弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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          主     文
    被告人を懲役10月に処する。
未決勾留日数中60日をその刑に算入する。
          理     由
(罪となるべき事実)
 被告人は,
第1 平成15年1月8日午後11時18分ころ,業務として普通乗用自動車を運
転し,神戸市a区b通c丁目d番e号先道路を東から西に向かい進行中,進路前方
約30.5メートルの地点に信号待ちのため停止中のA(当時59歳)運転の普通
貨物自動車(軽四)を認めて時速約30キロメートルに減速した後,同車の後方に
停止しようとするに当たり,ブレーキを的確に操作して同車の後方に安全に停止す
べき業務上の注意義務があるのにこれを怠り,ブレーキペダルを踏もうとして足を
滑らせてアクセルペダルを踏み,自車を時速約40キロメートルに加速して進行さ
せた過失により,自車前部を前記A運転車両後部に衝突させて同車を前方に押し出
し,同車前部をその前方で停止中の普通貨物自動車(軽四)後部に衝突させ,よっ
て,同人に対し,加
療約37日月間を要する頸椎捻挫等の傷害を負わせた
第2 酒気を帯び,呼気1リットルにつき約0.2ミリグラムのアルコールを身体
に保有する状態で,前記日時場所において,前記普通乗用自動車を運転した
第3 前記日時場所において,前記第1記載の交通事故を起こしたのに,その事故
発生の日時及び場所等法律の定める事項を,直ちに最寄りの警察署の警察官に報告
しなかった
ものである。
(証拠の標目)ー括弧内の甲,乙に続く数字は検察官請求証拠番号ー
省略
(補足説明)
 被告人は,判示第1の事実について,第3回公判期日において,「ブレーキを踏
んだがブレーキが効かなかった。」旨供述し,その過失を争うがごとき態度を示
し,弁護人もその供述に基づき,ブレーキが効かなかった可能性は否定できない旨
主張するが,被告人は検察官(検察官証拠請求番号乙2)及び司法警察員(同乙
1)に対する各供述調書において,「ブレーキペダルを踏もうとして足を滑らせて
アクセルペダルを踏み,自車を時速約40キロメートルに加速して進行させて追突
した。」旨明確に供述し,第1回公判期日における罪状認否においても,「判示第
1の事実はそのとおり間違いない。」旨陳述しているところ,その各供述の信用性
は十分であるから,被告人及び弁護人の主張は理由がない。
(法令の適用)
 罰 条 第1 刑法211条1項前段                
第2 道路交通法117条の4第2号,65条1項,同法施行令   44条の3
        第3 同法119条1項10号,72条1項後段
 刑種の選択 いずれも懲役刑選択(第1ないし第3につき)
 併合罪加重 刑法45条前段,47条本文,10条(最も重い判示第1の罪の刑
に刑法47条ただし書の制限内で法定の加重)
 宣告刑 懲役10月
 未決勾留 刑法21条(60日算入) 
 訴訟費用 刑事訴訟法181条1項ただし書(負担させない。)
(事案の概要並びに量刑の理由)
 本件は,被告人が,普通乗用自動車を酒気帯び運転し,判示の過失により,その
前方で停止中の被害者運転の普通貨物自動車(軽四)後部に自車前部を追突させ,
被害者を負傷させる交通事故を起こしたにもかかわらず,報告義務を尽くさず現場
を立ち去ったという,一連の道路交通法違反,業務上過失傷害の事案であるとこ
ろ,被告人は昭和63年に業務上過失傷害,道路交通法違反(無免許運転)の罪
で,平成8年及び平成10年にそれぞれ道路交通法違反(酒気帯び運転)の罪で各
罰金刑に処せられたものであり,さらに,平成12年11月22日神戸地方裁判所
で道路交通法違反(酒気帯び運転)の罪で懲役3月(3年間刑の執行猶予)に処せ
られた執行猶予中の身でありながら,本件各犯行に及んだものであって,被告人の
遵法精神の欠如のあらわ
れともいうべき悪質な犯行であること,被告人は知人から借り受けた自動車で本件
事故を惹起したものであるが,同車は無車検,無保険車であり,被害弁償はなされ
ていないこと等に徴すると,被告人の刑事責任は重いといわざるを得ないから,実
刑は免れないが,被告人の心身の状況,被告人なりの反省の態度等被告人のために
斟酌すべき事情を十分に考慮し,主文のとおり量定した次第である。
 よって,主文のとおり判決する。
  平成15年12月3日
     神戸地方裁判所第11刑事係甲
          裁 判 官  杉 森 研 二

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