弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     原判決を破棄する。
     被告人を懲彼八月に処する。但し、此の判決確定の日より参年間右刑の
執行を猶予する。
     訴訟費用は全部これを被告人の負担とする。
     被告人に対し公職選挙法第二百五十二条第一項の刑の執行猶予中の期間
選挙権及び被選挙権を有しない旨の規定を適用せず。
         理    由
 弁護人定塚道雄の論旨第一点について。
 記録を検討するに、原判決は判示冒頭に於て、「被告人は昭和二十七年五月二十
五日施行の富山県高岡市市長選挙に際し同年五月五日立候補し、同選挙に当選した
ものである」旨の事実を認定し、しかも、其の証拠理由中、判示第一乃至第四の各
事実については、事実ごとにそれぞれの資料を挙示援用しているにも拘らず、ひと
り、叙上冒頭掲記部分のみについては特に証拠として挙示するものがないことは、
所論の通りであるけれども、しかしながら、原審の所在地である冨山県高岡市及び
其の附近に於ては、斯の如き事実は普く一般人に知れ亘つた事柄であつて、所謂公
知の事実に属し、敢て証拠の証明力に俟つ迄もなく、裁判所に於て直ちに該事実の
存在を肯定し得るところであるから、原判決中判示冐頭掲記部分に対する証拠説明
が存しなくとも、これを目して其の理由に不備ありとなすを得ない。論旨は理由が
ない。
 同第二点について。
 記録に依れば、原判決は、其の証拠理由中に、A、B、被告人等に対するいずれ
も検察官作成各供述調書の記載を引用するに当り、これ等各供述調書の標目を列記
する方法に従い、概括的にこれを挙示するに止まり、各調書の記載中、如何なる部
分を採つて、如何なる事実認定の資料としたものであるかの点につき、別段具体的
に判示するところがないことを認め得るが、判文の前後を通読し、其の趣旨とする
ところを検討すれば、畢竟原審は、これ等の供述中原判示に符合し、若しくは照応
する部分を、証拠に採用したものと解するを得べく、事案の内容が比較的に簡単で
ある本件に於ては、此の程度の証拠説明をもつてしても、いずれの証拠によつて、
如何なる事実を認定したものであるかを敢て判断し得ない訳ではない。そうして見
れば原判決は、証拠の摘示方法に於て、必ずしも正鵠を得たものと為し難いとして
も、其の理由に齟齬あるものと認めるを得ない。論旨は理由がない。
 同論旨第三点並に第六点、弁護人宮林敏雄の論旨第四点、第五点、第六点につい
て。
 記録に徴すれば、本件公訴第三の事実は、「被告人は、選挙に関し投票を得る目
的で、昭和二十七年五月二十二日頃公職選挙法所定の間柄でなく且選挙人である別
紙第一表記載の、高岡市a町b番地C方等十八戸及同町内約百三十戸を訪問し、同
人等に対し夫々自己に投票しくれたき旨依頼して戸別訪問をなしたるものである」
と言うにあるところ、これに対し、原判決は、事実理由第三項に於て「被告人は自
己に投票を得る目的で、昭和二十七年五月二十二日頃親族、平素親交の間柄にある
知己其の他密接な間柄にある者等法定の除外の場合に該当しない別紙第一表記載の
如きC等十八名の選挙人を戸別訪問したものである」旨の事実を認定したのみであ
つて、所論の通り、起訴状掲記高岡市a町内約百三十戸に対する戸別訪問の所為に
ついては、別段判示するところがないものであることを認め得るけれども、しかし
ながら、公職選挙法第百三十八条第一項違反の罪は、選挙に関し投票を得る目的を
もつて、一人若しくはそれ以上の選挙人に対し、戸別的に訪問を行うことに依つて
成立する一個の犯罪であり、従つて、犯罪構成の前提要件として、通常、多数行為
の集合を予定する所謂集合犯の類型に属するものであることは、此処に説明する迄
もなく、此の種の犯罪を審判するに際し、斯る多数行為の一部を捕捉し、これをも
つて一個独立の犯罪行為の成立を認定するに於ては、剰余の行為について重ねて判
断を示す必要がないと解すべきであるから、叙上の如く起訴状掲記高岡市a町内約
百三十戸に対する戸別訪問の所為について、別段の判示するところのなかつた原審
の措置は、審判の請求を受けた事実について審判をしなかつたものでないこと勿論
である。また、仮令、被告人が、公職選挙法第百三十八条第一項の規定の存在を知
らず、若しくは其の解釈を誤つたものであるとしても、法の不知は犯意の成立を阻
却するものでないのみならず、原審並当審証拠調の結果を精査しても、被告人が、
自己の行為につき、それが法律上許されたものである旨確信していたものであるこ
とを認定するに足る資料を見出し難い。所論の如き事情、すなわち、「他の候補者
に於ても戸別訪問による選挙運動を展開していたこと、並に、関係当局は候補者の
妻の戸別訪問に対してのみ警告を発し、候補者自身の行う戸別訪問については、何
等警告するところがなかつたこと等の諸事情」があつたとしても、斯る事実に依つ
ては、被告人に対し法の遵守を期待し得なかつた特別の<要旨>事情ありとなすを得
ない。なお、論旨援用の資料によれば、被告人は、戸別訪問をなすに際し各戸軒先
よりも若干外側、厳密に言えば道路上、軒先に接近する部分に位置を占め、
運動員より来意を告げられ、玄関に出で来た各戸内の選挙人と、若干の距離を隔て
たまま、其の場に於て挨拶を交換したものであつたことを肯認し得ないでもないけ
れども、斯る所為は、偶々道路を通行中、出合つた者に対し、その機会を利用して
立候補の挨拶を為す場合と其の趣きを全く異にし、各戸に就て自ら其の玄関内に立
入り戸内の選挙人に対し親しく挨拶すると何等択ぶところなき行為であると言わざ
るを得ず、従て、被告人の佇立した場所が、各戸軒先より稍外側であつたとして
も、これによつて公職選挙法第百三十八条第一項の罪の成立を妨げるものでない。
これ等の諸点に対する論旨は、いずれも其の理由がない。
 弁護人定塚道雄の論旨第四点、弁護人宮林敏雄の論旨第一点について。
 原判決挙示の各証拠、就中、Dに対する検察官作成第十二回供述調書、Aに対す
る検察官作成第五回供述調書、被告人に対する検察官作成第二回供述調書の各記
載、清算書と題する書面(謄本)(記録第五十丁添付)の記載等を綜合すれば、原
判示第一の事実、すなわち、被告人が昭和二十七年五月八日頃肩書居宅に於て、自
己に当選を得る目的を以て、自己の選挙運動者であるDに対し、選挙運動報酬並に
投票取纏等の費用として、自己の選挙運動者であるAに供与せられ度き旨依頼の
上、現金五万円を寄託して、以てこれを交付したものであることを認定するに十分
である。弁護人は、「敍上金五万円の現金は、Eに於てこれを調達し、同人よりD
を介し、Aにこれを手交したものであつて、被告人の関知するところでない。」旨
主張するけれども、この点に関する第十四回公判証人尋問調書中、証人Eの供述記
載、原審第十二回及び第十五回公判被告人供述調書中被告人の供述記載、当審第二
回公判証人尋問調書中証人A証人Eの各供述記載、当審第三回公判廷に於ける証人
Dの供述は、いずれも、一応、前記の主張に副うかの如き趣旨を述べるものであり
ながら、しかも其の重要な部分に於て互に相矛盾するものであつて、到底これに措
信するを得ないのみならず他に右主張を維持すべき資料がない。いま此処に、前記
各供述問に存する矛盾の甚しきものの二、三を指摘すれば、(一)原審証人Eの証
言に依るときは、叙上五万円の金員は、Eに於て、偶々持合わせて居た現金であ
り、千円札に百円札が混入して居たものであると言うに反し、同証人の当審に於け
る供述に依れば、右五万円は、EがDに命じ、農業協同組合の会計より支出せしめ
た金員であつて、千円札を束ねたものであつたと言うにあり、また、(二)同証人
の原審公判廷に於ける供述に依れば、前記五万円の支出に対する弁償として、昭和
二十七年末頃Dより金五万円を受領したと言うに反し、同証人の当審に於ける供述
によれば、Dより金五万円の弁償を受けたのは、昭和二十七年五月末頃であつたと
言うのであり、さらに、(三)同証人の当審に於ける供述によれば、Eは、Aより
五万円の供与方を要請された為、同人に対し、Dを介し、金五万円を供与したもの
であると言うに反し、当審に於ける証人Aの供述によれば、Dより金五万円を受領
するに際し、Eより該金員を供与されるものであることを聞かず、従つて何等その
旨を知らず拘置所より出所後はじめてEより其の旨聞知したと言うのであり、なお
(四)被告人の原審第十五回公判廷に於ける供述に依れば被告人がDに対し金員を
交付したのは前後三回であり、五月八日頃金五万円、同月二十七、八日頃金六万円
余りをそれぞれ交付し、その外、時期は判明しないがDよりc部落の選挙事務費を
要求された際、金五万円を渡したと言うにあるに反し、当審に於ける証人Dの供述
に依れば、同人が被告人より金員を受領したのは前後二回であり、五月八日頃金五
万円を、同月二十七、八日頃清算の際、金十一万一千六百余得を各受領したと言う
にある。検察官の取調べに対する各関係人の供述は、終局に於ていずもその間矛盾
なく符合するに反し(記録によれば、Eは、検察官に対し、他の関係部分について
は、十分な供述を為し居ることを認め得るが、この点に関して何等供述を為した形
跡を認め得ない。)、これを飜した前記の各供述は、斯の如き幾多の撞着を包含
し、これに措信せんとするも、其の由が無いものであると言わざるを得ない。そし
て見れば、原判決は証拠の価値判断を誤つて事実を誤認したものでない。次に、
D、A、被告人等に対する検察官作成供述調書の記載がいずれも任意性を欠くもの
であるとの主張に関しては、当裁判所の措信せざる敍上原審並に当審に於けるこれ
等の者の弁疎を除外すれば、他に斯の如き主張を肯認するに足る資料の存在を見出
すことが出来ない。D(原審第二回公判)、A(原審第二回公判)、B(原審第十
回公判)等はいずれも原審に証人として出廷し、それぞれこの点に関する証言を拒
否したものであることが記録上明白であり、証人として出廷した者が証言を拒否し
た場合、これ等の者に対する検察官作成の供述調書を証拠に採用することは、刑事
訴訟法第三百二十一条第一項第二号の許容するところであるから、同人等に対する
検察官作成の供述調書を証拠理由中に引用した原判決は、証拠能力を備えない資料
に基いて事実を認定したものでない。(なお、Bは原審第十四回公判廷に於ても、
此の点につき、「被告人とDとの間に、五月二十七、八日頃被告人方で金員の授受
があつたかも知れない。」旨の供述を洩して居るのみであつて、其の他何等の供述
をしていないことが記録上明かである。)以上の諸点に関する論旨は総て其の理由
がない。
 弁護人定塚道雄の論旨第五点、弁護人宮林敏雄の論旨第二点、第三点について。
 原判決挙示の各証拠、殊に、被告人に対する検察官作成第二回供述調書の記載、
Bに対する検察官作成第六回、第十一回、策十三回各供述調書の記載等を綜合すれ
ば、原判示第二の事実、すなわち、被告人が、出納責任者の文書に依る承諾を得ず
して、昭和二十七年五月十五日頃より同月二十七日頃に至る迄の間、前後四回に亙
り、高岡市d町F又は肩書居宅等に於て自己の選挙運動者であるBに対し、選挙運
動費として合計金参拾八万円を手交して以て選挙運動に関する支出を為したもので
あることを肯認するに十分である。前顕各供述調書の記載が、任意性を欠くもので
ないことについては、既に他の論点に対する判断の部分に於て説示した通りであつ
て、此処にさらにこれを反覆する要を見ない。Bに対する供述調書の記載が任意性
を欠くものであることを確認するに足る資料がないことは、其の他の者に対する供
述調書の場合と同様である。弁護人は「被告人は、叙上の金員を、選挙運動費に充
当する目的で支出したものでなく、株式会社Gに対し、その経営資金を融通する目
的をもつて、当時同社の常務取締役であつたBに対し、これを手交したものであ
る。」旨主張するけれども、しかしながら、この点に関する原審第十四回公判証人
尋問調書中証人Hの供述記載は、株式会社Gの常務取締役であるHが、選挙期間
中、被告人に対し、同社給料支払資金の融通方を懇請したことがあると言うに止
り、これをもつてしては、到底叙上の認定を左右するに足りないのみならず、原審
第十四回公判証人尋問調書中証人Bの供述記載、原審第十二回及び第十五回各公判
被告人供述調書中被告人の供述記載、殊に、これ等の各供述中弁護人の主張に副う
かの如く見える部分は、原判決挙示の証拠と彼比対照の上これを検討すれば、いず
れも措信に値しないものであることが明瞭である。すなわち、証拠によれば(一)
該金員は、挙げて悉くこれを選挙運動費として費消されたものであつたこと、及
び、(二)Bは選挙期間の前後を通じ、同会社会計係に対する該金員の速やかなる
廻附方につき、何人からも何等の要求若しくは督促を受けたことがなかつたこと等
の諸事実が、いずれも明確不動の事実として肯認され得るに反し、叙上原審に於け
るB及び被告人の供述によつては、いずれもこの点に関し、人をして首肯せしめる
に足る合理的な説明を与えることが出来ず、此の矛盾がこれ等各供述の信馮力を著
しく減殺するからである。弁護人は「たとえ、被告人が叙上の金員を、選挙運動資
金として、Bに手交したものであるとしても、被告人とBとは、恰も一身同体の如
き関係にあるものであつて、右金員の授受は、公職選挙法第百八十七条第一項に所
謂支出に該当しない。」旨主張し、且、論旨援用の資料に依れば、Bは被告人の姉
婿に当り、平素、被告人と親密なる交際関係を維持して来た者であることを認め得
るが、しかしながら、前示原判決挙示の各証拠によれば、Bは被告人のため選挙運
動に従事して居た者であり、被告人より右金員を受領するに際しては、選挙の状勢
に応じ、その自由裁量によつて適宜これを支出すべく挙げて、その処分方を一任さ
れたものであつて、決して、被告人の手代りとして、単純に現金の保管のみを司る
ことを依嘱されたものではなかつたことが明かであり、従つて被告人とBとの間に
於ける金員の授受は、仮令、Bが被告人の親戚であり、平素親密なる関係にあつた
者であるとしても、公職選挙法第百八十七条第一項に定める「支出」に該当するも
のであると言わざるを得ない。尤も、証拠によれば、Bは被告人の選挙運動者中最
も有力なる一員であつて、選挙運動を或程度迄総括した者であること、被人は将来
発生すべき個個の選挙費用に備え、Bに対し、前以て概括的に、一定額の金員を手
交して置いたものであつたこと、右手交に際してはいまだ該金員をもつて支払うべ
き個々の経費が特定するに至つて居なかつたことをそれぞれ認め得ない訳ではない
けれどもしかしながら仮令、金員支払の目的が具体的に確定するに至らない場合で
あつても、それが特定候補者のためにする選挙運動一般の費用として支出されたも
のである限り、すべて出納責任者の文書に依る承諾を要すると解すべく、これを受
領する者が事実上の総括主宰者であると他の運動員であるとによつて、其の解釈を
異にする根拠を見出し得ない。原判決が、判示第二の事実につき、支出の目的を具
体的に判示していないことは所論の通りであるけれども、敍上の理由により、原判
決には何等不備乃至違法の存しないことが明白である。なお、前記の場合、被告人
の所為は公職選挙法第百八十七条第一項に触れるに止まり、他の罰条と牴触するも
のでないから、その個々の所為に対し、所論の如く刑法第五十四条第一項前段を適
用すべきでない。そうして見れば、論旨はすべてその理由がない。
 弁護人定塚道雄の論旨第七点(但し刑の量定に関する部分を除く)弁護人宮林敏
雄の論旨第七点について。
 原判決挙示の各証拠、殊にDに対する検察官作成第四回、第六回、第十二回各供
述調書の記載、被告人に対する検察官作成第二回供述調書の記載を綜合すれば、原
判示第四の事実、すなわち、被告人がDと共謀の上、選挙事務所に於ける飯米に供
する目的を以て、法定の除外事由がないにも拘らず、原判示期間内前後十回に亙り
原判示場所に於て、孰れも米穀の生産者であるI外七名から同人等の生産に係る粳
玄米合計二十八俵(十一石二斗)を代金十万六千三百二十円にて買受けた事実を肯
認するに十分である。D、B並に被告人に対する検察官作成供述調書の記載が任意
性を欠くものでないこと、同人等に対する検察官作成各供述調書を証拠に採用した
原審の訴訟手続に違法の存しないことは既述の通りである。なお、Bは、原審に於
て、此の点については、証言を拒否した形跡を認め得ないが、同人の原審に於ける
供述は、前記同人に対する検察官作成の供述調書の記載と実質的に相異り、しかも
他の論旨について説明したところに依り明かな如く、検察官に対する供述を信用す
べき特別の事情があると考えられるから、Bに対する検察官作成の供述調書を挙示
援用した原審の措置は、何等非難に値するものでない。そうして見れば、原判決
は、証拠能力を欠如する資料に基いて、事実を認定したものでない。
 弁護人定塚道雄の論旨第八点(量刑に関する部分を除く)について。
 本論旨については、同弁護人の論旨第一点乃至第七点について判示したところを
此処に引用する。要之、原審の採証措置は毫も刑事訴訟法の規定に違背するもので
ない。従つて、憲法に牴触するものでないことは此処に詳言する迄もない。論旨は
理由がない。
 弁護人定塚道雄の量刑に関する論旨について。
 記録を精査するに、被告人の本件所為中公職選挙法に違背する部分は、原判示第
一の事実を除き、いずれも選挙運動の方式が法定の制限を超えたものであつて、所
謂形式犯の部類に属し、比較的に犯情の軽微なもののみであり、また、原判示第一
の所為は、所謂買収行為であつて、悪質なものであるけれども、交付された金員の
額は、五万円に過ぎず、行為は唯一回存するのみであつて、犯情の著く重いものと
言うを得ないのみならず、さらに、食糧管理法に違背する部分は、犯罪の動機が営
利の目的に出たものでなく買入れた玄米は、これを悉く選挙事務所に於ける消費に
充当したものであつたこと等の諸事実を肯認するに足る。なお、其の他記録に依つ
て認め得る、被告人が、高岡市民多数の支持によつて獲得した、高岡市長たる其の
地位を、本件所為あるがため、やがて喪失するに至るべきこと等をも併せ考えると
き、被告人に対し懲役壱年参年間執行猶予の刑を言渡した原審の量刑は、重きに失
し相当でないと思料される。論旨は理由があり、原判決は此の点に於て破棄を免れ
ないものである。
 よつて、刑事訴訟法第三百九十七条第三百八十一条に則り、原判決を破棄した
上、同法第四百条に従い次の通り判決する。
 原審認定の事実を法律に照すに被告人の判示所為中判示第一の点は公職選挙法第
二百二十一条第一項第五号に、判示第二の点は同法第二百四十六条第四号第百八十
七条第一項に、判示第三の所為は昭和二十七年八月十六日法律第三百七号附則第四
項改正前公職選挙法第百三十八条第一項第二百三十九条第三号に、判示第四の所為
は各食糧管理法第九条第一項第三十一条同法施行令第六条刑法第六十条に該当する
ところ、右各罪の所定刑中判示第一の交付罪につき懲役刑を、判示第二の各無承諾
支出の罪につき各禁錮刑を、判示第三の戸別訪問の罪につき禁錮刑を、判示第四の
各食糧管理法違反の罪につき各懲役刑をそれぞれ選択し、以上は刑法第四十五条前
段の併合罪であるから同法第四十七条第十条に則り最も重い判示第四の別表第二の
(2)の食糧管理法違反の刑につき定めた罪に法定の加重をした刑期範囲内に於
て、被告人を懲役八月に処すべく、叙上諸般の事情に鑑み、刑の執行を猶予すべき
事由ありと認め、刑法第二十五条を適用し此の判決確定の日より参年間右刑の執行
を猶予することとし、訴訟費用の負担について刑事訴訟法第百八十一条に則り被告
人をして其の全部を負担を為さしむべきものとする。なお、情状に因り公職選挙法
第二百五十二特第三項に則り同条第一項の刑の執行猶予中の期間選挙権被選挙権を
有しない旨の規定を適用しないこととする。
 よつて、主文の通り判決する。
 (裁判長判事 吉村国作 判事 小山市次 判事 沢田哲夫)

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