及ん
でいる。また、債務者は、債務者文書等の作成・送付のサービスについて、「全記
事完全抄訳サービス」と称するとともに、「全記事完全網羅」「その日の記事が一
目瞭然」「取捨選択することなく全記事を細大もらさず取りあげています」との内
容の広告を雑誌・新聞に掲載するなどして宣伝している。
(六) 債務者文書は、例えば別紙(2)のような形式で、「ウォール・ストリー
ト・ジャーナル 89年9月28日木曜日」のように、その表題に債権者新聞の名
称、日付け及び曜日を取り入れたものであって、特定日付けの債権者新聞に関する
ものであることが明らかとなっている。
 債務者文書には、特定日付けの債権者新聞の記事の全部又は一部が一行当たり約
三四字で一行ないし三行程度の日本語に訳され、「主要経済ニュース」「主要国際
ニュース(又は主要一般ニュース)」「フィーチャー」「社説・論評」その他の欄
に分かれて記載され、債権者新聞に掲載されていない出来事が債務者文書に記載さ
れることはない。
(七) 債務者文書の「主要経済ニュース」の項目には、債権者新聞の「Wha
t’s News ―」の「Business and Finance」欄に掲
載された記事のほぼ全てが、「主要国際ニュース(又は主要一般ニュース)」の項
目には、債権者新聞の「What’s News ―」の「World-Wid
e」欄に掲載された記事のほぼ全てが、それぞれそのままの順序で、その全部又は
その要旨が翻訳されて掲載されている。債務者文書には、債権者新聞の「Wha
t’s News ―」欄に記載されたニュースの詳細記事を除いて、その余の大
半の記事(一部の記事については、抄訳されていない)が抄訳され、債権者新聞の
当該記事の掲載順と同じ順で記載されている。
(八) 債権者新聞と債務者文書とを対比すると、債務者文書の各項目における文
章は一行当たり約三四字で一行ないし三行という短文であるが、その記載内容で示
される出来事としては、これに対応する債権者新聞の記事内容で示される出来事と
同一である。例えば、債権者新聞一九八九年九月二八日版のA一頁第六段からA二
〇頁第一・第二段にかけて記載された「OffーLine Among Thos
e Baffled By Technology Are Lots of S
tock Analysts」と題する記事は二五〇行余にわたる長文の記事であ
るが、債務者文書はこれを「当てにならないコンピューター・アナリスト――証券
会社の推薦株式が急落するケースが増加」と抄訳しており、極めて短文であるもの
の、この短文が伝達しようとしている出来事は、債権者新聞の前記記事が伝達しよ
うとした出来事と同一である。
(九) 債務者は、昭和六三年四月頃から債権者より再三著作権侵害を理由とする
中止の要請を受けながら、債務者文書の作成・頒布行為を中止せず、殊に平成元年
五月には警告書と題する内容証明郵便で中止を求められながら、平成元年一一月二
〇日付けで、会員に対し、「著作権上の問題が生じたので、記事の原文コピーサー
ビス及び全訳サービスを中止するが、これに代わるものとして日本語要約サービス
(債務者文書の作成・頒布)については引き続き行う」旨を記載した文書を送付し
ている。
2 まず、既に発行された債権者新聞の編集著作権に基づく債務者文書の作成等に
対する差止めの可否について、検討する。
(一) 前記認定事実によれば、債権者新聞の紙面は、その新聞社の従業員である
記者等が作成する原稿に基づいた報道記事、社説が主要な部分を占め、その他に株
式相場、先物取引相場等の各種相場表、広告等によって構成されているところ、債
権者新聞のこのような紙面構成は、債権者の従業員である編集担当者の精神的活動
の成果の所産であり、また債権者新聞の個性を形づくるものであるから、紙面を構
成するこれらの記事、写真、広告等の選択及び配列について創作性があるというべ
きであり、そしてこのような編集著作権は、債権者新聞を発行する債権者に帰属す
るというべきである。
(二) 編集著作物である新聞における素材について考えてみる。
 新聞は、社会に生起するさまざまな出来事を素早く広く伝達するための刊行物で
あり、その製作過程は、前記認定の債権者新聞についての過程で明らかなように、
多数の記者が、多様な取材・調査活動等により情報を収集して原稿を作成し、編集
担当者等による採否・内容等のチェックという過程を経て初めて、債権者新聞の紙
面に掲載されるというのであるから、この事実からすると、原稿を作成しながら採
用されなかったケースだけでなく、記者が一つの出来事について取材・調査活動を
行いながら原稿を作成しなかったケースや何らかの出来事についての情報に接しな
がら、記者段階で採否を判断し、取材自体を行わないケースも存するであろうこと
は容易に推認できるものであって、このような製作過程を考慮すると、新聞記事の
編集とは、記者の作成した記事原稿という媒体を取捨選択することによって、伝達
すべき出来事自体を取捨選択しているものというべきである。そうすると、選択・
配列の対象となる素材は、一方では記者の作成した記事原稿そのものであるが、ま
た一方では原稿を媒体として記者が伝達しようとした出来事自体であるということ
ができる。このように出来事自体を著作権法の「素材」と考えることができること
は、旧著作権法一四条本文が「数多ノ著作物ヲ適法ニ編輯シタル者ハ著作者ト看做
シ其ノ編輯物全体ニ付テノミ著作権ヲ有ス」と規定して、編集の対象が著作物であ
る場合に限って編集著作権の成立を認めたのに対し、現行著作権法がこの規定を改
め、「素材」との表現を用いていることからも明らかである。そして、右のよう
に、現行著作権法が「素材」との表現を用いたことにより、単なる事実、データ、
用語等の選択・配列についても、創作性があれば、これに編集著作権を認めること
ができるようになったと考えられるのである。
(三) 前記認定のとおり、債務者文書に記載された各項目はいずれも短文である
ものの、一つの出来事を伝達するものであり、また債権者新聞に掲載された記事が
一つの出来事を伝達するものであることはいうまでもないから、いずれも編集著作
物における素材と考えることができるところ、債務者文書の各項目が伝達しようと
している出来事はいずれも債権者新聞の記事に掲載された出来事であり、債権者新
聞の記事に掲載されていない出来事が債務者文書に記載されていることはなく、ま
たその配列もほぼ同一であるから、債務者文書が伝達しようとした出来事の選択・
配列は、債権者新聞が伝達しようとした出来事の選択・配列とほぼ同一ということ
ができる。そして債務者文書は、その表題自体が債権者新聞の名称、日付け及び曜
日を取り入れたものである等債権者新聞に依拠して作成されたものであることは明
らかである。したがって、債務者は、債務者文書の作成・頒布行為により、債権者
が債権者新聞について有する編集著作権の翻案権を侵害しているというべきであ
る。
3 次に、将来の債務者文書の作成・頒布行為に対する差止めの可否について、検
討する。
(一) 著作権法一一二条は、著作権を侵害するおそれがある者に対し、その侵害
の予防を請求することができる旨規定しているから、既に著作権が発生している場
合は、たとえ侵害行為自体は未だなされていない段階においても、予測される侵害
に対する予防を請求することができることはいうまでもなく、また民事訴訟法二二
六条は、必要性がある場合には将来の給付を求める訴えをすることができる旨規定
し、更には著作権法は著作者等の権利の保護を図ることを目的としているから、こ
れらの規定に鑑みれば、日刊新聞のように、短い間隔で定期的に継続反復して発行
される著作物について、これまで著作権侵害行為がその発行毎になされてきた等の
事情から、将来も発行予定の著作物に対する同種侵害行為が予想され、しかも発行
による著作権の発生を待っていては実質的に権利救済が図れない場合には、将来の
給付請求として、右著作物が発行されることを条件として、予測される侵害行為に
対する予防を請求することができると解するのが相当である。
(二) 債権者は、年間売上高において一三億ドルに及び、またフォーチュン誌五
〇〇社ランキングにおいて二六四位にランクされる等の有力メディア企業であるこ
と、債権者の発行する債権者新聞は、一八八九年に創刊され、以来継続して発行さ
れている米国最大の日刊新聞であること、同紙は、従前から一定の編集方針を有
し、これを堅持していること等は前記認定のとおりであり、これらの事実によれ
ば、出来事の選択・配列について創作性のある債権者新聞が今後も確実に継続して
発行され、したがって、債権者において、今後発行する債権者新聞について、これ
までと同様の編集著作権を確実に取得するということができる。
 また、債務者は昭和六一年九月から継続して債務者文書を作成し頒布してきたも
のであること、債務者は債権者からの中止要請に対し、記事原文コピーサービス等
は中止したものの、債務者文書の作成頒布は中止せず、かえって顧客である会員に
対し今後もこれを継続する旨を記載した文書を送付していること等の前記認定事実
によれば、債務者は、将来債権者新聞が発行される毎に、これに依拠してこれまで
と同様の債務者文書を作成・頒布して編集著作権侵害行為を行うであろうことも確
実であると認められる。
 更に、前記のとおり、債権者新聞は日々発行される日刊新聞であり、これに対応
する債務者文書はその発行後直ちに作成され頒布されるというのであるから、債権
者において、債権者新聞を発行する都度、対応する債務者文書の作成・頒布の予防
ないし停止を請求すること、そしてその目的を達成することは、事実上極めて困難
であるといわざるをえない。したがって、債権者新聞を現に発行するまで編集著作
権に基づく予防請求をなしえないとするのは債権者の編集著作権の保護に欠けると
いうべきである。
(三) 右のとおり、日々発行される債権者新聞について、その発行毎に同種編集
著作権侵害行為が反復継続され、今後も同種侵害行為が予想され、しかも債権者新
聞が発行されなければ予防請求することができないとするのでは実質的に債権者の
編集著作権保護が図れないから、将来の給付請求の必要性があると認められる。ま
た将来債権者新聞が発行されたときには、前記2の場合と同様に、債権者新聞に対
応した債務者文書が作成され、債権者の編集著作権が侵害されるおそれがあると認
められる。したがって、債権者は、債権者新聞が発行されることを条件として、こ
れに対応した債務者文書の作成・頒布行為の予防を求めることができるというべき
である。
 なお、債権者は、将来発生する編集著作権に基づく差止請求権が現時点で既に発
生し、これを被保全権利とする旨の主張をしているが、この主張の趣旨は、将来の
債務者文書に対する差止めを求める点にあるから、右債権者の主張の中には、将来
編集著作権が発生することを条件とし、この編集著作権が現実に発生した段階で生
じる差止請求権を被保全権利とする主張も含まれているものと解される。
4 前記認定の諸事実によれば、債務者は、今後引き続き債務者文書の作成・頒布
行為を行い、これにより債権者は著しい損害を被るおそれがあると認められるか
ら、保全の必要性があるというべきである。
5 以上のとおりであって、本件仮処分命令は、将来の債務者文書に対する作成・
頒布の差止めを何らの条件を付することなく認容した点において相当でないから、
その主文を別紙(1)のとおり変更するのが相当である。
二 債務者の主張に対する判断
1 (債務者の主張1(一)(二)について)
 債務者は、憲法二一条の表現の自由は、情報の受け手の知る権利をも保障するも
のであり、特に時事に関する情報の流通は民主制にとって不可欠であることから、
著作権法は著作者に対し創作への報償として一定の権利を付与するものの、情報の
過度の独占は文化の発展を阻害するため、同法は、創作への報償と情報の自由流通
の間に適切なバランスを取ることを目的とし、また同法一〇条二項は、このような
憲法の表現の自由に由来する重大な要請のための著作権は一定程度道を譲るべきこ
とを宣言した規定と解すべきである旨主張する。
 しかしながら、憲法二一条の表現の自由が、情報の受け手の知る権利をも保障す
るものであり、特に時事に関する情報の流通は民主制にとって不可欠であること
は、債務者の主張するとおりであるが、著作権法一条は、同法の目的について、
「この法律は、著作物並びに実演、レコード、放送及び有線放送に関し著作者の権
利及びこれに隣接する権利を定め、これらの文化的所産の公正な利用に留意しつ
つ、著作者等の権利の保護を図り、もつて文化の発展に寄与することを目的とす
る。」と規定しているのであって、債務者主張のように、創作への報償と情報の自
由流通の間に適切なバランスを取ることを目的としていることを規定しているわけ
ではなく、また事実の伝達にすぎない雑報及び時事の報道は言語の著作物に該当し
ない旨を定めた同法一〇条二項も、事実の伝達にすぎない雑報及び時事の報道がそ
もそも同法二条一項一号にいう「思想又は感情を創作的に表現したもの」に該当し
ないから保護の対象にならないということを確認的に規定した規定であると解され
るのであって、債務者主張のように、表現の自由に由来する重大な要請のために著
作権は一定程度道を譲るべきことを宣言した規定であると解することはできない。
 本件において、債務者は、前記のとおり、債権者新聞の個性を形づくる素材の選
択・配列を債権者新聞に依拠してこれを模倣した債務者文書を作成し、これを多数
の者に商業ベースで頒布していたものであって、このような行為が表現の自由の名
を借りて許されるものでないことはいうまでもなく、債務者の前記主張は理由がな
い。
2 (債務者の主張1(三)について)
 債務者は、原著作物自体を代替しない要旨や要約については許諾なしで、データ
ベースに編入しうることを認める考え方があり、この考え方は電子的手段によらな
い弱い編集物である本件においても認められるべきであり、本件において、債権者
新聞の各記事に対応する債務者文書の各記述は最小限の要旨であり、個々の記事に
ついても、全体についても代替しうるものでないから、本件は許容される旨主張す
る。
 しかしながら、原著作物自体を代替しない要旨や要約については、原著作物の著
作権者の許諾なしでデータベースに編入しうるとの考え方が存在するとしても、そ
れは、そのような要旨や要約が原著作物自体を代替しない以上原著作物の著作権を
侵害するものではなく、またこの種のデータベースは、データベースとしての独自
の観点から情報の選択又は体系的な構成をし、この点について創作性を有し、他者
の編集著作権をも侵害するものではないと考えられるからであって、債務者文書に
採用された項目の選択・配列が、債権者新聞の記事の選択・配列に依拠し、ほぼ同
一である本件においては、前記のような考え方は相当しないのであって、右債務者
の主張は理由がない。
3 (債務者の主張1(四)について)
 債務者は、編集著作物は、与えられた素材を選択・配列するという、それ自体で
は創作性の発揮しにくい行為を根拠とするから、その保護も弱くならざるをえな
い、素材の選択・配列行為は、元来従属的で創作性を発揮しにくいものであるか
ら、安易に著作物性が認められてはならないし、
仮に編集著作物性が認められる場合であっても強い保護を認めるべきではない、新
聞においては、素材の特性から、事実自体の独占につながらないように格別の配慮
が必要である旨主張する。
 しかしながら、素材を選択・配列することが創作性の発揮しにくい行為であり、
その保護も弱くならざるを得ない旨の債務者主張の一般論自体肯定することができ
ない。また、新聞の場合、記者が種々の取材・調査活動で接することのできた多数
の出来事のうち、新聞記事として何を取り上げ、どのような形で取り扱うかは、新
聞の個性を形づくるものであり、新聞としての創作性を大きく発揮しうるところで
あるから、創作性の発揮しにくい行為である旨の債務者の主張は到底首肯すること
ができないし、世の中には、一般総合新聞、経済新聞、スポーツ新聞、地方新聞、
業界新聞等の多種多様な新聞が存在し、これら各新聞の個性は選択・配列された出
来事の相違に基づいたものということができ、このような選択・配列の創作性に所
定の保護が与えられるのは当然のことであって、強い保護を認めるべきではない旨
の債務者の主張は採用できない。また、何人も、種々の方法をもって事実に接する
ことができるのであるし、また新聞に掲載された個々の記事から事実を抽出して利
用することも当然許容されるものであるから、特定の新聞における素材の選択・配
列の創作性を保護することが、事実自体の独占につながるとの論も到底理解できな
いことであって、この点に関する債務者の主張も理由がない。
4 (債務者の主張1(五)について)
 債務者は、編集著作権は特定レベルの素材を前提に、その選択・配列の創作性に
よってかろうじて成立する微妙な権利であり、素材の表現が異なれば、素材に依存
する編集著作物の表現も異ならざるを得ないところ、本件においては、言語表現と
しての素材のレベルは全く異なり、債権者新聞の各記事とこれに対応する債務者文
書における文章とは、複製や翻案という著作権侵害関係に立たないから、編集物全
体としての表現も全く異なるものであって、編集著作権の侵害には当たらない旨主
張する。
 しかしながら、編集著作権は素材の選択・配列に創作性があることにより成立す
る権利であるから、編集著作権の侵害の有無を考えるに当たっては、選択・配列の
対象となる素材の内容・趣旨が実質的に同一であれば、両素材の具体的表現の相違
は考慮する必要はないというべきところ、新聞という編集著作物においては、原稿
のみならず、原稿という媒体により伝達される出来事自体も素材として考えること
ができること、債権者新聞の記事と債務者文書の項目とを対比すれば、両編集物の
素材としての出来事の選択・配列に同一又は類似性を認めることができること、債
務者文書における出来事の選択・配列が債権者新聞のそれに依拠して作成されたも
のであること等から、債務者文書の作成・頒布が債権者新聞の編集著作権を侵害す
るものであることは前記判示のとおりであって、債務者の右主張は理由がない。
5 (債務者の主張1(六)について)
 債務者は、将来発生する編集著作権に基づく差止請求は現行著作権法の解釈上許
されないから、将来分の差止請求は許されない旨主張するが、前記判示のとおり、
本件においては、将来発生する編集著作権に基づく差止請求が可能であるとするも
のではなく、将来の給付請求の必要性があるとして、債権者新聞が発行されること
を条件に、発行により生じた編集著作権に基づく予防請求を認めたものであるか
ら、債務者の主張は、この限りにおいて理由がない。
6 (債務者の主張1(七)について)
 債務者は、債務者文書の作成・頒布は公正利用の法理により許容される旨主張す
る。
 一般的に公正利用の法理が認められるかどうかはともかく、本件は、債務者にお
いて債権者新聞を無断利用して債務者文書を作成し、これを一か月三万円余の会
費、又は一〇〇字当たり一〇〇〇円の料金等の商業ベースで、多数の会員に頒布し
ているものであり、新聞の個性を形づくる重要な編集著作権を侵害する債務者のこ
のような行為が公正利用として許容されることは、到底ありえないものであって、
債務者の主張は理由がない。
7 (債務者の主張2(一)ないし(四)について)
 債務者は、本件仮処分命令の主文の表現について、種々論難するところ、本件仮
処分命令については、前記判示のとおり、変更されたものであるから、債務者の主
張は、変更された主文に含まれる限度で理由があり、その余は理由がない。
8 (債務者の主張2(五)について)
 債務者は、本件仮処分命令には何ら理由が付されておらず、裁判の公正が担保さ
れない旨主張するが、本件仮処分命令には「債権者の申請を相当と認め」と記載さ
れ、債権者の申請をそのまま認容したことが明らかであるから、本件仮処分命令に
違法はなく、この点についての債務者の主張は理由がない。
9 (債務者の主張3について)
 債務者は、最終審尋期日から本件仮処分命令が発令されるまでの間の手続きが不
公正である旨主張するが、仮に債務者主張のとおりの経緯であるとしても、本件に
ついては、仮処分命令申立てから最終審尋期日まで二年近くの間審尋が続けられた
ものであって、最終審尋期日以降に債権者から提出された書面に記載された事項
は、いずれもそれまで提出された準備書面や疎明資料に表れていたものであり、こ
れに対する債務者の主張・疎明を確認することがなかったとしても、公正を欠くと
いうことはできない。
三 結論
 以上のとおり、本件仮処分命令は、別紙(1)のとおり変更することとする。
東京地方裁判所民事第二九部
(裁判官 一宮和夫 足立謙三 前川高範)
別紙(1)
       主   文
一 債務者は、別紙文書目録(一)の文書を作成し又はこれを頒布してはならな
い。
二 債務者は、別紙文書目録(二)の文書を、当該特定日付けの日刊新聞「THE
 WALL STREET JOURNAL」が発行されることを条件として、作
成し又はこれを頒布してはならない。
別紙
文書目録
(一) ウォール・ストリート・ジャーナルとの名称、特定日付け及び曜日を頭書
きし、債権者により昭和六一年九月一日以降本件口頭弁論が終結された平成五年一
月二二日までに発行された日刊新聞「THE WALL STREET JOUR
NAL」(東部版及び西部版並びに各改訂版を含む。但し、広告部分、株価、社債
価額、金利、為替レート、商品先物相場、法人の決算報告を数値又は図表で表示し
た部分及び死亡記事を除く。)の記事の全部又はその大半を一行ないし三行程度の
日本語に抄訳し、これらを、番号を付した項目のもとに、右頭書きされた特定日付
けの右新聞の紙面構成に対応して、「主要経済ニュース」「主要国際ニュース(又
は主要一般ニュース)」「フィーチャー」「社説・論評」その他の欄に分類して配
列した文書
(二) ウォール・ストリート・ジャーナルとの名称、特定日付け及び曜日を頭書
きし、債権者により本件口頭弁論が終結された日の翌日である平成五年一月二三日
から発行される日刊新聞「THE WALL STREET JOURNAL」
(東部版及び西部版並びに各改訂版を含む。但し、広告部分、株価、社債価額、金
利、為替レート、商品先物相場、法人の決算報告を数値又は図表で表示した部分及
び死亡記事を除く。)の記事の全部又はその大半を一行ないし三行程度の日本語に
抄訳し、これらを、番号を付した項目のもとに、右頭書きされた特定日付けの右新
聞の紙面構成に対応して、「主要経済ニュース」「主要国際ニュース(又は主要一
般ニュース)」「フィーチャー」「社説・論評」その他の欄に分類して配列した文

別紙(2)(債務者文書の一部)
■■ウォールストリート・ジャーナル 89年9月28日木曜日■■
アメリカを読む研究会
[1面]
〈主要経済ニュース〉
A1.IBMの第3四半期及び通年の収益、予想をかなり下回る見込み
A2.ソニー、コロンビア・ピクチャーズ社の買収契約に最終的に合意―買収金額
は日本企業では市場最高の34億ドル
A3.ブラニフ航空がほとんどのルートで航空便を削減―財政逼迫のためとの憶測
を呼ぶ
A4.OPEC石油輸出国機構、生産上限拡大決定―石油価格引き上げの為の国別
割当枠の見直しには合意出来ず
A5.企業買収家の【A】氏に4年間の懲役と150万ドルの罰金判決――不正証
券取引等の罪で
A6.米下院、企業の重役に対する特別手当を奨励する税制条項第89条の廃止を
決定
A7.ゴールドマンサックス証券等証券大手4社、証券価格統計販売の為の合弁企
業体設立を計画
A8.クラフト・ジェネラル・フーズ社、現社長の【B】氏を会長兼最高経営責任
者に指名
A9.トヨタ自動車が来年販売の大衆車の価格を最高2.5%引き上げ―米市場の
シェア拡大をねらう
A10.各国中央銀行の協調介入のなかドル急落――証券価格はしっかり、債券は
不調
A11.ペプシ・コーラ社がカフェイン抜きの清涼飲料水「ペプシAM」を中西部
で実験販売
A12.アップル・コンピューター社、日本の半導体企業に対抗するために6月に
設立された合弁企業体USメモリーズへ資本参加はせず
A13.サックス・フィフス・アベニュー社の【C】会長、同社レバレッジド・バ
イアウトを計画
<WSJ 890928 木>

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激動の時代に
今後の弁護士業界はどうなっていくのでしょうか。 もはや、東京では弁護士が過剰であり、すでに仕事がない弁護士が多数います。
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我々は、クライアントの信頼に応えることが最重要と考え、そのために努力していきたいと思います。 弁護士数の増加、市民のニーズの多様化に応えるべく、従来の法律事務所と違ったアプローチを模索しております。
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