弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件上告を棄却する。
     上告費用は上告人等の負担とする。
         理    由
 上告代理人菊地養之助、北村文衛、逸見惣作、袴田重司の上告理由について。
 地方自治法第一一五条第一項は普通地方公共団体の議会の会議はこれを公開する、
但し議長又は議員三人以上の発議により出席議員の三分の二以上の多数で議決した
ときは秘密会を開くことができると規定しているから普通地方公共団体の議会の会
議は公開を原則とし秘密会を開くことは例外であつて、秘密会を開くには議長又は
議員三人以上の発議により出席議員の三分の二以上の多数の議決を要することは明
かである、ところが原判決の確定した事実は本件D議会の会議において議員Eが秘
密会にしては如何と発言しこれに対し一人の異議を述べるものもなく議長において
全員異議なきものとして探決の結果直に会議の場所をF農業会事務所樓上に移して
秘密会を開くこととしたと云うのであるかち本件秘密会を開くにつき議員三人以上
の発議はなかつたのである、しかし前記の如く秘密会を開くにつき一人も異議がな
く採決の結果秘密会を開くことに定めた以上その秘密会における議決を無効とすべ
き理由はない前記地方自治法第一一五条第一項が秘密会を開くのに議員三人以上の
発議を要するものとしたのは、みだりに秘密会の発議をすることを防ぐために規定
したものであり三人以上の発議のない場合はこれについて可否を決する必要はない、
三人以上の発議のある場合にはじめて同条第二項によつて、これについて可否を決
することを要するものとしたに過ぎないのであつて、たとい一人の発議にもとずい
ても全員異議なく秘密会を開くことを採決した本件のごとき場合においては、その
秘密会の成立、ひいてはその秘密会においてなされた議決を無効とすべき何等の理
由もない。然らば右と同一趣旨に出でた原判決は正当であつて、この点に関する論
旨は理由がない。
 次に論旨は秘密会では議決ができない、議決はあくまでも公開の議場でなされな
ければならないと主張するのであるが地方自治法には秘密会では議決ができない趣
旨の規定は存しないのである、そして前段説明の如く一定の要件の下に秘密会を開
くことを認めておる以上秘密会においても、議決を為し得るものと解すべきである。
然らば原判決が本件秘密会の議決をもつて有効なものとしてのは正当であつて、こ
の点に関する論旨も理由がない。
 よつて本件上告は理由がないから民事訴訟法第四〇一条第九五条第八九条により
主文の如く判決する。
 この判決は裁判官全員一致の意見である。
     最高裁判所第二小法廷
         裁判長裁判官    霜   山   精   一
            裁判官    栗   山       茂
            裁判官    小   谷   勝   重
            裁判官    藤   田   八   郎

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