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平成16年12月1日判決言渡
平成14年(ワ)第365号 損害賠償請求事件
口頭弁論終結日 平成16年9月29日
判       決
主   文
1 被告Aは,原告に対し,1億円及びこれに対する平成14年12月19日
から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
2 被告Bは,原告に対し,1億円及びこれに対する平成14年12月19日
から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
3 被告Cは,原告に対し,5000万円及びこれに対する平成14年12月2
2日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
4 訴訟費用は被告らの負担とする。
5 この判決は仮に執行することができる。
事実及び理由
第1 請求の趣旨
   主文同旨。
第2 事案の概要
 1 本件は,経営破たんした富山商銀信用組合(以下「富山商銀」という。)から損害賠
償請求権を譲り受けた原告が,富山商銀の理事であった被告らに対し,大口融資
規制等に違反する違法な融資を行い,忠実義務・善管注意義務(中小企業等協同
組合法42条,商法254条の3,商法254条3項,民法644条)を怠る債務不履行
があったとして,中小企業等協同組合法38条の2第1項に基づき,回収不能となっ
た融資額相当の損害金の内被告A及び同Bについては1億円,被告Cについては
5000万円及びこれらに対する各訴状送達の日の翌日から支払済みまで民法所
定の年5分の割合による遅延損害金を連帯して支払うことを求めた事案である。
 2 争いのない事実等(証拠を掲げない事実は当事者間に争いがない。)
(1) 当事者等
ア 原告は,破たん金融機関から買い取った資産の回収等を業とする株式会社
である。(甲1)
イ 富山商銀は,中小企業等協同組合法及び協同組合による金融事業に関す
る法律に準拠して設立された,組合員に対する資金の貸付け等を事業目的と
する信用組合である。(甲2)
ウ 富山商銀は,平成11年10月8日,業務及び財産の状況に照らし預金等の
払戻しを停止するおそれがあるとして,金融機能再生のための緊急措置に関
する法律68条1項に基づく申出を行うとともに,福井商銀信用組合(以下「福
井商銀」という。)との間で,同組合に事業の全部を譲渡することで基本合意
し,事実上破たんした。富山商銀は,同年11月6日開催の臨時総代会におい
て福井商銀への事業全部の譲渡及び富山商銀の解散を決議し,同月10日
福井商銀との間で富山商銀の事業の全部を福井商銀に譲渡する旨の事業譲
渡契約を締結した。平成12年6月23日,富山商銀は,原告との間で富山商
銀の資産を原告が買い取る旨の資産買取契約を締結し,同月30日富山商銀
は解散した。(甲2,4から6まで)
エ 被告Aは,平成6年5月20日富山商銀の理事に選任された。被告Aは,平成
7年5月27日理事長に選任され,平成11年2月までその職にあった。
オ 被告Bは,平成7年5月15日富山商銀の理事に選任された。被告Bは,平
成7年6月22日専務理事に選任され,富山商銀の解散まで同職にあった(な
お,被告Bは,平成10年6月20日代表理事に就任した(甲2)。)
カ 被告Cは,平成4年6月ころ富山商銀に職員として入組し,以後業務部次長
及び同部長の職にあった。被告Cは,平成9年6月25日理事に,同年7月23
日常務理事に選任され,富山商銀の解散まで同職にあった。
(2) 株式会社D組(以下「D組」という。)に対する融資
ア D組は,昭和37年に設立された,土木工事等を業とする株式会社である。D
組は,富山市等からの公共土木工事を中心に工事請負の業務を行っていた
が,次第に経営が悪化し,平成12年5月31日に手形不渡りを出し,同年6月
20日に銀行取引停止処分を受けて事実上破たんした。
イ 富山商銀は,平成2年からD組に対する融資を実行した。D組は,平成5年こ
ろから,富山商銀に対する返済をたびたび延滞するようになった。平成7年9
月の時点で,富山商銀のD組に対する融資残高は約6億4138万円(担保預
金額を控除すると約6億1729万円),延滞金額は約4億8599万円に上って
いた(甲13)。
ウ 富山商銀は,平成7年4月,監督官庁である富山県(以下「県」という。)か
ら,同年1月25日を基準日とする県の検査結果に基づき,D組に対する融資
が大口融資規制を超えているとして特に指摘され,違法状態を早期に解消す
るように指導を受けた(甲10の1,14)。そのため,富山商銀は理事会等でD
組への対応を検討した結果,同年9月26日開催の理事会で,D組に対し,受
注の増加や合理化による固定費の圧縮等の経営改善がなされることを前提
に,理事会の責任で,当面の運転資金1億5000万円程度を追加融資するこ
ともあり得ることとされた(甲16)。
エ そこで,富山商銀は,理事らを構成員とする株式会社D組管理委員会(以下
「D組管理委員会」という。)を組織し(甲11),平成7年9月29日,D組との間
で改めて信用組合取引契約を締結した(甲17)。同日以後,富山商銀からD
組に行う融資は,貸付金をいったん富山商銀のD組管理委員会名義口座に
入金した後,富山商銀のD組名義口座に入金する方法がとられるようになっ
た(甲13,23から45まで,弁論の全趣旨)。
オ このようなD組管理委員会の枠組みを利用した融資残高は,平成8年2月2
9日の時点で既に1億5000万円を超過したが,富山商銀はその後も同委員
会の枠組みを利用した融資を行った。
カ 富山商銀は,平成9年2月28日から平成10年8月31日までの間,23回に
わたり,D組に対しD組管理委員会の枠組みを利用して別紙融資目録〈省略〉
記載の各融資を実行した(以下「本件各融資」という。)。その結果,同委員会
の枠組みを利用した本件各融資の融資残高は,平成10年8月31日現在3億
0160万円に上っている。(甲45,弁論の全趣旨)
(3) 信用組合の融資に関する規制等
ア 大口融資規制
信用組合の同一人に対する融資が多額に上ると,融資の均てんが図れな
いばかりか,信用組合の資産の健全性を害し経営を圧迫することとなる。その
ため,本件各融資当時,協同組合による金融事業に関する法律6条1項,銀
行法13条,協同組合による金融事業に関する法律施行令3条により,信用組
合の広義自己資本の額(出資金,準備金及び引当金)に100分の20を乗じ
た額が,信用組合による同一人に対する貸付額の限度(信用供与限度額)と
されていた。
富山商銀の同一人に対する信用供与限度額は,平成7年1月25日現在で
は6121万7000円,平成9年9月9日現在では7981万8000円であった。
イ 安全性の原則
信用組合を含む金融機関は,多数の者から資金を集めて運用しておりその
資金を安全確実に運用すべき責務がある。したがって,その融資業務におい
て,貸出先の資産及び経営状況やその信用の程度を精査するとともに,確実
かつ十分な担保を徴求するなど貸付金回収のために万全の措置を講ずる注
意義務を負う。
このような安全性の原則に鑑みると,信用組合の融資の決裁をなす者に
は,融資先の経営状況等の調査を十分に行い,その資金使途を精査して返
済計画の確実性を検証したうえ,確実かつ十分な担保を徴求するなど,貸付
金を確実に回収するための措置を講ずべき法的義務がある。
(4) 資産買取契約の締結
原告は,平成12年6月23日,上記(1)ウ記載のとおり,富山商銀との間で富
山商銀の資産を買い取る旨の資産買取契約を締結した(甲6)。富山商銀は,平
成14年3月29日,被告らに対する本件損害賠償請求権を原告に譲渡した旨被
告らにそれぞれ内容証明郵便で通知し,同通知はいずれも同月30日被告らに
到達した。
 3 争点
  (1) 本件各融資の違法性
   (原告の主張)
本件各融資は次のとおり違法な融資である。
ア 大口融資規制違反
富山商銀がD組管理委員会の枠組みを利用した融資を開始した平成7年9
月には,D組に対する融資残高は担保預金額を控除しても約6億1730万円
であった。平成7年1月25日時点での富山商銀の同一人に対する信用供与
限度額は6121万7000円であった。したがって,富山商銀のD組に対する融
資残高は,平成7年9月の時点で信用供与限度額を約5億5000万円も超過
していた。
しかも,被告らは,この時点以後もD組管理委員会の枠組みを使用して更
に多額の追加融資を行った。平成8年2月29日には,追加融資の限度枠とし
て理事会で定めた1億5000万円をも超過する金額になっていて,信用供与
限度額を超える融資が大幅に拡大していた。
にもかかわらず,被告らは,D組に対する融資を打ち切ることなく,更に融
資を継続した。その結果,信用供与限度額を超える融資を更に拡大させ,平
成11年3月31日を基準日とする県の検査の時点では,D組管理委員会の枠
組みを利用した融資を含むD組に対する融資残高は約8億5300万円に上っ
ていた。
イ 安全性の原則違反
(ア) 本件各融資の開始当時,D組の経営状況は悪化していた。D組の売上
高は,平成4年3月期から平成7年3月期にかけて年々減少していた。な
お,D組の決算書によれば,平成5年3月期以降,概ね30万円から100万
円程度の経常利益が計上されている。しかし,このうち営業外収益として計
上されている毎年約800万円から約1000万円の受取利息は,そのうちの
約700万円がD組の取締役らに対する貸付金の利息であり,これらは全く
返済されることなく未収入金として累積しているものである。したがって,実
質的にはD組の経常収支は赤字であった。
(イ) 従来から,D組に対する融資の使途は運転資金や支払手形の決済資金
であり,その返済原資は請負工事代金収入であった。このような資金使途
及び返済原資を前提に融資を実行した結果融資残高は累増した。D組管理
委員会の枠組みを利用した融資を開始した平成7年9月ころには,融資残
高は担保預金額を控除しても約6億1730万円,うち延滞金額は約4億86
00万円にも上っていた。
したがって,D組の経営状況が抜本的に改善されない限り,従来と同様
の資金使途及び返済原資を前提に融資を行っても,融資金が返済されなく
なることは明白であった。
そのうえ,D組管理委員会の枠組みを利用した融資を開始した後,金利
減免措置を実施したうえ約1億5000万円の融資をしても,経営の抜本的
改善がなされる様子はなかった。
しかるに,被告らは,従来と同様の資金使途及び返済原資を前提に本件
各融資を実行した。
(ウ) 被告らは,本件各融資の実行にあたって,返済計画の十分な検討をせ
ず,確実な返済のための具体的方策もとっていなかった。D組管理委員会
の枠組みを利用した融資を開始した後も,同委員会を通じたD組の管理
は,せいぜい支払先や工事請負代金の入金時期について一応のチェック
がなされていた程度であり,売上増加のための具体的対策や抜本的な経
費節減策等の方策は講じられていなかった。
(エ) 物的担保及び人的担保
a 物的担保
富山商銀のD組に対する債権の物的担保は,以下の不動産及び生命
保険に基づく各請求権上の質権のみである。本件各融資当時,D組の融
資残高は約6億円に上っていたから,大幅な担保不足であり,本件各融
資のための余剰担保がないことは明らかである。
(a) 不動産
平成7年11月までの時点で根抵当権が設定された各不動産(6筆
の土地及び建物)の評価額の総額は1億4803万5000円であり,そ
の担保価格は総額1億1842万8000円(掛け目80%)であった。し
かも,この評価はいわゆるバブル景気の平成2年又は平成4年に行わ
れたものであるから,その担保価値は大幅に下落している。
なお,平成7年12月22日2筆の土地に抵当権が付されているが,
これらの土地の平成11年度の路線価は合計約214万円にすぎない。
(b) 生命保険に基づく各請求権上の質権設定
4件の生命保険に基づく各請求権に質権の設定がなされていた。し
かし,これらの生命保険の解約返戻金の合計額は,現実に解約がなさ
れた平成12年12月ないし平成13年1月当時で,1079万6416円に
すぎない。
b 人的担保
D組管理委員会の枠組みを使用した融資が開始された平成7年9月2
9日,E,F,G,H及びIは,富山商銀との間で,D組の富山商銀に対する
手形貸付債務につき連帯して保証する旨の契約を締結した。
しかし,上記各保証人はいずれも返済能力に乏しい。他方,D組管理
委員会の枠組みを利用した融資開始当時でも,融資残高は約6億円に
達しており,しかも,平成8年2月29日の時点では,D組管理委員会の枠
組みを利用した融資残高も1億5000万円を超過することとなった。した
がって,上記各保証人から本件各融資について保証債務の履行を受け
ることが期待できないことは明白であった。
ウ 経営判断であるとの主張について
本件各融資は,いずれも法令に定めのある大口融資規制に大幅に違反す
るものである。このような違法性のある行為につき,経営判断の原則を適用す
る余地はなく,違法性を阻却する特段の事情が認められない限り,理事の任
務に違反した違法な行為である。
大口融資規制は,金融機関経営において,危険の分散や財務の健全性を
図るために不可欠な規制である。このような大口融資規制の目的・趣旨に照
らすと,同規制に違反する行為は,原則として信用組合の財務の健全性を害
する不合理なものであって,経営者の裁量権の範囲を逸脱するものである。
D組管理委員会の枠組みを利用した融資がD組の倒産による富山商銀の
経営破たんを回避するためのものであったという被告らの主張は否認する。
仮にそうであったとしても,富山商銀が組合員が出捐した金員によって存立す
る金融機関であることからすれば,その資金を更に逼迫させることが明らかな
状況にありながら,連鎖倒産回避の目的で回収不能な貸付を行うことは許さ
れない。
なお,被告らは,被告らが理事となった時点では,既に大口融資規制を超
えるD組への融資が実行されていて,これが不良債権になっていたと主張す
るが,そうであれば,むしろ,そのような融資先に更に融資を実行することはな
おさら違法である。
エ 県の是認があったとの主張について
県が富山商銀に対し本件各融資を是認した事実はない。むしろ,県は,平
成10年2月20日,富山商銀に対して,企業実体を超える過大融資や問題先
送りのための安易な追加融資が認められること等を指摘し,融資にあたって
は慎重な審査及び管理を行うように改善を求める旨の検査示達書を発出して
いた。
なお,被告らは金融機関の破たんの前例がなかったと主張するが,本件各
融資当時には,既に金融機関の破たんの前例が存在していた。
そもそも,富山商銀の経営主体は被告らであり,その運営は被告らの判断
と責任においてなされるべきものである。したがって,県の是認を理由に責任
を回避することは許されない。
(被告らの主張)
ア 経営判断等
被告Bが富山商銀の理事に選任された平成7年当時,富山商銀は,既に,
D組(これに関連する者を含む。)及びその他の融資先に対し,大口融資規制
に反する過大な貸付けを実行していて,これらが不良債権となっていた。ま
た,同年5月31日現在において富山商銀が有していた預金のうち,金融機関
等の大口定期預金が2分の1を超える割合を占めていた。そのため,これらの
金融機関等から払戻請求があれば,富山商銀は破たんせざるを得ない状況
であった。このように,被告らが理事に就任したときには,既に富山商銀の経
営は危機的な状況にあった。
D組に対する貸付けは巨額であり,D組が倒産した場合には富山商銀自身
の経営破たんを招くため,被告らは,これを回避するためにD組管理委員会を
組織してD組に対する融資及び回収を行った。本件各融資により融資額が増
加したとしても,富山商銀自身の倒産を避けなければならないという危機的状
況下での経営判断としてやむを得ずなされたものであるから,違法性はない。
イ 県の是認
被告らは以上の経過を随時県に報告し,県からもやむを得ないこととして是
認されてきた。なお,この時点では,金融機関の破たんの前例がなくこれに関
する枠組みもなかったため,監督官庁であった県は,富山商銀を直ちに経営
破たんさせることはできなかった。
ウ 本件各融資の回収可能性
D組は公共工事が主体であり,神通川河川敷の草刈りについては長年に
わたってほぼ独占的に受注していた。公共工事が受注できれば回収は確実で
あった。
  (2) 本件各融資実行時の被告らの融資権限等
   (原告の主張)
富山商銀では,被告Aと被告Bがそれぞれ理事長と専務理事に就任した平成
7年5月以後,合議制により融資決定をするものとされた。融資案件について
は,平成7年5月以後は少なくとも理事長である被告A及び専務理事である被告
Bが,平成9年7月23日以後はこの2名に加えて常務理事である被告Cがいず
れも融資の決裁をしてこれを実行していた。D組管理委員会の枠組みを利用して
なされた本件各融資の稟議においても,被告らは各稟議書の押印欄に押印をし
て融資の決裁をしている。
また,被告らは,本件各融資の時点で既にD組に対する融資残高が大口融資
規制に大幅に違反していることを認識していたし,D組の経営状況が悪化してい
ることも認識していた。
仮に,被告Aが名目上の理事長にすぎないとの理由で,また,被告B及び被
告Cが単に融資担当理事ではないとの理由で漫然と違法融資の承認(事後承認
も含む。)を繰り返していたならば,それ自体が著しい職務の怠慢であり,注意義
務違反となる。
ア 被告A
被告Aは,融資案件については理事長として最終的な決裁をする立場にあ
り,現に自ら決裁を行っていた。被告Aが不在のときは理事長の決裁印が押さ
れる前に融資が実行されることもあったが,その場合でも職員が事前に被告A
に電話で融資の承認を得ており,更に事後的に被告Aが自ら稟議書に決裁印
を押していた。
イ 被告B
被告Bは,専務理事就任後富山商銀が破たんするまで,常勤として富山商
銀で執務していて,融資を含めた業務全般について強い発言力を持ってい
た。被告Bは,専務理事就任後,全ての融資案件について事前に内容を確認
して融資決裁を行っていた。
ウ 被告C
被告Cは,銀行出身の実務家であり,平成7年ころからは富山商銀で唯一
の部長職として全ての融資案件を具体的に把握し,融資業務を統括してい
た。特にD組に対する融資については,被告Cは,常務理事就任前から実務
上の責任者であり,常務理事就任後も融資内容を最も具体的に把握したうえ
で融資案件の決裁を行っていた。
(被告Aの主張)
被告Aは,金融業務等の複雑で専門知識を要する仕事には疎く,信用組合の
理事の義務の存在そのものや,それらの内容を理解する能力に欠けていた。ま
た,大口融資規制の存在も知らなかった。
また,被告Aは,非常勤で名目的な理事又は理事長であったにすぎず,実質
的な融資業務は行っていなかった。本件各融資についても,被告Aはその詳細
を知らずほとんど事後報告を受けたにすぎない。すなわち,被告Aには,本件各
融資の決裁をするとか承認するという職務権限がなかったから,本件各融資に
対する責任はない。
仮に被告A作成名義の関係書類が存在するとしても,被告Aが関わったわけ
ではない。被告A名の印影があるとしても,そのほとんどは被告Aが押印したも
のではない。被告A自身が押印しなかったものについて,職員から電話で承諾を
求められたことはない。被告Aが署名又は押印したものがあるとしても,被告Aは
その内容を理解していたわけではなく,ただ,他の者から署名又は押印するよう
に指示されたため行ったにすぎない。
被告Aは,本件各融資の回収可能性がなかったことは知らなかった。理事長
就任時に,J常務理事等から,D組の経営改善やD組に対する債権の回収が困
難であるとの報告を受けていたわけではないし,それについての協議にも加わっ
ていない。また,理事会でこのような報告を受けたわけでもなく,D組の再建が困
難であることを認識し得なかった。
(被告B及び被告Cの主張)
D組管理委員会による融資業務は,当初は前記J常務理事が担当し,その辞
任後はK理事が担当し,その後L常務理事がこれに加わった。D組に対する融資
は,これらの融資担当理事がD組の公共工事の受注状況等を確認しながらD組
の求めに応じて融資の稟議書を起案し,理事長であった被告Aが融資を行うか
否かの決裁を行って実行していた。このように,本件各融資は融資担当理事と
理事長であった被告Aによって実行されたものである。被告B及び被告Cは,以
下のとおり,融資業務を担当しておらず決裁権を有していなかったから本件各融
資についての責任はない。
なお,D組管理委員会は,理事全員が委員となり,毎月開催される理事会に
おいて融資状況の概況の報告がなされていたが,融資業務の性質上事後報告
にならざるを得なかった。
ア 被告B
被告Bは,他の韓国系信用組合と合併して富山商銀の生き残りを図るた
め,理事会の承認を得て,福井商銀等との折衝,韓信連(韓国系信用組合の
連合組織),監督官庁であった県等との交渉に当たっていたものであり,融資
業務は担当していない。
被告Bには,理事長による融資決裁前には稟議書は回されず,理事長によ
って融資承認の決裁がなされ融資が実行された後に稟議書が回覧されてい
たにすぎない。被告Bは,融資額の増額に反対していたが,既に融資が実行
されていたので稟議書に押印せざるを得なかった。
イ 被告C
被告Cは,業務部部長として内部業務及び資金繰りを担当していたが,融
資の審査業務は担当していなかった。
被告Cは,融資実行前に稟議書に押印していたが,融資の決裁をしていた
わけではなく,業務部長として内容を把握していたにとどまるものであった。
(3) 損害の有無
(原告の主張)
ア 原告が富山商銀の資産を譲り受けた平成12年6月26日の時点で,本件各
融資の残債権は3億0160万円である。
D組は,平成12年6月20日に銀行取引停止処分を受けて事実上破たん
し,現在営業を廃止しているから,支払能力はない。
本件各融資を含むD組の富山商銀に対する債務を担保するために前記の
物的及び人的担保が設定されているが,これらによっても本件各融資が弁済
される見込みはない。
よって,本件各融資の残債権額3億0160万円が,被告らが本件各融資を
違法に決裁したことにより富山商銀が被った損害となる。
イ 被告Aと被告Bは,それぞれ理事長,専務理事として本件各融資の全てを決
裁している。したがって,上記損害の全てについて責任を負う。
被告Cは,常務理事として,本件各融資のうち別紙融資目録記載の番号9
番から23番の融資を決裁している。したがって,上記損害のうち,同目録記
載の番号9番から23番の融資の残債権合計額1億5730万円について責任
を負う。
(被告らの主張)
争う。
(4) 原告と富山商銀との間の資産買取契約に,本件損害賠償請求権が含まれる
か。
(原告の主張)
原告は,資産買取契約3条2項に基づき,本件損害賠償請求権を買い取っ
た。
(被告B及び被告Cの主張)
被告Bは,自ら富山商銀の代表理事として,この契約と特別利害関係のない
ものとして原告との資産買取契約を締結している。
富山商銀が被告らに対して損害賠償請求権を有していた事実はなく,原告に
対し富山商銀の被告らに対する損害賠償請求権を譲渡した事実もない。
第3 当裁判所の判断
 1 本件各融資の違法性(争点1)について判断する。
  (1) 証拠(各項目末尾に掲記)及び前記争いのない事実等によれば,以下の事実が
認められる。
   ア 富山商銀の同一人に対する信用供与限度額は平成7年1月25日現在では61
21万7000円,平成9年9月9日現在では7981万8000円であった。しかる
に,富山商銀がD組管理委員会の枠組みを利用した融資を開始した平成7年
9月には,D組に対する融資残高は担保預金額を控除しても約6億1730万
円であった。また,その後行われた,D組管理委員会の枠組みを利用して行
われた本件各融資の平成10年8月31日現在の残高は3億0160万円に上
り,平成11年3月31日におけるD組に対する融資残高は8億5300万円に上
っていた。(甲10の1,11,12の1,13,45,弁論の全趣旨)
   イ 平成7年9月の富山商銀のD組に対する融資残高は,担保預金額を控除しても
上記のとおり既に約6億1730万円に上っており,D組はそのうち約4億860
0万円を延滞していた。D組の経営状態は,相当に悪化していて再建に懸念
がもたれる状態であった。富山商銀は,平成7年9月,D組に対する融資を管
理するため,理事らを構成員とするD組管理委員会を組織した。しかし,同委
員会による管理は,同委員会口座を利用した貸付金の別口管理や事業に伴
う支払口のチェックをするのみであり,D組の工事受注状況やその進捗状況
及び資金計画等の財務管理には関与できていない形式的なものであった。
(甲11,13,弁論の全趣旨)
   ウ 富山商銀のD組に対する債権についての物的担保の評価額は,前記第2の3(
1)の原告の主張イ(エ)aに記載のとおりであった。また,人的担保として連帯保
証人が付されていたが返済能力はなかった。(甲21の1,21の2,弁論の全
趣旨)
  (2) 以上の事実によれば,本件各融資は,平成7年9月の時点で既に約5億5000
万円という信用供与限度額の約9倍に達する大幅な同限度額の超過があるの
に更に実行されていて,大口融資規制に著しく違反していると認められる。大口
融資規制が金融機関の経営において危険の分散や財務の健全性を図るために
非常に重要な規制であることに照らすと,大口融資規制に違反して信用供与限
度額を大幅に超える融資を行うことは,原則として理事らの裁量を逸脱した違法
なものというべきである。
    加えて,D組は経営状態が悪化していて多額の債務を延滞する状態であったう
え,本件各融資の担保も大幅に不足していた。D組管理委員会による債権管理
も形式的で不十分なものであり,返済を確実にするための具体的方策は何らと
られていなかった。そうすると,本件各融資にあたって貸付金を確実に回収する
ための措置がとられていたとは到底いうことができず,本件各融資は安全性の
原則にも反する。しかも,本件各融資は,平成7年9月26日開催の理事会で定
めたD組に対する追加融資の上限額を超えるものでもあった(もっとも,この決議
内容自体,信用供与限度額を超える融資を許容するものであるから問題があ
る。)。このような事実は,本件各融資の違法性を一層強めるものである。
    被告らは,本件各融資は,富山商銀の大口貸付先であるD組の破たんを回避し,
ひいては富山商銀自体の破たんを回避するために実行されたものであって,経
営判断としてやむを得ず行われたものであるから違法ではないと主張する。しか
し,上記認定のとおり,本件各融資の実行によってD組の再建の見通しがあった
わけではないから,仮に本件各融資がD組の破たんを回避するためになされた
としても,当面の破たんを回避できるというものにすぎず,本件各融資は既に信
用供与限度額を大幅に超える貸付をしている貸付先への多額の追加融資であ
り,安全性の原則に反するものでもあることを併せ考慮すれば,本件各融資の
違法性を阻却する特段の事情があるとはいえない。
    また,被告らは,監督官庁である県から本件各融資を是認されていたのであるか
ら,違法性がないとも主張する。しかし,仮に県が本件各融資を特に問題としな
かったとしても,それ故に被告らが責任を免れるものではないし,そもそも,証拠
(甲9から11まで)によれば,県は,平成4年1月16日,平成7年1月25日及び
平成9年9月9日を各基準日とする富山商銀に対する各検査において,D組らに
対する貸付けが信用供与限度額を超えていることを指摘し,このような大口貸出
は危険分散の見地等から好ましくないとして,違法状態を早急に改善するように
求めていることが認められる。ところで,被告Bは,同人が平成7年6月に県の担
当者と協議した際,県の担当者からD組に対する融資を止めない方がいいと言
われたかのように供述する。しかし,被告Bは,県の担当者がD組に対する融資
の継続を指示した事実を明確に供述しているわけではない。むしろ,県の担当者
から,D組に対し融資限度額を超える融資を行っていることの改善を求められた
とか,「これ以上D組に貸し付けるのはまずいんじゃないですか」と言われたとの
供述もしている(被告B10頁。なお,被告Bは,後者の供述について被告Bが発
言したという趣旨であるとも供述しているが(被告B32頁),前後の文脈に照らし
不自然である。)。また,この協議に近い平成7年7月21日に開催された理事会
では,D組に対する融資が県からの指導事項であることを前提として協議がなさ
れている(甲14)。これらからすると,県から本件各融資を是認されていた旨の
被告Bの供述部分は信用することができない。
 2 被告らの任務懈怠の有無(争点2)について判断する。
  (1) 証拠(各項目末尾に掲記)及び前記争いのない事実等によれば,以下の事実が
認められる。
   ア 富山商銀では,被告Aが理事長に就任した平成7年5月以後,融資決定が合議
制でなされるようになった。(甲11)
   イ 県は,平成7年1月25日を基準日として行った富山商銀の検査において,D組
に対する貸付は貸出限度額を超える貸出である旨指摘し,富山商銀に対し違
法状態の早期解消に努めるように求めた。これに対し,富山商銀は,平成9年
3月31日,県に対して,大口信用供与は法令違反であるとともに信用組合の
性格上好ましくないから,今後このような大口貸出が発生しないように努力す
る旨回答した。その回答書は,主に被告Cが作成したものであり,被告Aの記
名及び理事長印の押印があった。(甲10の1,10の2,被告C)
   ウ 平成7年7月,同年8月及び同年9月に開催された富山商銀の理事会で,D組
への再建,支援策等が検討された。これらの理事会では,D組に対する融資
が県からの指導事項であることが出席者に認識されていた。同年9月に開催
された理事会で,支払利息の減免措置を取ることで再建の道はあり,当面の
運転資金1億5000万円程度の別枠支援があれば現状を乗切ることができる
との結論に達し,理事会の責任の下でD組を支援することが決議された。その
結果,前記争いのない事実等(2)エ記載のとおりD組管理委員会が組織され
た。これらの理事会において,被告Aは理事長として議長を務め,被告Bは理
事として出席して富山商銀の業務運営について説明を行うなどし,被告Cは業
務部長として出席した。また,平成10年4月に開催された理事会では,被告B
がD組管理委員会の状況について報告した。(甲14ないし16,乙17)
   エ 本件各融資にあたり,被告Aは,理事長として本件各融資の稟議書の理事長
欄に自己の印章を押すとともに,自ら又は被告Cをして稟議書の可決欄に「承
認」との印を押した。被告Bは,専務理事として本件各融資の稟議書の専務欄
に自己の印章を押した。被告Cは,本件各融資のうち別紙融資目録記載の番
号1番から8番までは業務部長として本件各融資の稟議書の役席欄に自己の
印章を押し,番号9番から23番までは常務理事として,番号10番から番号2
3番までは常務欄に,理事に就任した直後の番号9番は役席欄のみに自己の
印章を押した。これらの稟議書には,D組管理委員会の枠組みを利用した融
資の残高が記載されていた。本件各融資のうち最初の融資(同融資目録番号
1の融資)の稟議書には,既に残高が1億9130万円に上ると記載されてい
て,その後の融資の際の稟議書にも累積した残高が記載されていた。(甲23
から45まで)
  (2) 以上の事実によれば,それぞれ理事長,専務理事という富山商銀の経営者の
立場にあった被告A及び被告Bは,合議の一員としてその権限を行使して本件
各融資の決裁をし融資を承認・実行していたこと,被告Cは,本件各融資のうち
別紙融資目録記載の番号9番から23番までの融資について,常務理事という
富山商銀の経営者として,合議の一員としてその権限を行使してこれらの融資
の決裁をし融資を承認・実行していたことが認められる。
    また,被告らは本件各融資を実行する前に県からD組に対する融資が大口融資
規制違反である事実を指摘されているうえ,決裁した稟議書の記載内容自体か
らも本件各融資が信用供与限度額を超える融資であることが明らかになってい
る。被告らがいずれも出席していた理事会ではD組の支援・再建策が議事に上
り,D組管理委員会を設置して管理をすることとしたものの抜本的な改善策が講
じられないまま残高が増加し,結局理事会において設定した追加融資枠をも超
える本件各融資を行う事態になっている。被告B及び被告Cの供述に照らして
も,被告らが,本件各融資が大口融資規制に違反するものであることや,本件各
融資の際D組の経営状態が非常に悪化していて貸付金の回収が困難であるこ
とを認識していたことは明らかである。
    そうすると,被告らが本件各融資(被告Cについては別紙融資目録記載の番号9
番から23番までの融資)の決裁をして融資を承認・実行したことは,善管注意義
務・忠実義務に違反し,理事の任務を怠ったものというべきである。
  (3)ア 被告Aは,自分は名目的な理事長であったにすぎず本件各融資を決裁する権
限はなかった,本件各融資の稟議書に被告A名の押印があるとしても被告A
はその内容を理解せずに押していたにすぎないなどと主張し,その旨供述す
る。しかし,富山商銀という金融機関の理事長であったという被告Aの役職そ
のものに照らして,被告Aは富山商銀の業務である組合員への貸付等につい
ての決定権を有していたと認められる。また,稟議書に決裁印を押印する行
為は,通常これによって稟議書に記載されている事項を承認し実行を認める
意思を表示するものであるし,これに伴って重大な責任が生ずることも容易に
理解することができる。したがって,稟議書の記載内容を全く理解しないまま
決裁印を押したという供述は不自然である。被告Aの前記主張や供述は到底
採用することができない。
     また,被告Aは,稟議書にある被告A名の印影の中には,被告A自身が押印し
なかったものがあるとも主張し,自分は被告A名の印章を理事長室の机の引
き出しに保管していたが,引き出しには鍵がついておらず,理事長室の鍵もか
かっていなかったから,富山商銀の職員であれば誰でも入ることができたなど
と供述する。しかし,被告Aの供述によっても,他の者が勝手に押印した可能
性をいうにとどまり,特定の者が被告Aの印章を冒用したという具体的事実を
うかがわせるに足りる証拠はないから,この主張も採用することができない。
   イ 被告Bは,自分は他の韓国系信用組合との折衝等の業務を担当していて融資
業務は担当していなかったと主張する。しかし,被告Bは,専務理事という理
事長に次ぐ役職にあって,富山商銀経営の中心人物であったと認められる。
このことは,被告Bが担当していたという上記業務が富山商銀の存亡に関わ
る重要なものであったことからも明らかである。D組に対する融資案件は,富
山商銀の経営に大きな影響を及ぼすものとして理事会でもその支援策が議論
されていたのであり,被告B自身が理事会においてD組管理委員会の状況を
報告したこともあるのであるから,経営の中枢にあった被告Bがその融資案件
についての決定権限を有していなかったとは到底考えがたい。そうすると,被
告BがD組への融資を決定をする権限を有していたことが明らかに認められ
る。
     被告Bは,本件各融資の稟議書は既に理事長である被告Aの決裁が終わった
後に回ってきていて,自分は融資実行が決まった後に押印したにすぎないと
主張し,その旨供述する。しかし,この主張や供述は,被告Bの富山商銀にお
ける地位にそぐわない不自然なものである。被告B自身も,融資がなされる前
に融資稟議書や添付書類に目を通していたか否かについてこれを明確に否
定しないあいまいな供述をするにとどまっている(被告B24頁)。以上に照らす
と,被告Bは基本的には被告Aの決裁の前に稟議書に決裁印を押していたと
認められる。仮に被告Aの決裁が終わった後に被告Bが本件各融資の稟議書
の決裁をしたことがあったとしても,富山商銀では合議により融資を決定する
ものとされていたのであるから,自己に稟議書が回ってきた段階で融資の実
行に異議を述べることは可能であったし,そのようにすべきものでもあった。結
局,被告Aの決裁後であってもこれを漫然と追認して決裁したことは,任務懈
怠に他ならないというべきであるから,その責任を免れることはできない。
   ウ 被告Cは,融資の審査業務は担当していなかったと主張し,その旨供述する。
しかし,被告Cは銀行出身者として特に富山商銀に招へいされた者である。被
告Cは,理事に就任する前には,D組に対する融資の稟議書を作成し,これに
自ら作成した回収の見込み等を記載した説明資料やD組から被告Cあてに送
付された資料を添付している(甲13,甲58の1から61の2まで,被告C)。常
務理事に就任した後も,例えば,県の検査示達書に対する回答書(平成9年3
月31日付け)を作成していて,これには融資業務に関する記述も含まれてい
る(甲10の2,被告C)。これらによれば,被告Cが融資の審査業務を実質的
に担当していたことは明らかに認められる。
     被告Cは,形式を整えるために稟議書に押印していたにすぎないとも主張及び
供述する。しかし,稟議書に権限を有する者が押印することの意味は被告Aの
主張に対して上記アで述べたとおりである。しかも,証拠(甲28)によれば,被
告Cは稟議書の決裁にあたり資金の使途が記載されている添付書類に自ら
補足説明を書き加えていることも認められる。したがって,上記主張及び供述
は採用することができない。
 3 損害額(争点3)
   前記認定事実及び争いのない事実等によれば,本件各融資の残債権額は合計3
億0160万円であること,D組は平成12年6月20日に銀行取引停止処分を受け
ていて同残債権を支払う能力がないこと,富山商銀のD組に対する債権の担保は
大幅に不足しており,この担保から本件各融資の残債権を回収することは困難で
あることが認められる。
   したがって,本件各融資の残債権額合計3億0160万円が,富山商銀に生じた損
害であると認められる。
   被告A及び被告Bは,本件各融資の全てについて任務懈怠が認められるから,残
債権額の全額を賠償する義務がある。
   被告Cは,本件各融資のうち別紙融資目録記載の番号9番から23番までの融資
について任務懈怠が認められるから,これらの残債権額の合計1億5730万円を
賠償する義務がある。
 4 原告と富山商銀との間の資産買取契約に本件損害賠償請求権が含まれるか否か
(争点4)について判断する。
   資産買取契約書(甲6)によれば,原告と富山商銀との間で締結した資産買取契約
の3条2項には,富山商銀が有する債務不履行に基づく損害賠償請求権も原告が
富山商銀から買い取る資産に含まれると規定されている。しかも,同項には,損害
賠償請求権等の内容として,特に「現在及び過去における富山商銀の役職員に対
し責任追及する一切の権利を含む。資産買取日(平成12年6月26日)においてそ
の存在の確認若しくは内容の特定が未了であるものを含むものとする。」と規定さ
れている。そうすると,富山商銀の被告らに対する中小企業等協同組合法38条の
2第1項に基づく損害賠償請求権が,同条の買取資産に含まれることは明らかであ
る。
   被告Bは,同資産買取契約は被告B自身が富山商銀を代表して原告と締結したも
のであり,自己に対する損害賠償請求権が含まれているとは認識していなかったと
主張するが,上記資産買取契約書の文言に照らして採用することができない。富
山商銀とその代表理事である被告Bとは別個の主体であるから,被告Bが富山商
銀を代表して同資産買取契約を締結したからといって,直ちに富山商銀の被告Bに
対する損害賠償請求権が対象外となるものではない。
第4 結論
   以上によれば,原告の請求にはいずれも理由があるので,主文のとおり(ただし,
各被告は連帯責任であり,被告Cは主文3項記載の金員の限度での連帯責任であ
る。)判決する。
富山地方裁判所民事部
裁判長裁判官   永野圧彦
   裁判官   剱持淳子
   裁判官   三輪篤志

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