弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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          主         文
       本件控訴を棄却する。
       控訴費用は,控訴人の負担とする。
          事実及び理由
第1 当事者の求めた裁判
 1 控訴人
 (1) 原判決を取り消す。
 (2) 被控訴人が平成6年2月28日付けで控訴人に対してした控訴人の平成3年
1月1日から同年12月31日までの事業年度分の法人税に係る更正処分のうち所
得金額が230万6035円を超える部分及び過少申告加算税賦課決定処分を取り
消す。
 (3) 被控訴人が平成6年2月28日付けで控訴人に対してした控訴人の平成3年
1月1日から同年12月31日までの事業年度分の法人臨時特別税決定処分及び無
申告加算税賦課決定処分を取り消す。
 2 被控訴人
 本件控訴を棄却する。
第2 事案の概要
 1 事案の要旨
 (1) 控訴人は,美術品・古物の売買,ギャラリーショールーム展示場の運営等を
目的とする会社であるが,平成3年11月に他5社とともにミティア映画投資事業
組合(以下「本件組合」という。)を結成した。
 そして,控訴人は,平成3年1月1日から同年12月31日までの事業年度(以
下「平成3年12月期」という。)の法人税の申告をするに当たり,本件組合
が,「ABNAMROBANKN.V.,TOKYOBRANCH」(以下「ABNアムロ銀行」という。)
から26億9053万1250円の融資を受け(以下「本件融資契約」とい
う。),その融資に係る金員(以下「本件金員」という。)及び組合員の出資金を
用いて,「THEGENESISPROJECT,INC.」(以下「ジェネシス」という。)との間
で,本件組合を買主,ジェネシスを売主とし,代金を36億1672万6250円
とする映画(題名「PRELUDETOAKISS」。以下「本件映画」という。)の売買契約
(以下「本件売買契約」という。)を締結して,本件映画に係る権利を取得したと
して,本件映画に関する控訴人の持分に係る減価償却費,
本件融資契約に係る支払利息を損金に計上して,申告をした。
 これに対し,被控訴人は,上記減価償却費及び支払利息の損金計上は認められな
いなどとして,法人税更正処分及び過少申告加算税賦課決定並びに法人臨時特別税
決定処分及び無申告加算税賦課決定を行った。
 本件は,控訴人が上記各処分の取消しを求めた事案である。
 (2) 原判決は,本件売買契約及び本件融資契約はその実体を欠き,不成立ないし
無効であるなどとして,上記損金計上を認めず,上記各処分は適法であるとして,
控訴人の請求を棄却した。
 これに対して,控訴人が,不服を申し立てたものである。
 2 前提事実,当事者の主張及び争点
 次のとおり付加するほかは,原判決の事実及び理由欄第2(1頁以下)記載のと
おりであるから,これを引用する。
(前提となる事実)
当事者間に争いのない事実に加え,証拠(乙7,8,17,18,34,39,
41,49)及び弁論の全趣旨によれば,次の事実が認められる。
 (1) 本件売買契約,本件融資契約等の締結
 ア 控訴人代表者は,平成3年夏ころ,顧問税理士から,投資としてもうかるも
のであり少なくとも損はないと説明されて,本件取引への参加を勧誘され,同税理
士からメリルリンチ・ファイナンシャルサービス株式会社のP1を紹介された。控
訴人代表者は,P1から,本件の取引は映画フィルムの所有権を購入するもので,
取得価額については減価償却もできる,投資であるから必ずもうかることは保障で
きないが,最低でも元金の70%程度は回収できるなどと説明され,本件組合の結
成に参加することとした。
 そして,控訴人ほか5社を組合員として本件組合を結成する旨の契約(以下「本
件組合契約」という。)に係る契約書(以下「本件組合契約書」という。乙8)が
平成3年11月29日付けで作成され,控訴人ほか5社の組合員がこれに記名押印
している。控訴人が本件組合に出資した金額は6848万6250円であり,各組
合員の出資金の合計額は10億9578万円(以下「本件出資金」という。)であ
る。本件組合契約書においては,「エム・エル・フィルム・エンターテイメント・
インターナショナル・インク」(「MLFILMENTERTAINMENT
INTERNATIONAL,INC.」。以下「MLFE」という。)を本件組合の業務執行者とす
るものと定められている。なお,本件組合契約においては,本件組合契約書と一体
となるものとして,附属書類Ⅰの「組合規約」と題する
書面(以下「本件組合規約書」という。)が作成され,本件組合契約の当事者は,
本件組合契約及び本件組合規約書に定められた規約に準拠するものとすることが定
められている。
 イ 本件組合を借入人,ABNアムロ銀行を貸出人として,本件金員を融資する
旨の本件融資契約に係る契約書「LOANAGREEMENT」(以下「本件融資契約書」とい
う。乙18)が,平成3年11月29日付けで英文によって作成され,ABNアム
ロ銀行及びMLFEが署名している。
 ウ 本件組合及び本件組合の組合員を買主,ジェネシスを売主として,本件映画
に係る一切の権利を代金36億1672万6250円で販売する旨の本件売買契約
に係る契約書「AGREEMENTOFPURCHASEANDSALE」(以下「本件売買契約書」とい
う。乙34)が,平成3年11月29日付けで英文によって作成され,ジェネシス
及びMLFEが署名している。
 エ 本件組合及び本件組合の各組合員をライセンサーとし,オランダ国の法人で
ある「MERIDIANFILMDISTRIBUTIONCOMPANYB.V.」(以下「MFDC」という。)
を配給者として,本件映画の配給権を付与する旨の契約(以下「本件配給契約」と
いう。)に係る契約書「DISTRIBUTIONAGREEMENT」(以下「本件配給契約書」とい
う。乙17)が,平成3年11月29日付けで英文によって作成され,MFDC及
びMLFEが署名している。
 オ 本件組合をライセンサーとし,「HollandscheBank-UnieN.V.」(以下「H
BU銀行」という。)を保証人として,MFDCが本件配給契約に基づいて支払う
べき一定額の支払を保証する旨の契約(以下「本件保証契約」という。)に係る契
約書「GUARANTEEAGREEMENT」(以下「本件保証契約書」という。乙41)が,平成
3年11月29日付けで英文によって作成され,MLFE及びHBU銀行が署名してい
る。
 カ 本件組合及び本件組合の各組合員は,MFDCに対し,MFDCが本件組合
から本件映画のすべての権利,権原及び権益を買い取る権利(以下「本件クラスA
オプション」という。)及びMFDCが本件組合の各組合員からその持分を買い取
る権利(以下「本件クラスBオプション」という。)を付与する旨の契約(以下
「本件オプション契約」という。なお,本件融資契約,本件売買契約,本件配給契
約,本件オプション契約,本件保証契約を併せて,以下「本件各契約」という。)
に係る契約書「OPTIONAGREEMENT」(以下「本件オプション契約書」という。乙3
9。なお,本件各契約に係る契約書を併せて「本件各契約書」といい,本件組合が
平成3年11月29日付けで本件各契約書を作成して行った本件映画に関する取引
を「本件取引」という。)
が,平成3年11月29日付けで英文によって作成され,MLFE及びMFDCが
署名している。
 (2) 各課税処分に至る経緯
 ア 控訴人は,平成4年2月28日付けで,被控訴人に対し,控訴人の平成3年
12月期の法人税の確定申告書を提出した。
 控訴人は,同申告書において,本件組合が本件映画に係る一切の権利(本件映画
フィルム等の所有権を含む。)を取得したなどとして,その控訴人の持分に係る減
価償却費7730万7523円を損金に計上し,また,本件組合が締結したとする
本件融資契約に係る支払利息のうちの控訴人の持分相当額85万0600円を損金
として計上した。そして,本件組合が締結したとする本件配給契約に基づく控訴人
の収入30万7656円(以下「本件収入」という。)を益金として計上し,申告
所得金額を230万6035円,還付すべき税額を19万5547円として上記法
人税の確定申告をした。
 イ これに対し,被控訴人は,本件融資契約は融資金(本件金員)の現実的な運
用の機会を欠き,金銭の移動を仮装したにすぎないものであり,本件売買契約も本
件映画に係る権利を現実的に移転させるものではないとし,本件融資契約及び本件
売買契約は,我が国における映画フィルムの耐用年数が短期であることを利用し
て,映画に係る減価償却費及び本件融資契約に係る支払利息をそれぞれ損金に算入
することによって租税回避を図ろうとしたものであり,これらの契約が有効に成立
していたものとは認められないとして,上記減価償却費及び支払利息の損金算入並
びに本件収入の益金算入を否定して,平成6年2月28日付けで,控訴人に対し,
控訴人の平成3年12月期の法人税について,所得金額を8015万6502円,
法人税額を2993万
5200円とする旨の更正処分(以下「本件更正処分」という。)及び445万7
000円の過少申告加算税賦課決定(以下「本件過少申告加算税賦課決定」とい
う。)を行った。
 また,被控訴人は,同様の理由で,平成6年2月28日(同日)付けで,控訴人
に対し,平成3年12月期の事業年度の法人臨時特別税について,課税標準法人税
額を2629万8000円,法人臨時特別税額を65万7400円とする旨の法人
臨時特別税決定処分(以下「本件法人臨時特別税決定処分」という。)及び9万7
500円の無申告加算税賦課決定(以下「本件無申告加算税賦課決定」という。)
を行った。
 ウ 控訴人は,平成6年4月22日,被控訴人に対し,本件更正処分,本件過少
申告加算税賦課決定,本件法人臨時特別税決定処分及び本件無申告加算税賦課決定
(以下,これらの各処分を併せて「本件更正処分等」という。)について異議申立
てを行ったが,被控訴人は,平成8年9月5日,上記異議申立てをいずれも棄却す
る旨の決定をした。
 さらに,控訴人は,平成8年10月4日,国税不服審判所長に対し,本件更正処
分等について審査請求を行ったが,国税不服審判所長は,平成9年11月10日,
上記審査請求をいずれも棄却する旨の裁決をした。
(控訴人の当審における主張)
 (1) 原判決は,本件売買契約について仮装であるとしたが,映画についてはネガ
フィルムの所有権とは別に著作権等の知的財産権があり,本件売買契約は,その知
的財産権をMFDCに与えることが大前提となっており,航空機リースなどのネッ
ト・リースと同様であることを十分理解していないものであり,違法である。
 また,原判決は,控訴人が映画の製作又は配給を目的とする会社ではなく,投資
目的で参加し,その税効果が説明されたことなどの個別事情を考慮しているが,控
訴人の個別事情といった組合員の個性や主観的意図によって本件組合と第三者との
契約の効力が左右されることはない。また,契約内容の知,不知については,業務
執行者のそれを基準とすべきところ,本件組合の業務執行者であるMLFEは,本
件売買契約の内容を十分了解した上で,記名捺印したものである。
 (2) 原判決は,本件融資契約が循環金融であり,本件組合が借入金の返済リスク
を負わないことなどを理由として,これを否認している。
 しかしながら,これは,本件金員の借入れが,いわゆるノン・リコース融資(あ
るプロジェクトについて外部の投資家を募る際,プロジェクトに関与する金融機関
は投資物件の購入価格の70ないし80%を投資家に融資するが,投資家は貸付金
の元利金の返済をプロジェクトから生ずる収益のみで行えばよく,当該プロジェク
トが失敗した場合には,投資物件を融資元の金融機関に引き渡せば債務不履行の責
めを問われないという方式の融資方式である。)であることを理解していないもの
であり,ノン・リコース融資は債務者が借入金リスクを負担しない融資なのである
から,この点をもって,本件融資契約を否認することはできない。
 本件取引において,複雑な契約関係が形成されたのは,日本とアメリカとの民事
法上の制度の違いに由来する部分が大きいのである。すなわち,ノン・リコース借
入れでは,債務の責任が担保物に限定され,債務者自身がそれ以上のリスクを負う
ことはないのである。また,アメリカにおけるパートナーシップを通じた映画に対
する投資では,映画配給会社を無限責任社員とし,投資家を有限責任社員とする構
成がとられている。日本ではこうした制度を利用することが不可能なため,借入部
分に対する保証支払の約定がされ,保証配給会社を外部に置き,これに一切の収益
事業をゆだねる形をとったものであり,本件取引の複雑さをもって,これを租税回
避目的とみることは早計である。
 (3) 控訴人は,顧問税理士から勧誘を受けた際,映画は償却資産であるととも
に,7年にわたり配当収入が得られるとの説明ないし提案があったため,映画が償
却資産として課税対象とならないことを確認した上で,本件映画の購入を決定した
ものである。控訴人は,映画が償却資産であることを認識していたが,本件映画に
対する投資が相当のリスクを伴うことを承知しつつ,興業成功による利益獲得も期
待していたのであり,節税メリットをも考慮していたとしても,これを租税回避と
断定して私法上の効力を否定することは法秩序を著しく不安定とする。
 控訴人は,日本の近代・現代工芸作家の企画ギャラリーとして,創業以来一貫し
て工芸作家の企画・プロデュースを行ってきており,その実績と信用により,控訴
人の経営姿勢は多くの作家とメディア・顧客の支持を得てきている。平成4年以降
の不況のあおりで,売上げと利益は激減することが予測されていたため,たまたま
特定の商品の売買により大きく売上げと利益が増大した平成3年度において,次年
度以降も控訴人の経営姿勢を維持することができるようにするため,本件映画の購
入を決意したものである。工芸作家の企画ギャラリーを維持,存続させるべく,一
時的利益を合法的,効果的に運用しようとした姿勢は,非難されるべきものではな
い。
 (4) 原判決は,本件取引に関する私法上の事実認定の基礎となる準拠法を誤って
いる。すなわち,本件売買契約及び本件配給契約のいずれにおいても,準拠法はカ
リフォルニア州法であると明文で規定されている。本件各契約の効力やその法的性
質を確定するためには,カリフォルニア州の民事制定法ないし判例法に準拠しなけ
ればならないというべきである。
 (5) 本件組合に参加した組合員で本件取引を否認されたのは,控訴人と株式会社
インプレッションのみであり,他の組合員については本件取引が否認されることは
なかった。本件更正処分等は租税公平主義に著しく反する処分であり,憲法14条
に違反する。
第3 当裁判所の判断
 当裁判所も,控訴人の請求は理由がないものと判断する。その理由は,次に記載
するほか,原判決の理由記載と同一であるからこれを引用する。
 1 事実関係について
 (1) 本件各契約等の内容について
 本件各契約における本件各契約書等の記載内容が,原判決の第3の1(1)のとおり
であることは,当事者間に争いがない。その記載内容の概要は,次のとおりであ
る。
 ア 本件組合契約(本件組合契約書及び付属書類である本件組合規約書の記載)
 (ア) 控訴人ら契約当事者は,本件組合を結成しこれに参加する。本件組合は,
日本国民法の規定に基づく民法上の組合とする。各当事者は,本件組合契約書末尾
に記載される金額(8口分合計10億9578万円,控訴人については,0.5口
分6848万6250円)を,平成3年11月29日午後1時までに,ABNアム
ロ銀行(東京支店)の本件組合名義の当座預金口座あてに送金することによって払
い込むものとする。
 本件組合の目的は,①本件映画の所有権並びにすべての権利,権原及び権益を購
入し,②本件映画を世界中で,すべての媒体を通じて商業的に利用することとす
る。このため,本件組合は,本件映画を購入する契約,本件映画についての全世界
における唯一かつ排他的配給者を任命する契約,配給者に本件映画についての購入
選択権を付与する契約及びその他の関連諸契約をそれぞれ締結するものとする。
 上記事業を遂行するため,本件組合は,ABNアムロ銀行と融資契約を締結し,
約2062.5万米ドル(以下,単に「ドル」という。)相当円貨額の融資を受け
るものとし,本件映画購入のため,2772.5万ドル相当円貨額の支払をなす。
 (イ) 各組合員は,アメリカ合衆国デラウェア州法人で日本国内に恒久的施設を
有しないMLFEとの間で「MeteorFilmEnterprisesManagementAgreement」
(以下「本件管理契約」という。)を締結することに同意する。本件管理契約に従
い,MLFEは,本件組合の唯一の業務執行者となり,各組合員は,本件組合の存
続中は,本件管理契約による業務執行者の任命の取消しをしないことに同意する。
 各組合員は,いかなる場合にも,業務執行者が本件映画に関連して実現すべきで
あった,又は実現することができたであろう収入又は収益を実現しなかった旨の主
張を一切しないものとする。
 業務執行者は,善良な管理者の注意をもって業務の履行に当たり,業務執行者が
その職務を執行するに当たって悪意又は重大な過失がない限り,業務執行者は,本
件組合又は各組合員に対し,いかなる責任も負わない。
 各組合員は,MLFE,メリルリンチグループ,本件取引をアレンジし,その他
何らかの形で関与した個人若しくは団体又はそれらの関連会社のいかなるものも,
これまで,明示,黙示を問わず,①本件組合が取得する映画の商業的利用が生む収
益額,及びその税法上の取扱い又は恩典,②当該映画が受ける評価に関して,一
切,保証,約束等をしていないことを,ここに確認し同意する。
 (ウ) 本件組合は,民法682条所定の事由が早期に発生しない限り,本件組合
が本件映画の所有権並びにそれに対する何らかの権利,権原及び権益を保有してい
る限り存続するものとする。この期間満了に伴い,本件組合は清算手続に入る。
 各組合員は,いかなる原因によるかを問わず,本件組合の清算に当たって,別段
の決議がない限り,業務執行者が清算人となり,その義務履行に対しては,本件組
合から合理的な報酬が支払われることを承認し,これに同意する。
 (エ) 組合員は,本件組合の清算前に,本件組合の財産の分割を要求する権利を
有しない。
 各組合員は,組合規約書に記載する一定の条件の下で組合の持分を譲渡すること
を除き,本件組合から任意に脱退できない。
 組合員は,直接,間接を問わず,本件組合を代表するかのように振る舞い又はそ
の代理人と称して行動したりせず,また本件組合のために,又はその計算におい
て,本件組合にいかなる支出,経費,負担,義務又は債務を負担させず,又は負担
させることを企図しないことを誓約し,同意する。
 組合員は,本件組合が融資契約上のすべての債務を完済するまで,さらに本件組
合が本件映画の権利,権原及び権益を保有している限り,本件組合の解散動議をし
ないことを誓約し,同意する。
 イ 本件融資契約(貸主:ABNアムロ銀行,借主:本件組合)
 (ア) 約定金額は,26億9053万1250円(本件金員)であり,本件借入
金は,貸主が本件融資契約に基づき融資する約定金額に,その後発生するあらゆる
利息と,本件融資契約に従って組み入れられる全利息を加えたものである。
 利息は年率6.07%で月複利とし,延滞利息は上記利率に年率2%を加えた利
率とする。
 (イ) 借主(本件組合)は,本件借入金が,ジェネシスから本件映画を購入する
ためにのみ使用され,他の目的のためには使用されないことに同意する。
 借主は,返済日(原則として,借入日から7年目に当たる日を意味する。)に,
1回払いで,貸主に本件借入金残高を返済しなければならない。
 ただし,借主は,本件配給契約に定める「ネット支払額」,「純支払保証額」及
び「延長前払額」のいずれかを受け取った場合には,直ちにこれに相当する金額
を,また,本件配給会社であるMFDC及びその承継人等が本件オプション契約書
に基づくオプションを行使した場合,本件オプション契約書に基づきオプション価
額が支払われる日において,本件借入金のすべての残額を,期日前返済に伴う何ら
かの損失金の補償のための追加額とともに支払わなければならない。貸主は,これ
らを受領したときは,本件借入金の期限前返済として充当しなければならない。
 (ウ) 借主は,ABNアムロ銀行に2つの預金口座(以下「本件各口座」とい
う。)を設定し,MFDC及び保証人(並びにその承継人等)に対し,本件配給契
約書,本件オプション契約書,「SECURITYAGREEMENT」と題する担保契約書及び本
件保証契約書に関するあらゆる支払を,それぞれ本件各口座にのみ行うよう指示し
なければならない。
 借主は,貸主の文書による事前の同意なしに,本件保証契約書,本件配給契約
書,本件オプション契約書又は上記担保契約書を変更したり,あるいは,いかなる
方法によろうとも本契約に基づく貸主の権利に重大な影響を及ぼすような本件組合
契約の変更を行ってはならない。
 (エ) 本件融資契約には,その付属書における債権譲渡契約及び口座質権設定契
約が含まれている。
 a MLFEとABNアムロ銀行が署名して作成された,本件組合とABNアム
ロ銀行を契約当事者とする「ASSIGNMENTAGREEMENT」と題する書面(以下「本件債
権譲渡契約書」という。)には,本件組合は,本件配給契約書及び本件オプション
契約書に基づき,MFDCから受領するすべての権利及びその全金額,本件保証契
約書に基づいてHBU銀行がした保証に関するすべての権利並びにこれらに代替す
るものを本件融資契約に係る債務の担保として,ABNアムロ銀行に譲渡する旨の
条項の記載がある。また,本件債権譲渡契約書には,担保とされているMFDC又
は本件保証銀行からの支払金額の支払方法について,本件組合名義の本件各口座に
直接支払われるものとする旨の記載がある。
 b MLFEとABNアムロ銀行が署名して作成された,本件組合とABNアム
ロ銀行を契約当事者とする「ACCOUNTPLEDGEAGREEMENT」と題する口座質権設定契
約書には,ABNアムロ銀行が,本件各口座に質権を設定する旨の記載がある。
 ウ 本件売買契約(売主:ジェネシス,買主:本件組合)
 (ア) 本件映画の価額は,36億1672万6250円である。
 ジェネシスは,本件映画の世界中における著作権,オリジナル・ネガティブ及び
本件映画が化体されている他の有体物に関する権利,権原及び所有権益のすべてを
本件組合に売却,譲渡,移転,許諾等するものとし,本件組合は,それらのすべて
を購入し,また,取得するものとする。売主(ジェネシス)は,本件売買契約書の
作成・交付とともに,①本件映画に関する物件をラボラトリー・アクセス・レター
によって,買主(本件組合)の名義へ変更し,②本件映画に関する「BILLOF
SALE」を買主に交付し,③「ASSIGNMENT」によって,買主に対し,著作権の譲渡を
行う。
 (イ) 売主は,買主に対し,①買主は,本件映画に関し,世界中における著作
権,オリジナル・ネガティブ及び本件映画又はその部分が化体されている他の有体
物及びその関連権利に対する売主の完全な権利(この権利には,買主とMFDCと
の間で締結される本件配給契約において,買主がMFDCに与えるべきすべての権
利を与えることを可能とするすべての権利を含む。)を得ること,②本件映画は,
適切な品質規格,一定の上映時間並びにアメリカ合衆国での上映上の一定のレーテ
ィング取得のがい然性等を有すること,③本件映画は,著作権等上の問題がないこ
と,④本件映画は,試写等を除き,上映されたことがないことを保証する。
 エ 本件配給契約(ライセンサー:本件組合,配給者:MFDC)
 (ア) 「当初契約期間」とは本件配給契約開始の日から7年間をいい,「延長期
間」とは本件組合が期間の「延長オプション」(ExtensionOption)を行使した場
合のその後の7年間をいい,両者を併せて「期間」という。
 (イ) ライセンサー(本件組合)は,配給者に対し,①本件映画は,適切な品質
規格,一定の上映時間並びにアメリカ合衆国での上映上の一定のレーティング取得
のがい然性等を有すること,②本件映画は,著作権等上の問題がないこと,③本件
映画は,試写等を除き,上映されたことがないこと,④本件配給契約により配給者
に与えられた権利等は,本件映画に関するいかなる契約の不履行,違反,解除,終
了,又はその結果として解除,変更その他の不利な影響を受けず,またライセンサ
ーは,契約期間中いかなる契約の改正,変更,終了,又は契約の条項による配給者
の権利に不利益な影響を与えるような変更,終了,解除等を行わないこと,⑤ライ
センサーは,本件映画に関する権利又は権益につき,配給者に与えられた権利に悪
影響を与えるような
売却,譲渡等を行わないことを保証する。
 (ウ) ライセンサーは,配給者に対し,本件配給契約の期間中,次の権利を単独
かつ排他的に与える。
 ① 配給者の裁量により,題名の選択,変更をすること及び配給者の指定した題
名で全世界で本件映画を封切ること。
 ② 配給者の裁量により,本件映画,本件映画のオリジナル・ネガティブその他
の本件映画が化体されている有体物をカットし,編集し,追加し又は変更するこ
と,及び外国版を作成(字幕付け,吹替え等を含む。)すること。
 ③ 配給者の選択するラボラトリー等に本件映画に関するポジティブ・プリン
ト,ビデオテープ,ディスクその他を作成させること等(上記ポジティブ・プリン
ト等は,配給者の指示によってのみ上記ラボラトリーから移動又は引渡しすること
ができ,配給者の同意なしには,本件組合その他のいかなる者にも引き渡されな
い。)。
 ④ 配給者の裁量により,本件映画の広告,宣伝,普及等を行うこと(なお,ラ
イセンサーは,配給者の事前同意なしに,本件映画に関する広告等をすることはで
きない。)。
 ⑤ 配給者は,本件配給契約の期間を通じ,その供与の時点における慣習に従
い,上記の期間を超える期間にわたる本件映画の公開の権利を第三者に与えること
ができ,上記第三者の権利は,本件配給契約の期間終了によって影響されないこ
と。
 (エ) 完成し公開準備のできた本件映画は,本件配給契約書の作成,交付後直ち
に配給者に交付されるものとする。
 本件映画の製作がいまだ進行中の場合,ライセンサーは,本件映画の化体された
有体物をすべて現状のまま引き渡すこととし,配給者は,その裁量により,この有
体物のカット,編集,追加,削除等の権限を有することとする。
 (オ) 配給者は,ライセンサーに対し,以下の金員を支払う。
 a リリース支払額(ReleasePaymentAmount)
 リリース支払額は,本契約締結の日の翌日から本件映画の封切りの日の前日まで
の間の各暦日に対して1200ドルである。リリース支払額の総額は,グロス支払
額(GrossPaymentAmount)の最初の支払と同時にドルで支払われなければならな
い。
 b グロス支払額
 グロス支払額は,グロス支払損益分岐点887万5000ドル(GrossPayment
Breakpoint)に達するまでは,調整グロス収益(AdjustedGrossProceeds)の10
%相当額とし,グロス支払損益分岐点を超えた場合,①グロス支払損益分岐点以後
の調整グロス収益の10%相当額から本件映画に関する第三者配当(付属書Aの6
Iに記載される本件映画に関して支払われ,又は生ずるすべての原価,費用及びそ
の他の金額の合計額を意味する。)の累積額を控除した額又は②グロス支払損益分
岐点以後の調整グロス収益の7.5%相当額のいずれか大きい方の金額とする。
 c ネット支払額(NetPaymentAmount)
 ネット支払額は,調整ネット収益(AdjustedNetProceeds)のライセンサーの取
り分(調整ネット収益の累積合計額がネット支払損益分岐点2772万5000ド
ル(NetPaymentBreakpoint。本件映画の購入価額とされる金額と同一である。)
に達するまでは,調整ネット収益の100%相当額を意味し,ネット支払損益分岐
点を超える場合には調整ネット収益の50%相当額を意味する。)の累積額が,グ
ロス支払額の累積合計額を超える金額とする。
 d 純支払保証額(NetGuaranteePayment)
 純支払保証額とは,最低支払保証額(NetMinimumGuaranteeAmount。付表Ⅱに
記載の金額37億4892万1624円である。)に本契約締結日の7年目の応答
日から支払日までに係る適用利率(年6.07%月複利計算)により計算される利
息を加えた金額が,当初の全契約期間における次の金額の合計額を超える部分の金
額をいう。
 (a) ネット支払額の合計額
 (b) 各ネット支払額の支払日から決済日(NetGuaranteePayment Date。当初
契約期間に係る7回目の会計期間について,配給者が,調整ネット収益に係る報告
書の提出を要求される日である。)まで年6.07%月複利計算した各ネット支払
額に係る利息額
 純支払保証額は,決済日までに支払われなければならない。
 ライセンサーに対し純支払保証額を支払う配給者の義務は,いかなる理由によっ
て本契約が終了しても存続するものとする。本契約の他の条項に反対のものがある
か否かにかかわらず,純支払保証額は,いかなる理由があろうとも,配給者によっ
て,支払停止,支払延期,相殺,反訴を行うことなく全額が日本円で支払わなけれ
ばならない。
 e 固定費用支払額(FixedPayment)
 固定費用支払額は,付属書3に記載された総額26万1487.02ドルであ
り,平成4年11月30日に5万ドル,平成5年11月30日に5万ドル,平成6
年11月30日に5万ドル,平成7年11月30日に3万5000ドル,平成8年
11月30日に3万5000ドル,平成9年11月30日に4万1487.02ド
ルが支払われなければならない。
 (カ) 本件配給契約に基づく配給者の支払義務は,本件オプション契約書に記載
されたクラスAオプション(ClassAPurchaseOption)の行使により,本件オプシ
ョン契約書2条eに規定される範囲でのみ,自動的に消滅する。
 配給者(又はその譲受人)がクラスAオプションを行使しなかった場合,ライセ
ンサーは,当初契約期間の終了時から本件配給契約を7年間延長する延長オプショ
ンを有する。延長オプションは,本件オプション契約書に記載された第2オプショ
ン期間満了時に,クラスAオプションの行使されていない場合に限り,本件配給契
約の締結後6年経過後の日から行使できる。ライセンサーが延長オプションを行使
した場合,延長された本件映画に係る本契約の期間は,当初契約期間に係る本契約
のすべての条件及び状態のまま自動的に延長期間分について延長される。
 ただし,配給者からライセンサーへの支払については,前記(オ)に代えて次の金
額を支払う。
 a 延長前払額(ExtensionAdvance)
 延長前払額は,3億6167万2625円(本件映画の購入価額の10%相当
額)で,当初契約期間終了後,90日以内に支払われる。
 b 延長期間におけるグロス支払額
 c 延長期間におけるネット支払額が,延長前払額及び純支払保証額の合計額を
超える部分の金額
 なお,延長前払額は日本円で支払い,その他の支払はドルで行う。
 配給者がクラスAオプションを行使せず,ライセンサーが延長オプションを行使
しなかった場合,本件配給契約は,第2オプション期間終了の日に終了する。
 (キ) 本件映画には,万国著作権条約及び修正合衆国著作権法に従った著作権表
示が含まれているものとする。配給者は,ライセンサーの請求により,本件組合等
(本件組合及び組合員を指す。以下同じ。)が著作権者であることを示す本件映画
の著作権登録申請を米国において行わなければならない。配給者は,自らの名義あ
るいは著作権者の名義で,本件映画の不正な複製,公開若しくは本件映画の著作権
の侵害を防止し,又はライセンサー若しくは配給者の権利の侵害等を防止するた
め,必要又は適当と認める手段をとることができるものとする。ライセンサーは,
配給者に対し,上記の手段をとるために必要な,撤回不能の代理権を与えることと
し,そのため,ライセンサーは配給者に対し,委任状を作成交付する。
 配給者は,本件映画に関するプリント及びその他のフィルムを破棄することがで
きる。ただし,ライセンサーの負担で作成されたネガティブ等は除く。
 (ク) 配給者は,いわゆる「メジャー」(大手映画配給会社)に本契約を譲渡す
ること,又は,その裁量により選択するサブ配給会社(subdistributors)に対し本
契約上の配給者の権利の使用を許諾することができる。ただし,ライセンサー及び
配給者は,本契約に明示されている場合を除き,他方の当事者の事前の書面による
同意なしには,本契約上の権利を譲渡することはできない。
 本件組合等は,契約締結時に,略式「Exclusive License」(包括許諾)を配給
者に交付する。
 ライセンサーは,配給者から本契約に基づく権利の証明,維持,有効化又は保護
のために必要かつ適切な文書を要求された場合,上記要求を実施しなければならな
い。ライセンサーが上記要求を実施しない場合には,配給者がライセンサーの代理
人として上記要求を実施する権利を,ライセンサーは配給者に与えるものとする。
 (ケ) 本契約又は関連契約の失効又は終了は,本契約によって配給者に与えられ
た又は与えることが合意された本件映画に関する権利,権原等に影響を与えない。
ライセンサーの配給者に対する保証等は,本契約の失効又は終了にかかわらず有効
に存続するものとする。
 配給者が本契約に違反したときのライセンサーの権利及び救済は,損失の回復に
限られ,ライセンサーは,本契約を終了させる権利,本件映画の配給者の権利等を
取り消す権利,又は本件映画の公開等を規制し若しくは制限することを含むすべて
の権利又は救済を放棄する。
 また,配給者の本件映画に関する権利は,配給者が本契約に基づくライセンサー
への支払をしなくても,終了,解除されることはなく,上記不履行があった場合
の,ライセンサーの唯一の救済は,金銭上の損失の回復を求めるための法律上の措
置である。
 オ 本件オプション契約
 (ア) 本件組合等は,MFDCに対し,本件組合等の本件映画に関するすべての
権利,権原及び権益を購入し取得する,無条件で,取消不能な,かつ独占的な権利
及び購入選択権(クラスAオプション)を与える。
 本件映画に関して,クラスAオプションを行使する能力を危うくしたり,損なっ
たり,その他悪影響を及ぼしたりするような可能性がある何らかの事実等が生じた
と,MFDCが誠実かつ合理的に判断した場合,MFDCは,本件オプション契約
締結日から同日以降,7年後にあたる日のロサンゼルス時間の深夜12時までの期
間(第1オプション期間)にいつでもクラスAオプションを行使することができ
る。
 また,上記事実が発生しなかった場合においても,MFDCは,本件組合オプシ
ョン契約の日から同日以降6年経過した日以降において,MFDCが本件組合から
第2オプション期間開始についての書面による通知を受け取った日から1年を経過
した日のロサンゼルス時間の深夜12時までの期間(第2オプション期間)中に,
いつでもクラスAオプションを行使することができる。
 (イ) MFDCがクラスAオプションを行使した場合,本件映画に関する本件組
合等の権利,権原,権益,本件映画売買契約に基づく本件組合の権利等は,クラス
Aオプションの効力発生日に,自動的に,取消不能な状態で,MFDCに移転,譲
渡等される。この場合,本件組合等は,いかなる契約書,証書等も作成,交付する
必要がない。
 クラスAオプションの行使により,本件配給契約は自動的に終了する。
 しかし,配給契約の終了は,MFDCに対し,配給契約に基づく当初契約期間
(7年間)において,本件映画に関するネット支払額及び純支払保証額に基づく支
払義務を免除し,又は免除するとみなしあるいは解釈するものではない。当該支払
は,配給契約に規定されるとおり,MFDCにより継続される。
 MFDCがクラスAオプションを行使した場合には,本件組合に対し,一定の本
件クラスAオプション価額(ClassAOptionPrice)を支払うものとし,最低でも
「固定支払額」3億6167万2625円(本件映画の購入価額の10%相当額)
を支払う。
 (ウ) 本件組合の各組合員は,MFDCに対し,組合員の本件組合に対するすべ
ての権利,権原及び権益を無条件で,取消不能でかつ独占的な権利及び購入選択権
(クラスBオプション)を与える。
 本件組合の各組合員のいずれかが本件組合に対する権利等に関して,クラスBオ
プションを行使する能力を危うくしたり,損なったり,その他悪影響を及ぼしたり
するような可能性がある何らかの事実等が生じたと,MFDCが誠実かつ合理的に
判断した場合,MFDCは,前記の組合員(以下「該当組合員」という。)に対し,
第1オプション期間及び第2オプション期間中のいつでも,クラスBオプションを
行使することができる。
 MFDCがクラスBオプションを行使した場合,該当組合員の本件組合に対する
権利等は,自動的に,取消不能な状態で,移転,譲渡等される。なお,該当組合員
は,いかなる契約書,証書等を作成,交付する必要はない。
 MFDCがクラスBオプションを行使した場合には,該当組合員に対し,一定の
本件クラスBオプション価額(ClassBOptionPrice)を支払う。
 (エ) 本件組合は,MFDCの事前の書面による同意なしに,そのすべての資産
につき譲渡,担保提供等をすることができないことを保証する。
 本件組合の組合員及び業務執行者は,MFDCの事前の書面による同意なしに,
本件各契約等を改正,修正又は終了させることができないことを保証する。
 本件組合の組合員は,MFDCが本件オプション契約に基づき行い,また本件オ
プション契約でカバーされ,期待されている取引を完遂するために要求するすべて
の契約,文書及び指図書につき,署名し,認知し,記録し,保管すること及びすべ
ての行動をとることについて,各組合員の合法的な代理人として,MFDCを撤回
不能で指名する。
 MFDC及びその承継人は,いかなる者に対しても,本件オプション契約に基づ
くすべての権利を譲渡し,又はすべての義務を引き受けさせることができ,この承
継人等は,本件オプション契約に関しMFDCと同一の地位に立ち,本件組合等
は,MFDCの単独かつ絶対的な裁量により与えられる事前の書面による同意なし
に,本件オプション契約による権利又は義務を譲渡し,又は引き受けさせることが
できない。
 カ 本件保証契約(保証人:HBU銀行,相手方:本件組合)
 保証人(HBU銀行)は,ライセンサー(本件組合)に対し,配給者(MFD
C)のネット支払額,純支払保証額並びに固定費用支払額に相当する額の支払を保
証し,配給者が前記の各支払をしなかった場合には,原価,費用あるいは保証人又
は配給者によって支払われ,源泉される税金の合計額の支払をHBU銀行が要求さ
れることがないという条件の下で支払う。
 ただし,上記金額の現在価値が最低支払保証額の現在価値を,いずれも年率6.
07%月複利の割引率で計算したところで,超えない範囲とする。
 本件保証契約に基づく支払は,円貨により,ABNアムロ銀行の本件組合名義の
本件各口座に払い込まれる。
 キ 担保契約
 MLFEとMFDCが署名して作成された,本件配給契約書及び本件オプション
契約書に記載された本件組合等の義務の完全な履行を担保することに係る書面に
は,「SECURITYAGREEMENTOption--MFEtoMFDC」と題する書面(以下「本件オプ
ション担保契約書」という。)及び「SECURITYAGREEMENTDistribution--MFEto
MFDC」と題する書面(以下「本件配給担保契約書」といい,本件オプション担保契
約書と併せて「本件担保契約書」という。)が含まれ,次の事項が記載されてい
る。
 ① 本件配給契約書及び本件オプション契約書に記載する権利につき,MFDC
に,担保を設定し,あるいは譲渡,移転等をすること。
 ② 担保物件は,本件映画から派生する著作物,本件映画のオリジナル・ネガテ
ィブ及びその他の化体物件に対する本件組合のすべての権利,権原及び権益であ
り,各組合員にあってはその組合員としての権益とすること。
 ③ 本件組合は,MFDCの事前の書面による同意なしに,担保物件又はこれに
関する権利の担保提供,譲渡,引渡し等をしてはならず,MFDCは,本件担保契
約書に記載する権利及び担保物件又はこれに関する権利につき,本件組合の事前の
書面による同意なしに,第三者に対し担保提供,譲渡,引渡し等をすることができ
ること。
 ④ 本件組合は,カリフォルニア州及びニューヨーク州当局へのUCCファイリ
ングのためのファイナンシング・ステイトメント等及び著作権担保・譲渡証,MF
DCが要求するその他の書類をMFDCに交付しなければならず,要求後5日以内
に本件組合が所要の措置をとらない場合,本件組合は,撤回不能で,MFDCがM
FDC自身及び本件組合の名においてすべての措置をとることを授権し,また,M
FDCを代理人に任命すること。
 ⑤ 本件組合は,本件売買契約書記載のラボラトリーを担保権者としてのMFD
Cの代理人に撤回不能で任命し,ラボラトリーは,MFDCの代理人として,本件
組合の債務不履行が生じた場合,MFDCの指示により担保物件の全部又は一部を
処分することが授権されること。
 ⑥ 本件組合等の債務不履行の場合,MFDCは本件組合等の代理人に撤回不能
で任命され,代理人として,書簡の開示等のほか,本件配給契約,本件映画売買契
約その他の関連契約,本件組合の組織上の規定等による権利を行使すること等がで
きること。
 ク 著作権譲渡担保契約
 MLFEとMFDCが署名して作成された,本件組合の組合員とされる者のMF
DCに対する著作権譲渡担保権付与に係る「AgreementofAssignmentof
CopyrightbywayofSecurity」と題する書面(以下「本件著作権譲渡担保契約
書」という。)には,各組合員は,本日,MFDCに対する本件オプション契約に
基づく一切の債務の履行等を担保するため,本件映画の著作権を譲渡したことなど
が記載されている。
 (2) サブ配給契約について
 本件映画が平成4年7月10日に著作物として最初に公表された際に著作権登録
原簿に表示された著作者名は「TheTwentiethCenturyFox」(20世紀フォック
ス。以下「フォックス」という。)であり,本件映画を実際に全世界に配給したの
はフォックスであった(乙1ないし3)。
 そして,原判決の第3の1(2)に説示するとおり,本件取引においては,平成3年
11月29日に,上記(1)の本件各契約等のほか,MFDCとフォックスとの間で,
サブ配給契約が締結されたものと推認される。そのサブ配給契約の内容は,オリッ
クス映画投資事業第三組合(以下「第三組合」という。)が行った本件取引と類似
した取引における「TCFCFILMDISTRIBUTIONCOMPANYB.V.」(本件におけるMFD
Cと同様の立場にある者。以下「TFDC」という。)とフォックスとの間で平成
2年6月29日付けで締結された別件映画についての「SABDISTRIBUTION
AGREEMENT」(TFDCをライセンサーとし,フォックスをサブ配給者とするもの。
以下「別件サブ配給契約」という。)と類似するものと推認される(本件のサブ配
給契約を以下「本件サブ配給契約」という。)。
 別件サブ配給契約に係る契約書(以下「別件サブ配給契約書」という。)の記載
内容は原判決の判示のとおりであり,その記載内容の概要は,以下のとおりである
(なお,上記の別件類似取引においては,オリックス株式会社を業務執行者とする
第三組合が,①「ALGEMENEBANKNEDERLANDN.V.」(以下「ABN銀行」とい
う。)との間で元金20億9520万円の融資を受ける旨の契約(以下「別件融資
契約」という。),②ジェネシスとの間で上記融資金に各組合員の出資金を加えた
金額を代金として別件映画を購入する旨の契約(以下「別件売買契約」とい
う。),③TFDCとの間で別件映画の配給権を付与する旨の契約(以下「別件配
給契約」という。),④HBU銀行との間でHBU銀行がTFDCによって別件配
給契約に基づいて支払われるべき一定額
の支払を保証する旨の契約,⑤TFDCとの間で別件映画のすべての権利,権原及
び権益の買取権等に関するオプション契約を締結しており,各契約の内容は,本件
各契約と類似する内容である。)。
 ア 「当初契約期間」とは別件配給契約開始の日から7年間をいい,「延長期
間」とは第三組合が期間の延長オプションを行使した場合のその後の7年間をい
い,両者を併せて「期間」という。
 イ ライセンサー(TFDC)は,サブ配給者(フォックス)に対し,①別件映
画は,適切な品質規格,一定の上映時間並びにアメリカ合衆国での上映上の一定の
レーティング取得のがい然性等を有すること,②別件映画は,著作権等上の問題が
ないこと,③別件映画は,試写等を除き,上映されたことがないこと,④別件サブ
配給契約によりサブ配給者に与えられた権利等は,別件映画に関するいかなる契約
の不履行,違反,解除,終了又はその結果として,解除,変更その他の不利な影響
を受けず,またライセンサーは,契約期間中いかなる契約の改正,変更,終了,又
は契約の条項による配給者の権利に不利益な影響を与えるような変更,終了,解除
等を行わないこと,⑤ライセンサーは,いかなる者にも,別件映画に関する権利又
は権益につき,サブ
配給者に与えられた権利に悪影響を与えるような売却,譲渡等を行わないことを保
証する。
 ウ ライセンサーは,サブ配給者に対し,別件配給契約の期間中,次の権利を単
独かつ排他的に与える。
 ① サブ配給者の裁量により,題名の選択,変更をすること及び配給者の指定し
た題名で全世界で別件映画を封切ること。
 ② サブ配給者の裁量により,別件映画,別件映画のオリジナル・ネガティブそ
の他の別件映画が化体されている有体物をカットし,編集し,追加し又は変更する
こと。また,外国版を作成(字幕付け,吹替え等を含む。)すること。
 ③ 配給者の選択するラボラトリー等に別件映画に関するポジティブ・プリン
ト,ビデオテープ,ディスクその他を作成させること等(上記ポジティブ・プリン
ト等は,配給者の指示によってのみ上記ラボラトリーから移動又は引渡しすること
ができ,サブ配給者の同意なしには,いかなる者にも引き渡されない。)。
 ④ サブ配給者の裁量により,別件映画の広告,宣伝,普及等を行うこと(な
お,ライセンサーは,サブ配給者の事前同意なしに,別件映画に関する広告等をす
ることはできない。)。
 ⑤ サブ配給者は,別件配給契約の期間を通じ,その供与の時点における慣習に
従い,前記期間を超える期間にわたる別件映画の公開の権利を第三者に与えること
ができ,上記第三者の権利は,別件配給契約の期間終了によって影響されないこ
と。
 エ 完成し公開準備のできた別件映画は,別件配給契約書の作成,交付後直ちに
サブ配給者に交付されるものとする。
 別件映画の製作がいまだ進行中の場合は,ライセンサーは,別件映画の化体され
た有体物をすべて現状のまま引き渡すこととし,配給者は,その裁量により,この
有体物をカットし,編集し,追加し,削除する等の権限を有することとする。
 オ サブ配給会社は,ライセンサーに対し,以下の金員を支払う。
 (ア) グロス支払額
 グロス支払額は,グロス支払損益分岐点に達するまでは,調整グロス収益の1
0.25%相当額とし,グロス支払損益分岐点を超えた場合,①グロス支払損益分
岐点以後の調整グロス収益の10.25%相当額から第三者配当の累積額を控除し
た額又は②グロス支払損益分岐点以後の調整グロス収益の7.6875%相当額の
いずれか大きい方の金額とする。
 (イ) 保証支払金額
 保証支払額は,サブ配給契約実行時に,払戻不可能として支払われる附属書類Ⅱ
に明記された金額1372万5000ドル全額とする(1ドル153円で計算する
と,ほぼ別件融資契約上の融資金額20億9520万円に見合う金額となってい
る。)。
 (ウ) ネット支払額
 ネット支払額は,調整ネット収益のライセンサーの取り分の累積額がグロス支払
額の累積合計額を超える金額とする。
 ただし,ネット支払額の累積合計額が,ネット支払開始点(NetPayment
CommencementPoint)を超過する部分についてのみ支払われるものとする。
 (エ) リリース支払額
 リリース支払額は,附属書類Ⅱに明記された金額に,配給契約締結の日の翌日か
ら当該映画の封切りの日の前日までの間の全暦日数を乗じたものに相当する額とす
る。
 カ 調整グロス収益及び調整ネット収益は,添付別紙Aに従って定義・計算・決
定・報告され,すべての支払も添付別紙Aに従って決定され,支払われる。
 ネット支払損益分岐点は,附属書類Ⅱに記載された金額を意味する。
 キ 第三組合が,ライセンサーと第三組合との間の配給契約9条の規定に従って,
延長オプションを行使した場合,サブ配給契約は,当初期間の満了した日から自動
的に7年間延長される。
 ただし,サブ配給者からライセンサーへの支払については,前記オに代えて次の
金額を支払う。
 (ア) 延長期間におけるグロス支払額
 (イ) 延長期間におけるネット支払額が,第三組合とライセンサーとの間の配給
契約書に基づいて支払われるべき延長前払額及び純支払保証額の合計額を超える部
分の金額
 本条項の規定は,ライセンサーに対し,当初期間に関して前記オに規定する額を
支払うサブ配給者の義務を免除するものではない。
 ク ライセンサーは,サブ配給者に対し,ライセンサーの権利,権原,特権及び
優先権を,取消不能で,絶対的にかつ無条件に譲渡し,移転し,その地位を与え
る。
 また,仮に,サブ配給会社がクラスAオプションあるいはクラスBオプションの
いずれかを行使した場合には,ライセンサーは,第三組合に対し,クラスAオプシ
ョン価額あるいはクラスBオプション価額のうちのオプション契約に詳述する金額
を第三組合に支払うことを条件として,ライセンサーと第三組合との間で締結され
たオプション契約及び担保契約に基づくライセンサーのすべての権利,責務及び義
務をサブ配給者に委譲する。
 なお,これらは,ライセンサーとサブ配給者との間の平成2年6月29日付けの
譲渡契約の条項に従う。
 ケ サブ配給者は,いかなる者の同意もなしで,その権利の譲渡又は他の方法に
よる引渡しをすることができ,あるいは,その義務を委譲することができる。
 ただし,いずれの場合であっても,譲受人が譲渡日以後に生ずるサブ配給者の契
約,支払義務及び責務を引き受け,かつ,履行することを条件とする。
 本契約に明示されている場合を除き,いかなる当事者が,他方の当事者の事前の
書面による同意なしに本契約上の権利を譲渡したり,義務を委譲したりしても,そ
れらは当初にさかのぼって無効とされる。
 コ 本契約の条項にもかかわらず,ライセンサーは,サブ配給者が,劇場用映画
配給事業及び自身又は他の者によるテレビ番組製作に携わることを承認する。
 本契約により引き渡された映画の基本アイディア,テーマ,題名等に基づく他の
劇場用映画の配給又はテレビ番組の製作に係るサブ配給者の権利をいかなる方法で
も限定したり,制限したりするとみなされることはない。
 サ ライセンサーは,サブ配給契約の実施及び引渡しと同時に,ABN銀行とラ
イセンサーとの間における平成2年6月29日付けの信託契約(TrustAgreement)
の目的のためにのみ,ABN銀行に対し,保証支払金額を取消不能,かつ,無条件
に信託する。
 ライセンサーは,保証支払金額又はそれに係る利益,所有権の一部あるいは全部
を保持したままとしたり,管理権,支配権あるいは監督権を行使したり,振る舞っ
たりしないものとする。
 (3) 信託契約について
 また,原判決の第3の1(3)に判示するとおり,本件取引と類似する取引における
契約内容等からすれば,本件取引においては,前記(1)の本件各契約等のほか,MF
DCとABNアムロ銀行との間において,①MFDCは,フォックスが本件サブ配
給契約に基づいて平成3年11月29日にMFDCに対して支払ったものと推認さ
れる保証支払金額(以下「本件保証支払金額」という。)を信託基金としてABN
アムロ銀行に信託し,②ABNアムロ銀行は,受託者として,受益者たるHBU銀
行に対し,HBU銀行が行った本件保証契約に基づく支払について,MFDCに代
わって信託基金から返済する旨の信託契約(以下「本件信託契約」という。)に係
る契約書(以下「本件信託契約書」という。)が同日付けで作成されていたものと
推認される。
 そして,上記信託基金となる本件保証支払金額は,少なくとも,本件金員(本件
融資契約に基づく融資金26億9053万1250円)を平成3年11月当時の為
替レート等によってドル換算した金額であったものと推認される。
 (4) 本件取引について
 上記認定のとおり,本件取引に当たっては,平成3年11月29日付けで,本件
各契約書のほか,本件債権譲渡契約書,本件オプション担保契約書,本件配給担保
契約書,本件著作権譲渡担保契約書,本件サブ配給契約書,本件信託契約書が作成
されていることが認められ,本件映画に関連するこれらの各契約書は,相互に他の
契約の存在を前提としているものであり,これらの各契約書は,一連の取引を構成
するものとして,相互に密接に関連し合い,不可分のものとして作成されていたも
のと認められる。
 (5) 本件映画の著作権について
 乙3(著作権登録原簿謄本)によれば,本件映画については,平成4年7月10
日に著作者をフォックスとして登録され,その著作権は平成5年1月10日にジェ
ネシスから控訴人ら本件組合の組合員に譲渡された旨の登録がされたが,同日控訴
人らから更にMFDCに譲渡された旨の登録がされていることが認められる。
 2 本件取引の概要について
 上記1の認定事実によれば,本件映画の売買に関して,平成3年11月29日の
同一日付で締結されたとされる各契約は,概要,次の各契約からなるとされてい
る。
 ① 本件組合がABNアムロ銀行から26億9053万1250円の本件金員
(2062万5000ドル相当円貨額)の融資を受ける本件融資契約
 ② 本件出資金のうちの9億2619万5000円を本件金員に加えた36億1
672万6250円(2772万5000ドル相当円貨額)を代金額として,ジェ
ネシスが本件組合に本件映画に係る一切の権利を販売するという本件売買契約
 ③ 本件組合がMFDCに対し本件映画の配給権等を付与する旨の本件配給契
約,及び本件組合がMFDCに対し本件映画のオプション権(購入選択権)を付与
する旨の本件オプション契約
 ④ MFDCがフォックスに対し,本件映画の再配給権等を付与するとともに,
フォックスが本件金員と同額と推認される本件保証支払金額をMFDCに対して支
払う旨の本件サブ配給契約
 ⑤ MFDCが,少なくとも本件金員と同額と推認される本件保証支払金額を,
信託基金として,ABNアムロ銀行に信託する旨の本件信託契約
 そして,これらの契約書に関連して,本件保証契約書,本件担保契約書,本件著
作権譲渡担保契約書,本件債権譲渡契約書,口座質権設定契約書等が作成されてい
る。
 なお,証拠(乙6,8)及び弁論の全趣旨によれば,本件組合は,本件取引に係
る手数料として,本件取引をアレンジした「MerrillLynchInternational
Limited」(以下「メリルリンチ」という。)に対し本件出資金の10%に相当する
アレンジメントフィーを,ABNアムロ銀行に対しコミットメントフィーを,業務
執行者であるMLFEに対し管理費用をそれぞれ支払うものとされていることが認
められる。
 3 本件金員の流れについて
 (1) まず,本件融資時における金員の流れについてみると,上記1,2でみた本
件取引の概要からすれば,本件組合がABNアムロ銀行から融資を受けたとされる
本件金員は,本件映画を購入するためにのみ使用されることとされており,融資が
されたのと同一の日に本件映画の売買代金としてこれに本件出資金の一部を加えた
金額がジェネシスに支払われるものとされている。また,一方で,同日に本件金員
にほぼ相当する金額が本件サブ配給契約に基づく本件保証支払金額として,フォッ
クスからMFDCに支払われ,これが本件信託契約に基づく信託基金として,AB
Nアムロ銀行に流れていることになる。
 そうすると,フォックスとジェネシスの間の金員の流れは後に検討するとして,
結局,本件金員の流れとしては,ABNアムロ銀行から同銀行における本件組合名
義の口座に融資金として入金される形になるが,同時に,信託基金としてほぼ同額
がABNアムロ銀行に信託され,その信託基金は,受益者であるHBU銀行による
本件保証契約を介して,本件融資契約に基づく返済にのみ使用されることとされて
おり,実質的にみれば,融資に係る本件金員は,同一日付でABNアムロ銀行に環
流しているものとみられる。
 (2) また,本件融資の返済時点における金員の流れについてみると,本件組合
は,本件融資契約に基づき,原則として,元金である本件金員に利率年6.07%
月複利による利息を加えた金額である41億1059万4249円を7年後に一括
返済することになるが,この返済額は,本件配給契約及び本件オプション契約に基
づき,MFDCが本件組合に支払うこととされている純支払保証額(最低支払保証
額)37億4892万1624円に延長オプションが行使された場合の延長前払額
(3億9053万1250円)又は固定費用支払額(26万1487.02ドル)
によってカバーされており,また,MFDCから本件組合に対する上記の支払につ
いては,本件保証契約に基づき,HBU銀行が純支払保証額,ネット支払額及び固
定費用支払額の支払を
保証しているところである(なお,その支払については,上記信託基金が利用され
ることとされている。)。
 そうすると,本件金員の返済時点においても,本件組合は,実質的にその返済リ
スクを負っていなかったものとみられる。
 (3) なお,フォックスとジェネシスとの間の具体的な契約関係自体は,必ずしも
明らかではないが,後記のとおり,本件映画の権利の流れからみても,本件映画の
製作者とみられるフォックスから本件映画の販売会社であるジェネシスに何らかの
権利の譲渡等の関係があったことがうかがわれるのであって,このことからすれ
ば,フォックスが支払うこととされている本件保証支払金額に関しては,本件金員
がジェネシスからフォックスに流れていることがうかがわれるところである。
 4 本件映画に係る権利の流れについて
 (1) 前記1,2の本件取引の概要からすれば,平成3年11月29日の同一日付
で,本件映画に係る一切の権利がジェネシスから本件組合に販売されたこととさ
れ,本件配給契約及び本件オプション契約により本件組合からMFDCに,さらに
は,本件サブ配給契約によりフォックスにその権利の多くの部分が移転しているこ
とになる。
 そして,前記認定の本件配給契約書によれば,MFDCは,①その裁量により,
題名の選択,変更をすること及び配給者の指定した題名で全世界で本件映画を封切
ることができ,②その裁量により,本件映画,本件映画のオリジナル・ネガティブ
その他の本件映画が化体されている有体物をカットし,編集し,追加し又は変更す
ること,及び外国版を作成する(字幕付けや吹替え等を含む。)ことができ,③そ
の選択するラボラトリー等に本件映画に関するポジティブ・プリント,ビデオテー
プ,ディスクその他を作成させることができ,上記ポジティブ・プリント等は,M
FDCの指示によってのみ上記ラボラトリーから移動又は引渡しすることができ,
MFDCの同意なしには,本件組合その他のいかなる者にも引き渡されず,④その
裁量により,本件映
画の広告,宣伝,普及等を行うことができ,本件組合は,事前の同意なしに本件映
画に関する広告等をすることはできず,⑤本件配給契約の期間を通じ,その供与の
時点における慣習に従い,上記期間を超える期間にわたる本件映画の公開の権利を
第三者に与えることができ,上記第三者の権利は,本件配給契約の期間終了によっ
て影響されず,⑥完成し公開準備のできた本件映画は,直ちにMFDCに交付さ
れ,製作進行中の場合は,本件映画の化体された有体物をすべて現状のまま引き渡
され,その裁量により,この有体物をカットし,編集し,追加し,削除する等の権
限を有し,⑦自らの名義あるいは著作権者の名義で,本件映画の不正な複製,公開
若しくは本件映画の著作権の侵害を防止し,又は,ライセンサー又は配給者の権利
の侵害等を防止するた
め,必要又は適当と認める手段をとることができ(本件組合は,配給者に対し,上
記手段をとるために必要な,撤回不能の代理権を与えることとなる。),⑧本件映
画に関するプリント及びその他のフィルムを破棄でき,⑨いわゆる「メジャー」
(大手映画配給会社)に本件サブ配給契約に係る権利を譲渡し,又は,その裁量に
より選択するサブ配給者に対し,配給者の権利の使用を許諾することができ,⑩本
件組合及び本件組合員から,包括許諾書を交付されているのである。
 これによれば,本件組合は,本件映画の使用収益に関して実質的には何らの関与
もできないというべきである。これに対し,MFDCは,本件映画につき,その裁
量により,自由に使用収益をすることができ,また,その使用収益権をさらに第三
者に譲渡することも可能なのであり,MFDCが取得することとなる権利は,本件
映画に係る権利者(本件映画の著作権者あるいは本件映画が化体されている一切の
有体物の所有権者)として有してしかるべき,本質的,かつ,重要な権利というべ
きである。
 確かに,所有者がその所有に係る物件につき,その使用収益権をリースという形
で第三者に利用させることはあり得ることである。しかし,本件配給契約及び本件
オプション契約によれば,①MFDCが本契約に違反したときの本件組合の権利及
び救済は,損失の回復に限られ,本件組合は,本件配給契約を終了させる権利,本
件映画の配給者の権利等を取り消す権利,又は本件映画の公開等を規制し若しくは
制限することを含むすべての権利又は救済を放棄するものとされ,MFDCの本件
映画に関する権利は,MFDCが本件配給契約に基づく本件組合への支払をしなく
ても,終了,解除されることはなく,その不履行があった場合の,本件組合の唯一
の救済は,金銭上の損失の回復のみであるとされていること,②MFDCは,本件
組合の本件映画に関
するすべての権利,権原及び権益を本件組合から買い取る権利であるクラスAオプ
ション,及び,本件組合の各組合員が本件組合に対して有するすべての権利,権原
及び権益を本件各組合員から買い取る権利であるクラスBオプションを付与されて
いることが認められる。これによれば,本件組合は,本件映画フィルムの所有者と
して,本件映画の使用収益権を取り戻すなどの権限すらほぼ認められていないので
あり,本件組合には,本件映画に係る一切の権利者としての実質的な権利は残され
ていないものとみざるを得ない。
 しかも,前記認定のとおり,本件組合は,さらに,MFDCとの間において,本
件担保契約書,本件著作権譲渡担保契約書も作成しており,これらによってMFD
Cの上記各権利等を担保している。また,前記のとおり,著作権登録原簿上も,ジ
ェネシスから本件組合の各組合員に対する本件著作権譲渡の登録と同時に本件組合
の各組合員からMFDCに対する譲渡担保設定契約による著作権の譲渡登録が行わ
れており,対外的にみても,本件組合ないし組合員の権利者としての地位は実質的
には残されていないというべきである。
 (2) 以上のとおり,本件組合は,本件映画の一切の権利を取得したとされる平成
3年11月29日の同一日付で,直ちに,本件映画に係る権利者として有していて
しかるべき本質的かつ重要な権利をすべてにわたってMFDCに与えるものとさ
れ,さらに,MFDCは,同日に,本件サブ配給契約書によって,MFDCが本件
組合から与えられた権利のほとんどをフォックスに与えるものとされていることが
認められる。
 そうすると,本件各契約及び本件サブ配給契約上,本件映画に係る一切の権利
は,本件映画の著作権及び本件映画の化体された映画フィルム等の有体物の所有権
を含めて,そのほとんどが,平成3年11月29日の同一日付で,ジェネシスから
本件組合,本件組合からMFDC,MFDCからフォックスへと流れる構造となっ
ているものと認められる。
 (3) なお,本件映画に関するフォックスとジェネシスとの間の具体的な契約関係
自体は,必ずしも明らかではないが,証拠(乙1,2,9,12,13,14,2
0,21,27,37)及び弁論の全趣旨によれば,①フォックスは米国における
大手の映画製作・配給会社であり,本件映画を全世界に配給していること,②ジェ
ネシスは,本件取引はもとより,別件売買契約を始めメリルリンチ等がアレンジし
た多数の類似した取引において映画の販売会社として関与しているが,その活動の
実態は必ずしも明らかではなく,信用格付けもされていない会社であることが認め
られる。こうした事実からすれば,ジェネシスが自主的に多数の映画の製作ないし
買取りをしているものとは考え難く,フォックスとジェネシスとの間で,フォック
スの製作ないし買取
りに係る本件映画の権利を何らかの形でジェネシスに移転する旨の契約関係があっ
たことがうかがわれるところである。
5 本件取引の実態について
 (1) まず,本件融資契約について考察する。
 以上に説示したところによれば,本件金員は,平成3年11月29日の同一日付
で,ABNアムロ銀行から本件組合へ,本件組合からジェネシスへと流れる一方
で,フォックスからMFDC,MFDCからABNアムロ銀行へと環流する構造と
なっており,ABNアムロ銀行は,何らの金融リスクも負っていないものと認めら
れる。
 また,本件金員及び利息の返済時においても,信託基金が,本件借入金の返済原
資となるように仕組まれているから,結局,本件組合も,実質的にはその返済リス
クを負っていないものと認められる。
 さらに,本件各契約書に係る取引は一連の取引を構成するものとして,相互に関
連し合い,密接不可分のものであって,本件融資契約書上,融資される本件金員
は,本件売買契約に基づく本件映画の購入代金にのみ使用されるものと明記されて
いるところである。そして,本件売買契約が後記のとおりその実体を欠いたもので
あることをも勘案すれば,本件融資契約もその実体を欠いたものであって,本件融
資契約は,本件映画に係る権利をすべて取得するという形式を整えることにより,
本件出資金のみならず本件金員に係る部分も減価償却費とすることを可能にすると
ともに,本件融資契約に基づく利息の計上によって本件組合に租税回避による利益
を与えることを目的として,本件映画の売買代金の約75%の融資があったとの形
式を作出したものにす
ぎず,本件各契約の各当事者において,真実ABNアムロ銀行から本件組合に本件
金員を融資する意思も客観的事実も有していなかったものと推認される。
 したがって,本件融資契約は,成立していないか,少なくとも無効なものであっ
たと認められる。
 (2) 次に,本件売買契約について考察する。
 本件組合は,本件売買契約書上,本件映画に係る一切の権利を取得したものとさ
れているが,前記説示のとおり,本件取引の全体構造に照らしてみると,本件組合
が取得したとされる本件映画に係る一切の権利のほとんどは,本件映画の著作権,
本件映画が化体されている映画フィルムの所有権を含めて,本件売買契約締結後,
直ちにMFDCを経由してフォックスに移転しているのであって,本件組合が取得
した本件映画に係る権利は形式的,外形的なものにとどまり,実質的には,本件組
合は本件映画に係る権利を何ら取得していなかったものと認められる。
 そして,控訴人ら組合員の意思等についてみるに,証拠(乙6,7)及び弁論の
全趣旨によれば,本件組合の各組合員は,本件取引をアレンジしたメリルリンチに
よって作成された説明書(以下「本件説明書」という。)に基づく説明を受けて,
本件取引に参加したものと推認されるところ,本件説明書においては,本件取引
は,我が国の投資家が組合を結成し,各組合員の出資金と銀行からの借入金に係る
金員で映画を購入し,配給会社と映画の配給契約を締結し,配給会社がサブ配給会
社を使って全世界に映画を配給するとされているが,投資家が投資によって得る利
益については,映画興行の相対的成功度とともに,投資収益を構成する2番目の要
素として,映画投資に関する我が国の税法に起因すると説明され,現行の我が国の
税法では,減価償却に
関する映画の法定耐用年数は2年になっているなど税効果についての説明がされて
おり,また,その説明の対象は,映画の配給や映画に関する権利の売買等を業とす
る法人等に限られていない。さらに,上記のとおり,本件組合は,本件融資契約に
基づく借入金の返済リスクをほとんど負っておらず,本件売買契約上の売買代金の
約75%を実質的には全く負担していないものである。これらの事実からすれば,
本件組合の各組合員は,本件映画フィルムの所有権を含む一切の権利を取得すると
いう法形式をとることによる減価償却の税効果を重要な要素として,本件取引に参
加したものと推認される。そして,本件組合の各組合員は,本件映画フィルムの所
有権が課税当局によって認められることによって租税回避の効果を得ようとする意
思を有しているもの
の,本件映画に係る一切の権利を真実取得しようとする意思も能力も有していなか
ったものと認められる。
 また,本件各契約書の内容に照らせば,MFDC,フォックス,ジェネシスのい
ずれの当事者も,本件映画に係る一切の権利を本件組合及び本件組合の各組合員に
真実取得させる意思を有していなかったものと明らかに推認することができる。
 これらを総合的に判断すれば,本件映画に係る一切の権利(著作権,所有権等)
は,本件取引によって,ジェネシスから直ちにフォックスに移転したものと認めら
れ,本件組合,ジェネシス,MFDC,フォックスのいずれの当事者の意思におい
ても,本件組合に本件映画に係る一切の権利を実質的に取得させる意思も,客観的
事実も認められず,本件売買契約書は,専ら租税回避を目的として,本件組合及び
本件組合の各組合員に本件映画に係る一切の権利が移転したとの形式,外観を作出
するために作成されたものであったと認められる。
 したがって,本件売買契約も,成立していないか,少なくとも無効なものであっ
たと認められる。
 (3) なお,本件組合は,上記認定のとおり,本件出資金である10億9578万
円のうち,9億2619万5000円を本件映画の売買代金(約25%に相当す
る。)として出えんし(以下「本件出えん」という。),また,メリルリンチに対
するアレンジメントフィーのほか,ABNアムロ銀行に対するコミットメントフィ
ー,業務執行者であるMLFEに対する管理費用を支払うものとされていることが
認められる。したがって,本件組合にとって,本件取引全体がすべて何らの実体も
ないものであったということはできない。
 しかしながら,本件組合が本件出えんをしたことをもって,その出えん額の限度
で,本件映画の権利者として権利の一部(約25%)を取得したもの(本件映画に
係る一切の権利について,実質的な出えん額に応じた共有持分権を取得したもの)
とみることもできないというべきである。すなわち,本件組合が,実質的には本件
映画に係る権利を何ら取得しておらず,本件組合が取得したとされる本件映画に係
る権利は形式的,外形的なものにとどまるものであることは前記のとおりであっ
て,本件取引の全体構造からみても,本件映画を本来の権利者と本件組合とが共有
する状態を想定しているとは考え難いし,本件組合に本件出えんに応じた本件映画
の権利者としての権利が残されているものとはいい難い。また,本件説明書におい
てなされている本件取
引の収支計算は,本件組合が本件映画に係る権利(著作権,所有権等)の約25%
のみを取得し,この限度でしか減価償却が認められないとすれば,成り立たないも
のであり,本件組合の組合員が,少なくとも,本件出えんの限度で本件映画に係る
権利の一部を取得する意思があったものとみることはできない。
 むしろ,本件取引の全体構造を検討すると,本件組合は,本件出えんを行うこと
によって,MFDCひいてはフォックスから,本件映画の興行収入によって生じる
グロス支払額等の一定の金銭的利益を得る地位を得ており,他方,本件映画の製作
者においても,本件映画製作,配給,広告,宣伝等,本件映画の興行に要する費用
のうちの一定額を本件組合に負担させることによって,その興行リスクを軽減する
利点があったものというべきであり,本件出えんは,実質的には,本件組合が上記
のような金銭的利益を得るために,本件映画に係る権利の移転を伴うことなくされ
た,映画製作者に対する一種の投資とみるべきものである。そして,証拠(甲1
1,乙4ないし6,16,26)によれば,米国映画業界においては,こうした映
画投資による利益分配
を期待することが極めて困難となっているところであり,本件融資契約及び本件売
買契約は,これを取引に組み込んで,投資者に支払利息の損金計上や減価償却によ
る租税上の利益を得る可能性を付与することにより,このような状況下で映画投資
を促そうとしたものであると推認することができる。
 本件取引は,このような映画投資の実質を有するものとして意味があると認めら
れるところであるが,これによって,租税回避を目的として組み込まれ,実質的な
融資や実質的な権利移転といった実体のない本件融資契約及び本件売買契約が,そ
の実体を有することになるものではない。
 (4) 以上のとおりであるから,本件融資契約及び本件売買契約は,租税上の利益
を得ることを目的として本件取引に組み込まれた,融資契約あるいは売買契約とし
ての実体を有しない仮装の契約であって,不成立又は無効なものと認められる。
 6 控訴人の当審における主張について
 (1) 控訴人は,映画についてはネガフィルムの所有権とは別に著作権等の知的財
産権があり,本件売買契約は,その知的財産権をMFDCに与えることが大前提と
なっており,航空機リースなどと同様である旨を主張する。
 しかしながら,前記のとおり,本件取引においては,本件組合が本件映画の知的
財産権をMFDCひいてはフォックスに移転したにとどまらず,本件組合には,本
件映画に係る一切の権利者としての実質的な権利は残されていないものとみざるを
得ないのであり(前記4(1)でみたとおり,本件組合は本件映画フィルムの所有者と
して本件映画の収益権を取り戻す等の権限もほぼ失っていると認められる。),本
件組合が本件売買契約によって本件映画に係る権利を取得したものと認めることは
できない。控訴人のこの点に関する主張は,採用することができない。
 なお,本件融資契約ないし本件売買契約の効力についての前記判断が,控訴人の
主観的事情のみを根拠としてされたものでないことは,前記説示から明らかであ
る。
 (2) 控訴人は,本件組合が本件金員の融資につき,その返済リスクを負わないの
は,本件金員の借入れが,いわゆるノン・リコース融資であるからであって,この
点をもって,本件融資契約を否認することはできない旨を主張する。
 しかしながら,本件融資契約が不成立又は無効であるのは,本件組合が,実質的
に本件金員の返済リスクを負わないことのみを理由とするものではなく,前記のと
おり,本件取引全体の構造からみて,本件融資契約がその実体を欠くものであるこ
とを理由としているのであるから,控訴人のこの点に関する主張は,採用すること
ができない。
 なお,本件金員がジェネシスからフォックスに流れていることがうかがわれるこ
とは前記のとおりであるところ,仮に,そうであるとすれば,本件金員は,本件取
引において,実質的に循環しているにすぎないことになり,融資の実体を欠くもの
であることは,一層明らかというべきである。
 (3) また,控訴人は,本件売買契約及び本件配給契約のいずれにおいても,準拠
法はカリフォルニア州法であると明文で規定されているから,本件各契約の効力や
その法的性質を確定するためには,カリフォルニア州の民事制定法ないし判例法に
準拠しなければならない旨を主張する。
 しかしながら,本件においては,本件取引全体の構造及び当事者の真意を探求し
てその取引の実態を認定するという事実認定の問題が中心とされているのである
し,控訴人が行った本件取引によって生じた経済的効果が我が国の租税法規におい
て,一定の課税要件を満たすか否かが問題とされているのであるから,個別の契約
において,当事者が準拠法を定めたからといって,当該準拠法が当然に適用される
ことになるものではない。この点に関する控訴人の主張は,採用することができな
い。
 (4) さらに,控訴人は,本件組合の他の組合員との対比において,控訴人に対す
る本件更正処分等は租税公平主義に著しく反する処分であり,憲法14条に違反す
る旨を主張する。
 しかしながら,本件組合の他の組合員に対して,更正処分等がされたか否かは明
らかではない。仮に,本件組合の他の組合員につき,更正処分等がされておらず,
たまたま,控訴人ほか1社のみが更正処分等を受けたものであるとしても,そのこ
とのみから控訴人に対し差別取扱いがあったものということはできないし(本件組
合の各組合員の本件取引への関与の態様,これによって得た租税回避の利益等は,
それぞれ異なるのであって,こうした点を考慮するなどして,被控訴人が更正処分
等を行うか否かを決したからといって,これが当然に差別的取扱いに当たるもので
はない。),本件更正処分等が本件取引とは全く関係のない他の要素を考慮して殊
更に行われたものであることをうかがわせるような証拠もない。したがって,差別
的取扱いがあったこ
とを前提とする憲法14条違反の主張も,その前提を欠き,失当というべきであ
る。この点に関する控訴人の主張は,採用することができない。
 7 結論
 以上によれば,本件融資契約及び本件売買契約はいずれも有効に成立したもので
はないというべきであるから,平成3年12月期における控訴人の所得の計算にお
いて,本件融資契約に基づく支払利息の損金算入及び本件映画に係る権利の取得を
前提とする減価償却費の損金算入は,いずれも認められないというべきである。し
たがって,本件更正処分等は適法というべきである。
 以上によれば,控訴人の請求を棄却した原判決は相当であり,本件控訴は理由が
ない。
 よって,主文のとおり判決する。
東京高等裁判所第19民事部
     裁判長裁判官    岩   井       俊
        裁判官    及   川   憲   夫
 裁判官    竹   田   光   広

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