弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     一 本訴について
     控訴人Aの控訴を棄却する。
     原判決第一項中控訴人B、同C、同D、同Eに関する部分を左のとり変
更する。
     被控訴人は右控訴人四名に対し、原判決添付別紙目録第一、第二記載の
各不動産につき、新潟地方法務局昭和三九年三月三〇日受付第七九六七号をもつて
した昭和三八年七月二二日付競落許可決定を原因とする所有権移転登記を、控訴人
Aの持分五の一についての右原因による所有権移転登記とするように更正登記手続
をすべし。
     右控訴人四名のその余の請求を棄却する。
     二 反訴について
     原判決第二項を取り消し、被控訴人の反訴請求を棄却する。
     三 訴訟費用は、本訴、反訴ならびに第一、二審を通じてこれを五分
し、その一を控訴人Aの、その余を被控訴人の各負担とする。
         事    実
 控訴人ら訴訟代理人は、「原判決を取り消す。被控訴人は控訴人らに対し、原判
決添付別紙目録第一、第二記載の各不動産につき、新潟地方法務局昭和三九年三月
三〇日受付第七九六七号をもつてした昭和三八年七月二二日付競落許可決定を原因
とする所有権移転登記の抹消登記手続をすべし。被控訴人の反訴請求を棄却する。
訴訟費用は第一、二審を通じ被控訴人の負担とする。」との判決を求め、被控訴代
理人は控訴棄却の判決を求めた。
 当事者双方の事実上の主張および証拠関係は、次に訂正、付加するほか原判決事
実摘示のとおりであるから、これを引用する。
 一 控訴人らは、「親権は子の利益のためにのみ行使しなければならないとこ
ろ、控訴人Aが当時いずれも未成年の子であつた控訴人C、同D、同Eの親権者と
して右三名を代理して本件連帯保証債務を負担するとともに本件共有不動産につき
抵当権を設定した行為は、自己または第三者(F)の利益だけを目的とし、右三名
には不利益で損害を与える性質のものであり、しかも右行為の相手方であるGを代
理したH(競売債権者)もそのことを知悉していたのであるから、いずれも親権の
濫用としてその効力を生じない。」
 と述べ、
 被控訴人は、「親権の行使が子の利益のためにされなければならないことは勿論
であるが、親権者が親権に基づき子の財産を管理処分するについては、自己の財産
におけると同一の注意義務をもつてすれば足りるところ、本件において、控訴人A
が親権者として控訴人C、同D、同Eら三名を代理してFの医院経営資金調達を支
援するためにした本件各行為は、同控訴人らの将来の幸福を考えての一種の投資で
あり財産扶殖の行為にほかならないから、後に至つてこと志と異る結果が生じたか
らといつて、控訴人主張のように親権の濫用にあたるものではない。」と述べた。
 二 証拠として、控訴人らは、当審における控訴人B、同Aの各本人尋問の結果
を援用し、なお、「原審において提出した甲第三、第五、第六号証中控訴人B関係
部分は、いずれも偽造文書として提出したのである。」と述べ、被控訴人は、「右
甲号各証部分は真正に成立したものである。」
 と述べた。
         理    由
 一 本訴請求に対する判断
 原判決添付別紙目録第一、第二記載の不動産(宅地および建物)がもとIの所有
であつたところ、昭和三二年五月五日控訴人らが同人から贈与を受けてそれぞれ五
分の一ずつの共有持分を取得したこと、右不動産について、昭和三五年三月一二日
新潟地方法務局受付第三九一七号をもつて同月一〇日付債務者F、債権者G間の金
銭消費貸借についての抵当権設定契約により、抵当権者Gのため債権額金三五万
円、弁済期昭和三五年四月九日利息元金一〇〇円につき日歩金四銭九厘弁済期と同
時払、遅延損害金元金一〇〇円につき日歩金九銭八厘とする旨の抵当権設定登記が
なされていることは当事者間に争いがない。
 そこで、右抵当権設定の経緯について考えてみると、成立に争いのない甲第一、
第二、第四号証、同第七ないし第九号証、控訴人らにおいて控訴人B関係部分は偽
造であると主張しその余の部分の成立(甲第五、第六号証についてのみ)について
は当事者間に争いのない甲第三、第五、第六号証の各存在する事実、原審における
証人Fおよび同H(後記信用しない部分を除く。)の各証言、原審および当審にお
ける控訴人B、同Aの各本人尋問の結果ならびに原審鑑定人Jの鑑定の結果を総合
すると、昭和三二年七月二三日Iと協議離婚した控訴人A(大正七年三月二四日
生)は、右離婚に際し、同人との間に出生した長男控訴人B(昭和一五年一月七日
生)、長女控訴C(同一六年九月二〇日生)、二男控訴人D(同一八年七月一八日
生)、三男控訴人E(同二〇年一一月二五日生)、二女K(同二三年八月二五日
生)、四男L(同二五年二月一六日生)の六名の子の親権者となつて同人らを引き
取り、本件建物に居住して新潟市内のM新聞店に配達員として勤めているうち、同
勤者Nの夫で新潟市内において医院を経営しようとしていたFと知り合い、同人が
右経営資金の一部として昭和三五年三月一〇日Gから金三五万円を借り入れるにあ
たり、その連帯保証人となつて本件不動産に抵当権を設定することを懇願され、遂
に断わり切れなくなつてこれを承諾し、自からは共有者の一員として、また、未成
年者であつた控訴人C、同D、同Eの親権者としてこれらを代理し、さらに長男控
訴人Bの代理人名義を兼ねて、右債務につき各連帯保証契約を締結するとともに、
同一債務を担保するため、いわゆる物上保証として本件不動産全部につき抵当権を
設定することを約し、その結果前記抵当権設定登記が経由されたこと、当時控訴人
Bは長野県a郡b町のOクリーニング店に勤務していて新潟市内には居住していな
かつたので、控訴人Aは控訴人Bから前記行為をすべき代理権を与えられていなか
つたにもかかわらず、同人の代理人と称して右各契約を締結したものであつて、右
抵当権設定登記も控訴人B関係部分については偽造文書である委任状(甲第三号
証)、印鑑証明書(甲第五号証)および金銭消費貸借並びに抵当権設定契約証書
(甲第六号証)を用いてなされたこと、がいずれも認められ、右認定に反する原審
証人Hの証言ならびに同証言により同人の作成したものと認められる乙第一一号証
の記載内容は、いずれも信用できないし、他に右認定を動かすに足りる証拠はな
い。
 被控訴人は、控訴人Bが控訴人Aに対して自己の印鑑を渡し本件不動産について
の管理処分等一切の権限を与えていたので、債権者、抵当権者たるGにおいて控訴
人Aが前記代理行為をするにつき控訴人Bを代理する権限があつたと信じかつ信ず
るにつき正当な理由がある旨主張するが、もし控訴人Aに右のような代理権が与え
られていたとすれば、控訴人Bの本件不動産の持分についての抵当権の設定行為
は、右代理権の範囲内の行為であるから、表見代理の主張をまつまでもなく有効な
わけであるが、そのことはしばらくおくとしても、控訴人Bが控訴人Aに対して自
己の印鑑を渡し本件不動産についての管理処分等一切の権限を与えていた事実を認
めるに足りる証拠がない(控訴人Aが控訴人Bの本件不動産の持分につき抵当権を
設定すべき代理権を与えられていなかつたことについては、前記認定のとおりであ
る。)のみならず、かりに、控訴人Aに控訴人Bを代理すべきなんらかの権限が与
えられていたとしても、原審証人F、同Hの証言によれば、本件連帯保証ならびに
抵当権設定契約の締結に際しては、右Hが債権者、抵当権者たるGを一切代理して
したことが認められるところ、Hは前記証人尋問において、「前記各契約を締結し
た際控訴人Bもその場に来会し、同控訴人関係については直接同控訴人と締結し
た」旨前記認定事実と相容れない虚偽の事実を供述し、また、前出乙第一一号証に
も右と同様の趣旨の内容虚偽の記載がされているだけであつて、その他Gの代理人
たるHにおいて控訴人Aが控訴人Bの代理人であると信じたことについてなんらの
証拠もないから(民法第一〇一条参照)、いずれにしても、被控訴人の表見代理の
主張はその要件を欠き採用することができない。
 次に、控訴人らは、控訴人AがFのGに対する消費貸借上の債務につき自ら連帯
保証するとともに当時未成年の子であつた控訴人伊藤恵美、同D、同Eの親権者と
して同控訴人らを代理して同一債務につき連帯保証債務を負担し、さらに同一債務
を担保するため控訴人らの共有にかかる本件不動産につき抵当権を設定した行為
は、民法第八二六条所定の利益相反行為に該当する旨主張するので、この点につい
て考究する。
 <要旨>思うに、右のような事実関係のもとにおいては、たとえば、債権者が抵当
権の実行を選択するときは、本件不動産における右子らの持分の競売代金が
弁済に充当される限度において親権者の責任が軽減されて、その意味で親権者が子
らの不利益において利益を受けることになり、また、債権者が親権者に対する保証
責任の追究を選択して弁済を受けるときは、親権者と子らとの間の求償関係および
これに伴い共有不動産における子の持分の上の抵当権につき親権者による代位の問
題が生ずる等のことが、前記連帯保証ならびに抵当権設定行為自体の外形からも当
然予想されるので、控訴人ら主張の前記行為が同条にいう利益相反行為に該当する
と解するのが相当である。してみれば、控訴人Aがその子である控訴人C、同D、
同Eを代理して締結した本件抵当権設定契約は無権代理行為としてその効力が生じ
ないので、本件不動産につき右子である控訴人三名の持分の上には有効な抵当権が
成立しなかつたものといわなければならない。
 ところで、Gは昭和三六年八月一四日本件抵当権付債権をHに譲渡して同年同月
二四日新潟法務局受付第一四三二二号をもつてその旨の登記が経由され、Hは昭和
三八年一月二五日本件不動産につき抵当権実行による競売申立をなし、同年七月二
二日新潟地方裁判所で被控訴人に競落許可決定がなされ、同法務局昭和三九年三月
三〇日受付第七九六七号をもつて被控訴人のため所有権移転登記が経由されたこと
は当事者間に争いがなく、また、被控訴人が右競落代金も納入済のことは、原審に
おける被控訴人の本人尋問の結果により認めることができる。
 しかしながら、前認定のとおり、本件不動産については控訴人B、同C、同D、
同Eの各持分上の抵当権は有効に成立しなかつたのであるから、Hがこれを承継取
得するに由なく、したがつて、前記競売手続も右各持分については無効であるとい
わなければならない。もつとも、上記認定の事実からすれば、控訴人Aの持分上の
抵当権は、他に特段の事情の主張立証のない本件においては、有効に設定され、H
もこれを有効に承継したものと認めるのが相当であるから、前記競売手続によつて
被控訴人は右持分の限度において本件不動産についての所有権を取得したと解すべ
きである。そして、控訴人らが本件不動産について有していた持分の割合が各五分
の一ずつであつたことは当事者間に争いがないから、現に本件不動産については、
被控訴人五分の一控訴人B、同C、同D、同Eの四名が各五分の一ずつの持分をそ
れぞれ有することに帰着する。
 以上のとおりであるから、本訴請求中、控訴人Aの請求は失当であつて、原判決
が右請求を棄却したのは相当であるので、同控訴人の本件控訴は理由がないが、実
体上控訴人B、同C、同D、同Eおよび被控訴人の五名の共有に属する本件不動産
につき被控訴人が単独で所有権取得登記を経由しているのは不当であつて、これを
是正する必要があることはいうまでもないから、右控訴人四名の本訴請求を棄却し
た原判決は失当であつて、主文一の第三項掲記の更正登記手続を命ずる限度におい
て右控訴人四名の請求を認容し、その余の請求を棄却するのが相当である。
 二 反訴請求に対する判断
 控訴人B、同D、同Aが原判決添付別紙目録第二記載の建物に居住してこれを占
有していることは当事者間に争いがなく、また、右建物については、被控訴人が五
分の一、控訴人B、同C、同D、同Eが各五分の一(右控訴人四名の持分合計五分
の四)の各共有持分権を有することは上記認定のとおりである。
 被控訴人は控訴人B、同D、同Aに対して所有権に基づき本件建物の明渡を求め
ているが、被控訴人は右建物については前記のとおり持分五分の一を有する共有者
の一員にすぎないところ、右反訴被告たる控訴人三名はいずれも右建物が競売され
る以前の本件控訴人ら母子五名全員が本件建物を共有していた当時から引き続き本
件建物に居住してこれを占有してきたものであることは前認定のとおりであり、そ
のうち控訴人Bおよび同Dはいずれも現在なお共有者の各一員として右建物の占有
を継続しうるものであるし、また控訴人Aは上記認定の控訴人ら間の身分関係に徴
し右建物の共有者たる他の控訴人四名の母として控訴人B、同Dと本件建物におい
て同居していることが明らかであるから、右建物の共有者たる控訴人四名の居住占
有しらる権利を援用できる立場にあるものというべきである。してみれば、本件建
物の共有者間においてその占有関係についての協議が成立したとかその他特段の事
情の主張、立証のない本件においては、反訴被告たる控訴人三名に対して右建物の
明渡を求める被控訴人の反訴請求は失当というべきである(最高裁昭和三九年二月
二五日第三小法廷判決、民集一八巻二号三二九頁、同昭和四一年五月一九日第一小
法廷判決、民集二〇巻五号九四七頁参照)。したがつて、本件反訴請求を認容した
原判決は不当であつて取消を免れない。
 よつて、訴訟費用の負担につき民事訴訟法第八九条、第九二条、第九三条、第九
六条に従い、主文のとおり判決した。)
 (裁判長裁判官 高井常太郎 裁判官 高津環 裁判官 弓削孟)

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