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       主   文
一 申立人原告全逓信労働組合宮崎県北部支部、被申立人延岡郵便局長間の昭和三
六年(不)第三二号救済命令申立事件につき、被告が昭和四〇年三月八日にした別
紙命令書記載の命令中、主文第二項ならびに第三項のうち(1)原告全逓信労働組
合宮崎県北部支部が昭和三六年八月一七日にした団体交渉の申入れに対する拒否、
(2)同月一六日の全逓信労働組合宮崎県地区本部の役員に対する尾行および
(3)同月一四日の同原告の集会に対する監視がいずれも不当労働行為を構成しな
いとして、これらの点に関する同原告の救済申立を棄却した部分を取り消す。
二 原告全逓信労働組合宮崎県北部支部のその余の請求を棄却する。
三 訴訟費用は、原告国と被告との間においては、被告の負担とし、原告全逓信労
働組合宮崎県北部支部と被告との間においては、訴訟費用を二分し、その一を同原
告の、その余を被告の負担とし、参加人国の参加によつて生じた費用は二分し、そ
の一を参加人国の、その余を原告全逓信労働組合宮崎県北部支部の負担とし、参加
人全逓信労働組合宮崎県北部支部の参加によつて生じた費用は、原告国の負担とす
る。
       事   実
第一 当事者の求める裁判
一 原告 国
(一) 被告が昭和四〇年三月八日した主文第一項記載の命令中主文第二項を取り
消す。
(二) 訴訟費用は、被告の負担とする。
二 原告全逓信労働組合宮崎県北部支部(以下原告支部という)
(一) 被告が昭和四〇年三月八日した主文第一項記載の命令中主文第二および第
三項を取り消す。
(二) 訴訟費用は、被告の負担とする。
三 被告
(一) 原告らの請求を棄却する。
(二) 訴訟費用は原告らの負担とする。
第二 原告国の請求原因
一 本件救済命令
 原告支部は、延岡郵便局長Aを被申立人として、別紙命令書中理由第一1に記載
した事項(①ないし⑦)を不当労働行為であるとし、被告に対し救済の申立をし
た。被告は、昭和四〇年三月八日別紙のとおり右申立の一部を認容する旨の命令を
発し、この命令書写は、同月九日原告国に交付された。
二 命令の違法性
 しかし、右命令は、延岡郵便局長が昭和三六年八月原告支部の事務所への原告支
部役員または上部組織の役員の入室を防止し、同事務所の利用を制限したことを不
当労働行為であるとして、主文第二項において、同郵便局長に対し、原告支部に別
紙命令書記載のとおりの文書を交付することを命じている点において、事実の認定
および法律の判断を誤つた違法がある。よって、命令中主文第二項は、取り消さる
べきである。
三 入局禁止(原告支部事務所出入禁止)措置
(一) 右措置に至る経緯について
 別紙命令書理由第一2に記載したとおりである。
(二) 被告認定事実(命令書理由第一7記載事実)の認否
 八月一六日以降申立組合の役員で延岡郵便局の職員であるものであつても、当日
勤務でないものは入局を拒否され、申立組合が組合事務所を利用することは著しく
制限されるところとなつたとの点は否認し、このため申立組合は局庁舎前の民家を
賃借して臨時の組合事務所とせざるを得なかつたとの点は知らない。その余の事実
を認める。
(三) 右措置は不当労働行為を構成しない。
1 業務の正常運営のための必要措置
 被告も命令書で認定しているとおり、延岡郵便局長が昭和三六年八月一二日同局
職員以外の者の無断入局を禁止した後も、上部組合役員等が郵便事務室内に無断出
入して、反抗的行動をあおつたりした。このため職員の作業能率が低下し、郵便物
の滞留は容易に解消せず、また上部組合の役員に同調する職員もあらわれて職場秩
序は乱れ、業務を正常に運営することは極めて困難な状態に立ち至つた。そこで、
職場秩序を維持し、業務の正常な運営を確保するためには、入局禁止の措置をとら
ざるを得なかつたのである。
2 庁舎の構造上、原告支部事務所への出入禁止措置の必要性
 延岡郵便局庁舎の配置および構造は、別紙平面図記載のとおりである。組合事務
所から食堂あるいは中庭を経て、各課事務室へ自由に出入できるようになつてい
る。組合事務所へ出入を許せば、各課事務室への出入を禁止する方法はない。組合
事務所と食堂の間の出入口を閉鎖する設備を施し、通用門を入つて組合事務所より
内側に柵等を設けて、内側に入る者を監視するなどの方法をとることは、滞留郵便
物排送の見通しのつくまでの短期間の措置としては不可能に近い。監視員を多数配
置することも至難である。
3 原告支部事務所の運営に対する介入意思の不存在
 前記のとおり、延岡郵便局長は、職員秩序を維持し、業務の正常な運営を確保す
る必要から、他にとるべき手段がなく、やむを得ず必要最小限の期間入局禁止の措
置をとつたのである。原告支部の上部組合員らの組合事務所の使用を妨げ、原告支
部の運営に介入する意思をもつてしたものではない。
四 命令書の被告認定事実に対する認否(三において主張または認否した事実を除
く)
(一) 理由第一3(1)について
 申立組合は、昭和三六年八月一二日に熊本郵政局員らが来局して以来、被申立人
らが行なう滞留郵便物排送業務の指導監督によつて組合員が過重な労働を強制され
ているものと認めたとの点は知らない。八月一七日申立組合からの交渉申入れに際
し、B主事がC支部長に対し、申入れ事項が交渉事項でないことおよび局としては
強制労働の事実は存在しないと信ずるので交渉の必要はないことなどを理由に交渉
に応じられない旨を伝えたとの点は否認する。その余の事実を認める。
(二) 同3(2)および4(1)について
 認める。
(三) 同4(2)について
 八月一六日朝、D書記長がE係官らに連絡場所を知られるのをおそれ、延岡電報
電話局の窓口に入つて身をかくしたとの点は知らない。E係官らに申立組合の連絡
場所を知られる結果になつたとの点は否認する。その余の事実を認める。
(四) 同5(1)について
 組合集会開催の目的が熊本郵政局職員らの延岡郵便局来局以来の情勢に対処する
ためであることを知らない。
(五) 同5(2)について
 認める。
(六) 同5(3)について
 知らない。
(七) 同8および9について
 認める。
第三 原告国の請求原因に対する被告の答弁
一 第一項(本件救済命令)
 認める。被告は、別紙命令書記載のとおり、事実上および法律上の主張をする。
二 第二項(命令の違法性)
 救済命令主文第二項において、延岡郵便局長に対し、同原告主張のとおり命じて
いることを認める。この点に関する事実の認定および法律判断は別紙命令書記載の
とおりであり、命令は適法である。
三 第三項の(三)の1(業務の正常運営のための措置)
 被告が命令書において原告国主張のとおりの事実を認定していること、そのため
業務を正常に運営することが困難となつたことを認める。その余の事実を否認す
る。
四 第三項の(三)の2(事務所出入禁止措置の必要性)
 延岡郵便局庁舎の配置、構造が別紙平面図記載のとおりであることを認めるが、
その余の事実を否認する。原告支部事務所から郵便事務室内へ組合役員が入室する
ことを禁止するためには、事務所と食堂との出入口を施錠で閉鎖すれば足りる。ま
た組合役員が実力で入局したこともないし、入局しようとしたりする気配もなかつ
たから、通用門を入つて原告支部事務所より内側に柵等を設ければ十分であつた。
五 第三項の(三)の3(介入意思の不存在)
 否認する。延岡郵便局長は、入局禁止措置をとるについて、上部組合役員らの入
局禁止に伴い、これらの者が原告支部事務所の使用を妨げられるという認識はもつ
ていた。不当労働行為の成立には、この認識で十分である。
第四 原告支部の請求原因
一 本件救済命令
 原告支部は、延岡郵便局長Aを被申立人として、別紙命令書中理由第一1に記載
した事項(①ないし⑦)を不当労働行為であるとして、被告に対し救済の申立をし
た。被告は、昭和四〇年三月八日別紙のとおり右申立の一部を認容し、その余を棄
却する旨の命令を発し、この命令書写は、同日原告支部に交付された。
二 命令の違法性
 しかし、命令は、主文第二項において条件付救済命令を発しているが、救済命令
には条件を付けられないのに条件をつけた違法があり、結局主文第二項全体は違法
である。また命令は、昭和三六年八月一七日および同月二一日の団体交渉拒否、同
月一四日のF委員長および同月一六日のD書記長に対する尾行・監視、同月一四日
および同月一九日の組合集会に対する監視・傍聴、同月一四日の組合集会につき組
合員Gに対する調査、同年九月の組合員に対する配置転換および担務変更、同月五
日の延岡郵便局長のH支部長に対する発言が、いずれも不当労働行為を構成しない
として、この点に関する申立を棄却しているが、これは事実の認定および法律上の
判断を誤つたもので違法である。よつて、命令主文第二項ならびに第三項は以上の
限度でその取消を求める。
三 本件の背景
(一) 昭和三六年八月一二日ごろから、多数の熊本郵政局職員および熊本郵政監
察局監察官らが延岡郵便局に来局して、同郵便局長とともに、滞留郵便物排送業務
の促進のためと称して、同郵便局と原告支部との間に結ばれていた協約、協定およ
び確認書ならびに労働慣行などを一方的に破棄し、原告支部、その上部機関たる全
逓宮崎県地区本部(以下地区本部という)または全逓九州地方本部(以下地方本部
という)の役員が局舎内に立入ることを実力で阻止し、更に組合員に対しては、徹
底した労働監視を行い、業務命令を濫発するなどの暴挙に及んだ。このため組合員
の労働条件は著しく低下し、組合員の団結は危殆に瀕するに至つた。
 そこで、原告支部、地区本部および地方本部の役員は、郵便局長や熊本郵政局職
員らに対し、機会あるごとに抗議を繰返したが、郵便局長らは、その抗議に全く耳
をかさず、組合との話合いには一切応じないという態度を示した。
 本件は、このような状況下に連続して発生したものである。その経緯の詳細は、
次のとおりである。
(二) 延岡郵便局長は、昭和三六年八月一二日原告支部に対し、原告支部と同局
長または同局各課の課長との間で締結されていた確認書または労働協約や実施され
ていた労働慣行を一方的に破棄する旨通知した。
(三) 同日ごろから延岡郵便局には熊本郵政局および熊本郵政監察局の係官(監
視班員)三〇名近くが滞留郵便物排送のためと称して臨局していた。この監視班員
は、同月一三日ごろから主に郵便課において、作業中の組合員の周囲に集まつてそ
の作業を監視し、業務命令を濫発して、従来の労働条件に関する原告支部との協定
や確認を全く無視した労働を強制し始めた。
 そこで、原告支部は、その上部組織である地区本部および地方本部に対し事態の
調査と適切な処置を求めた。
(四) この要請に応じて、地区本部および地方本部から役員が延岡郵便局に派遣
された。
 しかし、同月一四日からは、地区本部役員ら(オルグ)が監視されている労働の
実態を調査するため、各課事務室に立入ると、監視班員数名がこれを取囲んで執拗
に退去を求めて追い出し、あるいは実力をもつて地区本部役員らの入室を阻んでそ
の目的を逐げさせなかつた。
(五) 同月一五日には、郵便局長らは、通用門にピケを張つて、オルグが郵便局
構内に立入るのを阻止するに至つた。原告支部事務所は、別紙平面図記載のとお
り、同郵便局構内にあるため、オルグは同事務所内に立入ることが不可能となつ
た。
 郵便局長は、翌一六日には、通用門その他の出入口にピケを張つて、当日勤務の
郵便局員以外のすべての者の入局を全面的に禁止した。そのため地区本部役員ら
は、各課事務室に立入ることはもとより、原告支部事務所を使用することさえ不可
能になつてしまつた。その夜原告支部事務所に入室していた数名のオルグは、監視
班員から執拗に事務所外への退去を要求された。
(六) 入局阻止のピケは、同月二三日まで続けられた。原告支部は、この入局阻
止により事務所の使用が不可能となつたので、同月一九日から局舎近くの民家を賃
借し、これを原告支部事務所として使用せざるを得なくなつた。
(七) 命令書理由第一2記載事実の認否
 昭和三六年郵便物の滞留遅配の状況が全国的に発生したこと、郵政省が延岡郵便
局において郵便業務運行特別考査を実施したこと、八月一二日以降同郵便局に熊本
郵政局職員および熊本郵政監察局監察官が来局したこと、同郵便局長が八月一二日
原告支部に対し、確認書等の二一項目を被告認定のとおりの理由で破棄する旨通告
し、被告認定のとおりの局長訓示を局内に掲示するとともに、無断入局を禁止する
旨の告知板を掲出したことを認める。同郵便局長が前記郵政局職員および監察官と
ともに排送業務の促進に努めていたことを否認する。その余の事実を認める。
 延岡郵便局は、郵便業務の運行が不良ではなかつた。むしろ、全逓の組織が強
く、確認書等の労働協約を有している郵便局が管理運営権の侵害を口実に狙いうち
されたのである。同郵便局もその一つである。事実、郵政局職員らの臨局後数日の
うちに滞留は大部分解消した。それなのに郵政局職員らは、確認書等の労働協約あ
るいは労働慣行を一方的に破棄し、それらが存在しない状態で業務運行を定着さ
せ、業務命令や処分の威嚇によつて、組合員や原告支部の抗議を圧殺することを目
的として臨局していたのである。
四 条件付救済命令(主文第二項)の違法性
(一) 命令書理由第一7記載事実に対する認否
 延岡郵便局長がF委員長に対し、原告支部事務所までは入局してもよいと警告し
たこと、同委員長らが退去要求に対して被告認定のような発言をしたこと、そのた
め業務に支障を及ぼすおそれの生じたこと、同郵便局長が同郵便局職員以外の者の
構内立入を禁止した日が八月一六日であることを否認する。その余の事実を認め
る。構内立入禁止をした日は同月一五日である。
(二) 原告支部の上部役員の言動が入局禁止措置の原因ではない。
 八月一三日には、D地区本部書記長、I地区本部執行委員らが、退去命令に応じ
ないで、午前九時三〇分から午前一〇時三〇分まで郵便事務室に在室し、同月一四
日には、F地区本部委員長、D地区本部書記長らが、午前七時四〇分ごろ郵便事務
室に入室し、退去命令を拒否して作業状況を見ていた。午後も同様である。前記役
員らは、その間特に業務を混乱させるような行動をしたことがない。しかるに、郵
便局側は、翌一五日午前に突如通用門にピケを張つて、J地方本部執行委員、D地
区本部書記長らの入局を阻止したのである。
 これによつて明らかなように、郵便局長のした入局禁止の措置は、上部役員の言
動とは全く関係がなく、原告支部らの組合活動そのものの抑圧を目的としたもので
ある。被告の命令は、上部役員の言動が入局禁止の原因であると認定した点におい
て誤つている。
(三) 上部組合の役員が庁舎事務室に入ることは許される。
 F地区本部委員長ら組合役員の事務室への出入は、前述のとおり(三本件の背景
の項に記載)当局による確認書等の労働協約の一方的破棄とそれに引続く業務命
令・労働監視による業務運行という異常事態によつて生じた労働条件悪化の事実を
調査し、これに対処することを目的としてなされた全逓の労働者の労働協約、労働
慣行に精通している上部組合の役員が組合員の権利を守るのに必要な措置をとるた
めには、組合員の労働条件や労働監視の状況を調査する必要があるから、そのた
め、組合員の執務する事務室内に立入ることのできるのは当然のことである。本件
救済命令は、上部組合の役員が郵便事務室に立入ることは許されないという前提に
立つている点において誤つている。
(四) 本件救済命令に条件を付けるのは違法である。
 被告は、不当労働行為救済命令申立事件において、不当労働行為に該当するか否
かの判断をする権限を与えられているだけである。不当労働行為の原因がいかなる
ものであつても、不当労働行為に該当する事実がある以上救済の措置をとればよい
ので、それ以上の権限はない。本件救済命令によれば、原告支部は、その行動に行
きすぎのあつたことを陳謝しなければ、救済を受けられないことになる。かくて
は、不当労働行為救済制度そのものをゆがめることになろう。要するに本件命令第
二項は、被告の権限を逸脱する条件を付けたことによつて、違法となつたのであ
る。
五 団体交渉の拒否について
(一) 昭和三六年八月一七日の団体交渉拒否について
1 命令書理由第一3(1)記載事実の認否
 原告支部が被告認定のとおり団体交渉の申入れをしたこと、B主事がH支部長に
対し、被告認定の理由をあげて団体交渉に応じられないと述べ、これに対し同支部
長が納得できない旨述べたことは認める。その余の事実は知らない。
2 団体交渉拒否には正当な理由がない。
 本件団体交渉の申入れは、前述のとおり(三本件の背景の項記載)、当局が組合
との話合いには一切応じないという態度を示していた状況下になされた。熊本郵政
局のK業務課長は、監視班員として滞在していたのであるから、郵便局長は、当日
の団体交渉として指定した日時でなくても、同課長と打合せを行なう機会は十分に
あつた。団体交渉の日時にしても、原告支部は一応の希望を示しただけで、それを
固執したものでない。H支部長は、B主事に対し、外部の組合員が多数動員されて
いる旨述べたが、交渉をその中で行なうと述べたことはない。要するに、郵便局長
が団体交渉を拒否した理由として述べているところは、全くの口実で、到底正当な
理由とはならない。
(二) 昭和三六年八月二一日の団体交渉拒否について
1 命令書理由第一3(2)記載事実の認否
 認める。
2 原告支部と郵便局長との間で行なわれた話合いは、法律的な意味での団体交渉
ではない。団体交渉を行なわないのであるから、団体交渉が拒否されたのである。
六 組合役員に対する尾行について
(一) F地区本部委員長に対する尾行について
1 命令書理由第一4(1)記載事実の認否
 このため職員の業務の執行を妨げるおそれも生じたという事実を否認する。その
余の事実を認める。
2 組合役員は、組合員の労働の状況を調査、点検するため事務室内に立入れるこ
とは前述のとおりである。それなのに、郵便局長や監視班員は、入室を強引に阻止
しようとして、役員を取り囲んだり、執拗につきまとつたりして退去を強要したの
であるから、これは組合の運営に支配介入したものとして不当労働行為を構成す
る。
(二) D地区本部書記長に対する尾行について
1 命令書理由第一4(2)記載事実の認否
 E係官らは、D書記長が別の場所から入局するのではないかと思いその後を追つ
たという部分を否認する。その余の事実を認める。
2 当日は、監視班員により、通用門その他の出入口にピケが張られていたのであ
るから、D書記長が他の場所から入局するかどうかを監視する必要は全くなかつ
た。むしろこの尾行は、同人に対するスパイ行為で、組合活動の妨害行為そのもの
である。
七 集会の調査・監視などについて
(一) 昭和三六年八月一四日の集会監視について
1 命令書理由第一5(1)記載事実の認否
 認める。但し、被申立人が集会の状況を写真撮影したことを認められないとした
のは、事実誤認である。監視班員が写真を撮影したのである。
2 集会が公道上で、しかも局舎から見える場所で開かれたとしても、郵便局長ら
が組合集会を傍聴し、メモをとり、無形の圧力を加えることはできない。これが許
されるならば、組合員に心理的な不当な圧力が加わり、組合集会において労働者の
団結体としての自主的な意思決定をすることができないから、これこそ組合の運営
に対する支配介入なのである。
(二) 同月一九日の集会監視について
 命令書理由第一5(2)記載の事実を認める。
(三) 同月一四日の集会に対する調査について
 命令書理由第一5(3)記載の事実中原告支部が命令書認定のとおり集会を開い
たことを認める。郵便局長がこの集会の調査をしたことを認められないとしている
のは、事実誤認である。同局長は、主事L外一名の職員を組合員Mの自宅に派遣
し、集会の内容や討論の調査をしたのである。
八 組合員の配転について
(一) 命令書理由第一8記載事実の認否
 配置換および担務変更が業務上の必要に基づくものであるとの点を否認する。そ
の余の事実を認める。
(二) 本件配置転換などが、この時期にこれらの組合員に対して行なわれなけれ
ばならなかつた具体的理由はない。この時期に組合活動家を中心に行なわれた事実
が、組合対策として行なわれたことを明らかにしている。
九 延岡郵便局長の発言について
(一) 命令書第一9記載事実の認否
 雑談の際の発言であること、H支部長が局長はワンマンではないかと発言したこ
とを否認し、その余の事実を認める。
(二) 郵便局長の発言が、多数組合員の面前でなされたこと、同局長が反組合的
言動をしばしば行なつていること、労使関係が鋭く対立している時期においてなさ
れたこと等の事情を考えれば、同局長の発言は、支部長を誹謗することによつて、
組合運営を支配介入するものである。
第五 原告支部の請求原因に対する被告の答弁
一 第一項(本件救済命令)
 認める。被告は、別紙命令書記載のとおり事実上および法律上の主張をする。
二 第二項(命令の違法性)
 救済命令主文第二項において条件付救済命令を発していること原告支部主張の各
申立が不当労働行為を構成しないとして、その申立を棄却していることを認める。
条件付救済命令の適法なることは後記のとおりであり、また右各申立が不当労働行
為を構成しないことは別紙命令書記載のとおりであるから本件命令は適法である。
三 第三項(本件の背景)
(一)の事実
 昭和三六年八月一二日ごろから原告支部主張の職員が来局し、郵便局長とともに
滞留郵便物排送業務の促進のためと称して、原告支部との間の協約等を一方的に破
棄し、また原告支部の上部組合役員が局舎内に立入ることを実力で阻止したことを
認める。その余の事実は知らない。
(二)の事実
 認める。
(三)の事実
 同日ごろから延岡郵便局には熊本郵政局および熊本郵政監察局の係官三〇名近く
が滞留郵便物排送のためと称して臨局していたことを認める。その余の事実は知ら
ない。
(四)の事実
 認める。
(五)の事実
 局長らが通用門にピケを張つた日が八月一五日であることを否認し、その余の事
実を認める。ピケを張つた日は八月一六日である。
(六)の事実
 認める。
四 第四項(条件付救済命令の違法性)
(二)の事実
 八月一三日および一四日に原告支部主張の者らが退去命令を拒否して郵便事務室
に入室し作業状況を見たことを認めるが、その余の事実を否認する。
(三)の事実
 原告支部の上部組合役員は労働状況を調査するため、当然郵便事務室内に立入る
権利を有するものではない。その立入には、局舎管理者の許可が必要である。その
余の事実は知らない。
(四)の事実
 不当労働行為事件に関する被告の命令は労使間の関係をできるだけ不当労働行為
がなかつたのと同じ状態に回復させることを目的とする行政処分であり、被告は、
その裁量により具体的事情に即してこの目的を達成するために適当と考える処分を
命ずることができる。命令書において認定したとおり、局舎内立入禁止措置により
組合事務所使用妨害という不当労働行為を誘発したのは、原告支部の上部組合役員
の業務妨害行為である。この状況においては郵便局長に無条件で陳謝を行なうよう
命ずることは適当でないので、主文第二項のとおり条件付救済命令を発したのであ
る。
五 第五項(団体交渉の拒否)
(一)の2の事実
 否認する。H支部長は、団体交渉は動員した多数組合員の中で行なう趣旨の発言
をした。
(二)の2の事実
 否認する。団体交渉の拒否はなかつた。
六 第六項(組合役員に対する尾行)
(一)の2の事実
 組合役員が無断で郵便事務室に入れる権利はない。
(二)の2の事実
 否認する。
七 第七項(集会の調査、監視)
(一)の2の事実
 否認する。
八 第八項(組合役員の配転)
(二)の事実
 否認する。
九 第九項(局長の発言)
(二)の事実
 否認する。
第六 証拠関係 (省略)
       理   由
一 本件救済命令
 原告国および原告支部の各請求原因第一項記載の事実は、当事者間に争いない。
二 本件の背景
(一) 郵便業務特別考査
 昭和三六年、郵便物の滞留遅配の状況が全国的にみられたので、郵政省は、その
原因を調査するため、全国的に郵便業務の運行が不良と認められる郵便局を選び、
郵便業務特別考査を実施したことは、当事者間に争いない。
 成立に争いない甲第三、甲第四および甲第三六号証、同乙第三九号証、同丙第七
号証、証人Nおよび同Oの各証言によれば九州においては、延岡郵便局を含む五局
が特別考査実施の対象局とされ、同郵便局においては、昭和三六年五月一六日から
同月一八日までの間、熊本郵政局職員および熊本郵政監察局監察官によつて特別考
査が行なわれたこと、その結果同監察官らは、延岡郵便局における郵便遅配の主た
る原因が、原告支部と同郵便局長または同局課長らとの間に締結された協定や取り
かわされた確認書で、郵政当局の管理権を侵害する内容を有するものが多数存在す
ることおよび職場規律が乱れていることにあるとして、同郵便局長に対し、確認書
を破棄するなどして、これを改善するように勧告したことが認められる。右認定を
覆えすに足りる証拠はない。
(二) 確認書等の破棄と立入禁止措置
 延岡郵便局長が、同年八月一二日原告支部に対し、原告支部と同局長らとの間に
前記協定確認書等で約した二一項目にわたる事項を、それらが同局長の管理運営に
属する事項に関し、または権限外の事項に関するものであることを理由に、これを
破棄する旨通告し、一方同局職員に対しては、従来からあつた確認書などを破棄し
たこと、正常な労働慣行を確立するよう要望することおよび違法な行為のあつた場
合は、厳重な処分を行なわざるを得ない旨の局長訓示を局内に掲示して、その旨伝
達したこと、更に同局長は、八月一二日早朝から同局職員以外の者の無断入局を禁
止する旨を記載した告知板を同局通用門のところに掲出したことは、当事者間に争
いない。
(三) 監視労働と上部組合の応援
 成立に争いない乙第三七ないし乙第四〇号証、証人N、同O、同P、同F、同
J、同Qおよび同Rの各証言ならびに原告支部代表者尋問の結果によれば、熊本郵
政局および熊本郵政監察局は、昭和三六年八月一一日から同月末日までの間、延岡
郵便局の前記滞留郵便物排送のため、同郵便局に監視班または指導班と称して、一
日につき、少ない日は約七名、多い日は二三名の職員を送り込んだこと(原告支部
組合員などは、これをトラツク部隊と称していた。)、これらの者は、同局の郵便
運行業務の指導調査、事務処理の応援、労務関係事務処理などの任務を与えられて
いたこと、そしてこれら監視班員は、同局の内勤および外勤の各部門についてその
業務の遂行を監視調査し、特に郵便集配の部門においては、郵便物の区分整理に従
事している職員(原告支部組合員)一人につき、二・三名の割で監視に当たること
もあり、ある者はストツプウオツチをもつて作業の速度を測定し、他の者はこれを
メモ帳に記帳したりなどし、また作業中の喫煙や私語をいちいち注意し、休憩時間
と作業時間の区分を厳守させたりしたこと、従来職員に対する勤務指定変更の業務
命令に不服がある場合は、この都度原告支部執行委員がその職員に代つて、当局と
交渉し、解決を図つたりするのが例であつたが、監視班臨局後は、そのようなこと
のためにも離席することが禁止されたため、組合員は、労働条件に関し、適切な苦
情や異議の申立をする機会も失われてしまつたこと、原告支部は、監視班臨局の事
実を上部組織たる地区本部および地方本部に連絡し、その実情調査と組合活動への
応援を求めたので、両本部ともこれを了承し、地区本部は、八月一一日にD書記長
を、同月一三日にF委員長を、地方本部は、同日JおよびS両執行委員を延岡郵便
局に派遣したこと、同人らの任務は、監視班の監視下にある同局所属組合員の労働
状況を調査し、不当労働行為など労働者の権利が侵害される事実があるときは、こ
れに対し適切な対策を樹立し、処置することであつたことが認められる。右認定に
反する証拠はない。
三 原告支部事務所出入禁止措置
(一) 事実関係
 延岡郵便局長が昭和三六年八月一二日に同局職員以外の者の無断入局を禁止する
旨掲示した後も、地区本部のF委員長およびD書記長、地方本部のJおよびS両執
行委員らが、原告支部の組合活動の指導応援のため、同郵便局庁舎内にある原告支
部事務所に入室し、更に各課郵便事務室にも出入りしたことは、当事者間に争いな
い。
 成立に争いない乙第三六号証、前記乙第三七および乙第三九号証、前記丙第七号
証、証人Nの証言によれば、延岡郵便局長は、前記のとおりF委員長らが郵便事務
室に出入するので、同月一二日から一五日まで、数十回にわたつて事務室からの退
去を要求したが、同人らは、これを無視して、再三事務室に入室したこと、特に同
月一四日には、F委員長が事務室に入室したので、同室で郵便事務の監視をしてい
た熊本郵政局人事部労働係長Nなどが同郵便局長の命を受け、同委員長に対し、退
去命令を発したところ、同委員長は、「ばかたん」「どこの馬の骨か」「延岡には
月夜の晩だけではなく、やみ夜の晩もある」「土手つ腹に風穴をあけるぞ」「うろ
うろするやつには小包をなげつけろ」等と叫んで抗議したこと、そのため作業中の
職員のうちには、これに同調して抗議の声を発する者や、これに気をとられて作業
を中止する者などがあらわれ、郵便業務の運行に支障を及ぼすおそれが生じたこと
が認められる。
 延岡郵便局長が通用門および裏門附近に職員を配置して入局者の監視に当たり、
同局職員以外の者が構内に無断で立ち入ることを妨止したことは、当事者間に争い
ない。前記乙第三六号証および丙第七号証によれば、右立入禁止措置をしたのは、
昭和三六年八月一六日であることが認められ、原告支部代表者尋問の結果中右認定
に反する部分は措信しない。
 証人Nの証言により真正の成立を認める甲第一号証、前記乙第三八号証、証人J
の証言、原告支部代表者尋問の結果によれば、延岡郵便局の局舎およびこの局舎内
にある原告支部事務所の配置は、別紙平面図記載のとおりであること、同局長がと
つた前記入局禁止措置のため、八月一六日以降は、原告支部の組合活動の応援等に
来ていた上部組合の役員であるF委員長、D書記長、J執行委員らは完全に郵便局
構内に入ることを拒否され、また原告支部の役員であつて同郵便局以外に勤務して
いる者や当日勤務でない原告支部の役員も入局を拒否されることがあり、したがつ
て以上の組合役員が原告支部事務所を組合活動のために利用することは、全く不可
能になるか、または著しく制限されてしまつたこと、このため原告支部は局庁舎前
の民家を賃借して、これを臨時の組合事務所として使用したことが認められる。右
認定を覆えすに足りる証拠はない。
 そして入局禁止措置が、昭和三六年八月二四日解除されたことは、当事者間に争
いない。
(二) 不当労働行為の成否
 前認定の事実によれば、原告支部の上部組合の役員であるF委員長らが延岡郵便
局事務室内に入室するのは、事務室内で作業中の原告支部組合員の労働状況、特に
不当労働行為がなされていないかどうかについて調査点検し、法令違反の取扱や不
当労働行為がなされた場合は、それに対する対策を樹立し、適宜な措置をしようと
するためであるから、正当な組合活動の範囲を逸脱するものではない。しかし一
方、郵便事務室は、公衆の自由な出入を認められた場所ではない。そしてそこに
は、書留郵便物、信書、小包または現金など重要な金品が存在し、郵便局長として
は、郵便物の紛失や通信の秘密の侵害を妨止する義務と必要がある。これらのこと
を考えれば、第三者が郵便事務室に出入するためには、原則として、庁舎管理者の
許可を必要とするものと解すべきである。
 問題は、組合活動と庁舎管理権のいずれが優先すべきであるかである。一般的普
遍的に何れか一方が優先するものと解するのは適当でなく、組合の調査点検の必要
性と庁舎管理権発動の必要性を比較考慮して具体的個別的に決すべきものであろ
う。前認定の事実によれば、延岡郵便局長は、従前原告支部との間に締結し、労働
慣行の基礎となつていた確認書などを一方的に破棄し、多数の監視員を動員して、
原告支部組合員の作業状況の監視をした。しかもそれは、作業中の一人の職員に数
人の監視員がついて、ストツプウオツチで作業能率を測定するほどのものであつ
た。職場において職制またはその委任を受けた者が、職員の作業状況を監督指導で
きることは当然であるが、その方法が前認定のような過酷にして露骨のものとなる
ときは、これはも早職場秩序維持や能率向上のための監督として是認される程度を
こえている。労働条件の問題というよりも、一歩誤れば、個々の労働者の人間とし
ての尊厳を侵害する危機を包蔵している。労働組合にとつては、正に黙許し難い事
態である。上部組合役員がその調査点検のため、郵便事務室に入室するのは、基本
的人権防衛のため緊急の必要性があるものというべきであろう。したがつてF委員
長らが庁舎管理権者たる郵便局長の許可なく入室したとしても、入室自体は、民事
上の違法性を阻却するものと解すべきである。
 入室しても違法性がないということは、入室していかなる言動をしてもよいとい
うことではない。調査点検のための入室であるから、業務の妨害とならない場所と
方法をもつて、調査に従事しなければならない。そこには、目的からする行動の制
約がある。ところが前認定によれば、F委員長は、退去命令に暴言をもつて抗議
し、郵便業務に支障を及ぼす虞れが生じたのである。入室の正当性は、暴言を正当
化するものではない。暴言は、組合活動ではないから、暴言によつて郵便業務に支
障を及ぼすことが正当な組合活動として保護されるものでもない。特に、延岡郵便
局当局は、当時こぞつて滞留郵便物排送業務に努力中であつた。同郵便局長として
は、以上のような業務妨害を排除するため、現に暴言を弄し、郵便業務に支障を及
ぼす虞れを生ぜしめた上部組合役員に対しては、その郵便事務室内への入室を禁止
する必要性が生じたと認めるべきである。
 しかし、郵便業務妨害の虞れを生ぜしめた組合役員に対しては、郵便事務室への
入室禁止の必要性があるといつても、それは庁舎内全部への入構禁止措置を必然化
するものではない。郵便局庁舎内全部への立入禁止措置をとれば、上部組合役員ら
が原告支部事務所を組合活動のため使用できなくなることは、同郵便局長としては
当然予見し得たはずであり、現にそうした事態を生じたのである。使用者が組合事
務所の使用を妨害することは、正当防衛類似の特段の事情のない限り、労働組合の
運営に対する支配介入として不当労働行為を構成する。組合事務所使用妨害の状態
を作出した者は、本件においては原告国が、それ以外にとるべき方法がなかつたこ
とを不当労働行為成立の阻却事由として立証する責任がある。
 庁舎と原告支部事務所の位置関係が別紙平面図記載のとおりであることは、先に
認定したとおりである。証人Nの証言中には、組合役員の郵便事務室内への出入を
阻止するためには、前認定のような庁舎全体への入局禁止措置をとるより外に方法
がないとの部分がある。しかしこの証言は、単なる意見の開陳に過ぎないものとみ
るべきであるし、同証言によつても、同郵便局としては、設備上または人員および
資金上の制約などから、原告支部事務所への出入を禁止しないで、郵便事務室への
出入を禁止する措置をとることが社会通念上困難であつたとは認められないのであ
る。その他これを認めるに足りる証拠はない。かえつて、原告支部事務所と庁舎と
の位置関係から見れば、被告主張のように組合事務所と食堂との間の出入口に施錠
をしたり、通用門から同事務所まで、その内側に柵を設けるなどの施設をすること
によつて、組合役員の郵便事務室への入室を一応は阻止できたのではないかと考え
られるのである。郵便業務妨害の虞れを生ぜしめた組合役員が多数いたという立証
はないからである。結局郵便局長としては、不必要にも庁舎全体への入構禁止措置
をとり、組合役員らの原告支部事務所の使用を妨げる結果を招来したのであるか
ら、これは労働組合の運営に対する支配介入として不当労働行為を構成する。
 以上は、現に郵便業務妨害の虞れを生ぜしめた組合役員に対する場合だけに妥当
する理である。上部組合役員または原告支部役員が静ひつに入室して調査点検する
ことが違法でないことは、前記のとおりであるから、郵便事務室への入室禁止措置
の対象とさるべき者は、職場秩序を侵害し、または侵害する虞れのある組合役員に
限られる。そうした虞れのない役員に対してまで、事前に一切の入室を禁止するこ
とは、前認定のような監視付労働を継続している限り許されないのである。F委員
長以外の役員が職場秩序を紊乱する虞れのあつたことについては立証がない。した
がつて、同委員長以外の組合役員に対しても、一切入構を禁止した措置は、その必
要性を是認できないから、その結果それら役員の原告支部事務所使用を妨害したこ
とは、多く論ずるまでもなく、支配介入として不当労働行為を構成するのである。
 原告国は、延岡郵便局長には、不当労働行為意思がなかつたと主張する。しか
し、そもそも支配介入の成立には、使用者の意思に基づいて支配介入となるべき行
為が行われたという事実があれば十分であつて、不当労働行為意思の存在は必要で
はないのであるから、右主張は採用しない。
(三) 条件付救済命令の適否
 救済命令は行政行為である。付款を付けられる行政行為は、法律行為的行政行為
に限られる。そしてこれに付款を付けられる場合は、そのことを法令自身が認めて
いるか、それと一定の行為をするかどうか、どういう場合にどういう行為をするか
について行政庁の自由裁量が認められている場合である。使用者に一定の行為を命
ずる救済命令は、法律行為的行政行為である。そして救済命令は、労使間の関係を
不当労働行為のなかつたのとできるだけ同じ状態に回復させることを目的とする
が、いかなる場合にどういう内容の救済命令を発するかについては法令の規定がな
いから、救済命令の内容は、その目的の範囲内において労働委員会の裁量に委ねら
れているものと解する外はない。そうすると救済命令にも付款を付けることが許さ
れるということになる。
 行政行為に付款を付し得る場合も、その付款は、行政行為の目的に照らし必要な
限度に止まらなければならない。救済命令の目的は、使用者の不当労働行為によつ
て惹起された事実状態からの原状回復である。原状回復を命じられる者は、不当労
働行為の主体である使用者であつて、その相手方である労働者(労働組合も同じ。
以下これに準ずる。)ではない。救済命令において、不当労働行為の行為者でない
労働者に、不当労働行為からの原状回復のために一定の行為を要求することは、制
度の目的上論理的な矛盾を犯すものである。また労働委員会は、労働者に対する一
般的監督権を有するものでもないし、審査手続において、労働者の違法または不当
な行為を是正する権限を特に与えられているものでもない。もつとも、労働者の違
法または不当な行為が、不当労働行為の成否の判断の資料となることは当然のこと
である。労働者の違法または不当な行為のために、不当労働行為の成立が阻却され
るというならば、その申立を棄却すれば足りる。結局救済命令において労働者に一
定の行為を命じるのは、一般にその目的を越脱しているし、また労働委員会は原則
として、救済命令においても労働者に何らかの行為を命ずる権限も有しないのであ
る。
 ただ労働者が自ら一定の行為をすることを条件とする救済命令の申立をするなら
ば、かかる条件付救済命令を否定する必要はない。労働者自身労働委員会の監督に
服することを承認しているのであるから、労働委員会の権限踰越の問題を生じな
い。また観念的には、労働者が一定の行為をすることを条件としなければ、救済命
令の内容が論理的に実現不可能であるような場合は、条件付救済命令も適法であろ
う。
 本件において、被告は、組合側の行きすぎた行為が郵便局長の不当労働行為の原
因になつたものと認定して、原告支部が郵便局長にその行為につき遺憾の意を表す
る文書を交付することを停止条件とする救済命令を発した。前認定のとおり組合の
一部役員の行きすぎた行動が本件不当労働行為の誘因であつたことは否めない。し
かし、その両者は、組合側がその行為を陳謝しなければ、郵便局長の組合側に対す
る原告事務所使用妨害に対する陳謝という不当労働行為の回復行為が不可能である
という意味で、論理的先後関係に立つものではない。しかも原告支部は、このよう
な条件付救済命令の申立をしていない。原告支部としては、この救済命令を実効あ
らしめるためには、先ず自ら陳謝文を郵便局長に交付しなければならない。実質的
には、被告によつて、その意に反する不利益な行為をする義務を課せられたと同様
な結果となる。かかる救済命令が適法とされるならば、不当労働行為の成立が認め
られるにもかかわらず、救済命令の多くは実効を失い、労働者は救済を否定された
のと選ぶところはないことになろう。このように労働者に一定の不利益行為を命じ
たと同様な結果となる条件は、労働委員会の権限を越脱し、かつ救済命令の目的に
背馳し、違法であると解せざるを得ない。
 被告は、この条件を付けなければ、本件のような内容の救済命令自体を発しなか
つたであろうことは、別紙命令書の内容全体に照して明らかである。そうすると、
本件条件は、本件救済命令の重要な要素であると認められるから、この条件の違法
は、本件救済命令(主文第二項)全体の違法性を招来する。したがつて、主文第二
項は、違法な救済命令として取り消さるべきである。
四 団体交渉拒否
(一) 昭和三六年八月一七日の団体交渉拒否
1 申入れと拒否
 原告支部が同日午後一時半ごろ労務担当主事Bを通じて、延岡郵便局長に対し、
同日午後三時から強制労働排除について団体交渉を行ないたい旨書面で申し入れた
ことは、当事者間に争いない。成立に争いない乙第三四、乙第三五および乙第三八
号証によれば、この強制労働排除とは、前認定の同年八月一一日から原告支部組合
員の作業についてなされた監視または調査(理由第二項(三)認定事実)を指して
いることが認められるから、これは労働条件に関する事項として団体交渉の対象と
なる事項である。
 前記乙第三四号証によれば、延岡郵便局長は、右団体交渉の申入れを拒否するこ
ととし、労働担当主事Bに対し、原告支部にこの旨伝えるよう命じたので、同主事
は、同日原告支部長Hに対し、同局長は業務上の支障があるから団体交渉には応じ
ないと言つているとして同局長の意向を伝達したことが認められる。これによれ
ば、同局長は原告支部の団体交渉の申入れを拒否したものである。
2 正当な理由の存否
 前記乙第三四および乙第三六号証によれば、延岡郵便局長が団体交渉を拒否した
理由は、第一に、原告支部から同局長に対し団体交渉の申入れがあつたとき、同局
長は、熊本郵政局K業務課長と遅配対策や郵便業務について打合せ中であり、同郵
便局としては、当時なお遅配解消せず、滞留排送業務に努力中であつたためであ
り、第二に、当日原告支部の応援のため外部組合員が多数集合しており、原告支部
長Hが団体交渉の申入れに際し、その中で団体交渉をすると言つたため、同局長と
しては団体交渉が円滑に行なわれないのではないかという疑いをもつたためである
ことが認められる。
 しかし、同局長が午後一時半ごろK業務課長と打合せ中であつたとしても、その
打合せが、原告支部が指定した団体交渉開始時刻の午後三時まで継続し、同時刻を
もつて中断できないような事情のあつたことについては主張立証がない。また当時
同郵便局としては郵便物が滞留し排送業務に努力中であつたとしても、同局長が午
後三時から団体交渉のため時間を割愛できない程繁忙であつたことについては主張
立証がない。また外部組合員が多数動員されており、団体交渉はその中ですると言
つたとしても、成立に争いない乙第一〇号証の五によれば、原告支部は当日の団体
交渉の場所を局長室と指定して申し入れているのであるから、前記発言の趣旨は、
外部組合員多数の存在する中で大衆団交方式をもつて団体交渉をするというのでは
なく、単に団結の示威を強調したにとどまるものと解すべきである。そうすると、
その発言の事実だけでは、団体交渉が混乱するとか、整然と行なわれない虞れがあ
ることを推認することはできない。その他団体交渉を困難ならしめるような事情を
認めるに足りる証拠はない。以上のとおり、団体交渉拒否の理由は、いずれも正当
な理由と認めることはできないから、延岡郵便局長のした団体交渉拒否は、不当労
働行為を構成する。したがつて、本件命令中これを不当労働行為にならないとし
て、原告支部の申立を棄却した部分は、違法として取消を免れない。
(二) 昭和三六年八月二一日の団体交渉拒否
 原告支部が同日午前九時ごろ、T郵便局長に対し、能率向上手当の支給に関する
基準について翌二二日午前一〇時から局長室で団体交渉を行ないたい旨申し入れた
こと、U課長が同局長の業務日程を勘案して、二三日の午後に行ないたい旨述べた
ところ、同支部長はこれを了承し、二三日午後一時すぎから三時ごろまで、上記申
入れ事項について話合いが行なわれ、その後も話合いが行なわれて意見の一致を
み、同年一〇月二五日に能率向上手当が支給されたことは、当事者間に争いない。
 成立に争いない乙第三八号証によれば、この話合いとは原告支部と郵便局側が労
働条件に関し事実上協議し、場合によつては合意に達することもあるが、それはあ
くまでも口頭による合意にとどまり、それ以上に協定書や協約書として、協議の結
果を、労働協約としての効力を有する文書にすることを含まないものと認められ
る。そうするとこの話合いとは、団体交渉でないから、もし郵便局長が話合いを固
執し、話合いには応ずるがその結果を文書化することには応じないとか、話合いだ
けには応ずるという意思を明示しているならば、これはすなわち団体交渉の拒否と
なる。しかし、本件においては、郵便局長が話合いを固執したことを認めるに足り
る証拠はない。かえつて前認定によれば当事者間に団体交渉か話合いかをめぐつて
別段の争いもなく、団体交渉の申入れは自然に話合いに推移し、協議が行なわれ、
妥結したことが窺われるのであるから、前認定の事実だけでは、団体交渉の拒否が
あつたものとは認められないのである。したがつて、団体交渉の拒否があつたこと
を前提とする原告支部のこの点に関する請求は失当である。
五 組合役員に対する尾行
(一) F委員長に対する尾行
 昭和三六年八月一四日午前七時半ごろ、地区本部委員長Fが郵便事務室に入室し
た際、郵便局長が口頭および文書で数回にわたつて事務室からの退去を要求したこ
と、同委員長は、この要求に応ぜず抗議をしたこと、熊本郵政局人事部管理課労働
係長Nらが同日午前九時ごろから約三〇分間、同委員長に同行して退去を要求する
とともに、その行動について時々メモをとつたことは、当事者間に争いない。そし
てF委員長のこの時の抗議の方法が激烈を極めたため、郵便業務の運行に支障を及
ぼす虞れが生じたことは前認定のとおりである(第三項の(一)記載事実)。
 F委員長の抗議の方法が正当な組合活動の範囲を越脱し、保護に値しないもので
あることは前説示のとおりである(第三項の(二)記載)。そうすると、N係長が
同委員長に同行して退去を要求し、或いはメモをとつたとしても、それは職場秩序
維持のためやむなくとられた行為と認めるの外なく、これによつて組合の運営が干
渉妨害され、それに重大な影響を及ぼしたものと解することはできない。したがつ
て、この尾行は、組合の運営に対する支配介入とならないから、これが不当労働行
為を構成することを前提とする原告支部のこの点に関する請求は失当である。
(二) D書記長に対する尾行
 昭和三六年八月一六日朝、地区本部書記長Dが延岡郵便局通用門から同局に入局
しようとしたが、通用門入口に立つて見張つていた熊本郵政局管理課労働係Eらの
阻止にあい入局できないまま、電話をかけるため当時原告支部において秘密の連絡
場所としていた同局庁舎の裏側にある全国電気通信労働組合の事務所へ向つたこと
は、当事者間に争いない。前記乙第三七および乙第三九号証によれば、E係官ら
は、D書記長が前記のとおり通用門から全電通労組事務所へ行くまで、同書記長を
尾行し、その結果原告支部の右連絡場所を探知することになつたことが認められ
る。
 前記乙第三九号証には、E係官がD書記長を尾行したのは同書記長が他の門から
入局するかもしれないのでこれを阻止するためであつたとの記載があるが、当時延
岡郵便局長が各門に職員を配置して、D書記長ら上部組合役員の入局を禁止する措
置をとつていたことは先に認定したとおりであるから(第三項(一)記載事実)、
他の門からの入局を阻止するためならば、同書記長を尾行する必要は少しもなかつ
たのである。それにもかかわらず、庁舎を離れた他の場所まで尾行をし、組合の連
絡場所を発見したのは、D書記長の組合役員としての行動を監視する一種のスパイ
行為と見なさざるを得ない。かかる行為は、組合役員の行動に対する干渉妨害であ
り、ひいては組合の運営を支配介入するものであるから、不当労働行為を構成す
る。したがつて、本件命令中、これが不当労働行為とならないとして、原告支部の
申立を棄却した部分は、違法として取消を免れない。
六 集会の監視調査
(一) 昭和三六年八月一四日の集会監視
 原告支部が同日組合集会を開催したこと、原告支部は集会のため当初中庭の使用
を予定していたが、それが許可されなかつたため、局庁舎に隣接する西側公道上で
休憩時間中に開いたこと、その集会には、約四五名の職員、F委員長およびD書記
長らが参加し、同日午後零時半ごろから一時ごろまで開かれたこと、T局長は、U
課長らとともに集会の開かれている公道上におもむき、集会の状況を監視し、その
場所、時間、参加人員などを記録し、またN係長らは集会場所に近接した局庁舎の
二階保険課事務室から、熊本郵政局施設課長Vらは一階郵便課事務室から、それぞ
れ集会を傍聴したこと、D書記長は、郵便局長らに対し、同局長らが集会を傍聴し
ていることについて抗議するとともに、その場所から退去するよう再三要求した
が、同局長らはこれに応じなかつたことは、当事者間に争いない。
 労働組合は、個々の労働者の個別的利害関係をこえて、労働者としての共通の利
益を確保し増進させる組織である。労働組合がこの目的を遂行するためには、組合
の運営が構成員の意思を民主的に反映するものでなければならない。労働組合の集
会は、個々の労働者の意思を民主的に反映するために最良の手段である。そこで
は、組合員の自発的意思決定と自由な発言が保障されなければならない。労働者が
労働組合のために正当な発言をしたことによつて不利益な取扱を受けないことは、
制度的には保障されている。しかし実際は、職制監視の下の組合集会において、個
々の労働者が、不利益取扱を恐れることなく、自由な組合活動的発言をすることを
期待できるほどには、言論の自由の保障や民主主義の理念はわが国社会一般には浸
透していない。このような社会においては、非組合員たる職制が組合集会を監視す
ることは、労働組合構成員としての労働者の自主的な意思決定と自由な発言を阻害
し、組合の運営に影響を及ぼすことになるから、組合運営への支配介入となるので
ある。
 本件においては、郵便局長らは、組合集会を監視し、その状況を記録し、しかも
組合員から再三退去を要求されながら、なおこれに応じなかつたのである。組合員
の意思決定や発言に重要な影響を及ぼすこと、これより大なるものはないと言わな
ければならない。これこそ明白にして典形的な支配介入である。それにもかかわら
ず、これを不当労働行為に当たらないとして、漫然原告支部の申立を一蹴し去つた
被告の命令は、到底理解できないのである。したがつて、本件命令中この点に関す
る原告支部の申立を棄却した部分は、違法として取消を免れない。
(二) 昭和三六年八月一九日の集会監視
 同日午後零時半ごろH支部長の先導する原告支部組合員約八〇名が延岡郵便局の
中庭に集合し、同局構内においてジグザグデモを行なつたのち通用門から局外に出
て、午後一時ごろ同局庁舎から約二〇〇メートル離れた延岡市<以下略>にある光
勝寺に向い、同寺本堂内において職場集会を開いたこと、同郵便局長は、同局保険
課長代理Wに職員の行動および勤務時間中の者の参加の有無を調べるよう指示した
こと、同課長代理は、N係長らとともに光勝寺におもむいたが、本堂の扉がしまつ
ており、同局職員の姿が見えなかつたので、中に入らないで帰局したことは、当事
者間に争いない。
 これによれば、局長が同課長代理に命じたのは勤務時間中の職員の有無とその行
動の調査であり、このことだけならば論理的に当然には組合員の行動に対する干渉
妨害となる行為ではない。干渉妨害となるかどうかは、調査の方法如何による。し
かるに同課長代理らは集会の場所に近づけず、その調査もできなかつたのであるか
らこれにより原告支部の運営が影響を受けたと認めることはできない。したがつて
同局長の行為は、組合の運営に対する支配介入とはならないから、この点に関する
原告支部の請求は理由がない。
(三) 昭和三六年八月一四日の集会調査
 前記乙第三八および乙第四〇号証によれば、原告支部は同日午後三時半ごろから
延岡市<以下略>の郵政クラブにおいて集会を開いたことが認められる。しかし、
延岡郵便局長が職員をして、その集会の調査をさせたことを認めるに足りる証拠は
ないから、この集会調査を不当労働行為とする原告支部の請求は失当である。
七 組合役員の配転
 延岡郵便局長が昭和三六年九月一日に課相互間の八名の配置換と庶務会計課の係
相互間の六名の担務変更を行なつたこと、この配置換の対象となつた職員の中に
は、原告支部書記長Xら支部役員三名および原告支部主張の組合活動家三名が含ま
れ、また担務変更者中にはH支部長外一名の原告支部の役員が含まれていたこと、
同局長は、これら異動の計画が原告支部組合員間に漏れることをおそれ、個別に希
望を聞くことをしなかつたことは、当事者間に争いない。
 多数の組合役員が一挙に異動させられたというだけでは、その異動が組合の運営
を支配するものということができない。職員の異動が組合の運営に対する支配介入
と認められるためには、その異動が当該職員にとつて不利益な処分であり、そのた
めに他の組合員の組合活動に対する士気を沮喪させたりまたは職場を異にすること
によつて、その組合役員の組合活動が著しく制限される結果となつた等の事情が存
在しなければならない。
 前記乙第三八および乙第四〇号証、成立に争いない丙第五号証によれば、前記配
置換や担務変更は、組合役員または組合活動家を狙つた不利益処分で、組合弾圧を
目的とするものに外ならないとの趣旨の陳述記載がある。しかし、一般に配置換な
どは、職員の配置数、業務量、本人の経験・能力・適性などを総合して決められる
ものであるから、ある配置換が不利益処分とされるためには、他の職員と比較する
などしてそれぞれの事項について具体的な根拠が示されなければならない。右各号
証には、単に不利益処分であるという結論があるだけで、因つて来たるところの具
体的な根拠が明示されていないから、これだけで配置換などを不利益処分と認める
ことはできない。また右各号証によつても、この異動によつて各組合役員の組合活
動が阻害されることになつたのを認めるに足りない。したがつて、前認定の事実だ
けでは、右配置換などが組合の運営に対する支配介入とは認められないから、これ
を不当労働行為とする原告の請求は失当である。
八 延岡郵便局長の発言
 同局長が昭和三六年九月五日局長室において、約四〇名の原告支部組合員のいる
所で、H原告支部長に対し、「Hさん、あんたもヒツトラーみたいな独裁じやない
か。」という意味のことを述べたことは、当事者間に争いない。
 前記乙第三六および乙第三八号証によれば、当日局長室において、同局長と同支
部長らは団体交渉を行なつていたが、午後三時五〇分頃約四〇名の原告支部組合員
が局長室に押入り、同局長の退去命令にも応ぜず在室したので、同局長は団体交渉
の継続を不適当と認めて、団体交渉の打切りを宣言して局長室内の自席に戻つたこ
と、なお組合員らは退室しなかつたので、同局長は、折角多数の者が来たから雑談
しようと提案し、話合いが続けられたこと、その場で原告支部側から前記配置換に
対する苦情などもなされたが、それらの話合いをしているうちに、H支部長が同局
長に対し、「局長はワンマンではないか。」という趣旨の発言をしたので、同局長
はこれに対して、前記のとおりヒツトラー云々という発言をしたこと、しかしその
場の雰囲気は別段緊迫したものではなく、局長は笑顔でそう言つたことが認められ
る。
 使用者の発言が不当労働行為となるかどうかは、その発言がなされた時期、場
所、環境、相手方等を総合して、組合の運営に対して支配力を及ぼしたかどうかに
よつて決すべきである。前認定によれば、局長は、特段にH支部長を誹謗する意図
をもつて前記発言をしたとは考えられないし、むしろそれはことの成り行きからの
やりとりに過ぎないものと解すべきである。しかもこれにより原告支部の運営に悪
影響を及ぼしたという結果を認めるに足りる証拠もない。そうするとこの発言が組
合運営に対する支配介入になるとは認められないから、これを不当労働行為とする
原告の請求は失当である。
九 以上により、本件救済命令中、主文第二項ならびに主文第三項のうち(1)原
告支部が昭和三六年八月一七日にした団体交渉の申入れに対する拒否、(2)同月
一六日の地区本部役員に対する尾行および(3)同月一四日の原告支部の集会に対
する監視がいずれも不当労働行為を構成しないとしてこれらの点に関する原告支部
の救済申立を棄却した部分を違法として取り消し、原告支部のその余の請求を棄却
することとし、訴訟費用の負担につき、民事訴訟法第八九条、第九二条、本文、第
九四条後段、第九六条後段を適用して主文のとおり判決する。
(裁判官 岩村弘雄 小笠原昭夫 戸田初雄)
別紙
<17957-001>
(別紙)
 命令書
公労委昭和三六年(不)第三二号
昭和四〇年三月八日命令
申立人 全逓信労働組合宮崎県北部支部
被申立人 延岡郵便局長
       主   文
1 被申立人は、本命令交付の日から七日以内に下記内容の文書を申立人に交付し
なければならない。
 記
 昭和三六年八月、貴組合が掲示したビラ等を撤去し、もつて貴組合の運営に介入
したことについて、ここに遺憾の意を表わすとともに、今後このような行為を繰り
返さないことを約する。
昭和 年 月 日
全逓信労働組合宮崎県北部支部
支部長 Y殿
 延岡郵便局長 A
2 被申立人は、申立人が被申立人に別記内容の文書を提出することを条件とし
て、下記内容の文書を申立人に交付しなければならない。
 記
 昭和三六年八月、貴組合の組合事務所の利用を妨げ、もつて貴組合の運営に介入
したことについて、ここに、遺憾の意を表わすとともに、今後このような行為を繰
り返さないことを約する。
昭和 年 月 日
全逓信労働組合宮崎県北部支部
支部長 Y殿
 延岡郵便局長 A
 別記
 当組合は、昭和三六年八月、上部組合の役員が延岡郵便局に来局した際、組合側
の行動に行きすぎた点があつたことを認め、遺憾の意を表わす。
昭和 年 月 日
延岡郵便局長
A殿
全逓信労働組合宮崎県北部支部
支部長 Y
3 申立人のその余の申立ては、棄却する。
       理   由
第一 当委員会の認定した事実
1 申立組合は、被申立人が、①申立組合が昭和三六年八月一七日及び同月二一日
に行なつた団体交渉の申入れを正当な理由がないにもかかわらず拒否したこと、②
八月一四日及び一六日に申立組合の上部機関である全逓信労働組合宮崎県地区本部
の役員が延岡郵便局に来局した際これを尾行し組合運営を妨げたこと、③八月一四
日申立組合が延岡郵便局の西側の公道上で開催した組合集会及び同月一九日申立組
合が延岡市内光勝寺で開催した組合集会を盗聴したり、メモ・写真をとるなどしま
た同月一四日申立組合が同市内郵政クラブで開催した組合集会について翌一五日に
組合員の自宅に部下を派遣して集会の内容を調査するなどして申立組合に対し圧力
を加えたこと、④八月一五日及び一八日に申立組合が掲示した組合情報等を一方的
に撤去したこと、⑤八月一六日ごろから二六日ごろまでの間、申立組合の事務所へ
の組合役員及び組合員の出入を防止して組合運営を妨げたこと、⑥九月一日申立組
合支部長H外七名の組合役員及びいわゆる組合活動家を強制的に配置転換すること
により組合員に組合活動に対する恐怖の念を抱かしめ、申立組合の組合運動を停滞
せしめたこと及び⑦九月五日H支部長に対し多数の組合員の前で「H支部長はヒツ
トラーみたいだ云々」と誹謗し組合の自治的運営に介入したことは、労働組合法第
七条第二号及び第三号に該当する不当労働行為であると主張して本件申立てを行な
つた。被申立人はこれに対し申立を棄却すべきことを求めた。
2 昭和三六年、郵便物の滞留遅配の状況が全国的にみられたので、郵政省は、そ
の原因を調査するため郵便業務の運行が不良と認められる郵便局を全国で四一局選
び、郵便業務運行特別考査を実施した。九州では延岡郵便局を含む五局が特別考査
実施の対象局とされ、同局においては、同年五月一六日から一八日までの間、熊本
郵政監察局監察官によつて特別考査が行なわれた。その結果、熊本郵政監察局監察
官は、延岡郵便局における郵便遅配の主たる原因は、被申立人と申立組合との間に
締結された確認書等で管理権を侵害する内容のものが多数存在すること、並びに職
場規律がみだれていることにあることを指摘して被申立人に対してこれを改善する
よう勧告した。被申立人は、同年八月一二日以降、延岡郵便局に派遣されてきた熊
本郵政局職員及び熊本郵政監察局監察官らとともに、同月二三日ごろまでの間、連
日、滞留郵便物の排送業務の促進に務めていた。被申立人は、八月一二日、被申立
人と申立組合との間に締結されていた確認書等の二一項目を、それらが被申立人の
管理運営に属する事項に関し又は権限外の事項に関するものであることを理由とし
て、これらを破棄する旨申立組合あて通告するとともに、延岡郵便局職員に対して
従来からあつた確認書等を破棄したこと、正常な労働慣行を確立するよう要望する
こと及び違法行為のあつた場合は厳重な処分を行なわざるを得ない旨の局長訓示を
局内に掲示した。
 また、同日早朝より、同局職員以外の者の無断入局を禁止する旨を記した告知板
を同局通用門のところに掲出した。
3(1) 申立組合は、昭和三六年八月一二日に熊本郵政局職員らが来局して以
来、被申立人らが行なう滞留郵便物排送業務の監督指導により組合員が過重な労働
を強制されているものと認め、同月一七日午後一時半ごろ被申立人に対して、午後
三時から強制労働排除について団体交渉を行ないたい旨、労務担当主事Bを通じて
書面で申入れた。この際、申入れに当つたH支部長はB主事の質問に対し、交渉の
具体的内容は交渉の場で明かにすること、及び当日は大日金属、国鉄、全日自労等
の組合員が多数動員されており、交渉はこの中で行なわれる旨を述べた。
 B主事は、直ちに延岡郵便局長Tに対し、団体交渉の申入れのあつたこと、及び
H支部長との間に交された問答の内容を報告した。T局長は、局長室で熊本郵政局
郵務部K業務課長と滞留郵便物の排送業務について打合せを行なつていたが外部の
組合員が多数動員されている中で交渉するのは望ましくないとの考えもあつて業務
上忙しいからとの理由で当日の交渉をことわるようB主事に指示した。B主事は、
申入れ事項が交渉事項でないこと、業務上都合が悪いこと、局としては強制労働の
事実は存在しないと信ずるので交渉の必要はないこと等を理由に交渉に応じられな
い旨H支部長に伝えた。これに対し、H支部長は、納得しがたい旨を述べた。
(2) 同月二一日午前九時ごろ、申立組合は、T局長に対し、庶務会計課長Uを
通じて、能率向上手当の支給に関する基準について翌二二日午前一〇時から局長室
で団体交渉を行ないたい旨申入れた。U課長は、T局長の業務日程を勘案して、二
三日の午後に行ないたい旨述べたところ同支部長はこれを了承し、二三日午後一時
すぎから三時ごろまで、上記申入れ事項について話し合いが行なわれた。その後も
話し合いが行なわれて意見の一致をみ、同年一〇月二五日に能率向上手当は支給さ
れた。
4(1) 昭和三六年八月一四日午前七時半ごろ、全逓信労働組合宮崎県地区本部
委員長Fが延岡郵便局に来局して郵便事務室に入室した際、被申立人は、口頭及び
文書で数回にわたつてその退去を要求した。F委員長は、この要求に応ぜず、大声
で抗議するなどし、このため職員の業務の執行を妨げるおそれも生じた。そこで熊
本郵政局人事部管理課労働係長Nらは、午前九時ごろから約三〇分間、F委員長に
同行し、同人に対し、退去を要求するとともに、その行動について時々メモをとつ
た。
(2) 同月一六日朝、全逓宮崎県地区本部書記長Dは、延岡郵便局通用門から同
局に入局しようとしたが、通用門入口に立つて見張つていた熊本郵政局管理課労働
係Eらの阻止にあい入局できないまま、電話をかけるため当時申立組合において秘
密の連絡場所としていた同局庁舎の裏側にある全国電気通信労働組合の事務所へ向
つた。E係官らは、同人が別の場所から入局するのではないかと思いそのあとを追
つた。D書記長は、これに気づき、連絡場所を被申立人側に知られるのをおそれ、
延岡電報電話局の窓口に入つて身をかくしたが、そのうち同人が出て来たところを
E係官らにみつけられ、このため申立組合の連絡場所を知られる結果となつた。
5(1) 昭和三六年八月一四日、申立組合は、熊本郵政局職員らの延岡郵便局以
来の情勢に対処するため組合集会を開催した。集会は当初同局中庭の使用を予定し
たがそれが許可されなかつたため局庁舎に隣接した西側公道上で休憩時間中の約四
五名の職員及びF委員長、D書記長らが参加して、同日午後〇時半ごろから一時ご
ろまで開催された。T局長は、U課長らとともに集会の開催されている公道上にお
もむき、集会の状況をみ、その場所、時間、参加人員等を記録した。またN係長ら
は集会場所に近接した局庁舎の二階保険課事務室からまた、熊本郵政局施設課長V
らは一階郵便課事務室から集会を傍聴した。なお、申立組合は、被申立人がその際
集会の状況を写真撮影したと主張するが、その事実は明かでない。
 D書記長は、被申立人に対し、被申立人らが集会を傍聴していることについて抗
議するとともに、その場所から退去するよう再三要求したが、被申立人はこれに応
じなかつた。
(2) 同月一九日午後〇時半ごろH支部長らが先導して申立組合組合員約八〇名
は延岡郵便局の中庭に集合し同局構内においてジグザグデモを行なつたのち通用門
から局外に出て、午後一時ごろ延岡郵便局庁舎から約二〇〇メートル離れた延岡市
<以下略>にある光勝寺に向い同寺本堂内において職場集会を開催した。
 被申立人は、同局保険課長代理Wに職員の行動及び勤務時間中の者の参加の有無
を調べるよう指示した。W課長代理は、N係長らとともに光勝寺におもむいたが、
本堂の扉がしまつており、同局職員の姿が見えなかつたので中に入ることなく帰局
した。
(3) 同月一四日、申立組合は、組合集会を延岡市<以下略>にある郵政クラブ
において午後三時半ごろから開催した。
 申立組合は、この集会に関し、被申立人が非組合員である同局主事L外一名の職
員を申立組合の組合員Mの自宅に派遣して、集会の内容や討論過程や結論の調査を
行なつたと主張するが、その事実は明かでない。
6(1) 昭和三六年八月一五日午前八時ごろ、D書記長は、延岡郵便局内便所入
口の組合掲示板など三カ所に、被申立人の許可を受けずに組合情報として「通用門
の輩は郵政局トラツク部隊、労働組合のピケ隊です」と書いたビラを掲示したとこ
ろ、U課長は、D書記長に対しこれを撤去するように申入れたが撤去しなかつたの
で自ら撤去した。
(2) 同月一七日、申立組合は、全逓宮崎県児湯支部高鍋分会などから組合員が
寄せ書きして申立組合あて激励のため送付してきた赤い旗を延岡郵便局内の二カ所
の組合掲示板に被申立人の許可を受けることなく掲示した。これに対し、U課長
は、それを撤去するよう申立組合に対し申入れたが撤去しなかつたので、翌一八日
午前八時ごろ自らこれを撤去した。
 なお郵政省においては、就業規則によつて、庁舎その他国の施設にビラ等をちよ
う付するときは、事前にそれら施設を管理する者の許可を受けなければならないこ
ととなつている。
7 F委員長、D書記長、全逓九州地方本部J、S両執行委員らは、申立組合の組
合活動の指導応援のため、昭和三六年八月一二日に被申立人が延岡郵便局職員以外
の者の無断入局を禁止する旨掲示をした以後も、同局庁舎内にある組合事務所に入
室し、更に同局の各課事務室にも出入りした。被申立人はF委員長らに対し組合事
務室まではよろしいが、同局の各課事務室からは退去するようにとの警告を同月一
五日まで何度か行なつたが、F委員長らは依然としてこの通告を無視して再三にわ
たり主に郵便事務室に入室し被申立人が退去を要求すると「バタカン」、「どこの
馬の骨か」などと大声を発して抗議するなどした。このため勤務時間中の職員の中
にもこれに同調する者も出て来て、業務に支障を及ぼすおそれも生じた。
 そこで、被申立人は、同月一六日以降、通用門及び裏門附近に立つて入門者の監
視に当り、同局職員以外の者が構内に無断で立ち入ることを防止した。このため申
立組合の上部組織の役員であるF委員長らのほか、申立組合の役員であっても延岡
郵便局以外に勤務しているもの、また、申立組合の役員で延岡郵便局の職員である
ものであつても、当日勤務でないものは入局を拒否され、申立組合が組合事務所を
利用することは著しく制限されるところとなった。このため、申立組合は、局庁舎
前の民家を賃借して臨時の組合事務所とせざるをえなくなった。被申立人による上
記入局防止の措置は、滞留郵便物排送の目途のついた同月二四日、被申立人が申立
組合に通告してこれを解除した。
8 被申立人は、延岡郵便局内における業務の必要上、過員、欠員の調整等を行な
うため、昭和三六年九月一日付けをもつて課相互間の八名の配置換と庶務会計課の
係相互間の六名の担務変更を行なつた。この際、被申立人は事前に異動の計画が申
立組合員間に漏れることをおそれ、個別に希望を聞くことはしなかつた。
 この配置換えの対象となつた職員の中には申立組合書記長Xら支部役員三名及び
申立人の主張する組合活動家三名が含まれ、また担務変更者中にはH支部長外一名
の申立組合の役員が含まれていた。
9 昭和三六年九月五日午後三時五〇分ごろから約一時間局長室において、T局長
らとH支部長及び約四〇名の申立組合組合員らとが雑談を行なつていた際、H支部
長から「局長はワンマンではないか。」という趣旨の発言があつたことから、T局
長は、「Hさん、あんたもヒツトラーみたいな独裁じやないか。」という意味のこ
とを述べた。
第二 当委員会の判断
1 団体交渉拒否について
 昭和三六年八月一七日の強制労働排除についての交渉申入れについては、B主事
がこの交渉申入れを断る際H支部長に対して述べた理由中には当をえないものがあ
つたとしても、この日の交渉申入れを被申立人が断つた理由は、当日、熊本郵政局
のK業務課長が排送業務について打合せなどするため来局していたこと、午後三時
から団体交渉したい旨を申入れたのは午後一時半ごろであったこと、さらにH支部
長は当日は外部の組合員が多数動員されているので本日の団体交渉はその中で行な
うという趣旨の発言をしていたことにあったと考えられ、したがつて被申立人が当
日の交渉申入れを断つたのは不当な拒否であるとはいえない。
 この交渉申入れ事項についてはその後一回も団体交渉がもたれていないが、申立
人の主張するいわゆる強制労働の実態は少なくとも八月二三日ごろまで継続してい
たと認められ、申立組合がさらに交渉申入れを行なう機会は十分にあつたものと考
えられるにもかかわらず、申立組合が再度交渉申入れをした事実は認められないの
で、その後において団体交渉がもたれなかつたことを被申立人のみの責に帰せしめ
るのも妥当でない。
 八月二一日の能率向上手当の支給の基準についての交渉申入れについては、被申
立人が団体交渉を拒否したものと認められない。
2 支配介入について
(1) 組合役員に対する尾行の点について
 F委員長に対する尾行の点については、N係長らは、同人が勤務時間中に郵便事
務室に無断で入室し、大声を発するなどして職員の業務の執行を妨げるおそれが生
じたので同人の退去を要求しながらこれに同行して時々メモをとつたものであり、
これをもつて組合運営に対する支配介入とはいえない。
 D書記長に対する尾行の点についても、同書記長が無断で局庁舎内に入ろうとし
ていたので、E係官らがそれを防止するため同人の行動を監視し尾行したものに過
ぎず、そのさいたまたま申立組合が秘密にしていた連絡場所を被申立人に発見され
る結果となつたとしても、これをもつて被申立人の行為を不当労働行為として非難
することはあたらない。
(2) 組合集会に対する介入の点について
 昭和三六年八月一四日の申立組合の集会は、当初延岡郵便局中庭で開かれる予定
であつたこと、集会の場所は局庁舎に隣接した西側公道上であつたこと、その時刻
は大部分の職員が休憩時間中であつた午後〇時半ごろから一時ごろまでであつたこ
となどよりみて、被申立人らが公道上あるいは局庁舎内から集会の様子を眺めるこ
とが当然予想される状況であつたといわざるをえない。被申立人が、申立組合側の
再三の抗議にもかかわらず退去しなかつたのはやや不穏当のそしりは免れないとし
ても、これをもつて組合運営に支配介入したというにはあたらないと考える。
 八月一九日光勝寺において開催された集会については、被申立人の指示を受けて
W課長代理らが光勝寺におもむいたが、本堂の扉がしまつていたのでそのまま帰局
したのであつて、集会に介入したとする申立組合の主張は失当である。
 また、八月一五日L主事が申立組合の組合員Mの自宅を訪れたという点について
は、その事実が明かでないので申立組合の主張は採用しがたい。
(3) 組合掲示物の撤去の点について
 八月一五日のビラの撤去及び八月一八日の赤い旗の撤去については、それらの掲
示物が無許可で貼られていたことがその理由とされているが、本来労働組合に掲示
板を認めながらも、これに掲示する物について事前許可を要求することは妥当でな
いのみならず、掲示物の内容についても被申立人がそれを撤去したことが妥当であ
ると考えられるようなものであつたとは認められないから、少くとも組合掲示板に
掲示されたビラ等の撤去は、申立組合の広報活動に不当に介入したものといわざる
をえない。なお、直接掲示物を撤去したのはU課長であるが、同人の職責に照ら
し、その不当労働行為の責任は被申立人が負うべきものと認める。
(4) 組合事務所の出入防止の点について
 被申立人が八月一六日から二三日までの間組合役員及び組合員の組合事務所への
出入を実力で防止したという点については、被申立人は、当時申立組合の上部組合
の役員が禁止に反して事務室まで入つてきてそのために業務の正常な運営が困難に
なつたので延岡郵便局の職員以外の者の入局を禁止した結果それらの者は組合事務
所へも出入できなくなつたのに過ぎないと主張する。しかし、申立組合の上部組合
の役員が事務室に入るのを防止するためであれば、局庁舎の構造上全面的な入局禁
止の措置をとるまでもなく、組合事務室の利用を妨げないでしかも局事務室に入る
ことを防止することも十分可能であつたし、被申立人がそのことを知らなかつたと
も考えられない。しかも、被申立人の措置によつて、上部組合の役員のみならず、
申立組合の役員であつても他局勤務のもの、さらには延岡郵便局勤務の組合員であ
つても当日勤務でないものまで入局を拒まれ、組合事務室を利用することができな
くなつたことが認められる。この結果申立組合が組合事務室を利用することは相当
期間にわたつて著しく制限されることとなつたものであるから、被申立人の行為は
申立組合の運営に介入したものと判断せざるをえない。
(5) 組合員を強制的に配置転換したという点について
 九月一日付の配置転換及び担務変更は、当時の延岡郵便局の定員の状況と業務の
必要性とを考慮してなされたものであつて、申立組合に対する支配介入とは認めら
れない。
(6) 組合役員を誹謗したという点について
 九月五日の被申立人の発言は、申立人との言葉のやりとりの間になされたものに
すぎず、この発言をもつて申立組合の運営に対する介入ということはできない。
 当委員会は以上のとおり判断する。もつとも、2(4)の組合事務所の出入防止
の点については、被申立人がこのような措置をとるに至つたのは、申立組合の上部
組合の役員が被申立人の禁止に反して局庁舎内事務室に入り、大声を発するなどの
行きすぎた行為をしたことが原因となつているものであるから、その措置の責任を
被申立人のみに帰せしめることは、妥当ではないと考える。
 よつて当委員会は、公共企業体等労働関係法第二五条の五第一項及び第二項並び
に公共企業体等労働委員会規則第三四条を適用して、主文のとおり命令する。

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