弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     原判決を破棄する。
     被告人を懲役六月及び罰金一万円に処する。
     右罰金を完納することができないときは、金二百円を一日に換算した期
間被告人を労役場に留置する。
     原審における訴訟費用中証人A、同B、同C及び同Dに支給した分は、
被告人の負担とする。
     食糧管理法違反の点については、被告人を免訴する。
         理    由
 本件控訴の趣意は、弁護人牛島定作成の控訴趣意書に記載してあるとおりである
から、ここにこれを引用し、これに対し、左のとおり判断する。
 論旨の第三の二について。
 差戻後の原審第五回公判調書によれば、該公判期日において検察官が証人Dを尋
問したととろ、同証人が所論検察官の面前における供述調書に顕れた供述とは異る
供述をしたので、検察官は、同証人に対し、「昭和二十四年六月四日に証人は検察
庁で取調を受けなかつたか」と問い、同証人が「取り調べられました」と答える
や、続いて順次「その時に述べたことは間違ないか」「無理に供述させられたこと
はないか」との問を発して該供述の真実性及び任意性につきただした上、「その時
の取調の際に証人は……と述べなかつたか」と右供述調書中の供述記載の一部と同
一内容の言葉を入れて尋問していることは認められるが、他に該公判期日において
右供述調書が朗読されたとは認められない。記録によれば、差戻後の原審において
は、検察官は、第三回公判期日において右供述調書の取調を請求したが、相手方の
意見の陳述は次回に延期され、第四回公判期日において弁護人がこれを証拠とする
ことに同意しない旨述べたため、検察官は、右供述調書の取調請求を一応徹回して
該供述調書の供述者たるDの証人尋問を求めたところ、原裁判所はこれを許容し、
第五回公判期日において右証人の尋問が行われたが、同証人が右供述調書に記載さ
れた供述と異なる供述をしたので、検察官は、刑事訴訟法第三百二十一条第一項第
二号後段によつて右供述調書の取調を請求し弁護人は、これを証拠とすることに同
意しなかつたが、第九回公判期日において原裁判所は、右供述調書を取り調べる旨
の決定を<要旨>宣し、その証拠調が行われたことが明らかである。従つて差戻後の
原審第五回公判期日においては、右供述調書は、未だ証拠調の決定がなされ
ていないことは明らかであるけれども、同公判期日における検察官の前記証人Dに
対する尋問方法は、後に取調を請求すべき右供述調書の証拠能力を証するために行
われた妥当な措置であつて、これをもつて所論のように証拠調決定前の書証の違法
な朗読と解すべきものでない。なお、記録に徴するも、他に右証拠調決定前に該書
証が違法に朗読されたことは認められない。原審の訴訟手読には、所論のような法
令の違背はない。論旨は、独自の見解に基くものであつて、理由がない。
 (その他の判決理由は省略する。)
 (裁判長判事 谷中薫 判事 荒川省三 判事 堀義次)

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