弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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○ 主文
原判決中控訴人敗訴部分を取消す。
右取消部分にかかる被控訴人の請求を棄却する。
訴訟費用は第一、二審とも被控訴人の負担とする。
○ 事実
控訴代理人は主文同旨の判決を求め、被控訴代理人は控訴棄却の判決を求めた。
当事者双方の事実上および法律上の主張並びに証拠の提出、援用、認否は原判決事
実摘示のとおりである。
○ 理由
当裁判所は、控訴人が被控訴人に対し昭和四三年九月一七日付でした滞納者東京都
中野区<以下略>A合資会社(以下Aという。)の滞納にかかる原判決添付別表
(一)記載の国税(但し異議決定により、3および4の法人税は除かれた。)に関
し、徴収しようとする金額(限度額)を金五一、〇九八、六〇〇円(但し異議決定
により金四、八一〇万円に減額)とする第二次納税義務の告知処分(第一回告知処
分)および昭和四三年一〇月三一日付でした滞納者Aの滞納にかかる原判決添付別
表(一)記載の国税(但し異議決定により、3および4の法人税は除かれた。)に
関し、徴収しようとする金額(限度額)を金二六、七四一、四七〇円(但し異議決
定により金五、二六六、四〇〇円に減額)とする第二次納税義務の告知処分(第二
回告知処分)はいずれも適法であつて、被控訴人の本訴請求は失当であると判断す
るものであるが、その理由として、原判決の理由説明のうち、被控訴人が原判決添
付別表(二)記載の一〇筆の土地(以下本件土地という。)の売却代金中より金
二、八〇〇万円の利益を受けたことに関して道市民税金四、〇五八、八〇〇円を賦
課され、これを納付しているので被控訴人の受けた利益の限度を算出するに当つて
は右道市民税の額を控除すべきであるとして、第二回告知処分のうち金一、二〇
七、六〇〇円を超える部分は違法であるとする部分(原判決四四枚目表末行目から
四七枚目表八行目まで)を除くその余の部分を引用するほか、以下の説明を付加す
る。
被控訴人はAから金二、八〇〇万円を受領したことに関し、函館市長から金四、〇
五八、八〇〇円の道市民税を賦課され、これを納付ずみであるから、被控訴人につ
き国税徴収法第三九条に規定する「受けた利益の限度」を算定するに当つては右道
市民税と同額を控除すべきであると主張するので、この点について検討する。
国税徴収法第三九条に規定する第二次納税義務の制度は、形式的には第三者に財産
が帰属しているが、実質的にはなお納税者(滞納者)にその財産が帰属していると
認めても公平を失しないような場合に、その形式的な権利の帰属を否認しながら、
しかも私法秩序を乱すことを避けつつ、形式的に権利が帰属している者に対して補
充的に納税義務を負担させることによつて租税徴収の確保を図ろうとする制度であ
ると解される。ところで第二次納税義務者が負うべき納税義務の範囲につき、同条
は「処分により受けた利益が現に存する限度(これらの者がその処分の時にその滞
納者の親族その他の特殊関係であるときは、これらの処分により受けた利益の限
度)において、その滞納に係る国税の第二次納税義務を負う。」旨を規定している
が、右にいう「受けた利益」とは、上に説明した同条の規定の趣旨にかんがみ、財
産の処分がなされた時点における当該受益財産の客観的価値を指すものと解すべ
く、右財産の取得に要した直接の費用、例えば契約の対価、契約費用、登録免許税
等は右財産の価額から控除されるべきであるが、道市民税は、受益財産の取得によ
る所得のみならず、他の所得およびその計算上生じた損失との関連において課税標
準が異動するのであつて、受益財産の取得に関して賦課された道市民税であつて
も、これを受益財産の取得に要した直接の費用とはいうことができないから、前記
「受けた利益の限度」の算出に当つて道市民税の金額を受益財産の価額から控除す
べきものではないと解するのが相当である。いま、もし仮に「受けた利益の限度」
の算出にあたり、受益財産取得の結果賦課された道市民税を控除すべきものである
とすると、上記国税徴収法第三九条の規定に基く第二次納税義務告知処分は、当該
財産の処分行為がなされた後に直ちになし得るのであるから、道市民税が確定して
いない段階において右処分をすることを妨げないのであるが、かかる場合には道市
民税を見込で控除しなければならないという不都合を生じるばかりでなく、受益者
が他にも所得がある場合は、このことによつて道市民税額が変動するのであるか
ら、年度の途中においては控除額の決定は不可能となり、更に申告期限後において
も争訟手続を経て税額が変更することもあり得るのであるから、この場合には、一
旦なされた第二次納税義務告知処分の内容を変更しなければならないという不都合
を生じ、事実上第二次納税義務告知処分をすることができないという不合理な結果
をも招きかねないのである。
以上の理由により、国税徴収法第三九条にいう受益財産の取得により「受けた利益
の限度」を算定するに当つては、右受益財産を取得した結果賦課されることとなつ
た道市民税額は、これを受益財産の価額から控除すべきものではないと解すること
が相当である。而して、被控訴人が滞納者であるAの特殊関係者に該当するとこ
ろ、Aが処分した本件土地の売却代金中から金五三、三六六、四〇〇円を無償で取
得したこと、このためAの原判決添付別表(一)記載1および2の国税の徴収がで
きなくなつたため、控訴人が被控訴人に対し国税徴収法第三九条の規定に基いて本
件第一回および第二回の各告知処分をしたことは、いずれもさきに引用した原判決
がその理由において説明するとおりであつて、右各告知処分はすべて被控訴人の受
けた利益の範囲内でなされたものであり、いずれも適法というべきである。
されば原判決中右と結論を異にする部分は失当であるから、民事訴訟法第三八六条
の規定によつてこれを取消し、右取消部分にかかる被控訴人の請求を棄却すべく、
訴訟費用の負担につき同法第九六条および第八九条の規定を適用し、主文のとおり
判決する。
(裁判官 平賀健太 安達昌彦 後藤文彦)

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