弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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○ 主文
一 本件訴を却下する。
二 訴訟費用は原告の負担とする。
○ 事実
第一 原告の申立及び主張
一 請求の趣旨
1 国立都市計画下水道事業受益者負担に関する条例(昭和四五年一一月一七日条
例第一七号)が無効であることを確認する。
2 訴訟費用は被告の負担とする。
二 請求原因
1 国立市は、昭和四五年一一月一七日国立都市計画下水道事業受益者負担に関す
る条例(昭和四五年一一月一七日条例第一七号、以下本件条例という。)を制定し
た。
2 右条例によれば、被告は、公共下水道に係る都市計画下水道事業に要する費用
の一部に充てるため、都市計画法七五条の規定に基づく受益者負担金を、事業によ
り築造される公共下水道の排水区域内に存する土地の所有者等から徴収する権限が
与えられている。
3 被告は、本件条例に基づき次のとおりの経過で原告に対し受益者負担金を賦課
し、原告からその納付を受けた。
(一) 被告は、昭和四六年二月二日、本件条例三条に基づき、原告所有地国立市
<以下略>、同所<以下略>を含む国立市北部の区域三二二・九五ヘクタールを北
部負担区とする旨及び同条例七条に基づき右負担区にかかる事業費の予定額を一五
億五〇〇〇万円、右単位負担金の予定額を一平方メートルあたり一一九円とする旨
の各決定を公告し、ついで同年四月一日、本件条例八条に基づき、前記原告所有地
を含む区域三三・七八ヘクタールを昭和四六年度国立都市計画下水道事業受益者負
担に関する賦課対象区域とする旨の決定を公告した。
(二) 原告は、同年五月一八日、国立都市計画下水道事業受益者負担に関する条
例施行規則(以下本件施行規則という)四条に基づいて、原告が国立市に所有する
土地は、一〇七七・六七平方メートルである旨の下水道事業受益者申告書を被告に
提出し、これに対し被告は、同年六月一日、本件条例九条一項に基づき、原告の負
担金の額を一二八、二四〇円と定めて賦課したので、原告は右決定に従つて既に九
六、一九〇円を納付した。
4 しかしながら、本件条例には次のような重大明白な瑕疵があるから、同条例は
無効である。
(一) 本件条例は、憲法二五条二項に違反する。憲法二五条二項には、国は、す
べての生活部面について、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努め
なければならない、と規定されているところ、下水道の整備は、公衆衛生の向上及
び増進の手段にほかならないから、国の社会的責任において行なわれなければなら
ず、従つて右に要する経費はすべて国又は地方公共団体の財源で賄われるべき筋合
である。しかるに、本件条例は、都市計画下水道事業に要する費用の一部を個人に
負担させ、国又は地方公共団体の社会的責任を個人に転嫁するものであるから、憲
法の前記条項に違反するというべきである。
(二) 本件条例は都市計画法七五条に違反する。
同法同条一項には、国、都道府県又は市町村は、都市計画事業によつて著しく利益
を受ける者があるときは、その利益を受ける限度において、当該事業に要する費用
の一部を当該利益を受ける者に負担させることができる、と規定されている。
ところで、下水道の整備は、前述のとおり、公衆衛生の向上及び増進の手段であつ
て国父は地方公共団体の社会的責務であるから、右条項により、負担金を賦課、徴
収することができる「利益を受ける者」とは、土地区画整理事業によつて当該地区
が整備され、その結果地価が高騰した場合の、当該地区の土地所有権者等をいうの
であつて、下水道事業の施行区域の土地所有者等はたとえ下水道事業の施行によつ
て利益を受けることになるとしても、右条項の「利益を受ける者」に該当すると解
すべきではない。従つて本件条例は、同法同条に違反するというべきである。
5 よつて、原告は請求の趣旨記載のとおりの判決を求める。
三 被告の本案前の主張2に対する反論
本件訴については、地方自治法一四七条の規定に基づき、国立市長が被告としての
当事者適格を有するものというべきである。
第二 被告の申立及び主張
一 本案前の申立
主文同旨
二 本案の申立
1 原告の請求を棄却する。
2 訴訟費用は原告の負担とする。
三 本案前の主張
1 行政事件訴訟の対象として裁判所に審判を求め得るのは、特定の者の具体的な
法律関係や法律上の利益に影響を及ぼす行政庁の処分その他公権力の行使に当たる
行為に限られており、抽象的な法令自体を対象として行政事件訴訟を提起すること
は許されない。
しかるに、本件訴は、行政事件訴訟の対象となり得ない抽象的な法規である条例自
体について無効確認を求めるものであるから、不適法な訴である。
2 条例自体の無効確認が認められるとしても、右訴につき被告適格を有するの
は、国立市長ではなく国立市であるから、国立市長を被告とする本件訴は不適法な
訴である。
四 請求原因に対する認否
請求原因1ないし3の事実は認め、その余の主張は争う。
第三 証拠(省略)
○ 理由
一 原告は本件条例の無効確認を求めるので、まず右訴訟が適法であるかどうかに
ついて判断する。裁判所の司法作用は、特別の定のない限り、常に法律上の争訟を
その対象とするべきものである(裁判所法三条一項)が、右の法律上の争訟とは、
特定の当事者間において、法令を適用することによつて解決し得べき具体的な法律
関係又は権利義務に関する紛争をいうのである。従つて、裁判所のなす司法作用は
かかる紛争について、確定した事実に法令を適用することによつて、これを公権的
強制的に解決することのみに限定されるのであつて、裁判所はかかる具体的な争訟
を離れて、不特定多数人に対する抽象的な内容を有する法令の効力について、一般
的な判断をする権限を有するものではない。
ところで、普通地方公共団体の制定する条例は、通常、その内容が一般的抽象的
で、個別的具体的な行政処分をまたなければ私人の権利義務に法律的な変動を生ぜ
しめるものではないから、条例が具体的特定の内容を有している場合や、条例自体
の内容は抽象的であるがその直接の効果として私人の具体的な権利義務に影響を及
ぼすような特殊な場合はともかくとして、そうでない限りは、条例の効力の存否自
体は、法律上の争訟に該当するとはいえず、従つて無効確認の訴の対象となると解
することはできない-ものというべきである。
右の見地から、本件条例について検討するに、本件条例は、一条において「国立市
長(以下「市長」という。)は、この条例の定めるところにより、公共下水道に係
る都市計画下水道事業(以下「事業」という。)に要する費用の一部に充てるた
め、都市計画法(昭和四三年法律第一〇〇号)第七五条の規定に基づく受益者負担
金(以下「負担金」という。)を徴収するものとする。」と規定し、二条一項本文
において「この条例において「受益者」とは、事業により築造される公共下水道の
排水区域(以下「排水区域」という。)内に存する土地の所有者をいう。」と規定
し、又九条一項において「市長は、前条の公告の日現在における当該公告のあつた
賦課対象区域内の土地に係る受益者ごとに、第七条の規定により公告された単位負
担金額の予定額を基礎として、負担金の額を定め、これを賦課するものとする。」
と定め、更に一三条において「市長は、当該負担区に係る事業が終了したときは、
遅滞なく、当該負担区に係る事業費および単位負担金額を確定し、これらを公告し
なければならない。」と規定し、これを受けて一四条一項において「市長は、前条
の規定により公告された当該負担区に係る単位負担金額を基礎として、負担金の額
を確定し、その確定した額と第九条一項の規定により定めた負担金の額との間に差
額があるときは、遅滞なく、その差額に相当する金額を受益者から追徴し、また
は、受益者に還付しなければならない。」と規定し、受益者の負担する負担金の額
については、四条において「負担区の事業費の額は、次の各号に掲げる費用の額の
合計額とする。(一)当該負担区と他の負担区に共通する施設に係る事業に要する
費用の額に、当該負担区の地積の当該負担区と当該他の負担区の地積の合計に対す
る割合を乗じて得た額(二)当該負担区における共通事業以外の事業に要する費用
の額」、五条について「負担区の負担金の総額は、負担区の事業費の額に四分の一
を乗じて得た額とする。」、六条において「受益者の負担する負担金の額は、負担
区の負担金の総額を、当該負担区の地積で除して得た額に当該受益者が第八条の公
告の日現在において所有し、または地上権等を有する土地で同条の規定により公告
された区域内のものの面積を乗じて得た額とする。」と規定している。
ところで、本件条例の以上の各規定によれば、本件条例は負担金について、その賦
課徴収、精算追徴還付の手続及び金額算定の基準を定めるものであるが、右の基準
について本件条例の定める内容は、受益者一般に対する抽象的なものであつて、特
定の受益者に対する具体的なものではない。しかも負担金についての特定の受益者
の具体的な権利義務は、被告が当該受益者に対して賦課もしくは確定決定等(九
条、一三条)の個別的な行政処分をし、これによつてはじめて発生するものである
ことが明らかである。
してみれば、本件条例は、その内容が一般的抽象的であり、しかも個別的具体的な
行政処分をまたなければ私人の権利義務に法律上の変動を生ぜしめない性質のもの
であるといわなければならない。
そうとすると本件条例は、無効確認訴訟の対象とならないものといわざるをえず、
従つて、原告の本件条例無効確認の訴は不適法というべきである。
二 よつて、本件訴を却下することとし、訴訟費用の負担につき民訴法八九条を適
用して主文のとおり判決する。
(裁判官 内藤正久 山下 薫 飯村敏明)

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