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主文
1 被告三井住友海上火災保険株式会社は,原告らそれぞれに対し,金966万円及
びこれに対する平成11年8月28日から各支払済みまで年6分の割合による金員
を支払え。
2 原告Aのその余の請求を棄却する。
3 訴訟費用は,これを2分し,その1を被告三井住友海上火災保険株式会社の負担
とし,その余を原告Aの負担とする。
4 この判決は,第1項に限り,仮に執行することができる。
事実及び理由
第1 請求
1 被告ジー・イー・エジソン生命保険株式会社(以下「被告エジソン生命」という。)
は,原告Aに対し,金875万円及びこれに対する平成11年6月26日から支払済
みまで年6分の割合による金員を支払え。
2 主文第1項と同旨
第2 事案の概要
本件は,原告らの子である訴外亡甲を被保険者とする保険契約に基づき,原告A
が被告エジソン生命に対して災害保険金の請求を,原告らが被告三井住友海上火災
保険株式会社(以下「被告三井住友海上」という。)に対して交通事故傷害保険金の
請求をした事案である。
1 争いのない事実等
(1) 原告らの子である甲は,平成11年5月5日,訴外乙の運転する普通乗用自動
車のトランクに乗車中交通事故に遭い,頸髄損傷等の重傷を負い,同月16日,
上記傷害により死亡した(12日間入院)。
(2)ア 甲は,被告エジソン生命を保険者,C庁共済組合を保険契約者とする下記
団体定期保険契約に加入し,被保険者となっていた。
保険者   被告エジソン生命
保険の種類 C庁職員団体生命保険
被保険者  甲
受取人   原告A
保険の区分 基本型
加入口数  35口(新規加入分10口及び追加加入分25口)
責任開始日 新規加入分平成11年3月18日
      追加加入分同年4月18日
災害特約  付加
保険金額  1口当たり死亡保険金54万円
           災害保険金25万円
イ 上記団体定期保険普通約款には,次の災害特約条項がある。
「第5条 当会社は,被保険者が,この特約の保険期間中,次の各号のいず
れかに該当した場合に,その被保険者について定められた額の災害保
険金を主契約の死亡保険受取人に支払います。
(1) その被保険者についてこの特約の責任開始期以後に発生した別表1
に定める不慮の事故による傷害を直接の原因として,その事故の日から
起算して180日以内に死亡したとき」
「第12条 当会社は,被保険者が次の各号によって第5条…の規定に該当し
た場合には,災害保険金…を支払いません。
(1) 保険契約者または被保険者の故意または重大な過失によるとき」
ウ 被告エジソン生命は,上記団体定期保険契約に基づき,原告Aに対し,上記
死亡保険金1890万円(54万円×35口)を支払った。
エ 上記団体定期保険契約によれば,災害保険金は875万円(25万円×35
口)となる。)
(3)ア 甲は,訴外住友海上火災保険株式会社(以下「住友海上」という。)を保険
者,C庁共済組合を保険契約者とする下記団体傷害保険契約(普通傷害保
険契約及び交通事故傷害保険契約)に加入し,被保険者となっていた。
保険者   住友海上
保険の種類 C庁職員家族団体傷害保険
被保険者  甲
受取人   法定相続人
加入口数  7口
保険金額  普通傷害保険契約につき
       1口当たり死亡保険金274万円
            入院保険金2500円
      交通事故傷害保険契約につき
       1口当たり死亡保険金273万6000円
            入院保険金2000円
イ 上記交通事故傷害保険普通約款には,保険事故に関し,次のように定めら
れている。
「第1条(当会社の支払責任)
① 当会社は,…被保険者…がその身体に被った次の各号に掲げる傷害
のいずれかに対して,この約款に従い保険金(死亡保険金…,入院保険
金…)を支払います。
(1) 運行中の交通乗用具に搭乗していない被保険者が,運行中の交通
乗用具…との衝突・接触等の交通事故または運行中の交通乗用具の
衝突・接触…等の交通事故によって被った傷害
(2) 運行中の交通乗用具に搭乗している被保険者…が,急激かつ偶然
な外来の事故によって被った傷害」
ウ 住友海上は,上記普通傷害保険契約に基づき,原告らに対し,死亡保険金
1918万円(274万円×7口),入院保険金21万円(2500円×7口×12日)
を支払った。(実際には,上記合計額1939万円から未収保険料3万2340円
が控除され,1935万7660円が支払われた。)
エ 上記交通事故傷害保険契約によれば,死亡保険金は1915万2000円,入
院保険金は16万8000円で,その合計額は1932万円となる。
オ 住友海上は,平成13年10月1日,被告三井住友海上に吸収合併された。
2 争点
(1) 被告エジソン生命に対する災害保険金請求:災害保険特約条項第12条1項
「被保険者の重大な過失によるとき」に該当するか。
(被告エジソン生命の主張)
 甲は,乙が甲と同級生で未だ運転歴が浅いにもかかわらず,本件事故直前ま
で行動を共にし,同人が相当量の飲酒をしていた事実を認識しつつ,同人の深
夜の飲酒運転を容認したこと,事故当時降雨のため路面が濡れて車輪が滑りや
すい状態であったにもかかわらず,同車には法定の乗車定員5名を超える7名
もの人間が乗車することを認識していたこと,しかも右の状況で運転中の自動車
のトランク内という本来人が乗車することが予定されず,身体の安全が十分確保
されていない危険な場所に自ら進んで入っていること等の事実を総合すれば,
僅かな注意義務を尽くせば本件事故を予見し,結果を回避することができたとい
わざるを得ず,甲には本件事故招致につき重大な過失があった評価されるべき
である。
(原告Aの主張)
 甲の負傷と死亡は,自動車を運転していた乙が,当時降雨で路面が濡れてい
て車輪が滑りやすい状態になっていた上,乗車定員を超える7名もの者が乗っ
ていたのであるから,車輪を滑走させたりしないよう十分注意して自動車を走行
させなければならない運転者としての注意義務があったにもかかわらず,その注
意義務を怠って,後部座席にいた者からの「振れよ。」という言葉に呼応して,ト
ランク内の甲らを脅かそうと考えて,時速約40キロメートルで進行しながら大きく
右に急ハンドルを切ったため,自動車を右斜め前方に滑走させ,ガードパイプの
支柱に衝突させるという事故を発生させた結果,発生したものであって,乙の過
失によって発生したものであり,甲には何の過失もなく,ましてや重大な過失と評
価されるほどの注意義務違反はない。
(2) 被告三井住友海上に対する交通事故傷害保険金請求:交通事故傷害保険普
通約款第1条1項2号「交通乗用具に搭乗している」に該当するか。
(原告らの主張)
 本件事故は,自動車の運行中に発生した自動車とガードパイプ支柱との衝突
事故の際,その衝撃によって,当該自動車のトランク内に搭乗していた甲が負傷
し,死亡したものであって,「交通乗用具に搭乗」中の事故であることは明らかで
ある。被告Aの主張するような限定した解釈をするのは正当でない。
(被告三井住友海上の主張)
 「交通乗用具に搭乗している」とは,自動車の場合,その運転席,助手席その
他の車室内の座席,バスの立席,二輪自動車の後部座席で握り手及び足掛け
を有するものなど,要するに「乗車のために設備された場所」(道路交通法55条
1項)に乗車している状態をいい,本件のように後部トランク内に身を置いている
場合は含まれない。このことは,文理解釈上も,社会通念上も明らかであるし,
危険の程度が全く異なることからも,当然このように解されるべきである。
第3 争点に対する判断
1 被告エジソン生命に対する災害保険金請求:災害保険特約条項第12条1項「被
保険者の重大な過失によるとき」に該当するか。
(1) 証拠(甲1ないし3,9,10の1ないし50)及び弁論の全趣旨によれば,本件事
故が発生した経緯に関し,次の事実が認められる。
 甲(当時19歳)は,平成11年5月4日午後11時半ころ,JR検見川駅近くで中
学時代の友人6名と会い,稲毛海岸駅近くのカラオケ店に行くこととなった。7名
は,乙(当時20歳)が普通乗用自動車(5人乗り)で来ていたことから,甲が同自
動車を運転し,助手席に1人,後部座席に4人,トランクに1人が乗り込んで,カ
ラオケ店へと向かった。7名は,カラオケ店で歌を歌ったり酒を飲んだりして2時
間程度過ごした後,上記自動車に乗ってラーメン屋に行こうということになった。
乙は,上記カラオケ店で焼酎のソーダ割りを飲んでいたが,上記自動車を運転し
た。また,カラオケ店に向かう際にトランクに乗っていた丙は,「トランクの中が気
持ちいい。」などと言って,再度トランクに乗り込み,甲も,「俺が乗る。」と言っ
て,自らトランクに乗り込んだ。
 乙は,ラーメン屋に向かってしばらく走行した同月5日午前1時45分ころ,同乗
者の一人から「振れよ。」などと言われたことから,車体を左右に揺らしてスリル
を味わおう,トランク内の2人を脅かそうと,時速約40キロメートルで進行しつつ
右に急ハンドルを切った。すると車は,右斜め前方に滑走し,車の前部が道路中
央部に設置されていた車止めポールに衝突し,さらに回転して,左側面が道路
中央部に設置されていたガードパイプの支柱に衝突した。トランク内にいた甲
は,上記衝突により頸髄損傷等の傷害を負い,同月16日午前10時50分ころ,
同傷害により死亡した。また,上記衝突により,後部座席にいた者が加療約1か
月を要する右鎖骨骨折等の傷害を負った。
 事故当日午前2時半ころになされた飲酒検知結果によれば,乙の呼気中のア
ルコール濃度は,呼気1リットルにつき0.2ミリグラム以上であった。
(2) 上記認定事実に基づいて考えると,甲は,乙が20歳で運転も未熟な上に本件
事故直前に相当量の飲酒をしていたこと,しかも法定の乗車定員5名を超える7
名が乗車することを認識しつつ,自ら進んでそのトランクに乗り込んでいることが
認められ,トランクは,本来人が乗車することが予定されず,身体の安全が十分
確保されていない場所であることも併せ考えれば,甲は,僅かな注意義務を尽く
せば本件不慮の事故を予見し,かつ結果を回避することができたにもかかわら
ず,これを怠ったというべきであり,重大な過失があったと認めるのが相当であ
る。
(3) したがって,災害保険特約条項第12条1項に定められた免責条項「被保険者
の重大な過失によるとき」に該当するので,原告Aの被告エジソン生命に対する
災害保険金請求は理由がないというべきである。
2 被告三井住友海上に対する交通事故傷害保険金請求:交通事故傷害保険普通
約款第1条1項2号「交通乗用具に搭乗している」に該当するか。
(1) 交通事故傷害保険普通約款第1条1項2号にいう運行中の交通乗用具に「搭
乗している」とは,一般的に,運行中の交通乗用具に乗り込んでいる状態をい
い,ドア,ステップ等に乗車の場合は手又は足をかけたときから,下車の場合は
手又は足を離した時までをいうと解されているところ,被告三井住友海上は,運
行中の交通乗用具(本件の場合,自動車)に「搭乗している」とは,「乗車のため
に設備された場所」(道路交通法55条1項)に乗車している状態をいうと主張す
る。
  しかしながら,道路交通法55条1項は,乗車の方法について運転者の負うべき
義務を定めたもので,必ずしも同条項に違反する乗車方法が上記「搭乗」の概
念から除かれるということにはならない。この点,自動車保険の搭乗者傷害保険
における保険事故が,「正規の乗車用構造装置のある場所に搭乗中」の事故と
定められていることと比較しても,「搭乗」の概念自体に乗車場所についての上
記のような限定があるとは考え難いといえる。
  交通事故傷害保険は,交通事故全般を担保するためのものであり,その保険
事故は,普通保険約款に定められているとおり,運行中の交通乗用具に「搭乗」
していない被保険者の運行中の交通乗用具との衝突・接触等の交通事故によ
る傷害(同条項1号)も,また運行中の交通乗用具に「搭乗」している被保険者の
急激かつ偶然な外来の事故による傷害(同条項2号)も,幅広くこれを保険事故
と定めたもので,同保険約款には,搭乗者傷害保険におけるそれのように,「正
規の乗車用構造装置のある場所に搭乗中」との規定は存在しない。そして,免
責条項として,被保険者の故意による事故招致や,被保険者が法令に定められ
た運転資格を持たないで,又は酒によって自動車を運転している間に生じた事
故等を掲げていることからすれば,法令違反行為のうち特にこれらを保険金が
支払われる場合から除いているものと解すべきであり,乗車の方法についての
違反がある場合にこれを「搭乗」にあたらないものと解するのは相当でないとい
うべきである。なお,本件において,上記免責条項に該当する事実を認めるに足
りる証拠もない。
(2) そうすると,甲は,交通乗用具に搭乗中に急激かつ偶然な外来の事故によっ
て傷害を被り,死亡したものであって,交通傷害保険契約に基づき,その死亡保
険金及び入院保険金が支払われるべきである。
第4 結論
 以上によれば,原告らの被告三井住友海上に対する請求は理由があるのでこれを
認容し,原告Aの被告エジソン生命に対する請求は理由がないのでこれを棄却するこ
ととし,主文のとおり判決する。
東京地方裁判所民事第14部
裁判官  中村さとみ

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