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平成28年3月17日判決言渡同日原本領収裁判所書記官
平成26年(ワ)第4916号実用新案権侵害差止等請求事件
口頭弁論終結日平成28年1月20日
判決
原告有限会社ガルボプランニング
原告P1
上記2名訴訟代理人弁護士東重彦
同寺中良樹
同和田宏徳
同金澤昌史
同補佐人弁理士神崎彰夫
被告株式会社イースマイル
同訴訟代理人弁護士渡邉俊太郎
同早稲本和徳
同鶴谷秀哲
同訴訟復代理人弁護士井戸摩耶
同補佐人弁理士小原英一
主文
1被告は,別紙被告商品目録記載の商品を製造し,譲渡し,又は,
譲渡若しくは貸渡しのために展示してはならない。
2被告は,別紙被告商品目録記載の商品を廃棄せよ。
3被告は,原告有限会社ガルボプランニングに対し,1億6290
万6617円及びこれに対する平成27年8月1日から支払済みま
で年5分の割合による金員を支払え。
4原告有限会社ガルボプランニングのその余の請求をいずれも棄却
する。
5訴訟費用は,原告有限会社ガルボプランニングと被告との間に生
じた費用はこれを50分し,その11を原告有限会社ガルボプラン
ニングの負担とし,その余を被告の負担とし,原告P1と被告との
間に生じた費用は被告の負担とする。
6この判決は,第3項に限り,仮に執行することができる。
事実及び理由
第1請求
1主文1項及び2項同旨
2被告は,別紙被告標章目録記載の標章を別紙被告商品目録記載の商品若しく
はその包装に付し,又は同標章を付した同商品を譲渡し,譲渡若しくは引渡し
のために展示してはならない。
3被告は,別紙被告標章目録記載の標章を付した別紙被告商品目録記載の商品
を廃棄せよ。
4被告は,原告有限会社ガルボプランニングに対し,2億円及びこれに対する
平成26年6月11日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
第2事案の概要等
1事案の概要
本件は,①考案の名称を「足先支持パッド」とする実用新案権を有する原告
P1が,被告が製造販売する別紙被告商品目録記載の商品が同実用新案権に係
る考案の技術的範囲に属すると主張して,被告に対し,実用新案権に基づき別
紙被告商品目録記載の商品の製造,譲渡等の差止め及び同商品の廃棄を求め,
②別紙原告商標目録記載の商標について商標権を有し,原告P1から実用新案
権の独占的通常実施権の設定を受けている原告有限会社ガルボプランニング
(以下「原告会社」という。)が,被告が別紙被告標章目録記載の標章を付し
た別紙被告商品目録記載の商品を販売したことにより自己の商標権及び実用新
案権の独占的通常実施権が侵害されたと主張して,商標権に基づき,別紙被告
標章目録記載の標章を付した同商品の譲渡等の差止め及び同商品の廃棄を求め
るとともに,実用新案権の独占的通常実施権侵害又は商標権侵害の不法行為に
基づく平成26年6月から平成27年7月までの期間分の損害賠償請求として,
損害金の一部である2億円及びこれに対する平成26年6月11日(訴状送達
の日の翌日)から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支
払を求めた事案である。
2前提事実(争いがない事実以外は,後掲証拠及び弁論の全趣旨により明らか
に認められる。なお,書証の枝番号は,特に記載しない限りその全てを示す趣
旨である。以下,同様である。)
(1)当事者
ア原告会社は,大阪市〈以下略〉に本社を有し,スポーツ用バランスサポ
ート器具,スポーツウェア等の製造販売を主たる業とする,特例有限会社
である(甲1)。
イ原告P1は,原告会社の代表者である。
ウ被告は,インターネット上の物品の販売を主たる業とする,株式会社で
ある。
(2)原告P1の有する実用新案権
原告P1は,次の実用新案権(以下,「本件実用新案権」といい,その実
用新案登録請求の範囲請求項1の考案を,「本件考案」という。また,本件
実用新案登録出願の願書に添付された明細書及び図面を,「本件明細書」と
いう。)を有している(甲2)。本件明細書の記載は,本判決添付の登録実
用新案公報記載のとおりである。
実用新案登録番号第3170112号
登録日平成23年8月10日
出願日平成23年6月22日
考案の名称足先支持パッド
請求項1
足指の付け根部の下側に嵌め込み,柔軟で弾性を有する素材の足先支持パ
ッドであって,足裏における触球部の上辺から少なくとも第2指,第3指,
第4指,小指の指頭部下辺までの間に配置させる水平部と,少なくとも第2
指と第3指との間,第3指と第4指との間,第4指と小指との間にそれぞれ
入り込む第1,第2および第3凸状部とからなり,パッド水平部の上面およ
び3個のパッド凸状部の両側面は,各指の付け根部の下側と密接できるよう
に全体がなだらかに湾曲し,少なくとも第1および第2凸状部が高さ方向に
長く延びることにより,第1と第2凸状部間および第2と第3凸状部間は半
円形側面になり,第2指と第3指との間および第3指と第4指との間で足裏
に保持される足先支持パッド。
(3)原告P1は,原告会社に対し,本件実用新案権について,その登録日から
現在まで,独占的な通常実施権を設定している(甲30)。
(4)被告の行為(争いがない)
被告は,遅くとも平成25年6月頃から,業として,別紙被告標章目録記
載1及び2の標章(以下「被告標章1」,「被告標章2」という。)を付し
た被告商品目録記載1の商品(以下「被告商品1」という。)を製造販売し,
また,遅くとも平成26年7月頃から,業として,別紙被告標章目録記載3
の標章(以下「被告標章3」といい,被告標章1ないし3を総称して「被告
標章」という。)を付した別紙被告商品目録記載2の商品(以下「被告商品
2」といい,被告商品1と合わせて「被告商品」ということがある。)を製
造販売している。
被告商品1と被告商品2の構成は素材の点を除きほぼ同一である。
(5)本件考案の構成要件の分説(争いがない)
①足指の付け根部の下側に嵌め込み,
②柔軟で弾性を有する素材の
③足先支持パッドであって,
④足裏における触球部の上辺から少なくとも第2指,第3指,第4指,小
指の指頭部下辺までの間に配置させる水平部と,
⑤少なくとも第2指と第3指との間,第3指と第4指との間,第4指と小
指との間にそれぞれ入り込む第1,第2および第3凸状部とからなり,
⑥パッド水平部の上面および3個のパッド凸状部の両側面は,各指の付け
根部の下側と密接できるように全体がなだらかに湾曲し,
⑦少なくとも第1および第2凸状部が高さ方向に長く延びることにより,
第1と第2凸状部間および第2と第3凸状部間は半円形側面になり,第2
指と第3指との間および第3指と第4指との間で足裏に保持される足先支
持パッド。
(6)被告商品の構成(装着していない状態におけるものとしては争いがない)
A第1指及び第4指を着脱可能な大小2つの嵌合リングに第1指及び第4
指を挿入して装着する,
B伸縮性と柔軟性のあるエラストマーの素材の
C足指間パッドであって,
D前記両嵌合リングを繋いで第2指と第3指とを嵌合し,足裏における第
1指から第4指の付け根から指頭部下辺までの間に配置させる,両端を上
方に湾曲させた基礎部と,
E第1指に嵌合する大径の嵌合リングと第2指と第3指に入り込む突出部
と第4指に嵌合する小径の嵌合リングとからなり,
F前記基礎部の上面,前記両嵌合リングの内側面及び外側面,並びに前記
突起部の両側面は,第1指から第4指の付け根部の下側と密接できるよう
に全体がなだらかに湾曲し,
G少なくとも第1指と第4指の嵌合リングに第1指と第4指を挿入するこ
とによって足裏に保持される指足間パッド。
被告商品は,本件考案の構成要件②及び③を充足する。
(7)原告会社の有する商標権
原告会社は,次の商標権(以下「本件商標権」といい,その登録商標を
「本件商標」という。)を有している(甲5)。
登録番号第5537006号
登録日平成24年11月16日
出願日平成24年6月4日
指定商品第28類運動用サポーター,運動用リハビリテーション用具,
運動用保護パッド,その他の運動用具
登録商標別紙原告商標目録のとおり
(8)原告P1は,被告に対して,平成26年3月12日到着の内容証明郵便及
び同日発送の普通郵便にて,実用新案技術評価書を示して警告した。同技術
評価書では,3つの引用文献を掲げた上で,評価内容として「6」(新規性
等を否定する先行技術文献等を発見できない(記載が不明瞭であること等に
より有効な調査が困難と認められる場合も含む。)と記載されていた。(甲
4)
(9)原告らと被告との関係
ア原告P1が,本件考案を創作し,平成23年6月に本件考案の実用新案
登録出願を行った後,原告会社は,同年8月頃から,本件考案の成果であ
る商品(以下「原告商品」という。)の販売について,株式会社オフィス
サイキ(以下,「オフィスサイキ」という。)や被告と協議し,被告は,
商品名称を提案するなどしていた(乙9ないし11)。また,原告会社は,
同年9月,大阪大学名誉教授であったP2氏との間で,同人を監修者とし,
同人から,原告商品の販売促進及び商品開発に関するアドバイスを受ける
こと等を主な内容とするアドバイザリー契約を締結し,原告商品に「大山
式」の名称を冠することとした(甲17)。
イそして,原告会社は,同年10月頃から,原告商品を発売し,オフィス
サイキが販売代理店となり,被告が同社から仕入れてインターネット上で
販売していたが,平成24年5月頃,オフィスサイキと原告会社との取引
が停止するに至った。そのため,原告会社は,被告の要請を受けて,平成
24年6月頃から,原告商品を直接被告に対して販売するようになり,被
告は,被告商品1を発売した後である平成25年8月頃まで,原告会社か
ら原告商品を継続して仕入れていた。
他方で被告は,平成24年8月頃から,独自の商品開発を開始した。ま
た,被告は,同年5月11日と同年9月25日に被告標章と類似した商標
(以下「被告商標」という。)を商標登録出願し,それらはいずれも商標
登録された(乙1,乙5)。
ウ平成25年4月,P2は,原告会社に対して,アドバイザリー契約に基
づく解約申入れ期間(3か月)を置いて,同契約を解約する旨の申入れを
行い,同年6月頃,被告は,P2の監修の下に被告商品1を売り出すとと
もに,同月11日に被告商品に係る発明を特許出願し,後に特許権として
設定登録された(甲20)。
3争点
(1)実用新案権侵害(1)-技術的範囲の属否-
ア被告商品は,本件考案の構成要件を文言上充足するか。(争点1-1)
イ被告商品は,本件考案と均等なものとしてその技術的範囲に属するか。
(争点1-2)
(2)実用新案権侵害(2)-無効理由の存否-
ア本件考案に係る新規性欠如(本件考案は,本件実用新案登録出願前に頒
布された英国特許第365572号明細書(以下「乙17の1明細書」と
いう。)に記載された発明(以下「乙17の1発明」という。)と同一で
あるか。)(争点2-1)
イ本件考案に係る進歩性欠如(本件考案は,乙17の1発明に基づいて当
業者がきわめて容易に考案することができたものであるか。)(争点2-
2)
ウ本件考案に係る進歩性欠如(本件考案は,本件実用新案登録出願前に頒
布された特開2009-254680号公報(以下「乙19の1公報」と
いう。)に記載された発明(以下「乙19の1発明」という。)に基づい
て当業者がきわめて容易に考案することができたものであるか。)(争点
2-3)
(3)商標権侵害-本件商標と被告標章との類否-(争点3)
(4)被告の過失(争点4)
(5)原告会社の損害額(争点5)
4争点に関する当事者の主張
(1)争点1-1(被告商品は,本件考案の構成要件を文言上充足するか。)
(原告らの主張)
被告商品の構成は,本件考案の各構成要件を充足し,その技術的範囲に属
する。
ア構成要件①
被告商品も,足指の付け根部分の下側にはめ込むものであり,被告商品
の構成にある第1指及び第4指を挿入する2つの嵌合リングは,本件考案
の基本的構造に付属的な構造を付加した構成にすぎない(甲8)。したがっ
て,被告商品の構成Aは本件考案の構成要件①を充足する。
イ構成要件④
(ア)本件考案の構成要件④にいう「水平部」とは,通常水平である地面
(もしくは靴面,靴下面)に使用上の不都合なく接地もしくは接触させ
るため,物品の下辺が水平であることをいうものにすぎず,両端が上方
に湾曲していないことを要求するものではない。そして,被告商品にお
いても,少なくとも第2指,第3指,第4指及び小指の指頭部下辺まで
の間の下辺に水平部分は存在している。
(イ)被告商品は,その素材に伸縮自在である公知のスチレン系エラストマ
ーを使用しており,着用者の使用時に相当に変形し,その変形した態様
のままで着用者は直立姿勢,直立歩行又は各種の運動を長時間継続する
ことになる。したがって,本件考案に対して被告商品の構成及び作用効
果を比較検討するのは着用状態でなければならない。
そして,被告商品は,装着状態において,水平部が小指の指頭部下辺
に達するものであることは,甲8,甲9から明らかである。
ウ構成要件⑤
本件考案における第1ないし第3凸状部とは,単に第2指と第3指との
間,第3指と第4指との間,第4指と小指との間にそれぞれ入り込む凸状
の部分をいうものであり,甲8の図1ないし図3を見れば明らかなように,
被告商品においては,それぞれ第2指と第3指,第3指と第4指,第4指
と小指との間にそれぞれ入り込む凸状の部分を備えている。
本件考案の請求項1においては,各凸状部3,4,5の側面形状の構成
に関して何ら限定は加えられていないことから,これを「飛行機の尾翼の
ようにわずかに後方へ傾いた側面形状」に限定する被告の主張は失当であ
る。また,着用状態の被告商品においても,実際には各凸状部3,4,5
の側面形状は飛行機の尾翼のようにわずかに後方に傾いているものと推定
できる。
エ構成要件⑥
被告商品着用時には,被告商品の基礎部の上面は小指の付け根の下側と
も密接する構造となっている。よって,被告商品の構成Fは,本件考案の
構成要件⑥を充足する。
オ構成要件⑦
前記ウのとおり,被告商品は第1ないし第3凸状部を備えており,これ
ら凸状部間は半円形側面となっていること,第2指と第3指との間,第3
指と第4指との間でパッドが足裏に保持されていることは明らかであるか
ら,被告商品の構成Gは構成要件⑦を充足する。
被告は,被告商品が,第1及び第2凸状部を有しておらず,第1指及び
第4指を着脱可能な2つの嵌合リングに挿入して装着することによって保
持されるものであると主張するが,これらの点は,本件考案が被告商品の
構成中に組み込まれていることを否定するものではない。
カ被告商品と本件考案の作用効果の対比
被告商品を着用すると,,こ
れによって足をしっかり踏ん張ることができ,歩行時に足への衝撃が緩和
されるために,膝痛や股関節痛の強い痛みを緩和でき,かつ,直立姿勢の
達成及び安定した歩行ができる。このような作用効果は本件考案と全く同
じである。
(被告の主張)
被告商品の構成は,本件考案の構成要件①,④ないし⑦を充足しておらず,
本件実用新案権を侵害するものではない。
ア構成要件①
本件考案は足指の付け根部の下側に嵌め込むものであるのに対して,被
告商品は,第1指を大径の嵌合リングに,第4指を小径の嵌合リングにそ
れぞれ挿入して装着するものである点で異なる。
したがって,被告商品の構成Aは本件考案の構成要件①を充足しない。
イ構成要件④
被告商品の基礎部は,両端に嵌合リングが存在するため両端が上方に湾
曲している点で水平ではない。また,第1指から第4指までの間に配置さ
れるため,小指指頭部下辺にまで配置される本件考案の水平部とは異なる
構造である。
したがって,被告商品の構成Dは本件考案の構成要件④を充足しない。
ウ構成要件⑤
被告商品は,着脱可能な2つの嵌合リングに第1指及び第4指を挿入し
て装着するため,本件考案の第3指と第4指との間の第2凸状部,第4指
と小指との間の第3凸状部が存在しない。
また,被告商品の第2指と第3指との間の突起部についても,本件明細
書【0022】によれば「凸状部」とは「各凸状部3,4,5は,図4か
ら明らかなように,飛行機の尾翼のようにわずかに後方へ傾いた側面形
状」であるから,被告商品の突起部とは形状を異にし,被告製品には第2
指と第3指との間の第1凸状部が存在しないことになる。
したがって,被告商品の構成Eは本件考案の構成要件⑤を充足しない。
エ構成要件⑥
被告商品の基礎部の上面,両嵌合リングの内側面及び外側面,並びに前
記突起部の両側面は,第1指から第4指の付け根部の下側と密接できるよ
うに全体がなだらかに湾曲しているが,小指の付け根部の下側とは密接し
ない構造になっている。これに対して,本件考案の足先支持パッドでは,
構成要件④との関係で少なくとも第2指から小指の指頭部下辺まで配置さ
れるため,「各指の付け根部の下側」には小指の付け根部の下側が含まれ
なければならない。
したがって,被告商品の構成Fは本件考案の構成要件⑥を充足しない。
オ構成要件⑦
被告商品は,前記のとおり第1及び第2凸状部を有していない。
また,被告商品は,第1指及び第4指を着脱可能な2つの嵌合リングに
挿入して装着することによって保持されるのに対して,本件考案は,第1
及び第2凸状部が高さ方向に長く伸びることや,各凸状部間が半円形側面
になることによって,第2指と第3指との間及び第3指と第4指との間で
足裏に保持される点で異なる。
したがって,被告商品の構成Gは本件考案の構成要件⑦を充足しない。
カ作用効果の対比
本件考案の足先支持パッドは,身体のバランスを安定化させる作用はあ
るものの十分ではなく,また,3個の凸状部であるので親指と人差し指と
の間に指間パッドがなく,何よりも,足裏から外れやすいといった問題点
があった。
これに対して,被告商品では,嵌合リングに第1指と第4指を挿入する
ことによって,パッドが簡単に外れてしまうことを防ぐとともに,5本全
ての足指間にパッドを介在させ,全部の足指を適度に刺激し,足指を開い
て握る動作を可能にすることで足指の機能を活発化させ,足指が体のバラ
ンスを維持して良い姿勢を保つ力が生まれ,歩行時,運動時によい姿勢が
保たれ運動効率が向上する。
特に,両嵌合リングに第1指と第4指を挿入して装着することにより足
指の付け根部の下側に足指パッドが安定的に嵌められるため,各足指を開
いても足指パッドがはずれにくく,足指で地面を掴むような動作が行いや
すくなり,足をしっかりと踏ん張ることが可能になる。一方,本件考案で
は,第1ないし第3凸状部を指で挟みこむことで保持するため,足指を開
くと足指間パッドが簡単にはずれてしまい,足指を開いてから地面をしっ
かり掴んで踏ん張るという動作が困難である点で異なる。
キ原告らの主張に対する反論
(ア)被告商品の構成Aと本件考案の構成要件①の比較について
本件考案の凸状部は,足指で凸状部を挟むことによって足指パッドを
保持するものであって,足指を開いてしまえば足指パッドを保持するこ
とができないのに対し,原告らが甲8において嵌合リング4及び5のう
ち付属的な付加部分であるとして意図的に切除した部分は,第1指と第
4指を「嵌合」させることによって嵌合リング自体が足指パッドを保持
するという本件考案にはない独自の作用効果を奏するための重要な構成
部分である。
したがって,甲8のように被告商品を原告らの都合の良い構成や形状
になるように切除あるいは破壊した上で,本来看過できない本件考案と
被告商品との相違点を無理やり無視する対比方法は失当である。仮にこ
のような対比が許されるのであれば,本件考案は,登録実用新案第31
12553号に係る考案(乙2)により新規性又は進歩性が欠如したも
のとなる。
(イ)被告商品の構成Dと本件考案の構成要件④の比較について
a本件考案は,「足指の付け根部の下側に嵌め込み保持させることに
より,・・・足をしっかり踏ん張り,身体のバランスを安定させる」
という技術である(本件明細書【0001】)ため,「本考案に係る
足先支持パッドにおいて,パッド水平部の下面は平坦であり,足指の
付け根部の下側に嵌め込んだ状態において,足裏触球部の頂部水平面
と一致するかまたは該水平面よりもわずか上方に位置することを要す
る。」とされている(本件明細書【0008】)。
したがって,本件考案の「水平部」は,物品の下辺が水平であると
いう程度では足りず,足指の付け根部の下側に嵌め込んだ状態で水平
であることを要し,また,実際上も,本件考案では凸状部を指間で挟
むことによって着用することにより,着用時も水平部は水平を保つこ
とが可能であるため,両端が上方に湾曲している状態を含まない。ま
た,被告商品を足指に着用した状態の基礎部の下面は,各指ごとにわ
ずかに湾曲した形状であり,「水平」ではない。
原告らのように,被告商品を自己の都合の良い構成や形状になるよ
うに切除した状態で比較することが許されないことについては前記の
とおりである。
b甲9の各実験はいずれも通常の使用状態を逸脱した不自然な条件下
で行われており,被告商品は異常な変形を来している。それにもかか
わらず,甲9の1ないし3のいずれの実験結果によっても,被告商品
の第4指の嵌合リングは加圧による異常な変形によって小指の側面に
接触することはあっても,小指の付け根部から指頭部下辺まで達して
いないことが示されている。
したがって,原告らが行った各実験によって意図的に「水平部」が
作出されたからといって構成要件④を充足することはない。
被告は,被告商品について,通常の使用状態下で着用した実験を行
ったが,当然のことながら,被告商品は変形をするものの,足裏にお
いて小指の付け根部から指頭部下辺まで達するような「水平部」は形
成されなかった(乙4)。
(ウ)被告商品の構成Eと本件考案の構成要件⑤の比較について
一般論としては実用新案登録請求の範囲の解釈は実施例に限定される
ものではない。しかし,本件考案の請求項1によると,「凸状部の両側
面は,各指の付け根部の下側と密接できるように全体がなだらかに湾
曲」している必要がある。
すなわち,本件考案の凸状部は,水平部と足指の付け根部の「下側と
を」密接させるための部材であり,そのため「縦方向へ向かってやや斜
めにほぼ平行に延びる」形状であり(甲2,5頁【0019】),「飛
行機の尾翼のようにわずかに後方へ傾いた側面形状」(同【002
2】)となっている必要があるのである。
被告商品の突出部の側面形状は使用状態においても飛行機の尾翼のよ
うに後方に傾くことはない。
しかも,被告商品では親指と第4指に嵌める嵌合リングによって基
礎部が足指に保持されるため,突出部は第2指と第3指の間を開いて刺
激するという機能を有するに過ぎず,突出部によって足指の付け根の
「下側」と密接させる必要はないから本件考案の凸状部とは異なり「側
面形状」というような概念も必要ない。
したがって,被告商品が構成要件⑤を充足することはない。
(エ)被告商品の構成Fと本件考案の構成要件⑥の比較について
原告らによる着用時の各実験が不自然であることは既に述べたとおり
であり,通常の使用状態において,被告商品の基礎部が変形によって小
指「側面」に密接することがあったとしても小指の「付け根の下部」に
密接することはない(乙4)。
したがって,被告商品が構成要件⑥を充足することはない。
(オ)被告商品の構成Gと本件考案の構成要件⑦の比較について
原告らが被告商品を自己の都合の良い構成や形状になるように切除し
た部分は,単なる付属的な構造の付加ではないことについて前記のとお
りである。
したがって,被告商品が構成要件⑦を充足することはない。
(2)争点1-2(被告商品は,本件考案と均等なものとしてその技術的範囲に
属するか。)
(原告らの主張)
被告商品の構成D及びFが,本件考案における構成要件④のうち,当該パ
ッドの水平部が「小指の指頭部下辺までの部分」にまで延長されていない点,
及び構成要件⑥のうち,「当該パッドの第3凸状部(第4指と小指との間)
の両側面中,小指側に相当する部分がなだらかに湾曲していない点を文言上
充足しないとしても,それぞれ均等の範囲内にあり,本件考案の技術的範囲
に属する。
ア非本質的部分(第1要件)
本件考案は,主として直立した際の姿勢と歩行障害を改善するために足
,かつ,縦アーチを維持することで歩行時の衝撃を少
なくする足先支持パッドを提供することを目的としている。本件考案のパ
ッドを装着することにより,,親指と小指が確実
に地面について不安定さが解消し,身体の重心が安定する。また,第2指,
第3指,第4指において指頭部がわずかに,及び付け根が多く浮き上がり,
親指及び小指の指頭部と付け根,踵部の3点で体重を支えることになり,
側面から見て3点接地ができることによって足裏全体で支持し,足指が踏
ん張って直立及び歩行することができる。これらのことから,本件考案の
本質的部分は,足指の付け根部分の下側にはめ込む,柔軟で弾性を有する
素材の足先支持パッドであって,足裏に装着することにより第2指,第3
指,第4指において主として付け根が浮き上がり,親指及び小指の指頭部
と付け根,踵部の3点で体重を支え,足裏全体で支持することができるよ
うな形状となるものである。
本件考案でいう,パッドの水平部が「小指の指頭部下辺までの部分」に
まで延長されていないとしても,これが第4指と小指の中間部分付近まで
到達し,しかも被告商品のウレタン素材がきわめて柔軟で形状を特定化で
きない点を考慮すれば,第2指,第3指,第4指において主として付け根
が浮き上がり,親指及び小指の指頭部と付け根,踵部の3点で体重を支え,
足裏全体で支持するとの効果が十分に存在する。
したがって,当該パッドの水平部が「小指の指頭部下辺までの部分」に
まで延長されているか否か,当該パッドの第3凸状部の両側面中,小指側
に該当する部分がなだらかに湾曲しているか否かという,被告商品と本件
考案との間の差異は,本件考案の本質を構成する部分ではない。
被告は,原告らの主張に従えば本件考案では親指の指頭部の下にパッド
が存在してはならないという点が本質的部分になるというが,本件考案に
おいては,親指と第2指との間に入り込む凸状部を形成してもよいことを
示唆しており(【0019】),むしろ親指の指頭部の下にパッドが存在
することを許容している。
イ置換可能性(第2要件)
前記相違点について,被告商品で採用された構成と置き換えても,本件
考案の目的と達し,かつ,同一の作用効果を奏する。
ウ置換容易性(第3要件)
前記相違点について,被告商品で採用された構成に置き換えることは,
当業者が被告商品の製造時において,容易に想到することができる。
(被告の主張)
ア非本質的部分について
本件考案も被告商品も,パッドを足指に保持することによって作用効果
を生じるものである以上,本件考案では,「第1および第2凸状部が高さ
方向に長く延びることにより…足裏に保持される」(本件明細書【002
1】)点が本質的部分である。
これに対して,被告商品では,保持機能は親指と第4指に嵌める嵌合リ
ングが担っているため,突出部は第2指と第3指の間を開いて刺激すると
いう機能を有するにすぎず,両者は本質的部分において相違している。
また,原告らが非本質部分と主張する「小指の指頭部下辺までの間に配
置させる水平部」という構成は,
持し,すっきりと美しい直立姿勢の達成及び安定した歩行ができるように
するためのものであって,本件考案の必須の本質的部分である。
また,仮に,原告らの本質的部分の主張に従った場合,本件考案では親
指の指頭部の下にパッドが存在してはならないという点が本質的部分とい
うことになるが,被告商品のパッドでは親指の指頭部下にリングの部分が
存在しており,本質的部分において構成が相違していることになる。
イ置換可能性について
被告商品では,第4指に嵌める嵌合リングによって基礎部を足指に保持
する構成であるため,小指の指頭部下辺までの間に配置させる水平部を有
していない。そもそも,被告商品は,第4指に嵌める嵌合リングと親指に
嵌める嵌合リングとの相乗効果によってパッドが足指に確実に装着,保持
される構成になっているが,これは本件考案に存在する技術的な課題を解
決するために採用された構成であり,両者は構成のみならず,作用効果が
異なり,置換可能性はない。
ウ置換容易性について
被告商品は,本件考案とは全く別個の発明であり,置換容易性はない。
(3)争点2-1(本件考案に係る新規性欠如(本件考案は,本件実用新案登
録出願前に頒布された乙17の1明細書に記載された乙17の1発明と同一
であるか。))
(被告の主張)
ア本件考案は,本件考案出願前公知の乙17の1発明と同一の考案である
から,実用新案法3条1項3号により実用新案登録を受けることができな
いものであり,本件実用新案登録は実用新案法37条1項2号の規定によ
り,無効とすべきである。
イ乙17の1明細書の記載及びFig.1,Fig.2,Fig.3には,足指の付け根部
の下側に嵌め込み,柔軟で弾性を有する素材のつま先スプレッダー(Toe
Spreaders)であって,少なくとも第2指,第3指,第4指,小指の指頭部
下辺までの間に配置させるベース(1)(本件考案の水平部に相当)と,親指
と第2指との間,第2指と第3指との間,第3指と第4指との間,第4指
と小指との間にそれぞれ入り込むセパレータ(2)(本件考案の凸状部に相
当)が設けられ,ベース(1)(本件考案のパッド水平部に相当)の上面およ
び各セパレータ(2)(本件考案のパッド凸状部に相当)の両横側(3)は,各
指の付け根部の下側と密接できるように全体がなだらかに湾曲し,各セパ
レータ(2)が高さ方向に長く延び,各セパレータ(2)間は半円形側面であり,
セパレータ(2)が親指と第2指との間,第2指と第3指との間,第3指と
第4指との間,第4指と第5指の間で足裏に保持されるようなつま先スプ
レッダー(乙17の1の5参考図参照)が開示されている。
また,ベース(1)の下面は平坦で,足指の下に縦方向に広がるが母指球
の下には延びることなく,母指球が十分に支えられるよう横方向に広がる
点(乙17の1の1頁第38行ないし49行,Fig.2),つま先スプレッ
ダーが,第2指と第3指との間に入り込む第1の凸状のセパレータ(2)と,
第3指と第4指との間に入り込む第2の凸状セパレータ(2)及び,第4指
と小指との間に入り込む第3の凸状セパレータ(2)を有する点
(Fig.1,Fig.2参照),セパレータ(2)の素材はスポンジ様ゴム等である
点(乙17の1の1頁第38行ないし43行参照)が開示されている。
ウ本件考案と乙17の1発明との対比
本件考案の凸状部は,乙17の1発明のセパレータ(2)に,本件考案の
水平部は乙17の1発明のベース(1)に相当する。
A本件考案の構成要件①,②,③の「足指の付け根部の下側に嵌め込み,
柔軟で弾性を有する素材の足先支持パッド」に対して,乙17の1発明
は,つま先スプレッダーであって,装着者の足指の間にフィットさせ
(乙17の1の1頁第16行ないし23行),請求項1ないし3,
Fig.1,Fig.2,Fig.3から分かるように足指の付け根部の下側に嵌め込む
もので,ソフトなスポンジゴムまたはその他の弾力性のある素材で形成
されたものである(乙17の1の1頁第38行ないし43行)。
したがって,本件考案の構成要件①,②,③は乙17の1発明の構成
と一致する。
B本件考案の構成要件④は「足裏における触球部の上辺から少なくとも
第2指,第3指,第4指,小指の指頭部下辺までの間に配置させる水平
部」であるのに対して,乙17の1発明は,Fig.2(Plan)に図示されて
いるように,つま先スプレッダーのベース(1)の全体形状が各指に沿っ
て湾曲している構成であり,足裏における触球部の上辺から第2指,第
3指,第4指,小指の指頭部下辺までの間に配置されているものである。
したがって,本件考案の構成要件④は乙17の1発明の構成と一致す
る。
C本件考案の構成要件⑤は,「少なくとも第2指と第3指との間,第
3指と第4指との間,第4指と小指との間にそれぞれ入り込む第1,
第2および第3凸状部とからな」るのに対して,乙17の1発明は,
つま先スプレッダーにおいて,第2指と第3指との間,第3指と第4
指との間,第4指と小指との間にそれぞれ入り込むセパレータ(2)が設
けられている。
乙17の1発明のセパレータ(2)は本件考案の凸状部に相当し,乙1
7の1発明のセパレータ(2)は前記構成Cに比べて,親指と第2指に入
り込むセパレータ(2)も設けられているが,本件考案の足先支持パッド
の凸状部の数については,本件考案は「少なくとも」と記載され,か
つ,本件明細書の【0019】には「さらに親指18と第2指10と
の間に入り込む低い凸状部を形成することも可能である。」と記載さ
れ,乙17の1発明の親指と第2指との間に凸状部を設けることを排
除していない。
したがって,本件考案の構成要件⑤は乙17の1発明の構成と一致
する。
D本件考案の構成要件⑥は,「パッド水平部の上面および3個のパッド
凸状部の両側面は,各指の付け根部の下側と密接できるように全体がな
だらかに湾曲し」ているのに対して,乙17の1発明は,セパレータ
(2)の横側(3)とベース(1)との接合部分は,Fig.2(Plan)及び
Fig.2(FrontElevation)からなだらかな湾曲状であり,結局,ベース
(1)の上面および隣り合うセパレータ(2)の両横側(3)は,各指の付け根
部の下側と密接できるように全体がなだらかに湾曲している。
したがって,本件考案の構成要件⑥は乙17の1発明の構成と一致す
る。
E本件考案の構成要件⑦は,「少なくとも第1および第2凸状部が高
さ方向に長く延びることにより,第1と第2凸状部間および第2と第
3凸状部間は半円形側面になり,第2指と第3指との間および第3指
と第4指との間で足裏に保持され」るものであるが,乙17の1発明
は,Fig.1から明らかなように,各セパレータ(2)は高さ方向に長く延
び,また,Fig.2(FrontElevation)から明らかように,各セパレータ
(2)の間は半円形側面になり,第2指と第3指との間および第3指と第
4指との間で足裏に保持されている。
乙17の1発明の第4指と小指との間,親指と第2指との間のセパレ
ータ(2)も高さ方向に長く延びているが,本件考案の足先支持パッドの
高さ方向に長く延び,足裏に保持に保持され凸状部については,「少な
くとも」と記載され,本件明細書【0021】には「第4指と第5指と
の間の第3凸状部5を小指の上面近くまで達するように高さ方向に延ば
すことも可能である。」と記載され,第3凸状部5を高さ方向に延ばす
ことを排除していない。また,本件明細書【0019】で親指18と第
2指10との間に入り込む凸状部を設けることを可能としてあり,親指
18と第2指10との間のセパレータ(2)を高さ方向に延ばすことも排
除してはいない。
したがって,本件考案の構成要件⑦は乙17の1発明の構成と一致す
る。
F本件考案は足先支持パッドであり,乙17の1発明は,つま先スプ
レッダーであり,共に指が互いに完全に分離し,共に足指に装着して
各足指を適正な位置に固定するもので,本件考案の構成Fは乙17の
1発明の構成と一致する。
エ本件明細書【0022】には「・・両足指間をおのおのわずかに離隔
させ,各足指が接触しないような形状にすると好ましい。」と記載され,
乙17の1明細書も一体成形されたつま先スプレッダー(ToeSpreaders)
のセパレータ(2)によって,「指が互いに完全に分離されるような配置に
なっている。」(乙17の1の1頁第60行ないし66行)としている
ように,本件考案も乙17の1発明も,足指を適切な位置に固定すると
いう作用・効果は共通である。
オ原告らの主張に対する反論
(ア)構成要件④における「足裏における触球部」について
本件考案の触球部は,本件明細書【0017】の記載,及び,図2,
4から,「触球部8」は足裏における肉厚の部分を意味するといえる。
一方,乙17の1発明のクレーム3(乙17の1の4,2頁下から4
ないし5行)には,「各足の指の間および足指と母指球の間の隙間の所
で足の形状に合うようにされた一つのブリッジで構成される上記の特徴
を有するつま先スプレッダー」と記載されており,「つま先スプレッダ
ーが各指の間や足指と母指球(乙20:「ballofthefoot」「母指
球」の意味「足の親指の付け根のふくらみ」)の隙間にブリッジ状に配
置する」ことが開示されており,乙17の1発明は,足指と母指球の間
の隙間の所で足の形状に合うようにされた1つのブリッジ(本件考案の
水平部に相当する)で構成されていることから,母指球を含む肉厚部の
間の隙間の所で足の形状に合うようにした1つのブリッジで構成されて
いると解釈できる。
つまり,乙17の1明細書には,ブリッジが「足裏における触球部の
上辺から配置されている」構成が記載されているといえる。
また,乙17の1明細書のFig.1,Fig.2(Plan)から写し取った足裏
図(乙17の1の5)に図示するように,一点鎖線とそれについての括
弧書きの(本件の触球部8に相当する部分)記載と同じ位置を示してお
り,「足裏における触球部の上辺」については本件考案と乙17の1発
明のものとに相違はない。
(イ)構成要件④における「指頭部下辺まで」について
指頭部下辺での「指頭」(しとう)とは,広辞苑では「指の先端。ゆ
びさき」(乙21:広辞苑第5版1200頁「指先」項)との意味であ
り,指頭部下辺での「辺」とは,広辞苑では,「あたり」(乙21:広
辞苑第5版2413頁「辺」項)との意味であり,総合して解釈すると
(足)「指の先端部の下のあたり」ということになる。
また,本件明細書の図2,図4を参照すれば足指の先端の半分程度
(第1関節から先の半分程度)しか突出していない。
これらのことから,「指頭部下辺まで」とは,足指の「指の先端部の
下のあたり」までであり,本件考案に則して言えば水平部2(乙17の
1発明ではベース(1))が指の先端部の下のあたりまで配置されてい
ることであり,言い換えれば,多少でも足指先が突出していればよいと
解釈できる。
(ウ)構成Bの全体について
乙17の1明細書のつま先スプレッダーが足指と母指球の隙間に配置
されるとの記載等によるとブリッジが「足裏における触球部の上辺か
ら」配置されていること,本件考案の請求項1の足指の「指頭部下辺」
の意味が,足指の「指の先端部の下のあたり」であること,更に加えて,
乙17の1の5や乙28の参考図を検討すれば,乙17の1明細書にお
いて,足指の先端はベース(1)から突出しており,結局全体では,
「足裏における触球部の上辺から少なくとも第2指,第3指,第4指,
小指の指頭部下辺まで」ベース(1)が配置されているといえる。
したがって,本件考案の構成Bは,乙17の1発明に開示されている。
(エ)上記の各文献は,少なくとも外国では古くから長きにわたり知られ
ていたのであり,本件考案の出願当時には,既に海外に簡単に渡航で
き,また,インターネット(電気通信回路を通じて公衆に利用可能)
等により簡単に検索できる状況にあったのであるから,これらの文献
は国内文献と同様に「きわめて容易」に利用できる状態であった。
(原告らの主張)
ア乙17の1明細書1頁第43ないし46行において,「スプレッダーの
ベース(水平部)は,縦方向において平面として全足指の下まで延設する
ように作製すると好ましい」と記載されていること及びFig.1からすると,
乙17の1発明のスプレッダーの水平部は,足裏の触球部の上辺から足指
の指頭部の下辺を超えて配設されていることになる。
よって,乙17の1発明は本件考案の構成要件④を満たさない。
また,乙17の1発明は,凸状部の側面稜線が実質的に矩形状に近い縦
長の側面形状であるから,その側面稜線が足指の付け根部の下側と近接す
ることは起こりえない。したがって,乙17の1発明は,本件考案の構成
要件⑥を実質的に満たしていない。
イ被告の主張に対する反論
本件考案における「指頭部」とは,「指頭」すなわち「指の先端,指
先」を含む一定の領域を意味する。よって,「指頭部下辺」とは,指頭部
という物の中心に対して「物のはし」または「はしに近い」個所を意味す
る。
(4)争点2-2(本件考案に係る進歩性欠如(本件考案は,乙17の1発明に
基づいて当業者がきわめて容易に考案することができたものであるか。))
(被告の主張)
「指頭部下辺」が,足指の先の下面の広い範囲の「全体」をベース(1)か
ら突出しているとの意味であり,乙17の1発明が本件考案の構成要件④と
相違するとしても,実用新案法3条2項により実用新案登録を受けることが
できないものであり,本件実用新案登録は実用新案法37条1項2号の規定
により,無効とすべきである。
すなわち,相違点は設計上の微差であり,また,仏国特許第262617
0公報に記載された発明(乙17の3,以下「乙17の3発明」という。)
のFig.8において,第2指,第3指の指先端部が十分にソール(A)から突
出した構成が開示されており,乙17の3発明と前記乙17の1発明とは,
共に足指に装着して足指に間隔を設ける足指器具であるから,ベース(1)と
して,乙17の3発明のソール(A)を用いることは,きわめて容易になし
得る程度のことである。
よって,相違点に係る本件考案の構成要件については,乙17の1発明又
は乙17の3発明によってきわめて容易に考案をすることができたというべ
きである。
(原告らの主張)
考案の進歩性は,当業者が公知公用の考案からきわめて容易に考案できる
か否かが問題となる。
乙17の1発明のつま先スプレッダーは,着用状態で歩行することができ
ず,身体のバランスを安定させることもできないから,本件考案と同一の技
術分野に属するものではない。
乙17の3発明は,つま先位置決め具についても着用状態で歩行すること
ができず,身体のバランスを安定させられないので,本件考案とは異なる技
術分野に属している。
また,乙17の3発明は,親指と第2指との間に入り込む凸状部を有する
代わりに,第4指と小指との間に入りこむ第3凸状部が存在せず,本件考案
の構成要件④を満たさない。
また,乙17の3発明は,側面稜線が足指の付け根部の下側と近接するこ
とは起こりえず,本件考案の構成要件⑥を実質的に満たさない。
よって,いずれにしても,当業者が乙17の1発明から,又は乙17の1
発明に乙17の3発明を組み合わせて本件考案をきわめて容易に考案するこ
とはできない。
(5)争点2-3(本件考案に係る進歩性欠如(本件考案は,本件実用新案登
録出願前に頒布された乙19の1公報に記載された乙19の1発明に基づい
て当業者がきわめて容易に考案することができたものであるか。))
(被告の主張)
ア本件考案は,本件出願前公知の乙19の1発明から,又は乙19の1発
明及び周知技術(乙19の2の1,乙19の3の1,乙19の4,乙19
の5,乙19の6)からきわめて容易に考案できたものであり,実用新案
法3条2項の規定により実用新案登録を受けることができないものである。
そして,本件考案の奏する効果は,乙19の1発明にこれら周知技術を
適用した構成から当然に予測又は発見される範囲内のものにすぎず,予測
又は発見することが困難な顕著な効果ということはできない。
したがって,本件考案は,実用新案法37条1項2号の規定により無効
とすべきである。
イ乙19の1発明は,本件考案の出願前に頒布された刊行物であり,明細
書等の記載によれば,その構成は次のとおりである。
A足指の付け根部の下面に装着して指間を拡幅し,柔軟性を有する素材
の一体に連結された足指用器具であって,
B足裏における触球部の上辺から少なくとも第2指,第3指,第4指,
小指の指頭部下辺までの間に配置させる指持上板12と,
C少なくとも第2指と第3指の間,第3指と第4指との間,第4指と小
指との間にそれぞれ入り込む第1,第2及び第3足指拡幅部とからなり,
D指持上板の凸状部の両側面は,効果を高めるために指の付け根部の下
側とフィットするように湾曲し(【0025】,図5),少なくとも第
1及び第2凸状部が高さ方向に長く延びることにより,第1と第2凸状
部間,第2と第3凸状部間は側面を形成して,
E第2指と第3指との間及び第3指と第4指との間で足裏に保持される
F足指用器具
の考案が記載されている。
ウ一致点及び相違点
本件考案と乙19の1発明の構成は,本件考案の構成要件①,②,③と
乙19の1発明の構成A,本件考案の構成要件④と乙19の1発明の構成
B,本件考案の構成要件⑤と乙19の1発明の構成C,本件考案の構成要
件⑦と乙19の1発明の構成Eにおいて一致する。
本件考案の構成要件⑥は,パッド水平部の上面及び3個のパッド凸状部
の両側面は,各指の付け根部の下側と密接できるように全体がなだらかに
湾曲し,少なくとも第1と第2凸状部間及び第2と第3凸状部間には半円
形側面になるものであるのに対し,乙19の1発明では,足指拡幅部が各
指の付け根部の下側と密接できるよう全体がなだらかに湾曲するか明らか
でなく,複数の足指拡幅部間が半円形側面には図示されていない点で相違
する。
エ進歩性
乙19の1公報の図5には,同じ足指用器具に関するものについて,足
指拡幅部の両側面が指の付け根部の下側とフィットするようになだらかに
湾曲している形状が示されている。このことからして,乙19の1の指間
拡幅部の付け根を湾曲にすることは単なる設計事項にすぎず,同付け根を
湾曲にすれば結果として複数の指間拡幅部は半円形側面となるとなるもの
であるから,指間拡幅部の付け根を湾曲にすること及び複数の指間拡幅部
を半円形側面にすることは,当業者がきわめて容易に考案できたものであ
る。
また,乙19の2ないし乙19の6のとおり,足指拡幅部の両側面を各
指の付け根部の下側と密接できるように全体がなだらかに湾曲させ,足指
拡幅部の間を半円形側面にすることは,この出願前に普通に用いられる周
知技術であり,これを適用することは,当業者がきわめて容易に考案する
ことができたものである。また,本件考案の効果も,乙19の1発明から
又は乙19の1発明及び周知技術の事項から予測できる以上のものはない。
(原告らの主張)
ア相違点
乙19の1発明の構成は,連結された指持上板が触球部の上辺から形成
されていないので,本件考案の構成要件④と明らかに異なる。
また,乙19の1発明は,同公報の図9(a)(b)(c)から明らかなように,
水平部の上面及び2ないし4個の指間拡張部の両側面がいずれも平坦であ
り,全体としてなだらかに湾曲しておらず,本件考案の構成要件⑥と明ら
かに異なる。
また,各指間拡張部間はいずれも角張った矩形状であるから,構成要件
⑦とも明らかに異なっている。
よって,本件考案と乙19の1発明は,構成要件④,⑥,⑦において相
違する。
イ進歩性
乙19の1発明及び乙19の2ないし乙19の6に開示された発明は,
いずれも本件考案の構成要件④及び⑥を満たしていないことから,本件考
案が進歩性を有することは明らかである。
(6)争点3(商標権侵害-本件商標と被告標章との類否-)
(原告会社の主張)
ア本件商標における要部は,「toegripper」,「トゥグリッパー」及び
「大山式ボディメイク」である。
被告標章における要部は,いずれも「大山式ボディメイク」である。
被告標章のうち「パッド」は商品の種類を示すものにすぎず,被告標章
2中の「NEW」,「PREMIUM」は,「新しい」「高級な」という
意味を,被告標章3中の「PRO」は「専門的な」ということを,それぞ
れ形容詞的に示すものにすぎず,いずれも識別力を有する部分ではない。
イ被告標章と本件商標の対比
(ア)外観について
被告標章と本件商標の外観が一見同一又は酷似しているということは
困難である。
しかし,両者は,漢字の「大山式」,片仮名の「ボディメイク」とい
うそれぞれの称呼,観念の要部の文字を含む文字部分が,いくつかの段
に分かれて横書きで表されていること,それらの文字はゴシック体様の
非常によく似たフォントによって構成されていることなどの点で共通点
を有している。これに加えて,称呼,観念において類似し,かつ,出所
の混同のおそれがあることに鑑みると,外観の相違だけで,被告標章と
本件商標との類似性を否定する理由とはならない。
(イ)称呼について
被告標章1は,その日本語の文字部分が上下2段に分かれており,上
段には黒字のほぼ正方形の箱状の背景中に「大」「山」「式」の漢字を
それぞれ白抜き字で挿入して表され,下段には白字の四角形の中に「ボ
ディメイクパッド」の片仮名を黒字で表されているものである。したが
って,被告標章1は「オーヤマシキボディメイクパッド」の称呼を生じ
るとともに,上下段に分けられた「オーヤマシキ」「オーヤマシキボデ
ィメイクパッド」の称呼をそれぞれ生じる。そして,これらの称呼中,
「パッド」は「運動用具」の種類を示す普通名詞であるのに対し,「オ
ーヤマシキ」及び「ボディメイク」は造語であり,これらの部分が強い
識別機能を有する。
被告標章2,3は,被告標章1に比べ,背景色や文字色に違いがある
ものの,その称呼については,被告標章1に述べることがそのまま当て
はまる。
他方,本件商標の称呼には,「オーヤマシキボディメイク」「オー
ヤマシキ」「ボディメイク」が含まれる。よって,被告標章の称呼と本
件商標の称呼とが類似することは明らかである。
(ウ)観念について
被告標章は「大山式」「ボディメイク」の部分に強い識別力を有する
ところ,これらの部分については,「大山という方式のボディメイク」
という観念を生じる。他方,本件商標において「トゥグリッパー」は
「toegripper」の表音の表示であり,これらの文字はいずれも造語で
ある。また,「大山式ボディメイク」は造語であるが,「トゥグリッパ
ー」や「toegripper」と結合して特定の観念を生じさせるものではな
い。また,「トゥグリッパー」「toegripper」「大山式ボディメイ
ク」の表示はそれぞれ分離しており,それぞれが別個の観念を生じる。
そして,その中でも特に識別機能が強い「大山式ボディメイク」につい
ては,「大山という方式のボディメイク」という観念を生じる。
そうすると,被告標章と本件商標とは「大山という方式のボディメイ
ク」という点で観念を共通することは明らかである。
ウ出所の混同
原告会社においては,平成24年9月25日に被告が被告商標の出願を
行う前から,本件商標の称呼を利用した,「大山式ボディメイクパッド
toegripper」という商品名で原告商品を販売していた(甲13)。被告
標章は,原告商品に付されていた標章とその要部が酷似している。
また,原告商品は,多くの雑誌等において,商品名「大山式ボディメイ
クパッドtoegripper」,問い合わせ先「有限会社ガルボプランニン
グ」として,前記の標章が付された原告商品写真と共に,何回も紹介され
ており(甲14),発売した平成23年10月から平成26年10月まで
の販売数は約18万個である。
そのため,少なくとも被告商品1の発売時には,需要者の間では,「大
山式ボディメイク」あるいは「大山式ボディメイクパッド」と言えば,原
告会社の商品であると認識されており,さらには,原告商品の標章(被告
標章と,その要部が酷似している)を見れば,原告会社の商品であると認
識されていたのである。
また,原告商品紹介記事(甲14)では,大阪大学名誉教授・医学博士
のP2氏が監修である旨が説明されているものもある。そのため,本件商
標において,「P2教授が監修した方式によるもの」として,「大山式ボ
ディメイク」の部分が高い識別性を備えていたといえる。
さらに,被告は,もともと原告商品を,インターネット内の仮想ショッ
ピングモール「楽天市場」にて販売し,楽天市場にて販売ランキング1位
を獲得したと宣伝していた(甲15)。その後,被告は,原告商品に似せ
た被告商品を製造・販売するようになり,被告商品1について「旧型大山
式ボディメイクパッドの【改良版】」として,販売を行っている(甲1
6)。ここで,「旧型大山式ボディメイクパッド」とは,明らかに以前被
告が販売していた原告商品のことである。このように,被告自身,被告商
品1について,原告商品と出所の混同を生じさせるような表示を大々的に
行った上で,被告商品1を販売しているのである。
以上の事実からすれば,被告が被告標章を付して足指間パッドを販売す
る場合,原告会社が保有する本件商標との間で,商品の出所を誤認混同す
るおそれがあることは明らかである。
エ本件商標権の指定商品は,運動用サポーター,運動用リハビリテーショ
ン用具,運動用保護パッドである。他方,被告商品は,足指パッドであり,
姿勢を補正したり歩行時の衝撃を吸収したりするためのパッドである。し
たがって,本件商標権の指定商品と被告商品とは,商品として類似するも
のである。
被告は,原告商品に付されていた標章と同一の標章について,本件商標
が周知となった後に,敢えて商標出願を行って商標権を取得している(被
告商標,商標登録第5537713号,商標登録5671563号)。
このような被告の商標はいずれも,商標法4条1項10号,15号,1
9号又は7号に該当し,無効事由を有するものである。
(被告の主張)
ア被告標章は,白地の長方形図形を3等分した中に,「大」「山」
「式」の漢字を黒く表し,該白地の長方形図形は,それよりも大きな黒
地の長方形図形の中に3分の2程度埋め込まれたように配されて,該黒
地の長方形図形の中には,図形の半分より下の位置に「ボディメイクパ
ッド」の片仮名を白抜きで表した,図形と文字を組み合わせた構成から
なる。
被告標章は,白地と黒地の長方形との図形にまとまりよく文字が配さ
れているものであって,全体として一体の構成からなる。
また,被告標章の構成文字全体から生じる「オオヤマシキボディメイ
クパッド」の称呼は,一連に称呼できるものであり,構成文字全体をも
って特定の観念を有しない造語を表したものである。
本件商標は,「toegripper」の欧文字と「大山式ボディメイクト
ゥグリッパー」の漢字と片仮名で構成された文字を,上下二段に横書き
してなるところ,上段の「toegripper」の欧文字は,同じ書体,同じ
大きさで外観上まとまりよく一体的に表されているものであり,また,
下段の「大山式ボディメイクトゥグリッパー」は,文字間に空白をも
って表されているとしても,同じ書体,同じ大きさで,外観上まとまり
よく一体的に表されている。
そして,本件商標は,「toegripper」の欧文字が上段に顕著に表示
されていることから,この部分が取引者,需用者に対し,商品の出所識
別標識として強く支配的な印象を与えるものと認められるから,その構
成全体から生じる「トゥグリッパーオオヤマシキボディメイクトゥグリ
ッパー」の称呼を生ずるほか,上段部分から生じる「トゥグリッパー」
の称呼を生じる場合もある。
したがって,本件商標は,構成文字全体をもって特定の観念を有しな
い造語を表したものであり,また,上段部分及び下段部分においても,
特定の観念を有しない造語を表したものである。
被告標章3の「PRO」が識別力を有しないとの主張は争わない。
イ被告標章と本件商標の対比
(ア)外観について
被告標章と本件商標の構成は,それぞれ上記のとおりであって,明
確に相違しており,外観において相紛れるおそれはない。
(イ)称呼について
被告標章から生じる「オオヤマシキボディメイクパッド」の称呼と,
本件商標の全体から生じる「トゥグリッパーオオヤマシキボディメイ
クトゥグリッパー」の称呼とは,その構成音数及び音構成に明らかな
差異を有するものであるから,それぞれの称呼を一連に称呼した場合
において,称呼全体の語調,語感が著しく相違したものとなり,称呼
上互いに紛れるおそれはない。
加えて,被告標章から生じる「オオヤマシキボディメイクパッド」
の称呼と,本件商標の上段部分から生じる「トゥグリッパー」の称呼
とは,その構成音数及び音構成において明らかに相違するものであり,
さらにまた,被告標章から生じる「オオヤマシキボディメイクパッ
ド」の称呼と,本件商標の下段部分から生じる「オオヤマシキボディ
メイクトゥグリッパー」の称呼とを比較しても,その構成音数及び音
構成に明らかに差異を有するものであるから,それぞれの称呼を一連
に称呼した場合においても,称呼全体の語調,語幹が著しく相違した
ものとなり,称呼上互いに紛れるおそれはない。
(ウ)観念について
被告標章と本件商標は,共に特定の観念を生じないものであるから,
観念上相紛れるおそれがない。
(エ)まとめ
被告標章と本件商標とは,外観,称呼及び観念のいずれの点におい
ても,互いに相紛れるおそれはなく,非類似である。
よって,被告標章は本件商標権を侵害するものではない。
ウ原告会社の主張について
(ア)被告は,被告商標1について,本件商標の出願に先立つ平成24年
5月11日に出願し,
る。被告は,この商標権に基づき,足指に嵌めて使用する姿勢補正具
である被告商品に被告標章を付して販売しているにすぎない。
(イ)原告商品の販売数が約18万個になったことは認めるが,原告商品
が売れていたのは,被告によるインターネット上の販売戦略が優れて
いたからであり,被告が,「売れる商品」であった原告商品の出所と
あえて積極的に誤認混同を生じさせて被告商品の販売促進を図った事
実などない。
原告商品と被告商品とは,形状も技術的思想も異なるため,市場に
おいて混同することなく,むしろ被告は,原告商品とは一線を画した
新たな技術的思想に基づく全く別の商品として企画販売したのである。
以上より,被告商標には何らの無効事由も存在しない。
(7)争点4(被告の過失)
(原告会社の主張)
被告は,被告商品の販売開始前,原告会社が製造販売していた本件考案
の実施品である原告商品を原告会社から仕入れて販売していたものであり,
遅くとも,実用新案技術評価書を示した警告後である平成26年6月以降
においては,被告商品の販売により本件実用新案権を侵害することについ
て,少なくとも過失があったというべきである。
(被告の主張)
被告には,被告商品の販売により,本件実用新案権を侵害することにつ
いて過失はない。
すなわち,被告は被告商品を開発するに当たり,原告P1の実用新案権
を侵害しないように配慮し,約1年間の開発期間をかけ,弁理士とも相談
した上で被告商品を開発したものであり,原告商品と被告商品とは,技術
的思想も全く異なる。
仮に被告に過失があるとしても,本件訴訟において,裁判所が侵害論に
ついて判断を示した平成27年5月25日以降に限られるというべきであ
る。
(8)争点5(原告会社の損害額)
(原告会社の主張)
本件実用新案権の独占的通常実施権者である原告会社には,実用新案法2
9条1項の適用又は類推適用がある。よって,原告会社は,同条項に基づき
以下のとおり算定される損害の一部である2億円を損害として請求する。
ア損害賠償請求期間
平成26年6月から平成27年7月までの期間
イ前記期間における被告商品の販売数量
①単品販売分61万5191個
②ムック本分77万6250個
ウ原告商品の単位数量当たりの利益
①単品販売分1個当たり693.5円
(a)原価及び変動費用
・仕入原価78.4円(甲37)
・PETパッケージ費用16円(甲38の1)
・帯ラベル費用3.6円(甲38の2)
・JANコードシール費用1.9円(甲38の3)
・(段ボール)パッケージ費用3.2円(甲38の4,5)
・運送費用2.4円(甲38の6)
以上,原価及び変動費用の合計は,105.5円
(b)販売単価
別紙「トゥグリッパー販売価格」記載のとおりであり,被告によ
る権利侵害始期頃である平成25年7月以降,3か月間の平均販売単
価は,799円である。
(c)利益
799-105.5=693.5円
②ムック本分1個当たり85.6円
(a)原価及び変動費用
・仕入原価78.4円(甲37)
・PETパッケージ費用16円(甲38の1)
以上合計原価94.4円
(b)卸販売単価180円(甲39)
(c)利益
180-94.4=85.6円
エ損害額
①単品販売分(365196+249995)個×693.5円=426634958円
②ムック本分(389150+387100)個×85.6円=66447000円
③合計4億9308万1958円
オ弁護士費用5000万円
カ原告会社の実施能力について
原告会社は,原告商品を海外の別会社に委託して生産しているが,原告
商品は金型さえあれば生産は容易な商品であり,現在の委託会社だけでも
年間100万個以上の生産は可能である。よって,被告商品の譲渡数量に
ついて原告会社が「実施の能力」を有することは明らかである。
原告会社から被告に対する商品供給が不安定であったなどという事実は
ない。資金的な余裕がないという主張も根拠に基づかないものである。
キ販売することができないとする事情について
被告は,原告商品は劣っていて被告商品は優れている,被告は優れた人
脈や販売ノウハウを有していたため,被告商品は多数売れたものと主張す
る。しかし,そうであれば,そもそも原告商品が急激に多数売れることは
なかったといえるし,被告商品の優秀性,被告の人脈,販売ノウハウによ
って商品が多数売れるならば,被告は,原告商品とは別の形状,別の商品
名にて原告商品とは異なる独自の販売方法や市場で被告商品を販売できた
はずである。しかし,実際には,被告は,被告商品を原告商品の後継品で
あるとし,原告商品の技術的知見,構成を踏襲することによって被告商品
を多数販売してきたものであり,必ずしも被告商品の優秀性,被告の人脈,
販売ノウハウによって被告商品が多数売れたものではないことを示してい
る。よって,被告商品の譲渡数量について,原告会社が販売することがで
きないとする事情は存在しない。
①品質の差異
被告が使用しているエラストマーは,安価であることから人体パーツ
の模型として使用されているだけで,医療用としては使用されていない。
原告商品に使用されているシリコンは,医療,食品,化粧品など多岐に
利用されており,整形手術などで人の体内にまで使用されている最も安
全な素材で高品質な商品である。
②資力
原告会社の資力に問題がないのは前記のとおりである。
被告が主張する広告費の数字の真偽やその内容については明らかでな
い。また,商品の販売に際して,売上額に対して一定割合の広告費を支
出するのは通常のことである。
被告がテレビ,ラジオ,雑誌,新聞広告,ラウンダーに費用を支出し
出したのは平成26年8月頃以降である。被告は,平成25年6月から
平成27年8月で約13億円の売上げを上げたとしているが,平成26
年8月までの間でそのうちの4億円以上の売上げを上げているのであり,
被告による販促広告の結果被告商品が多数販売されるようになったので
はなく,被告が事後的に売上げの一定割合を販促広告活動費用にかけて
いるにすぎない。また,販促広告費とする中で,ウェブ関係費用におけ
るRMSシステム料が合計1億1717万4152円と大きな割合を占
めているが,これは,楽天のネット販売ページから顧客が商品を購入し
た場合に,販売額に応じて出店者がシステム利用料として販促費ととも
に支払う販売手数料であり,純然たる販促広告費とはいえない。
③人脈
原告会社は,被告よりも先に,宝島社からムック本販売をしている
(甲36の3)。
P2に原告商品の監修を依頼することになったのは原告会社代表者の
人脈によるものであり,被告は,原告商品の「売れる商品」の地位を被
告商品に取って代えるために,後からP2を引き抜いたにすぎない。
P2は被告代表者がイメージキャラクターへの起用を想起し,オフィ
スサイキのP3氏に依頼して紹介してもらったものと主張しているが,
これらは全て事実に反する。乙42のP3氏の陳述書の内容も虚偽であ
る。
④販売ノウハウ
原告商品のネーミングについては,被告からのアドバイスを参考にし
て原告らが商品名を採用したことはあったが,その他の凸状部の形状や
P2のイメージキャラクターとしての起用は被告のアドバイスに基づく
ものではない。また,原告商品は,インターネット通販での販売数を伸
ばし,何回にもわたって楽天での売上ランキング1位を獲得しているの
であって,原告商品につきインターネット通販での販売数を伸ばすこと
ができないような事情はない。
⑤原告商品の販売数量
原告会社は,平成25年8月ないし11月において,1か月1万50
00個程度の原告商品の製造販売を行っていた。また,平成23年10
月から平成26年10月までの原告商品の販売数は約18万個である。
被告が主張する原告会社が被告を介さないで販売した原告商品の個数
は,どこから算出された数字か全くわからず,その前提からして理由が
ない。被告が販売を開始してから原告商品の販売個数が減少したのは事
実であるが,これは被告が原告商品を違法商品・非正規品であるとして
攻撃するとともに,正規品であった原告商品の正当な後継品は被告商品
のみであるとして,原告商品がそれまで有していた「売れる商品」にあ
った地位を,被告商品に取って代えようとした不正競争行為の結果を原
告会社が被ったからである。
(被告の主張)
原告P1が原告会社に対して本件実用新案権について無償で独占的通常実
施権を設定していること,及び原告会社の実施行為が本件実用新案権に基づ
く独占的なものであるかは不知。
ア損害賠償請求期間
起算日は,裁判所が過失について判断を示した平成27年5月25日以
降であるべきである。
イ販売数量
別紙被告商品販売数量推移表のとおりである。
ウ単位数量当たりの利益
不知。
エ損害額
争う。
オ弁護士費用
争う。
カ原告会社の実施能力
原告会社が被告に対して製品を卸していた当時,原告会社は生産が間に
合わないという理由で一方的に被告への出荷を停止し,値上げを要求して
きたことがあった。安定的な製造を確保するには,製造元に対して注文個
数に見合った代金を商品販売完了前に支払う必要があるが,原告会社には,
商品の売上金が入金される前に多額の代金を支払う資金的余裕がなく,大
量の発注をする能力もない。
原告会社代表者は,被告代表者に対し,「販売はあまりしてもらは無く
て結構です。出来ましたら月に1000個未満でお願いします」などとい
うメールを送信しており(乙31),大量生産が困難なことを表している。
実際にも原告会社は,多く見ても,1か月に1000個程度の商品を販
売しているにすぎない。(甲40)
キ販売することができない事情
①品質の差異
原告商品には,歩くと足裏から外れやすいという致命的な問題がある。
また素材の点でも,原告商品は中国工場で製造されたシリコン製であ
るが,被告は,医療用器具の製造を主たる事業とする工場において,医
療用エラストマーを素材に用いており,商品の装着感や耐劣化性の点で
大きな差を有している。
②資力
被告は,商品の知名度を上げるためにテレビCMを含む様々な広告を
行っており,広告費の合計は2億円を超えるものであるが,原告会社に
はこれだけの費用を捻出する資金的余裕はない。
③人脈
被告製品の売上げの増加は,主婦の友社のムック本によるところが大
きい。
これに対して原告会社もムック本で販売しているが,その販売数量は
僅少である。この販売数量の差異は,被告代表者の人脈を駆使した多大
な営業努力をもって,主婦の友社に被告商品を売り込むことに成功した
ことが大きな要素である。また,被告は,代表者の人脈を生かし,ドラ
ッグストアの店頭販売にも成功した。さらに,テレビCMの枠を人脈に
より相場の半額程度で購入できたため,多くのCMを流すことができた。
また,同じく人脈によって,テレビ番組の中で被告商品の特集が放送さ
れることにもなった。
④販売ノウハウ
被告が原告商品を販売していた当時,被告は原告会社に対して,凸状
部の形状の提案や,P2のイメージキャラクターとしての起用など様々
なアドバイスを行ったものであるが,原告会社には,これらを想起する
ノウハウはない。また,被告は,インターネット通販の際にメール便を
使用できるように,商品の外箱の厚みを発送可能な2センチメートル以
下に設計している。被告代表者は,インターネット販売の強力なノウハ
ウを有しており,他にも,ネーミングやパッケージのセンス等により,
被告商品は原告商品とは圧倒的な差を有するものとなっており,被告代
表者のこれらモノを売るノウハウによって,被告は販売個数を伸ばして
きたのである。
⑤原告商品の販売数量
原告会社は,平成23年10月から平成26年10月までの原告商品
の販売数は約18万個であると主張する。しかし,原告会社が被告を介
さずに販売した原告商品の個数は,平成24年11月から平成25年3
月までの5か月間で約5530個であり,これによれば,平成23年1
0月から平成26年10月までの販売個数は4万0922個にすぎず,
原告会社の主張する18万個の3分の1以下にすぎない。さらに,平成
24年8月頃までに,原告会社は,被告に対する原告商品の販売を渋る
ようになり,競業他社に対して卸販売を開始して以降,原告会社の販売
個数は減少している。
被告が平成25年8月,原告商品の販売店に対して「大山式ボディメ
イクパッド」のロゴ使用を続けると商標権侵害となることなどを通知し
たこと,被告が楽天に対して原告商品の販売中止の指導を行うよう通知
し,楽天が各店舗に対して原告商品の販売中止の指導をしたことは認め
る。
第3当裁判所の判断
1争点1-1(被告商品は,本件考案の構成要件を文言上充足するか。)につ
いて
(1)本件考案について
本判決添付の登録実用新案公報に係る本件明細書の記載によれば,本件考
案は,主として直立した際の姿勢と歩行障害を改善するために,足の横アー
チを形成し,かつ縦アーチを維持することで歩行時の衝撃を少なくする足先
支持パッドを提供することを目的としており(【0006】),そのために,
足指の付け根部の下側に嵌め込み,柔軟で弾性を有する素材の足先支持パッ
ド(構成要件①ないし③)において,水平部を足裏における触球部の上辺か
ら少なくとも第2指,第3指,第4指,小指の指頭部下辺までの間に配置さ
せること(構成要件④)により,装着状態において,第2指,第3指,第4
指の指頭部と付け根が浮き上がり,親指及び小指の指頭部と付け根,踵部の
3点で体重を支えることになり,横アーチが形成され,同時に土踏まずを意
味する縦アーチを維持することができ,足指で踏ん張って直立及び歩行する
ことができるようにしたものであると認められる(【0009】,【002
7】ないし【0030】)。
そしてまた,本件考案では,少なくとも第2指と第3指との間,第3指と
第4指との間,第4指と小指との間にそれぞれ入り込む第1,第2及び第3
凸状部が設けられ(構成要件⑤),少なくとも第1及び第2凸状部が高さ方
向に長く延びて,第2指と第3指との間及び第3指と第4指との間で足裏に
保持されること(構成要件⑦)により,歩行時などに足から脱離することが
なく(【0019】,【0021】),また,第1と第2凸状部間及び第2
と第3凸状部間は半円形側面になり(構成要件⑦),パッド水平部の上面及
び3個のパッド凸状部の両側面が全体になだらかに湾曲して,各指の付け根
部の下側と密接する(構成要件⑥)ものとされている(【0020】)と認
められる。
(2)装着していない状態における被告商品の構成は,前記第2の2(前提事
実)(6)記載のとおりである。本件においては,被告商品が本件考案の構成
要件①,④,⑤,⑥,⑦を充足するか否かについて争いがあることから,こ
れらについて以下検討する。
ア構成要件①の充足性
前記の本件考案の技術的意義からすると,本件考案の構成要件①の「足
指の付け根部の下側に嵌め込み」とは,装着した状態の足先支持パッドが,
横アーチを形成し縦アーチを維持するとの作用を奏する前提として,身体
のうち,足指の付け根部の下側に嵌め込まれた状態になるということを示
したものと解するのが相当である。
そして,証拠(甲3,甲10)によれば,被告商品は,装着時において,
足指の付け根部の下側に密着した状態となることが認められ,この状態は,
被告商品が「足指の付け根部の下側に嵌め込」まれた状態ということがで
きることから,被告商品は,本件考案の構成要件①を充足する。
この点について,被告は,前提事実(6)記載の被告商品の構成Aのとお
り,被告商品は嵌合リングに足指を挿入することにより装着するものであ
って,足指の付け根部の下側に嵌め込むものではないことから,被告商品
は,構成要件①を満たさないと主張する。しかし,構成要件①は,前記の
とおり,装着した状態の足先支持パッドが,横アーチを形成し縦アーチを
維持するとの作用を奏するために,身体のうち,足指の付け根部の下側に
嵌め込まれた状態になることを意味するにとどまり,それ以上に具体的な
装着方法を規定するものではないから,被告の主張は採用できない。
イ構成要件④の充足性
(ア)構成要件④では,足先支持パッドの「水平部」について特定されて
いるところ,まず,被告商品が「水平部」を有するか否かについて検
討する。
ドは,「水平部」と「第1,第2,第3凸状部」から形成されている。
そして,「水平部」は,「足裏における触球部の上辺から少なくとも第
2指,第3指,第4指,小指の指頭部下辺までの間に配置させる」もの
であり(構成要件④),その上面が「各指の付け根部の下側と密接でき
るように全体がなだらかに湾曲し」ているものである。
そしてまた,「水平部」に関し,本件明細書【0008】には,「パッ
ド水平部の下面は平坦であり」と記載されているほか,本件明細書の
【0018】では,「横方向の一方では親指18の下側まで達するよう
に延長してもよい。」とされている。
これらのことに,前記(1)で述べた本件考案の技術的意義を考慮する
と,「水平部」とは,足先支持パッドのうち,「第1,第2,第3凸状
部」を除いた部分で,装着した状態で足指の付け根部の下側に位置する
下面の平坦な形状の部位をいい,親指の下側まで延長してもよいものを
いうと解するのが相当である。
前提事実(6)記載の被告商品の構成Dでは,「足裏における第1指か
ら第4指の付け根から指頭部下辺までの間に配置させる,両端を上方に
湾曲させた基礎部」とされている。この基礎部は,両端を上方に湾曲さ
せたものであるが,そのうち親指側の上方湾曲部分は本件考案に付加し
た構成にすぎず,第4指側の上方湾曲部分は,後記構成要件⑤について
の検討のとおり,第3凸状部に相当する部分であるから,いずれも本件
考案の「水平部」に相当するものではない。そして,それらを除いた
「基礎部」は,足指の付け根部の下側に位置する部位であるといえる。
また,被告は,被告商品の下面は各指ごとにわずかに湾曲した形状で
あると主張するが,上記のように「水平部」の下面が平坦な形状とされ
ているのは,本件明細書の図3のとおり,それが接地面となるためであ
るから,完全な平坦形状である必要はなく,横アーチの形成及び縦アー
チの維持を阻害しない限り,多少の湾曲があるものも含まれると解する
のが相当である。そして,証拠(甲10)及び弁論の全趣旨によれば,
被告商品の基礎部のうち,上方に湾曲させた両端を除いた部分の下面の
湾曲はわずかであり,横アーチの形成及び縦アーチの維持を阻害するも
のでもないと認められる。また,証拠(甲10の20頁)には,「足指
パッドの装着感としては,足指のつけ根と床のすき間がなくなり,地面
に足裏全体がフィットしている感覚が正解」などと記載されており,装
着時においても同様であると認められる。
よって,被告商品は「水平部」を有するものと認められる。
(イ)次に,被告商品の「水平部」が,「足裏における触球部の上辺から少
なくとも第2指,第3指,第4指,小指の指頭部下辺までの間に配置」
されるか否かにつき検討する。
前記(1)の本件考案の技術的意義からすると,この構成要件は,足先
支持パッドが足の付け根部の下側に装着される具体的態様を特定したも
のと解するのが相当である。
そして,前記のとおり,前提事実(6)記載の被告商品の構成Dでは,
非装着時における構成として,「足裏における第1指から第4指の付け
根から指頭部下辺までの間に配置させる,両端を上方に湾曲させた基礎
部」とされている。これによれば,被告商品は,構成要件④のうち,
「足裏における触球部の上辺から少なくとも第2指,第3指,第4指…
の指頭部下辺までの間に配置」との部分は充足するが,「小指の指頭部
下辺までの間に配置」との部分を充足しないこととなる。
この点について,原告らは,構成要件④は装着時の構成をいうもので
あるとした上で,装着時においては,被告商品の基礎部の第4指側の嵌
合リングが変形して小指の指頭部下辺まで達すると主張する。
しかし,まず,甲9の1及び2はパイプを用いた加重実験であって,
実際の装着状況を実験したものではない。また,甲9の3及び甲29の
裸足での加重テストは,人体に装着して起立した状態における実験であ
るが,そこでは,被告商品の第4指の嵌合リングが加重によって変形し,
小指の側面に接した状態となることが認められるものの,小指の指頭部
下辺まで到達しているとは認められない。また,甲29の靴を履いた状
態での加重テストでは,小指の指頭部下辺近くまで到達しているように
も見えるが,各指が靴型の内部で圧迫されて変形していることによると
認められ,それが通常の状態であるとまで認めるには足りない。
そして,他に,装着時において,被告商品の第4指嵌合リングの変形
部が,小指の側面を越えて,小指の指頭部下辺にまで達するものと認め
るに足りる的確な証拠はない。
したがって,いずれにしても,被告商品は,本件考案の構成要件④の
うち,「小指の指頭部下辺までの間に配置」との部分を充足せず,その
余を充足する。
ウ構成要件⑤の充足性
(ア)本件発明の構成要件によれば,「第1,第2および第3凸状部」は,
「少なくとも第2指と第3指との間,第3指と第4指との間,第4指と
「各指の付け根部の下側と密接できるように全体がなだらかに湾曲し」
(構成
延びることにより,第1と第2凸状部間および第2と第3凸状部間は半
円形側面になり,第2指と第3指との間および第3指と第4指との間で
足裏に保持される」
これらの構成からすると,「第1,第2および第3凸状部」は,それ
ぞれ第2指と第3指との間,第3指と第4指との間,第4指と小指との
間に入り込み,少なくとも第2指から第4指で第1及び第2凸状部が挟
持されることにより足先支持パッドが足裏に保持される部位であると認
められる。
前提事実(6)のとおり,被告商品の構成Eは,「第1指に嵌合する大
径の嵌合リングと第2指と第3指に入り込む突出部と第4指に嵌合する
小径の嵌合リングとからなり」というものである。
そうすると,第4指に嵌合されるリングの両側面部分は,それぞれ第
3指と第4指の間,第4指と小指の間に入り込み,挟持されるものであ
るから,それぞれ本件考案の第2及び第3凸状部に相当するものと認め
られ,前記突出部は第2指と第3指の間に入り込み,挟持されるから,
本件考案の第1凸状部に相当するものと認められる。
よって被告商品は,本件考案の構成要件⑤を充足する。
(イ)この点について,被告は,被告商品には第2及び第3凸状部が存在し
ないと主張する。
しかし,前記のとおり,第4指に嵌合されるリングの両側面部分は,
それぞれ第3指と第4指の間,第4指と小指の間に入り込み,挟持され
るものであるから,それぞれ本件考案の第2及び第3凸状部に相当する
といえ,上記嵌合リングのその余の部分(第4指の上面に位置する部
分)は,付加的な構成にすぎない。被告は嵌合リングによって足指パッ
ドが外れにくくなる作用効果を有すると主張するが,第4指に嵌合され
るリングの両側面部分は,それぞれ第3指と第4指の間,第4指と小指
の間に入り込むものであり,嵌合リングの第3指側の側面部分は,第3
指及び第4指によって挟持されると認められる(甲10の装着状況の写
真から明らかである。これと対比すると,乙4の装着状況の写真は,不
自然に各指が開いており,通常の装着状況とは認められない。)から,
被告がいう作用効果は,本件考案に付加的なものにすぎず,それがある
からといって,被告商品の嵌合リングの両側面部分が本件考案の「第2,
第3凸状部」に該当しないとはいえない。
また,被告は,このように嵌合リングの上辺部分を付加的なものとし
て捨象して考えるのであれば,本件考案が実用新案登録第311255
3号(乙2)に係る考案に基づいて新規性又は進歩性が欠如すると主張
する。しかし,乙2では,本件考案の「水平部」に相当する「土台部2
0」は,「連環部10の各輪10a,10b,10cを各指に嵌めた状
態で地面を踏んだとき,各指と地面との間にできる空間を埋める形状,
及び大きさに形成されており」(【0011】)と記載されているにと
どまり,装着状態を示す図2(b)を見ても,土台部20が,「足裏に
おける触球部の上辺から少なくとも第2指,第3指,第4指,小指の指
頭部下辺までの間に配置させる」(本件考案の構成要件④)ものである
ことや,それにより横アーチを形成し,縦アーチを維持することは何ら
開示も示唆もされていないから,被告の上記主張は採用できない。
(ウ)また,被告は,「凸状部」は,飛行機の尾翼のような形状である必要
があるから,被告商品には「凸状部」は存在しないと主張する。
本件明細書の【0022】には,「各凸状部3,4,5は,図4から
明らかなように,飛行機の尾翼のようにわずかに後方へ傾いた側面形状
であ」ると記載されている。しかし,これは実施例の記載にすぎず,請
求項においては凸状部の形状の限定がなく,機能的にも,各指の間に入
り込んで挟持され,足先支持パッドが足裏に保持されるものであれば足
りると解される以上,凸状部について尾翼状の形状に限定されるものと
解することはできない。被告は,構成要件⑥において「凸状部の両側面
は,各指の付け根部の下側と密接できるように全体がなだらかに湾曲」
している必要があるとされており,そのためには凸状部が飛行機の尾翼
のようにわずかに後方に傾いた側面形状である必要があるとも主張する
が,構成要件⑥における前記構成を満たすに必要な形状は,凸状部を飛
行機の尾翼のようにわずかに後方に傾いた側面形状とする構成に限定さ
れると認めるには足りないことから,請求項にその構成の記載がない本
件において,被告の主張を採用することはできない。
エ構成要件⑥の充足性
前記のとおり,前提事実(6)記載の被告商品の構成Fでは,非装着時に
おける構成として,「前記基礎部の上面,前記両嵌合リングの内側面及び
外側面,並びに前記突起部の両側面は,第1指から第4指の付け根部の下
側と密接できるように全体がなだらかに湾曲し」とされている。これによ
パッド水平部の上面および3個
のパッド凸状部の両側面は,第1指から第4指の付け根部の下側と密接で
きるように全体がなだらかに湾曲し」との部分を充足するが,「小指の付
け根部の下側と密接できるようになだらかに湾曲し」との部分を充足しな
いこととなる。
また,装着した状態においても,先に構成要件④の充足性において検討
したとおり,加重により変形した嵌合リングが小指の側面を越えて小指下
側にまで達すると認めることはできないことから,やはり「小指の付け根
部の下側と密接できるようになだらかに湾曲し」との部分を充足するとは
認められない。
したがって,いずれにしても,被告商品が,小指の付け根部の下側と密
接できるようになだらかに湾曲した構造を有していると認めることはでき
ないことから,被告商品は,本件考案の構成要件⑥のうち,「小指の付け
根部の下側と密接できるようになだらかに湾曲し」との部分を充足せず,
その余を充足する。
オ構成要件⑦の充足性
前提事実(6)のとおり,被告商品の構成Gは,「少なくとも第1指と第
4指の嵌合リングに第1指と第4指を挿入することによって足裏に保持さ
れる指足間パッド」である。
ところで,被告商品の突出部が本件考案の「第1凸状部」に,第4指に
嵌合されるリングの第3指側の側面が本件考案の「第2凸状部」に該当す
るのは前記のとおりである。
そして,証拠(甲10)によれば,被告商品において,「第1凸状部」
に該当する突出部及び「第2凸状部」に該当する嵌合リング側面が高さ方
向に長く延びていること,「第1凸状部及び第2凸状部間」,「第2凸状
部及び第3凸状部間」に該当する部分が半円形側面になっていることを認
めることができる。
また,被告商品においては,嵌合リングの一部に当たる,「第2凸状
部」に該当する嵌合リング側面が,被告商品を足裏に保持することに貢献
しているのは前記のとおりである。
そして,これに加え,被告商品の紹介文(甲10の10頁)において,
「突起が3.5mm長くなり指からはずれにくくなった」などと,突出部
が指に密着することを想定したものであることをうかがわせる記載がある
ことに弁論の全趣旨を総合すると,「第1凸状部」に該当する被告商品の
突出部も,第2指及び第3指の間に入り込み,両指に挟まれる状態となる
ことにより,被告商品の足裏への保持に関与しているものと認められる。
よって,被告商品は,構成要件⑦を充足する。
(3)以上より,被告商品は,本件考案の構成要件①ないし③,⑤,⑦を文言上
充足するが,構成要件④及び⑥の一部(水平部が小指の指頭部下辺まで至り,
水平部の上面及び第3凸状部の側面が小指の付け根部の下側と密接できるよ
うになだらかに湾曲していること)を文言上充足すると認めることはできな
い。
2争点1-2(被告商品は,本件考案と均等なものとしてその技術的範囲に
属するか。)について
(1)実用新案登録請求の範囲に記載された構成中に対象製品の構成と異なる部
分が存在する場合であっても,①その部分が当該考案の本質的部分ではなく,
②その部分を対象製品におけるものと置き換えても,当該考案の目的を達す
ることができ,同一の作用効果を奏するものであって,③そのように置き換
えることに当業者が対象製品等の製造等の時点において容易に想到すること
ができたものであり,④対象製品等が当該考案の出願時における公知技術と
同一又は当業者がその出願時に容易に推考できたものでなく,⑤対象製品等
が考案の範囲から意識的に除外されたものに当たるなどの特段の事情もない
ときは,当該対象製品は,当該実用新案登録請求の範囲に記載された構成と
均等なものとして,その技術的範囲に属すると解される。
(2)第1要件(非本質的部分性)
ア前記1(1)で述べた本件考案の技術的意義からすると,本件考案の本質
的な作用効果は,足先支持パッドを足の付け根部下側に嵌め込んで,第2
ないし第4指の指頭部と付け根を浮き上がらせて横アーチを形成し,土踏
まずを維持して縦アーチを維持し,親指及び小指の指頭部と触球部,踵部
の3点で身体を支える点にあると認められる。
そして,第2ないし第4指の指頭部と付け根部を浮き上がらせるために
は,本件考案の構成要件④のうち,それらの指の触球部の上辺から指頭部
下辺までの間にパッドを嵌め込むことは必須であるが,親指及び小指は,
接地して身体を支えるのであるから,それらの指の触球部の上辺から指頭
部下辺までの間にパッドを嵌め込むことは,上記の作用効果を奏する上で
必須のものとはいえない。この点は,親指については,請求項1において,
「少なくとも」第2指,第3指,第4指,小指の指頭部下辺までの間に配
置させる水平部(構成要件④)とされており,本件明細書の【0018】
でも「横方向の一方では親指18の下側まで達するように延長してもよ
い。」とされていることから,パッドの水平部が親指の付け根部の下側に
まで達することが本件考案の作用効果上必須のものでないことが明らかに
されているが,パッドの水平部が小指の付け根部の下側にまで達するか否
かについても,同様であると解するのが相当である。
よって,本件考案の構成要件④と被告商品の構成との差異である,パッ
ドの水平部が小指の指頭部下辺までの部分に達しているか否かという点は,
本件考案の作用効果を基礎づける本質的部分に属する相違点ではないとい
うべきである。
イまた,本件明細書【0007】及び【0020】の記載からすれば,本
件考案における水平部の上面及び第3凸状部の側面の小指側の湾曲は,そ
れによって,パッドを足指に密着させる作用を有しているものと認められ
る。
この点,パッドを足指に密着させるとの観点からすれば,パッドが小指
の指頭部下辺まで達する構造となっている場合においては,小指の下側と
も密着できるようなだらかに湾曲している必要があるが,パッドの水平部
が小指の指頭部下辺まで達しているか否かが本件考案の作用効果において
本質的部分ではない以上,パッドが小指の指頭部下辺まで達していない場
合においては,パッドが存在する部分までの限度で,小指に密着できるよ
うなだらかに湾曲していれば足りるというべきである。よって,本件考案
と被告商品との差異である,小指の付け根部下側と密接できるよう,パッ
ドがなだらかに湾曲しているか否か,という点も,本件考案の作用効果を
基礎づける本質的部分に属する相違点ではないというべきである。
ウしたがって,構成要件④及び⑥の一部(水平部が小指の指頭部下辺まで
至り,水平部の上面及び第3凸状部の側面が小指の付け根部の下側と密接
できるようになだらかに湾曲していること)に係る差異は,本件考案の固
有の作用効果を基礎づける本質的部分に属するものではないというべきで
ある。
(3)第2要件(置換可能性)
被告商品は,その紹介文(甲10の12頁,17頁)において,「足指パ
,拇指球の3点で重心を
支えられるように」との記載や「土踏まずを形成しているアーチ(縦アー
チ)を形成」との記載があることから,その技術的思想の本質部分は,本件
考案と同一である。
前記紹介文の記載に弁論の全趣旨を総合すると,パッドの水平部が小指の
指頭部下辺までの部分に達していない場合であっても,第2指ないし第4指
の指頭部と付け根を浮き上がらせて横アーチを形成すること及び土踏まずを
維持して縦アーチを保持することが可能であると認められる。
また,第3凸状部の小指側の湾曲についても,前記紹介文の記載に弁論の
全趣旨を総合すると,前記の構成要件⑥に係る差異があっても,縦横アーチ
を形成することが可能であると認められる。
そうすると,前記相違点に係る構成要件④及び⑥の構成を被告商品の構成
に置き換えても,本件考案と同一の作用効果を奏するものと認められる。
(4)第3要件(置換容易性)
被告商品は,水平部を第4指の指頭部下辺まで設置するものの,「小指の
指頭部下辺」まで延長しない構成となっており,それに伴い,第3凸状部の
片側面が,小指の付け根部の下側と密接できるようなだらかに湾曲した構成
を備えないものとなっている。
しかし,被告商品におけるこれら構成は,横アーチの形成や縦アーチの
維持に直接関係しない小指部分について,パッドの水平部を短くし,それ
に連動して凸状部のうちなだらかに湾曲させる部分が限定されたものにす
ぎず,この点で相違していても本件発明の作用効果を奏することは自明で
あり,この相違による独自の作用効果が存するとも認められない。したが
って,本件考案の構成要件④及び⑥と被告商品との差異に係る部分を,そ
れぞれ被告商品の構成に置き換えることについては,当業者が対象製品等
の製造等の時点において容易に想到することができたというべきである。
(5)第4要件及び第5要件については,均等の成立を争う側において,対象製
品等が公知技術から容易に推考できたものであることや,対象製品等が考案
の範囲から意識的に除外されたものに当たるなどの特段の事情の主張立証責
任を負うと解するべきところ,本件ではこれらについて主張立証はない。
(6)以上より,被告商品は,本件考案と均等なものとしてその技術的範囲に属
するということができる。
3争点2-1(本件考案に係る新規性欠如(本件考案は,本件実用新案登録出
願前に頒布された乙17の1明細書に記載された乙17の1発明と同一である
か。))について
(1)ア乙17の1明細書には,次のような記載がある(乙17の1。なお,図
面については別紙乙17の1図面参照)。
「本発明は,つま先矯正法の改良に関するものであり,また,足のつま
先の痙攣やズレに直接起因する一定の症状を改善,解放するためのつま先
拡大具(つま先スプレッディング器具)に関するものである。」
「本発明の第1の対象および目的は,装着者の足指の間にフィットし,
つま先を広げて,痛みを伴うヒトの足のつま先の摩擦,発汗,こむら返り
を無くすように設計された,簡単で,効果的かつ快適な器具を提供するこ
とにある。」
「本発明の器具は,指の間を広げるセパレータ(2)を形成するソフトな
スポンジゴムまたはその他の弾性材料でワンピース成形されたベース(1)
で構成される。このベースは,母指球の下側までは延びない状態で,縦方
向では足の指の下側に平らに広がり,横方向では母指球が良好に収まるよ
うになっているのが好ましい。」
「つま先を広げるセパレータ(2)はヒトが足のつま先の指の間に装着し,
ベース(1)の上に十分に乗り,指が互いに完全に分離されるような配置に
なっている。セパレータの横側(3)は前方エッジ(4)および後方エッジ(5)
の所で次第に合流して装着者が不快に感じる鋭いエッジとならないように
作られている。」
「以下に対して特許証を請求する。
1ベースと,このベースに固着されるか,それと一体成形された各端部
が互いに分離している実質的に垂直な4つのフラップ,セパレータまた
はウェッジとを組み合わせた上記の特徴を有するつま先スプレッダー。
2足のつま先の端部と足の母指球との間で,つま先の下側のヒトの足の
形状に一致した上記の特徴を有するつま先スプレッダー
3各足の指の間および足の指と母指球の間の隙間の所で足の形状に合う
ようにされた一つのブリッジで構成される上記の特徴を有するつま先ス
プレッダー。
4全ての人の足のサイズに合う全サイズに作ることができ,装着者に快
感を与え,つま先を伸ばし,足指間の刺激を防ぎ,足指間の白斑形成を
防ぎ,自然の発汗を可能にする上記の特徴を有するつま先スプレッダ
ー。」
イ前記アの記載及び証拠(乙17の1)及び弁論の全趣旨によれば,乙1
7の1明細書には次の構成の発明が記載されているものと認められる。
(a)足指の付け根部の下側に嵌め込み,柔軟で弾性を有する素材のつま先
スプレッダーである。
(b)ベースは母指球の下側にまでは延びない状態で,縦方向では足の指の
下側に平らに広がり,横方向では母指球が良好に収まるようになってい
るのが好ましい。
(c)つま先を広げるセパレータ(2)はヒトが足のつま先の指の間に装着し,
ベース(1)の上に十分に乗り,指が互いに完全に分離されるような配置
になっている。
(d)足のつま先の端部と足の母指球との間で,つま先の下側のヒトの足の
形状に一致した形状又は各足の指の間及び足の指と母指球の間の隙間の
所で足の形状に合うようななだらかな形状となるように作られている。
(e)各セパレータが高さ方向に長く延びることにより,各セパレータ間が
半円形側面となり,第2指と第3指,第3指と第4指との間で足裏に保
持されるつま先スプレッダー
ウ本件考案と乙17の1発明との対比
(ア)上記のうち,本件考案の構成要件①,②,③と,乙17の1発明の構
成(a),本件考案の構成要件⑤と乙17の1発明の構成(c),本件考案の
構成要件⑦と乙17の1発明の構成(e)が一致すると認められる。
(イ)また,本件考案の構成要件⑥と乙17の1発明の構成(d)を対比す
ると,乙17の1明細書の「足の形状に合うような」との記載及び乙1
7の1明細書のFig.2(FrontElevation)からすれば,乙17の1発
明のスプレッダーも,本件考案と同様に,ベース(パッド水平部)の上
面及びセパレータ(凸状部)の両側面が全体としてなだらかに湾曲した
形状となっており,各指の付け根部の下側と密接できるような構造とな
っていることが認められる。
よって,本件考案の構成要件⑥と乙17の1発明の構成(d)は一致
する。
(ウ)しかし,本件考案の構成要件④と乙17の1発明の構成(b)を対比す
ると,本件考案の構成要件④においては,足先支持パッドの水平部を,
足裏における触球部の上辺から少なくとも第2指,第3指,第4指,小
指の指頭部下辺までの間に配置させるとしているのに対し,乙17の1
発明の構成(b)では,つま先スプレッダーのベースを各指の指頭部下辺
までの間に配置させるのか否かが明らかではない点で相違すると認めら
れる(相違点)。
この点について,被告は,本件考案の「指頭部下辺まで」とは,足指
の「指の先端部の下あたり」までであり,多少でも足指先が突出してい
ればよいとした上で,乙17の1発明のつま先スプレッダーは,各指の
指頭部下辺までの間に配置されていると主張する。
本件考案の「指頭部下辺」が,「指頭部」の「下辺」を指すことは文
理上明らかであり,「指頭部」とは,「指頭」すなわち指先(乙21)
の部分を指すことからすると,「指頭部下辺」とは,指先部分の下辺を
意味すると解されるが,これだけではその具体的意味は必ずしも明らか
でない。そこで,本件明細書の記載を見ると,足先支持パッドは,「足
指の付け根部の下側空間6(図3参照)内に装着」するものとされ
(【0017】),そのとき,「水平部2の前側縁13は,各足指の指
頭部の下側に達しないように平面凹凸状に湾曲している」(同),「パ
ッド水平部2の各上面20は,各足指の付け根部の下側と接触し,図4
では第3指12の付け根部の下側と接触して若干持ち上げる。」(【0
023】)とされており,図2及び図4では,水平部の前側縁が各指の
指頭部の最も厚みのある部分に位置していると認められる。これらのこ
とからすると,本件考案の「指頭部下辺」とは,足指の付け根部分の裏
側の窪んだ空間の前側縁である,指頭部の最も厚みのある部分を意味す
ると解するのが相当であり,被告が主張するように,多少とも指先が突
出していればよいと解することはできない。
他方,乙17の1明細書の記載を見ると,Fig.3(左側が前方に当た
る。)では,斜線で描かれたベースの断面形状において,最も厚みのあ
る部分から前方の部分の長さが比較的短いことから,ベースの前側縁が
指頭部の最も厚みのある部分の辺りに位置するようにも思われる。しか
し,Fig.2(Plan)を見ると,ベースの最も厚みのある部分から前方部
分の長さが比較的長く描かれているから,必ずしも上記のように断定す
ることはできない上,むしろ,Fig.1の実測に基づいて作成した甲50
の図面によれば,ベースの前側縁が指頭部の最も厚みのある部分よりも
前方に位置する結果が示されている。また,乙17の1明細書では,特
許証の請求の3項では,「足の指と母指球の間の隙間の所で足の形状に
合うようにされた」とされている一方,同2項においては,「足のつま
先の端部と足の母指球との間で,つま先の下側のヒトの足の形状に一致
した」と記載されており,両者の異同は判然とせず,むしろ2項の文言
は甲50のような形状に沿うものである。これらの点からすると,乙1
7の1発明において,つま先スプレッダーのベースを各指の指頭部下辺
までの間に配置させるのか否かは明らかではないというべきである。
エ以上より,本件考案と乙17の1発明とを対比すると,前記相違点が存
在することから,本件考案は,新規性の欠如により無効とすべきものとは
認められない。
4争点2-2(本件考案に係る進歩性欠如(本件考案は,乙17の1発明に基
づいて当業者がきわめて容易に考案することができたものであるか。))につ
いて
(1)前記のとおり,本件考案においては,足先支持パッドの水平部を,足裏に
おける触球部の上辺から少なくとも第2指,第3指,第4指,小指の指頭部
下辺までの間に配置させるとしているのに対し,乙17の1発明の構成(b)
においては,つま先スプレッダーのベースを各指の指頭部下辺までを限度と
する空間に配置させるのか否かが明らかではない点で相違する。
前記認定のとおり,本件考案は,パッドを足の付け根部下側に嵌め込むこ
とにより,第2ないし第4指の指頭部と付け根を浮き上がらせて横アーチを
形成し,土踏まずを維持して縦アーチを保持し,小指球,母指球及び踵の三
点で身体を支えることをその本質としている。
この点,パッド水平部の縦幅を指頭部下辺までにとどめず,指頭部にまで
到達させた場合,第2ないし第4指の指頭部と付け根を浮き上がらせること
ができなくなる結果,これらの指にも体重がかかることとなり,第2ないし
第4指以外の2指とかかとの3点で身体を支えるという本件考案の作用効果
を奏することができなくなるものと認められる。したがって,パッド水平部
の縦幅は,本件考案の本質的な作用効果を奏するための技術的意義を有する
ものであるから,これを設計事項ということはできない。
(2)被告が副引例とする乙17の3発明は,足の指の間に配置して使用するつ
ま先位置決め具であり,パッドの長さに関しては,特許請求の範囲(4)に,
「左足モデルでは左から右に行くに従って長さが増加しており,右足モデル
ではその逆であり」と記載されているものの(乙17の3),パッドの縦幅
を,指頭部下辺までの間に配置することについては明記されておらず,被告
が指摘する乙17の3発明の明細書Fig.8を見ても,パッドの縦幅が指頭部
下辺までの範囲に収まっているのか否かは必ずしも判然とせず,Fig.7から
すると前方に相応の長さがあるようにも見える。
したがって,乙17の3発明に前記相違点に係る本件考案の構成が開示さ
れているとは認められない。
(3)以上より,前記相違点に係る構成について,乙17の1発明及び乙17の
3発明によりきわめて容易に考案することができたとは認められない。
5争点2-3(本件考案に係る進歩性欠如(本件考案は,本件実用新案登録
出願前に頒布された乙19の1公報に記載された乙19の1発明に基づいて
当業者がきわめて容易に考案することができたものであるか。))について
(1)乙19の1公報には,次のような記載がある(なお,図面については別紙
乙19の1図面参照)。
【請求項1】
足の親指と人差し指の付け根部の下面にそれぞれ接触される柔軟性を有
する第1及び第2の指持上板と,該両指持上板の境界部の上面に連結され,
かつ,前記親指と人差し指の指間を拡幅する柔軟性を有する指間拡幅部と
により構成されていることを特徴とする足指用器具
【請求項2】
請求項1において,前記指間拡幅部の上端部には後方に行くほど高くな
るように傾斜する柔軟性を有する傾斜部が連結されていることを特徴とす
る足指用器具
【請求項3】請求項1又は2において,前記両指持上板,指間拡幅部,
傾斜部は,柔軟性を有する合成樹脂又は合成ゴムによって一体に形成され
ていることを特徴とする足指用器具
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1に記載の発明は,足の親指と人差し指の付け根部の下面にそれ
ぞれ接触される柔軟性を有する第1及び第2の指持上板と,該両指持上板
の境界部の上面に連結され,かつ親指と人差し指の指間を拡幅する柔軟性
を有する指間拡幅部とにより構成されていることを要旨とする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
上記実施形態では,足指用器具11の下部に親指15の付根部の下面を
持ち上げ支持するための第1の指持上板12aと,人差し指16の付根部
の下面を持ち上げ支持するための第2の指持上板12bとを設けた。この
ため,図4に示す使用状態において,親指15と人差し指16の付け根部
の下面がそれぞれ持ち上げられ,親指15の先端部と,人差し指16の下
面がそれぞれ靴の内部の底面に部分的に接触されることになり,該底面を
掴もうとする親指15と人差し指16の力が強くなる。
【0025】
図9(a),(b),(c)に示すように,前記足指用器具11の第2の指持上
板12bに対し,足指用器具11と同様に形成された足指用器具11A,
11B,11Cを連結するようにしてもよい。これらの場合には,親指1
5以外の四指の運動中における踏ん張り力をさらに向上することができる。
(2)ア前記(1)の記載及び証拠(乙19の1)並びに弁論の全趣旨によれば,
乙19の1公報には,足指用器具を連結して使用する場合について,次の
構成の発明が開示されているものと認められる。
A足指の付け根部の下面に装着して指間を拡幅し,柔軟性を有する素材
の一体に連結された足指用器具であって,
B足裏における触球部の上辺から少なくとも第2指,第3指,第4指,
小指の指頭部下辺までの任意の位置に配置させる指持上板と,
C少なくとも第2指と第3指の間,第3指と第4指との間,第4指と小
指との間にそれぞれ入り込む第1,第2及び第3足指拡幅部とからなり,
D少なくとも第1及び第2凸状部が高さ方向に長く延びることにより,
第1と第2凸状部間,第2と第3凸状部間は側面を形成して,
E第2指と第3指との間及び第3指と第4指との間で足裏に保持される
足指用器具
イ(ア)被告は,構成Bについて,本件考案の構成要件④と同様に,指持上板
を「触球部上辺から少なくとも第2,第3,第4指,小指の指頭部下辺
までの間に配置させる」ことが開示されていると主張する。
しかし,本件考案の構成要件④の「触球部上辺から少なくとも第2,
第3,第4指,小指の指頭部下辺までの間に配置させる」とは,それに
より第2指,第3指及び第4指において指頭部と付け根部が浮き上がり,
親指及び小指の指頭部と付け根,踝部の3点で体重を支えるものである
(本件明細書【0030】)。このことからすると,「触球部上辺から
…指頭部下辺までの間に配置させる」とは,その間の空間が水平部によ
り充たされ,指の指頭部と付け根部が浮き上がるものをいい,その間の
任意の一部だけに水平部が位置することになるものを含まないと解する
のが相当である。これに対し,乙19の1公報には,指持上板の縦幅に
ついて,「触球部上辺から指頭部下辺まで」と特定するような記載は認
められず,かえって,図4には,水平部に相当する指持上板と触球部上
辺,及び,指持上板と指頭部下辺との間に隙間が生じた状態が記載され
ており,そのため,【0017】では,「人差し指16の下面が…靴の
内部の底面に部分的に接触されることになり,該底面を掴もうとする…
人差し指16の力が強くなる」とされていて,本件考案のように3点で
体重を支持するものとなっていない。
よって,被告の主張を採用することはできない。
(イ)また,被告は,構成D及びEについて,指持上板の凸状部の両側面及
び凸状部間が,指の付け根部の下側とフィットするように湾曲した構造
が開示されていると主張する。
しかし,被告の指摘する図5を見ても,指持上板の凸状部の上端及び
下端部がやや丸みを帯びた形状となっていることは認められるが,凸状
部のそれ以外の部分は直線状であり,指の付け根部の下側とフィットす
るような形状となっていないのは明らかである。その他,乙19の1公
報には,指持上板の凸状部及び水平部が,指の付け根部の下側とフィッ
トするような形状とすることが開示されていると認めるに足りる記載は
なく,かえって,参考図の大部分においては,指持上板の水平部及び凸
状部の側面が直線状に表現されている(乙19の1)。
(ウ)よって,構成D,Eに関する被告の主張を採用することはできない。
(3)以上より,本件考案と乙19の1発明は,次の点において相違する。
ア本件考案の構成要件④においては,足先支持パッドの水平部を,足裏に
おける触球部の上辺から少なくとも第2指,第3指,第4指,小指の指頭
部下辺までの間に配置させるとしているのに対し,乙19の1発明の構成
Bでは,指持上板の水平部を各指の指頭部下辺までのどの位置に配置させ
るのか明らかではない点で相違する(相違点①)。
イ本件考案の構成要件⑥においては,パッドの水平部の上面及び3個のパ
ッド凸状部の両側面が各指の付け根部の下側と密接できるように全体がな
だらかに湾曲しているのに対し,乙19の1発明の構成Dでは,そのよう
ななだらかな湾曲した構成が開示されていない点で相違する(相違点②)。
ウ本件考案の構成要件⑦においては,第1,第2凸状部間及び第2,第3
凸状部間が半円形側面になるとされているのに対し,乙19の1発明の構
成Eでは,そのような半円形側面の形状が開示されていない点で相違する
(相違点③)。
(4)相違点①に関し,副引例の主張はなく,乙19の2ないし乙19の6の
いずれにも,当該相違点に係る本件考案の構成が開示されていると認める
ことはできない。
また,当該相違点に係る構成が設計事項には当たらないのは前記のとお
りである。
よって,相違点①に係る本件考案の構成について,乙19の1発明に基
づき当業者がきわめて容易に考案することができたと認めることはできな
い。
6争点3(商標権侵害-本件商標と被告標章との類否-)について
(1)商標の類否は,対比される両商標が同一又は類似の商品又は役務に使用さ
れた場合に,商品又は役務の出所につき誤認混同を生ずるおそれがあるか否
かによって決すべきであり,商標の類否の判断に当たっては,同一又は類似
の商品又は役務に使用された商標が,その外観,観念,称呼等によって取引
者,需要者に与える印象,記憶,連想等を総合して,かつ,その商品又は役
務に係る取引の実情を踏まえた上で全体的に考察すべきものである。そして,
商標の外観,観念又は称呼の類似は,その商標を使用した商品又は役務につ
き出所を誤認混同するおそれを推測させる一応の基準にすぎず,上記3点の
うち類似する点があるとしても,他の点において著しく相違するか,又は取
引の実情等によって,何ら商品又は役務の出所を誤認混同させるおそれが認
められないものについては,これを類似商標と解することはできない(最高
裁昭和43年2月27日判決・民集22巻2号399頁,最高裁平成9年3
月11日判決・民集51巻3号1055頁参照)。
そして,文字や図形等の複数の構成部分を組み合わせた結合商標について
は,各構成部分がそれを分離して観察することが取引上不自然と思われるほ
ど不可分的に結合しているものと認められない場合,取引の実際においては,
必ずしもその構成部分全体によって称呼,観念されず,一部の構成部分のみ
によって称呼,観念されることも少なくないといえるから,結合商標の構成
部分の一部が取引者,需要者に対し商品又は役務の出所識別標識として強く
支配的な印象を与えるものと認められる場合,それ以外の部分から出所識別
標識としての称呼,観念が生じないと認められる場合などは,当該構成部分
を要部として抽出し,この部分のみを他人の商標と比較して商標の類否を判
断することができるというべきである(最高裁昭和38年12月5日判決・
民集17巻12号1621頁,最高裁平成5年9月10日判決・民集47巻
7号5009頁,最高裁平成20年9月8日判決・裁判集民事228号56
1頁参照)。
(2)本件商標は,別紙原告商標目録のとおりであり,①上段に大きな太ゴシッ
ク体で「toegripper」,②下段に小さなゴシック体で「大山式ボディメイ
クトゥグリッパー」と記載してなるものである。そして,①と②の横幅は
ほぼ同一となるように揃えられている。
そして,外観上,①の部分が,太字であること及び文字が②の部分に比べ
て顕著に大きいことから,特に強く支配的な印象を与える要部として認識さ
れものと認められる。
原告会社は,①の部分に加え,②の「大山式ボディメイク」,「トゥグリ
ッパー」も,それぞれ要部に当たると主張するが,これらは①に比較して極
めて細く小さな文字で記載されており,この部分が特に強く支配的な印象を
与えるものと認めることはできないから,②の部分のみが単独で認識される
ことはないというべきである。
また,原告会社は,原告商品に実際に使用された標章の使用態様から,
「大山式ボデイメイク」の標章が周知となっていると主張する。しかし,原
告商品の広告(甲13,甲14,甲25,甲26)を見ても,「toe
gripper」が目立つ態様で記載されているから,原告会社の上記主張は採用
できない。
(3)ア本件商標の外観としては,その全体から,前記(2)の外観が生じるほか,
その要部である①の部分から,「toegripper」の外観が生じると認めら
れる。
イ本件商標の称呼としては,その全体から,「トゥグリッパーオオヤマシ
キボディメイクトゥグリッパー」の称呼が生じるほか,その要部である①
の部分から,「トゥグリッパー」の称呼が生じると認められる。
ウ本件商標の観念としては,外観上強く支配的な印象を与える要部である
①の部分の「toegripper」は造語であるところ,このうち,「toe」の部
分からは「つま先」,「gripper」の部分からは「つかむもの」という程
度の観念が生じるものと認められる。
また,②の部分を含めた全体からは,「大山という方式の体を作るため
のつま先をつかむもの」という程度の観念が生じるものと認められる。
(4)被告標章1は,別紙被告標章目録1のとおり,①上段において,黒地の
3つの四角の中に,白い大きな太ゴシック文字で,左から順に「大」
「山」「式」と記載され,②中段において,白地の四角の中に①よりはや
や小さい黒ゴシック文字で,「ボディメイクパッド」と記載され,①の黒
地の3つの四角が②の白地の四角の左上部分に3分の2程度埋め込まれた
形で配置され,③下段において,小さな丸ゴシック文字で,「OHYAMA
STYLEBODYMAKEPAD」と記載されている。
被告標章2は,別紙被告標章目録2のとおり,①上段において,白地の
3つの四角の中に,黒い大きな太ゴシック文字で,左から順に「大」
「山」「式」と記載され,②中段において,黒地の四角の中に①よりはや
や小さい白ゴシック文字で,「ボディメイクパッド」と記載され,③下段
には,黒地に白い太ゴシック文字で「PREMIUM」と記載され,①の
白地の3つの四角が②の黒地の四角の左上部分に3分の2程度埋め込まれ
た形で配置されており,①の「大山式」の右側には,四角い枠で囲われた
「NEW」というオレンジ色の文字がやや斜めに記載されており,②の黒
地の四角の右端部分には,白字で足の裏のイラストが記載されている。
被告標章3は,別紙被告標章目録3記載のとおり,①上段において,赤地
の3つの四角の中に,黒い大きな太ゴシック文字で,左から順に「大」
「山」「式」と記載され,②下段において,黒地の四角の中に①よりかなり
小さい白ゴシック文字で,「ボディメイクパッド」と記載され,③「ボディ
メイクパッド」の文字の横に,赤字の大きな太ゴシック文字で「PRO」と
記載され,①の赤地の3つの四角が②の黒地の四角の左上部分に3分の2程
度埋め込まれた形で配置されている。また,①の「大山式」の文字の横には,
「OHYAMAMETHODBODYMAKEPADPREMIUMPRO」という小さな白文字が三段
にわたって記載されている。
被告標章1において,上段の「大山式」と中段の「ボディメイクパッド」
については,そのいずれかが外観上特に強く支配的な印象を与えるとは認め
られないが,ほぼ同じ大きさの文字で記載されており,下段部分は文字も小
さく目立たないことから,被告標章1は,その全体として認識されるほか,
上段と中段の「大山式ボディメイクパッド」の部分が要部として認識される
と認められる。
被告標章2については,上段の「大山式」と中段の「ボディメイクパッ
ド」について上記と同様のことが妥当するほか,下段の「PREMIUM」
は商品の品質を表示するものであって識別力に乏しく,「NEW」や足の絵
は外観上不可分に結びついているとも認められないから,被告標章2は,そ
の構成全体として認識されるほか,「大山式ボディメイクパッド」の部分が
強く支配的な印象を与える要部として認識されると認められる。
被告標章3については,外観上,上段の「大山式」の部分が中段の「ボデ
ィメイクパッド」に比べて特に大きく記載されているほか,下段の「PR
O」は商品の品質を表示するものであって識別力に乏しく,「OHYAMA
METHODBODYMAKEPADPREMIUMPRO」部分は,他の部分と比較し,非常に小
さな文字で記載されていることから,被告標章3は,その構成全体として認
識されるほか,「大山式」の部分が強く支配的な印象を与える要部として認
識されると認められる。
したがって,被告標章については,いずれも構成全体のほか,被告標章1
及び2では,「大山式ボディメイクパッド」の部分を要部として観察するべ
きであり,被告標章3については,「大山式」の部分を要部として観察する
べきである。
そうすると,被告標章1からは,「オオヤマシキボディメイクパッドオオ
ヤマスタイルボディメイクパッド」,「オオヤマシキボディメイクパッド」
の称呼と,「大山という方式の体を作るためのパッド」という程度の観念が
生じると認められ,被告標章2からは,「オオヤマシキニューボディメイク
パッドプレミアム」,「オオヤマシキボディメイクパッド」の称呼と,「新
しく高級な大山という方式の体を作るためのパッド」,「大山という方式の
体を作るためのパッド」という程度の観念が生じると認められ,被告標章3
からは,「オオヤマシキボディメイクパッドプロオオヤマメソッドボディメ
イクパッドプレミアムプロ」,「オオヤマシキ」の称呼と,「大山という方
式の体を作るためのパッド」,「大山という方式」という観念が生じるもの
と認められる。
(5)本件商標と被告標章の類否について
まず,本件商標全体と被告標章全体と対比すると,いずれもその外観にお
いて大きく異なり,称呼も「オオヤマシキボディメイク」の部分は同一であ
るものの,本件商標においては,その前後に「トゥグリッパー」が付く一方,
被告標章においては,「オオヤマシキボディメイク」の後に「パッド」が付
く一方,「トゥグリッパー」の称呼はなく,相違する部分の音数も異なるこ
とから,称呼についても類似するものとはいえない。
観念については,本件商標は「大山という方式の体を作るためのつま先
をつかむもの」であるのに対し,被告標章では,「大山という方式の体を
作るためのパッド」であり,類似しないというべきであり,仮に観念にお
いて類似すると見るとしても,前記のように,外観が大きく異なり,称呼
においても類似するとはいえないことに鑑みると,本件商標は,被告標章
のいずれとも類似するとはいえない。
次に,本件商標のうち,特に強く支配的な印象を与える「toegripper」
の部分と被告標章全体及び上記検討した被告標章の要部とを対比すると,
両者は,外観,称呼,観念のいずれにおいても大きく異なるものというべ
きである。
(6)以上のとおり,本件商標と被告標章が類似すると認めることはできない。
7差止請求及び廃棄請求について
以上によれば,被告が被告商品を製造譲渡等する行為は,原告P1の本件
実用新案権を侵害する行為であるから,被告が被告商品の製造譲渡等を継続
している以上,原告P1の被告に対する被告商品の製造販売等の差止請求及
び廃棄請求は理由がある。
8争点4(被告の過失)について
(1)以上によれば,被告商品の製造販売は,原告会社が有する本件実用新案権
の独占的通常実施権を侵害する行為であるから,被告に過失が認められれば,
被告は,原告会社に対する損害賠償責任を負う。
(2)被告は,被告に過失があるとしても,本件で当裁判所が侵害の心証を開示
した平成27年5月25日以降の行為に限られると主張する。
実用新案権者が,その登録実用新案に係る技術評価書を提示して警告した
場合(実用新案法29条の2)において,当該実用新案権の効力について当
該技術評価書で肯定的な内容が記載されていた場合には,侵害者は,当該実
用新案権に係る考案の内容を知るとともに,当該実用新案登録が有効である
可能性が高いことを知ったのであるから,警告後の侵害行為については,自
らの行為が当該実用新案権の侵害となる可能性の有無を検討した上で,侵害
回避に向けて注意義務を尽くしたと認められる事情がない限り,過失を認め
るのが相当である。
本件では,前提事実記載のとおり,本件考案について特許庁が作成した技
術評価書には,3つの引用文献を掲げた上で,「新規性等を否定する先行技
術文献等を発見できない(記載が不明瞭であること等により,有効な調査が
困難と認められる場合も含む。)」との評価6が記載されており(甲4の
3),肯定的な内容が記載されていたと認められる。
そして,前提事実記載のとおり,原告P1は,被告に対し,警告書及び技
術評価書を送付し,被告はいずれも平成26年3月12日頃に受領した(甲
4,弁論の全趣旨)ものであるが,被告において,その後,侵害回避に向け
て注意義務を尽くしたとの事情を認めるに足りる証拠はない。
被告は,被告商品の開発期間において,原告P1の実用新案権を侵害しな
いように配慮し,時間をかけて開発したなどと主張するが,どのような点を
検討し,配慮したのかについて具体的な主張立証はないことから,被告商品
の開発期間中に被告が注意義務を履行したとして,警告書送付後の過失を否
定することはできない。
よって,少なくとも技術評価書を示した警告を受けた平成26年3月12
日頃以降においては,原告P1の実用新案権侵害及び原告会社の独占的通常
実施権侵害について,被告の過失が認められるというべきであり,被告は,
原告会社に対し,同日以降の侵害行為について損害賠償責任を負う。
9争点5(原告会社の損害額)について
(1)実用新案法29条1項
実用新案法29条1項は,実用新案権又は専用実施権侵害の場合に,侵害
者がその侵害の行為を組成した物を譲渡したときは,その譲渡数量に,実用
新案権者又は専用実施権者がその侵害行為がなければ販売することができた
物の単位数量当たりの利益の額を乗じて得た額を,実用新案権者又は専用実
施権者が受けた損害額とすることができる旨規定するところ,「単位数量当
たりの利益額」とは,製品の販売価格から製造原価等その製造販売に追加的
に要した費用を控除した額(限界利益)と解するのが相当である。
また,同法29条1項ただし書の「販売することができないとする事情」
は,侵害行為と実用新案権者等の製品の販売減少との相当因果関係を阻害す
る事情を対象とし,例えば,市場における競合品の存在,侵害者の営業努力
(ブランド力,宣伝広告),侵害品の性能(機能,デザイン等),市場の非
同一性(価格,販売形態)などの事情がこれに該当するというべきである。
本件において,原告会社は,原告P1より無償で独占的通常実施権を受け
ているところ(甲30),このような独占的通常実施権者が受けた損害額を
算定するに当たっても,同法29条1項の規定は類推適用されるものと解さ
れる。
原告会社は,平成26年6月から平成27年7月までの期間について損害
賠償請求をしているところ,これは,原告会社が原告P1より本件独占的通
常実施権を得たよりも後で,かつ,被告の過失が認められる時期よりも後で
あることから,原告会社は,同期間中に生じたと認められる損害の全てにつ
いて,被告に対して請求することができる。
以下,同期間中における被告商品の譲渡数量及び原告商品の単位数量当た
りの利益を認定した上で,同法29条1項ただし書の「販売することができ
ないとする事情」の有無並びに原告会社の実施能力について検討する。
(2)譲渡数量
まず,同期間における被告商品の譲渡数量について検討する。
弁論の全趣旨によれば,対象期間中の被告商品の販売数量は,原告会社の
主張どおり,単品販売分合計61万5191個,ムック本分合計77万62
50個,合計139万1441個と認められる。
(3)原告商品の単位数量当たりの利益
ア証拠及び弁論の全趣旨によれば次の事実が認められる。
(ア)原告商品は,単体及びムック本で販売されており,単体販売分につい
ては,海外で委託生産されたものを輸入し,原告会社において梱包した
後,販売代理店等に卸売販売している(甲14,甲36の2ないし4,
甲38,甲53,弁論の全趣旨)。
(イ)単体販売分の原告商品1個当たりの原価等,販売のために追加的に要
した費用は次のとおりである(小数第2位以下切り上げ)。
・仕入原価78.4円(甲37の1ないし3)
(計算式)
(777700+5750)円÷10000個=78.34円
・PETパッケージ費用16円(甲38の1)
(計算式)
161196円÷10100個=15.96円
・帯ラベル費用3.6円(甲38の2)
・JANコードシール費用1.9円(甲38の3)
(計算式)
14910円÷8000枚=1.86円
・段ボールパッケージ費用3.3円(甲38の4,5)
(計算式)
33262円÷506個÷25個+14910円÷25個÷100
個÷10個=3.21円
・運送費用2.4円(甲38の6)
証拠(甲38の6)及び弁論の全趣旨によれば,原告商品の出荷数が
多いのは関西圏(サイズ100の運送費用単価580円),東海圏(サ
イズ100の運送費用単価610円)及び関東圏(サイズ100の運送
費用単価610円)であり,サイズ100に該当するパッケージは,原
告商品250個入りであることが認められる。よって,運送費用単価算
出の計算式は次のとおりである。
(580円+610円+610円)÷3÷250個=2.4円
(ウ)ムック本販売分の原告商品1個当たりの原価及び変動費用は次のとお
りである。
・仕入れ原価78.4円(前記(イ)で認定のとおり)
・PETパッケージ費用16円(同上)
(エ)単体販売分及びムック本販売分の販売単価は次のとおりである。
・単体販売分799円(甲40)
平成25年7月から同年9月までの原告商品の販売価格及び販売数
は別紙原告商品販売価格表のとおりであるから,その平均単価は原告
会社の主張どおり799円と認められる。
・ムック本販売分180円(甲36,甲39)
イ以上より,原告商品の単体販売分及びムック本販売分の利益は,次のと
おりである。
・単体販売分693.4円
(計算式)
799円-(78.4+16+3.6+1.9+3.3+2.4)円
=693.4円
・ムック本販売分85.6円
(計算式)180円-(78.4+16)円=85.6円
(4)「販売することができないとする事情」
ア販売数量
(ア)原告会社が,平成23年12月から平成25年6月までの間に被告に
対して納品した原告商品の数量は,別紙「被告の発注に対して納品した
数量」のとおりである(甲44)。
また,原告会社は,平成23年10月から平成26年10月までの原
告商品の販売数量は約18万個と主張しており,被告もこれを認めてい
る(被告準備書面(2)14頁)が,これを前提とすれば,その販売数量
は,1か月当たり5000個程度ということになる。
(イ)これに対し,平成25年6月以降の被告商品の月別の販売数量は,別
紙被告商品販売数量推移表のとおりである(平成27年10月19日付
け被告準備書面(6)別紙2)。これによれば,被告商品の月間販売数は,
発売初月の平成25年6月で既に2万5000個を超え,その後,上下
しながらも販売数が増加し,平成26年7月には月間約14万2000
個に達したこと,その後も上下しつつ,概ね月間10万個から12万個
の販売数で推移していることが認められる。
そうすると,原告商品の販売数量と被告商品の販売数量には,非常に
大きな差異があるというべきである。
イ品質の差異
被告は,原告商品は,被告商品のように嵌合リングがないことから,こ
れを着用して歩行すると脱落してしまうという難点があり,被告商品とは
品質において大きな差異があると主張する。
原告商品の形状及び被告による実験の結果(乙12,乙13)に弁論の
全趣旨を総合すると,原告商品は被告商品に比較すると,脱落しやすいも
のであるということができる。
しかし,証拠(甲19)によれば,被告商品に対しても,装着してすぐ
に,親指等に痛み痒みが生じたなどの苦情が寄せられていることが認めら
れ,被告商品は,脱落しにくい代わりに装着感の悪さなど原告商品にはな
い難点があるものと認められる。
また,被告は,原告商品の素材はシリコン製であるのに対し,被告商品
の素材は医療用エラストマーであるとして,被告商品の素材が原告商品の
素材よりも優れているとの主張をする。しかし,これら素材の差異が,販
売数量に影響するほどのものであることを認めるに足りる的確な証拠はな
い。
よって,品質の差異についていう被告の主張を採用することはできず,
品質の相違が上記のような販売数量の大きな差異の原因になっているとは
認められない。
ウ販売価格
原告商品の小売販売価格は,平成24年3月頃までは2980円(甲1
4の1,甲14の4),同年4月において2000円(甲14の5),平
成27年6月において1746円ないし2100円(甲36の1)である
ことが認められる。
他方,被告商品の小売販売価格は,平成26年10月において被告商品
1のうちの「大山式ボディメイクパッド」が1500円(甲31),「大
山式ボディメイクパッドPREMIUM」が1980円(甲11)ないし
2079円(甲31),平成27年6月において被告商品2が1800円
(甲36の1)であることが認められる。
以上によれば,原告商品と被告商品は,平成24年4月以降において,
小売販売価格においてそれほど大きな差異があったということはできない
から,販売価格の相違が販売数量の大きな差異の要因になったとは認めら
れない。
エ宣伝広告等
証拠(乙34ないし40,乙43ないし45)及び弁論の全趣旨によれ
ば,被告は,①平成26年8月以降にテレビCM放映費用5446万32
00円を,②平成25年10月以降にCM製作費用1058万9912円
を,③平成25年12月以降に雑誌・新聞広告費用1509万9900円
(乙36号証中の裏付け書証の合計額),④平成26年11月以降の雑誌
・新聞広告制作費用109万6416円,ウェ
ブ販売促進費用(RMSシステム利用料を含む)1億2760万6301
円(乙38号証中の裏付け書証の合計額。なお,原告会社は,RMSシス
テム利用料の販売促進費性を争うが,それがインターネットモールに対す
るシステム利用料であるとしても,インターネットモールを利用すること
による販売促進効果がある以上,これも販売促進費用として認めるのが相
当である。),
2739万1308円(うちフィギュアスケート会場における広告540
万円等),合計2億4000万円を超える支出をしたこと,被告がこのよ
うにCM等,宣伝広告に本格的に費用をかけ始めたのは平成26年8月以
降であることが認められる。
他方,別紙被告商品販売数量推移表によれば,被告商品の販売数量は,
平成26年7月までの間に月間12万個から14万個に達しているから,
この時期に販売数量が増加したことについて被告による宣伝広告が寄与し
たとは認められない。しかし,同表によれば,それ以後,概ね月間12万
個から14万個の高水準の販売数量が維持されており,このことについて
は,被告による上記の宣伝広告が大きく寄与していると認められる。
なお,原告商品の宣伝広告につき,原告会社が被告と同等の費用をかけ
たことを認めるに足りる証拠はない。
オ販売方法
このほか,証拠(乙47)によれば,被告は,被告代表者の人脈を駆
使した営業努力により,主婦の友社に被告商品を売り込み同社からのム
ック本販売が可能となったことや,被告商品の大手ドラッグストアの店
頭販売に成功したこと,インターネット販売のホームページに工夫をこ
らしたことが認められる。
これらの点については,原告商品も宝島社からムック本による販売がな
されており(甲39),原告商品もインターネット販売をしており,平成
24年6月にはネットモール楽天のシェイプアップ器具でリアルタイム1
位を獲得したことも認められる(甲15)。
しかし,前記のとおり,被告商品の販売数量は,原告商品のそれと比べ
て圧倒的に多くなっており,前記のとおり商品の品質や販売価格による影
響が認められないことからすると,これだけの販売数量の差異には,前記
の宣伝広告のほか,上記のような被告の販売方法ないし営業努力が大きく
寄与していると認めるのが相当である。
カ以上からすれば,本件では,原告会社が「販売することができない事
情」に相当する控除数量は,被告の譲渡数量の70%に当たる数量,すな
わち,単品販売分43万0633個(小数点以下切り捨て),ムック本販
売分54万3375個と認めるのが相当であり,控除後の数量は,合計4
1万7433個となる。
(5)原告会社の「実施の能力」
前記のとおり,原告会社の販売数量は,せいぜい月間5000個であった
と認められる。
しかし,原告会社は,外国の製造業者に製造を委託しており,平成25年
8月27日から同年11月22日までの間に,商品販売委託先から,合計4
万5000個の原告商品の製造委託代金支払を請求され,いずれもすぐに支
払っている(甲53,甲54)。また,前記のとおり,原告商品の製造販売
に追加的に要する費用は,単体販売分でも1個当たり105.6円である。
これらからすれば,前記認定の14か月間で41万7433個(1か月当た
り約3万個)の販売数量が,原告会社の実施能力を超えるものとは認められ
ない。
(6)以上より,単品販売分合計61万5191個,ムック本分合計77万62
50個からそれぞれ70%に当たる数量を控除し,これらに原告商品の単位
数量当たりの利益を乗じた金額は,次のとおり,合計1億4790万661
7円であり,同金額が被告の侵害行為により原告会社に生じた損害と認めら
れる。
(計算式)(小数点以下切り捨て)
・単品販売分
61万5191個-43万0633個=18万4558個
693.4円×18万4558個=1億2797万2517円
・ムック本販売分
77万6250個-54万3375個=23万2875個
85.6円×23万2875個=1993万4100円
(7)前記認定の差止請求及び廃棄請求の認容,損害額及び本件訴訟経緯等に照
らせば,被告による侵害行為と相当因果関係ある弁護士費用は,1500万
円と認めるのが相当である。
よって,原告会社に生じた損害は,合計1億6290万6617円と認め
られる。
8以上の次第で,①原告P1の実用新案権に基づく被告商品の製造譲渡等の差
止請求及び廃棄請求は理由があり,②原告会社の実用新案権の独占的通常実施
権侵害の不法行為に基づく損害賠償請求は,1億6290万6617円及びこ
れに対する不法行為後の平成27年8月1日から支払済みまで民法所定の年5
分の割合による遅延損害金の支払を請求する限度で理由があるが,原告会社の
その余の請求はいずれも理由がない。
よって,主文のとおり判決する。なお,主文第3項以外に仮執行宣言を付す
るのは相当でないから,これを付さないこととする。
大阪地方裁判所第26民事部
裁判長裁判官
髙松宏之
裁判官
田原美奈子
裁判官
大川潤子
(別紙)
被告商品目録

(1)商品名
「大山式ボディメイクパッド」もしくは「大山式ボディメイクパッド
PREMIUM」
(2)商品の形状
下記写真のとおり。
①商品を斜め上から撮影した写真
②商品を真上から撮影した写真
③商品を横から撮影した写真

(1)商品名
大山式ボディメイクパッドPRO
(2)商品の形状
下記写真の通り。
①商品を斜め上から撮影した写真
②商品を真上から撮影した写真
③商品を横から撮影した写真
以上
(別紙)
被告標章目録



(別紙)
原告商標目録

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