弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


戻る

         主    文
     原判決を破棄する。
     本件を魚津簡易裁判所に差戻す。
         理    由
 弁護人鍜冶良作の控訴趣意は昭和二十八年六月二十日付控訴趣意書記載の通りで
あるから此処にこれを引用する。
 論旨第一点について
 記録によれば、本件公訴事実は、「被告人は、昭和二十七年十月一日行われた衆
議院議員選挙に際し、富山県A区から立候補した同議員候補者Bの選挙運動をした
者であるが、同候補者の当選を得しめる目的」を以て、同候補者への投票取纒めを
依頼する趣旨の下に、其の報酬として、同年九月二十六日頃魚津市a村bc番地所
在株式会社C事務室に於て、Dに対し、現金五千円を供与したものである。と言う
にあるところ、原審は訴因変更の手続を履践することなく、「被告人は昭和二十七
年十月一日施行の衆議院議員選挙に際し、富山県A区より立候補したBの選挙運動
者であるが、同候補者の当選を得しめる目的を以て、同候補者への投票取纒めを依
頼する趣旨の下に、其の報酬として、同年九月二十六日頃Dを介しEに対し、現金
五千円を供与したものである。」旨の事実を認定したものであることが明白であ
る。思うに、裁判所は、被告人の防禦権の行使に対し、実質的に不利益を蒙らしめ
ない限り、訴因変更の手続を経る迄もなく、訴因の記載と或程度異る事実を認定す
る権限を有することは、明かであるけれども斯る権限は、認定事実が、一般的に訴
因中に包含されると認め得る場合にのみはじめて、これを適法に行使するを得ると
解すべく、便宜に流れて濫りに権限行使の範囲を拡張し、訴因の拘束力を有名無実
ならしめるが如き解釈は、<要旨第一>到底これを採るを得ない。従つて、訴因記載
事実の範囲を逸脱した限度に於て、犯罪事実を認定するが如きは仮令、
審理中証拠関係等より、斯る認定に到達すべき可能性あることを、被告人弁護人等
に於て、或程度予測し得たとしても被告人自ら該認定事実と符合する事実の存在を
主張したるが如き特別の事情なき限り、該認定事実に対する被告人の防禦を完全な
らしめたものと言うを得ず、若し裁判所が訴因変更の手続に依らずして斯る措置を
執つたものであるに於ては、斯る措置は、刑事訴訟法第二百五十六条第二百七十一
条第三百十二条等<要旨第二>の趣旨に違背する違法のものであると言うべきであ
る。これを本件について観るに、訴因記載の事実に依れば、「被告人は
Dに対し、金五千円を供与したものである。」と言うに対し、原審認定事実は、
「被告人はDを介し、Eに対し金五千円を供与したものである。」と言うにあつ
て、原審認定事実は、訴因記載事実の限度を逸脱するものであることが明らかであ
り、原審が訴因変更の手続を経由しなかつたことは既に説示した通りであつて、し
かも記録を精査しても、原審の事実認定につき被告人の防禦権行使に不利益を与え
ない既述の如き特別事情の存在を見出すことが出来ない。そうして見れば、原審は
訴因変更の手続に依らずして、訴因の範囲を超えて事実を認定し、これによつて被
告人の防禦権行使に実質的な不利益を与えたものと言わざるを得ず、従つて、原審
の訴訟手続には判決に影響する法令の違背があるとなさざるを得ないから、論旨は
理由があり、原判決は此の点に於て破棄を免れない。
 よつて、他の論旨に対する判断を省略し、刑事訴訟法第三百九十七条第三百七十
九条に則り原判決を破棄した上、原審をしてさらに審理を尽さしめる要ありと認
め、同法第四百条に則り本件を魚津簡易裁判所に差戻すべきものとし、主文の通り
判決する。
 (裁判長判事 吉村国作 判事 小山市次 判事 沢田哲夫)

戻る



採用情報


弁護士 求人 採用
弁護士募集(経験者 司法修習生)
激動の時代に
今後の弁護士業界はどうなっていくのでしょうか。 もはや、東京では弁護士が過剰であり、すでに仕事がない弁護士が多数います。
ベテランで優秀な弁護士も、営業が苦手な先生は食べていけない、そういう時代が既に到来しています。
「コツコツ真面目に仕事をすれば、お客が来る。」といった考え方は残念ながら通用しません。
仕事がない弁護士は無力です。
弁護士は仕事がなければ経験もできず、能力も発揮できないからです。
ではどうしたらよいのでしょうか。
答えは、弁護士業もサービス業であるという原点に立ち返ることです。
我々は、クライアントの信頼に応えることが最重要と考え、そのために努力していきたいと思います。 弁護士数の増加、市民のニーズの多様化に応えるべく、従来の法律事務所と違ったアプローチを模索しております。
今まで培ったノウハウを共有し、さらなる発展をともに目指したいと思います。
興味がおありの弁護士の方、司法修習生の方、お気軽にご連絡下さい。 事務所を見学頂き、ゆっくりお話ししましょう。

応募資格
司法修習生
すでに経験を有する弁護士
なお、地方での勤務を希望する先生も歓迎します。
また、勤務弁護士ではなく、経費共同も可能です。

学歴、年齢、性別、成績等で評価はしません。
従いまして、司法試験での成績、司法研修所での成績等の書類は不要です。

詳細は、面談の上、決定させてください。

独立支援
独立を考えている弁護士を支援します。
条件は以下のとおりです。
お気軽にお問い合わせ下さい。
◎1年目の経費無料(場所代、コピー代、ファックス代等)
◎秘書等の支援可能
◎事務所の名称は自由に選択可能
◎業務に関する質問等可能
◎事務所事件の共同受任可

応募方法
メールまたはお電話でご連絡ください。
残り応募人数(2019年5月1日現在)
採用は2名
独立支援は3名

連絡先
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所 採用担当宛
email:[email protected]

71期修習生 72期修習生 求人
修習生の事務所訪問歓迎しております。

ITJではアルバイトを募集しております。
職種 事務職
時給 当社規定による
勤務地 〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
その他 明るく楽しい職場です。
シフトは週40時間以上
ロースクール生歓迎
経験不問です。

応募方法
写真付きの履歴書を以下の住所までお送り下さい。
履歴書の返送はいたしませんのであしからずご了承下さい。
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所
[email protected]
採用担当宛