弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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○主文
一本件訴えをいずれも却下する。
二訴訟費用は原告らの負担とする。
○事実
第一当事者の求めた裁判
一請求の趣旨
1被告東京都中央区建築主事が、紀州鉄道株式会社の申請に基づき昭和五六年一〇月一
三日付け第二五九号をもつてなした、別紙物件目録(二)記載の共同住宅の共用部分及び
専有部分についての共同住宅からホテルへの用途変更確認処分を取り消す。
2被告東京都中央区建築審査会が昭和五八年七月一八日付け第一号をもつてなした原告
らの審査請求を却下する旨の裁決を取り消す。
3訴訟費用は被告らの負担とする。
二請求の趣旨に対する答弁(被告両名)
(本案前の答弁)
主文同旨。
(本案の答弁)
1原告らの各請求を棄却する。
2訴訟費用は原告らの負担とする。
第二当事者の主張
一請求原因
1(原告らの区分所有権)
()、()(「」。)一原告A及びBは別紙物件目録一記載の共同住宅以下本件建物という
の分譲開始当時、その所有者であつた川鉄物産株式会社からそれぞれ原告Aが七〇九号室
を、Bが六〇五号室を所定の代金で買い受けた。
(二)右Bは、後記4(一)記載の審査請求をした後死亡し、原告Cはその相続人であ
る。
2(建築確認処分における本件建物の用途)
本件建物は、昭和五三年第三九二号をもつてなされた共同住宅を用途とする建築確認処分
に基づき建築されたものである。
3(用途変更確認処分)
(一)紀州鉄道株式会社(以下「訴外会社」という)は、昭和五六年九月八日被告東。

都中央区建築主事(以下「被告建築主事」という)に対し、別紙物件目録(二)記載の。

用部分と専有部分(以下「本件係争部分」という)につきその用途を前記共同住宅から。

テルへと変更する(以下「本件用途変更」という)工事の確認申請をした(建築基準法。

七条、六条。)
(二)被告建築主事は、右申請に対し同年一〇月一三日付で請求の趣旨1記載の用途変
更確認処分(以下「本件処分」という)をなした。。
4(裁決)
(一)原告A及びBは、本件処分を知つた日から六〇日以内の日である昭和五七年四月
一七日東京都建築審査会に建築基準法九四条に基づき本件処分について審査請求した。
(二)被告東京都中央区建築審査会は、
昭和五八年七月一八日右審査請求を却下する旨の裁決(以下「本件裁決」という)をし。
た。
5(本件処分に対する不服の範囲)
(一)建物の区分所有等に関する法律及び管理規約の関係
右法律(以下「建物区分所有法」という)及びこれに基づく管理規約によつて、本件建。

の共用部分の用途変更には他の区分所有者全員の承諾が必要である(管理規約によつて、
本件建物の用途を共同住宅以外に変更することは禁止されている。。)
(二)建築基準法九三条、消防法一七条等の関係
本件処分に日本橋消防署長が同意(建築基準法九三条一項本文)するには、屋内消火栓の
非常電源及び非常誘導灯の設置が訴外会社の用途変更工事確認申請に盛り込まれているこ
とが必要である。
(三)建築基準法施行令一二六条の四の関係
右によれば「ホテルの用途に供する建物の居室、廊下、階段には、非常用照明設備を設、

。」、、、、なければならないがその趣旨は本件建物の地下一階の洗濯室一階の管理事務室
食堂及び喫茶室等にも及ぶものと解される。
(四)建築基準法施行規則一条の関係
本件用途変更申請には右に定める図面の添付が必要である。
(五)旅館業法三条の関係
本件処分をするには、同条二項、同法施行令一条一項六号により、深夜使用可能な洋式浴
場設備が必要である。また、学校長の同意が要件となる(同法三条四項。)
6(本件裁決に対する不服の範囲)
(一)手続き関係
東京都建築審査会に対する審査請求であるのに、被告東京都中央区建築審査会が本件裁決
をし、かつ、全く口頭審理を行つていない。
(二)原告らの法律上の利益
本件処分に係る用途変更工事が完成したとしても、前記5の各関係法規に適合したホテル
営業でない限り、原告らに審査請求をする法律上の利益がある。
7よつて、請求の趣旨のとおり、本件処分及び本件裁決の各取消を求める。
二被告らの本案前の主張
1訴えの利益の欠缺
(一)(1)本件処分は、本件建物の一部である別紙物件目録(二(2)の計一三戸)

用途を共同住宅からホテルに変更するための確認申請に基づくものであるところ、このた
めに建築基準法上必要とされる工事は、右一三の宿泊室について各一個の非常用照明を設
置することである。
(2)ところで、本件処分は、本件建物の一部の用途を前記のように変更することにつ
き、
右法令の規定に適合するとの公権的判断をなすものであり、その効果は、これによつて計
画した建築物の用途変更にあたつて必要とされる工事を訴外会社において適法に施工する
ことができるということに尽きるものである。したがつて、原告らに本件処分の取消しを
求める法律上の利益が存在するのは、訴外会社が適法に工事を施工しうるという本件処分
の効果を排除し、右工事の施工ないし完成を阻止することが可能な限りにおいてである。
(3)しかし、訴外会社は、前記用途変更に際して必要とされる右(1)の工事を昭和
五六年一〇月二八日までに完了した。
(4)したがつて、原告らには本件処分の取消しを求める法律上の利益はない。
(二)右のとおり原告らに本件処分について取消訴訟を提起する法律上の利益がない以
上、本件裁決の取消しを求める法律上の利益もない。
2原告適格の欠缺
本件処分に伴う工事である前記1(一(1)の非常用照明設備は、火災等の非常時にお)

る避難、防火活動を容易にするための設備であるから、本件建物にそれが追加されたこと
によつて建築物の安全性は従前に比べ増加している。したがつて、本件処分及びこれに基
づく工事の施工によつて原告らの権利ないし法律上の利益が侵害されたことはなく、原告
らには本訴の当事者適格はない。
三本案前の主張に対する原告らの認否及び主張
1訴えの利益について
(一)被告らの本案前の主張1(訴えの利益の欠缺(一(1)のうち、本件用途変))

のために建築基準法上必要とされる工事が、三階の一三の宿泊室について各一個の非常用
照明を設置することのみであること及び同(一(3)の事実は否認し、同(一(2、)))
(4)
及び同(二)の主張は争う。
(二)本件用途変更のために法律上必要な工事は、三階の一三戸の宿泊室の非常用照明
の設置工事のほか次の(1(2)がある。したがつて、本件処分に関連する工事は完)、

しておらず、原告らには訴えの利益がある。
(1)消防法一七条に適合した屋内消火栓の非常電源及び非常誘導灯の設置
(2)本件建物の地下一階の洗濯室、一階の管理事務室、食堂及び喫茶室等について建
築基準法施行令一二六条の四で必要とされる非常用照明の工事
()、、三また訴外会社において本件建物でのホテル営業許可を適法に取得するためには
その前提として本件建物の用途変更が必要である(その後に初めてホテル営業許可が下り
る。もし、ホテル営業許可が下りて、訴外会社がホテル営業を始めれば、原告らは重。)

な火災の危険にさらされるから、右ホテル営業許可の不可欠の前提である本件処分の取消
しを求める法律上の利益がある。
2原告適格仁ついて
本件処分は、訴外会社の専有部分のみならず原告らを含む区分所有者全員の共用部分まで
その対象としていること、そのうえ、前記のとおり訴外会社が本件処分を前提として本件
建物においてホテル営業をすれば、原告らは重大な火災の危険にさらされること、一方、
建築基準法、消防法等の規定は、このような原告らの危険、不利益をさけるために具体的
個別的にその権利、利益を保護しているものであることに鑑みれば、原告らには本訴の当
事者適格がある。
四請求原因に対する認否及び抗弁等
1認否
請求原因1(一)は、本件建物が川鉄物産株式会社の所有であつた事実を認め、その余の
事実は不知、同(二)の事実は不知。
同2、3の各事実は認める。
同4(一)の事実のうち、原告A及びBが本件処分を知つた日は不知。その余の事実は認
める。同4(二)の事実は認める。
2抗弁
本件用途変更のために建築基準法及び関係法規上必要な工事としては、前記二1(一)の
計一三戸にそれぞれ非常用照明を設置することで足りるものである。
そして、本件処分の内容は前記二1(一)のとおりであるから、本件処分は適法である。
3原告主張の不服事項(請求原因5及び6)について
(一)本件処分をするについて原告ら他の区分所有者の承諾の存在は建築基準法上の要
件ではない。
(二)本件処分をなすにあたつて日本橋消防署長の同意を得る必要はあるが、右同意の
前提として本件用途変更工事に屋内消火栓の非常電源及び非常誘導灯の追加を内容とする
必要はない。
消防法一七条一項は、同法施行令別表第一に掲げる防火対象物の関係者が消防用設備等の
設置維持義務を負うことを規定しているが、すでに防火対象物である建築物の用途変更の
場合については、同法一七条の三第一項において、原則として変更前の用途に応じた技術
上の基準に適合すれば足りるとし、例外として同条二項一ないし四号において同法一七条
一項によらなければならない場合を定めている。
本件用途変更は、
同法一七条一項の防火対象物である本件建物の一部をホテルに用途変更するものであるか
ら、同法一七条の三第一項により原則として新たな消防用設備の設置は不要であり、例外
となる同条の三第二項各号にも該当しないものである。すなわち、同項一ないし三号は本
件と関係がないことが明らかであり、四号は変更後の用途が特定防火対象物である場合で
あるが、本件建物は次のとおりこれに該当しない。
消防法一七条の二第二項四号及び同法施行令三四条の四によると特定防火対象物とは百、「
貨店、旅館、病院、地下街、同法施行令別表第一(一六)項イの複合用途防火対象物(同
令三四条の四第一項)その他同令同表第一に定める防火対象物のうち多数の者が出入りす
るものとして同令三四条の四第二項が定めるもの」をいうことになる。そして、本件建物
は、共同住宅、事務所及びホテルの用途に供されるものであるから、同法八条一項及び同
、、()法施行令一条の二第二項前段により複合用途防火対象物に該当し同令別表第一一六
項イの複合用途防火対象物には、複合用途防火対象物のうち、その一部がホテルの用途に
供されているものがこれに該当する旨規定している。しかし、同令一条の二第二項後段に
よると、一つの用途に供される部分が他の用途に供される部分の従属的な部分を構成する
と認められる場合には、その一つの用途は当該他の用途に含まれることになると規定して
いる。
そして、右の従属的な部分か否かの認定にあたつては、消防用設備等の設置に関して通達
によつて処理されているところ、昭和五一年四月八日予防部長依命通達によると、ホテル
等の「特定用途部分」を含む複合用途防火対象物であつても(ア)特定用途部分の床面、

の合計が、当該防火対象物の延べ面積の一〇パーセント以下であり、かつ(イ)特定用、

部分の床面積の合計が三〇〇平方メートル未満である場合には、特定用途部分は他の用途
に供される部分の従属的な部分として取り扱い、同令別表第一(一六)項ロの複合対象物
として取り扱うものとし、この場合の床面積の算定にあたつては、共用部分は按分するも
のとされている(昭和五一年四月八日予防部長通知。そこで、この算定方法に基づき本)

建物について算定すると、ホテルとしての用途に供される部分の床面積は二九七・二五六
平方メートルで全体の七・二四パーセントにとどまるから、同部分は、
他の共同住宅及び事務所の用途に供される部分の従属的な部分と認められ、この共同住宅
及び事務所に含まれることになる。その結果、本件建物は、消防用設備等の設置に関して
は、同令別表第一(一六)項イに該当する複合用途防火対象物とはならず、したがつて、
前記特定防火対象物とならないのである。
よつて、本件用途変更に伴い消防用設備を追加して設置する必要はないのであり、消防署
長の同意は何ら違法ではない。
(三)建築基準法二条四号によると「居室」とは、居住、執務、作業、集会、娯楽そ、

他これらに類する目的のために継続的に使用する室をいうものと定められているから、本
件建物の地下の各室はこれに該当しない。
次に、一階の管理人室及び喫茶店は、右居室に該当するが、建築基準法三八条には、建設
大臣が法令の規定によるものと同等以上の効力があると認める場合の建築設備の特例につ
、(、)いて定めておりこれをうけて建設省告示昭和四七年一月一三日建設省告示第三四号
は、非常用照明装置を設けた居室等と同等以上の効力があると認める窓その他の開口部を
有する居室等の指定をしている。これを本件についてみると、右一階の管理人室及び喫茶
店は、建築基準法施行令一一六条の二第一項一号に該当する窓その他の開口部を有する居
室であるとともに、いずれも避難階である一階に存在し、居室の各部分から出口までの距
離が三〇メートル以下であり、かつ、避難上支障がないから、右告示の第一に該当するこ
とになり、非常用照明装置の設置は不要となるのである。
(四)訴外会社の用途変更申請に九階及び塔屋の各平面図が添付されていなかつたこと
は事実である。被告建築主事は、右用途変更申請書に添付されていた各階平面図が、本件
建物の建築確認申請書に添付されていた図面と同一の図面を複写したうえ、これに用途変
更申請に際して必要な事項を書き入れたものであつたので、九階及び塔屋については、東
京都中央区が保存している前記建築確認申請書に添付された当該図面によつて用途変更部
分を特定、確認したのである。右取扱いをしたのは、九階の一部(エレベーターホール及
び屋内階段室の部分)及び塔屋については本件用途変更の対象となるものの、当該部分に
ついては用途変更に伴う工事が予定されていなかつたために、あえてその平面図の追完を
求めなかつたものである。仮にこれが形式的には書類の不備であるとしても、
これによつて本件処分の効力が違法になるものではない。
(五)本件用途変更によつてホテルの客室とされた三階の一三室には、それぞれシヤワ
ー設備付きの浴室設備が設置されており、法令の規定に適合した構造を有している。
また、学校長の同意については、都道府県知事等が旅館営業許可処分をする際の要件を定
めたものであつて、本件処分の要件とは無関係である。
(六)被告東京都中央区建築審査会が直接口頭審査を開催せずに本件裁決をしたのは事
実であるが、本件裁決に係る口頭審査は、審査請求を受理した当時の審査庁である東京都
建築審査会において、被告建築主事及び原告ら代理人らが出席して昭和五七年一二月一四
日に開催された。
被告東京都中央区建築審査会は、地方自治法施行令の一部を改正する政令(昭和五七年政
)、、令第三〇三号の施行により原告らの審査請求につき裁決する権限を有することになり
昭和五八年四月一日行政不服審査法三八条に基づき東京都建築審査会から右口頭審査の記
録等必要な書類一切の引継ぎを受けたものである。
五被告らの主張(前記四3)に対する原告らの反論
1特定防火対象物の解釈について
(一)前記四3(二)の被告ら主張の通達は、法的根拠がなく、近代行政手続の基本理
念である「法による行政」の精神に反するものであつて、何らの法的拘束力もない。すな
わち、同通達の内容は、消防法の根本的要請を全く骨抜きにするものであつて、憲法三一
条、二九条、四一条に各違反するとともに、消防法一条、一七条に明白に違反し、所有権
者の権利を侵害するものである。したがつて、同通達を根拠にする被告らの主張は失当で
ある。
(二)少なくとも、被告らの主張する通達の床面積の算定基準には全く合理的根拠はな
。、、(、、いちなみに本件の場合のホテルへの用途変更範囲は共用部分一階玄関管理人室
地下より屋上までの階段、エレベータ室、二、三階の廊下等)まで含まれているものであ
つて、そのホテルへと用途変更した部分を更に按分するということは背理である。
(三)したがつて、本件建物は、消防法一七条の二第二項四号及び同法施行令三四条の
四にいう特定防火対象物として、同法一七条の三第二項四号に該当し、その結果、同法一
七条一項の消防用設備の設置が義務づけられているのである。
2居室の解釈について
(一)地下の各室が居室に該当しないとの主張は争う。
機械室を除く部屋はいずれも人が作業等を行う部屋であるから、居室である。
(二)被告ら主張の建設省告示の内容は、建築基準法の規定する用途に応じての非常用
照明装置の設置を全く不要とするものであつて、憲法三一条、二九条、四一条及び建築基
準法一条、三五条に各違反し無効である。また、同告示は建築基準法三八条には相当しな
いものである。
(三)仮に右告示によるものとして、本件建物の一階の居室から出口までの距離が三〇
メートル以下であつたとしても、本件建物の場合には非常時の場合に避難者が出口に殺到
し容易に避難できないものであるから、避難上支障がないということはできない。
3洋式浴場設備について
本件用途変更に係るホテル部分一三室に洋式浴場設備があつても、給湯体制の関係で、夜
、。八時から朝七時まで給湯できないから深夜使用可能な浴場設備を備えたことにならない
4口頭審査について
昭和五七年一二月一四日に東京都建築審査会の公開による口頭審査のあつたことは認め
る。
しかし、被告主張の地方自治法施行令の一部改正の政令は実質的に憲法七三条、八二条の
精神に反する結果をもたらしている。
第三証拠(省略)
○理由
一請求原因1(原告らの区分所有権(一)の事実のうち、本件建物の七〇九号室及び)

〇五号室の前主の点は当事者間に争いがなく、原告Aが本件処分前に右七〇九号室を買い
受けたことは、成立に争いのない甲第一号証及び原告A本人尋問の結果により、また、B
が同じころ右六〇五号室を買い受けたことは、成立に争いのない甲第二号証及び原告A本
人尋問の結果並びに弁論の全趣旨により、それぞれ認められる。同1(二)の事実(Bの
相続関係)は、成立に争いのない甲第三号証及び弁論の全趣旨により認められる。
請求原因2及び3の各事実は、当事者間に争いがない。
同4(一)のうち原告A及びBが本件処分を知つた日が昭和五七年二月であることは、原
、()告A本人尋問の結果及び弁論の全趣旨により認められ同項のその余の事実及び同4二
の事実は、当事者間に争いがない。
二そこでまず、本件処分の取消しの訴えの利益について判断する。
本件処分は、建築基準法八七条、六条に基づく確認申請に対するものであるところ、建築
基準法によれば、建築主は、一定の建築物を建築しようとする場合においては、
当該工事に着手する前に、その計画が当該建築物の敷地、構造及び建築設備に関する法律
並びにこれに基づく命令及び条例(以下「建築関係法令」という)の規定に適合するも。

、(「」。)であることについて確認の申請書を提出して建築主事の確認以下建築確認という
を受けなければならず六条一項確認を受けずに工事をすることはできないとされ六()、(
条五項工事を完成した場合においてはその旨を建築主事に届け出なければならず七)、、(
条一項、建築主事は、届出に係る建築物及びその敷地が建築関係法令に適合しているか)

うかを検査し(七条二項、それが建築関係法令に適合しているときは、建築主に対し検)

済証を交付しなければならないとされている(七条三項。そして、特定行政庁は、建築)

準法又はこれに基づく命令若しくは条例の規定に違反した建築物については、建築主等に
対して当該工事の施工の停止を命じ、又は、当該建築物の除去、改築その他右規定に対す
る違反を是正するために必要な措置をとることを命ずることができるとされている(九条
二項。)
これら一連の規定に照らせば、建築確認は、建築基準法六条一項(本件では、さらに同法
八七条)の建築物の建築等の工事(本件では、用途変更に伴う工事)が着手される前に、
当該建築物の計画が建築関係法令に適合していることを公権的に判断する行為であつて、
それを受けなければ右工事をすることができないという法的効果が付与されており、建築
関係法令に違反する建築物の出現を未然に防止することを目的としたものということがで
きる。
しかしながら、右工事が完了した後における建築主事の検査等は、当該建築物等が建築関
係法令に適合しているかどうかを基準とし、同じく特定行政庁の違反是正命令は、当該建
築物等が建築基準法並びにこれに基づく命令及び条例の規定に適合しているかどうかを基
準とするものであつて、いずれも当該建築物等が建築確認に係る計画どおりのものである
、。、、かどうかを基準として判断し処分をするものではないしたがつて建築確認の存在は
検査済証の交付を拒否し又は違反是正命令を発する上においてなんら法的障害となるもの
ではなく、建築確認処分の取消しが、検査済証の交付の拒否あるいは違反是正命令の先決
関係にあるものでもない。すなわち、建築確認は、これを受けて工事がなされた建築物で
あつても、
それが実体的にも関係法令等にも適合することまで法的に確定する効力を持つものではな
いのであつて、建築確認の効果は、確認の申請に基づく工事を適法に施工することができ
ることに尽きるというべきである。
そうであれば、当該建築確認申請に基づく工事が完了した後は、同確認を取り消しても既
になされた過去の工事がなかつた状態に戻るわけではないから、その取消しにより何らか
の法律効果が生ずることはないことに帰着し、当該工事完了後に建築確認の取消しを求め
る訴えは、その訴えの利益がないことになる(最高裁昭和五九年一〇月二六日第二小法廷
判決民集三八巻一〇号一一六九頁参照。そして、この理は建築基準法八七条に基づく建)

物の用途変更についても変わるところはないのであつて、用途変更の確認処分に係る工事
が完了した後は、同確認処分の取消しを求める訴えの利益はないものというべきである。
そこで、本件処分の内容となつた用途変更工事の完了の有無についてみるに、被告建築主
事本人尋問の結果及びこれにより真正に成立したと認められる乙第一号証の一ないし六
(同第一号証の一の官署作成部分の成立は当事者間に争いがない、第二号証(受付欄。)

受付印部分の成立は当事者間に争いがない)及び昭和五九年三月九日に撮影した本件建。

の三階三〇三号室の写真であることが認められる同第三号証並びに弁論の全趣旨によれ
ば、
本件処分は、本件建物の三階の一三の部屋(宿泊室)に各一個の非常用照明を設置するこ
とのみをその内容とするものであり、同工事は、昭和五六年一〇月二九日の検査済証交付
の時までに完了したことが認められる。したがつて、原告らは本件処分の取消しを求める
訴えの利益を有しないことになる。
原告らは、本件処分には、本件建物に屋内消火栓の非常電源及び非常誘導灯並びに非常用
照明の各工事を内容としていない違法があり、同工事がなされていない以上、原告らに訴
えの利益があると主張するが、本件処分に原告ら主張の各工事が遺脱していることが仮に
違法であるとしても、本件処分の対象である同工事が完了した後に本件処分を取り消して
も、何ら新たな法律効果が発生するものでないことは前記判示のとおりである。
、、、また原告らは本件処分により訴外会社がホテル営業許可を受けられることになるので
。、これを排除するために本件処分の取消しを求める法律上の利益があると主張するしかし
ホテルの営業許可は、都道府県知事が独自にこれを判断するもの(旅館業法三条、一条)
であつて、本件処分が取り消されても、それによつて法律上当然にホテル部分の使用がで
きなくなるものでないことは前記判示のとおりであるから、原告らの右主張も採用できな
い。
三次に、裁決の取消しについての訴えの利益について判断するに、原告らには同裁決の
原処分である本件処分について取消しを求める訴えの利益がないことは右のとおりであ
り、
このことは本件処分に係る審査請求についても同断であるから、仮に本件裁決に手続上の
瑕疵があつても、結局、同裁決を独自に取り消す法律上の利益を原告らは有しないもので
ある。
四よつて、本件訴えは、いずれも不適法であるから却下することとし、訴訟費用の負担
について、行訴法七条、民訴法八九条、九三条一項本文を適用して、主文のとおり判決す
る。
(裁判官山本和敏太田幸夫塚本伊平)
別紙(物件目録(省略))

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