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平成25年1月17日判決言渡
平成24年(行ケ)第10223号審決取消請求事件
口頭弁論終結日平成24年12月10日
判決
原告株式会社インディアン
モトサイクルカンパニージャパン
訴訟代理人弁護士佐藤雅巳
古木睦美
被告特許庁長官
指定代理人高橋謙司
渡邉健司
田村正明
主文
原告の請求を棄却する。
訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由
第1原告の求めた判決
特許庁が不服2011-7461号事件について平成24年4月10日にした審
決を取り消す。
第2事案の概要
本件は,商標登録出願拒絶査定に対する不服審判請求を不成立とした審決の取消
訴訟である。争点は,本願商標と引用商標1,2の類似性(商標法4条1項11号),
である。(以下,商標法を「法」という。)
1原告は,平成18年2月21日,下記指定役務の本願商標につき,商標登録
出願(商願2006-01981号)をしたが,拒絶査定を受けたので,これに対
する不服の審判請求をした(不服2011-7461号)。
特許庁は,平成24年4月10日,「本件審判の請求は,成り立たない。」との審
決をし,その謄本は同年5月21日原告に送達された。
【本願商標】
・指定商品
第25類:被服,ガーター,靴下止め,ズボンつり,バンド,ベルト,履物,仮
装用衣装,運動用特殊衣服,運動用特殊靴
2審決の理由の要点
(1)本願商標は,その構成文字に相応して「インディアン」の称呼及び「イン
ディアン(アメリカの先住民)」の観念を生ずる。
(2)引用商標1は,羽根飾りを冠した右向きのインディアンの図形及び該図形
中に「Indian」の欧文字を白抜きで特徴のある書体で表してなる部分(引用
1ヘッドドレスロゴ)と,さらにその下部に「MOTOCYCLE」の欧文字を表
した構成よりなるものであるが,「引用1ヘッドドレスロゴ」と下段の「MOTOC
YCLE」の文字とは,その構成から視覚上,明確に分離して看取される。「引用1
ヘッドドレスロゴ」は,独立して自他商品の識別標識としての機能を果たすものと
いうのが相当であって,引用商標1からは,「インディアン」の称呼を生ずるもので
あり,また,「インディアン(アメリカの先住民)」の観念を生ずるものである。
【引用商標1】(登録4751422号,甲405)
・出願日:平成6年9月21日
・設定登録:平成16年2月27日
・指定商品
第25類:洋服,コート,セーター類,ワイシャツ類,寝巻き類,下着,水泳着
(3)引用商標2は,黒塗りの円形図形を背景として,その内側中央に,頭部の
羽根飾りを前方に突き出させた左向きのインディアンの図形(引用2インディアン
図形)を配し,該図形の外側に配した白抜きの三重の円弧図形外周に沿って,「WO
RLDSFINESTMOTORCYCLE」の欧文字を表し,その下方に,
黒塗りの長方形図形を背景として,「Indian」の欧文字を特徴のある書体で表
し,さらに,その下に白抜きで「MOTOCYCLE」の欧文字を配した構成から
なるものであるが,その構成において「Indian」の文宇と「MOTOCYC
LE」の文字とは,常に一体不可分のものとして認識しなければならない格別の事
情も見当たらない。また,引用商標2中,特徴ある書体の「Indian」の文字
は,「MOTOCYCLE」の文字と比して,その書体が大きく異なること,また,
文字の大きさも「Indian」の方がかなり大きいこと,さらに,「Indian」
の文字は,その上部にあって,共に看者の注意を引く「引用2インディアン図形」
とは,「インディアン(アメリカの先住民)」の観念を共通にするものであって,引
用商標2に接した取引者,需要者は,一般によく知られているインディアン(アメ
リカの先住民)を表した商標という強い印象を受けるものというべきである。そう
すると,引用商標2中の「Indian」の文字部分も独立して自他商品の識別標
識としての機能を果たすものとみるのが相当であるから,該文字部分に相応して「イ
ンディアン」の称呼を生ずるものであり,また,「インディアン(アメリカの先住民)」
の観念を生ずる。
【引用商標2】(登録第4751423号,甲406)
・出願日:平成6年9月21日
・設定登録:平成16年2月27日
・指定商品
第25類:洋服,コート,セーター類,ワイシャツ類,寝巻き類,下着,水泳

(4)本願商標と引用各商標は,外観において,その構成中の欧文字「Indi
an」の文字部分について,ともに共通の特徴のある書体で表された態様であって,
看者に強く印象を与える文字部分を共通にするものであるから,外観上近似性を有
する。また,称呼において,両者は,ともに「インディアン」の称呼を生ずるもの
であるから,その称呼を共通にする。そして,観念において,両者は,ともに「イ
ンディアン(アメリカの先住民)」の観念を生ずるものであるから,その観念を共通
にする。さらに,本願商標の指定商品と引用各商標の指定商品とは,同一又は類似
の商品と認められる。してみれば,本願商標と引用各商標とは,外観上の図形の有
無という差異を考慮したとしても,特徴のある書体の欧文字「Indian」の文
字部分において共通するといえるほどの近似性を有するものであり,また,称呼及
び観念を共通にするものであるから,互いに相紛らわしい類似の商標というのが相
当である。
第3原告主張の審決取消事由
1商標の類否判断の基準
商標の類否は,対比される両商標が同一又は類似の商品に使用された場合に,商
品の出所について誤認,混同を生じるおそれがあるか否かによって決すべきである
ところ,その判断にあたっては,商品に使用された商標の称呼,外観,観念によっ
て取引者に与える印象,記憶,連想等を総合して,全体的に考察すべきであり,し
かも,その商品の取引の実情を明らかにし得る限り,その具体的な取引状況に基づ
いて判断するのが相当である(最高裁昭和43年2月27日第三小法廷判決・民集2
2巻2号399頁)。
複数の構成部分を組み合わせた結合商標についても,その構成部分全体を対比し
て類否を判断するのを原則とすべきものであって,結合商標の構成部分の一部を抽
出し,この部分だけを他の商標と比較して商標そのものの類否を判断することは,
その部分が取引者,需要者に対し商品又は役務の出所識別標識として強く支配的な
印象を与えるものと認められる場合や,それ以外の部分から出所識別標識としての
称呼,観念が生じないと認められる場合などを除き,許されないと解するのが相当
である(最高裁平成19年(行ヒ)第223号・平成20年9月8日第二小法廷判
決)。
2取消事由1(引用商標1との類否判断の誤り)
(1)外観
審決は,「本願商標と引用商標1とは,その構成中の『Indian』の文字部分
について,ともに共通の特徴のある書体で表された態様であって,看者に強く印象
を与える文字部分を共通にするものであるから,外観上近似性を有する」とした。
しかし,引用商標1において,看者の目につくのは,羽根飾りを冠した北米原住
民の図形(インディアン図形)の部分であり,「Indian」の文字部分
ではない。「インディアン図形」と同図形の中に配した「Indian」の文字部分
とを対比すると,インディアン図形は,横幅において同「Indian」の約3倍,
縦の長さにおいて約4倍である。
よって,「Indian」の文字部分が看者に強く印象を与えるから,引用商標1
は本願商標と外観上近似するとした審決の判断は誤りである。
加えて,引用商標1には,本願商標にない「インディアン図形」及び「インディ
アン図形」に極めて近接して配しかつ相当大書した「MOTOCYCLE」の文字
があるから,本願商標が引用商標1と外観において全く相違することは明白である。
(2)称呼及び観念
審決は,「ヘッドドレスロゴ」は,独立して自他商品の識別標識としての機能を果
たすとした。
しかし,結合商標の類否判断は,構成部分全体を対比するのが原則である。
引用商標1においては,「インディアン図形」の下に極めて近接して,「MOTOC
YCLE」の文字が配されており,看者は自然に引用商標1全体を認識するのであ
り,かつ「MOTOCYCLE」の文字は,横幅において,「インディアン図形」の
3分の2程であり,横縦とも「インディアン図形」中の「Indian」の文字よ
り大きい。したがって,引用商標1において,「ヘッドドレスロゴ」は出所識別標識
として強く支配的な印象を与える」ものでもないし,「MOTOCYCLE」から出
所識別標識としての称呼,観念が生じないということもない。引用商標1からは
「インディアンモトサイクル」の称呼,及び「インディアンのオートバイ」
の観念が生ずるのであり,本願商標と称呼及び観念において相違する。
(3)取引の実情
ア本願商標並びに引用商標1及び2を付した商品の顧客は,ファッション
に関心を持つ若い男性層である。
イ本願商標における特徴ある筆記体による「Indian」の欧文字(別
紙1の「Indianロゴ」),「Indianロゴ」を配した羽根飾りを冠した右向
きのインディアンの酋長の図形(別紙1の「ヘッドドレスロゴ」)からなる商標,「ヘ
ッドドレスロゴ」の下に「Indianロゴ」と同じ書体の筆記体の欧文字の「I
ndianMotocycleCo.,Inc.」(別紙1の「モトサイクルロゴ」)
を配した商標(別紙1の「Indian/Motocycle」商標)等の「In
dian商標」は,本件出願時である平成18年2月21日及び審決時である平成
24年4月10日当時,原告が衣類等の商品に使用する商標として需要者の間に周
知であった。また,本願商標の出願時及び審決時において,「Indianロゴ」,
「ヘッドドレスロゴ」は原告を出所とする商品を示すものとして周知であったほか,
「IndianMotocycle」,「インディアンモトサイクル」は原告の略
称として周知である。
ウ引用商標1及び2は,その商標権者である東洋エンタープライズ株式会
社において,原告の企業努力の成果を収奪し,原告の業務を妨害する目的で出願し
登録を得たものである。東洋エンタープライズのかかる便乗商法は禁圧すべきもの
であって,その手段である引用商標1及び2は,健全な商標秩序を害するものとし
て,その登録を無効とすべきものである。
エかかる取引の実情を考慮すれば,引用商標に接した需要者は,構成部分
全体を出所識別標識として認識する。また,本願商標を付した商品も,引用商標1
及び2を付した商品も,需要者は原告を出所と認識するのであり,東洋エンタープ
ライズはもとより東洋エンタープライズ以外の第三者を出所と認識しない。したが
って,本願商標の使用により出所の混同が生ずることはないから,引用商標1及び
2の出所表示機能が害されるということはなく,東洋エンタープライズはもとより
東洋エンタープライズ以外の第三者の利益が害されるということもない。本願商標
の使用により需要者の利益が害されることもない。
仮に需要者が引用商標1及び引用商標2を使用した商品を東洋エンタープライズ
を出所とする商品であると認識するとする。この場合でも,需要者は,本願商標を
使用した商品を本願出願人を出所とする商品であると認識する。本願商標が本願出
願人の商標として需要者の間に周知であるから,これは当然のことである。
(4)小括
本願商標は,引用商標1と外観,称呼,観念において相違し,出所において混同
のおそれを生じない非類似の商標である。
3取消事由2(引用商標2との類否判断の誤り)
(1)外観
審決は,「本願商標と引用商標2とは,外観上の図形の有無という差異を考慮した
としても,特徴のある書体の欧文字『Indian』の文字部分において共通する
といえるほどの近似性を有する」とした。
しかし,引用商標2における「Indian」の文字部分は,白抜きの「MOTO
CYCLE」の文字部分とともに黒地の長方形の中に配されており,また,長方形
の上には黒地の円の図形及び同図形の中に配した白抜きの左向きの人物の図形,白
抜きの三重の円の内線等が配されており,白いふち取りがあるものの,看者の注意
を特に惹くものではない。
(2)称呼及び観念
審決は,引用商標2中の「Indian」から「インディアン」の称呼及び「イ
ンディアン」の観念が生ずると認定した。
しかし,「Indian」の文字は,長方形の黒地の図形の中に相近接して「MO
TOCYCLE」の文字とともに挿入して配されており,「Indian」の文字と
「MOTOCYCLE」の文字とは一体として認識され,称呼,観念されるもので
ある。引用商標2において,「Indian」の文字が出所識別標識として強く支配
的な印象を与えるものではないし,「Indian」の文字以外の部分から出所識別
標識としての称呼,観念が生じないと認められるものでもない。
よって,引用商標2からは,「インディアンモトサイクル」の称呼及び「インディ
アンのオートバイ」の観念が生ずる。
(3)取引の実情
前記2(3)と同様である。
(4)小括
本願商標は,引用商標1と外観,称呼,観念において相違し,出所において混同
のおそれを生じない非類似の商標である。
第4被告の主張
1商標の類否の判断基準
商標法4条1項11号に係る商標の類否は,同一又は類似の商品又は役務に使用
された商標が,その外観,観念,称呼等によって取引者,需要者に与える印象,記
憶,連想等を総合して,その商品又は役務に係る取引の実情を踏まえつつ全体的に
考察すべきものであり(最三小判昭和43年2月27日民集22巻2号399頁参
照),また,複数の構成部分を組み合わせた結合商標と解されるものについて,商標
の構成部分の一部を抽出し,この部分だけを他人の商標と比較して商標そのものの
類否を判断することは,その部分が取引者,需要者に対し,商品又は役務の出所識
別標識として強く支配的な印象を与えるものと認められる場合や,それ以外の部分
から出所識別標識としての称呼,観念が生じないと認められる場合などには,許さ
れるものである(最一小判昭和38年12月5日民集17巻12号1621頁,最
二小判平成5年9月10日民集47巻7号5009頁,最二小判平成20年9月8
日裁判集民事228頁561頁参照)。
2本願商標の外観,観念,称呼
(1)外観
本願商標は,「Indian」の欧文字を特徴のある筆記体の書体(先頭の「I」
の文字は,上部及び下部の始点及び終点の部分は湾曲しており飾り文字風になって
いる。)で表してなるものである。
(2)観念及び称呼
「Indian」の欧文字は,「インディアン(アメリカの先住民ないし北米原住
民)」の意味を有する語として広く知られているものであることから,本願商標から
は「インディアン(アメリカの先住民ないし北米原住民)」の観念及び「インディア
ン」の称呼を生じる。
3引用商標の分離観察の可否
(1)引用商標1
引用商標1は,下部を水平にそろえた長い羽根飾りを冠した右向きのインディア
ンの横顔の図形(同図形の中央部分に,白抜きで比較的大きく描かれた特徴のある
筆記体の書体で表した欧文字「Indian」を含む。引用1ヘッドドレスロゴ)
と,その下部に欧文字「MOTOCYCLE」を細字の活字体で表した構成からな
る結合商標である。
引用1ヘッドドレスロゴとその下部にある欧文字「MOTOCYCLE」は,そ
の構成から視覚上,明確に分離して看取されるものであり,しかも,引用1ヘッド
ドレスロゴ部分の方が,細字の活字体による欧文字「MOTOCYCLE」部分よ
りも圧倒的に大きく,見る者の目を強く引きつける部分であることから,これに比
べると,欧文字「MOTOCYCLE」部分は,見る者に大きな印象を与えるもの
ではない。さらに,引用1ヘッドドレスロゴ部分は,インディアン図形と特徴のあ
る筆記体の書体で表した「Indian」の欧文字からなり,いずれも「インディ
アン(アメリカの先住民ないし北米原住民)」との観念を共通にしているのに対し,
欧文字「MOTOCYCLE」は,一般の日本人には余りなじみのない語であるこ
とからすれば,引用商標1を見た取引者・需要者中の多くの者は,引用商標1を,
日本人にとって一般によく知られているインディアンを用いた商標として,認識し,
理解するものというべきである。
そうすると,引用商標1からは,「インディアン」の称呼が生じ,「インディアン
(アメリカの先住民ないし北米原住民)」の観念も生じる。引用商標1は,引用1ヘ
ッドドレスロゴ部分が,取引者,需要者に対し,商品の出所識別標識として強く支
配的な印象を与えるというべきであるから,この部分だけを他人の商標と比較して
商標そのものの類否を判断することは,許される。なお,上記分離観察を妨げる取
引の実情は見当たらない。
(2)引用商標2
引用商標2は,黒塗りの円形図を背景として,その内側中央に,頭部の羽根飾り
を前方に突出させた左向きインディアン図形を配し,同図形の外側に配した白塗り
の三重の円弧の図形の外周に沿って,「WORLDSFINESTMOTORC
YCLE」と欧文字の活字体で表記し,その下方に,黒塗りの長方形図を背景とし
て,特徴のある筆記体の書体で表した欧文字「Indian」と,白抜きの活字体
欧文字「MOTOCYCLE」とを上下2段に表記した構成からなる結合商標であ
る。
引用商標2中の欧文字「Indian」は,特徴のある筆記体の書体で,活字体
の「MOTOCYCLE」とは,その書体が異なり,また,文字の大きさも,欧文
字「Indian」の方が,欧文字「MOTOCYCLE」よりはるかに大きく,
共に看者の注意を引くインディアン図形と,「インディアン(アメリカの先住民ない
し北米原住民)」という観念を共通にしている。引用商標2を見た取引者・需要者中
の多くの者は,引用商標2を,日本人にとって一般によく知られているインディア
ンを用いた商標として認識し,理解するものというべきである。
また,インディアン図形の周りにある「WORLDSFINESTMOTO
RCYCLE」の欧文字は,引用商標2中の欧文字「Indian」及び「MOT
OCYCLE」と比べて,その文字の大きさがかなり小さく,離隔的に見たときに
判読が困難なほどであることからすると,補助的な文字標章であり,これを,イン
ディアン図形,「Indian」及び「MOTOCYCLE」の欧文字と同様に,取
引者・需要者の注目を集める顕著な部分であるとみることができないことは明らか
である。
そうすると,引用商標2からは,「インディアン」の称呼が生じ,「インディアン
(アメリカの先住民ないし北米原住民)」の観念も生じる。
(3)なお,引用商標2に係る分離観察の可否については,原告に係る商標登録
(商標「」,第25類「被服」等,商標登録第4022987号)に
対し,引用商標2を引用して商標法8条1項違反を理由とする無効審判が請求され
た事件において,特許庁は,これを無効2002-35289号事件として審理し
た結果,平成15年8月8日,「本件審判の請求は,成り立たない。」との第1次審
決をしたところ,審判請求人(引用商標2に係る商標権者)は,東京高等裁判所に
審決取消訴訟を提起し(東京高等裁判所平成15年(行ケ)第422号),同裁判所
は,平成16年5月11日,引用商標2からは,「インディアン」との称呼が生じ,
「インディアン(北米原住民)」との観念も生じる旨判示し,第1次審決を取り消す
旨の判決をした。これに対し,原告は,上告及び上告受理の申立てをしたが,最高
裁判所は,平成16年9月30日,同上告を棄却し同上告受理申立てを受理しない
決定をし,当該判決が確定していることからも裏付けられるところ,その後,本件
審決に至るまでの間に,引用商標2について前記認定を左右するような取引の実情
も見当たらない。
したがって,引用商標2は,共に「インディアン(アメリカの先住民ないし北米
原住民)」を認識させる,特徴のある筆記体の書体による「Indian」の欧文字
部分及びインディアン図形部分が,取引者,需要者に対し,商品の出所識別標識と
して強く支配的な印象を与えるというべきであるから,この部分だけを他人の商標
と比較して商標そのものの類否を判断することは許される。
4本願商標と引用商標の類否判断
(1)外観
本願商標と引用商標を対比すると,インディアン図形及び「MOTOCYCLE」
の欧文字の有無など外観において幾つかの点が相違するものの,本願商標と引用商
標の要部たり得る「Indian」部分とは,ほぼ同様の特徴のある筆記体の書体
で表されていることからすれば,該文字部分において,外観上の近似性を有する。
(2)観念及び称呼
本願商標及び引用商標は,いずれも「インディアン(アメリカの先住民ないし北
米原住民)」の観念及び「インディアン」の称呼を生ずるものであるから,両者の観
念及び称呼は共通する。
(3)取引の実情
本件商標及び引用商標の指定商品は,いずれも洋服等の被服類であって,その需
要者は,一般の消費者(ファッションに関心を持つ若い男性層を含む。)であり,必
ずしも商標やブランドについて詳しい知識を持つ者ばかりではなく,商品の購入に
際し,メーカー名などについて常に注意深く確認するとは限らないことは,経験則
に照らして明らかである。
また,原告は,本願商標に関する取引の実情として,本願商標は,審決時には,
原告の取扱いに係る被服類等の商品に使用される商標として需要者の間に周知であ
ったと主張するが,雑誌や業界紙等に原告の行うライセンス事業についての紹介記
事や宣伝広告が掲載されたことは認められるものの,原告(そのライセンシーグル
ープを含む。)の本願商標を付した商品の実際の販売数量や売上高,あるいは,宣伝
広告の回数や宣伝広告費の額といったものを定量的に確認できる客観的な資料がな
いことからすれば,審決時において,本願商標が,原告の取扱いに係る商品の出所
表示として需要者の間に広く認識されて周知となっていたとはいえない。
むしろ,本願商標と共に,引用商標1と極めて類似する「ヘッドドレスロゴ」若
しくは「Indian/Motocycle商標」又は「ヘッドドレスロゴ」の下
段に欧文字「MOTOCYCLE」を配した商標を,同一の雑誌広告・店舗等で実
際に使用(甲32,54~56,85,92,94,105~108,127,1
47,171,178,275,290,309,312,316,319,33
2等)していることからすると,これに接する一般の消費者である需要者は,当該
「ヘッドドレスロゴ」等の商標と本願商標とが互いに同一の出所を表示するもので
あるとの認識が生じるのであって,このことは,当該「ヘッドドレスロゴ」等の商
標と極めて類似する引用商標1と本願商標とについてもまた,同一の出所を表示す
るものであるとの認識が生じるというべきであって,本願商標を付した商品と引用
商標1を付した商品の出所について誤認混同を生じる要因となり得る。
(4)法4条1項11号該当性
以上のとおり,本願商標と引用商標とは,外観においてインディアン図形等の有
無という差異を考慮したとしても,ほぼ同様の特徴のある筆記体の書体で表された
「Indian」の欧文字部分を互いに有し,かつ,「インディアン(アメリカの先
住民ないし北米原住民)」の観念及び「インディアン」の称呼を共通にし,共に日本
人にとって一般によく知られているインディアンを用いた商標として類似性を有し
ている以上,取引の実際において,出所について誤認混同を生じるおそれを否定で
きないというべきである。そして,本願商標の指定商品と引用商標の指定商品とは,
同一又は類似の商品と認められるものである。したがって,本願商標は,法4条1
項11号に該当するというべきであるから,審決の認定,判断に誤りはない。
4原告の主張に対する個別的反論
(1)原告は,取引の実情として,本願商標を付した商品だけでなく,引用商標
1及び2を付した商品も,その顧客はファッションに関心を持つ若い男性層であっ
て,両者の需要者は共通していると主張する。
しかし,本願商標と引用商標との需要者層がファッションに関心を持つ若い男性
層で共通するからといって,それだけでは,当該需要者が,本願商標を付した商品
と引用商標を付した商品との出所が異なることを正しく理解できているとは到底い
えないのであるから,商品の出所について誤認混同を生じるおそれがある。
(2)また,原告は,取引の実情として,本願商標の出願時である平成18年2
月21日及び本件審決時である同24年4月10日には,「IndianMoto
cycle」及び「インディアンモトサイクル」は,原告の略称又は原告を出所と
する商品の商標として需要者の間で周知であり,また,本願商標は,「Indian
/Motocycle商標」,「ヘッドドレスロゴ」と並んで原告ブランドの中核を
なす商標であり,本件審決の審決日には,原告を出所とする商標として需要者の間
で周知であると主張する。
しかし,本願商標は,審決時において,原告の取扱いに係る商品の出所表示とし
て需要者の間に広く認識され周知となっていたとはいえないし,仮に,本願商標が
周知であったとしても,本願商標と引用商標とでは,その出所が異なるということ
が需要者において認識できることが重要であるにもかかわらず,原告は,その周知
性をもってどのような理由から,引用商標とその出所について区別することができ
るというのか何ら明らかにしていない。
(3)さらに,原告は,取引の実情として,引用商標は,原告の企業努力の成果
を収奪し,原告の業務を妨害する目的で出願し登録を得たものであって,健全な商
標秩序を害するものであり,公序良俗に反するものであるから,無効とすべきもの
であると主張する。
しかし,これは引用商標の法4条1項7号該当性を主張するものにほかならず,
別途,商標登録の無効審判の請求をする際の無効理由にするのであればともかく,
法4条1項11号該当性を否定する理由とはならない。前記のとおり,本願商標は,
他人の先願登録商標である引用商標に類似するものであり,その指定商品も同一又
は類似するものである以上,後願である本願商標については,商標登録の余地はな
い。
(4)原告は,本願商標を付した商品も引用商標を付した商品も,需要者は等し
く原告を出所とするものと認識するのであるから,本願商標の使用により引用商標
の出所表示機能が害されることはあり得ず,したがって,本願商標は商標法4条1
項11号に該当しない旨主張する。
しかし,商取引の実際において,本願商標を付した商品も引用商標を付した商品
も,需要者は等しく原告を出所とするもの,すなわち同一人からの出所とするもの
であると認識するのであれば,このこと自体が,商品の出所について誤認混同を生
じていることにほかならず,引用商標の出所表示機能が害されていることになる。
第5当裁判所の判断
1取消事由(引用商標1との類否判断の誤り)について
(1)判断手法並びに外観,役務及び観念について
原告は,引用商標1から引用1ヘッドドレスロゴ部分を分離独立して看取するこ
とは許されないと主張する。
そこで検討するに,引用商標1は,下部を水平にそろえた長い羽根飾りを冠した
右向きのインディアンの横顔の図形と同図形の中央部分に白抜きで比較的大きく描
かれた特徴のある筆記体の書体で表した欧文字「Indian」を表してなる部分
(引用1ヘッドドレスロゴ)と,その下部に欧文字「MOTOCYCLE」を細字
の活字体で表した構成からなる。
引用1ヘッドドレスロゴとその下部にある欧文字「MOTOCYCLE」は,そ
の構成から視覚上,明確に分離して看取されるものである。そして,引用1ヘッド
ドレスロゴ部分の方が,細字の活字体による欧文字「MOTOCYCLE」部分よ
りも大きいことに照らすと,引用1ヘッドドレスロゴ部分に比べて,欧文字「MO
TOCYCLE」部分は,見る者に大きな印象を与えるものではない。また,引用
1ヘッドドレスロゴ部分は,インディアンの図形と特徴のある筆記体の書体で表し
た「Indian」の欧文字からなり,いずれも「インディアン(アメリカの先住
民ないし北米原住民)」との観念を共通にしているのに対し,欧文字「MOTOCY
CLE」は,一般の日本人には余りなじみのない語であることからすれば,引用商
標1を見た取引者・需要者中の多くの者は,引用商標1を,日本人にとって一般に
よく知られているインディアンを用いた商標として,認識し,理解するものと認め
るのが相当である。
すなわち,引用1ヘッドドレスロゴは,日本人にとってアメリカ先住民であるイ
ンディアンをイメージするのに典型的な風貌と羽根飾りを表したロゴの中に特徴的
な書体でインディアンの英語表記である「Indian」の文字を白抜きで埋め込
んだもので,それ自体が引用商標を印象づけるものとなっている。このように,引
用商標1は,引用1ヘッドドレスロゴ部分が,取引者,需要者に対し,商品の出所
識別標識として強く支配的な印象を与えるというべきであるから,この部分を他人
の商標と比較して商標そのものの類否を判断した審決の判断手法は正当である。引
用商標1から引用1ヘッドドレスロゴ部分を分離独立して看取することは許されな
いとの原告の主張は採用することができない。
そして,引用商標1中の引用1ヘッドドレスロゴ部分と本願商標の外観を見比べ
るに,本願商標は,「Indian」の欧文字を特徴のある筆記体の書体(先頭の「I」
の文字は,上部及び下部の始点及び終点の部分は湾曲しており飾り文字風になって
いる。)で表してなるものであるところ,引用1ヘッドドレスロゴ部分中「Indi
an」の欧文字部分も本願商標における欧文字と書体を同じくするものである。そ
うすると,本願商標と引用1ヘッドドレスロゴ部分は,インディアン図形の有無と
いう点では異なるものの,特徴のある同一の書体で表された「Indian」の文
字部分を共通にするものであるから,外観上近似性を有する。これと同旨の審決の
判断に誤りはない。
また,引用1ヘッドドレスロゴ部分からは,「インディアン」の称呼が生じ,「イ
ンディアン(アメリカの先住民ないし北米原住民)」の観念も生じることになる。本
願商標も,「Indian」の欧文字を特徴のある筆記体の書体で表してなるもので
あるから,「インディアン」の称呼と,「インディアン(アメリカの先住民ないし北
米原住民)」の観念が生じ,本願商標と引用商標1は,称呼と観念を共通にする。原
告は,引用商標1から引用1ヘッドドレスロゴ部分を分離独立して看取することは
許されないとの前提の下に,引用商標からは「インディアンモトサイクル」の称呼,
及び「インディアンのオートバイ」の観念が生じ,本願商標のそれとは異なると主
張するが,原告のかかる主張はその前提において誤りであるから採用することがで
きない。
(2)取引の実情について
ア原告は,取引の実情として,本願商標を付した商品だけでなく,引用商
標1及び2を付した商品も,その顧客はファッションに関心を持つ若い男性層であ
って,両者の需要者は共通していると主張する。
しかし,外観において近似し,称呼と観念を共通にする本願商標と引用商標がそ
れぞれの類似する指定商品(衣服,被服,洋服等)に使用された場合,特段の事情
がない限り,商品の出所につき誤認混同が生じると解されるところ,本願商標と引
用商標の需要者層がファッションに関心を持つ若い男性層で共通することが,上記
誤認混同を生じさせない理由になるとは考えられない。
イ原告は,本願商標は,本件審決日には,原告を出所とする商標として需
要者の間で周知であったなどと主張する。
しかし,本件全証拠によっても,本願商標は,審決時において,原告の取扱いに
係る商品の出所表示として需要者の間に広く認識され周知となっていたとは認めら
れない。
ウさらに,原告は,引用商標は,原告の企業努力の成果を収奪し,原告の
業務を妨害する目的で出願し登録を得たものであって,健全な商標秩序を害するも
のであり,公序良俗に反するものであるから,無効とすべきものであると主張する。
しかし,これは,引用商標が法4条1項7号に該当する事由を主張するものであ
るところ,引用商標の商標登録無効審判の請求をする際の無効理由にはなりうると
しても,本願商標について法4条1項11号該当性を否定する理由とはならない。
エ原告は,本願商標を付した商品も引用商標を付した商品も,需要者は等
しく原告を出所とするものと認識するのであるから,本願商標の使用により引用商
標の出所表示機能が害されることはあり得ず,したがって,本願商標は法4条1項
11号に該当しない旨主張する。
しかし,本件全証拠によっても,本願商標を付した商品も引用商標を付した商品
も,需要者が等しく原告を出所とするものと認識するとは認められない。
(3)取消事由1についてのまとめ
そうすると,本願商標と引用商標1は,外観において近似し,称呼と観念を共通
にする類似の商標というべきであり,また,指定商品は同一又は類似していると認
められるから,本願商標が法4条1項11号に該当するとした審決の判断に誤りは
ない。
2取消事由2(引用商標2との類否判断の誤り)について
(1)原告は,引用商標2のうち「Indian」の文字部分が独立して自他商
品の識別標識としての機能を果たさないと主張する。
そこで検討するに,引用商標2は,黒塗りの円形図を背景として,その内側中央
に,頭部の羽根飾りを前方に突出させた左向きインディアン図形を配し,同図形の
外側に配した白塗りの三重の円弧の図形の外周に沿って,「WORLDSFINE
STMOTORCYCLE」と欧文字の活字体で表記し,その下方に,黒塗りの
長方形図を背景として,特徴のある筆記体の書体で表した欧文字「Indian」
と,白抜きの活字体欧文字「MOTOCYCLE」とを上下2段に表記した構成か
らなる。
引用商標2中の欧文字「Indian」は,特徴のある筆記体の書体で表され,
活字体の「MOTOCYCLE」とはその書体が異なっていること,文字の大きさ
が欧文字「Indian」の方が欧文字「MOTOCYCLE」より大きいことに
加え,上部のインディアン図形と,「インディアン(アメリカの先住民ないし北米原
住民)」という観念を共通にしている。そして,引用商標2中,「Indian」の
欧文字部分とインディアン図形がいずれもインディアン(アメリカの先住民ないし
北米原住民)を意味していることは,日本の取引者・需要者,すなわち,一般にイ
ンディアンについて西部劇を通じてよく理解している日本の取引者・需要者にとっ
て,引用商標2を目にする際に直ちに理解することである。
また,「MOTOCYCLE」の語は,「Indian」に比べると一般の日本人
にとってなじみが薄く,これをオートバイに関連する語であると正確に理解すると
いうには足りない。
さらに,インディアン図形の周りにある「WORLDSFINESTMOT
ORCYCLE」の欧文字は,引用商標2中の欧文字「Indian」及び「MO
TOCYCLE」と比べて,その文字の大きさがかなり小さいことからすると,補
助的な文字標章であり,これをインディアン図形や「Indian」の欧文字部分
と同様に,取引者・需要者の注目を集める顕著な部分であるとみることはできない。
そうすると,引用商標2のうち「Indian」の文字部分は独立して自他商品
の識別標識としての機能を果たしていると認めるのが相当である。
そして,引用商標2と本願商標の外観を見比べるに,引用商標2の「India
n」の欧文字部分は本願商標における欧文字と特徴のある書体を同じくするもので
ある。そうすると,本願商標と引用商標2は,インディアン図形や「MOTOCY
CLE」の語の有無等では異なるものの,特徴のある同一の書体で表された「In
dian」の文字部分を共通にするものであるから,外観上近似性を有するという
べきである。
また,引用商標2の「Indian」の欧文字部分やインディアン図形部分から
は,「インディアン」の称呼が生じ,「インディアン(アメリカの先住民ないし北米
原住民)」の観念も生じることになる。本願商標も,「Indian」の欧文字を特
徴のある筆記体の書体で表してなるものであるから,「インディアン」の称呼と,「イ
ンディアン(アメリカの先住民ないし北米原住民)」の観念が生じ,本願商標と引用
商標2は,称呼と観念を共通にすることになる。原告は,「Indian」の文字部
分が独立して自他商品の識別標識としての機能を果たさないことを前提に,引用商
標からは「インディアンモトサイクル」の称呼,及び「インディアンのオートバイ」
の観念が生じ,本願商標のそれとは異なると主張するが,原告のかかる主張はその
前提において誤りであるから採用することができない。
(2)取引の実情については,引用商標1の判断と同じである。
(3)そうすると,本願商標と引用商標2は,外観において近似し,称呼と観
念を共通にする類似の商標というべきであり,また,指定商品は同一又は類似して
いると認められるから,本願商標が法4条1項11号に該当するとした審決の判断
に誤りはない。
第6結論
以上より,原告の請求は理由がない。
よって,原告の請求を棄却することとして,主文のとおり判決する。
知的財産高等裁判所第2部
裁判長裁判官
塩月秀平
裁判官
真辺朋子
裁判官
田邉実
平成24年(行ケ)第10223号判決別紙1
(1)Indianロゴ
(2)ヘッドドレスロゴ
(3)モトサイクルロゴ
(4)Indian/Motocycle商標

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