弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件各上告を棄却する。
         理    由
 被告人A、同B、被告人Aの弁護人森信一及び被告人Cの弁護人神浦静夫の各上
告趣意は末尾に添附した別紙書面の通りである。
 被告人Aの上告趣意について、
 所論弁護人を付することを裁判長から拒絶されたことは記録上認められない従つ
て所論違憲の主張は前提を欠き採用するを得ない。論旨は結局原審の事実誤認及び
量刑不当を主張することに帰し刑訴法四〇五条所定の上告理由に当らないから採用
できない。
 被告人Bの上告趣意について。
 論旨は刑訴法四〇五条所定の上告理由に当らないから採用しがたい。
 被告人Aの弁護人森信一の上告趣意第一点について。
 所論原審公判において被告人から弁護人を選任するにつき公判期日の延期を請求
したこと及び原審裁判長が弁護人を頼む必要はないと申聞けたことは記録上認める
ことを得ないから原判決は、憲法第三七条三項に違反するものではない(昭和二四
年(れ)第三八一号同二五年二月一日大法廷判決)なお憲法第三七条一項の所謂公
平な裁判所の裁判というのは偏頗や不公平のおそれのない組織と構成をもつ裁判所
の裁判を意味するものであつて所論のような場合を指すものでない(昭和二二年(
れ)第四八号同二三年五月二六日大法廷判決)従つて論旨は採用しがたい。
 第二点について。
 原判決は本件犯罪後に物価統制令の処罰規定に刑の変更があつたので新旧刑の比
照を為し犯行当時の軽い昭和二二年四月一六日勅令第一三三号による改正前の物価
統制令第三四条、同第三六条所定の刑期及び罰金額の範囲内で被告人を処断してい
るものであることが明らかであつて所論罰金等臨時措置法第二条の規定を判決に掲
げたのは刑の新旧比照のために掲げたものであるから原判決には所論の如き違法は
ない。従つて所論違憲の主張は前提を欠き採用しがたい。
 第三点について。
 論旨は被告人の判示行為は唯一回のみの行為であるから営利の目的を以てなした
とはいい得ない。しかるに原判決はかかる行為を営利の目的を以てなしたと認定し
たことは判決に影響を及ぼすべき重大なる事実の誤認があると主張するがかかる主
張は刑訴法第四〇五条所定の上告理由に当らない。なお論旨は一回だけの行為でも
利益さえ得れば営利の目的でなしたと認めることは憲法第一一条同第一三条、同第
二二条、同第二七条等の規定に牴触すると主張するが、その内容は結局原審におい
て所論刑罰法規の解釈を誤つたことを主張することに帰着する、従つて所論違憲の
主張は採用できない。
 第四点について。
 憲法第三六条に所謂、残虐な刑罰とは不必要な精神的、肉体的苦痛を内容とする
人道上残酷と認められる刑罰を意味し被告人の側から見て過重の刑必ずしも残虐な
刑ではなく(昭和二二年(れ)第三二三号同二三年六月三〇日大法廷判決)又法定
刑の種類の選択又は範囲の量定の不当を指すものではない(昭和二三年(れ)第二
八一号同二五年二月一日大法廷判決)従つて判示行為をなした被告人に対し法定刑
の範囲内である懲役三月罰金二万円に処した判決を目して量刑不当だとか残虐な刑
であると主張する論旨は到底採用するを得ない。
 被告人Cの弁護人神浦静夫の上告趣意第一点及び第二点について。
 論旨は結局原審には審理不尽の違法あること及び原審の量刑不当を主張すること
に帰し刑訴法第四〇五条所定の理由に該当しないから採用できない。
 よつて刑訴施行法三条の二、刑訴法第四〇八条により主文のとおり判決する。
 以上は裁判官全員一致の意見である。
  昭和二六年一一月六日
     最高裁判所第三小法廷
         裁判長裁判官    長 谷 川   太 一 郎
            裁判官    井   上       登
            裁判官    島           保

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